(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030813
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】光コンバイナの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/04 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
G02B6/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136151
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 明理
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250CA02
2H250CA39
2H250CA42
2H250CB12
2H250CC28
(57)【要約】
【課題】入力光ファイバと出力光ファイバとを接合した際の接合強度の低下や接続損失の増大を簡単に抑制することができる光コンバイナの製造方法を提供する。
【解決手段】本方法は、クラッド12が外部に露出している終端部14を有する複数の入力光ファイバ10を束ねてファイバ束20を形成するファイバ束形成工程と、ファイバ束20の終端部14に可逆的に硬化及び軟化する性質を有する可逆性接着材40を付与して入力光ファイバ20が接着された接着部50を形成する接着部形成工程と、接着部50を所定の切断位置で切断して接着部50の先端側50Aを除去する切断工程と、残った接着部50Bの先端部51における可逆性接着材40を軟化させる第1の接着材軟化工程と、第1の接着材軟化工程の後に入力光ファイバ20のクラッド12が露出する接合端部70と出力光ファイバ80の端部85とを互いに接合するファイバ接合工程とを含む。
【選択図】
図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッドが外部に露出している終端部を有する複数の入力光ファイバを束ねてファイバ束を形成するファイバ束形成工程と、
前記ファイバ束形成工程により形成された前記ファイバ束の前記終端部の少なくとも一部に、可逆的に硬化及び軟化する性質を有する可逆性接着材を付与して、前記複数の入力光ファイバが前記可逆性接着材によって互いに接着された接着部を形成する接着部形成工程と、
前記接着部形成工程により形成された前記接着部を長手方向における所定の切断位置で切断して前記接着部の先端側を除去する切断工程と、
前記切断工程後に残った前記接着部の先端部における前記可逆性接着材を軟化させる第1の接着材軟化工程と、
前記第1の接着材軟化工程の後に、前記複数の入力光ファイバの前記クラッドが露出する接合端部と出力光ファイバの端部とを互いに接合するファイバ接合工程と
を含む、光コンバイナの製造方法。
【請求項2】
前記第1の接着材軟化工程により軟化させた前記可逆性接着材を前記ファイバ束の端部から除去して前記接合端部を形成する第1の接着材除去工程をさらに含む、請求項1に記載の光コンバイナの製造方法。
【請求項3】
前記ファイバ接合工程の後に、前記接着部の前記可逆性接着材を軟化させる第2の接着材軟化工程と、
前記第2の接着材軟化工程により軟化させた前記可逆性接着材を前記ファイバ束から除去する第2の接着材除去工程と
をさらに含む、請求項1又は2に記載の光コンバイナの製造方法。
【請求項4】
前記可逆性接着材として、所定の硬化波長の光の照射により硬化する性質を有する光応答性接着材を用いる、請求項1から3のいずれか一項に記載の光コンバイナの製造方法。
【請求項5】
前記接着部形成工程は、
前記ファイバ束の前記終端部の先端を液体の前記光応答性接着材に浸漬して前記終端部の前記先端に前記光応答性接着材を付着させるファイバ浸漬工程と、
前記ファイバ浸漬工程により前記終端部の前記先端に付着させた前記光応答性接着材に前記硬化波長の光を照射して前記光応答性接着材を硬化させる硬化光照射工程と
を含む、
請求項4に記載の光コンバイナの製造方法。
【請求項6】
前記接着部形成工程は、
前記ファイバ束の前記終端部の少なくとも一部に前記光応答性接着材を滴下する接着材滴下工程と、
前記接着材滴下工程により前記終端部の少なくとも一部に滴下された前記光応答性接着材に前記硬化波長の光を照射して前記光応答性接着材を硬化させる硬化光照射工程と
を含む、
請求項4に記載の光コンバイナの製造方法。
