(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030890
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】被懸吊物用当て具および懸吊方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/12 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B66C1/12 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136284
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 歳門
(72)【発明者】
【氏名】増田 成晃
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】太田 桂子
(72)【発明者】
【氏名】谷津 義徳
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA40
3F004LB02
3F004LC06
(57)【要約】
【課題】容易に作製でき廉価で安全な被懸吊物用当て具および被懸吊物の懸吊方法を提供する。
【解決手段】被懸吊物を懸吊用ロープで懸吊する際に、前記被懸吊物と前記懸吊用ロープとが当接する磁性体の当接部分と前記懸吊用ロープとの間に配置される被懸吊物用当て具であって、複数の段ボールを積層した積層部、および前記積層部の周囲を巻回する段ボールである包装部を有する個体部と、前記包装部の段ボールの積層方向と直交する面に接着される磁性を帯びたプレート部とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被懸吊物を懸吊用ロープで懸吊する際に、前記被懸吊物と前記懸吊用ロープとが当接する磁性体の当接部分と前記懸吊用ロープとの間に配置される被懸吊物用当て具であって、
複数の段ボールを積層した積層部、および前記積層部の周囲を巻回する段ボールである包装部を有する個体部と、
前記包装部の段ボールの積層方向と直交する面に接着される磁性を帯びたプレート部と
を備えることを特徴とする被懸吊物用当て具。
【請求項2】
前記個体部および前記積層部は四角柱状を有し、
前記包装部は、前記積層部において積層された段ボールの天面と底面を含む前記個体部の四面を巻回し、前記積層部の一面において、前記包装部の長手方向の両端部が重複することを特徴とする請求項1記載の被懸吊物用当て具。
【請求項3】
前記個体部を複数個有することを特徴とする請求項1または2記載の被懸吊物用当て具。
【請求項4】
前記積層部は、JIS Z 1516で規定されるAフルート、Bフルート、Cフルート、およびAフルートとBフルートを貼り合わせたWフルート(ABフルート)の何れかの段ボールが積層されて成り、
前記包装部は、Bフルートの段ボールを巻回して成ることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の被懸吊物用当て具。
【請求項5】
前記個体部は、170±30mmの幅、150±30mmの高さ、および200±30mmの奥行を有する直方体であることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の被懸吊物用当て具。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載された被懸吊物用当て具を前記被懸吊物の前記当接部分と前記懸吊用ロープとの間に配置して前記被懸吊物を懸吊する懸吊方法であって、
前記プレート部を前記被懸吊物に磁力で接着させて前記被懸吊物用当て具を前記被懸吊物に取り付け、
前記被懸吊物に取り付けられた前記被懸吊物用当て具に前記懸吊用ロープを当接させて前記被懸吊物を懸吊することを特徴とする懸吊方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被懸吊物を懸吊用ロープで懸吊する際に被懸吊物に当接させる被懸吊物用当て具、および該当て具を使用した被懸吊物の懸吊方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や建設現場において重量物を運搬する際に、クレーンに玉掛けされた懸吊用ロープで被懸吊物である重量物を懸吊する方法が知られている。
かかる懸吊方法を採用する場合、重量物が懸吊用ロープに当接する位置には一般的に当て具が配置される(例えば、特許文献1~3参照)。これは、重量物を懸吊した際に、懸吊用ロープが重量物に接触して傷つくことを防止するために、衝撃や摩擦を緩和するという観点でなされるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-216651号公報
【特許文献2】実全昭60-193382号公報
【特許文献3】US7014905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、懸吊用ロープが重量物に当接する位置に当て具を配置する場合、当て具が滑って重量物が破損するなどの安全面のリスクがある。たとえば、特許文献1に示すように、積層した板紙を当て具として利用する場合は、懸吊用ロープと当接する部分が座屈したり陥没する恐れがある。
【0005】
また、特許文献2に示される当て具は、鋼製、ゴム、樹脂、その他の弾性材料で作製できるものの、形状が複雑であるため製作が容易ではない。特許文献3に示された当て具についても同様に、複雑な形状を有しており製作が容易ではない。
【0006】
また、木材を用いて当て具を作製することも考えられるが、この場合、重量物と共に輸出をする際に木材を燻蒸処理する必要があり、コストアップの要因となる。
