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特開2023-3082アルツハイマー型認知症の予防又は治療剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003082
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】アルツハイマー型認知症の予防又は治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/242 20190101AFI20221228BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20221228BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221228BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
A61K33/242
A61K33/243
A61P31/04
A61P25/28
A61P25/00
A61P9/10
A61P9/00
A61P1/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104034
(22)【出願日】2021-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】397046397
【氏名又は名称】株式会社東洋厚生製薬所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】輪嶋 将一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】川上 智史
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086HA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA21
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA16
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA67
4C086ZB35
(57)【要約】
【課題】新規なジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤の提供。
【解決手段】白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤。
【請求項2】
前記疾患がアルツハイマー型認知症、歯周病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳膿瘍、及び虫歯からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の予防又は治療剤。
【請求項3】
前記疾患がアルツハイマー型認知症である、請求項2に記載の予防又は治療剤。
【請求項4】
前記疾患が歯周病である、請求項2に記載の予防又は治療剤。
【請求項5】
前記疾患が脳膿瘍である、請求項2に記載の予防又は治療剤。
【請求項6】
前記疾患が虫歯である、請求項2に記載の予防又は治療剤。
【請求項7】
白金コロイドの濃度が0.08~16mMの液剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の予防又は治療剤。
【請求項8】
パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比が、1/30~10/1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の予防又は治療剤。
【請求項9】
パラジウムコロイドの濃度が0.1~30mMの液剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の予防又は治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤に関する。本発明は、より詳細には、アルツハイマー型認知症の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポルフィロモナス・ジンバリス(Porphyromonas gingivalis。以下、「ジンジバリス菌」ともいう。)は、ヒトの口腔内に存在する細菌である。ジンジバリス菌は、重要な歯周病源細菌として知られているが、歯周病以外の疾患との関連も注目されている。例えば、非特許文献1では、ジンジバリス菌は、アルツハイマー病の脳における病原体の最有力候補の一つであり、アルツハイマー病を引き起こす一連の事象に関与している可能性が指摘されている。また、ジンジバリス菌等の歯周細菌が心血管疾患発症の要因である可能性があること(非特許文献2)、及びジンジバリス菌による内皮細胞への侵入及び寄生がアテローム性動脈硬化症という炎症反応を悪化させる可能性があること(非特許文献3)も指摘されており、さらに、脳膿瘍からジンジバリス菌が検出され、口腔領域からの感染が強く疑われた事例(非特許文献4)も報告されている。
【0003】
また、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans。以下、「ミュータンス菌」ともいう。)も、人の口腔内に存在する細菌であり、虫歯(う歯)の代表的な原因菌として知られている。
【0004】
ジンジバリス菌及びミュータンス菌と様々な疾患との関連が指摘される中で、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に作用して、上記のような疾患を予防又は治療することのできる予防又は治療剤への需要が高まっている。これに対し、例えば、特許文献1には、粒度分布における最頻値が1.0μm以下である乳酸菌を有効成分として含有することを特徴とする口腔用組成物が、う蝕関連細菌のミュータンス菌や歯周病関連細菌のジンジバリス菌類に対して、選択的に作用を示し、それゆえ口腔内フローラを良い環境に導くことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-166992号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Olsen, I. & Singhrao, S.K., "Can oral infection be a risk factor for Alzheimer's disease?",Journal of Oral Microbiology 2015; 7: 29143.
【非特許文献2】Gaetti-Jardim, E. Jr, et al., "Quantitativedetection of periodontopathic bacteria in atherosclerotic plaques from coronaryarteries.", Journal of Medical Microbiology 2009; 58: 1568-1575.
【非特許文献3】Dorn, B. R., et al., "Porphyromonas gingivalis Traffics toAutophagosomes in Human Coronary Artery Endothelial Cells.", Infection andImmunity 2001; 69: 5698-5708.
