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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030893
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】化学機械研磨用組成物および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230301BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230301BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230301BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
H01L21/304 622B
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136292
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】石牧 昂輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 柊平
(72)【発明者】
【氏名】亀井 康孝
(72)【発明者】
【氏名】西村 康平
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA19
3C158CA04
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED08
3C158ED10
3C158ED11
3C158ED12
3C158ED15
3C158ED26
3C158ED28
5F057AA08
5F057AA28
5F057AA29
5F057BA15
5F057BA22
5F057BB16
5F057BB23
5F057BB31
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA16
5F057EA18
5F057EA21
5F057EA31
5F057EB07
(57)【要約】
【課題】ルテニウムの腐食を抑制しつつ、ルテニウムを含む半導体基板を安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨を行うことができる化学機械研磨用組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る化学機械研磨用組成物は、砥粒(A)と、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )および次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを含む酸またはその塩(B)と、を含有し、前記砥粒(A)が、下記一般式(1)ないし(4)で表される官能基のうち少なくとも1種の官能基を有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
-NR ・・・・・(3)
-N ・・・・・(4)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒(A)と、
過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )および次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを含む酸またはその塩(B)と、を含有し、
前記砥粒(A)が、下記一般式(1)ないし(4)で表される官能基のうち少なくとも1種の官能基を有する、化学機械研磨用組成物。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
-NR ・・・・・(3)
-N ・・・・・(4)
(上記式(3)および(4)中、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Mは陰イオンを表す。)
【請求項2】
前記化学機械研磨用組成物中の前記砥粒(A)のゼータ電位の絶対値が10mV以上である、請求項1に記載の化学機械研磨用組成物。
【請求項3】
さらに、アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、カルボキシ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、を有する化合物(D)を含有する、請求項1または請求項2に記載の化学機械研磨用組成物。
【請求項4】
pHが6以上12以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物を用いて半導体基板を研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項6】
前記半導体基板が、ルテニウムおよびルテニウム合金からなる群より選択される少なくとも1種により構成される部位を備える、請求項5に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨用組成物およびそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造技術の向上に伴い、半導体素子の高集積化、高速動作が求められている。これに伴い、半導体素子における微細回路の製造工程において要求される半導体基板表面の平坦性はより厳しくなってきており、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)が半導体素子の製造工程に不可欠な技術となっている。
【0003】
CMPは、定盤上に貼り付けた研磨用パッド上に化学機械研磨用組成物を供給し、そこへ半導体基板を押し当て、半導体基板と研磨用パッドとを相互に摺動させることにより半導体基板を化学的かつ機械的に研磨する技術である。CMPでは、試薬による化学的な反応と砥粒による機械的な研磨により半導体基板表面の凹凸を削り、その表面を平坦化することができる。
【0004】
近年、このようなCMPを経て製造される半導体基板の銅配線を作成する際の凹部への銅の埋め込み性を改善するために、ルテニウム膜を使用する方法が検討されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009-514219号公報
【特許文献2】特表2010-535424号公報
【特許文献3】国際公開第2019/151145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなCMPにおいて、揮発性の高い四酸化ルテニウムガスの発生を抑制し、ルテニウムを含む部位を研磨するためには、塩基性の化学機械研磨用組成物と、過ヨウ素酸カリウムや次亜塩素酸カリウムのような高い酸化力を有するハロゲン系酸化剤とを用いて化学機械研磨を行う必要がある。しかしながら、塩基性の化学機械研磨用組成物を用いると、四酸化ルテニウムガスの発生を抑制できるものの、不十分に酸化した酸化ルテニウムが研磨用パッド表面に付着し、研磨用パッドの研磨特性を劣化させてしまう。その結果、ルテニウムを含む半導体基板を、安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨を行うことは困難となる。一方、高い酸化力を有するハロゲン系酸化剤を用いた場合、ルテニウムを腐食させてしまうおそれがある。
【0007】
本発明に係る幾つかの態様は、ルテニウムの腐食を抑制しつつ、ルテニウムを含む半導体基板を安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨を行うことができる化学機械研磨用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
【0009】
本発明に係る化学機械研磨用組成物の一態様は、
砥粒(A)と、
過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )および次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを含む酸またはその塩(B)と、を含有し、
