(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030801
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】立方晶窒化硼素焼結体及び被覆立方晶窒化硼素焼結体
(51)【国際特許分類】
C04B 35/5831 20060101AFI20230301BHJP
C04B 35/56 20060101ALI20230301BHJP
C04B 41/87 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C04B35/5831
C04B35/56 110
C04B41/87 N
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136136
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】福島 雄一郎
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができる立方晶窒化硼素焼結体を提供することを目的とする。
【解決手段】立方晶窒化硼素と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、立方晶窒化硼素の含有量は、40体積%以上80体積%以下であり、結合相の含有量は、20体積%以上60体積%以下であり、立方晶窒化硼素の平均粒径は、0.5μm以上4.0μm以下であり、結合相は、TiC及びTiB2を含み、AlN及び/又はAl2O3を実質的に含まず、結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が44.2°以上であり、結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が42.1°未満である、立方晶窒化硼素焼結体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶窒化硼素と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、
前記立方晶窒化硼素の含有量は、40体積%以上80体積%以下であり、
前記結合相の含有量は、20体積%以上60体積%以下であり、
前記立方晶窒化硼素の平均粒径は、0.5μm以上4.0μm以下であり、
前記結合相は、TiC及びTiB2を含み、AlN及び/又はAl2O3を実質的に含まず、
前記結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が44.2°以上であり、
前記結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が42.1°未満である、立方晶窒化硼素焼結体。
【請求項2】
前記立方晶窒化硼素の(111)面のX線回折強度をI1、前記結合相中のTiB2の(101)面のX線回折強度をI2としたとき、I2/I1は、0.10以上0.55以下である、請求項1に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の立方晶窒化硼素焼結体と、該立方晶窒化硼素焼結体の表面に形成された被覆層と、を備える、被覆立方晶窒化硼素焼結体。
【請求項4】
前記被覆層全体の平均厚さが、0.5μm以上6.0μm以下である、請求項3に記載の被覆立方晶窒化硼素焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立方晶窒化硼素焼結体及び被覆立方晶窒化硼素焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素(以下「cBN」とも記す)と結合相とを含む。一般的に、結合相の材料の一部には、Alが使用される。結合相の材料にAlが使用されるのは、Alが酸化することによって原料粉の表面に吸着している酸素が除去され、焼結反応を促進することができるためである。
【0003】
従来の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相の材料として、Ti含有化合物(以下「Ti化合物」とも記す)及びAl含有化合物(以下「Al化合物」とも記す)を含む材料を用いている。そのため、従来の立方晶窒化硼素焼結体の焼結過程では、Al2O3、AlN、及びTiB2が反応により生成している。
【0004】
鋳鉄の切削加工において長寿命化を図った立方晶窒化硼素焼結体工具として、例えば、特許文献1には、立方晶窒化硼素粒子と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体を少なくとも刃先に有する立方晶窒化硼素焼結体工具であって、前記立方晶窒化硼素焼結体は、前記立方晶窒化硼素粒子を40~70体積%含み、前記結合相は、第1成分と第2成分とを含み、前記第1成分は、TiCであり、前記第2成分は、TiB2およびAlB2のいずれか一方または両方であり、前記第1成分の(200)面のX線回折強度をI1、前記第2成分の(101)面のX線回折強度をI2とする場合、前記I1は、前記立方晶窒化硼素焼結体において前記立方晶窒化硼素粒子を除く全成分のX線回折強度中最大であり、かつ0.01≦I2/I1≦0.1を満たす、立方晶窒化硼素焼結体工具について記載されている。
【0005】
また、特に鋳鉄の仕上加工において製品の寸法精度と面粗度を改善できる切削工具用cBN基超高圧焼結材料として、例えば、特許文献2には、平均粒径:0.5~5μmを有する炭化チタン:40~60%、平均粒径:0.5~5μmを有する立方晶窒化硼素および不純物:残り、からなる組成(以上、容量%)を有し、かつ、前記炭化チタンと、前記立方晶窒化硼素との平均粒径比が、相互に0.5~2.0の範囲内にあることを特徴とする、切削工具用立方晶窒化硼素超高圧焼結材料について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/053375号
