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特開2023-30835既設排水管の補修方法及び既設排水管の補修に用いられる薬剤吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030835
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】既設排水管の補修方法及び既設排水管の補修に用いられる薬剤吐出装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/164 20060101AFI20230301BHJP
   B29C 73/02 20060101ALI20230301BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
F16L55/164
B29C73/02
E03C1/122 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136194
(22)【出願日】2021-08-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年10月5日に撮影した、本願に係る既設排水管の補修方法の発明を完成させるための社内で実施した実験の様子を撮影した動画のメールまたはDVDによる頒布。 〔刊行物等〕 令和3年1月15日に、UR都市機構 清瀬旭が丘団地において、本願に係る既設排水管の補修方法の発明の有効性を確認するための実証実験の実施。 〔刊行物等〕 令和3年7月30日に、UR都市機構 アクティ学園西町において、本願に係る既設排水管の補修方法の発明の有効性を確認するための実証実験の実施。
(71)【出願人】
【識別番号】514234333
【氏名又は名称】河原田 祥正
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(72)【発明者】
【氏名】河原田 祥正
【テーマコード(参考)】
2D061
3H025
4F213
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AB05
2D061AB07
3H025EA01
3H025EB04
3H025EB13
3H025EC01
3H025ED02
4F213AG08
4F213WA58
4F213WA94
4F213WB01
4F213WM01
(57)【要約】
【課題】既設排水管からの漏水等を下階側から作業性良く補修できる補修方法を提供する。
【解決手段】既設排水管の補修方法であって、薬剤吐出口を先端に備えた外筒と外筒の内部に挿入された押し子とを備える薬剤吐出装置を準備する工程と、外筒の外周に補修用短管を挿通させてとどめさせる工程と、切断された既設排水管に、外筒に補修用短管を挿通させてとどめさせた状態の薬剤吐出装置を挿入する工程と、外筒から押し子を後端の方向に引き出して形成される外筒の先端側の空間に薬剤を貯留させる工程と、薬剤を貯留させた外筒に対して、押し子を先端の方向に押し込むことにより、薬剤吐出口から薬剤を吐出させることにより、既設排水管と補修用短管との間に形成された隙間に薬剤を塗布する工程と、隙間に薬剤を塗布した後、薬剤吐出装置を既設排水管から取り外す工程と、を備え、薬剤が、液状の止水剤である既設排水管の補修方法を用いる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設排水管の補修方法であって、
薬剤吐出口を先端に備えた外筒と前記外筒の内部に挿入された押し子とを備える薬剤吐出装置を準備する工程と、
前記外筒の外周に補修用短管を挿通させてとどめさせる工程と、
切断された既設排水管に、前記外筒に前記補修用短管を挿通させてとどめさせた状態の前記薬剤吐出装置を挿入する工程と、
前記外筒から前記押し子を後端の方向に引き出して形成される前記外筒の先端側の空間に薬剤を貯留させる工程と、
前記薬剤を貯留させた前記外筒に対して、前記押し子を前記先端の方向に押し込むことにより、前記薬剤吐出口から前記薬剤を吐出させることにより、前記既設排水管と前記補修用短管との間に形成された隙間に前記薬剤を塗布する工程と、
前記隙間に前記薬剤を塗布した後、前記薬剤吐出装置を前記既設排水管から取り外す工程と、を備え、
前記薬剤が、液状の止水剤であることを特徴とする既設排水管の補修方法。
【請求項2】
請求項1に記載の既設排水管の補修に用いられ、
前記外筒と、前記押し子と、前記外筒の外周の所定の位置に固定されたプレートとを備え、
前記外筒の先端に、前記補修用短管を封じる先端部材が配されており、
前記プレートは、前記補修用短管の外径よりも大きい径を有することを特徴とする既設排水管の補修に用いられる薬剤吐出装置。
【請求項3】