前記砥粒(A)が、下記一般式(1)ないし(4)で表される官能基のうち少なくとも1種の官能基を有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
-NR ・・・・・(3)
-N ・・・・・(4)
(上記式(3)および(4)中、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Mは陰イオンを表す。)
【0010】
前記化学機械研磨用組成物の一態様において、
前記化学機械研磨用組成物中の前記砥粒(A)のゼータ電位の絶対値が10mV以上であってもよい。
【0011】
前記化学機械研磨用組成物のいずれかの態様において、
さらに、アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、カルボキシ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、を有する化合物(D)を含有してもよい。
【0012】
前記化学機械研磨用組成物のいずれかの態様において、
pHが6以上12以下であってもよい。
【0013】
本発明に係る研磨方法の一態様は、
前記いずれかの態様の化学機械研磨用組成物を用いて半導体基板を研磨する工程を含む。
【0014】
前記研磨方法の一態様において、
前記半導体基板が、ルテニウムおよびルテニウム合金からなる群より選択される少なくとも1種により構成される部位を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る化学機械研磨用組成物によれば、ルテニウムの腐食を抑制しつつ、ルテニウムを含む半導体基板を安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る研磨工程での使用に適した被処理体を模式的に示した断面図である。
図2】第1研磨工程終了時での被処理体を模式的に示した断面図である。
図3】第2研磨工程終了時での被処理体を模式的に示した断面図である。
図4】化学機械研磨装置を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0018】
本明細書において、「A~B」のように記載された数値範囲は、数値Aを下限値として含み、かつ、数値Bを上限値として含むものとして解釈される。
【0019】
1.化学機械研磨用組成物
本発明の一実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、砥粒(A)(本明細書において、「成分(A)」ともいう)と、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )および次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンを含む酸またはその塩(B)(本明細書において、「成分(B)」ともいう)と、を含有し、前記砥粒(A)が、下記一般式(1)ないし(4)で表される官能基のうち少なくとも1種の官能基を有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
-NR ・・・・・(3)
-N ・・・・・(4)
(上記式(3)および(4)中、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Mは陰イオンを表す。)
以下、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0020】
1.1.成分(A)
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、砥粒(A)を含有する。成分(A)としては、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機粒子が挙げられるが、中でもシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられるが、中でもコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカは、スクラッチ等の研磨欠陥を低減する観点から好ましく用いられる。コロイダルシリカとしては、例えば特開2003-109921号公報等に記載された方法で製造されたものを使用することができる。
【0021】
成分(A)がシリカを主成分とするシリカ粒子の場合、さらに他の成分を含有してもよい。他の成分としては、アルミニウム化合物、ケイ素化合物等が挙げられる。シリカ粒子がアルミニウム化合物またはケイ素化合物をさらに含有することで、シリカ粒子の表面硬度を小さくすることができるため、安定した研磨速度を維持しながら、被研磨面の研磨傷やディッシングの発生をより低減できる場合がある。
【0022】
アルミニウム化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、塩化アルミニウム、窒化アルミニウム、酢酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等が挙げられる。一方、ケイ素化合物としては、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸塩、シリコーン、ケイ素樹脂等が挙げられる。
【0023】
成分(A)の形状は、特に限定されず、球状であっても、繭状であっても、連鎖球状であっても、表面に複数の突起を有してもよい。表面に複数の突起を有する砥粒は、例えば特開2007-153732号公報や特開2013-121631号公報に記載された方法を適用して製造することができる。
【0024】
成分(A)のゼータ電位の絶対値は、化学機械研磨用組成物中において、好ましくは10mV以上であり、より好ましくは15mV以上であり、特に好ましくは20mV以上である。成分(A)のゼータ電位の絶対値が前記範囲にあると、砥粒間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐと共に、ルテニウムを含む半導体基板をより安定した研
磨速度で研磨することができる。なお、ゼータ電位測定装置としては、大塚電子社製の「ELSZ-2000ZS」、Malvern社製の「Zetasizer Ultra」、Dispersion Technology Inc.製の「DT300」等が挙げられる。
【0025】
成分(A)は、その表面の少なくとも一部が下記一般式(1)ないし(4)で表される官能基(以下、「特定官能基」ともいう)のうち少なくとも1種の官能基を有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
-NR ・・・・・(3)
-N ・・・・・(4)
(上記式(3)および(4)中、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Mは陰イオンを表す。)
表面の少なくとも一部が特定官能基によって修飾された砥粒は、特定官能基によって表面修飾されていない砥粒に比べてゼータ電位の絶対値が大きくなりやすく、砥粒同士の静電反発力が増大する。その結果、化学機械研磨用組成物中における砥粒の分散性が向上するため、研磨傷やディッシングの発生を低減しながら高速研磨することができる。
【0026】
成分(A)は、下記一般式(1)で表される官能基を有することができる。
-SO ・・・・・(1)
(Mは1価の陽イオンを表す。)
【0027】
上記一般式(1)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。すなわち、上記一般式(1)で表される官能基は、「スルホ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基」と言い換えることもできる。ここで、「スルホ基の塩」とは、スルホ基(-SOH)に含まれている水素イオンをLi、Na、K、NH 等の1価の陽イオンで置換した官能基のことをいう。上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)は、その表面に上記一般式(1)で表される官能基が共有結合を介して固定された砥粒であり、その表面に上記一般式(1)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したような砥粒は含まれない。
