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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030718
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】部品実装システムおよび部品実装方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135994
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】北 貴之
(72)【発明者】
【氏名】永冶 利彦
(72)【発明者】
【氏名】古市 聖
(72)【発明者】
【氏名】木原 正宏
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353CC04
5E353CC13
5E353CC22
5E353EE26
5E353EE62
5E353JJ02
5E353JJ28
5E353KK01
5E353KK11
5E353LL02
5E353QQ05
5E353QQ08
5E353QQ09
(57)【要約】
【課題】部品実装装置の異常を適切に管理することができる部品実装システムおよび部品実装方法を提供する。
【解決手段】部品実装方法は、基板に実装された部品の位置ずれ情報を含む基板検査情報に基づいて、部品を基板に実装する際の補正値を算出し、補正値に基づいて部品を基板へ実装し、基板検査情報に基づいて、位置ずれ情報に関する管理範囲を設定し(ST6)、位置ずれ情報と管理範囲とに基づいて、部品の実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する(ST7)。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装された部品の位置ずれ情報を少なくとも含む基板検査情報に基づいて、前記部品を前記基板に実装する際の補正値を算出する補正値算出部と、
前記補正値に基づいて前記部品を前記基板に実装する部品実装部と、
前記基板検査情報に基づいて、前記位置ずれ情報に関する管理範囲を設定する設定部と、
前記位置ずれ情報と前記管理範囲とに基づいて、前記部品の実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する判断部と、を備えた、部品実装システム。
【請求項2】
前記基板検査情報に基づいて、前記部品実装部による実装時の実装精度を表す評価値を算出する算出部をさらに備え、
前記設定部は、前記評価値が所定値以上となった後に取得された前記基板検査情報に基づいて、前記管理範囲を設定する、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記部品実装部の実装作業に関する構成要素毎に、前記基板検査情報に基づいて前記評価値を算出する、請求項2に記載の部品実装システム。
【請求項4】
前記設定部は、前記構成要素毎の前記評価値の全てが前記所定値以上となった後に取得された前記基板検査情報に基づいて前記管理範囲を設定する、請求項3に記載の部品実装システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記部品の電極のサイズに基づいて前記評価値を算出する、請求項2から4のいずれか1項に記載の部品実装システム。
【請求項6】
前記部品実装部は、複数の種類の部品を保持するために用いられるノズルを有し、
前記算出部は、前記複数の種類の部品の中で前記電極のサイズが最も小さい部品に基づいて、前記ノズルの前記評価値を算出する、請求項5に記載の部品実装システム。
【請求項7】
前記評価値は、前記電極のサイズと、前記位置ずれ情報に関する標準偏差とに基づいて算出される工程能力指数である、請求項5または6に記載の部品実装システム。
【請求項8】
前記所定値は、前記実装精度が良好と判断される水準の値である、請求項2から7のいずれか1項に記載の部品実装システム。
【請求項9】
前記設定部は、前記位置ずれ情報に基づく平均値と標準偏差を少なくとも含む統計量に基づいて前記管理範囲を設定する、請求項1から8のいずれか1項に記載の部品実装システム。
【請求項10】
前記判断部は、前記管理範囲内における前記統計量に基づいて前記予兆の有無を判断する、請求項9に記載の部品実装システム。
【請求項11】
前記予兆があると判断された場合に、前記予兆の検知を報知する報知部をさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の部品実装システム。
【請求項12】
前記部品実装部の実装作業に関連する状態を検査するセンサをさらに備え、
前記予兆があると判断された場合に、前記センサが前記状態を検査する、請求項1から11のいずれか1項に記載の部品実装システム。
【請求項13】
基板に実装された部品の位置ずれ情報を少なくとも含む基板検査情報に基づいて、前記部品を前記基板に実装する際の補正値を算出し、
前記補正値に基づいて前記部品を前記基板へ実装し、
前記基板検査情報に基づいて、前記位置ずれ情報に関する管理範囲を設定し、