また、クロスヘッド(筐体)や振動テーブル等が組付けられた試験機など、特殊な形状の重量物も存在するが、従来技術を用いてこのような特殊な形状の重量物に当接させる当て具を作製するのは困難であった。この場合、懸吊用ロープが当たる部分の部品を出荷前に重量物から外しておき、現地で重量物に再組付けする場合もあった。
【0007】
本発明の目的は、容易に作製でき廉価で安全な被懸吊物用当て具および被懸吊物の懸吊方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の被懸吊物用当て具は、
被懸吊物を懸吊用ロープで懸吊する際に、前記被懸吊物と前記懸吊用ロープとが当接する磁性体の当接部分と前記懸吊用ロープとの間に配置される被懸吊物用当て具であって、
複数の段ボールを積層した積層部、および前記積層部の周囲を巻回する段ボールである包装部を有する個体部と、
前記包装部の段ボールの積層方向と直交する面に接着される磁性を帯びたプレート部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、容易に作製でき廉価で安全な被懸吊物用当て具および被懸吊物の懸吊方法を提供することができる。すなわち、被懸吊物用当て具は、市販の段ボールを用いた簡易な構造体であるため、容易に廉価で作製できる。また、被懸吊物用当て具は、懸吊時において重量物と懸吊用ロープの間に挟まれることになるが、挟み込みによる圧縮力は段ボールの積層方向と直交する方向に掛かることになるため、強い耐力を発揮することができる。このため、被懸吊物用当て具の座屈や陥没によって懸吊用ロープがずれたり、滑って外れることを防止することができ、安全性の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明の被懸吊物用当て具は、
前記個体部および前記積層部は四角柱状を有し、
前記包装部は、前記積層部において積層された段ボールの天面と底面を含む前記個体部の四面を巻回し、前記積層部の一面において、前記包装部の長手方向の両端部が重複することを特徴とする。
このように、包装部の長手方向の両端部が重複することにより、包装部の長手方向の両端部を強固に貼り合わせることができ、両端部をずれにくくすることができる。
【0011】
また、本発明の被懸吊物用当て具は、
前記個体部を複数個有することを特徴とする。
このように、個体部を複数個重ねることにより、被懸吊物用当て具の大きさを調整することができる。
【0012】
また、本発明の被懸吊物用当て具は、
前記積層部は、JIS Z 1516で規定されるAフルート、Bフルート、Cフルート、およびAフルートとBフルートを貼り合わせたWフルート(ABフルート)の何れかの段ボールが積層されて成り、
前記包装部は、Bフルートの段ボールを巻回して成ることを特徴とする。
【0013】
これにより、積層された段ボール層を固定し束ねることができ、巻回した四面を平面状に整えることができる。また、懸吊用ロープによる局所荷重を分散させ、面圧強度を高めることができる。
【0014】
また、本発明の被懸吊物用当て具は、
前記個体部は、170±30mmの幅、150±30mmの高さ、および200±30mmの奥行を有する直方体であることを特徴とする。
これにより、被懸吊物との当接部分の形状に合わせて前記個体部を適宜設定することができる。
【0015】
本発明の懸吊方法は、
本発明の被懸吊物用当て具を前記被懸吊物の前記当接部分と前記懸吊用ロープとの間に配置して前記被懸吊物を懸吊する懸吊方法であって、
前記プレート部を前記被懸吊物に磁力で接着させて前記被懸吊物用当て具を前記被懸吊物に取り付け、
前記被懸吊物に取り付けられた前記被懸吊物用当て具に前記懸吊用ロープを当接させて前記被懸吊物を懸吊することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容易に作製でき廉価で安全な被懸吊物用当て具および被懸吊物の懸吊方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る被懸吊物用当て具を用いて被懸吊物を懸吊用ロープで懸吊する様子を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る被懸吊物用当て具を上方から視た斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る被懸吊物用当て具を上方から視た分解斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る被懸吊物用当て具に用いられる段ボールの種類を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る包装部が積層部にどのように巻回されるかを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る発明である被懸吊物用当て具について説明する。
図1(a)、(b)に示すように、被懸吊物用当て具2は、被懸吊物である重量物3を懸吊用ロープ6で懸吊する際に、被懸吊物と懸吊用ロープ6とが直接当接しないように筐体4と懸吊用ロープ6との間に配置されるものである。なお、
図1(b)は、
図1(a)に示す重量物3をB矢視方向から視た図である。
【0019】
また、本実施の形態においては、重量物3がエンジンマウントや各種防振ゴムの動特性を計測する動特性試験機である場合を例示している。かかる重量物3は、台5、架台7、アイボルト9、支柱11、筐体4をこの順に積層して成り、懸吊用ロープ6の下端をアイボルト9に固定して懸吊することにより重量物3全体が持ち上がる。なお、被懸吊物用当て具2を使用しない場合には、筐体4と懸吊用ロープ6は、筐体4の外面(当接部分)と直接当接することになる。
【0020】
図2は、実施の形態に係る被懸吊物用当て具2を上方から視た斜視図であり、
図3は、その分解図である。