【0028】
上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)は、以下のようにして製造することができる。まず、公知の方法により作成されたシリカと、メルカプト基含有シランカップリング剤を酸性媒体中で十分に攪拌することにより、シリカの表面にメルカプト基含有シランカップリング剤を共有結合させる。ここで、メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。次に、過酸化水素を更に適量添加して十分に放置することにより、上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)を得ることができる。
【0029】
上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、化学機械研磨用組成物中において負電位であり、その負電位は、好ましくは-10mV以下であり、より好ましくは-15mV以下であり、特に好ましくは-20mV以下である。成分(A)のゼータ電位が前記範囲にあると、砥粒間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐと共に、ルテニウムを含む半導体基板をより安定した研磨速度で研磨できる場合がある。なお、ゼータ電位測定装置は、上述した装置を使用することができる。成分(A)のゼータ電位は、上述したメルカプト基含有シランカップリング剤等の添加量を適宜増減することにより調整することができる。
【0030】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)を含有する場合、成分(A)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。成分(A)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)の含有量が前記範囲であると、ルテニウムを含む半導体基板を安定した研磨速度で研磨できると共に、化学機械研磨用組成物の保存安定性が良好となる場合がある。
【0031】
成分(A)は、下記一般式(2)で表される官能基を有することができる。
-COO ・・・・・(2)
(Mは1価の陽イオンを表す。)
【0032】
上記一般式(2)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。すなわち、上記一般式(2)で表される官能基は、「カルボキシ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基」と言い換えることもできる。ここで、「カルボキシ基の塩」とは、カルボキシ基(-COOH)に含まれている水素イオンをLi、Na、K、NH 等の1価の陽イオンで置換した官能基のことをいう。上記一般式(2)で表される官能基を有する成分(A)は、その表面に上記一般式(2)で表される官能基が共有結合を介して固定された砥粒であり、その表面に上記一般式(2)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したような砥粒は含まれない。
【0033】
上記一般式(2)で表される官能基を有する成分(A)は、以下のようにして製造することができる。まず、公知の方法により作成されたシリカと、カルボン酸無水物含有シランカップリング剤とを塩基性媒体中で十分に攪拌し、砥粒の表面にカルボン酸無水物含有シランカップリング剤を共有結合させることにより、上記一般式(2)で表される官能基を有する砥粒を得ることができる。ここで、カルボン酸無水物含有シランカップリング剤としては、例えば、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0034】
上記一般式(2)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、化学機械研磨用組成物中において負電位であり、その負電位は、好ましくは-10mV以下であり、より好ましくは-15mV以下であり、特に好ましくは-20mV以下である。成分(A)のゼータ電位が前記範囲にあると、砥粒間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐと共に、ルテニウムを含む半導体基板をより安定した研磨速度で研磨できる場合がある。なお、ゼータ電位測定装置は、上述した装置を使用することができる。上記一般式(2)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、上述したカルボン酸無水物含有シランカップリング剤等の添加量を適宜増減することにより調整することができる。
【0035】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が上記一般式(2)で表される成分(A)を含有する場合、成分(A)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ましくは0.5質量%以上である。成分(A)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。成分(A)の含有量が前記範囲であると、ルテニウムを含む半導体基板を安定した研磨速度で研磨できると共に、化学機械研磨用組成物の保存安定性が良好となる場合がある。
【0036】
成分(A)は、下記一般式(3)および/または下記一般式(4)で表される官能基を有することができる。
-NR ・・・・・(3)
-N ・・・・・(4)
(上記式(3)および上記式(4)中、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Mは陰イオンを表す。)
【0037】
上記一般式(3)で表される官能基はアミノ基を表しており、上記一般式(4)で表される官能基はアミノ基の塩を表している。したがって、上記一般式(3)で表される官能基と上記一般式(4)で表される官能基を纏めて、「アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基」と言い換えることもできる。上記一般式(3)および/または上記一般式(4)で表される官能基を有する成分(A)は、その表面に上記一般式(3)および/または上記一般式(4)で表される官能基が共有結合を介して固定された砥粒であり、その表面に上記一般式(3)および/または上記一般式(4)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したような砥粒は含まれない。
【0038】
上記一般式(4)中、Mで表される陰イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、OH、F、Cl、Br、I、CN等の陰イオンの他、酸性化合物由来の陰イオンが挙げられる。
【0039】
上記一般式(3)および上記一般式(4)中、R~Rは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表すが、R~Rのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
【0040】
~Rで表される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、または脂環式炭化水素基のいずれでもよい。また、脂肪族炭化水素基および芳香脂肪族炭化水素基の脂肪族は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分岐状でもよい。これらの炭化水素基としては、例えば、直鎖状、分岐状または環状の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、およびアリール基等が挙げられる。
【0041】