前記位置ずれ情報と前記管理範囲とに基づいて、前記部品の実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する、部品実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を実装する部品実装システムおよび部品実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装する部品実装システムとして、部品実装装置が基板に実装した部品の位置ずれなどの実装状態を検査する検査装置を備え、検査装置の検査結果に基づいて、部品実装装置の状態の変動を管理するものが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のシステムは、検査装置の検査結果を統計処理し、実装状態の分散値が所定の対処判定範囲を外れると、部品実装装置において較正処理が実行されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/004733号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、対処判定範囲は管理者が経験的に決めているため必ずしも最適な範囲がされる保証はなく、また、対処判定範囲内での部品実装装置の状態の変動を検知することもできないため、異常の予兆を捉えて適切に部品実装装置を管理するには更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、部品実装装置の異常を適切に管理することができる部品実装システムおよび部品実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品実装システムは、基板に実装された部品の位置ずれ情報を少なくとも含む基板検査情報に基づいて、前記部品を前記基板に実装する際の補正値を算出する補正値算出部と、前記補正値に基づいて前記部品を前記基板に実装する部品実装部と、前記基板検査情報に基づいて、前記位置ずれ情報に関する管理範囲を設定する設定部と、前記位置ずれ情報と前記管理範囲とに基づいて、前記部品の実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する判断部と、を備えた。
【0007】
本発明の部品実装方法は、基板に実装された部品の位置ずれ情報を少なくとも含む基板検査情報に基づいて、前記部品を前記基板に実装する際の補正値を算出し、前記補正値に基づいて前記部品を前記基板へ実装し、前記基板検査情報に基づいて、前記位置ずれ情報に関する管理範囲を設定し、前記位置ずれ情報と前記管理範囲とに基づいて、前記部品の実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品実装装置の異常を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
図2】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装装置の要部の構成を示す平面図
図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置の要部の構成を示す側面図
図4】本発明の一実施の形態の部品実装装置の実装ヘッドおよび部品供給部の要部の構成説明図
図5】本発明の一実施の形態の部品実装システムの制御系の構成を示すブロック図
図6】本発明の一実施の形態の検査装置において算出される部品の位置ずれ量の説明図
図7】本発明の一実施の形態の部品実装装置において基板に実装される部品の形状の例を示す(a)平面図(b)側面図
図8】本発明の一実施の形態の部品実装システムにおいて算出される(a)位置ずれ量の標準偏差と基準幅の関係の説明図(b)管理範囲の説明図
図9】本発明の一実施の形態の部品実装システムにおける部品実装方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、管理コンピュータ、部品実装装置、検査装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図2、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸として、基板搬送方向のX軸(図2における左右方向)、基板搬送方向に直交するY軸(図2における上下方向)が示される。図3、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ軸(図3における上下方向)が示される。図4、及び後述する一部では、Z軸を回転軸とする回転の方向であるθ方向が示される。
【0011】
まず図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、基板に部品を実装して実装基板を生産する機能を有する。部品実装システム1は、半田印刷装置M1、部品実装装置M2,M3および検査装置M4を備えている。これらの装置は通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。なお、部品実装システム1が備える部品実装装置M2,M3は2台に限定されることはなく、1台でも3台以上でも良い。
【0012】
半田印刷装置M1は、実装対象の基板に部品接合用のクリーム半田をスクリーン印刷する。部品実装装置M2,M3は、部品接合用のクリーム半田が印刷された基板6に部品実装部12が部品供給部7から部品を取り出して移送搭載する部品実装動作を行う(図2参照)。検査装置M4は、部品実装装置M2,M3によって部品が実装された基板6における部品の実装状態を検査カメラ32(図5参照)で検査して、部品の正規位置からの位置ずれ状態などを検出する。管理コンピュータ3は、ライン管理機能と併せて、検査装置M4によって取得された部品の位置ずれ情報に基づいて管理範囲を設定し、部品実装装置M2,M3の異常の予兆を検知する機能を有している。
【0013】
次に図2図3を参照して、部品実装装置M2,M3の構成を説明する。図3は、図2における部品実装装置M2,M3の一部を模式的に示している。部品実装装置M2,M3は、部品供給部から供給された部品を基板6に実装する実装作業を実行する機能を有する。図2において、基台4の中央には、基板搬送機構5がX軸に沿って配置されている。基板搬送機構5は、上流から搬送された基板6を、実装作業位置に搬入して位置決めして保持する。また、基板搬送機構5は、部品実装作業が完了した基板6を下流に搬出する。
