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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030827
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】繊維用ガイド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/22 20060101AFI20230301BHJP
   D01D 5/096 20060101ALI20230301BHJP
   D01H 13/04 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
D02J1/22 304
D01D5/096 Z
D01H13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136175
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000223274
【氏名又は名称】湯浅糸道工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 亮
【テーマコード(参考)】
4L036
4L045
4L056
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA01
4L036PA26
4L045AA05
4L045BA03
4L045DA49
4L045DB12
4L045DB17
4L056CA02
4L056CA11
4L056CC12
4L056FA04
4L056FA13
(57)【要約】
【課題】摺動する糸条に生じる摩擦が摺動面全体において一様である繊維用ガイドとその製造方法を提供する。
【解決手段】紡糸後に複数本が束ねられた状態で、延在方向に沿って一方向に移動する糸条Yを案内する繊維用ガイド1である。繊維用ガイド1は、焼結体からなる本体2を備え、本体2は、移動途中の糸条Yの延在方向における一部分が摺動する摺動面5を備える。摺動面5は、その表面に糸条Yより微細な凹凸形状10を有しており、凹凸形状10は、糸条Yと接する接触部位11aを含む接触面11と、摺動面5が削られ接触面11よりくぼんだ凹部12とが、規則性を持って交互に連続して配置されており、接触面11の高さ位置が揃っている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸後に複数本が束ねられた状態で、延在方向に沿って一方向に移動する糸条を案内する繊維用ガイドであって、
焼結体からなる本体を備え、
前記本体は、移動途中の前記糸条の延在方向における一部分が摺動する摺動面を備え、
前記摺動面は、その表面に前記糸条より微細な凹凸形状を有しており、
前記凹凸形状は、前記糸条と接する接触部位を含む接触面と、前記摺動面が削られ前記接触面よりくぼんだ凹部とが、規則性を持って交互に連続して配置されており、前記接触面の高さ位置が揃っている、繊維用ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維用ガイドであって、
前記摺動面は、曲面形状の前記接触面を有する、繊維用ガイド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の繊維用ガイドであって、
前記接触面は、前記摺動面の正面視において円を呈する、繊維用ガイド。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の繊維用ガイドであって、
前記本体は、アルミナセラミックスからなる、繊維用ガイド。
【請求項5】
紡糸後に複数本が束ねられた状態で延在方向に沿って一方向に移動する糸条を案内する繊維用ガイドの製造方法であって、
焼結体からなる本体の表面を鏡面状態に研磨する研磨工程と、
前記本体において、移動途中の前記糸条の延在方向における一部分が摺動する摺動面に、前記糸条より微細な凹凸形状を成形する凹凸成形工程とを含み、
前記凹凸成形工程は、レーザーにより前記摺動面を削るレーザー加工工程を含み、
前記凹凸形状は、前記糸条と接する接触部位を含む接触面と、前記接触面に対してくぼんだ凹部とが、規則性を持って交互に連続して配置されており、前記接触面の高さ位置が揃っている、繊維用ガイドの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維用ガイドの製造方法であって、
前記凹凸形状は、前記接触面が曲面形状に成形される、繊維用ガイドの製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の繊維用ガイドの製造方法であって、
前記凹凸形状は、前記摺動面の正面視において前記接触面が円を呈するように成形される、繊維用ガイドの製造方法。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の繊維用ガイドの製造方法であって、