アルキル基としては、通常炭素数が1~6の低級アルキル基が好ましく、炭素数1~4の低級アルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0042】
アルケニル基としては、通常炭素数1~6の低級アルケニル基が好ましく、炭素数1~4の低級アルケニル基がより好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、n-プロペニル基、iso-プロペニル基、n-ブテニル基、iso-ブテニル基、sec-ブテニル基、tert-ブテニル基等が挙げられる。
【0043】
アラルキル基としては、通常炭素数7~12のものが好ましい。このようなアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基、エチルベンジル基等が挙げられる。
【0044】
アリール基としては、通常炭素数6~14のものが好ましい。このようなアリール基と
しては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,5-キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0045】
上記のアリール基およびアラルキル基の芳香環は、例えば、メチル基、エチル基等の低級アルキル基や、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基等を、置換基として有していてもよい。
【0046】
上記一般式(3)および/または上記一般式(4)で表される官能基を有する成分(A)は、例えば、シリカとアミノ基含有シランカップリング剤を酸性媒体中で十分に攪拌し、シリカの表面にアミノ基含有シランカップリング剤を共有結合させることにより、上記一般式(3)および/または上記一般式(4)で表される官能基を有する砥粒を製造することができる。ここで、アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
上記一般式(3)および/または上記一般式(4)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、化学機械研磨用組成物中において負電位であり、その負電位は、好ましくは-10mV以下であり、より好ましくは-15mV以下である。成分(A)のゼータ電位が前記範囲にあると、砥粒間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐと共に、ルテニウムを含む半導体基板をより安定した研磨速度で研磨できる場合がある。なお、ゼータ電位測定装置は、上述した装置を使用することができる。上記一般式(3)および/または上記一般式(4)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、上述したアミノ基含有シランカップリング剤等の添加量を適宜増減することにより調整することができる。
【0048】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が上記一般式(3)および/または上記一般式(4)で表される官能基を有する成分(A)を含有する場合、成分(A)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、特に好ましくは1質量%以上である。成分(A)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。成分(A)の含有量が前記範囲であると、ルテニウムを含む半導体基板を安定した研磨速度で研磨できると共に、化学機械研磨用組成物の保存安定性が良好となる場合がある。
【0049】
1.2.成分(B)
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )および次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオン(以下、「特定アニオン種」ともいう)を含む酸またはその塩(B)を含有する。成分(B)に含まれるアニオンは、酸化剤として機能し、ルテニウムを酸化して研磨を促進するものと推測される。
【0050】
成分(B)の具体例としては、過ヨウ素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸アンモニウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、過ヨウ素酸、亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カリウムおよび次亜臭素酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、過ヨウ素酸がより好ましい。成分(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
成分(B)の含有量(mol/L)は、化学機械研磨用組成物1Lに対して、好ましくは0.001mol/L以上であり、より好ましくは0.002mol/L以上であり、特に好ましくは0.003mol/L以上である。成分(B)の含有量(mol/L)は、化学機械研磨用組成物1Lに対して、好ましくは0.05mol/L以下であり、より好ましくは0.04mol/L以下であり、特に好ましくは0.035mol/L以下である。成分(B)の含有量が前記範囲にあると、ルテニウムを酸化して研磨を促進させると共に、ルテニウムと特定アニオン種との過剰な反応を防ぎ、ルテニウムの腐食を抑制できる場合がある。
【0052】
成分(B)の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。成分(B)の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、特に好ましくは7質量%以下である。成分(B)の含有量が前記範囲にあると、ルテニウムを酸化して研磨を促進させると共に、ルテニウムと特定アニオン種との過剰な反応を防ぎ、ルテニウムの腐食を抑制できる場合がある。
【0053】
1.3.成分(C)
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、過酸化水素(C)(本明細書において、「成分(C)」ともいう)を含有してもよい。過酸化水素(C)は、ルテニウムを酸化して研磨を促進させると共に、成分(C)がルテニウムと反応することでルテニウムと成分(B)に含まれる特定アニオン種との過剰な反応を防ぎ、ハロゲンガスの発生やルテニウムの腐食を抑制する機能を有する。
【0054】
成分(C)の含有量(mol/L)は、化学機械研磨用組成物1Lに対して、好ましくは0.0005mol/L以上であり、より好ましくは0.0009mol/L以上であり、特に好ましくは0.0012mol/L以上である。成分(C)の含有量(mol/L)は、化学機械研磨用組成物1Lに対して、好ましくは0.5mol/L以下であり、より好ましくは0.4mol/L以下であり、特に好ましくは0.3mol/L以下である。成分(C)の含有量が前記範囲にあると、ルテニウムを酸化して研磨を促進させると共に、成分(C)がルテニウムと反応することでルテニウムと成分(B)に含まれる特定アニオン種との過剰な反応を防ぎ、ルテニウムの腐食を抑制できる場合がある。
【0055】
成分(C)の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.0017質量%以上であり、より好ましくは0.003質量%以上であり、特に好ましくは0.004質量%以上である。成分(C)の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは1.7質量%以下であり、より好ましくは1.4質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。成分(C)の含有量が前記範囲にあると、ルテニウムを酸化して研磨を促進させると共に、成分(C)がルテニウムと反応することでルテニウムと成分(B)に含まれる特定アニオン種との過剰な反応を防ぎ、ルテニウムの腐食を抑制できる場合がある。
【0056】
1.4.成分(D)
