(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003089
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】開閉戸装置用制動装置の設置方法及び開閉戸装置並びに開閉戸装置設置構造
(51)【国際特許分類】
E05F 5/02 20060101AFI20221228BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20221228BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
E05F5/02 A
E06B3/46
E05D15/06 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104047
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】船山 智
【テーマコード(参考)】
2E014
2E034
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014FA04
2E014FB05
2E014FC02
2E034CA01
2E034CA13
(57)【要約】
【課題】 無目を大きくすることなく容易に制動装置を装着する。
【解決手段】 開口部Aの上方側の壁面に沿って開口幅方向へわたる基部41と、基部41に沿って開口幅方向へ開閉動作する戸体10とを具備した開閉戸装置に対し、戸体10の速度を減速するための制動装置50を設置するようにした開閉戸装置用制動装置の設置方法であって、基部41に前記壁面へ向かって貫通する貫通部41a11,41b11,41c11を形成する貫通部形成工程と、貫通部41a11,41b11,41c11の内部に制動装置50の一部を設置する設置工程とを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の上方側の壁面に沿って開口幅方向へわたる基部と、前記基部に沿って開口幅方向へ開閉動作する戸体とを具備した開閉戸装置に対し、前記戸体の速度を減速するための制動装置を設置するようにした開閉戸装置用制動装置の設置方法であって、
前記基部に前記壁面へ向かって貫通する貫通部を形成する貫通部形成工程と、前記貫通部の内部に前記制動装置の一部を設置する設置工程とを含むことを特徴とする開閉戸装置用制動装置の設置方法。
【請求項2】
前記制動装置は、歯部を前記基部に対向させて前記戸体に固定されるラックと、前記ラックに制動歯車を噛み合わせるようにしたロータリダンパーユニットとを備え、
前記設置工程では、前記制動歯車の歯部を前記貫通部から突出させて、前記ロータリダンパーユニットを前記貫通部の内部に設置することを特徴とする請求項1記載の開閉戸装置用制動装置の設置方法。
【請求項3】
前記ラックを具備しない戸体を、前記ラックを具備した戸体に交換する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の開閉戸装置用制動装置の設置方法。
【請求項4】
前記開閉戸装置は、前記基部から突出して開口幅方向へ連続するレールと、前記戸体を吊持して前記レール上を転動する吊車とを備え、
前記貫通部形成工程では、前記レールよりも下側に前記貫通部を形成することを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の開閉戸装置用制動装置の設置方法。
【請求項5】
前記戸体における戸先側の上部に前記吊車が設けられ、前記戸体における戸尻側の下部に下車が設けられ、前記下車に対向する下方側不動面には、前記下車を転動させる下レールが開口幅方向へわたって設けられ、
前記貫通部形成工程では、前記吊車よりも戸尻側に、前記貫通部を形成することを特徴とする請求項4記載の開閉戸装置用制動装置の設置方法。
【請求項6】
前記開閉戸装置の設置対象となる壁部に、前記貫通部に連通する切欠部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の開閉戸装置用制動装置の設置方法。