前記凹凸成形工程は、前記レーザー加工工程の後、前記本体を焼成する熱処理工程を含む、繊維用ガイドの製造方法。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の繊維用ガイドの製造方法であって、
前記レーザー加工工程は、UVレーザーが用いられる、繊維用ガイドの製造方法。
【請求項10】
請求項5から請求項9のいずれか一項に記載の繊維用ガイドの製造方法であって、
前記本体は、アルミナセラミックスからなる、繊維用ガイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用ガイド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成繊維の製造工程では、糸条を案内して送るための繊維用ガイドが用いられる。繊維用ガイドと糸条が接触する摺動面は、摩擦による糸条へのダメージを抑えるため、種々の表面加工が施されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、紡糸された糸条にオイルを付着させるオイリングノズルが開示されている。このオイリングノズルは、セラミックス製であり、糸道溝の摺動面に設けられた微細溝にオイルが溜まる構成となっている。これにより、糸条に安定してオイルが付与され、糸条と摺動面の間に生じる摩擦が抑えられている。
【0004】
また、セラミックス製の繊維用ガイドは、使用される工程に応じて焼成された成形体に種々の表面仕上げが施される。例えば、焼成した成形体を高温炉で熱処理することによって、結晶を隆起させて梨地肌とする加工が挙げられる。この熱処理加工により、繊維用ガイドの表面に糸条に対して微細な凹凸が形成されるため、摺動面と糸条が接触する面積が小さくなり、糸条の摺動時に生じる摩擦が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-68608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱処理加工において凹凸の形状や大きさを調整するためには、高度な熱流の制御が必要となる。また、高温炉の熱分布を一様にすることは難しく、成形体の形状や炉内の配置位置によって、微細な凹凸の形状に個体差が生じていた。このように、梨地肌に加工された表面は、摺動摩擦を低減する利点があるものの、不規則な凹凸形状により摩擦低減の程度にばらつきが生じる懸念があった。これは、使用される繊維用ガイドによって糸品質にばらつきが生じる要因となるため、摺動摩擦が摺動面全体において一様である繊維用ガイドが求められていた。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、摺動する糸条に生じる摩擦が、摺動面全体において一様に低減される繊維用ガイドとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、次の手段をとる。先ず、第1の発明は、紡糸後に複数本が束ねられた状態で、延在方向に沿って一方向に移動する糸条を案内する繊維用ガイドであって、焼結体からなる本体を備え、前記本体は、移動途中の前記糸条の延在方向における一部分が摺動する摺動面を備え、前記摺動面は、その表面に前記糸条より微細な凹凸形状を有しており、前記凹凸形状は、前記糸条と接する接触部位を含む接触面と、前記摺動面が削られ前記接触面よりくぼんだ凹部とが、規則性を持って交互に連続して配置されており、前記接触面の高さ位置が揃っている。
【0009】
第1の発明によれば、繊維用ガイドの摺動面において、糸条に対して微細でかつ規則性を持った凹凸形状が成形されており、摺動面は、接触面の高さ位置が揃った、全体として滑らかな表面形状を有している。よって、糸条が接する接触部位の高さ位置が揃い、糸条に対する摩擦が摺動面全体において一様に低減される。また、糸条への摩擦が一様になれば、製造される糸の品質を安定させることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明による繊維用ガイドであって、前記摺動面は、曲面形状の前記接触面を有する。
【0011】
第2の発明によれば、糸条が、曲面形状の滑らかな接触面に接しながら摺動するため、糸条の引っ掛かりが抑制され、糸条への摩擦が低減される。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明による繊維用ガイドであって、前記接触面は、前記摺動面の正面視において円を呈する。
【0013】
第3の発明によれば、摺動する糸条の引っ掛かりがより抑制され、糸条への摩擦が低減される。
【0014】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一の発明による繊維用ガイドであって、前記本体は、アルミナセラミックスからなる。
【0015】