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、カルボキシ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、を有する化合物(D)(本明細書において、「成分(D)」ともいう)を含有してもよい。
【0057】
アミノ基およびその塩としては、下記一般式(5)または下記一般式(6)で表される官能基が挙げられる。
-NR ・・・・・(5)
-N ・・・・・(6)
(上記式(5)および上記式(6)中、R、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Mは陰イオンを表す。)
【0058】
上記一般式(5)および上記一般式(6)中、R~Rは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表すが、R~Rのうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
【0059】
~Rで表される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、または脂環式炭化水素基のいずれでもよい。また、脂肪族炭化水素基および芳香脂肪族炭化水素基の脂肪族は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分岐状でもよい。これらの炭化水素基としては、例えば、直鎖状、分岐状または環状の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、およびアリール基等が挙げられる。
【0060】
アルキル基としては、通常炭素数が1~6の低級アルキル基が好ましく、炭素数1~4の低級アルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0061】
アルケニル基としては、通常炭素数1~6の低級アルケニル基が好ましく、炭素数1~4の低級アルケニル基がより好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、n-プロペニル基、iso-プロペニル基、n-ブテニル基、iso-ブテニル基、sec-ブテニル基、tert-ブテニル基等が挙げられる。
【0062】
アラルキル基としては、通常炭素数7~12のものが好ましい。このようなアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基、エチルベンジル基等が挙げられる。
【0063】
アリール基としては、通常炭素数6~14のものが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,5-キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0064】
前記アリール基および前記アラルキル基の芳香環は、例えば、メチル基、エチル基等の低級アルキル基や、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基等を、置換基として有していてもよい。
【0065】
カルボキシ基およびその塩としては、下記一般式(7)で表される官能基が挙げられる。
-COO ・・・・・(7)
(Mは1価の陽イオンを表す。)
【0066】
上記一般式(7)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されない
が、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。
【0067】
成分(D)は、アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、カルボキシ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基とを有する構造であれば特に限定されないが、下記一般式(8)で表される構造を有することが好ましい。
-N(CHCOO(Rn-3 ・・・・・(8)
(上記式(8)中、Rは水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Mは1価の陽イオンを表す。nは1~3の整数を表す。)
【0068】
上記一般式(8)中、Rで表される炭化水素基としては、上記一般式(6)および(7)のR~Rで例示した炭化水素基と同様の炭化水素基が挙げられる。上記一般式(8)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。
【0069】
成分(D)が上記一般式(8)で表される構造を有することにより、成分(D)がルテニウム表面に効果的に配位し、吸着して保護膜を形成することにより、ルテニウム部位の過剰な腐食を抑制することができる。
【0070】
成分(D)としては、例えば、N-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、N-(2-カルボキシエチル)イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、L-グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)、3,3’,3’’-ニトリロトリプロピオン酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、(S,S)-エチレンジアミンジコハク酸三水和物、イミノ二酢酸、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸水和物等が挙げられる。これらの成分(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
成分(D)の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは0.15質量%以上である。成分(D)の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。成分(D)の含有量が前記範囲にあると、ルテニウムを含有する半導体基板の過剰な腐食を効果的に抑制できる場合がある。
【0072】
1.5.その他の成分
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、前述の各成分の他、必要に応じて、液状媒体、水溶性高分子、含窒素複素環化合物、界面活性剤、有機酸およびその塩、無機酸およびその塩、塩基性化合物等を含有してもよい。
【0073】
<液状媒体>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、液状媒体を含有する。液状媒体としては、水、水およびアルコールの混合媒体、水および水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等が挙げられる。これらの中でも、水、水およびアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。水の原料としては純水を好ましく使用することができる。液状媒体は、前述の各成分の残部として配合されていればよい。
【0074】
<水溶性高分子>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子は、被研磨面の表面に吸着して研磨摩擦を低減させ、被研磨面におけるディッシングの発生を低減できる場合がある。
【0075】
水溶性高分子の具体例としては、ポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上150万以下、より好ましくは4万以上120万以下である。ここで、「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
【0077】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が水溶性高分子を含有する場合、水溶性高分子の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.002質量%以上である。水溶性高分子の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下である。