【請求項7】
前記接着部形成工程は、前記ファイバ束の前記終端部の少なくとも一部にフィルム状の前記光応答性接着材を巻き付ける接着材巻付工程を含む、請求項4に記載の光コンバイナの製造方法。
【請求項8】
前記接着部形成工程は、前記接着材巻付工程により前記終端部の少なくとも一部に巻き付けられた前記光応答性接着材に前記硬化波長の光を照射して前記光応答性接着材を硬化させる硬化光照射工程をさらに含む、請求項7に記載の光コンバイナの製造方法。
【請求項9】
前記光応答性接着材は、所定の軟化波長の光の照射により軟化する性質を有し、
前記第1の接着材軟化工程は、
前記接着部の前記先端部以外の少なくとも一部を覆うように遮光部材を配置する遮光部材配置工程と、
前記遮光部材越しに前記軟化波長の光を前記接着部に照射して前記光応答性接着材を軟化させる第1の軟化光照射工程と
を含む、
請求項4から8のいずれか一項に記載の光コンバイナの製造方法。
【請求項10】
前記可逆性接着材として、所定の硬化波長の光の照射により硬化し、所定の軟化波長の光の照射により軟化する性質を有する光応答性接着材を用い、
前記第2の接着材軟化工程は、前記接着部に前記軟化波長の光を照射して前記光応答性接着材を軟化させる第2の軟化光照射工程を含む、
請求項3に記載の光コンバイナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コンバイナの製造方法に係り、特に複数本の入力光ファイバと1本の出力光ファイバとを接続した光コンバイナの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のレーザ装置の高出力化に伴い、複数の光源に接続された入力光ファイバを光コンバイナによって合波して1本の出力光ファイバから出力することが行われている。従来、このような光コンバイナは以下のようにして作製されていた。まず、複数の入力光ファイバの一方の端部で被覆を除去し、これらの入力光ファイバを束ねて半割構造のフェルールに挿入する。そして、これらの入力光ファイバの端面を調整工具の平面に当接させて、すべての入力光ファイバの端面が面一になるように調整してクランプで固定する。この状態の入力光ファイバの端面と出力光ファイバの端面とが互いに対向するように入力光ファイバと出力光ファイバとを融着装置内にセットする。融着装置により入力光ファイバと出力光ファイバとの接続部分を加熱し、入力光ファイバと出力光ファイバとを融着接続する。最後に、フェルールを分解して入力光ファイバから取り外すことで、光コンバイナが完成する(例えば、特許文献1の段落[0049]参照)。
【0003】
光コンバイナを作製する際に、複数の入力光ファイバの端面が不揃いになっていると、光コンバイナにおける光損失が増大し、光コンバイナにより結合される光の強度が低下するため、複数の入力光ファイバの端面をできる限り面一にする必要がある。しかしながら、上述した従来の方法のように複数の入力光ファイバの端面を調整工具の平面に当接させて面一にする作業は、熟練した技能と経験を必要とするものである。また、従来の方法では、入力光ファイバの端面を調整工具の平面に当接させたときに、入力光ファイバの先端が欠けたり傷ついたりすることがあり、このような入力光ファイバの先端へのダメージが、入力光ファイバと出力光ファイバとを接合した際の接合強度の低下や接続損失の増大を引き起こすことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、入力光ファイバと出力光ファイバとを接合した際の接合強度の低下や接続損失の増大を簡単に抑制することができる光コンバイナの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、入力光ファイバと出力光ファイバとを接合した際の接合強度の低下や接続損失の増大を簡単に抑制することができる光コンバイナの製造方法が提供される。この方法は、クラッドが外部に露出している終端部を有する複数の入力光ファイバを束ねてファイバ束を形成するファイバ束形成工程と、上記ファイバ束形成工程により形成された上記ファイバ束の上記終端部の少なくとも一部に、可逆的に硬化及び軟化する性質を有する可逆性接着材を付与して、上記複数の入力光ファイバが上記可逆性接着材によって互いに接着された接着部を形成する接着部形成工程と、上記接着部形成工程により形成された上記接着部を長手方向における所定の切断位置で切断して上記接着部の先端側を除去する切断工程と、上記切断工程後に残った上記接着部の先端部における上記可逆性接着材を軟化させる第1の接着材軟化工程と、上記第1の接着材軟化工程の後に、上記複数の入力光ファイバの上記クラッドが露出する接合端部と出力光ファイバの端部とを互いに接合するファイバ接合工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1E】