【請求項7】
開口部の上方側の壁面に開口幅方向へわたって設けられた基部と、前記基部に沿って開口幅方向へ開閉する戸体と、前記戸体の速度を減速する制動装置とを備えた開閉戸装置であって、
前記基部には、前記壁面へ向かって貫通する貫通部が設けられ、
前記貫通部の内部に、前記制動装置の一部が設けられていることを特徴とする開閉戸装置。
【請求項8】
請求項7記載の開閉戸装置と、この開閉戸装置が設置される壁面とを具備した開閉戸装置設置構造であって、
前記壁面には、前記貫通部に連通する切欠部が設けられ、
前記制動装置の一部が、前記貫通部から前記切欠部にわたる範囲に設けられていることを特徴とする開閉戸装置設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸装置や、吊戸装置、折戸装置、バランスドア等、戸体を開口幅方向へ移動させて開閉する開閉戸装置に対し、制動装置を設置するようにした開閉戸装置用制動装置の設置方法、および開閉戸装置、並びに開閉戸装置設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の開閉戸装置には、例えば特許文献1に記載されるように、開口部の上方側の壁面に開口幅方向へわたって設けられた支持ブラケットと、この支持ブラケットから突出して開口幅方向へ連続するガイドレールと、前記レール上を転動する吊車と、前記吊車に吊持された戸体とを備え、前記吊車の転動に伴って移動する前記戸体により、前記開口部を開閉するようにしたものがある。この開閉戸装置において、戸体よりも上側で開口幅方向へわたる部分は無目と呼称される場合がある。
この開閉戸装置は、前記ガイドレールを閉鎖方向へ傾斜させたり、前記戸体をワイヤーにより閉鎖方向へけん引する機構を具備したりして、自動閉鎖させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、戸体を勢いよく閉鎖すると、戸体がその閉鎖方向側で対向する縦枠に強く当接して、大きな衝撃音や振動を発生したり、戸体が跳ね返って開放してしまったりする場合がある。
そこで、戸体の閉鎖速度を低減するために制動装置を装着することが考えられるが、無目内の空間は上下寸法や戸厚方向寸法に制限がある。特に、既設の開閉戸装置に対し後付けで制動装置を設ける場合には、無目内の空間が不足することが想定される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
開口部の上方側の壁面に沿って開口幅方向へわたる基部と、前記基部に沿って開口幅方向へ開閉動作する戸体とを具備した開閉戸装置に対し、前記戸体の速度を減速するための制動装置を設置するようにした開閉戸装置用制動装置の設置方法であって、前記基部に前記壁面へ向かって貫通する貫通部を形成する貫通部形成工程と、前記貫通部の内部に前記制動装置の一部を設置する設置工程とを含むことを特徴とする開閉戸装置用制動装置の設置方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、無目を大きくすることなく容易に制動装置を装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る開閉戸装置用制動装置の設置方法を適用する前の開閉戸装置について、戸体が全閉した状態を示す正面図である。
【
図2】同開閉戸装置について、戸体が全開した状態を示す正面図である。
【
図3】同開閉戸装置の全閉状態の要部拡大正面図であり、上下方向の中間部分を省略し、戸体の一部を切欠している。
【
図5】同開閉戸装置について、無目の一部及び戸体等を取り外して、壁側基部材を露出した状態を示す要部縦断面図である。
【
図6】同開閉戸装置について、壁側基部材及び壁部に、貫通部及び切欠部を設けた状態を示す要部縦断面図である。
【
図7】基部に対しレール及びロータリダンパーユニットを装着している様子を示す要部縦断面図である。
【
図8】ラックを具備した戸体を装着している様子を示す要部縦断面図である。
【
図9】本発明に係る開閉戸装置用制動装置の設置方法を適用した後の開閉戸装置を示す要部縦断面図である。
【