【0078】
<含窒素複素環化合物>
含窒素複素環化合物は、少なくとも1個の窒素原子を有する、複素五員環および複素六員環から選択される少なくとも1種の複素環を含む有機化合物である。前記複素環の具体例としては、ピロール構造、イミダゾール構造、トリアゾール構造等の複素五員環;ピリジン構造、ピリミジン構造、ピリダジン構造、ピラジン構造等の複素六員環が挙げられる。該複素環は縮合環を形成していてもよい。具体的には、インドール構造、イソインドール構造、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キナゾリン構造、シンノリン構造、フタラジン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造等が挙げられる。このような構造を有する複素環化合物のうち、ピリジン構造、キノリン構造、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾトリアゾール構造を有する複素環化合物が好ましい。
【0079】
含窒素複素環化合物の具体例としては、アジリジン、ピリジン、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、イミダゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾイソキノリン、プリン、プテリジン、トリアゾール、トリアゾリジン、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、およびこれらの骨格を有する誘導体が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾールおよびトリアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの含窒素複素環化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、特に制限されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を使用することができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩;パーフルオロアルキル化合物等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族アンモニウム塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコール等の三重結合を有する非イオン
性界面活性剤;ポリエチレングリコール型界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
<有機酸およびその塩>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、有機酸およびその塩(前記成分(D)を除く)からなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。有機酸およびその塩は、成分(A)との相乗効果により、ルテニウムを含有する半導体基板の研磨速度を向上させることができる場合がある。
【0082】
有機酸およびその塩としては、カルボキシ基を有する化合物、スルホ基を有する化合物であることが好ましい。カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、アルケニルコハク酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、グリコール酸、フタル酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、キノリン酸、キナルジン酸、アミド硫酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸;グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、トリプトファン、ドデシルアミノエチルアミノエチルグリシン、芳香族アミノ酸、複素環型アミノ酸等のアミノ酸;アルキルイミノジカルボン酸等のイミノ酸;およびこれらの塩が挙げられる。スルホ基を有する化合物としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸;テトラデセンスルホン酸等のα-オレフィンスルホン酸;およびこれらの塩が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が有機酸(塩)を含有する場合、有機酸(塩)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。有機酸(塩)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0084】
<無機酸およびその塩>
無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、無機酸は、化学機械研磨用組成物中で別途添加した塩基と塩を形成してもよい。
【0085】
<塩基性化合物>
塩基性化合物としては、有機塩基および無機塩基が挙げられる。有機塩基としては、アミンが好ましく、例えばトリエチルアミン、モノエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルアミン、メチルアミン、エチレンジアミン、ジグリコールアミン、イソプロピルアミン等が挙げられる。無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。これらの塩基性化合物の中でも、アンモニア、水酸化カリウムが好ましい。これらの塩基性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
1.6.pH
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、好ましくは6.0以上であり、より好ましくは6.5以上であり、特に好ましくは7.0以上である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、好ましくは12.0以下であり、より好ましくは11.0以下であり、特に好ましくは10.0以下である。pHが前記範囲であると、四酸化ルテニウムガスの発生やルテニウムの腐食を効果的に抑制できる場合がある。
【0087】
なお、化学機械研磨用組成物のpHは、例えば、前述の有機酸(塩)、無機酸(塩)、塩基性化合物等を添加することにより調整することができ、これらの1種以上を用いることができる。
【0088】
本発明において、pHは、水素イオン指数のことを指し、その値は、市販のpHメーター(例えば、堀場製作所社製、卓上型pHメーター)を用いて測定することができる。
【0089】
1.7.化学機械研磨用組成物の調製方法
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水等の液状媒体に前述した各成分を溶解または分散させることにより調製することができる。溶解または分散させる方法は、特に制限されず、均一に溶解または分散できればどのような方法を適用してもよい。また、前述した各成分の混合順序や混合方法についても特に制限されない。
【0090】
また、化学機械研磨用組成物は、濃縮タイプの原液として調製し、使用時に水等の液状媒体で希釈して使用することもできる。
【0091】
2.研磨方法
本発明の一実施形態に係る研磨方法は、前述の化学機械研磨用組成物を用いて半導体基板を研磨する工程を含む。該化学機械研磨用組成物は、ルテニウムの腐食を抑制しつつ、ルテニウムを含む半導体基板を安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨を行うことができる。そのため、被処理体たる半導体基板は、ルテニウムおよびルテニウム合金からなる群より選択される少なくとも1種により構成される部位を備えていることが好ましい。以下、図1図4を参照しながら、本実施形態に係る研磨方法について詳細に説明する。