図1Eは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1F】
図1Fは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1G】
図1Gは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1H】
図1Hは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1I】
図1Iは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図1J】
図1Jは、本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第2の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の第2の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る光コンバイナの製造方法の実施形態について
図1Aから
図3を参照して詳細に説明する。
図1Aから
図3において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1Aから
図3においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
本発明の第1の実施形態における光コンバイナの製造方法を
図1Aから
図1Jを参照して説明する。まず、
図1Aに示すような入力光ファイバ10を用意する。この入力光ファイバ10は、コア11と、コア11の周囲を覆うクラッド12と、クラッド12の周囲を覆う被覆13とを含んでいる。クラッド12の屈折率はコア11の屈折率よりも低く、コア11の内部には光導波路が形成されている。入力光ファイバ10の終端部14では被覆13が除去されており、クラッド12が外部に露出している。
【0010】
このような入力光ファイバ10を複数本(本実施形態では7本)用意し、
図1Bに示すように束ねてファイバ束20を形成する(ファイバ束形成工程)。このとき、これらの入力光ファイバ10の端面が長手方向に揃っている必要はない。
【0011】
次に、ファイバ束20の終端部14の一部に可逆性接着材を付与して、この可逆性接着材によって複数の入力光ファイバ10が互いに接着された接着部を形成する(接着部形成工程)。この可逆性接着材は、特定の条件に応じて可逆的に硬化及び軟化する性質を有する接着材である。例えば、このような可逆性接着材として、温度の変化(加熱)、光(可視光や紫外線)の照射、電子線の照射、湿度の変化などによって可逆的に硬化及び軟化する性質を有する接着材が知られており、これ以外にもpHの変化、特定の化学物質との反応、通電などによって可逆的に硬化及び軟化する接着材も考えられる。
【0012】
本実施形態では、接着部形成工程は以下のようにして行われる。まず、
図1Cに示すように、容器30の内部に保持された液体の可逆性接着材40にファイバ束20の終端部14の先端を浸漬する(ファイバ浸漬工程)。このとき、ファイバ束20の終端部14におけるクラッド12間に可逆性接着材40が浸透するため、可逆性接着材40をファイバ束20の終端部14に均等に付着させることができる。また、ファイバ束20の終端部14のクラッド12は、可逆性接着材40の表面張力によって互いに密接するように中心に集まる。本実施形態では、可逆性接着材40として、所定の波長(硬化波長)の光の照射により硬化し、所定の波長(軟化波長)の光の照射により軟化する性質を有する光応答性接着材を用いる。
【0013】
容器30中の可逆性接着材40からファイバ束20を引き上げると、
図1Dに示すように、ファイバ束20の終端部14の先端に可逆性接着材40(光応答性接着材)が付着した状態となる。そして、この光応答性接着材40に硬化波長の光(以下、硬化光という)を照射することで光応答性接着材40を硬化させる(硬化光照射工程)。これにより、ファイバ束20の終端部14の先端には、複数の入力光ファイバ10が光応答性接着材40によって互いに接着された接着部50が形成される。