図10】本発明に係る開閉戸装置用制動装置の設置方法を適用した後の開閉戸装置について、戸体が全閉した状態を示す正面図である。
【
図11】同開閉戸装置について、戸体が全開した状態を示す正面図である。
【
図12】同開閉戸装置の全閉状態の要部拡大正面図であり、上下方向の中間部分を省略し、戸体の一部を切欠している。
【
図13】ロータリダンパーユニットの取り付け部分を拡大して示す正面図であり、表側カバー部材は省いている。
【
図14】ロータリダンパーユニットとラックが係合した状態を下方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、開口部の上方側の壁面に沿って開口幅方向へわたる基部と、前記基部に沿って開口幅方向へ開閉動作する戸体とを具備した開閉戸装置に対し、前記戸体の速度を減速するための制動装置を設置するようにした開閉戸装置用制動装置の設置方法であって、前記基部に前記壁面へ向かって貫通する貫通部を形成する貫通部形成工程と、前記貫通部の内部に前記制動装置の一部を設置する設置工程とを含む(
図1~
図14参照)。
【0009】
第二の特徴として、前記制動装置は、歯部を前記基部に対向させて前記戸体に固定されるラックと、前記ラックに制動歯車を噛み合わせるようにしたロータリダンパーユニットとを備え、前記設置工程では、前記制動歯車の歯部を前記貫通部から突出させて、前記ロータリダンパーユニットを前記貫通部の内部に設置する(
図7~
図9参照)。
【0010】
第三の特徴として、前記ラックを具備しない戸体を、前記ラックを具備した戸体に交換する工程を含む(
図8参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記開閉戸装置は、前記基部から突出して開口幅方向へ連続するレールと、前記戸体を吊持して前記レール上を転動する吊車とを備え、前記貫通部形成工程では、前記レールよりも下側に前記貫通部を形成する(
図6及び
図7参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記戸体における戸先側の上部に前記吊車が設けられ、前記戸体における戸尻側の下部に下車が設けられ、前記下車に対向する下方側不動面には、前記下車を転動させる下レールが開口幅方向へわたって設けられ、前記貫通部形成工程では、前記吊車よりも戸尻側に、前記貫通部を形成する(
図12及び
図13参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記開閉戸装置の設置対象となる壁部に、前記貫通部に連通する切欠部を形成する工程を含む(
図6参照)。
【0014】
第七の特徴は、開口部の上方側の壁面に開口幅方向へわたって設けられた基部と、前記基部に沿って開口幅方向へ開閉する戸体と、前記戸体の速度を減速する制動装置とを備えた開閉戸装置であって、前記基部には、前記壁面へ向かって貫通する貫通部が設けられ、前記貫通部の内部に、前記制動装置の一部が設けられている(
図8~
図14参照)。
【0015】
第八の特徴は、上記開閉戸装置と、この開閉戸装置が設置される壁面とを具備した開閉戸装置設置構造であって、前記壁面には、前記貫通部に連通する切欠部が設けられ、前記制動装置の一部が、前記貫通部から前記切欠部にわたる範囲に設けられている(
図8~
図9参照)。
【0016】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明において、「見付け方向」とは、枠体の横幅方向(
図1によれば左右方向)を意味する。また、「見込み方向」とは、「見付け方向」に略直交する枠厚の方向を意味する。
また、「枠内側」とは、枠体の内側を意味し、「枠外側」とは枠体の外側を意味する。
また、「開口幅方向」とは、戸体により開閉される開口部の横幅方向を意味し、本実施態様によれば、「見付け方向」と同方向である。
また、「戸厚方向」とは、戸体の厚みの方向を意味し、本実施態様によれば、「見込み方向」と同方向である。
【0017】
図1~
図4は、本発明に係る開閉戸装置用制動装置の設置方法を適用する前の開閉戸装置1を示している。