【0092】
ルテニウムおよびルテニウム合金からなる群より選択される少なくとも1種により構成される部位を備えた半導体基板としては、例えば図1に示すような被処理体100が挙げられる。図1に、被処理体100を模式的に示した断面図を示す。被処理体100は、以下の工程(1)~(4)を経ることにより作製される。
【0093】
(1)まず、図1に示すように、基体10を用意する。基体10は、例えばシリコン基板とその上に形成された酸化シリコン膜とから構成されていてもよい。さらに、基体10には、(図示しない)トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。次に、基体10の上に、熱酸化法を用いて絶縁膜である酸化シリコン膜12を形成する。
【0094】
(2)次いで、酸化シリコン膜12をパターニングする。得られたパターンをマスクとして、フォトリソグラフィー法により酸化シリコン膜12に配線用溝14を形成する。
【0095】
(3)次いで、酸化シリコン膜12の表面および配線用溝14の内壁面にルテニウム含有膜16を形成する。ルテニウム含有膜16は、例えば、ルテニウムプレカーサを用いた化学気相成長法(CVD)や原子層堆積法(ALD)、またはスパッタリングなどの物理気相堆積法(PVD)により形成することができる。
【0096】
(4)次いで、化学蒸着法または電気めっき法により、膜厚10,000~15,000Å(ここで、「Å」とは0.1nmのことを指す)の銅膜18を堆積させる。銅膜18の材料としては、純度の高い銅だけでなく、銅を含有する合金を使用することもできる。銅を含有する合金中の銅含有量としては、95質量%以上であることが好ましい。
【0097】
続いて、被処理体100の第1研磨工程を行う。図2は、第1研磨工程終了時での被処
理体100を模式的に示した断面図である。図2に示すように、第1研磨工程では、銅膜用の化学機械研磨用組成物を用いてルテニウム含有膜16が露出するまで銅膜18を研磨する。銅膜用の化学機械研磨用組成物としては、例えば特開2010-153790号公報に記載の化学機械研磨用水系分散体が挙げられる。
【0098】
続いて、被処理体100の第2研磨工程を行う。図3は、第2研磨工程終了時での被処理体100を模式的に示した断面図である。図3に示すように、第2研磨工程では、本発明の化学機械研磨用組成物を用いてルテニウム含有膜16、銅膜18、および酸化シリコン膜12の一部を研磨する。
【0099】
第1研磨工程および第2研磨工程には、例えば図4に示すような研磨装置200を用いることができる。図4は、研磨装置200を模式的に示した斜視図である。第1研磨工程および第2研磨工程は、スラリー供給ノズル42からスラリー(化学機械研磨用組成物)44を供給し、かつ研磨用パッド46が貼付されたターンテーブル48を回転させながら、半導体基板50を保持したキャリアーヘッド52を当接させることにより行う。なお、図4には、水供給ノズル54およびドレッサー56も併せて示してある。
【0100】
研磨用パッド46の材質は、発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプの何れであってもよいが、発泡ポリウレタンタイプであることが好ましい。
【0101】
キャリアーヘッド52の研磨荷重は、0.7~70psiの範囲内で選択することができ、好ましくは1.5~35psiである。また、ターンテーブル48およびキャリアーヘッド52の回転数は10~400rpmの範囲内で適宜選択することができ、好ましくは30~150rpmである。スラリー供給ノズル42から供給される化学機械研磨用組成物の流量の下限値は15mL/分であり、好ましくは50mL/分であり、その流量の上限値は400mL/分であり、好ましくは300mL/分である。
【0102】
市販の研磨装置としては、例えば、荏原製作所製、型式「EPO-112」、「F-REX300SII」;ラップマスターSFT製、型式「LGP-510」、「LGP-552」;アプライドマテリアル製、型式「Mirra」、「Reflexion」;G&P TECHNOLOGY製、型式「POLI-400L」;AMAT製、型式「Reflexion LK」等が挙げられる。
【0103】
3.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0104】
3.1.シリカ粒子水分散体の調製
3.1.1.水分散体Aの調製
PL-3(扶桑化学工業社製、19.5%コロイダルシリカ分散液)2000gに25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬社製)を添加し、pH9に調整した。その後、(3-トリエトキシシリル)メルカプト基含有シランカップリング剤(商品名「KBM-803」、信越化学工業社製)3.9gを滴下し、60℃で2時間撹拌した。その後、過酸化水素(富士フイルム和光純薬社製)50gを添加し、常圧下で8時間還流し、平均粒子径58nmのスルホ基で表面修飾された繭型のシリカ粒子を含む水分散体Aを得た。
【0105】
3.1.2.水分散体Bの調製
PL-3(扶桑化学工業社製、19.5%コロイダルシリカ分散液)2000gを60℃に加熱した。その後、(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(東京化成
工業社製)15.5gを加え、さらに60℃で4時間撹拌し、平均粒子径60nmのカルボキシ基で表面修飾された繭型のシリカ粒子を含む水分散体Bを得た。
【0106】
3.1.3.水分散体Cの調製
メタノール70gと3-アミノプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)11.3gの混合液を、PL-3(扶桑化学工業社製、19.5%コロイダルシリカ分散液)2000gへ滴下し、常圧下で2時間還流を行った。その後、容量を一定に保ちつつ純水を滴下し、塔頂温が100℃に達した時点で純水の滴下を終了し、平均粒子径56nmのアミノ基で表面修飾された繭型のシリカ粒子を含む水分散体Cを得た。
【0107】
3.1.4.水分散体Dの調製
PL-2L(扶桑化学工業社製、20%コロイダルシリカ分散液)1950gに25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬社製)を添加し、pH9に調整した。その後、(3-トリエトキシシリル)メルカプト基含有シランカップリング剤(商品名「KBM-803」、信越化学工業社製)3.9gを滴下し、60℃で2時間撹拌した。その後、過酸化水素(富士フイルム和光純薬社製)50gを添加し、常圧下で8時間還流し、平均粒子径23nmのスルホ基で表面修飾された球型のシリカ粒子を含む水分散体Dを得た。
【0108】
3.1.5.水分散体Eの調製
PL-3(扶桑化学工業社製、19.5%コロイダルシリカ分散液)をそのまま、平均粒子径60nmの表面修飾されていないシリカ粒子を含む水分散体Eとして使用した。
【0109】
3.2.化学機械研磨用組成物の調製
表1~表3に示す組成となるように各成分を混合し、さらに表1~表3に示すpHとなるように水酸化カリウム水溶液(関東化学社製、商品名「48%水酸化カリウム水溶液」)とリン酸(富士フイルム和光純薬社製、商品名「りん酸」)を必要に応じて添加して調整し、全成分の合計量が100質量%となるように純水を添加して、各実施例および各比較例の化学機械研磨用組成物を調製した。このようにして得られた各化学機械研磨用組成物について、ゼータ電位測定装置(Dispersion Technology Inc.製、型式「DT300」)を用いて砥粒のゼータ電位を測定した結果を表1~表3に併せて示す。
【0110】
3.3.評価方法
3.3.1.研磨速度評価
上記で調製した化学機械研磨用組成物を用いて、直径12インチのルテニウム膜100nm付きウエハを被研磨体として、下記の条件で化学機械研磨試験を行った。
(研磨条件)
・研磨装置:荏原製作所社製、型式「F-REX300SII」
・研磨パッド:デュポン社製、「多孔質ポリウレタン製パッド;Optivisiоn9500 CMP Polishing pad」
・化学機械研磨用組成物供給速度:250mL/分
・定盤回転数:100rpm
・ヘッド回転数:90rpm
