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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030697
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】穿孔拡径工具
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B28D1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135964
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 透
(72)【発明者】
【氏名】小林 学
(72)【発明者】
【氏名】成願 正彦
(72)【発明者】
【氏名】窪田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野村 展生
【テーマコード(参考)】
3C069
【Fターム(参考)】
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BC02
3C069CA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造で、拡径孔部を形成する拡径刃体を容易に交換できる。
【解決手段】ストレート孔に対応する形状と大きさの前部21と、軸方向に延びる長穴221が形成された後部22と、前部21と後部22の間の大径の鍔状ストッパー23を有し、前部21に縦スリット212が形成されたシリンダー2と、後側にシャンク323、前側に後部22が内挿される収容凹部311が形成された外装体3と、外装体3に対してシリンダー2を前方へ付勢する圧縮バネ4と、傾斜する拡径刃52が縦スリット212に出入り自在に設けられる拡径刃体5を備え、シリンダー2の長穴221に挿通される着脱可能な固定ピン6で外装体3と拡径刃体5が軸支され、長穴221に対する固定ピン6の相対的な前方への移動に応じて、拡径刃52が縦スリット212から外側に突出するように拡径刃体5を傾動させる傾動機構が設けられる穿孔拡径工具1。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被穿孔物に穿孔されるストレート孔に対応する形状と大きさの前部と、軸方向に延びる長穴が形成された後部と、前記前部と前記後部の間に設けられ前記前部と前記後部の双方よりも大径の鍔状ストッパーを有し、前記前部に軸方向に延びる縦スリットが形成されているシリンダーと、
後側にシャンクが設けられ、前側に前記シリンダーの後部が内挿される略有底円筒状の収容凹部が形成されている外装体と、
前記シリンダーの後部に設けられ、前記外装体に対して前記シリンダーを前方へ付勢する圧縮バネと、
前記シリンダーの軸方向に延びて前記シリンダーに内装され、前端部に傾斜する拡径刃が形成され、前記拡径刃が前記縦スリットに出入り自在に設けられている拡径刃体とを備え、
前記シリンダーの前記長穴に挿通される着脱可能な固定ピンで前記外装体と前記拡径刃体が軸支され、
前記長穴に対する前記固定ピンの相対的な前方への移動に応じて、前記拡径刃が前記縦スリットから外側に突出するように前記拡径刃体を傾動させる傾動機構が設けられていることを特徴とする穿孔拡径工具。
【請求項2】
前記傾動機構が、前記拡径刃の傾斜する方向に延びて前記拡径刃に形成される別の長穴と、前記シリンダーの前端部に着脱可能に設けられて前記別の長穴に挿入される偏芯ピンとから構成されることを特徴とする請求項1記載の穿孔拡径工具。
【請求項3】
前記縦スリットと周方向の異なる位置において前記シリンダーの前部の外周面に軸方向に延びる縦溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の穿孔拡径工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンクリートの穿孔に拡径孔部を形成する際に用いられる穿孔拡径工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設のコンクリート躯体に取付物を取り付ける際に、コンクリートに形成したストレートの穿孔内で拡開スリーブを拡開させて孔壁に押し付け、機械的に定着させる機械定着式アンカーや、コンクリートに形成した穿孔内にボルトと共に硬化接着剤を入れて硬化させる接着式アンカーのような、あと施工アンカーが用いられている。あと施工アンカーはコンクリートに打設され、あと施工アンカーを介して取付物がコンクリート躯体に取り付けられる。
【0003】