第4の発明によれば、アルミナセラミックスは化学的に安定しており機械的強度が強いため、繊維用ガイドの耐摩耗性が向上する。
【0016】
第5の発明は、紡糸後に複数本が束ねられた状態で延在方向に沿って一方向に移動する糸条を案内する繊維用ガイドの製造方法であって、焼結体からなる本体の表面を鏡面状態に研磨する研磨工程と、前記本体において、移動途中の前記糸条の延在方向における一部分が摺動する摺動面に、前記糸条より微細な凹凸形状を成形する凹凸成形工程とを含み、前記凹凸成形工程は、レーザーにより前記摺動面を削るレーザー加工工程を含み、前記凹凸形状は、前記糸条と接する接触部位を含む接触面と、前記接触面に対してくぼんだ凹部とが、規則性を持って交互に連続して配置されており、前記接触面の高さ位置が揃っている。
【0017】
第5の発明によれば、摺動面の表面がレーザーで削られ、糸条より微細な凹凸形状が成形される。凹凸形状は、糸条が接する接触面と、接触面よりくぼんだ凹部が規則性を持って配置される。レーザー加工であれば、高温炉で熱処理加工をする場合に比べて微細な表面形状の加工が容易となり、同じ表面形状を繰り返して再現できる。そのため、繊維用ガイドの製品間における摺動面の個体差が生じるのを抑制でき、糸品質を安定させることができる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明に記載の繊維用ガイドの製造方法であって、前記凹凸形状は、前記接触面が曲面形状に成形される。
【0019】
第6の発明によれば、摺動面において滑らかな表面形状を成形できる。よって、摺動する糸条への摩擦が抑制される。
【0020】
第7の発明は、第5または第6の発明による繊維用ガイドの製造方法であって、前記凹凸形状は、前記摺動面の正面視において前記接触面が円を呈するように成形される。
【0021】
第7の発明によれば、摺動面に、より滑らかな表面形状を成形できる。よって、摺動する糸条の引っ掛かりがより抑制され、糸条への摩擦が低減される。
【0022】
第8の発明は、第5から第7のいずれか一の発明による繊維用ガイドの製造方法であって、前記凹凸成形工程は、前記レーザー加工工程の後、前記本体を焼成する熱処理工程を含む。
【0023】
第8の発明によれば、レーザー加工工程で凹部の縁に発生したエッジが滑らかになる。よって、摺動する糸条の引っ掛かりが抑制される。
【0024】
第9の発明は、第5から第8のいずれか一の発明による繊維用ガイドの製造方法であって、前記レーザー加工工程は、UVレーザーが用いられる。
【0025】
第9の発明によれば、UVレーザーは微細加工に適しており、金属より粒子が粗い焼結体に対しても、安定した微細な凹凸形状を成形できる。
【0026】
第10の発明は、第5から第9のいずれか一の発明による繊維用ガイドの製造方法であって、前記本体は、アルミナセラミックスからなる。
【0027】
第10の発明によれば、アルミナセラミックスは化学的に安定しており機械的強度が強いため、繊維用ガイドの耐摩耗性が向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上記の各発明の構成をもつことにより、摺動する糸条に生じる摩擦が摺動面全体において一様に低減される繊維用ガイドとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】繊維製造装置の一部分を示す模式図とオイリングガイド(繊維用ガイド)の断面を示す図である。
図2】第1実施形態に係る凹凸形状の正面視における配列を示す図である。
図3】第1実施形態に係る凹凸形状の断面形状を示す図である。
図4】第1実施形態に係る凹凸形状の変更例を示す図である。
図5】第2実施形態に係る凹凸形状の正面視における配列を示す図である。
図6】第2実施形態に係る凹凸形状の断面形状を示す図である。
図7】第2実施形態に係る凹凸形状の変更例を示す図である。
図8】比較例1の加工表面を示す図である。
図9】実施例1の加工表面を示す図である。
図10】実施例2の加工表面を示す図である。
図11】比較例1の表面形状の粗さを示す図である。
図12】実施例1の表面形状の粗さを示す図である。
図13】糸条にかかる張力を測定する装置の模式図である。
図14】実施例1と比較例1について、糸条にかかる張力測定結果を示す図である。
図15】比較例1のスカム発生状態を示す図である。
図16】実施例1のスカム発生状態を示す図である。
図17】実施例1及び比較例1~3について、加工表面の油剤保持状態を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<繊維用ガイドの構成(第1実施形態)>
先ず、本発明の第1実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る繊維用ガイドは、合成繊維、天然繊維等を製造する繊維製造装置に備えられ、紡糸後の糸条Yを案内するものである。繊維用ガイドとしては、例えばオイリングガイド、スネールガイド、ドッグテールガイド、フックガイド、スリットガイド等、種々のガイドが挙げられる。本実施形態に係る繊維用ガイドとして、糸条Yを保護するための油剤を供給するオイリングガイド1を説明する。図1に示すように、繊維製造装置には、紡糸ノズル15、オイリングガイド1、複数のガイド16等が備えられている。