【特許文献2】特開昭63-201065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の切削加工は高能率化が求められており、高速化、高送り化及び深切り込み化がより顕著となっている。また、近年の切削加工では、例えば、鋳鉄の切削加工において、従来よりも工具の耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが求められている。
立方晶窒化硼素焼結体を工具として用いる際、熱伝導性に劣るAl2O3や機械的強度に劣るAlNは、工具の耐摩耗性を低下させる原因となりやすい。特に、これらのAl化合物は、刃先温度が高くなる高速切削時の耐摩耗性に大きな影響を与える。
【0008】
このような背景において、特許文献1に記載の立方晶窒化硼素焼結体工具は、結合相を構成するアルミニウム化合物相を高い割合で含み、高速加工における耐摩耗性が未だ十分ではない。また、特許文献2に記載の切削工具用立方晶窒化硼素超高圧焼結材料は、Al化合物を含まない立方晶窒化硼素焼結体が提唱されているが、焼結前原料粉の脱酸素処理が行われていない。これでは立方晶窒化硼素原料粉表面の酸化物(B2O3)が残留し、焼結体中にTiB2+TiO(固溶)という形で残存する。そして、当該焼結体は、結合相が不定比化合物を含んでいるために反応摩耗を生じやすく、耐摩耗性の点で、改善の余地がある。
【0009】
本発明は、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができる立方晶窒化硼素焼結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、工具寿命の延長について研究を重ねたところ、立方晶窒化硼素焼結体を特定の構成にすると、その耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが可能となり、その結果、工具寿命を延長することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]
立方晶窒化硼素と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、
前記立方晶窒化硼素の含有量は、40体積%以上80体積%以下であり、
前記結合相の含有量は、20体積%以上60体積%以下であり、
前記立方晶窒化硼素の平均粒径は、0.5μm以上4.0μm以下であり、
前記結合相は、TiC及びTiB2を含み、AlN及び/又はAl2O3を実質的に含まず、
前記結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が44.2°以上であり、
前記結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が42.1°未満である、立方晶窒化硼素焼結体。
[2]
前記立方晶窒化硼素の(111)面のX線回折強度をI1、前記結合相中のTiB2の(101)面のX線回折強度をI2としたとき、I2/I1は、0.10以上0.55以下である、[1]に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[3]
[1]又は[2]に記載の立方晶窒化硼素焼結体と、該立方晶窒化硼素焼結体の表面に形成された被覆層と、を備える、被覆立方晶窒化硼素焼結体。
[4]
前記被覆層全体の平均厚さが、0.5μm以上6.0μm以下である、[3]に記載の被覆立方晶窒化硼素焼結体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができる立方晶窒化硼素焼結体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素(以下「cBN」とも記す。)と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、cBNの含有量が、40体積%以上80体積%以下であり、結合相の含有量が、20体積%以上60体積%以下であり、立方晶窒化硼素の平均粒径が、0.5μm以上4.0μm以下であり、結合相が、TiC及びTiB2を含み、AlN及び/又はAl2O3を実質的に含まず、結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が44.2°以上であり、結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が42.1°未満である。
【0015】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、このような構成とすることにより、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが可能となり、その結果、工具寿命を延長することができる。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体が、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させた工具寿命の長いものとなる要因は、詳細には明らかではないが、本発明者はその要因を下記のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。すなわち、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの含有量が40体積%以上であることにより、結合相の割合が相対的に少なくなるため、機械的強度が向上し、耐欠損性に優れる。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの含有量が80体積%以下であることにより、鉄との耐反応性が良好となるため、耐摩耗性に優れる。