あと施工アンカーが打設されるコンクリートが脆弱である場合、打設したあと施工アンカーに十分な定着がとれない懸念が生ずる。逆に、あと施工アンカーが打設されるコンクリートが高強度コンクリートの場合、機械定着式アンカーの拡径部が十分に開かず孔壁に食いつくことができなかったり、摩擦力が不十分となって、定着力が不十分となる懸念が生ずる。斯様な懸念を払拭するため、コンクリートに形成したストレートの穿孔の孔底付近を拡径して拡径孔部を形成し、機械定着式アンカーを用いて拡開スリーブを拡径部で開かせて、機械定着式アンカーの定着力を高めることも行われている。
【0004】
この拡径部を有する穿孔は、例えば特許文献1の穿孔装置を用いて形成することが可能である。この穿孔装置は、本体の前部に前後方向に所定範囲を移動自在に装着され、前端にコンクリート表面に当接する当て部を有する筒状スリーブと、本体に対して筒状スリーブを前方へ付勢する第1圧縮ばねと、先端にストレート孔を穿孔する穿孔刃が設けられ、本体に基端部が挿入され、筒状スリーブに前後方向に移動自在に装着されたドリル刃体と、先端に切削刃が固着され、ドリル刃体の側面に前後方向に移動自在に添設され、ドリル刃体の側面において前方へ移動するときに切削刃がドリル刃体の側方へ突出する拡径孔部削成部材と、ドリル刃体に対して拡径孔部削成部材を後方へ付勢する第2圧縮ばねと、本体に回動自在に支持され、一方の当接部が筒状スリーブの内壁に当接され、他方の当接部が拡径孔部削成部材の基端部に当接されるカムを有し、筒状スリーブに対して本体が相対的に前方向へ移動するときに、カムの回動によって拡径孔部削成部材が前方へ移動して拡径孔部を形成する切削刃が側方へ突出する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5806782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の穿孔装置は、コンクリートに1度の穿孔作業でストレート孔を形成すると共に拡開孔部を形成することができるというメリットがあるものの、装置の構造が非常に複雑であるため、拡径孔部を形成する切削刃が破損した場合、切削刃が固着された拡径孔部削成部材を現場で交換することは困難である。そのため、拡径孔部を形成する切削刃が破損した場合に別の穿孔装置を急いで準備するか、切削刃の破損に備えて予めスペアの穿孔装置を準備しておく必要があるため、穿孔作業の効率の低下や施工コストの増加という問題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、シンプルな構造で、拡径孔部を形成する拡径刃体を容易に交換することができ、穿孔作業の高効率化や施工コストの低減を図ることができる穿孔拡径工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の穿孔拡径工具は、被穿孔物に穿孔されるストレート孔に対応する形状と大きさの前部と、軸方向に延びる長穴が形成された後部と、前記前部と前記後部の間に設けられ前記前部と前記後部の双方よりも大径の鍔状ストッパーを有し、前記前部に軸方向に延びる縦スリットが形成されているシリンダーと、後側にシャンクが設けられ、前側に前記シリンダーの後部が内挿される略有底円筒状の収容凹部が形成されている外装体と、前記シリンダーの後部に設けられ、前記外装体に対して前記シリンダーを前方へ付勢する圧縮バネと、前記シリンダーの軸方向に延びて前記シリンダーに内装され、前端部に傾斜する拡径刃が形成され、前記拡径刃が前記縦スリットに出入り自在に設けられている拡径刃体とを備え、前記シリンダーの前記長穴に挿通される着脱可能な固定ピンで前記外装体と前記拡径刃体が軸支され、前記長穴に対する前記固定ピンの相対的な前方への移動に応じて、前記拡径刃が前記縦スリットから外側に突出するように前記拡径刃体を傾動させる傾動機構が設けられていることを特徴とする。
これによれば、拡径孔部を形成する工具をシンプルな構造にすることができると共に、拡径刃が破損した場合や劣化した場合等に着脱可能な固定ピンを抜き出して現場で分解し、拡径孔部を形成する拡径刃体を容易に交換することができ、穿孔作業の高効率化や施工コストの低減を図ることができる。また、圧縮バネの復元力により、拡径孔部を形成する作業の後に、縦スリットから外側に突出した拡径刃をスムーズに元の位置に復元することができる。また、ストレート孔に対応する形状と大きさの前部に軸方向に延びる縦スリットを形成することにより、拡径孔部を形成する際のコンクリート等の切粉が拡径刃体とシリンダーとの間に目詰まりすることを防止できる。また、鍔状ストッパーよって外装体側に拡径孔部を形成する際の切粉が入り込むことを防止することができる。また、鍔状ストッパーと鍔状ストッパーの前側の縦スリットを設けることにより、拡径孔部を形成する作業の後に工具に付着した切粉の清掃を行いやすくすることができる。
【0009】