この開閉戸装置1は、建築物等の躯体壁部を縦長矩形状に貫通している開口部Aを、戸体10によって横幅方向へ開閉するように構成される(
図1及び
図2参照)。
【0018】
開閉戸装置1は、開口部Aを開閉するように開口幅方向への移動する戸体10と、戸体10の戸先に対向する戸先側縦枠20と、戸体10を下方側で開閉方向へ案内する下レール31と、戸体10の上端側を覆う無目40と、開放状態の戸体10を自動閉鎖する自動閉鎖装置60とを備えた引戸装置である。
【0019】
戸体10は、無目40内の基部41に沿って開口幅方向へ開閉動作する部材である。
この戸体10は、戸厚方向に間隔を置いて略平行する表板11及び裏板12(
図4参照)と、これら表板11及び裏板12をその内側で一体に固定する複数の骨材とを備える。
【0020】
前記複数の骨材のうち、最上端側の骨材は、戸体10の横幅方向の略全長にわたる横骨材13である。この横骨材13は、
図4に示す一例によれば、戸厚方向へ略水平な平板部13aと、この平板部13aの表側端部から上方へ突出する上突片部13bと、平板部13aの裏側端部から下方へ突出する下突片部13cとを有する縦断面クランク状に形成される。
【0021】
そして、平板部13aの上面には、戸体10を吊持して無目40内の上レール46上を転動する吊車14が支持される。また、戸体10内には、開放状態の戸体10を閉鎖方向へ牽引して閉鎖動作する自動閉鎖装置60(
図3参照)が設けられる。
【0022】
吊車14は、戸体10における戸先側の上部に配置される。
この吊車14は、戸体10における戸先側の上端にブラケット15等を介して、戸厚方向の軸を中心に回転するように支持される。この吊車14は、戸体10から上方へ突出して上レール46に掛合している。
【0023】
また、戸体10の下端側には、戸幅方向へわたって下方を開口した凹溝16が設けられる(
図3参照)。この凹溝16内には、戸体10の戸尻側部分から下方へ突出するように下車17が支持される。
この下車17は、凹溝16内面に固定された軸受けブラケット17aにより回転自在に支持され、下レール31上を転動する。
【0024】
なお、
図1及び
図2中の符号18は、戸体10を開閉操作するための取手、符号19は、施錠装置の鍵穴又はサムターンである。
【0025】
戸先側縦枠20は、上下方向へ連続する長尺な柱状の部材であり、開口部Aの左縁に沿うようにして躯体壁面に固定される。
この戸先側縦枠20は、戸体10の戸先部を嵌め合わせるように、戸体10に対向する面に上下方向へ連続する凹溝を有する。
【0026】
下レール31は、戸体10の下方側不動面F(例えば、床面や地面、沓摺等)に固定されている。この下レール31は、下方側不動面Fから突出して戸体開閉方向へ連続する長尺状に形成される。
この下レール31の一端側は、全閉位置(
図1参照)にある戸体10の戸尻寄りであって下車17よりも戸先側に位置し、同下レール31の他端側は、全開位置(
図2参照)にある戸体10の戸尻寄りであって下車17よりも戸尻側に位置する。
【0027】
また、下方側不動面F上において、下レール31よりも戸先側には、下側振れ止め部材32が設けられる。この下側振れ止め部材32は、上下方向の軸を中心に回転するように下方側不動面F上に支持されたローラであり、凹溝16内に遊嵌されて、戸体10の下端側が戸厚方向へ振れるのを抑制する。
【0028】
無目40は、全閉状態の戸体10の上端側部分を、その開閉方向の全長にわたって覆うように横幅方向へわたる長尺状に構成される。
この無目40は、
図4に示すように、上レール46を支持して壁部Wに止着される基部41と、基部41に対し着脱可能に装着されて戸体10上端部及び吊車14等を表側から覆う表側カバー部材44とを具備している。
【0029】
なお、
図4中、符号21は、開口部Aの戸尻側の縁部を上下方向へわたって覆う縦額縁部材、符号22は、開口部Aの上側の縁部を覆う上額縁部材、符号23は、戸体10の上端側裏面に対し、開閉方向へわたって弾性的に接触する気密材である。
【0030】
基部41は、開口部Aの上方側の壁面w1に沿って、開口幅方向へわたって長尺状に固定された部材である。