また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの平均粒径が0.5μm以上であることにより、熱伝導率が高くなり切削中に放熱しやすくなるため、耐反応摩耗性に優れる。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの平均粒径が4.0μm以下であることにより、結合相の厚みが小さくなるため、機械的強度が向上し、耐欠損性に優れる。また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相がTiC及びTiB2を含み、熱伝導率に劣るAl2O3及び/又は機械的強度に劣るAlNを実質的に含まないため、耐摩耗性に優れる。また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が44.2°以上であることにより、TiB2中にTiの酸化物が固溶しておらず結合相が不定比化合物を含まないため、被削材と焼結体との化学反応による耐摩耗性が優れる。また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が42.1°未満であることにより、結合相が、硬さに優れるTiCを含むことから、耐摩耗性に優れ、特に、鋳鉄の切削加工において耐摩耗性に優れる。これらの効果が相俟って、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させた工具寿命の長いものとなり、特に、鋳鉄の切削加工においてその効果が顕著に発現する。
【0016】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNと結合相とを含む。cBNの含有量は、40体積%以上80体積%以下である。結合相の含有量は、20体積%以上60体積%以下である。なお、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、cBNと結合相との合計含有量が100体積%となる。
【0017】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの含有量が40体積%以上であることにより、結合相の割合が相対的に少なくなるため、機械的強度が向上し、耐欠損性に優れる。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの含有量が80体積%以下であることにより、鉄との耐反応性が良好となるため、耐摩耗性に優れる。同様の観点から、cBNの含有量は、42体積%以上77体積%以下であることが好ましく、45体積%以上71体積%以下であることがより好ましい。
【0018】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、cBN及び結合相の含有量(体積%)は、任意の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、撮影したSEM写真を市販の画像解析ソフトで解析することで求めることができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0019】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの平均粒径が、0.5μm以上4.0μm以下である。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの平均粒径が0.5μm以上であることにより、熱伝導率が高くなり切削中に放熱しやすくなるため、耐反応摩耗性に優れる。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの平均粒径が4.0μm以下であることにより、結合相の厚みが小さくなるため、機械的強度が向上し、耐欠損性に優れる。同様の観点から、cBNの平均粒径は、0.5μm以上3.8μm以下であることが好ましい。
【0020】
なお、本実施形態において、cBNの平均粒径は、例えば、以下のように求めることができる。
立方晶窒化硼素焼結体の断面組織をSEMによって撮影する。撮影した断面組織内のcBN粒子の面積を求め、この面積と等しい面積の円の直径をcBNの粒径として求める。複数のcBN粒子の粒径の平均値を、cBNの平均粒径として求める。cBNの平均粒径は、立方晶窒化硼素焼結体の断面組織の画像から、市販の画像解析ソフトを用いて求めることができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0021】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、結合相は、TiC及びTiB2を含み、AlN及び/又はAl2O3を実質的に含まない。結合相が、TiC及びTiB2を含み、熱伝導率に劣るAl2O3及び/又は機械的強度に劣るAlNを実質的に含まないことにより、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性に優れる。
なお、本実施形態において、結合相がAlN及び/又はAl2O3を実質的に含まないとは、結合相におけるX線回折測定で、AlN及び/又はAl2O3が検出されないことを意味する。
【0022】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、結合相は、TiC及びTiB2からなることが好ましい。結合相がこのようなTi化合物からなることにより、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、特に、鋳鉄の切削加工において、一層耐摩耗性に優れる傾向にあり、また、Ti化合物がTiB2を含む場合、立方晶窒化硼素と結合相とが十分に反応しているため、耐欠損性にも優れる傾向にある。