前記プレートは、前記既設排水管の内径よりも大きい径を有する請求項2に記載の既設排水管の補修に用いられる薬剤吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設排水管を補修するための既設排水管の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅等の高層建物の流し台,洗面所,浴室,トイレ等の設備から発生する排水は、各設備の備えられた室内から通じる横枝管を経て、各階を貫通する共用の排水立管から汚水槽等に流される。
【0003】
高層建物の排水立管等の既設排水管は、数十年の経年により、錆や劣化による破れにより漏水を生じさせることがある。漏水を止めるために既設排水管を更生補修する種々の方法は知られている。代表的な補修方法としては、既設排水管の内面をエポキシ樹脂等の樹脂でコートして漏水箇所を埋める樹脂ライニング工法、既設排水管の内部に新たな管を挿入して新たな管により通水路を確保するパイプインパイプ工法、または、既設排水管の漏水箇所を外側から樹脂等で埋めるパッチ工法等が知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1は、複数階のスラブ床面を構成するコンクリートスラブを貫通して配設された排水立管の更生方法であって、更生する当階とその上階の間の排水立管を、当階のスラブ床面から所定の位置および上階のスラブ天井面から所定の位置で切断して、その間の連結部を除去する切断工程と、当階のスラブ床面及び/又は上階のスラブ天井面に残存する排水立管のスラブ貫通部の内面を研磨洗浄後、その内面にエポキシ樹脂皮膜を形成する貫通部更生工程と、切断工程で除去した部分に、新たな管を継ぎ足す連結部更生工程と、からなることを特徴とする排水立管の更生方法を開示する。
【0005】
また、例えば、下記特許文献2は、老朽化した既設排水管の中に、この既設排水管より小さな管径の新管を挿入し、管内側から突合せ溶接して新管同志を接合した後、この新管と既設排水管との空隙部にモルタル等の充填材を圧入充填して、既設排水管の内面を補修する工法を開示する。
【0006】
また、例えば、下記特許文献3は、内部に液体が流れる流水管を補修するための流水管補修工法であって、流水管の補修対象箇所の上にパッチ部材を貼着又は接着剤を配置する工程1;パッチ部材が貼着又は接着剤が配置された流水管を防水性に囲んで覆う包囲カバーを取り付ける工程2を有し、流水管が、建築物内に配管され、工程1の後から工程2において包囲カバーを取り付けるまでの間、補修対象箇所からの液体の漏洩が停止している流水管補修工法を開示する。
【0007】
また、例えば、下記特許文献4は、スラブを貫通する既設排水管の、スラブ貫通部からの漏水を補修する方法であって、スラブを貫通する既設排水管のスラブから出る突出部分を残すようにして、既設排水管の一部分を切断して取り除き、残存する残存既設排水管を形成する工程と、残存既設排水管の内周面を研磨する工程と、既設排水管の内径よりも小さい外径を有する主部と、主部の一端側に既設排水管の内径よりも大きい外径の径大部とを有する樹脂製である短管を準備する工程と、短管の少なくとも主部の外周面に液状の水硬化性の止水剤を塗布した後、短管を残存既設排水管に挿入し、外周面を残存既設排水管の内周面に止水剤を介して密着させる工程と、を備える漏水補修方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-57643号公報
【特許文献2】昭和62-266287号公報
【特許文献3】特開2014-5930号公報
【特許文献4】特開2019-184047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4に開示された漏水補修方法の場合、スラブを貫通する既設排水管のスラブから出る突出部分を残すようにして、既設排水管の一部分を切断して取り除き、残存する残存既設排水管に残存既設排水管の内径よりも大きい外径の径大部を有する短管を上階側から挿入することにより、残存既設排水管内に挿入された短管を係止している。このような方法の場合、上階側からしか作業ができず、上階側の住人の協力が得られない場合には、作業ができなかった。
【0010】
本発明は上述したような問題を解決すべく、既設排水管を下階側から作業性良く補修することができる既設排水管の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面は、既設排水管の補修方法であって、薬剤吐出口を先端に備えた外筒と外筒の内部に挿入された押し子とを備える薬剤吐出装置を準備する工程と、外筒の外周に補修用短管を挿通させてとどめさせる工程と、切断された既設排水管に、外筒に補修用短管を挿通させてとどめさせた状態の薬剤吐出装置を挿入する工程と、外筒から押し子を後端の方向に引き出して形成される外筒の先端側の空間に薬剤を貯留させる工程と、薬剤を貯留させた外筒に対して、押し子を先端の方向に押し込むことにより、薬剤吐出口から薬剤を吐出させることにより、既設排水管と補修用短管との間に形成された隙間に薬剤を塗布する工程と、隙間に薬剤を塗布した後、薬剤吐出装置を既設排水管から取り外す工程と、を備え、薬剤が、液状の止水剤である既設排水管の補修方法である。このような方法によれば、既設排水管からの漏水等を下階側から作業性良く補修することができる。