この基部41は、上レール46が止着されたレール側基部材41aと、壁部Wへ止着固定される壁側基部材41bと、上レール46及び吊車14等の上方を覆う天部材41cとを一体的に具備している。
【0031】
レール側基部材41aは、上レール46が止着される略鉛直な平板状の基板部41a1を有する。この基板部41a1は、開口幅方向へわたって長尺状に連続している。
【0032】
壁側基部材41bは、開口部Aの上側にて、屋外側の壁面w1の一部を覆うようにして開口幅方向へ長尺状に連続する部材である。
この壁側基部材41bは、壁部Wに対し、ねじ止めや、リベット止め、溶接等の周知の固定手段によって止着されている。
図示例によれば、符号41dは、重ね合わせられた壁側基部材41b及び天部材41cを壁面w1に止着しているネジ等の止着部材である。また、符号41eは、止着部材41dをねじ込むために壁部Wに埋め込まれた略筒状のアンカー部材である(
図4~
図9参照)。
【0033】
また、天部材41cは、壁側基部材41bに重ね合わせられ止着された止着片部41c1と、止着片部41c1の上端から屋外側へ突出する天板部41c2とから縦断面略L字状に形成され、開口幅方向へ長尺状に連続している。
この天部材41cは、壁側基部材41b又はレール側基部材41aと一体の部材とすることも可能である。
【0034】
レール側基部材41aと壁側基部材41bは、その間に、天部材41cの止着片部41c1を挟むようにして一体的に構成される(
図4参照)。
レール側基部材41a及び天部材41cは、壁側基部材41bに対し着脱可能に接続される。この接続の手段は、例えばネジ止めすればよいが、削り作業により外すことが可能なリベット止めや、嵌脱可能な嵌合等とすることも可能である。
【0035】
また、壁部Wは、開閉戸装置1の設置対象となる建築物等の躯体の壁であり、コンクリートやモルタル等により構成される。この壁部W内には、壁側基部材41bや上額縁部材22等を固定するためのアンカー等(図示せず)が、必要に応じて埋め込まれる、
【0036】
なお、
図4中、符号101は開閉戸装置1の設置対象である躯体の天井部、符号102は同躯体の外壁、符号103は基部41の上端部を覆うようにして壁部Wに止着される桟状部材、符号104は、桟状部材103を覆うとともに外壁102の下端部と天部材41cの間を塞ぐ充填剤である。
【0037】
基部41には、基板部41a1から突出するとともに開口幅方向へ連続するように、上レール46が設けられる。
上レール46は、略L字状の縦断面を開口幅方向へ連続した長尺状の部材であり、垂直状の一片部を基板部41a1に止着するとともに、基板部41a1から水平状に突出する他片部に、吊車14を載置し係合している(
図4参照)。
この上レール46の長さは、戸体10の開閉動作に伴って吊車14が移動する範囲を含むように設定される。
図中、符号41fは、上レール46を基板部41a1に止着する止着具(例えば、ネジやボルト等)である。
【0038】
また、自動閉鎖装置60は、一端側を無目40内の不動部位に止着したワイヤー61の他端側を、ぜんまいばねを内在するリール62によって巻き取るように構成される(
図3参照)。
この自動閉鎖装置60によれば、開放状態にある戸体10が、全開位置(
図2参照)から全閉位置(
図1参照)まで自動的に閉鎖動作する。
【0039】
なお、
図3中、符号71は、ワイヤー61の一端側が止着される不動部位である止着部、符号72は、戸体10の上方側が厚さ方向へ振れるのを防ぐ振れ止め部材、符号73は、戸体10が全開した際に吊車14のブラケット15を受ける戸当たり部材である。これら止着部71、振れ止め部材72及び戸当たり部材73は、一体的なアッセンブリとして構成され、基部材41に固定されている。
【0040】
次に、上記構成の開閉戸装置1に対し、本発明に係る開閉戸装置用制動装置の設置方法を適用して、戸体10の閉鎖速度を減速するための制動装置50を設置する手順を詳細に説明する。
【0041】
先ず、開閉戸装置1について、表側カバー部材44を外し、さらに、戸体10、吊車14、レール側基部材41a、及び天部材41c等を外して、壁側基部材41bが露出した状態にする(
図5参照)。
【0042】