【0014】
基板搬送機構5の両側方(フロント側、リア側)には、部品供給部7が配置されている。それぞれの部品供給部7には、複数のテープフィーダ8がX軸に沿って配置されている。テープフィーダ8は、部品Dを収納するポケットが形成されたキャリアテープを部品供給部7の外側から基板搬送機構5に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、部品実装部12の実装ヘッドが部品Dを吸着する部品吸着位置に部品Dを供給する。
【0015】
図2図3において、基台4上面においてX軸における両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸テーブル9がY軸に沿って配置されている。Y軸テーブル9には、同様にリニア駆動機構を備えた2基(フロント側、リア側)のビーム10が、Y軸に沿って移動自在に結合されている。ビーム10はX軸に沿って配置されている。2基のビーム10には、それぞれ実装ヘッド11がX軸に沿って移動自在に装着されている。実装ヘッド11は、部品Dを吸着して保持し、昇降可能な複数(ここでは、8つ)の吸着ユニット11aを備える。吸着ユニット11aの下端部には、それぞれ部品Dを吸着保持するノズル11bが装着されている。
【0016】
図2において、Y軸テーブル9、ビーム10を駆動することにより、実装ヘッド11は水平方向(X軸方向、Y軸方向)に移動する。これにより2つの実装ヘッド11は、それぞれ対応した部品供給部7に配置されたテープフィーダ8の部品吸着位置から部品Dをノズル11bによって吸着して取り出して、基板搬送機構5に位置決めされた基板6の実装点に装着する。すなわち、Y軸テーブル9、ビーム10および実装ヘッド11は、部品Dを基板6に実装する部品実装部12を構成する。
【0017】
図2図3において、部品供給部7と基板搬送機構5との間には、部品認識カメラ13が配置されている。部品供給部7から部品Dを取り出した実装ヘッド11が部品認識カメラ13の上方を移動する際に、部品認識カメラ13はノズル11bに保持された状態の部品Dを撮像して部品Dの保持状態を撮像する。実装ヘッド11が取り付けられたプレート10aにはヘッドカメラ14が取り付けられている。ヘッドカメラ14は、実装ヘッド11と一体的に移動する。
【0018】
実装ヘッド11が移動することにより、ヘッドカメラ14は基板搬送機構5に位置決めされた基板6の上方に移動し、基板6に設けられた基板マーク(図示省略)を撮像して基板6の位置を撮像する。また、ヘッドカメラ14はテープフィーダ8の部品吸着位置の上方に移動し、部品吸着位置付近のキャリアテープに収容された部品Dを撮像する。実装ヘッド11による基板6への部品実装動作においては、部品認識カメラ13による部品Dの撮像結果と、ヘッドカメラ14による基板位置の撮像結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
【0019】
図2において、部品認識カメラ13の横には、複数のノズル11bを収容することができるノズルストッカ15が配置されている。実装ヘッド11がノズルストッカ15の上方に移動して、所定のノズル交換動作を行うことで、吸着ユニット11aに装着されているノズル11bをノズルストッカ15に収容し、ノズルストッカ15に収容されていたノズル11bを吸着ユニット11aに装着することができる。すなわち、吸着ユニット11aに装着するノズル11bを自動で交換することができる。各ノズル11bには固有の識別番号が付されており、ノズル11bがいずれの実装ヘッド11のいずれの吸着ユニット11aに装着されているか、または、いずれのノズルストッカ15のいずれの位置に収容されているかが管理される。
【0020】
部品実装装置M2,M3の前側と後側で作業者が作業する位置には、作業者が操作するタッチパネル16がそれぞれ設置されている。タッチパネル16は、その表示部に各種情報を表示し、また表示部に表示される操作ボタンなどを使って作業者がデータ入力や部品実装装置M2,M3の操作を行う。
【0021】
図3において、部品供給部7にはフィーダベース17aに予め複数のテープフィーダ8が装着された状態の台車17がセットされる。フィーダベース17aには、テープフィーダ8を装着する複数のスロットが形成されている。台車17に装着されたテープフィーダ8は、装着されたスロットの位置と、部品実装装置M2,M3に装着された台車17の位置(前側、後側)に基づいて管理される。台車17には、部品Dを保持したキャリアテープ18を巻回状態で収納するテープリール19が保持されている。
【0022】
テープリール19から引き出されたキャリアテープ18は、テープフィーダ8が内蔵するテープ送り機構8aによって部品吸着位置までピッチ送りされる。テープ送り機構8aは、実装制御装置20(図5参照)からの指令に基づいて、所定のテープ送り量でキャリアテープ18をピッチ送りする。テープ送り機構8aによって部品吸着位置に供給される部品Dの位置は、ヘッドカメラ14が撮像した部品吸着位置の部品Dの撮像結果に基づき、実装制御装置20からの指令により補正される。すなわち、テープ送り機構8aは、実装制御装置20から送信される補正値分だけキャリアテープ18をテープ送りして部品Dの位置を補正した後、所定のテープ送り量でピッチ送りする。
【0023】
次に図4を参照して、実装ヘッド11の構成を説明する。実装ヘッド11は複数の吸着ユニット11aを備えており、各吸着ユニット11aは駆動機構(図示省略)を備えている。駆動機構を駆動することにより、下端部にノズル11bが装着されたシャフト11cが昇降する(矢印a)とともに、シャフト11cが回転してノズル11bがノズル軸ANを回転軸としてθ方向に回転する(矢印b)。各吸着ユニット11aには、シャフト11cの高さを計測するセンサである高さ計測部11dが配置されている。高さ計測部11dによる計測結果は、実装制御装置20に送信される。