図2に示すように、被懸吊物用当て具2は、直方体状を有し、個体部8、およびプレート部10を備え、個体部8には、積層部12と包装部14が含まれている。なお、
図2では、被懸吊物用当て具2に二つの個体部8が積層された場合を例示しているが、個体部8は単体でもよく、3、4個積み重ねることも可能である。
【0021】
積層部12は、
図3に示すように、長方形状の複数の段ボールを積層した直方体状の物体である。ここで、積層部12を構成する段ボールとしては、
図4(a)に示すAフルート、またはBフルート、またはCフルートの段ボール、あるいは、
図4(b)に示すように、AフルートとBフルートを貼り合わせたWフルート(ABフルート)の段ボールが用いられる。
【0022】
なお、上述のAフルート、Bフルート、Cフルートとは、JIS Z 1516で規定された段ボールの規格であり、Aフルートは、厚さが約5mm(4.5~4.8mm)、30cmあたりの段の数が34±2個になるものを指し、Bフルートは、厚さが約3mm(2.5~2.8mm)、30cmあたりの段の数が50±2個になるものを指し、Cフルートは、厚さが約4mm(3.5~3.8mm)、30cmあたりの段の数が40±2個になるものを指す。
【0023】
包装部14は、
図5に示すように、積層部12の周囲を巻回するBフルートの段ボールであり、積層された段ボールの天面12aと底面12bを含む個体部8の四面を巻回する。ここで、天面12aおよび底面12bは、何れも波状の段のある断面が見えない面を示している。
【0024】
また、包装部14は、積層部12の一面において、その長手方向の両端部が重複するように巻回される。このように、包装部14の長手方向の両端部が重複することにより、包装部14の長手方向の両端部を強固に貼り合わせることができ、両端部をずれ難くすることができる。
【0025】
個体部8は、上述したように、積層部12に包装部14を巻回して構成された、170±30mmの幅、150±30mmの高さ、および200±30mmの奥行を有する直方体である。
【0026】
プレート部10は、磁性を帯びた素材から成る矩形状の平板であり、包装部14の段ボールの積層方向と直交し、かつ包装部14の筐体4と当接する側の面に接着される。また、懸吊時において被懸吊物用当て具2は筐体4と懸吊用ロープ6の間に挟まれることになるが、挟み込みによる圧縮力は段ボールの積層方向と直交する方向に掛かることになる。このため、プレート部10をかかる位置に配置することによって被懸吊物用当て具2の剛性を高め、耐力を増強することができる。
【0027】
以上説明した構造を有する被懸吊物用当て具2は、
図1に示すように、四角柱状の筐体4の四面に取り付けられる。ここで、筐体4は、磁性体の剛体であり、被懸吊物用当て具2は、プレート部10を介して磁性の力で筐体4に接着される。
【0028】
次に、懸吊用ロープ6の下端がアイボルト9に固定され、懸吊用ロープ6が図示しないクレーンのフックに玉掛けされると、懸吊用ロープ6が被懸吊物用当て具2に当接する。この際に、筐体4と懸吊用ロープ6による被懸吊物用当て具2に対する圧縮力は、段ボールの積層方向と直交する方向に掛かることになる。
【0029】
この状態でクレーンによって懸吊用ロープ6を懸吊すると、懸吊用ロープ6が被懸吊物用当て具2に当接した状態で筐体4が持ち上がり、所定の場所に運搬される。
この実施の形態に係る発明によれば、容易に作製でき廉価で安全な被懸吊物用当て具および被懸吊物の懸吊方法を提供することができる。すなわち、被懸吊物用当て具2は、市販の段ボールを用いた簡易な構造体であるため、容易に廉価で作製できる。また、懸吊時において被懸吊物用当て具2は筐体4と懸吊用ロープ6の間に挟まれることになるが、挟み込みによる圧縮力は段ボールの積層方向と直交する方向に掛かることになるため、強い耐力を発揮することができる。このため、被懸吊物用当て具2の座屈や陥没によって懸吊用ロープ6がずれたり、滑って外れることを防止することができ、安全性の向上を図ることができる。
【0030】
また、JIS Z 1516で規定されるAフルート、Bフルート、Cフルート、およびAフルートとBフルートを貼り合わせたWフルート(ABフルート)の何れかの段ボールを積層させて積層部12を作製することにより、積層された段ボール層を固定し束ねることができ、巻回した四面を平面状に整えることができる。このため、懸吊用ロープ6による局所荷重を分散させ、面圧強度を高めることができる。
【0031】
また、個体部8を170±30mmの幅、150±30mmの高さ、および200±30mmの奥行を有する直方体とすることにより、重量物3との当接部分の形状に合わせて個体部8を適宜設定することができる。
【0032】
また、被懸吊物用当て具2は、軽量であるため装着作業も容易である。さらに、クロスヘッド(筐体)や振動テーブル等が組付けられた試験機など、重量物3が特殊な形状を有する場合であっても、被懸吊物用当て具2は、小型であるため容易に取り付けることができ、従来では難しかった懸吊も可能となる。
【0033】
なお、上述の実施の形態においては、積層部12にAフルート、Bフルート、Cフルート、およびWフルート(ABフルート)の段ボールの何れかを用いているが、
図4(c)に示すAフルートの段ボールを3段重ねたものを用いてもよい。また、包装部14にもCフルートの段ボールを用いることができる。
【0034】
また、上述の実施の形態において、懸吊用ロープ6には、直径12mm~18mmのステンレス鋼を用いることができ、懸吊用ロープ6による被懸吊物用当て具2の耐荷重は、φ16の懸吊用ロープで12000N~12500Nの耐荷重が想定される。
【符号の説明】
【0035】
2 被懸吊物用当て具
3 重量物
4 筐体
5 台
6 懸吊用ロープ
7 架台
8 個体部
9 アイボルト
10 プレート部
11 支柱
12 積層部
12a 天面
12b 底面
14 包装部