本発明の穿孔拡径工具は、前記傾動機構が、前記拡径刃の傾斜する方向に延びて前記拡径刃に形成される別の長穴と、前記シリンダーの前端部に着脱可能に設けられて前記別の長穴に挿入される偏芯ピンとから構成されることを特徴とする。
これによれば、拡径刃が破損した場合や劣化した場合等に着脱可能な固定ピンと偏芯ピンを抜き出して現場で分解し、拡径孔部を形成する拡径刃体をより一層容易に交換することができる。また、拡径刃を縦スリットで出し入れする動作を、より簡単な構造で正確に且つ安定して行うことができる。
【0010】
本発明の穿孔拡径工具は、前記縦スリットと周方向の異なる位置において前記シリンダーの前部の外周面に軸方向に延びる縦溝が形成されていることを特徴とする。
これによれば、拡径孔部を形成する作業で発生するコンクリート等の切粉を縦溝に導入することが可能になるので、切粉が拡径刃体とシリンダーとの間に目詰まりすることをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の穿孔拡径工具は、シンプルな構造で、拡径孔部を形成する拡径刃体を容易に交換することができ、穿孔作業の高効率化や施工コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明による実施形態の穿孔拡径工具の正面図、(b)は実施形態の穿孔拡径工具の組付けを説明する説明図。
図2】(a)は実施形態の穿孔拡径工具におけるアタッチメントの正面図、(b)はその左側面図。
図3】(a)は実施形態の穿孔拡径工具におけるカップリングの正面図、(b)はその右側面図。
図4】(a)は実施形態の穿孔拡径工具におけるシリンダーの底面図、(b)はその正面図、(c)は同図(b)のA-A断面図、(d)は同図(b)のB-B断面図、(e)は同図(b)のC-C断面図。
図5】(a)は実施形態の穿孔拡径工具のストレート孔挿入時の状態を示す断面図、(b)は実施形態の穿孔拡径工具の拡径孔部形成時の状態を示す断面図。
図6】(a)~(d)は実施形態の穿孔拡径工具で拡径孔部を有する穿孔を形成する工程を説明する工程説明図。
図7】(a)は拡径孔部を有する穿孔に機械定着式アンカーを定着した状態を示す説明図、(b)は拡径孔部を有する穿孔に接着式アンカーを定着した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態の穿孔拡径工具〕
本発明による実施形態の穿孔拡径工具1は、図1図5に示すように、略筒状のシリンダー2と、外装体3と、圧縮バネ4と、拡径刃体5を有する。シリンダー2は、前部21と、後部22と、前部21と後部22との間に設けられる鍔状ストッパー23とから構成される。
【0014】
前部21は、コンクリート100等の被穿孔物に穿孔されるストレート孔101に対応する形状と大きさで形成され、前端は閉塞されていると共に、前端付近の内部空間を軸方向と直交する方向に貫通するようにして偏芯ピン挿通用のピン穴211が形成されている。前部21には、軸方向に延びる縦スリット212が形成されており、前端の閉塞部から鍔状ストッパー23まで延びるように縦スリット212が形成されている。また、前部21には、縦スリット212と周方向の異なる位置において、その外周面に軸方向に延びる縦溝213が形成されており、図示例では、縦スリット212の周方向反対側の位置に縦溝213が形成されている。尚、縦溝213は複数異なる位置に形成してもよい。
【0015】
後部22は、本例では前部21よりも外径が小径の筒状に形成され、軸方向に延びる長穴221が後端寄りの位置に形成されている。また、前部21と後部22との間の鍔状ストッパー23は、前部21と後部22の双方よりも大径で形成されている。鍔状ストッパー23は、後述する外装体3が前進した際に外装体3の前方移動を規制すると共に、前部21に対応する大きさのストレート孔101よりも大径であるため、ストレート孔101の口元に当接するようになっている。
【0016】
外装体3は、後側に回転駆動工具に連結する為のシャンク323が設けられ、前側にシリンダー2の後部22が内挿される略有底円筒状の収容凹部311が形成されているものであり、本実施形態ではカップリング31とアタッチメント32とで外装体3が構成されている。
【0017】
略円筒状のカップリング31には、前側にシリンダー2の後部22が内挿される略有底円筒状の収容凹部311が形成されている。収容凹部311は、出口寄りの部分よりも奥側の部分の内径が小径で形成されており、段差面312よりも奥側の部分が小径部313になっている。小径部313には、直径方向に貫通するようにして固定ピン挿通用のピン穴314が形成されている。カップリング31の後部には雌ねじ部315が形成されている。
【0018】