【0024】
高さ計測部11dは、例えば、シャフト11cの高さ位置を計測するエンコーダ(図示省略)によって構成される。また、高さ計測部11dは、装着されたノズル11bが基板6などに接触したことを検出する接触検出機能も備えている。接触検出機能は、駆動機構が発生させる下降推力(トルク)を計測する推力計測部(図示省略)や、シャフト11cから伝わる圧力を計測するロードセル(図示省略)などで構成される。基板6の上方でノズル11bを下降させて、高さ計測部11dが計測したノズル11bが基板6に接触した高さに基づいて、ノズル11bの高さ位置(部品実装作業におけるノズル11bの下降量)を補正することができる。
【0025】
図4において、各吸着ユニット11aに装着されたノズル11bは、それぞれ実装制御装置20により制御される切替バルブ(図示省略)を介して真空供給部(図示省略)とエア供給部(図示省略)に連通している。切替バルブを真空供給部側に切り替えることで、ノズル11bの先端に真空吸引力が発生する。また、切替バルブをエア供給部側に切り替えることで、ノズル11bの先端からエアが噴出される。部品Dを保持する際には、切替バルブが真空供給部側に切り替えられて、ノズル11bに真空吸引力が供給される。保持している部品Dをノズル11bから離す時や、ノズル11b内に溜まった異物を取り除く時には、切替バルブがエア供給部側に切り替えられて、ノズル11bにエアが供給される。
【0026】
各吸着ユニット11aには、ノズル11bから吸引されるエアの量を計測するセンサである流量計11eが配置されている。流量計11eによる計測結果は、実装制御装置20に送信される。ノズル11bが部品Dを保持する動作を行った後でもエアの流入が止まらないことを流量計11eが検知すると、ノズル11bが部品Dを正常保持できなかった吸着ミス、または、部品Dを落としてしまう部品落下が発生したと判断される。また、ノズル11bが部品Dを保持していない状態で切替バルブを真空供給部側に切り替えて、流量計11eでエアの流入量を計測することにより、ノズル11bへの異物の詰まりが検出される。すなわち、エアの流量が所定よりも少ない場合は、ノズル11bまたはフィルタに異物が詰まったと判断される。
【0027】
次に図5を参照して、部品実装システム1の制御系の構成を説明する。ここでは、部品実装システム1が有する機能のうち、基板6に実装された部品Dの位置ずれ情報から部品実装装置M2,M3の異常を管理する機能を中心に説明する。管理コンピュータ3、部品実装装置M2、M3および検査装置M4は、通信ネットワーク2を介して相互に接続されている。部品実装装置M2、M3は、実装制御装置20、基板搬送機構5、テープフィーダ8、部品実装部12、部品認識カメラ13、ヘッドカメラ14、タッチパネル16を備えている。実装制御装置20は、実装記憶部21、実装制御部22、状態検査制御部23、実装通信部24を備えている。
【0028】
実装通信部24は、通信ネットワーク2を介して検査装置M4、管理コンピュータ3との間でデータの送受信を行う。実装記憶部21は記憶装置であり、実装データ21a、補正値情報21bなどが記憶されている。実装データ21aには、実装基板の生産機種名(基板名)、基板6に実装される部品Dの種類(部品名)、実装位置(XY座標)、実装方向(θ方向)、部品Dを供給するテープフィーダ8の装着位置、ノズル11bの装着位置などの情報が含まれている。補正値情報21bには、検査装置M4が基板6に実装された部品Dを撮像して算出した部品Dを基板6に実装する際の補正値が、検査装置M4から送信されて記憶されている。
【0029】
図5において、実装制御部22は、実装データ21aに含まれる実装位置や実装方向、補正値情報21bに含まれる補正値などの情報に基づいて、テープフィーダ8、部品実装部12、部品認識カメラ13、ヘッドカメラ14を制御して、部品Dを基板6に実装させる。これにより、部品実装部12は、補正値情報21bに含まれる補正値、部品認識カメラ13が撮像したノズル11bが保持する部品Dの位置に基づいて、実装ヘッド11の位置を補正して部品Dを基板6に実装する。
【0030】
図5において、検査装置M4は、検査制御装置30、基板搬送機構31、検査カメラ32、検査カメラ移動機構33を備えている。検査制御装置30は、検査記憶部34、検査制御部35、認識処理部36、補正値算出部37、検査通信部38を備えている。検査通信部38は、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M2,M3、管理コンピュータ3との間でデータの送受信を行う。検査記憶部34は記憶装置であり、検査データ34aなどが記憶されている。検査データ34aは、実装基板の生産機種名(基板名)、基板6に実装された部品の種類(部品名)、実装位置(XY座標)、実装方向(θ方向)、不良判定値などが含まれている。
【0031】
検査制御部35は、基板搬送機構31を制御して、上流の部品実装装置M3から搬送された実装済みの基板6を検査作業位置に搬入させて位置決めして保持させ、検査作業が完了した基板6を下流に搬出させる。また、検査制御部35は、検査データ34aに基づいて、検査カメラ移動機構33を制御して、検査カメラ32を検査作業位置に保持された基板6の実装位置の上方に順に移動させ、検査カメラ32で基板6に実装された部品Dを撮像させる。
【0032】
図5において、認識処理部36は、検査カメラ32による撮像画像を認識処理して、基板6に実装された部品Dの正規の実装位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ(図6参照)を算出する。また、認識処理部36は、算出した位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθが検査データ34aに含まれる不良判定値を超えると当該部品Dを実装不良と判断する。また、認識処理部36は、基板6に実装された部品Dの位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)と実装不良か否かの判定結果を含む基板検査情報41bを基板6毎に作成し、管理コンピュータ3に送信する。管理コンピュータ3の管理処理装置40は、受信した基板検査情報41bを管理記憶部41に記憶させる。