【0031】
繊維製造装置は、繊維の原料であるポリマーを溶融して紡糸ノズル15から吐出して複数本の糸条Yを形成し、冷却して固化させる。紡糸された糸条Yは、先ずオイリングガイド1を経由して、複数本が束ねられた状態で糸条Yの延在方向に沿って一方向に移動する。オイリングガイド1は、糸条Yを案内しながら、後工程での糸条Yへのダメージを軽減させると共に、糸条Yのまとまりを向上させる目的で、潤滑剤が含まれる油剤を糸条Yに付着させる。
【0032】
オイリングガイド1は、焼結体からなる本体2を備えている。本体2を構成する焼結体は、セラミックス、焼結合金等を適宜選択できる。セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、炭化ケイ等、種々のセラミックスが挙げられる。セラミックスは、金属と比べて硬度が高く、耐熱性、耐摩耗性、耐酸化性、耐食性を備えている。焼結合金としては、超硬合金、サーメットが挙げられる。超硬合金は、硬さ、耐摩耗性、靭性をバランスよく備えている。サーメットは、セラミックスの高硬度、耐熱性、耐摩耗性などの性質と、金属の粘性、靭性などの性質を兼ね備えている。
【0033】
本実施形態に係るオイリングガイド1の本体2には、焼結体としてアルミナセラミックスが選択される。アルミナセラミックスは、強度及び硬度が高く、耐熱性、耐食性、耐摩耗性、電気絶縁性に優れており好適である。
【0034】
オイリングガイド1の本体2は、糸条Yを案内する案内溝3を備える。案内溝3は糸条Yの移動する方向を長手方向として成形されている。糸条Yは、案内溝3に沿って一方向へ移動する。また、本体2は案内溝3の底面に、油剤を吐出する吐出口4、移動途中の糸条Yの延在方向における一部分が摺動する摺動面5を備えている。吐出口4に連通する嵌合穴6には、接続管17が接続され、接続管17及び導管18を介してポンプ19から油剤が供給されている。そのため、紡糸ノズル15の多数の孔から吐出された糸条Yは、オイリングガイド1に向かって送られて案内溝3に入り、そこで一本の糸条Yに束ねられ、かつ摺動面5に押し当てられながら移動して吐出口4から吐出される油剤と接触する。これにより、糸条Yに油剤が付着される。
【0035】
オイリングガイド1の本体2は、案内溝3を構成する凹みを有する面を前面2aとして案内溝3の幅方向を左右方向としたとき、左右の両側面、後面2b、上面2c及び下面2dを有するブロック状とされている。その外形は、側方から見て台形であり、側面の形状は、前側の辺と後側の辺とが互いに平行であり、それら前後の辺に対し上側と下側の辺は傾斜されている。案内溝3は、本体2を貫通して上面2cの端から下面2dの端まで延びている。
【0036】
案内溝3の底面には、案内溝3を横切って左右方向に長い溝状に成形された、複数のオイル溜り7が設けられている。各オイル溜り7は、互いに同一形状であり、吐出口4の下流側に、糸条Yの移動方向に沿って並べて配置されている。オイル溜り7の配置や数は、任意に設定される。オイル溜り7は、案内溝3の底面を溝状に窪ませることにより、吐出口4で糸条Yに付着された油剤のうち、余分に付着された油剤を受け入れ可能としている。一方、オイル溜り7を通過する糸条Yに付着されている油剤が足りない場合は、オイル溜り7に捕捉されていた油剤が糸条Yに付着される。このように、オイル溜り7によって糸条Yに付着される油剤の過不足が調整される。なお、各オイル溜り7の形状は、異なる形状に設定してもよい。
【0037】
摺動面5は、その表面にレーザー加工が施されており、糸条Yより微細な凹凸形状10を有している。図2は、摺動面5の表面を正面から見た模式図であり、凹凸形状10の配列を示している。また、図3は、凹凸形状10の断面形状を示している。凹凸形状10は、糸条Yと接する接触部位11aを含む凸状の接触面11と、摺動面5が削られ接触面11よりくぼんだ凹部12を有している。
【0038】
図3に示すように、接触面11と凹部12は、凹凸形状10の断面が山と谷を繰り返す波形状になるように、それぞれ曲面形状に成形されている。凹凸形状10の凸状部分は、接触面11である山の頂点から凹部12である谷の底に向かって裾が広がるように曲線状に成形されている。ここで、山の頂点と谷の最下点を結んだ中腹上において、高さ方向に二等分する位置を連続して通る面を仮想平面Qとする。この場合、仮想平面Qより上側の部分が接触面11に相当する。接触面11は、摺動面5の正面視において円を呈している。糸条Yは、接触面11の高さ位置P1に沿って接触面11に接する。また、接触面11と接触面11の間において曲面状にくぼんだ部分、すなわち仮想平面Qより下側の部分が凹部12に相当する。
【0039】