【非特許文献4】原ケイ子., "脳膿瘍より歯周病原因菌Porphymmonas gingivalisが検出された1例.", 日本有病者歯科医療学会雑誌 2003; 12: 67-71.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規なジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、白金コロイドとパラジウムコロイドとを共に用いることでジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌の増殖を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の各発明に関する。
[1]白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤。
[2]疾患がアルツハイマー型認知症、歯周病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳膿瘍、及び虫歯からなる群より選択される1種以上である、[1]に記載の予防又は治療剤。
[3]疾患がアルツハイマー型認知症である、[2]に記載の予防又は治療剤。
[4]疾患が歯周病である、[2]に記載の予防又は治療剤。
[5]疾患が脳膿瘍である、[2]に記載の予防又は治療剤。
[6]疾患が虫歯である、[2]に記載の予防又は治療剤。
[7]白金コロイドの濃度が0.08~16mMの液剤である、[1]~[6]のいずれかに記載の予防又は治療剤。
[8]パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比が、1/30~10/1である、[1]~[7]のいずれかに記載の予防又は治療剤。
[9]パラジウムコロイドの濃度が0.1~30mMの液剤である、[1]~[8]のいずれかに記載の予防又は治療剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規なジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ジンジバリス菌に対するコロニー形成阻害試験の結果を表す写真である。
図2】ミュータンス菌に対するコロニー形成阻害試験の結果を表す写真である。
図3】検体と蒸留水のどちらも添加しない培養液にて培養したジンジバリス菌のSEM画像である。
図4】50%蒸留水添加培養液にて培養したジンジバリス菌のSEM画像である。
図5】50%PAPLAL(登録商標)水添加培養液にて培養したジンジバリス菌のSEM画像である。
図6】100%蒸留水添加培養液にて培養したジンジバリス菌のSEM画像である。
図7】100%PAPLAL(登録商標)水添加培養液にて培養したジンジバリス菌のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する。当該予防又は治療剤は、白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する液剤であってよい。
【0014】
白金コロイドは、水にコロイド状に分散する白金粒子である。白金コロイドは、公知の方法(例えば、特公昭57-43125号公報、特公昭59-120249号公報、特公平2-43801号公報、特開平9-225317号公報、特開平10-176207号公報等に記載の方法)により製造することができる。白金コロイドの製造方法としては、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、例えば、沈殿法又は金属塩還元反応法として知られる化学的な方法、あるいは燃焼法として知られる物理的な方法等を利用することができる。白金コロイドの製造方法としては、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌の増殖抑制作用をより有効に奏するという観点から、燃焼法を用いることが好ましい。
【0015】
燃焼法としては、例えば、塩化白金酸溶液及び低級アルコールの混合溶液、並びに、水素ガスを、それぞれ別の供給系から送出し、燃焼させた水素ガス炎と、上記混合溶液とを混合させ830~870℃で燃焼させ、燃焼火炎をコロイド生成槽中の槽底近くに達する渦流を生じさせた液体分散媒中に吹き込むこと等によって、白金コロイドを製造する方法が挙げられる。
【0016】
予防又は治療剤が液剤である場合において、白金コロイドの濃度は特に限定されず、使用される白金コロイドの種類、予防又は治療剤の用途、製剤形態、使用方法等によって適宜設定される。液剤における白金コロイドの濃度は、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌の増殖抑制作用をより有効に奏するという観点から、液剤全量に対して、0.08~16mMであることが好ましく、0.1~10mMであることが好ましく、0.4~8mMであることがさらに好ましい。
【0017】
パラジウムコロイドは、水にコロイド状に分散するパラジウム粒子である。パラジウムコロイドは、公知の方法(例えば、特公昭57-43125号公報、特公昭59-120249号公報、特公平2-43801号公報、特開平9-225317号公報、特開平10-176207号公報等に記載の方法)により製造することができる。パラジウムコロイドの製造方法としては、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、例えば、沈殿法又は金属塩還元反応法として知られる化学的な方法、あるいは燃焼法として知られる物理的な方法等を利用することができる。パラジウムコロイドの製造方法として、白金の酸化による劣化を防止するという観点から、燃焼法を用いることが好ましい。
【0018】
燃焼法としては、例えば、塩化パラジウム溶液及び低級アルコールの混合溶液、並びに、水素ガスを、それぞれ別の供給系から送出し、燃焼させた水素ガス炎と、上記混合溶液とを混合させ630~670℃で燃焼させ、燃焼火炎をコロイド生成槽中の槽底近くに達する渦流を生じさせた液体分散媒中に吹き込むこと等によって、パラジウムコロイドを製造する方法が挙げられる。