次に、基部41を構成するレール側基部材41a、壁側基部材41b及び天部材41cに対し、それぞれ、壁部Wへ向かって貫通する貫通部41a11,41b11,41c11を形成する(貫通部形成工程)。
【0043】
前記貫通部形成工程において、壁側基部材41bに対する貫通部41b11は、上レール46が止着される部分よりも下側であって、吊車14よりも戸尻側、かつ下車17の真上近傍となる位置に設けられる(
図12参照)。この貫通部41b11は、後述するロータリダンパーユニット51を遊挿可能な形状及び大きさに形成される。
貫通部41b11を形成する作業には、例えば、グラインダー等の一般的な切削工具を用いればよい。
【0044】
また、取り外されたレール側基部材41aと天部材41cには、それぞれ、壁側基部材41bの貫通部41b11に対応する位置に、ロータリダンパーユニット51を遊挿可能な形状及び大きさの貫通部41a11,41c11が設けられる。これら貫通部も、一般的な切削工具や工作機械等により形成すればよい。
【0045】
次に、壁部Wに、貫通部41a11,41b11,41c11に連通する切欠部w2を形成する。この切欠部w2の形成は、例えば、電動ハンマー等の一般工具を用いて、壁部Wを構成するコンクリートやモルタル等を部分的に削り出すようにすればよい。
切欠部w2は、ロータリダンパーユニット51を内在可能なように、その形状、大きさ、深さ等が適宜に設定される。
【0046】
次に、
図7に示すように、貫通部41a11,41c11が形成された天部材41c及びレール側基部材41aを、壁側基部材41bに装着する。
なお、レール側基部材41a及び天部材41cは、現場で貫通部41a11,41c11を形成したものでもよいし、予め工場等で貫通部41a11,41c11が加工されたものに交換するようにしてもよい。
【0047】
次に、基板部41a1に対し上レール46が装着(図示例によればねじ止め)され、貫通部41a11,41b11,41c11及び切欠部w2の内部に、制動装置50の一部であるロータリダンパーユニット51が設置される(設置工程)。
【0048】
制動装置50は、制動歯車51cの歯部を側方へ向けたロータリダンパーユニット51と、制動歯車51cの歯部に噛み合うように戸体10に設けられたラック52とを具備する。
【0049】
ロータリダンパーユニット51は、ケーシング51aと、ケーシング51aから下方側へ突出した回転軸51bと、回転軸51bに固定された制動歯車51cと、ケーシング51aの上方側に露出した回転抵抗調整部材51dと、ケーシング51aを不動部位に取り付けるためのブラケット51fとを備え、回転抵抗調整部材51dの回転量(回転角度)に応じて回転軸51bの回転抵抗を調整するように構成される。
【0050】
ケーシング51aの内部には、回転軸51bと一体的に回転するロータや、このロータに回転抵抗を加える粘性流体、回転抵抗調整部材51dの回転操作量に応じて前記回転抵抗を調整する機構等が設けられる。この機構は、回転軸51bの一方向(図示例によれば、戸体10の閉鎖方向に対応する方向)の回転に抵抗を与え、同回転軸51bが逆方向へ回転する際には前記抵抗を解除する。
なお、ケーシング51a内部の基本構造には、一般的なワンウェイタイプのロータリダンパー機構を適用することが可能である
【0051】
制動歯車51cは、外周に歯部を有する平歯車状に形成される。この制動歯車51cの歯部は、ラック52の歯部に噛み合う。
【0052】
回転抵抗調整部材51dは、ケーシング51aの上方側に位置し、制動歯車51cよりも径方向へ大きく、且つケーシング51aの円筒状部分よりも径方向へ大きい略円盤状に形成されている。
この回転抵抗調整部材51dの中心軸は、ケーシング51a内で回転軸51bの回転抵抗を調整する機構に接続されている。
図14に例示する回転抵抗調整部材51dは、外周部が多角形状に形成され、下面に、回転量の目安を示す目盛り51d1を設けている。
この回転抵抗調整部材51dは、所定量回転するとブラケット51fに係止されて、その回転角度が制限されるようになっている。
【0053】
上記構成のロータリダンパーユニット51は、制動歯車51cの歯部の一部、及び回転抵抗調整部材51dの外周部の一部を、貫通部41a11から屋外側へ突出させて、貫通部41a11,41b11,41c11及び切欠部w2内の空間に挿入され(