接触面11と凹部12は、図3に示すように規則性を持って交互に連続して配置されている。また、図2において配列された円は、凹凸形状10の山と谷、すなわち接触面11と凹部12を表している。円の大きさを定めることによって、凹凸形状10における接触面11と凹部12の大きさや配置間隔が設定されている。なお、摺動面5の方向を図2に示す上下方向、左右方向に定めて説明する。
【0040】
凹凸形状10は、図2に示す円の配列に合わせて、接触面11と凹部12がそれぞれ等間隔で配置されている。具体的には、凹部12が左右方向に等間隔L1になるように配置され、接触面11が凹部12と凹部12の間に配置されている。さらに接触面11と凹部12の配列が、上下方向に等間隔L2で連続して配置されている。凹部12の深さH1(接触部位11aと凹部12の底との高低差)は任意に設定される。凹凸形状10は、図3に示すように凹部12がすべて同じ深さH1で構成されても良く、図4に示すように凹部12a,12bが規則的に異なる深さH2,H3で構成されても良い。接触面11は、それぞれ突出した高さ位置P1が揃っている。
【0041】
<繊維用ガイドの構成(第2実施形態)>
次に、第2実施形態に係るオイリングガイド1(繊維用ガイド)について説明する。なお、第1実施形態と共通する構成については説明を省略し、異なる構成について説明する。図5は、本体2における摺動面5の表面を正面から見た図である。また、図6は、凹凸形状20の断面形状を示している。図5,6に示すように、摺動面5は、その表面にレーザーによる穴あけ加工が施されており、微細な凹凸形状20を有している。凹凸形状20は、糸条Yと接する接触部位21aを含む接触面21と、摺動面5が削られ接触面21よりくぼんだ凹部22を有している。
【0042】
接触面21と凹部22は、上下方向及び左右方向に規則性を持って交互に連続して配置されている。具体的には、摺動面5の正面視において、凹部22として複数の円形状の穴が上下方向及び左右方向に等間隔L3で設けられている。凹部22と凹部22の間において、摺動面5の表面が削られず残っている部位が接触面21に相当する。接触面21は、高さ位置P2が揃っている。糸条Yは、接触面21の高さ位置P2に沿って接触面21に接する。
【0043】
凹部22は、曲面形状に成形されている。なお、本体2はレーザーによる穴あけ加工の後、熱処理が施されており、穴あけ加工で発生した凹部22のエッジが除かれている。これにより凹凸形状20は、凹部22と接触面21の境界において微細な突起等がなく滑らかな状態に成形されている。凹部22の大きさ、深さ(接触面21との高低差)、配置間隔等は、任意に設定される。例えば、図6に示すように同じ深さH4の凹部22が配設された構成であっても良く、図7に示すようにそれぞれ異なる深さH5,H6を有する凹部22a,22bが配設された構成であっても良い。
【0044】
<繊維用ガイドの製造工程(第1実施形態)>
次に、上記実施形態に係るオイリングガイド1(繊維用ガイド)の製造工程について説明する。第1実施形態に係るオイリングガイド1の製造工程においては、アルミナセラミックスの原料となる無機質個体粉末等を用いて、オイリングガイド1の本体2の成形体が成形される。図1を参照として、本体2は凹みを有するブロック状に成形される。具体的には、本体2の前面2aが糸条Yの移動方向に沿って凹み、案内溝3が成形される。案内溝3は、本体2を貫通して上面2cの端から下面2dの端まで延びている。
【0045】
案内溝3は、その底面に糸条Yが摺動する摺動面5を備えている。案内溝3の底面における上流側には、油剤を吐出する吐出口4が設けられ、下流側には、オイル溜り7として複数の窪みが設けられる。オイル溜り7は、案内溝3を横切って左右方向(案内溝3の幅方向)に長い溝状に成形され、糸条Yの移動方向(案内溝3の長手方向)に沿って並べて配置される。また、本体2には、吐出口4に連通するように嵌合穴6が設けられる。本体2の成形体は、公知の焼成方法により焼成され、アルミナセラミックスの焼結体となる。
【0046】
オイリングガイド1の製造工程は、研磨工程と凹凸成形工程を含んでいる。研磨工程では、焼成された本体2の表面に研磨加工が施される。研磨加工は、例えばバレル研磨後、鏡面研磨が施される。鏡面研磨は、ダイヤモンドなどの研磨剤が用いられる。研磨工程において、本体2の表面は凹凸が可能な限り取り除かれ、鏡面状態に加工される。
【0047】
凹凸成形工程は、研磨工程の後に行われ、本体2に設けられた案内溝3の摺動面5に糸条Yより微細な凹凸形状10が成形される。具体的には、研磨工程において平坦に揃えられた摺動面5の表面を、レーザーによって削り込むレーザー加工が施される(レーザー加工工程)。この工程により、図3に示すように、摺動する糸条Yと接する接触部位11aを含む凸状の接触面11と接触面11に対してくぼんだ凹部12を有する凹凸形状10が成形される。
【0048】