【0019】
予防又は治療剤が液剤である場合において、パラジウムコロイドの濃度は特に限定されず、使用されるパラジウムコロイドの種類、併用される白金コロイドの種類及び濃度、予防又は治療剤の用途、製剤形態、使用方法等によって適宜設定される。液剤におけるパラジウムコロイドの濃度は、白金の酸化による劣化を防止し、かつ継続投与した場合にも副作用を起こりにくくするという観点から、液剤全量に対して、0.1~30mMであることが好ましく、0.4~16mMであることがより好ましく、0.8~12mMであることがさらに好ましい。
【0020】
パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比(パラジウムに対する白金のモル比(Pt/Pd))は、特に制限されず、使用される白金コロイド及びパラジウムコロイドの種類及び濃度、該NK細胞活性化剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比は、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌の増殖抑制作用をより有効に奏するという観点から、好ましくは1/30~10/1であり、より好ましくは1/9~3/1である。
【0021】
本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、界面活性剤をさらに含有していてもよい。界面活性剤としては、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌の増殖抑制作用をより有効に奏するという観点から、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0022】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPEOソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニック(登録商標)F127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリオキシエチレンヒマシ油40、ポリオキシエチレンヒマシ油50、ポリオキシエチレンヒマシ油60等の酸化エチレンの平均付加モル数が30を上回るポリオキシエチレンヒマシ油等が挙げられる。本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤において、上記非イオン性界面活性剤を、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、固体(例えば、粉末)、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む。)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤(懸濁液、乳濁液、シロップ等を含む。)、ペースト等の形態であってもよい。これらの各種製剤は、薬理学的又は生理学的に許容されるものであれば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、懸濁化剤等の添加剤を混合し、周知の方法で製造することができる。
【0024】
本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、医薬品、医薬部外品、食品組成物及び飼料組成物等の製品として、又はこれら製品の成分として使用することができる。当該食品組成物は、例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品であってもよい。食品組成物の具体例としては、例えば、飲料等が挙げられる。上記製品は、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療用であってよい。ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療用製品における白金コロイド及びパラジウムコロイドそれぞれの濃度は、上記例示したとおりであってよい。
【0025】
本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤によれば、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌の増殖を抑制することにより、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療が可能となる。ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患としては、例えば、歯周病、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳膿瘍、虫歯(う歯)等が挙げられる。本実施形態に係る予防又は治療剤は、歯周病、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳膿瘍、及び虫歯(う歯)からなる群より選択される1種以上の予防剤又は治療剤であってよい。
【0026】
心血管疾患とは、心臓と血管に関する疾患である。心血管疾患としては、例えば、狭心症、心筋梗塞等の冠状動脈性心疾患;脳梗塞、脳出血等の脳血管疾患;末梢動脈疾患;リウマチ性心疾患;深部静脈血栓症;肺塞栓症等が挙げられる。アテローム性動脈硬化症は、動脈硬化症の最も一般的な形態であり、動脈硬化性心疾患、冠状動脈性心疾患、末梢血管疾患、脳血管疾患等を引き起こす原因となる。
【0027】
本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、ヒトに投与又は摂取されても、非ヒト哺乳動物に投与又は摂取されてもよい。本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤の投与量(摂取量)は、白金コロイドの質量に換算して、成人1日あたり、例えば、0.06~6mgであることが好ましく、0.1~4mgであることがより好ましく、0.3~3mgであることがさらに好ましい。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0028】