【0012】
また、本発明の他の一局面は、上記既設排水管の補修に用いられ、外筒と、押し子と、外筒の外周の所定の位置に固定されたプレートとを備え、外筒の先端に、補修用短管を封じる先端部材が配されており、プレートは、補修用短管の外径よりも大きい径を有する薬剤吐出装置である。このような薬剤吐出装置によれば、外筒の先端に、補修用短管を封じる先端部材が配されていることにより、薬剤を補修用短管の管内に漏らさず、既設排水管と補修用短管との間に形成された隙間に薬剤を充分に塗布することができ、また、プレートが補修用短管の外径よりも大きい径を有することにより、プレートの上に補修用短管をとどめさせることができる。また、プレートが、既設排水管の内径よりも大きい径を有する場合には、既設排水管の補修中に、薬剤が既設排水管の外に漏出することを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既設排水管を下階側から作業性良く補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、既設排水管の施工対象となる切断された既設排水管50の準備について説明する工程説明図である。
図2図2は、既設排水管の補修に用いられる薬剤吐出装置10の模式断面図である。
図3図3は、薬剤吐出装置10に補修用短管20を配したときの様子を説明するための説明図である。
図4図4は、第1実施形態の既設排水管の補修方法を説明するための工程説明図である。
図5図5は、既設排水管の補修方法により補修された既設排水管50に新設管60を接続する方法を説明する工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る既設排水管の補修方法及び既設排水管の補修に用いられる薬剤吐出装置を、図面を参照して説明する。
【0016】
はじめに、図1を参照して、本実施形態の既設排水管の補修方法の施工対象となる、切断された既設排水管50(以下単に既設排水管50とも称する)を準備する工程を説明する。図1中、52は高層建物の各階を通過する既設の排水立管であり、fは漏水補修をされる上階のスラブ、cは下階のスラブであり、これらのスラブは例えばコンクリートスラブとして形成されている。また、h1,h2は補修対象となる漏水の原因となっているスラブf内の既設排水管50に発生した孔である漏水箇所である。漏水箇所h1,h2は既設排水管50が露出していないスラブfの内部で発生しているために、外側からは、直接、補修できない。また、rは既設排水管50の内部に発生したサビ等の汚物である。図1中の各要素は、排水立管52の長手方向の断面を模式的に示している。また、70はコアビット69を装着させたドライバーである。
【0017】
はじめに、図1(a)に示すように、漏水補修を実施する箇所の居住域を通過する既設の排水立管52の、断面x1と断面x2との間の排水立管52の一部分である排水管片51を切断して取り除き、図1(b)に示すような、排水管片51を切断して取り除いた後に残存する切断された既設排水管50を形成する。
【0018】
既設排水管50の内面には、居住年数や使用環境によってその程度は異なるが、既設排水管への通水により発生したサビやスラッジ等の汚物rが付着している。このような既設排水管の内面に付着したサビやスラッジ等の汚物は、補修に際して除去することが好ましい。そのために、図1(c)に示すように、既設排水管50の内面を、例えばコアビット69のような研磨部材を装着させたドライバー70を用い、その内面を研磨して平坦化する。
【0019】
このようにして、既設排水管の補修方法の施工対象となる切断された既設排水管が準備される。そして、このようにして準備された既設排水管50を補修するための本実施形態の既設排水管の補修方法について、以下に説明する。
【0020】
はじめに、実施形態の既設排水管の補修方法に用いられる薬剤吐出装置について、図2を参照して説明する。図2は、既設排水管の補修に用いられる、シリンジ状の薬剤吐出装置10の模式断面図である。図2中、1は外筒(シリンダ筒)であり、2は押し子であり、3はシール部材であり、4は薬剤吐出口Dを備えた先端部材であり、5は後端部材であり、6はプレートである。外筒1及び押し子2は、耐久性の観点から、金属製であることが好ましい。
【0021】
円筒状の外筒1の先端には薬剤吐出口Dを備えた先端部材4が配されている。先端部材4は、図3に示すように、後述する補修用短管20の先端を封じることにより、薬剤吐出口Dから吐出された薬剤を補修用短管の管内に漏らすことなく、既設排水管と補修用短管との間に形成された隙間に薬剤を塗布するために設けられる。このような先端部材としては、圧縮することにより変形し、補修用短管20の先端を封じることが可能な、ゴム、エラストマー、またはスポンジのような弾性材から形成されていることが好ましい。