【0014】
このように、ファイバ束20の終端部14の先端に接着部50を形成した後、
図1Eに示すように、この接着部50を長手方向における所定の切断位置で切断し、接着部50の先端側の部分50Aを除去する(切断工程)。このとき、入力光ファイバ10の終端部14を同一平面で切断することができるので、熟練した技能や経験がなくても、複数の入力光ファイバ10の終端部14の端面を簡単に面一に揃えることができる。
【0015】
この切断工程の後、残った接着部50Bの先端部における光応答性接着材40を軟化させる(第1の接着材軟化工程)。本実施形態の第1の接着材軟化工程においては、
図1Fに示すように、長手方向に延びる遮光部材60をファイバ束20に沿って配置し、この遮光部材60によって接着部50Bの先端部51以外の部分52を覆う(遮光部材配置工程)。この状態で、遮光部材60越しに軟化波長の光(以下、軟化光という)を接着部50Bに照射することにより、軟化光が照射された部分の光応答性接着材40を軟化させる(第1の軟化光照射工程)。このとき、遮光部材60により接着部50Bのうち先端部51のみが軟化光に照射されることとなるため、接着部50Bの先端部51における光応答性接着材40のみが軟化する。なお、図示した例では、接着部50Bの先端部51以外の部分52全体を遮光部材60によって覆っているが、接着部50Bの先端部51以外の部分52の少なくとも一部を遮光部材60によって覆えばよい。
【0016】
次に、この軟化させた光応答性接着材40をファイバ束20から除去して、
図1Gに示すように、入力光ファイバ10のクラッド12が露出する接合端部70を形成する(第1の接着材除去工程)。この第1の接着材除去工程においては、例えば、接着部50Bを溶剤に浸漬して先端部51の光応答性接着材40を除去した後に溶剤を洗い流してもよい。あるいは、接着部50Bに対してドライ洗浄を施すことにより先端部51の光応答性接着材40を除去してもよい。この第1の接着材除去工程により、ファイバ束20の終端部14には先端部51以外の接着部52が残る。なお、第1の接着材軟化工程により軟化した接着部50Bの先端部51の光応答性接着材40が液体状になってファイバ束20から流れ落ちた場合などには第1の接着材除去工程を省略することができる。
【0017】
このようにして処理されたファイバ束20の接合端部70の端面70Aは、上述した切断工程によって面一になっている。
図1Hに示すように、このファイバ束20の接合端部70と出力光ファイバ80の端部85とを互いに対向させ、これらを例えば融着接続により互いに接合する(ファイバ接合工程)。なお、出力光ファイバ80は、コア(図示せず)と、コアの周囲を覆うクラッド82と、クラッド82の周囲を覆う被覆83とを含んでおり、出力光ファイバ80の端部85における被覆83は除去されてクラッド82が外部に露出している。クラッド82の屈折率はコアの屈折率よりも低く、コアの内部には光導波路が形成される。
【0018】
この入力光ファイバ10と出力光ファイバ80とは光コンバイナとして機能し得るものであるが、この状態ではファイバ束20の終端部14に接着部52が残っており、入力光ファイバ10のコア11に高出力のレーザ光が伝搬した場合には、そのようなレーザ光が接着部52の光応答性接着材40に入射し、光応答性接着材40が発熱するおそれがある。このため、ファイバ接合工程の後に、接着部52における光応答性接着材40を除去することが好ましい。
【0019】
ファイバ接合工程の後に接着部52における光応答性接着材40を除去する場合には、まず、接着部52における光応答性接着材40を軟化させる(第2の接着材軟化工程)。本実施形態における第2の接着材軟化工程は、第1の接着材軟化工程と同様に、
図1Iに示すように軟化光を接着部52に照射することにより接着部52の光応答性接着材40を軟化させる。
【0020】
そして、軟化させた光応答性接着材40をファイバ束20の終端部14から除去する(第2の接着材除去工程)。この第2の接着材除去工程においては、第1の接着材除去工程と同様に、例えば、接着部52を溶剤に浸漬して接着部52の光応答性接着材40を除去した後に溶剤を洗い流してもよいし、あるいは接着部52に対してドライ洗浄を施すことにより接着部52の光応答性接着材40を除去してもよい。
【0021】
このようにして光応答性接着材40を除去することで、
図1Jに示すように、複数の入力光ファイバ10と1本の出力光ファイバ80とが接合された光コンバイナ90が完成する。