アタッチメント32には、基体321の前側に雄ねじ部322が形成され、基体321の後側にシャンク323が形成されている。雄ねじ部322はカップリング31の雄ねじ部315に螺合されてアタッチメント32とカップリング31が螺着される。シャンク323は、ドリル等の回転駆動機に連結され、回転駆動機の回転力が外装体3、及びこれにピン止めされるシリンダー2、拡径刃体5に伝達されるようになっている。
【0019】
圧縮バネ4は、シリンダー2の後部22に設けられ、外装体3に対してシリンダー2を前方へ付勢するように設けられる。本実施形態では、コイルバネである圧縮バネ4が後部22の外周に嵌め込まれ、圧縮バネ4の後端が外装体3の段差面312に当接し、その前端が鍔状ストッパー23に当接することにより、外装体3に対してシリンダー2を前方へ押すように付勢している。
【0020】
拡径刃体5は、シリンダー2の軸方向に延びる細長板状又は棒状の基体51を有し、基体51の前側に位置する前端部には、基体51の長手方向から傾斜するようにして拡径刃52が形成されている。拡径刃52の部分、或いは拡径刃体5の全体は超硬合金等の超硬材で形成すると好適である。拡径刃52には、その傾斜方向に延びてシリンダー2の長穴221とは別の長穴53が形成されており、図示例では別の長穴53は拡径刃52の略中央に位置して形成されている。また、拡径刃体5の後端部には、固定ピン挿通用のピン穴54が形成されている。
【0021】
拡径刃体5は、シリンダー2の軸方向に延びてシリンダー2に内装される。この拡径刃体5が内装されたシリンダー2の後部22は外装体3の収容凹部311に内挿され、拡径刃体5のピン穴54とシリンダー2の長穴221と外装体3のピン穴314の位置が合わせられ、ピン穴314、長穴221、ピン穴54に着脱可能な固定ピン6が挿入されてピン止めされる。換言すれば、シリンダー2の長穴221に挿通される着脱可能な固定ピン6によって外装体3と拡径刃体5が軸支される。
【0022】
この固定ピン6でピン止めされた状態において、拡径刃体5の拡径刃52はシリンダー2の縦スリット212を向くように配置され、縦スリット212に出入り自在に設けられる。そして、シリンダー2の前端部において、ピン穴211に挿通して偏芯ピン7が着脱可能に設けられ、偏芯ピン7が拡径刃52の別の長穴53に挿入される。拡径刃52の別の長穴53と、シリンダー2に固定される偏芯ピン7は、拡径刃体5の固定ピン6による軸支、シリンダー2の長穴221に対する固定ピン6の相対的な前方移動と相俟って、拡径刃体5の傾動機構を構成する。
【0023】
この傾動機構は、外装体3が鍔状ストッパー23に向かって前進した際に、長穴221に対する固定ピン6の相対的な前方への移動に応じて、傾斜する別の長穴53に対して偏芯ピン7を相対的に後方に移動させ、拡径刃52が縦スリット212から外側に突出するように拡径刃体5を傾動させる。また、外装体3を鍔状ストッパー23に向かって前進させる外力を取り除くと、圧縮バネ4の弾性復元によって、長穴53に対して固定ピン6が相対的に後方に移動し且つ別の長穴53に対して偏芯ピン7が相対的に前方に移動し、拡径刃52が縦スリット212からシリンダー2の内部に収容される。
【0024】
穿孔拡径工具1で拡径孔部を形成する際には、例えばコンクリート100に既存のドリル工具でストレート孔101を形成した後、ストレート孔101に対応する形状と大きさの穿孔拡径工具1の前部21をストレート孔101に挿入し、鍔状ストッパー23をストレート孔101の口元に当接させる(図6(a)、(b)参照)。尚、図6ではシャンク323に連結された回転駆動機の図示が省略されている。
【0025】
次いで、図6(c)に示すように、圧縮バネ4の弾性力に抗して外装体3をシリンダー2の鍔状ストッパー23に当接するまで前進する。図5(a)に外装体3の前進可能距離Lを示す。この前進移動によって、固定ピン6は長穴221の後端から前端に移動し、且つ偏芯ピン7は別の長穴53の前端から後端に移動し、固定ピン6で軸支された拡径刃体5が傾動し、拡径刃体5が縦スリット212の外側に突出する。この状態で穿孔拡径工具1を回動させることにより、拡径孔部103が形成された拡径穿孔102が形成される(図6(c)、(d)参照)。
【0026】
形成された拡径穿孔102には、拡径孔部103で拡開スリーブ201を拡開させるようにして機械定着式アンカー200を定着させたり、或いはボルト301と共に硬化接着剤302が入れられて接着式アンカー300が定着させ、定着した機械定着式アンカー200や接着式アンカー300を用いて必要な取付物の取り付けが行われる。
【0027】
本実施形態の穿孔拡径工具1によれば、拡径孔部103を形成する工具をシンプルな構造にすることができると共に、拡径刃52が破損した場合や劣化した場合等に着脱可能な固定ピン6を抜き出して現場で分解し、拡径孔部103を形成する拡径刃体5を容易に交換することができ、穿孔作業の高効率化や施工コストの低減を図ることができる。また、圧縮バネ4の復元力により、拡径孔部103を形成する作業の後に、縦スリット212から外側に突出した拡径刃52をスムーズに元の位置に復元することができる。