【0023】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、立方晶窒化硼素及び結合相の含有量(体積%)は、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した立方晶窒化硼素焼結体の組織写真から、市販の画像解析ソフトで解析して求めることができる。より具体的には、立方晶窒化硼素焼結体を、その表面に対して直交する方向に鏡面研磨する。次に、SEMを用いて、鏡面研磨して現れた立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面の反射電子像を観察する。この際、SEMを用いて5,000~20,000倍に拡大した立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面を反射電子像にて観察する。SEMに付属しているエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いることにより、黒色領域を立方晶窒化硼素と、灰色領域及び白色領域を結合相と特定することができる。その後、SEMを用いて立方晶窒化硼素の上記断面の組織写真を撮影する。市販の画像解析ソフトを用い、得られた組織写真から立方晶窒化硼素及び結合相の占有面積をそれぞれ求め、その占有面積から含有量(体積%)を求める。
【0024】
ここで、立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面とは、立方晶窒化硼素焼結体の表面又は任意の断面を鏡面研磨して得られた立方晶窒化硼素焼結体の断面である。立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面を得る方法としては、例えばダイヤモンドペーストを用いて研磨する方法を挙げることができる。
【0025】
結合相の組成は、市販のX線回折装置を用いて同定することができる。例えば、株式会社リガク製のX線回折装置(製品名「RINT TTRIII」)を用いて、Cu-Kα線を用いた2θ/θ集中光学系のX線回折測定を、下記条件で測定すると、結合相の組成を同定することができる。ここで測定条件は、
出力:50kV、250mA、
入射側ソーラースリット:5°、
発散縦スリット:1/2°、
発散縦制限スリット:10mm、
散乱スリット2/3°、
受光側ソーラースリット:5°、
受光スリット:0.15mm、
BENTモノクロメータ、
受光モノクロスリット:0.8mm、
サンプリング幅:0.02°、
スキャンスピード:1°/min、
2θ測定範囲:30~90°という条件であるとよい。
なお、本実施形態において、立方晶窒化硼素及び結合相の含有量並びに結合相の組成は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が44.2°以上である。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が44.2°以上であることにより、TiB2中にTiの酸化物が固溶しておらず結合相が不定比化合物を含まないため、被削材と焼結体との化学反応による耐摩耗性が優れる。同様の観点から、結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)は、44.2°以上44.6°以下であることが好ましく、44.3°以上44.5°以下であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素の(111)面のX線回折強度をI1、前記結合相中のTiB2の(101)面のX線回折強度をI2としたとき、I2/I1は、0.10以上0.55以下であることが好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、I2/I1が0.10以上であることにより、cBNと結合相とが、焼結により十分に反応しているため、焼結体の強度が向上することに起因して、耐欠損性に優れる傾向にある。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、I2/I1が0.55以下であることにより、TiB2の割合が少なくなるため、機械的強度が向上し、耐欠損性に優れる傾向にある。同様の観点から、I2/I1は、0.11以上0.54以下であることがより好ましく、0.12以上0.53以下であることがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が42.1°未満である。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が42.1°未満であることにより、結合相が、TiN及びTiCNと比較して硬さに優れるTiCを含むことから、耐摩耗性に優れ、特に、鋳鉄の切削加工において耐摩耗性に優れる。同様の観点から、結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)は、41.7°以上42.1°未満であることが好ましく、41.8°以上42.0°以下であることがより好ましい。
【0029】
なお、本実施形態において、立方晶窒化硼素及び結合相中の各化合物のX線回折強度は、市販のX線回折装置を用いて測定することができる。例えば、X線回折強度は、株式会社リガク製のX線回折装置(製品名「RINT TTRIII」)を用いて測定することができる。測定条件の例は、以下のとおりである。
【0030】
Cu-Kα線を用いた2θ/θ集中光学系のX線回折測定
出力:50kV、250mA
入射側ソーラースリット:5°
発散縦スリット:1/2°
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:2/3°
受光側ソーラースリット:5°
受光スリット:0.15mm
BENTモノクロメータ
受光モノクロスリット:0.8mm
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:2°/min