【0022】
上述したように、本実施形態によれば、従来のように複数の入力光ファイバの端面を調整工具の平面に当接させることなく、入力光ファイバの端面を面一に揃えることができるので、入力光ファイバ10の先端へのダメージが低減される。このため、入力光ファイバ10と出力光ファイバ80とを接合した際の接合強度の低下や接続損失の増大を抑制することができる。
【0023】
本実施形態では、可逆性接着材40として光の照射により可逆的に硬化及び軟化する性質を有する接着材(光応答性接着材)を用いているが、これ以外の可逆性接着材を用いてもよい。例えば、光の照射により硬化し、加熱により軟化する性質を有する接着材や、温度の変化によって硬化及び軟化する性質を有する接着材(熱可塑性樹脂)などを可逆性接着材40として用いてもよい。
【0024】
ここで、可逆性接着材40として、例えば、温度の変化によって可逆的に硬化及び軟化する性質を有するものを用いる場合には、温度変化させるために複雑な機構が必要になるが、光を照射するための機構は比較的簡易な構造により実現することができるため、本実施形態のように可逆性接着材40として光応答性接着材を用いることで簡易な装置により光コンバイナを製造することができる。
【0025】
本実施形態では、可逆性接着材40として光の照射により硬化する性質を有する光応答性接着材を用いているため、上述した接着部形成工程の硬化光照射工程において硬化光の照射がなされているが、接着部形成工程においてなされる処理は、可逆性接着材40を硬化させる手段に応じて変化するものである。例えば、可逆性接着材40として冷却により硬化する性質を有するものを用いる場合には、第1の接着材軟化工程及び第2の接着材軟化工程において冷却がなされる。
【0026】
また、本実施形態では、可逆性接着材40として光の照射により軟化する性質を有する光応答性接着材を用いているため、上述した第1の接着材軟化工程の第1の軟化光照射工程及び第2の軟化光照射工程の第2の接着材軟化工程においてそれぞれ軟化光の照射がなされているが、第1の接着材軟化工程及び第2の接着材軟化工程においてなされる処理は、可逆性接着材40を軟化させる手段に応じて変化するものである。例えば、可逆性接着材40として加熱により軟化する性質を有するものを用いる場合には、第1の接着材軟化工程及び第2の接着材軟化工程において加熱がなされる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明する。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、可逆性接着材40として、光の照射により可逆的に硬化及び軟化する性質を有する接着材(光応答性接着材)を用いた例を説明するが、これ以外の可逆性接着材を用いてもよいことは言うまでもない。
【0028】
まず、第1の実施形態と同様に、複数本の入力光ファイバ10を束ねてファイバ束20を形成する(ファイバ束形成工程)。そして、
図2Aに示すように、ディスペンサ101を用いてファイバ束20の終端部14上に可逆性接着材40を滴下して可逆性接着材40をファイバ束20の終端部14に付着させる(接着材滴下工程)。なお、この接着材滴下工程においては、ファイバ束20の終端部14の少なくとも一部に可逆性接着材40を滴下すればよい。
【0029】
次に、
図2Bに示すように、このようにしてファイバ束20の終端部14に付着させた可逆性接着材40(光応答性接着材)に硬化光を照射することで可逆性接着材40を硬化させる(硬化光照射工程)。これにより、ファイバ束20の終端部14の少なくとも一部に、複数の入力光ファイバ10が光応答性接着材40によって互いに接着された接着部50が形成される。
【0030】
その後の工程は、第1の実施形態における切断工程以降の工程と同様である。すなわち、接着部50を長手方向における所定の切断位置で切断し、接着部50の先端部を除去する(切断工程)。その後、残った接着部50の先端部における可逆性接着材40を軟化させ(第1の接着材軟化工程)、軟化させた可逆性接着材40をファイバ束20から除去して、入力光ファイバ10のクラッド12が露出する接合端部を形成する(第1の接着材除去工程)。そして、ファイバ束20の接合端部と出力光ファイバの端部とを互いに対向させ、これらを例えば融着接続により互いに接合する(ファイバ接合工程)。好ましくは、この後、残った接着部50における可逆性接着材40を軟化させ(第2の接着材軟化工程)、軟化させた可逆性接着材40をファイバ束20から除去する(第2の接着材除去工程)。