【0028】
また、ストレート孔101に対応する形状と大きさの前部21に軸方向に延びる縦スリット212を形成することにより、拡径孔部103を形成する際のコンクリート等の切粉が拡径刃体5とシリンダー2との間に目詰まりすることを防止できる。また、鍔状ストッパー23よって外装体3側に拡径孔部103を形成する際の切粉が入り込むことを防止することができる。また、鍔状ストッパー23と鍔状ストッパー23の前側の縦スリット212を設けることにより、拡径孔部103を形成する作業の後に工具に付着した切粉の清掃を行いやすくすることができる。
【0029】
また、傾動機構を拡径刃52の別の長穴53と、偏芯ピン7と、拡径刃体5の固定ピン6による軸支、シリンダー2の長穴221に対する固定ピン6の移動機構で構成することにより、拡径刃52が破損した場合や劣化した場合等に着脱可能な固定ピン6と偏芯ピン7を抜き出して現場で分解し、拡径孔部103を形成する拡径刃体5をより一層容易に交換することができる。更に、拡径刃52を縦スリット212で出し入れする動作を、より簡単な構造で正確に且つ安定して行うことができる。
【0030】
また、縦スリット212と周方向の異なる位置においてシリンダー2の前部21の外周面に軸方向に延びる縦溝213を形成することにより、拡径孔部103を形成する作業で発生するコンクリート等の切粉を縦溝213に導入することが可能となり、切粉が拡径刃体5とシリンダー2との間に目詰まりすることをより確実に防止できる。
【0031】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や下記の更なる変形例も含まれる。
【0032】
例えば本発明の穿孔拡径工具における傾動機構は、長穴に対する固定ピンの相対的な前方への移動に応じて、拡径刃が縦スリットから外側に突出するように拡径刃体を傾動させる適宜の傾動機構とすることが可能である。例えば上記実施形態の拡径刃52に別の長穴53を形成する構成に代え、拡径刃体5の基体51に拡径刃52の傾斜と同じ方向に傾斜する別の長穴を形成し、この別の長穴に、シリンダー2の前部21のピン穴に挿通される偏芯ピンを挿通するようにして傾動機構を構成してもよい。
【0033】
また、固定ピン6、偏心ピン7は図示例の形状に限定されるものではなく、特に固定ピン6は、ストレート101に挿入される部位に設けられるものではなく拡径刃体5を根元で支持する為に大きな荷重がかかる部位でもあるところから、外装体3に対して径方向に突出するボルト状のものとして、強度と交換の容易性を高めても良い。
【0034】
また、上記実施形態における外装体3は、カップリング31とアタッチメント32をネジ連結により固着して構成することにより回転駆動工具のチャック形式に応じてSDS形状或いは六角軸形状のシャンク323に付け替えることが出来るようにしたが、本発明の穿孔拡径工具における外装体は、後側にシャンクが設けられ、前側にシリンダーの後部が内挿される略有底円筒状の収容凹部が形成されたものであれば適宜であり、例えば一体的な部材で外装体を構成してもよい。
【0035】
また、本発明の穿孔拡径工具におけるシリンダーの内部空間の形状は、拡径刃体を傾動可能な形状であれば適宜であり、例えば拡径刃体の全体が略細長板状の形状である場合には、この拡径刃体の幅よりも若干幅が大きい凹溝状の内部空間としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えばコンクリートにアンカー取付用の拡径孔部が形成された穿孔を形成する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…穿孔拡径工具 2…シリンダー 21…前部 211…偏芯ピン挿通用のピン穴 212…縦スリット 213…縦溝 22…後部 221…長穴 23…鍔状ストッパー 3…外装体 31…カップリング 311…収容凹部 312…段差面 313…小径部 314…固定ピン挿通用のピン穴 315…雌ねじ部 32…アタッチメント 321…基体 322…雄ねじ部 323…シャンク 4…圧縮バネ 5…拡径刃体 51…基体 52…拡径刃 53…別の長穴 54…固定ピン挿通用のピン穴 6…固定ピン 7…偏芯ピン L…外装体の前進可能距離 100…コンクリート 101…ストレート孔 102…拡径穿孔 103…拡径孔部 200…機械定着式アンカー 201…拡開スリーブ 300…接着式アンカー 301…ボルト 302…硬化接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7