2θ測定範囲:30~55°
【0031】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、多孔質ではないことが好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、多孔質でない場合、破壊の起点となる孔が存在せず、耐欠損性が一層優れる傾向にある。
【0032】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、不純物を不可避的に含有してもよい。不純物の例としては、特に限定されないが、例えば、原料粉末に含まれるリチウムなどが挙げられる。通常、不可避的不純物の含有量は、立方晶窒化硼素焼結体全体に対して1質量%以下である。したがって、不可避的不純物が、立方晶窒化硼素焼結体の特性値に影響を及ぼすことはほとんどない。
【0033】
本実施形態の被覆立方晶窒化硼素焼結体は、上述した立方晶窒化硼素焼結体と、該立方晶窒化硼素焼結体の表面に形成された被覆層と、を備える。
立方晶窒化硼素焼結体の表面に被覆層が形成されることによって、立方晶窒化硼素焼結体の耐摩耗性がさらに向上する。被覆層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含むことが好ましい。また、被覆層は、単層構造、又は、2層以上を含む積層構造を有してもよい。被覆層がこのような構造を有する場合、本実施形態の被覆立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性が一層向上する。
【0034】
被覆層を形成する化合物の例として、特に限定されないが、例えば、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiSiN、及び、CrAlNなどを挙げることができ、TiN、TiCN、TiAlNが好ましい。被覆層は、組成が異なる複数の層を交互に積層した構造を有してもよい。この場合、各層の平均の厚みは、例えば5nm以上500nm以下である。
【0035】
被覆層全体の平均厚さは、0.5μm以上6.0μm以下であることが好ましい。本実施形態の被覆立方晶窒化硼素焼結体は、被覆層全体の平均厚さが0.5μm以上である場合、耐摩耗性が向上する傾向があり、一方、被覆層全体の平均厚さが6.0μm以下である場合、剥離を起因とした欠損の発生を抑制することができる傾向がある。同様の観点から、被覆層全体の平均厚さは、1.0μm以上5.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
被覆層を構成する各層の厚さ及び被覆層全体の厚さは、被覆立方晶窒化硼素焼結体の断面組織から光学顕微鏡、SEM、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて測定することができる。なお、被覆立方晶窒化硼素焼結体における各層の平均厚さ及び被覆層全体の平均厚さは、金属蒸発源に対向する面の刃先から当該面の中心部に向かって50μmの位置の近傍において、3箇所以上の断面から、各層の厚さ及び被覆層全体の厚さを測定して、その平均値を計算することで求めることができる。
【0037】
また、被覆層を構成する各層の組成は、被覆立方晶窒化硼素焼結体の断面組織から、EDSや波長分散型X線分析装置(WDS)などを用いて測定することができる。
【0038】
本実施形態の被覆立方晶窒化硼素焼結体における被覆層の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、化学蒸着法や、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、スパッタ法及びイオンミキシング法などの物理蒸着法が挙げられる。その中でも、アークイオンプレーティング法は、被覆層と立方晶窒化硼素焼結体との密着性に一層優れるので、さらに好ましい。
【0039】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体又は被覆立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性及び耐欠損性に優れるため、切削工具や耐摩耗工具として使用されると好ましく、その中でも切削工具として使用されると好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体又は被覆立方晶窒化硼素焼結体は、鋳鉄用切削工具として使用されるとさらに好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体又は被覆立方晶窒化硼素焼結体を切削工具や耐摩耗工具として用いた場合、従来よりも工具寿命を延長することができる。
【0040】
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
原料粉末として、cBN粉末、TiC粉末、TiC0.8粉末、TiB2粉末、及びAl粉末を準備する。ここで、原料のcBN粉末の平均粒径を適宜調整することにより、得られる立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの平均粒径を上記特定の範囲に制御することができる。また、各原料粉末の割合を適宜調整することにより、得られる立方晶窒化硼素焼結体におけるcBN及び結合相の含有量を上記特定の範囲に制御することができる。次に、準備した原料粉末を、超硬合金製ボールと溶媒とパラフィンとともにボールミル用シリンダーに入れて混合する。ボールミルで混合した原料粉末を、例えば、以下の条件で水素還元処理を行う。
(水素還元処理条件)
雰囲気:水素ガス気流中
処理温度:600~900℃
処理時間:0.5~2時間