【0022】
また、外筒1の後端には押し子2を紙面上下に移動可能に案内するための後端部材5が設けられている。後端部材5は移動する押し子2を支持するガイドとして作用する。また、押し子2の先端にはシール部材3が配されており、シール部材3は押し子2の移動に伴い、外筒1の内面との隙間をシールしながら摺動する。シール部材は、ゴムやエラストマー、またはスポンジのような弾性材から形成されていることが好ましい。また、プレート6は外筒1の外周の所定の位置に固定されている。
【0023】
プレート6は、図3に示すように、既設排水管の補修に用いられる補修用短管20を、薬剤吐出装置10の外筒1に挿通させてその外周にとどめさせるために設けられる。プレート6は上下方向に移動させるように調整可能であってもよい。プレート6の位置を調整することにより、既設排水管50の補修箇所の位置や長さに応じて、補修用短管20の配される位置を調整することができる。このようなプレート6は、補修用短管20の外径よりも大きい径を有することにより、プレート6上に補修用短管20を載置してとどめることができる。また、プレート6が、既設排水管50の内径よりも大きい径を有する場合には、後述するように、既設排水管50の補修中に、既設排水管50の下端を塞ぐことにより、薬剤が既設排水管50の外に漏出することを抑制できる。このようなプレートの材質は特に限定されないが、樹脂、各種金属、ゴム等が挙げられる。なお、外筒の外周に補修用短管を挿通させてとどめさせる方法としては、このようなプレートを用いる代わりに、先端部材4に弱接着力の粘着剤等で仮接着するようにして、外周にとどめさせる方法を採用してもよい。
【0024】
次に、このような薬剤吐出装置10を用いた、本実施形態の既設排水管の補修方法について、図4の工程説明図を用いて詳しく説明する。図4において、50は、図1に示したように準備された切断された既設排水管である。また、fは補修施工をする上階のスラブである。また、h1,h2はスラブf内で補修対象となる既設排水管50に発生した孔である漏水箇所である。また、30は液状の止水剤であり、31は硬化した止水剤であり、40は液状の止水剤30を貯留したカップである。図4中の各要素は、何れも既設排水管50の長手方向の断面を模式的に示している。
【0025】
図4(b)に示すように、漏水箇所h1,h2は既設排水管50が露出していないスラブfの内部に位置するために、スラブfを破壊しない限り、外側から直接、漏水箇所h1,h2からの漏水を補修できない。
【0026】
本実施形態の既設排水管の補修方法においては、図1に示したように、スラブfを貫通する既設排水管を残すようにして切断された既設排水管50を予め準備する。そして、好ましくは、施工の前に、切断された既設排水管50の内面を研磨して平坦化しておく。このようにして、補修対象となる切断された既設排水管50を予め準備する。
【0027】
そして、薬剤吐出装置10を準備し、図3に示したように、既設排水管50の補修に用いられる補修用短管20を外筒1に挿通させる。そして、補修用短管20は、外筒1の周囲の所定の位置に固定されたプレート6上に載置されて、その外周にとどめられる。補修用短管の材質は特に限定されないが、例えば、硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂材料で形成されていても、金属管であってもよい。なお、短管は、異種金属の接触による腐食を生じさせず、金属製の既設排水管を錆びさせにくい点から、硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂製であることがとくに好ましい。
【0028】
そして、図4(a)に示すように、薬剤吐出装置10の押し子2を後端の方向に引き出す。そして、押し子2を引き出すことによって形成された外筒1の先端の空間に液状の止水剤30を貯留させる。具体的には。例えば、カップ40に貯留された液状の止水剤30を外筒1の先端の空間に注ぎ込むことにより、外筒1の先端の空間に液状の止水剤30が貯留される。
【0029】
止水剤は、切断された既設排水管50と挿入された補修用短管20との間に形成される隙間を埋めて塞ぐことにより漏水箇所からの隙間への水の浸入を止めるようにして、既設排水管50と補修用短管20とを接着する。硬化した止水剤の厚さは特に限定されないが、例えば0.5~10mm、さらには、1~5mm程度であることが好ましい。
【0030】