接触面11と凹部12は、凹凸形状10の断面が山と谷を繰り返す波形状となるように、曲面形状に成形される。また、凹凸形状10の凸状部分は、接触面11である山の頂点から凹部12である谷の底に向かって裾が広がるように曲線状に成形される。山の頂点と谷の最下点を結んだ中腹上において、高さ方向に二等分する位置を連続して通る面を仮想平面Qとした場合、仮想平面Qより上側の部分が接触面11に相当する。接触面11は、摺動面5の正面視において円を呈するように成形される。また、接触面11と接触面11の間において曲面状にくぼんだ部分、すなわち仮想平面Qより下側の部分が凹部12に相当する。
【0049】
また、接触面11と凹部12は、規則性を持って交互に連続して配置される。図2において配列された円は、摺動面5の正面視における凹凸形状10の山と谷、すなわち接触面11と凹部12を表している。この円の配列に合わせて接触面11と凹部12からなる凹凸形状10を成形する。なお、円の中心とその周辺は、接触面11の接触部位11aまたは凹部12の底に相当する。円の大きさを定めることによって、凹凸形状10の接触面11及び凹部12の大きさや配置間隔が設定される。
【0050】
摺動面5の表面が削られて成形された凹凸形状10においては、凹部12の底が左右方向に等間隔L1となるように凹部12が配置され、それぞれの凹部12と凹部12の間に接触面11が配置される。さらに接触面11と凹部12の配列が、上下方向に等間隔L2で連続して配置される。このようにして、摺動面5は均一な表面状態に加工される。
【0051】
凹部12の深さ(接触部位11aと凹部12の底との高低差)は、任意に設定される。凹凸形状10は、図3に示すようにすべての凹部12が同じ深さH1で成形されている。接触面11は、それぞれ突出した高さ位置P1が揃っている。また、同じ深さH1を有する凹部12に代えて、図4に示すように、凹部12a,12bが規則的に異なる深さH2,H3で成形されても良い。
【0052】
レーザー加工工程で用いるレーザーは、適宜選択される。例えば、フェムト秒レーザー、UVレーザー等は、穴径や加工幅を100μm以下とする微細加工が可能であり、摺動面5に微細な凹凸形状10を成形できる。セラミックスは金属と比べて粒子が粗く、レーザー光を衝突させて破壊させると微小な表面の荒れが発生する場合があるため、より波長の短いUVレーザーが好適である。UVレーザーであれば、レーザー光が熱として吸収され、溶けたような表面状態になり、より滑らかな表面加工を施すことができる。よって、走行する糸条Yへの摩擦を低減させることができる。
【0053】
<繊維用ガイドの製造工程(第2実施形態)>
第2実施形態に係るオイリングガイド1の製造工程は、研磨工程と凹凸成形工程を含んでいる。研磨工程については、第1実施形態と実質的に同じであるため説明を省略する。
【0054】
第2実施形態に係るオイリングガイド1の凹凸成形工程について説明する。研磨工程の後、凹凸成形工程において、本体2に設けられた案内溝3の摺動面5に糸条Yより微細な凹凸形状20が成形される。具体的には、研磨工程において平坦に揃えられた摺動面5の表面にレーザーを用いた穴あけ加工が施され、図6に示すように摺動面5の表面が削られてくぼんだ凹部22が成形される。図5に示すように、凹部22は正面視で円形状の穴であり、上下方向及び左右方向に等間隔L3で配設される。それぞれの凹部22と凹部22の間には、摺動する糸条Yと接する接触部位21aを含む接触面21が成形される。このようにして、接触面21と凹部22が規則性を持って交互に連続して配置された凹凸形状20が摺動面5に成形される。なお、凹凸成形工程においてレーザーにより摺動面5を削り、穴あけ加工を施す工程が本発明における「レーザー加工工程」に相当する。
【0055】
凹部22は図6に示すように、曲面形状に成形される。凹部22の大きさ、深さ(接触面21との高低差)、配置間隔等は、任意に設定される。例えば、摺動面5に穴あけされる凹部22がすべて同じ深さH4で成形されても良い。また、凹部22a,22bがそれぞれ異なる深さH5,H6で成形されても良い(図7参照)。接触面21は、摺動面5の表面が削られず残った部位から構成され、高さ位置P2が揃っている。レーザー加工工程で用いるレーザーは適宜選択でき、第1実施形態と同様にUVレーザーが好適である。
【0056】
凹凸成形工程は、レーザー加工工程の後、本体2を焼成する熱処理工程を含む。熱処理工程では、本体2が再焼成される。このようにセラミックスを再焼成すると、表面の結晶が成長し、穴あけ加工で凹部22の縁に発生したエッジが滑らかになる。これにより、凹凸形状20は凹部22と接触面21の境界において微細な突起等がなく、滑らかな状態に成形される。
【0057】
<作用・効果>
図1に示すように、上記実施形態に係るオイリングガイド1(繊維用ガイド)を、紡糸された糸条Yの移動方向に沿って設置すると、糸条Yはオイリングガイド1の案内溝3を通って下流方向へ移動する。具体的には、紡糸ノズル15の多数の孔から吐出された糸条Yは、オイリングガイド1へ送られて、案内溝3で一本の糸条Yに束ねられ、かつ摺動面5に押し当てられながら移動する。オイリングガイド1の吐出口4からは油剤が供給され、糸条Yに付着する。糸条Yは、摺動面5における接触面11,21と接しながら摺動する。摺動面5を微細な凹凸形状10,20に加工することにより、接触面11,21の面積が小さくなり、摺動する糸条Yへの摩擦を抑えることができる。また、凹部12,12a,12b,22,22a,22bは油剤の保持機能を有し、油剤を糸条Yへ不足なく安定して付着させる。