本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、1日あたりの白金コロイドの質量に換算した値が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【0029】
本実施形態に係るジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤は、1週間以上継続して投与されてよく、2週間以上継続して投与(摂取)されてよく、3週間以上継続して投与(摂取)されてよく、4週間以上継続して投与(摂取)されてよい。
【実施例0030】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
検体として、株式会社東洋厚生製薬所製の白金パラジウムコロイド溶液(PAPLAL(登録商標)水)を準備した。当該白金パラジウムコロイド溶液は、6mlの水溶液(液剤)中、白金コロイドを1.2mg、パラジウムコロイドを1.8mg含む。
【0032】
〔ジンジバリス菌及びミュータンス菌に対する増殖抑制効果の検証〕
(コロニー形成阻害試験)
まず、ジンジバリス菌及びミュータンス菌を継代培養した。培養は、ジンジバリス菌には変法GAM寒天培地を、ミュータンス菌にはMS寒天培地をそれぞれ用いて、37℃のインキュベーター内にて前者は嫌気的、後者は好気的環境下で行った。
【0033】
培養したジンジバリス菌を変法GAM寒天培地上に、ミュータンス菌をMS寒天培地上に、それぞれコンラージ棒を用いて均一に塗布した。それぞれの表面に、上記の検体を染み込ませたディスクと、後述する3種の対照ディスクを設置し、37℃のインキュベーター内にて、ジンジバリス菌は嫌気的環境下、ミュータンス菌は好気的環境下で24時間培養した。3種の対照ディスクとしては、対照1:リン酸緩衝液を染み込ませたディスク、対照2:パラジウムコロイド溶液(パラジウムコロイド濃度0.3g/Lの水溶液)を染み込ませたディスク、及び、対照3:白金コロイド溶液(白金コロイド濃度0.2g/Lの水溶液)を染み込ませたディスクを用いた。培養後のサンプルを撮影した画像を図1(ジンジバリス菌)及び図2(ミュータンス菌)に示す。
【0034】
図1図2の各画像中に見られる4つのディスクは、上から時計回りに、対照1、対照2、対照3、及び検体を染み込ませたディスクである。図1図2のとおり、ジンジバリス菌とミュータンス菌のどちらについても、対照1のディスクの周囲では、ディスクから離れた場所と同様にコロニーが形成されていたのに対して、検体、対照2、及び対照3のディスクの周囲では、ディスクから離れた場所と比較してコロニーが少ない傾向にあり、検体、対照2、及び対照3に、ジンジバリス菌及びミュータンス菌に対する増殖抑制効果があることが確認された。
【0035】
(SEM観察)
上記の検体を50%又は100%添加した培養液を用意し、上記のコロニー形成阻害試験と同様にして培養したジンジバリス菌を当該培養液に播種して、37℃のインキュベーター内にて嫌気的環境下で24時間培養した。また、対照として、検体と蒸留水のどちらも添加しない培養液、及び、検体に変えて蒸留水を50%又は100%添加した培養液を用いて、同様にジンジバリス菌の培養を行った。培養後の菌の形態像を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。検体と蒸留水のどちらも添加しない培養液、50%蒸留水添加培養液、50%PAPLAL(登録商標)水添加培養液、100%蒸留水添加培養液、及び100%PAPLAL(登録商標)水添加培養液を用いた場合のSEM像を、それぞれ図3図7に順に示す。
【0036】
図5図7のとおり、検体を添加した培養液では、破壊されている菌体が数多く見られた。特に、検体を100%添加した培養液では、溶菌も数多く見られた。
【0037】
(検体中の生菌数の変化)
まず、ジンジバリス菌を5%馬脱繊維血液加Brucella Agar(BD BBL(登録商標))で35℃±1℃、4~7日間嫌気培養した後、生理食塩水に浮遊させ、菌数が10~10/mLとなるように調製して、試験菌液を作製した。
【0038】
上記の検体10mlに試験菌液0.1mlを接種して試験液を作製し、室温で1分、3分、及び5分保存後の試験液中の生菌数を測定した。生菌数の測定は、5%馬脱繊維血液加Brucella Agar(BD BBL(登録商標))を用いた平板塗抹培養法(35℃±1℃、5~7日間嫌気培養)により行った。なお、生菌数の測定にあたり、検体の影響を受けずに生菌数の測定ができるように、試験液をSDCLP培地(日本製薬株式会社製)で10倍に希釈した。また、対照として、検体に変えて生理食塩水を用いて同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金コロイドとパラジウムコロイドとを含有する、ジンジバリス菌及び/又はミュータンス菌に起因する疾患の予防又は治療剤であって、
前記疾患がアルツハイマー型認知症、歯周病、脳膿瘍、及び虫歯からなる群より選択される1種以上である、予防又は治療剤
【請求項2】
前記疾患がアルツハイマー型認知症である、請求項に記載の予防又は治療剤。
【請求項3】
前記疾患が歯周病である、請求項に記載の予防又は治療剤。
【請求項4】
前記疾患が脳膿瘍である、請求項に記載の予防又は治療剤。
【請求項5】
前記疾患が虫歯である、請求項に記載の予防又は治療剤。
【請求項6】
白金コロイドの濃度が0.08~16mMの液剤である、請求項1~のいずれか一項に記載の予防又は治療剤。
【請求項7】
パラジウムコロイドに対する白金コロイドのモル比が、1/30~10/1である、請求項1~のいずれか一項に記載の予防又は治療剤。
【請求項8】
パラジウムコロイドの濃度が0.1~30mMの液剤である、請求項1~のいずれか一項に記載の予防又は治療剤。