水素還元処理を行うことにより、原料粉末表面の酸素が除去されているため、焼結体中に酸化物が生成することを抑制することができる。また、通常、微粒cBN粉末は表面積が大きく酸化物が多いために焼結することが困難であるが、水素還元処理を行うことにより、これらを使用することが可能となる。なお、本実施形態において、原料粉末表面の酸素を除去する方法は、水素還元処理に限定されず、他の公知の方法も使用することができる。
水素還元処理した原料粉末を、グローブボックス内にて窒素雰囲気下でZr製の高融点金属カプセル内に充填し、次に、カプセルを密封し、カプセルに充填されている原料粉末を高圧で焼結させる。高圧焼結の条件は、例えば、圧力:4.0~7.0GPa、温度:1200~1500℃、焼結時間:20~60分である。
【0041】
立方晶窒化硼素の(111)面のX線回折強度をI1、前記結合相中のTiB2の(101)面のX線回折強度をI2としたときのI2/I1を上記特定の範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、原料粉末の種類や配合割合を適宜調整したり、原料粉末を焼結させる温度を適宜調整する方法が挙げられる。具体的には、原料粉末として、TiC0.8粉末を使用して、TiC0.8粉末の配合割合を大きくするほど、I2/I1が大きくなる傾向にある。また、例えば、原料粉末として、TiB2を配合すると、I2/I1が大きくなる傾向にある。また、例えば、原料粉末を焼結させる温度を高くすると、I2/I1が大きくなる傾向にある。
【0042】
また、結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)を上記特定の範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、混合した原料粉末を、上記特定の条件で水素還元処理する方法が挙げられる。具体的には、混合した原料粉末を、上記特定の条件で水素還元処理することにより、TiB2中にTiの酸化物が固溶することが抑制され、結合相中のTiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)が高くなる傾向にある。
【0043】
また、結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)を上記特定の範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、原料粉末の種類や配合割合を適宜調整する方法が挙げられる。具体的には、原料粉末として、TiC0.8粉末を使用することにより、結合相中のTiCの(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)を、上記特定の範囲に制御できる。
【0044】
また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体をレーザーカット加工機などにより所定の形状に加工して、立方晶窒化硼素焼結体を備えた切削工具又は耐摩耗工具を製造することができる。
【実施例0045】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
[原料粉末の調製]
立方晶窒化硼素(以下「cBN」とも記す)粉末、TiC粉末、TiC0.8粉末、、TiB2粉末、及びAl粉末を、以下の表1に示す比率で混合した。cBN粉末の平均粒径は、表1に示すとおりであった。また、TiC粉末、TiC0.8粉末、TiB2粉末の平均粒径は、1.0μmであった。また、Al粉末の平均粒径は、0.5μmであった。なお、原料粉末の平均粒径は、米国材料試験協会(ASTM)規格B330に記載のフィッシャー法(Fisher Sub-Sieve Sizer(FSSS))により測定した。
【0047】
【0048】
[原料粉末の混合]
原料粉末を、超硬合金製ボールとヘキサン溶媒とパラフィンとともにボールミル用のシリンダーに入れてさらに混合した。ボールミルで混合した原料粉末を、以下の条件で水素還元処理を行った。なお、比較品7については、水素還元処理を行わなかった。
(水素還元処理条件)
雰囲気:水素ガス気流中
処理温度:800℃
処理時間:1時間
水素還元処理した原料粉末(水素還元処理を行わなかった場合は混合して得られた原料粉末)を、グローブボックス内にて窒素雰囲気下でZr製の高融点金属カプセル内に充填し、その後、カプセルを密封した。なお、比較品7については、混合して得られた原料粉末を、大気中でZr製の高融点金属カプセル内に充填し、その後、カプセルを密封した。
【0049】
[高圧焼結]
その後、カプセルに充填されている原料粉末を高圧で焼結させた。高圧焼結の条件を、以下の表2に示す。
【0050】
【0051】
[SEM画像による分析]
高圧焼結によって得られた立方晶窒化硼素焼結体について、立方晶窒化硼素及び結合相の含有量(体積%)を、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した立方晶窒化硼素焼結体の組織写真から、市販の画像解析ソフトで解析して求めた。より具体的には、立方晶窒化硼素焼結体を、その表面に対して直交する方向に鏡面研磨した。次に、SEMを用いて、鏡面研磨して現れた立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面の反射電子像を観察した。この際、SEMを用いて、立方晶窒化硼素の粒子が200個以上含まれるように、1000~10000倍の範囲で選択した倍率で拡大した立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面を反射電子像にて観察した。SEMに付属しているエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いることにより、黒色領域を立方晶窒化硼素と、灰色領域及び白色領域を結合相と特定した。その後、SEMを用いて立方晶窒化硼素の上記断面の組織写真を撮影した。市販の画像解析ソフトを用い、得られた組織写真から立方晶窒化硼素及び結合相の占有面積をそれぞれ求め、その占有面積から含有量(体積%)を求めた。