図7及び
図8参照)、基板部41a1における上レール46よりも下側の部分に止着される。
【0054】
この際、ブラケット51fの基部側止着片部51f2とレール側基部材41aの間に、複数のスペーサ53aが挟み込まれ、基部側止着片部51f2及びスペーサ53aに螺合部材51j(例えば、ねじやボルト等)が挿入され、この螺合部材51jのネジ部が基板部41a1に螺合される。
【0055】
スペーサ53aは、基板部41a1と基部側止着片部51f2との間に対し、戸先方向側から戸尻方向へ向けて挿し込まれるように略平板状に形成され(
図13参照)、その挿込み方向側の部分に、複数(図示例によれば二つ)の螺合部材51jのネジ軸に嵌り合う切欠部53a1を有し、前記挿込み方向と逆側の端部に、基部側止着片部51f2の端部に接するようにL字状に曲げられた位置決め片部53a2を有する。
【0056】
ロータリダンパーユニット51が装着された後、上レール46に吊車14を掛けるとともに下レール31に下車17を載せるようにして、戸体10’が装着される。戸体10’は、上記工程で取り外した戸体10を改良したものでもよいし、予め工場等で生産したものであってもよい。
【0057】
戸体10’は、上記戸体10に対し、ブラケット54を介してラック52を装着したものである。
すなわち、ラック52を具備しない戸体10が、ラック52を具備した戸体10’に交換される。
【0058】
ラック52は、直線状に配設された歯部を、基部41の基板部41a1に対向させて、戸体10’裏面の上方側であって吊車14よりも戸尻側に固定される。
詳細に説明すれば、戸体10’の上端部には、開口幅方向へ連続するブラケット54が固定され、このブラケット54に、ラック52が嵌合固定されている(
図9参照)。
なお、他例としては、ラック52を戸体10’の上端に直接固定した態様や、ラック52を戸体10’の裏面に直接または間接的に固定した態様等とすることも可能である。
【0059】
戸体10’が装着された状態において、ラック52は制動歯車51cに噛み合う。この噛み合い量は、スペーサ53aの枚数変更によって、容易に調整することができる。
【0060】
そして、天部材41cの屋外側の突端に、表側カバー部材44が装着されて、制動装置50を具備した開閉戸装置1’が完成する。同時に、この開閉戸装置1’は、壁部Wに設置されて開閉装置設置構造を構成する。
【0061】
次に、上述した実施態様について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
上記開閉戸装置用制動装置の設置方法によれば、制動装置50を具備しない既設の開閉戸装置について、無目40を大きくすることなく容易に制動装置50を装着することができる。
【0062】
すなわち、上記実施態様によれば、ロータリダンパーユニット51とラック52を水平方向に配置し、ロータリダンパーユニット51の一部を貫通部41a11,41b11,41c11及び切欠部w2内に配置しているため、無目40内におけるロータリダンパーユニット51の設置スペースを大きく確保する必要がなく、無目40を上下方向へ大きくしなくても済む。
【0063】
また、上記開閉戸装置用制動装置の設置方法では、既設の開閉戸装置1を構成していた部材をそのまま利用することができる。
【0064】
また、戸体10の戸尻側には吊車を設けていないため、戸尻側吊車との干渉を考慮することなく制動装置50を配置する作業を行うことができ、さらに、制動装置50に対するメンテナンス性も良好である。
【0065】
<変形例>
上記実施態様によれば、壁部Wに切欠部w2を形成し、この切欠部w2にロータリダンパーユニット51の一部が挿入されるようにしたが、他例として、現場状況等により基部41の裏側(屋内側)に予め空間がある場合には、切欠部w2を形成する工程を省き、この空間にロータリダンパーユニット51の一部が挿入されるようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施態様に付加される構成として、切欠部w2の内面を覆うようにして、切欠部w2内に凹状のケースを挿入し、このケース内にロータリダンパーユニット51の一部が挿入されるようにしてもよい。この構成によれば、壁部W側で発生する切紛や結露水、異物等が、制動装置50に付着するのを前記ケースによって阻むことができる。