【0058】
上記第1、第2実施形態に係るオイリングガイド1は、摺動面5において、糸条Yに対して微細でかつ規則性を持った凹凸形状10,20が成形されている。摺動面5は、接触面11,21の高さ位置P1,P2が揃った、全体として滑らかな表面形状を有している。よって、糸条Yが接する接触部位11a,21aの高さ位置が揃い、糸条Yに対する摩擦が摺動面5全体において一様に低減される。また、糸条Yへの摩擦が一様になれば、製造される糸の品質を安定させることができる。
【0059】
第1、第2実施形態に係るオイリングガイド1は、摺動面5において、糸条Yに付着させた油剤が微細な凹凸形状10,20の凹部12,12a,12b,22,22a,22bに留まり、油剤の保持機能が向上する。また、凹凸形状10,20が規則性を持つことにより、油剤が均一に保持されうる。
【0060】
第1、第2実施形態に係るオイリングガイド1の本体2は、アルミナセラミックスからなる。アルミナセラミックスは化学的に安定しており機械的強度が強いため、オイリングガイド1の耐摩耗性が向上する。
【0061】
第1実施形態に係るオイリングガイド1の摺動面5は、曲面形状の接触面11を有する。糸条Yは、滑らかな接触面11に接しながら摺動するため、糸条Yへの摩擦が低減される。また、接触面11は、摺動面5の正面視において円を呈する。これにより、摺動する糸条Yの引っ掛かりがより抑制され、糸条Yへの摩擦が低減される。
【0062】
第2実施形態に係るオイリングガイド1の摺動面5は、その正面視において円形状の凹部22,22a,22bを有する。これにより、摺動面5の正面視において角を有していない凹部22,22a,22bが配置されている。そのため、接触面21と凹部22,22a,22bの境界における糸条Yの引っ掛かりが抑制される。
【0063】
上記第1、第2実施形態に係るオイリングガイド1(繊維用ガイド)の製造工程によれば、摺動面5の表面がレーザーで削られ、糸条Yより微細な凹凸形状10,20が成形される。凹凸形状10,20は、糸条Yが接する接触面11,21と、凹部12,12a,12b,22,22a,22bが規則性を持って配置される。レーザー加工であれば、高温炉で熱処理加工をする場合に比べて微細な表面形状の加工が容易となり、同じ表面形状を繰り返して再現できる。そのため、オイリングガイド1の製品間において摺動面5の表面形状に個体差が生じるのを抑制でき、糸品質を安定させることができる。
【0064】
第1、第2実施形態に係るオイリングガイド1は、摺動面5にレーザー加工が施される。レーザー加工による表面処理を行うことにより、例えば従来の熱処理による梨地肌加工(図8参照)と比較して、熱処理の時間を大幅に減少できる。さらに、高温炉の使用によるエネルギーの消費も抑えられ、二酸化炭素の排出量の削減につながる。また、レーザーを用いれば、凹凸の形状パターンや大きさを使用用途に応じて設定し、微細な表面形状を設計通りに成形できる。このようにレーザー加工は、微細な表面加工のコントロールが可能であるため、凹凸の形状や配置等を適宜設定することによって、より低摩擦で油剤の保持機能が高い表面形状を成形できる。
【0065】
第1、第2実施形態に係るレーザー加工工程では、UVレーザーが用いられる。UVレーザーは微細加工に適しており、金属より粒子が粗いセラミックスに対しても、安定した微細な凹凸形状を成形できる。
【0066】
第1、第2実施形態に係るオイリングガイド1は、研磨工程において鏡面状態にされた摺動面5の表面に、レーザー加工が施される。レーザー加工は出力される光を制御し、加工面に対し非接触で照射部分を融解・蒸発させるため、このようにレーザーが照射される摺動面5の表面すなわち加工面を平坦に揃えることにより、加工面までのレーザー出力の距離をより正確なものとすることができる。よって、精度の高い凹凸形状10,20を成形できる。
【0067】
第1実施形態に係るオイリングガイド1の製造工程において、凹凸形状10の接触面11は曲面形状に成形される。さらに接触面11は、摺動面5の正面視において円を呈するように成形される。これにより、摺動面5において滑らかな表面形状を成形できる。よって、摺動する糸条Yの引っ掛かりが抑制され、糸条Yへの摩擦が低減される。
【0068】
第2実施形態に係るオイリングガイド1の製造工程において、凹凸形状20は、凹部22,22a,22bが摺動面5の正面視において円形状に成形される。これにより、摺動面5の正面視において角を有していない凹部22,22a,22bが配置され、滑らかな表面形状を成形できる。よって、接触面21と凹部22,22a,22bの境界における糸条Yの引っ掛かりが抑制される。
【0069】