ここで、立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面とは、立方晶窒化硼素焼結体の表面又は任意の断面を鏡面研磨して得られた立方晶窒化硼素焼結体の断面とした。立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面を得る方法は、ダイヤモンドペーストを用いて研磨する方法とした。
また、結合相の組成は、株式会社リガク製のX線回折装置(製品名「RINT TTRIII」)を用いて同定した。具体的には、Cu-Kα線を用いた2θ/θ集中光学系のX線回折測定を、下記条件で測定して、結合相の組成を同定した。
出力:50kV、250mA、
入射側ソーラースリット:5°、
発散縦スリット:1/2°、
発散縦制限スリット:10mm、
散乱スリット2/3°、
受光側ソーラースリット:5°、
受光スリット:0.15mm、
BENTモノクロメータ、
受光モノクロスリット:0.8mm、
サンプリング幅:0.02°、
スキャンスピード:1°/min、
2θ測定範囲:30~90°。
また、SEMで撮影した立方晶窒化硼素焼結体の組織写真の画像解析により、断面組織内のcBN粒子の面積を求め、この面積と等しい面積の円の直径をcBNの粒径とした。組織写真内に存在するcBN粒子の粒径の平均値を、cBNの平均粒径として求めた。これらの測定結果を、以下の表3に示す。
【0052】
[X線回折(XRD)による分析]
高圧焼結によって得られた立方晶窒化硼素焼結体に含まれるTi化合物及びAl化合物についてX線回折(XRD)による分析を行った。具体的には、XRDによるTi化合物の(200)面の最大のピーク位置が41.7°以上42.1°未満の場合は、Ti化合物はTiCであると見なし、同ピーク位置が42.1°以上42.4°以下の場合は、Ti化合物はTiCNであると見なし、同ピーク位置が42.4°以上42.8°以下の場合は、Ti化合物はTiNであると見なした。XRDによるTi化合物及びAl化合物の分析結果を、以下の表3に示す。
また、得られたX線回折図形から、TiB2の(101)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)、及び、Ti化合物(ただし、TiB2を除く。)の(200)面のX線回折における最大のピーク位置(2θ)を求めた。また、得られたX線回折図形から、cBNの(111)面のX線回折強度I1、及びTiB2の(101)面のX線回折強度I2を求め、それらの比(I2/I1)を算出した。なお、X線回折強度比は、ピーク高さの比によって求めた。これらの結果を、以下の表4に示す。
なお、XRD測定は、株式会社リガク製のX線回折装置(製品名「RINT TTRIII」)を使用して、Cu-Kα線を用いた2θ/θ集中光学系で行った。測定条件は、以下のとおりとした。
出力:50kV、250mA
入射側ソーラースリット:5°
発散縦スリット:1/2°
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:2/3°
受光側ソーラースリット:5°
受光スリット:0.15mm
BENTモノクロメータ
受光モノクロスリット:0.8mm
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:2°/min
2θ測定範囲:30~55°
【0053】
【0054】
【0055】
[切削工具の作製]
得られた立方晶窒化硼素焼結体を、放電加工機を用いてISO規格CNGA120408で定められたインサート形状の工具形状に合わせて切り出した。切り出した立方晶窒化硼素焼結体を、超硬合金からなる台金にろう付けによって接合した。ろう付けした工具にホーニング加工を施して、切削工具を得た。
【0056】
[切削試験]
得られた切削工具を用いて、下記の条件で切削試験を行った。
被削材:FCD450(HB160)、
被削材形状:円盤、
加工方法:端面加工、
切削速度:500m/min、
送り:0.15mm/rev、
切り込み深さ:0.15mm、
クーラント:使用(水系)、
評価項目:逃げ面摩耗又はコーナ摩耗のいずれかが0.15mmに至ったとき、あるいは欠損したときを工具寿命とし、工具寿命までの加工距離を測定した。測定結果を表5に示す。
【0057】
【0058】
表5に示す結果から分かるとおり、発明品の立方晶窒化硼素焼結体を用いた切削工具は、比較品の立方晶窒化硼素焼結体を用いた切削工具よりも耐摩耗性及び耐欠損性に優れており、工具寿命が長かった。
【0059】
(実施例2)
次に、表6に示すとおり、実施例1で得られた発明品2、発明品3、発明品6及び発明品7の立方晶窒化硼素焼結体の表面に、イオンボンバードメント処理を施した後、アークイオンプレーティング法により、被覆層を形成した。第1層及び第2層を形成する場合、立方晶窒化硼素焼結体の表面にこの順で形成した。それぞれの処理条件は、以下のとおりとした。また、被覆層の組成及び平均厚さは、以下の表6に示すとおりとした。
【0060】
[イオンボンバードメント処理の条件]
基材の温度:500℃
圧力:2.7PaのArガス雰囲気
電圧:-400V
電流:40A
時間:30分
【0061】
[被覆層形成条件]
基材の温度:500℃
圧力:3.0Paの窒素(N2)ガス雰囲気(窒化物層)、又は3.0Paの窒素(N2)ガスとアセチレンガス(C2H2)ガスとの混合ガス雰囲気(炭窒化物層)
電圧:-60V
電流:120A
【0062】
【0063】
表面に被覆層が形成された被覆立方晶窒化硼素焼結体を用いて、実施例1と同様に切削試験を行った。その結果を以下の表7に示す。
【0064】
【0065】
表7に示す結果から分かるとおり、その表面に被覆層が形成された被覆立方晶窒化硼素焼結体(発明品10~29)は、被覆層が形成されていない立方晶窒化硼素焼結体(発明品1~9)よりもさらに耐摩耗性に優れており、工具寿命が長かった。