【0067】
また、上記実施態様によれば、ロータリダンパーユニット51を基部4に固定したが、他例としては、ロータリダンパーユニット51を壁部W(詳細には、壁面w1や切欠部w2の内面等)に固定することも可能である。
【0068】
また、上記開閉戸装置1’(
図10参照)によれば、ロータリダンパーユニット51及び切欠部w2を、閉鎖状態の戸体10の戸尻寄りに対応して配置したが、ロータリダンパーユニット51及び切欠部w2は、吊車14よりも戸尻側に位置すれば、閉鎖状態の戸体10の中央寄り又は戸先寄りに対応して配置することも可能である。この場合、ロータリダンパーユニット51に対応するようにラック52の横幅方向の取付位置も変更する。
【0069】
また、上記実施態様によれば、ロータリダンパーユニット51とラック52をそれぞれ、一つずつ設けたが、他例としては、これらのうちの一方又は双方を開口幅方向へ複数設けることも可能である。このようにすれば、制動範囲を長くすることができる上、例えば、ロータリダンパーユニット51を開口幅方向へ間隔を置いて二つ設けて、閉鎖動作の初期で制動をかけ中期では制動を解除し後期で再度制動をかける等、より好適な閉鎖動作が可能になる。
そして、ロータリダンパーユニット51を開口幅方向へ複数設ける場合には、複数のロータリダンパーユニット51に対応して、貫通部41a11,41b11,41c11及び切欠部w2も開口幅方向へ複数設ければよい。
【0070】
また、上記実施態様によれば、貫通部41a11,41b11,41c11及び切欠部w2内にロータリダンパーユニット51を設置し、戸体10にラック52を設けたが、他例としては、貫通部41a11,41b11,41c11及び切欠部w2内にラック52を設け、戸体10にロータリダンパーユニット51を設けることも可能である。
【0071】
また、上記実施態様によれば、戸体10の閉鎖速度を減速するように制動装置50を設けたが、他例としては、戸体10の開放速度を減速する態様や、戸体10の閉鎖速度と開放速度の双方を減速する態様とすることも可能である。
戸体10の開放速度を減速する態様は、ロータリダンパーユニット51に、上記とは逆方向で回転抵抗を発生するワンウェイタイプのロータリダンパー機構を用いればよい。
戸体10の閉鎖速度と開放速度の双方を減速する態様は、ロータリダンパーユニット51に、双方向で回転抵抗を発生するロータリダンパー機構を用いればよい。
【0072】
また、制動装置50を設置する前の開閉戸装置1には、上記構成の制動装置50以外の他の制動装置が設けられていてもよく、この場合には、前記他の制動装置を外してもよいし、前記他の制動装置を残しておいて制動装置50と併用するようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施態様によれば、戸体10を上レール46と下レール31等により案内して開口幅方向へ開閉動作する引戸装置を構成したが、上述した開閉戸装置用制動装置の設置方法、開閉戸装置及び開閉戸装置設置構造等は、戸体を上レールと下レールのうちの一方のみにより案内して開口幅方向へ開閉動作する引戸装置や、戸体を折り曲げたり展開したりして開閉動作する折戸装置、戸先側の戸体を回動しながら開口幅方向へ移動させて開閉動作するようにしたバランスドア装置等、戸体を開口幅方向へ移動させて開閉する図示例以外の開閉戸装置に適用することが可能である。
【0074】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1,1’:開閉戸装置
10,10’:戸体
14:吊車
17:下車
31:下レール
40:無目
41:基部
41a:レール側基部材
41a1:基板部
41b:壁側基部材
41c:天部材
41a11,41b11,41c11:貫通部
46:上レール
50:制動装置
51:ロータリダンパーユニット
52:ラック
壁部:W
w1:壁面
w2:切欠部