【0031】
本実施形態においては、ディスペンサ101を用いて可逆性接着材40をファイバ束20の終端部14上に滴下することで可逆性接着材40をファイバ束20の終端部14に付与しているため、第1の実施形態のように可逆性接着材40を保持した容器30を用意する必要がなく、必要とされる可逆性接着材40の量を少なくすることができる。
【0032】
次に、本発明の第3の実施形態における光コンバイナの製造方法を説明する。本実施形態においては、上述した光応答性接着材から形成される粘着フィルムを用いる。まず、
図3に示すように、このような光応答性接着材から形成される粘着フィルム240をファイバ束20の終端部14の少なくとも一部に巻き付ける(接着材巻付工程)。これにより、ファイバ束20の終端部14の少なくとも一部に、複数の入力光ファイバ10が光応答性接着材40によって互いに接着された接着部を形成する。
【0033】
粘着フィルム240をファイバ束20の終端部14に巻き付けただけでは、複数の入力光ファイバ10が十分に接着されない場合には、上述した接着材巻付工程の後に、粘着フィルム240に硬化光を照射することで粘着フィルム240を硬化させて(硬化光照射工程)、ファイバ束20の終端部14の少なくとも一部に接着部を形成してもよい。
【0034】
その後の工程は、第1の実施形態における切断工程以降の工程と同様である。すなわち、接着部を長手方向における所定の切断位置で切断し、接着部の先端部を除去する(切断工程)。その後、残った接着部の先端部における粘着フィルム240を軟化させ(第1の接着材軟化工程)、軟化させた粘着フィルム240をファイバ束20から除去して、入力光ファイバ10のクラッド12が露出する接合端部を形成する(第1の接着材除去工程)。そして、ファイバ束20の接合端部と出力光ファイバの端部とを互いに対向させ、これらを例えば融着接続により互いに接合する(ファイバ接合工程)。好ましくは、この後、残った接着部における粘着フィルム240を軟化させ(第2の接着材軟化工程)、軟化させた粘着フィルム240をファイバ束20から除去する(第2の接着材除去工程)。
【0035】
本実施形態においては、フィルム状の光応答性接着材(粘着フィルム240)を用いているため、光応答性接着材をファイバ束20の終端部14に付与して接着部を形成する作業が第1の実施形態に比べて容易である。
【0036】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、入力光ファイバと出力光ファイバとを接合した際の接合強度の低下や接続損失の増大を簡単に抑制することができる光コンバイナの製造方法が提供される。この方法は、クラッドが外部に露出している終端部を有する複数の入力光ファイバを束ねてファイバ束を形成するファイバ束形成工程と、上記ファイバ束形成工程により形成された上記ファイバ束の上記終端部の少なくとも一部に、可逆的に硬化及び軟化する性質を有する可逆性接着材を付与して、上記複数の入力光ファイバが上記可逆性接着材によって互いに接着された接着部を形成する接着部形成工程と、上記接着部形成工程により形成された上記接着部を長手方向における所定の切断位置で切断して上記接着部の先端側を除去する切断工程と、上記切断工程後に残った上記接着部の先端部における上記可逆性接着材を軟化させる第1の接着材軟化工程と、上記第1の接着材軟化工程の後に、上記複数の入力光ファイバの上記クラッドが露出する接合端部と出力光ファイバの端部とを互いに接合するファイバ接合工程とを含む。
【0037】
このように、複数の入力光ファイバが可逆性接着材により互いに接着された接着部を切断することにより、それぞれの入力光ファイバの終端部を同一平面で切断することができるので、熟練した技能や経験を必要とすることなく、複数の入力光ファイバの終端部の端面を簡単に面一に揃えることができる。そして、切断後に残った接着部の先端部における可逆性接着材を軟化させることで、このように端面が面一に揃えられた接合端部を形成することができ、この接合端部を出力光ファイバの端部と接合することができる。本発明に係る方法によれば、従来のように複数の入力光ファイバの端面を調整工具の平面に当接させる必要がなく、入力光ファイバの先端へのダメージが低減されるので、入力光ファイバと出力光ファイバとを接合した際の接合強度の低下や接続損失の増大を抑制することができる。
【0038】
上記方法は、上記第1の接着材軟化工程により軟化させた上記可逆性接着材を上記ファイバ束の端部から除去して上記接合端部を形成する第1の接着材除去工程をさらに含んでいてもよい。