【0033】
ここで図6を参照して、認識処理部36による、基板6に実装された部品Dの正規の実装位置Nからの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθの算出方法の一例について説明する。検査制御部35は、検査カメラ32の撮像中心が部品Dの正規の実装位置Nと一致する位置で基板6に実装された部品Dを撮像させる。認識処理部36は、撮像画像を認識処理することで、実装された部品Dの中心位置Cを検出する。そして、認識処理部36は、中心位置Cと実装位置Nの差からX軸方向の位置ずれ量ΔXとY軸方向の位置ずれ量ΔYを算出する。さらに、認識処理部36は、部品Dのθ方向の傾きを位置ずれ量Δθとして算出する。
【0034】
図5において、補正値算出部37は、認識処理部36によって算出された部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθに基づいて、部品実装装置M2,M3が部品Dを基板6に実装する際の補正値を算出する。また、補正値算出部37は、算出した補正値を含む補正値情報21bを作成し、部品実装装置M2,M3に送信する。部品実装装置M2,M3の実装制御装置20は、受信した補正値情報21bを実装記憶部21に記憶させる。このように、補正値算出部37は、基板6に実装された部品Dの位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)を少なくとも含む基板検査情報41bに基づいて、部品Dを基板6に実装する際の補正値を算出する。
【0035】
図5において、管理コンピュータ3の管理処理装置40は、管理記憶部41、算出部42、設定部43、判断部44、入力部45、表示部46、管理通信部47を備えている。入力部45は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部46は液晶パネルなどの表示装置であり、入力部45による操作のための操作画面などの各種画面などの各種情報を表示する。管理通信部47は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M2,M3、検査装置M4との間で信号、データの授受を行う。
【0036】
管理記憶部41は記憶装置であり、生産データ41a、基板検査情報41b、評価値情報41c、管理範囲情報41d、判断情報41eなどを記憶する。生産データ41aには、実装基板の生産機種名(基板名)、基板6に実装される部品Dの種類(部品名)、部品Dのサイズ、実装位置(XY座標)、実装方向(θ方向)、部品Dを実装する部品実装装置M2,M3を特定する情報、部品Dを供給するテープフィーダ8の装着位置、ノズル11bの装着位置などの情報が含まれている。
【0037】
図5において、算出部42は、基板検査情報41bに基づいて、部品実装装置M2,M3の部品実装部12による実装時の実装精度を表す評価値を算出する。そして、算出部42は、算出した評価値を所定の閾値と比較することで、実装時の実装精度が所定値を超えたか否か、すなわち、生産が安定したか否かを判断する。具体的には、算出部42は、1枚分の基板検査情報41bに含まれる位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθに基づいて、標準偏差σ1を算出する。
【0038】
その際、算出部42は、構成要素である部品実装装置M2,M3毎、部品実装部12毎、実装ヘッド11毎、ノズル11b毎、テープフィーダ8毎に標準偏差σ1を算出する。なお、算出部42は、ノズル11bの部品Dの実装角度毎(0°、90°、180°、270°など)に標準偏差σ1を算出してもよい。そして、算出部42は、部品Dの電極Dbの幅W1,W2(図7参照)により算出される基準幅Tと、算出された標準偏差σ1とから、評価値として工程能力指数Cp(Cp=T/6σ1)を算出する。
【0039】
すなわち、算出部42は、構成要素毎に工程能力指数Cpを算出する。これにより、構成要素毎に生産が安定した(実装精度が所定値を超えた)ことを確認することができる。算出部42は、算出した工程能力指数Cpを評価値情報41cとして管理記憶部41に記憶させる。
【0040】
ここで図7を参照して、部品Dの電極Dbの幅W1,W2について説明する。図7では、部品Dとして、抵抗やコンデンサなどのチップ部品を例に説明する。図7(a)は部品Dを基板6に実装した状態で上方から見た平面図を、図7(b)は部品Dを基板6に実装した状態で横から見た側面図を示している。部品Dは、本体部Daの両端(左右)に電極Dbを備えている。ここで、2つの電極Dbが並ぶ方向の電極Dbの幅を幅W2、2つの電極Dbが並ぶ方向に直交する方向の電極Dbの幅を幅W1と定義する。
【0041】
2つの電極Dbが並ぶ方向が基板6のX軸方向となる向きで部品Dを基板6に実装した場合、X軸方向の位置ずれ量ΔXを評価するための基準幅T(T=(2/3)×W2)は電極Dbの幅W2により算出される。また、Y軸方向の位置ずれ量ΔYを評価するための基準幅T(T=(2/3)×W1)は電極Dbの幅W1により算出される。
【0042】