上記第2実施形態に係るオイリングガイド1の製造工程において、凹凸成形工程は、レーザー加工工程の後、本体2を焼成する熱処理工程が行われる。セラミックスからなる本体2を再焼成することにより、レーザー加工工程で凹部22,22a,22bの縁に発生したエッジが滑らかになる。よって、摺動する糸条Yの引っ掛かりが抑制される。
【0070】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
アルミナセラミックス(焼結体)からなるオイリングガイド1(繊維用ガイド)の本体2を、バレル研磨した後、鏡面研磨した。鏡面状態の表面にUVレーザーを用いて微細な凹凸を成形する加工をした。表面は山と谷を繰り返す波形状に成形されており、接触面31と凹部32が規則性を持って交互に連続して配置されている(図9,12参照)。
[実施例2]
アルミナセラミックスからなる本体2をバレル研磨した後、鏡面研磨した。鏡面状態の表面にUVレーザーを用いて複数の微細な穴をあける加工をした。その後、従来の熱処理を行った。正面視において円形状の穴(凹部33)が規則性を持って配列されている。凹部33と凹部33の間は接触面34となる(図10参照)。
[比較例1]
アルミナセラミックスからなる本体2をバレル研磨した後、鏡面研磨した。熱処理(再焼成)により、表面に結晶を隆起させ梨地肌にする加工をした(図8,11参照)。
[比較例2]
アルミナセラミックスからなる本体2をバレル研磨した後、鏡面研磨した。
[比較例3]
アルミナセラミックスからなる本体2をバレル研磨した。その後の表面加工は行わない。
【0071】
<表面の粗さについて>
図11,12は、比較例1及び実施例1に係る表面仕上げについて、表面の粗さチャートの特徴をそれぞれ示した図である。従来の熱処理によって梨地肌とした比較例1(図11参照)に比べて、実施例1のようにUVレーザー加工が施された表面(図12参照)は、凹凸形状の大きさや形状が安定し、低摩擦な表面状態が得られる。
【0072】
<張力とスカムの発生量について>
図13に示すように、実施例1、及び比較例1に係るオイリングガイド1(繊維用ガイド)に、それぞれ糸パッケージ40から送り出された糸条Yを走行させた。オイリングガイド1に対して入側41(走行方向上流)の張力T1、出側42(走行方向下流)の張力T2を測定した。なお、糸条Yがオイリングガイド1の摺動面を走行すると、糸条Yの油剤と表面の微細な凹凸形状によって削られたと推測される糸条Yのカスの混合物がスカムSとして付着する。図14は、張力T1,T2の測定結果とスカム発生量を示す図である。図15は比較例1、図16は実施例1におけるスカムSの発生状態をそれぞれ示している。実施例1のオイリングガイド1は、比較例1に比べて上流と下流の張力の差(T2-T1)が小さく、スカムSの発生が少なくなっており、糸条Yへの摩擦が抑えられている。
【0073】
<油剤保持機能について>
実施例1及び比較例1~3に係る表面仕上げがそれぞれ施された、棒状のアルミナセラミックスを着色した油剤でディップコーティングした。その後、一定時間大気中に放置して表面に付着した油剤の経過観察を行った。図17は、それぞれの表面(A:実施例1、B:比較例1、C:比較例2、D:比較例3)における油剤の保持状態を示す図である。実施例1は比較例1~3と比較して、表面に薄く均一な油剤膜Fが生成された。このように実施例1の表面仕上げを施すことにより、アルミナセラミックスの表面に油剤がムラなく均一に付着する。すなわち、油剤の保持機能がより高い摺動面を得ることができる。よって摺動する糸条との摩擦が抑えられ、糸条の摩耗の減少を図ることができる。
【0074】
<変更例>
本発明における繊維用ガイド及びその製造方法は、上記第1及び第2の実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
【0075】
本発明における「繊維用ガイド」として、オイリングガイド1を例示して説明したが、これに限られず、例えばスネールガイド、ドッグテールガイド、フックガイド、スリットガイド等、他の様々な繊維用ガイドも含まれるものである。また、オイリングガイド1は、上記実施形態に係る形状のものに限られず、他の形状を適用できる。繊維用ガイドの本体を構成する焼結体は、アルミナセラミックスに限られず、他の材料を用いたセラミックス、または超硬合金、サーメット等の焼結合金を適宜選択できる。
【0076】
摺動面における凹凸形状は、上記実施形態に限られず、例えば接触部位を含む接触面として半球体が連続して配設された構成、曲面形状を有する接触面と正面視において円形状である凹部が交互に配設された構成等、他の構成を採用できる。凹部22の正面視における形状は円形状に限られず、他の形状に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0077】
1 オイリングガイド(繊維用ガイド)
2 本体
3 案内溝
4 吐出口
5 摺動面
10、20 凹凸形状
11、21 接触面
11a、21a 接触部位
12、22 凹部
Y 糸条
P1、P2 高さ位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17