液状の止水剤としては、隙間に充填したときに、補修用短管の外周面を既設排水管の内周面に止水剤を介して密着させて隙間を埋めて接着することのできる透水性の低い止水剤であれば特に限定なく用いられる。このような止水剤の具体例としては、例えば、水と接触する前は液状または粘凋体であり、硬化により空隙を埋めて塞ぐ、例えば、一液型ポリウレタン樹脂系の止水剤や、二液型ポリウレタン樹脂系の止水剤等が挙げられる。本実施形態の補修方法の実施においては、一液型ポリウレタン樹脂系の止水剤、とくには所定量の水と混合することにより所定の時間で硬化する水硬化性一液型ポリウレタン樹脂の止水剤であって硬化物がゴム弾性を示す止水剤が、水の存在により硬化し、また、発泡倍率が1倍以上である無発泡または低発泡のポリウレタン弾性体である場合には、硬化収縮せずに剛性を保つために高い止水効果と接着効果が得られる点から好ましい。このような水硬化性一液型ポリウレタン樹脂の止水剤の具体例としては、例えばハイセル(登録商標)OH(東邦化学工業(株)製)が挙げられる。なお、とくには、水硬化性一液型ポリウレタン樹脂にセメントが配合されている場合には、速硬化性が向上する点から好ましい。この場合、例えば、30~600秒間程度で止水剤が硬化する。所定の時間が経過することにより、硬化した止水剤が形成される。
【0031】
そして、図4(b)に示すように、既設排水管50に、補修用短管20を外筒1に挿通させてとどめさせた状態の、薬剤吐出装置10を挿入し、図4(c)に示すように、プレート6が既設排水管50の下端に当接するようにセットする。なお、本実施形態においては、外筒1の先端の空間には、液状の止水剤30が予め貯留されているが、液状の止水剤30を貯留していない薬剤吐出装置10を挿入した後、液状の止水剤30を外筒1の先端の空間に供給してもよい。
【0032】
そして、図4(d)に示すように、液状の止水剤30を先端に貯留させた外筒1に対して、押し子2を矢印で示した先端方向に押し込むことにより、薬剤吐出口Dから液状の止水剤30を吐出させる。このとき、補修用短管20の先端が、先端部材4で封じられていることにより、薬剤吐出口Dから吐出された液状の止水剤30を補修用短管20の管内に漏らすことなく、既設排水管と補修用短管との間に形成された隙間に薬剤を塗布することができる。
【0033】
このようにして、図4(e)に示すように、既設排水管50と補修用短管20との間に形成された隙間に液状の止水剤30を充填するように塗布する。このとき、既設排水管50の下端がプレート6で塞がれている場合には、充填された液状の止水剤30が、既設排水管50の外に漏れない。
【0034】
このように液状の止水剤30を塗布することにより、既設排水管50の内周面と補修用短管20の外周面との間に形成された隙間が液状の止水剤30で埋められる。このとき、漏水箇所h1及びh2も液状の止水剤30で埋められる。
【0035】
そして、既設排水管50の内周面と補修用短管20の外周面との隙間に水硬化性の液状の止水剤30を充填した後、所定の時間放置することにより、液状の止水剤30が硬化し、図4(f)に示すように、硬化した止水剤31が形成される。そして、図4(g)に示すように、薬剤吐出装置10を既設排水管50から取り外す。このとき、補修用短管20は、硬化した止水剤31で既設排水管50の内周面に接着されている。
【0036】
このようにして、図4(h)に示すように、既設排水管50の漏水箇所h1,h1が塞がれて補修され、本実施形態の既設排水管の補修が完了する。
【0037】
そして、スラブf内の漏水箇所h1,h2の補修後は、既設排水管の一部分を切断して既設排水管片を取り除いた部分を埋めるために、既設排水管を取り除いた部分と同じ長さの新設管を準備し、取り除いた部分に新設管を接続する。具体的には、例えば、図5(a)に示すように、既設排水管から既設排水管片を取り除いた部分と同じ長さの新設管60を準備し、図5(b)に示すように新設管60を嵌めあわせ、既設排水管50との継ぎ目及びスラブc側の切断された既設排水管58との継ぎ目を止水処理をした後、図5(c)に示すようにカップリング部材59で固定する。このような接続においては、縮径締めによって管同士を接続するカップリング部材により、管接続を簡便に行うことが好ましい。このようなカップリング部材としては、例えば、配管の端面を突き合わせ、縮径締めによって管同士を接続するカップリング部材、具体的には、例えば、ストラブカップリング(登録商標、ショーボンドカップリング(株)製)等が好ましく用いられる。このように、新設管を接続することにより、既設排水管から取り除いた部分を新設し、排水の通水路を再生させることができる。
【0038】
以上説明した本実施形態の既設排水管の補修方法によれば、既設排水管のスラブを貫通する露出しない部分の漏水箇所を、スラブを破壊するような手間を掛けることなく、短時間で簡便に漏水箇所の補修をすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 外筒
2 押し子
3 シール部材
4 先端部材
5 後端部材
6 プレート
10 薬剤吐出装置
20 補修用短管
30 止水剤
31 硬化した止水剤
40 カップ
50,58 切断された既設排水管
51 排水管片
52 排水立管
59 カップリング部材
60 新設管
69 コアビット
70 ドライバー
c,f スラブ
D 薬剤吐出口
h1 漏水箇所
h2 漏水箇所
図1
図2
図3
図4
図5