図8(a)は、部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθの確率密度、標準偏差σ1、基準幅Tの関係を模式的に表している。基準幅Tと部品Dの位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθの標準偏差σ1の関係を示す工程能力指数Cp(Cp=T/6σ1)が大きいほど、実装精度が高くて生産が安定していると判断できる。例えば、算出部42は、工程能力指数Cpが1以上(所定値)の場合、生産が安定していると判断する。すなわち、生産が安定したか否かを判断するための所定値は、実装精度が良好と判断される水準の値である。
【0043】
このように、算出部42は、部品Dの電極Dbのサイズ(幅W1,W2)に基づいて、部品実装部12の実装作業に関する構成要素毎に、基板検査情報41bに基づいて評価値(工程能力指数Cp)を算出する。すなわち、評価値は、電極Dbのサイズ(幅W1,W2)と、位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)に関する標準偏差σ1とに基づいて算出される工程能力指数Cpである。
【0044】
また、算出部42が、部品実装部12の構成要素としてノズル11b毎に評価値(工程能力指数Cp)を算出する場合は、当該ノズル11bが保持する複数の種類の部品Dの中で電極Dbのサイズ(幅W1,W2)が最も小さい部品Dに基づいて、当該ノズル11bの評価値を算出する。これによって、部品実装装置M2,M3の生産が安定したか否かを適切に判断することができる。以下、算出部42によって部品実装装置M2,M3の生産が安定したと判断された状態を「安定生産状態」と称する。
【0045】
図5において、設定部43は、基板検査情報41bに基づいて、位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)に関する管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)を設定する。管理範囲は、後述する部品実装装置M2,M3が安定生産状態を継続できていることの監視に使用される。設定部43は、部品実装装置M2,M3が実装基板の生産を開始し、算出部42によって安定生産状態に到達したことが確認された後に部品Dが実装された所定枚数分(例えば、15枚分)の基板6の基板検査情報41bに基づいて設定される。例えば、設定部43は、構成要素毎の評価値(工程能力指数Cp)の全てが所定値以上となった後に取得された基板検査情報41bに基づいて、構成要素毎に管理範囲を設定する。
【0046】
具体的には、設定部43は、構成要素毎に所定枚数分の基板検査情報41bに含まれる位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθに基づいて、平均値μ2と標準偏差σ2を算出する。そして、設定部43は、算出した平均値μ2と標準偏差σ2から、上方管理限界UCL(UCL=μ2+3×σ2)、下方管理限界LCL(LCL=μ2-3×σ2)を算出する。すなわち、設定部43は、位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)に基づく平均値μ2と標準偏差σ2を少なくとも含む統計量に基づいて管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)を設定する。設定部43は、設定した管理範囲を管理範囲情報41dとして管理記憶部41に記憶させる。
【0047】
ここで、図8(b)を参照して、設定部43によって設定された管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)の例について説明する。この例では、平均値μ2はゼロである。すなわち、中心線CLは、位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθがゼロの位置に引かれている。そして、上方管理限界UCLは中心線CLから上方に標準偏差σ2を3倍した位置(+3σ2)に引かれ、下方管理限界LCLは中心線CLから下方に標準偏差σ2を3倍した位置(-3σ2)に引かれている。
【0048】
図5において、判断部44は、設定部43によって管理範囲が設定された後に部品実装装置M2,M3によって部品Dが実装された基板6の基板検査情報41bに基づいて、部品実装装置M2,M3が安定生産状態を継続しているか否かを判断する。具体的には、判断部44は、1枚分の基板検査情報41bに含まれる構成要素毎の位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθが5個以上ある場合は、基板6毎に5個のデータをランダムに抽出して平均値μ3を算出する。また、判断部44は、1枚分の基板検査情報41bでは5個のデータが抽出できない場合は、その前に生産された基板6の基板検査情報41bも含めたデータの中から5個のデータをランダムに抽出する。判断部44は、算出した平均値μ3を判断情報41eとして管理記憶部41に記憶させる。
【0049】
さらに、判断部44は、基板6毎に算出した複数の平均値μ3と管理範囲に基づいて、部品実装装置M2,M3が安定生産状態を継続しているか否かを判断する。すなわち、判断部44は、部品実装装置M2,M3による実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する。判断部44による異常の予兆の判断方法としては、例えば、シューハートの異常判定が使用できる。シューハートの異常判定では、平均値μ3が上方管理限界UCLまたは下方管理限界LCLを超える、中心線CLの一方側に連続して平均値μ3が並ぶ、平均値μ3が連続して増加または減少する傾向が現れる、などの状況を検出すると、異常と判定される。
【0050】