・ヘッド押し付け圧:2psi
・研磨時間:60秒
・研磨速度(nm/分)=(研磨前の膜の厚さ(nm)-研磨後の膜の厚さ(nm))/研磨時間(分)
【0111】
なお、ルテニウム膜の厚さは、抵抗率測定機(ケーエルエー・テンコール社製、型式「RS-100」)により直流4探針法で抵抗を測定し、このシート抵抗値とルテニウムの
体積抵抗率から下記式によって算出した。
ルテニウム膜の厚さ(nm)=[ルテニウム膜の体積抵抗率(Ω・m)÷シート抵抗値(Ω/sq)]×10
【0112】
ルテニウム膜の研磨速度の評価基準は下記の通りである。ルテニウム膜の研磨速度の評価結果を表1~表3に併せて示す。
(評価基準)
A:研磨速度が1000nm/分以上である場合、非常に良好と判断した。
B:研磨速度が50nm/分以上1000nm/分未満である場合、実用に供することができるので良好と判断した。
C:研磨速度が50nm/分未満である場合、研磨速度が小さく実用困難であるため不良と判断した。
【0113】
3.3.2.エッチング速度評価
上記で調製した化学機械研磨用組成物を60℃に昇温し、30mm×10mmに裁断したルテニウム膜100nm付きウエハ片を5分間浸漬した。その後、ウエハ片を取り出して流水で水洗し、上記「3.3.1.研磨速度評価」と同様の方法によりルテニウム膜の厚さを測定した。そして、浸漬前後のルテニウム膜の厚さの変化からエッチング速度を下記式により算出した。
ルテニウム膜のエッチング速度(nm/分)=(エッチング前のルテニウム膜の厚さ(nm)-エッチング後のルテニウム膜の厚さ(nm))/エッチング時間(分)
【0114】
ルテニウム膜のエッチング速度の評価基準は下記の通りである。ルテニウム膜のエッチング速度の評価結果を表1~表3に併せて示す。
(評価基準)
A:エッチング速度が1.5nm/分未満である場合、非常に良好と判断した。
B:エッチング速度が1.5nm/分以上3nm/分未満である場合、実用に供することができるので良好と判断した。
C:エッチング速度が3nm/分以上である場合、エッチング速度が大きく実用困難であるため不良と判断した。
【0115】
3.3.3.貯蔵安定性評価
上記で調製した化学機械研磨用組成物を20℃の恒温保管庫にて3日間または7日間保管した後、直径12インチのルテニウム膜100nm付きウエハを被研磨体として、上記「3.3.1.研磨速度評価」と同じ研磨条件で化学機械研磨試験を行った。そして、保管前後のルテニウム膜の研磨速度の変動率を下記式により算出した。
変動率(%)=|((「3.3.1.研磨速度評価」の項で算出された研磨速度)-(保管後の化学機械研磨用組成物を用いた場合の研磨速度))/(「3.3.1.研磨速度評価」の項で算出された研磨速度)×100|
【0116】
変動率の評価基準は下記の通りである。化学機械研磨用組成物の貯蔵安定性の評価結果を表1~表3に併せて示す。
(評価基準)
A:貯蔵後7日経過時の研磨速度の変動率が10%未満である場合、非常に良好と判断した。
B:貯蔵後3日経過時の研磨速度の変動率が10%未満であるが、貯蔵後7日経過時の研磨速度の変動率が10%以上である場合、実用に供することができるので良好と判断した。
C:貯蔵後3日経過時の研磨速度の変動率が10%以上である場合、実用困難であるため不良と判断した。
【0117】
3.4.評価結果
表1~表3に、各実施例および各比較例で使用した化学機械研磨用組成物の組成ならびに各評価結果を示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
上表1~上表3中の各成分は、それぞれ下記の商品または試薬を用いた。
<成分(A)>
・水分散体A~E:上記「3.1.シリカ粒子水分散体の調製」の項で調製した水分散体A~E
<成分(B)>
・HIO(過ヨウ素酸):富士フイルム和光純薬社製、商品名「オルト過よう素酸」・KClO(次亜塩素酸カリウム):関東化学社製、商品名「次亜塩素酸カリウム溶液」・KClO(亜塩素酸カリウム):Angene社製、商品名「Potassium Chlorite」
・NaBrO(次亜臭素酸ナトリウム):関東化学社製、商品名「次亜臭素酸ナトリウム」
<成分(C)>
・過酸化水素:富士フイルム和光純薬社製、30%水溶液
<成分(D)>
・N-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸:シグマアルドリッチ社製、商品名「N-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸 水和物」
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸:東京化成工業社製、商品名「N-(2-Hydroxyethyl)iminodiacetic Acid」
・N-(2-カルボキシエチル)イミノ二酢酸:東京化成工業社製、商品名「N-(2-Carboxyethyl)iminodiacetic Acid」
・ニトリロ三酢酸:東京化成工業社製、商品名「Nitrilotriacetic Acid」
・3,3’,3’’-ニトリロトリプロピオン酸:東京化成工業社製、商品名「3,3’,3’’-Nitrilopropionic Acid」
・エチレンジアミン四酢酸:東京化成工業社製、商品名「Ethylenediaminetetraacetic Acid」
・ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸:東京化成工業社製、商品名「N-(2-Hydroxyethyl)ethylenediamine-N,N’,N’-triacetic Acid」
<その他の成分>
・KIO(ヨウ素酸カリウム):富士フイルム和光純薬社製、商品名「よう素酸カリウム」
・(NH(ペルオキソ二硫酸アンモニウム):富士フイルム和光純薬社製、商品名「ペルオキソ二硫酸アンモニウム」
・2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸:東京化成工業社製、商品名「2-Phosphonobutane-1,2,4-tricarboxylic Acid
(ca. 50% in Water)」
・N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン:東京化成工業社製、商品名「N,N,N’,N’-Tetramethylethylenediamine」
・1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸:東京化成工業社製、商品名「1-Hydroxyethane-1,1-diphosphonic Acid (ca. 60% in Water, ca. 4.2mol/L)」
【0122】
特定官能基を有する成分(A)と特定アニオン種を含む成分(B)とを併用した実施例1~15の化学機械研磨用組成物によれば、成分(A)がルテニウム膜に吸着しやすくなり、成分(B)がルテニウム膜を効果的に酸化することで、ルテニウム膜の研磨速度を向上させると共に、ルテニウム膜の腐食を抑制できていることがわかる。また、特定官能基を有する成分(A)を使用することで、化学機械研磨用組成物中における砥粒同士の反発力が高まり、砥粒の凝集が抑制されるため貯蔵安定性が向上することがわかる。
【0123】
これに対し、特定官能基を有しない砥粒を含有する比較例1~5、8~9の化学機械研磨用組成物によれば、研磨速度評価、エッチング速度評価、貯蔵安定性評価の少なくとも何れかが不良な結果となり、実用に供することが難しいことがわかる。また、特定アニオン種を含まない化合物を含有する比較例6~7の化学機械研磨用組成物によれば、ルテニウムを効果的に酸化させることができないためにルテニウム膜の研磨速度が小さくなることがわかる。
【0124】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0125】
10…基体、12…酸化シリコン膜、14…配線用溝、16…ルテニウム含有膜、18…銅膜、42…スラリー供給ノズル、44…スラリー(化学機械研磨用組成物)、46…研磨用パッド、48…ターンテーブル、50…半導体基板、52…キャリアーヘッド、54…水供給ノズル、56…ドレッサー、100…被処理体、200…研磨装置
図1
図2
図3
図4