【0039】
上記方法は、上記ファイバ接合工程の後に、上記接着部の上記可逆性接着材を軟化させる第2の接着材軟化工程と、上記第2の接着材軟化工程により軟化させた上記可逆性接着材を上記ファイバ束から除去する第2の接着材除去工程とをさらに含んでいてもよい。このように、入力光ファイバと出力光ファイバとを接合した後に、残った接着部の可逆性接着材を除去することにより、例えば高出力のレーザ光が光コンバイナ内を伝搬した場合に、レーザ光が残った可逆性接着材に入射して発熱することを抑制することができる。
【0040】
上記可逆性接着材として、所定の硬化波長の光の照射により硬化する性質を有する光応答性接着材を用いることができる。可逆性接着材として、例えば、温度の変化によって可逆的に硬化及び軟化する性質を有するもの(熱可塑性樹脂)を用いる場合には、温度変化させるために複雑な機構が必要になるが、光を照射するための機構は比較的簡易な構造により実現することができるため、可逆性接着材として光応答性接着材を用いることで簡易な装置により光コンバイナを製造することができる。
【0041】
上記接着部形成工程は、上記ファイバ束の上記終端部の先端を液体の上記光応答性接着材に浸漬して上記終端部の上記先端に上記光応答性接着材を付着させるファイバ浸漬工程と、上記ファイバ浸漬工程により上記終端部の上記先端に付着させた上記光応答性接着材に上記硬化波長の光を照射して上記光応答性接着材を硬化させる硬化光照射工程とを含んでいてもよい。このようなファイバ浸漬工程により液体の光応答性接着材をファイバ束の終端部の先端に浸漬することで、ファイバ束の終端部におけるクラッド間に可逆性接着材が浸透するため、可逆性接着材をファイバ束の終端部に均等に付着させることができる。
【0042】
あるいは、上記接着部形成工程は、上記ファイバ束の上記終端部の少なくとも一部に上記光応答性接着材を滴下する接着材滴下工程と、上記接着材滴下工程により上記終端部の少なくとも一部に滴下された上記光応答性接着材に上記硬化波長の光を照射して上記光応答性接着材を硬化させる硬化光照射工程とを含んでいてもよい。このような接着材滴下工程により光応答性接着材をファイバ束の終端部の少なくとも一部に滴下することで、必要とされる光応答性接着材の量を少なくすることができる。
【0043】
あるいは、上記接着部形成工程は、上記ファイバ束の上記終端部の少なくとも一部にフィルム状の上記光応答性接着材を巻き付ける接着材巻付工程を含んでいてもよい。また、上記接着部形成工程は、上記接着材巻付工程により上記終端部の少なくとも一部に巻き付けられた上記光応答性接着材に上記硬化波長の光を照射して上記光応答性接着材を硬化させる硬化光照射工程をさらに含んでいてもよい。このようにフィルム状の光応答性接着材を用いることで、光応答性接着材をファイバ束の終端部に付与して接着部を形成する作業が簡単になる。
【0044】
上記光応答性接着材は、所定の軟化波長の光の照射により軟化する性質を有していてもよい。この場合において、上記第1の接着材軟化工程は、上記接着部の上記先端部以外の少なくとも一部を覆うように遮光部材を配置する遮光部材配置工程と、上記遮光部材越しに上記軟化波長の光を上記接着部に照射して上記光応答性接着材を軟化させる第1の軟化光照射工程とを含んでいてもよい。このような遮光部材配置工程と第1の軟化光照射工程により簡単に接着部の先端部における可逆性接着材を軟化させることができる。
【0045】
上記可逆性接着材として、所定の硬化波長の光の照射により硬化し、所定の軟化波長の光の照射により軟化する性質を有する光応答性接着材を用いてもよい。この場合において、上記第2の接着材軟化工程は、上記接着部に上記軟化波長の光を照射して上記光応答性接着材を軟化させる第2の軟化光照射工程を含んでいてもよい。この方法によれば、軟化波長の光を接着部に照射するだけで光応答性接着材を軟化させることができるため、接着部における光応答性接着材を簡単に除去することができる。
【0046】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
10 入力光ファイバ
11 コア
12 クラッド
13 被覆
14 終端部
20 ファイバ束
30 容器
40 可逆性接着材(光応答性接着材)
50,52 接着部
51 先端部
60 遮光部材
70 接合端部
70A 端面
80 出力光ファイバ
82 クラッド
83 被覆
85 端部
90 光コンバイナ
101 ディスペンサ
240 粘着フィルム