このように、判断部44は、位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)と管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)とに基づいて、部品実装装置M2,M3による部品Dの実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する。なお、上記は異常の予兆の判断として5個の位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθの平均値μ3を用いる方法で説明したが、異常の予兆の判断方法は、これに限定されることはない。例えば、5個の位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθの最大値と最小値の差であるレンジRを用いて判断する方法を用いてもよい。その場合、設定部43はレンジRに関する管理範囲を設定し、判断部44は基板6毎にレンジRを算出して異常の予兆の有無を判断する。
【0051】
このように、設定部43は、位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)に基づく平均値μ2と標準偏差σ2を少なくとも含む統計量に基づいて管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)を設定する。そして、判断部44は、管理範囲内における統計量(平均値μ3、レンジR)に基づいて異常の予兆の有無を判断する。これにより、統計量が管理範囲を越えて部品実装装置M2,M3が不良となって停止等する前に、安定生産状態から異常状態に移行する予兆を検知することができる。さらに、判断部44は、構成要素毎に不良となる可能性がある構成要素を検知するため、その後のメンテナンス計画の立案などの処置を適切に行うことができる。
【0052】
図5において、判断部44は、異常の予兆があると判断すると、異常の予兆が検知された旨と検知された構成要素を特定する情報を管理コンピュータ3の表示部46に表示させる。なお、判断部44は、異常の予兆が検知された構成要素を有する部品実装装置M2,M3のタッチパネル16に、その旨等を表示させるようにしてもよい。このように、表示部46とタッチパネル16は、予兆があると判断された場合に、異常の予兆の検知を報知する報知部である。
【0053】
また、判断部44は、異常の予兆が検知された構成要素を有する部品実装装置M2,M3の実装制御装置20に、当該構成要素を特定する情報を送信する。情報を受信した部品実装装置M2,M3の状態検査制御部23は、部品実装装置M2,M3の各部とセンサ類を制御し、当該構成要素の状態を検査して必要な処置を実行させる(自動チェック)。
【0054】
例えば、ノズル11b(構成要素)の異常の予兆が検知された場合、状態検査制御部23は、部品認識カメラ13で当該ノズル11bの先端を撮像させて、ノズル先端への異物の付着を確認する。そして、状態検査制御部23は、ノズル先端への異物の付着を確認すると、当該ノズル11bをノズルストッカ15に収容されているノズル11bと交換させる。なお、交換する適当なノズル11bが部品実装装置M2,M3に無い場合は、実装基板の生産機種を変更する段取り替え作業等において、手動による当該ノズル11bの清掃や他のノズル11bとの交換等が行われる。
【0055】
また、ノズル11b(構成要素)の異常の予兆が検知された場合、状態検査制御部23は、当該ノズル11bからエアを吸引させて流量計11eで吸引されるエアの量を計測させる。そして、状態検査制御部23は、吸引されるエアの量が所定よりも少ない場合は当該ノズル11bが装着されている吸着ユニット11aのフィルタに異物が溜まっている(フィルタ詰まり)と判断する。そして、状態検査制御部23は、切替バルブをエア供給部側に切り替えて当該ノズル11bからエアを噴出させてフィルタの詰まりを解消する処置を実行させる。なお、フィルタの詰まりが解消できない場合は、段取り替え作業等において、手動によるフィルタの交換などが行われる。
【0056】
また、ノズル11b(構成要素)の異常の予兆が検知された場合、状態検査制御部23は、高さ計測部11dを使用して当該ノズル11bの高さ位置を計測させて、高さ位置を補正させる。また、テープフィーダ8の異常の予兆が検知された場合、状態検査制御部23は、ヘッドカメラ14に当該テープフィーダ8の部品吸着位置に供給されている部品Dを撮像させて、テープ送り機構8aのテープ送り位置を補正させる。なお、テープ送り位置の補正ができない場合は、段取り替え作業等において、当該テープフィーダ8を他のテープフィーダ8と交換する作業等が行われる。
【0057】
このように、流量計11e、高さ計測部11d、部品認識カメラ13、ヘッドカメラ14は、部品実装部12の実装作業に関連する状態を検査するセンサSである。そして、異常の予兆があると判断された場合に、センサSが部品実装部12の実装作業に関連する状態を自動で検査する。そして、状態検査制御部23は、可能な場合は自動で異常の予兆を解消する処置を実行させる。また、自動で異常の予兆を解消できない場合は、次の段取り替え作業等の機会に、作業者による処置が実行される。
【0058】
次に図9のフローに沿って、部品実装システム1が実装基板を生産しながら部品実装装置M2,M3の異常の予兆を検知する部品実装方法について説明する。まず、部品実装システム1において実装基板の生産が開始されると(ST1)、部品実装装置M2,M3では検査装置M4で算出された補正値に基づいて基板6に部品Dを実装する部品実装作業が、検査装置M4では実装基板の部品Dの位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)を取得する基板検査作業が継続して実行される。
【0059】
管理コンピュータ3が検査装置M4から1枚目の基板6の部品Dの位置ずれ情報を含む基板検査情報41bを取得すると(ST2)、次いで算出部42は構成要素毎に部品実装部12による実装精度を表す評価値(工程能力指数Cp)を算出する(ST3:評価値算出工程)。次いで算出部42は、構成要素毎に算出された評価値の全てが所定値以上(工程能力指数Cp>1)となったか否かを判断する(ST4:安定生産判断工程)。評価値が所定値以上となっていない、すなわち、部品実装装置M2,M3が安定生産状態には到達していないと判断されると(ST4においてNo)、(ST2)に戻って、2枚目の基板6の基板検査情報41bに基づいて、評価値算出工程(ST3)、安定生産判断工程(ST4)が実行される。
【0060】
図9において、部品実装装置M2,M3が安定生産状態に到達したと判断されると(ST4においてYes)、管理コンピュータ3は、安定生産状態を確認した後の所定枚数分(例えば、15枚分)の基板検査情報41bを取得する(ST5)。次いで設定部43は、所定枚数分の基板検査情報41bに基づいて、位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)に関する管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)を設定する(ST6:管理範囲設定工程)。
【0061】
管理範囲が設定されると、判断部44は、管理範囲の設定後に取得した基板検査情報41bの位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)と設定された管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)とに基づいて、部品Dの実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する(ST7:異常予兆判断工程)。異常の予兆が検知されない場合(ST7においてNo)、実装基板の生産が終了するまで(ST8においてNo)、異常予兆判断工程(ST7)が継続して実行される。
【0062】
図9において、異常の予兆が検知されると(ST7においてYes)、判断部44は、管理コンピュータ3の表示部46または異常の予兆が検知された部品実装装置M2,M3のタッチパネル16に異常の予兆を検知した旨を報知させる(ST9:予兆報知工程)。また、判断部44は、異常の予兆が検知された構成要素の情報などを異常の予兆が検知された部品実装装置M2,M3に通知する。
【0063】
通知を受けた部品実装装置M2,M3の状態検査制御部23は、異常の予兆が検知された構成要素に対応する自動チェックを実行させ、可能な処置を実行させる(ST10:自動チェック工程)。その後、状態検査制御部23は、管理コンピュータ3に自動チェックとその後の処置の内容を報告する。なお、管理コンピュータ3では、予兆報知工程(ST9)と自動チェック工程(ST10)が実行されている間も、異常予兆判断工程(ST7)が継続して実行される。
【0064】
このように、本実施の形態の部品実装システム1における部品実装方法は、検査装置M4では、基板6に実装された部品Dの位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)を含む基板検査情報41bに基づいて、部品実装装置M2,M3が部品Dを基板6に実装する際の補正値が算出される。また、部品実装装置M2,M3では、補正値に基づいて部品Dが基板6へ実装される。そして、管理コンピュータ3では、基板検査情報41bに基づいて、位置ずれ情報に関する管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)が設定され(ST6)、位置ずれ情報と管理範囲とに基づいて、部品の実装作業に関する異常の予兆の有無が判断される(ST7)。これによって、部品実装装置M2,M3の異常を適切に管理することができる。
【0065】
上記説明したように、本実施の形態の部品実装システム1は、基板6に実装された部品Dの位置ずれ情報(位置ずれ量ΔX,ΔY,Δθ)を少なくとも含む基板検査情報41bに基づいて、部品Dを基板6に実装する際の補正値を算出する補正値算出部37と、補正値に基づいて部品Dを基板6に実装する部品実装部12と、基板検査情報41bに基づいて、位置ずれ情報に関する管理範囲(上方管理限界UCL、下方管理限界LCL)を設定する設定部43と、位置ずれ情報と管理範囲とに基づいて、部品Dの実装作業に関する異常の予兆の有無を判断する判断部44と、を備えている。これによって、部品実装装置M2,M3の異常を適切に管理することができる。
【0066】
なお、上記の実施の形態では、検査装置M4が補正値を算出する構成であったが、本実施の形態の部品実装システム1は、この構成に限定されることはない。例えば、管理コンピュータ3が補正値算出部37を備え、基板検査情報41bに基づいて補正値を算出して部品実装装置M2,M3に送信するようにしてもよい。また、部品実装装置M2,M3がそれぞれ補正値算出部37を備え、検査装置M4から基板検査情報41bを取得して補正値を算出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の部品実装システムおよび部品実装方法は、部品実装装置の異常を適切に管理することができることができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 部品実装システム
3 管理コンピュータ
6 基板
8 テープフィーダ(構成要素)
11 実装ヘッド(構成要素)
11b ノズル(構成要素)
11d 高さ計測部(センサ)
11e 流量計(センサ)
12 部品実装部
13 部品認識カメラ(センサ)
14 ヘッドカメラ(センサ)
D 部品
Db 電極
LCL 下方管理限界(管理範囲)
M2,M3 部品実装装置(構成要素)
S センサ
UCL 上方管理限界(管理範囲)
W1,W2 幅(サイズ)
ΔX,ΔY,Δθ 位置ずれ量(位置ずれ情報)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9