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特開2023-30894使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030894
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/40 20060101AFI20230301BHJP
   G21C 17/06 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G21C19/40 100
G21C17/06 010
G21C17/06 070
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136298
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 研一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 宰
(72)【発明者】
【氏名】小田 直敬
(72)【発明者】
【氏名】小田中 滋
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075AA18
2G075CA38
2G075DA08
2G075FA06
(57)【要約】
【課題】コストの低減を図ることができるとともに、第2ステップの機能である中性子増倍率の推定を可能とすることのできる使用済み核燃料の未臨界度測定装置等を提供する。
【解決手段】使用済み核燃料の中性子計数を測定して燃焼度を測定する第1ステップと、第1ステップにおいて燃焼度制限値を満たさない使用済み核燃料に対して第2ステップの測定を行う使用済み核燃料の未臨界度測定装置であって、中性子計数を時系列データとして蓄積する蓄積手段と、時系列データから、即発中性子減衰定数αを算出する時系列データ分析手段と、予め中性子輸送解析により、遅発中性子割合βと即発中性子寿命Lとを算出する事前解析手段と、即発中性子減衰定数αと、遅発中性子割合βと、即発中性子寿命Lとから中性子増倍率kを算出する中性子増倍率手段と、を具備し、中性子増倍率kによって第2ステップの未臨界度を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み核燃料の中性子計数を測定して燃焼度を測定する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて燃焼度制限値を満たさない前記使用済み核燃料に対して第2ステップの測定を行う使用済み核燃料の未臨界度測定装置であって、
前記中性子計数を時系列データとして蓄積する蓄積手段と、
前記時系列データから、原子炉雑音法に基づき即発中性子減衰定数αを算出する時系列データ分析手段と、
予め中性子輸送解析により、遅発中性子割合βと即発中性子寿命Lとを算出する事前解析手段と、
前記即発中性子減衰定数αと、前記遅発中性子割合βと、前記即発中性子寿命Lとから中性子増倍率kを算出する中性子増倍率算出手段と、
を具備し、
前記中性子増倍率kによって前記第2ステップの未臨界度を判定する、
ことを特徴とする使用済み核燃料の未臨界度測定装置。
【請求項2】
前記時系列データ分析手段は、前記時系列データにおいて、時間間隔ti~ti+Δtの中性子カウントM(i)の、imax個のデータから、
【数1】
により平均を算出し、
【数2】
により分散を算出し、
【数3】
により分散対平均比を算出し、
前記Δtを変化させた時のYをプロットし、定数Cと
Y=C[1-{1-exp(-αΔt)}/αΔt]
により、フィッティングによって即発中性子減衰定数αを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の使用済み核燃料の未臨界度測定装置。
【請求項3】
前記時系列データ分析手段は、前記分散を算出する替わりに、2つの中性子検出器の共分散をとる
ことを特徴とする請求項2に記載の使用済み核燃料の未臨界度測定装置。
【請求項4】
使用済み核燃料の中性子計数を測定して燃焼度を測定する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて燃焼度制限値を満たさない前記使用済み核燃料に対して第2ステップの測定を行う使用済み核燃料の臨界管理方法であって、
前記中性子計数を時系列データとして蓄積するステップと、
前記時系列データから、原子炉雑音法に基づき即発中性子減衰定数αを算出する時系列データ分析ステップと、
予め中性子輸送解析により、遅発中性子割合βと即発中性子寿命Lとを算出する事前解析ステップと、
前記即発中性子減衰定数αと、前記遅発中性子割合βと、前記即発中性子寿命Lとから中性子増倍率kを算出する中性子増倍率算出ステップと、
を具備し、
前記中性子増倍率kによって前記第2ステップの未臨界度を判定する、
ことを特徴とする使用済み核燃料の臨界管理方法。
【請求項5】
前記時系列データ分析ステップは、
前記時系列データにおいて、時間間隔ti~ti+Δtの中性子カウントM(i)の、imax個のデータから、
【数4】
により平均を算出し、
【数5】
により分散を算出し、
【数6】
により分散対平均比を算出し、
前記Δtを変化させた時のYをプロットし、定数Cと
Y=C[1-{1-exp(-αΔt)}/αΔt]
により、フィッティングによって即発中性子減衰定数αを算出する
ことを特徴とする請求項4記載の使用済み核燃料の臨界管理方法。
【請求項6】
前記時系列データ分析ステップにおいて、前記分散を算出する替わりに、2つの中性子検出器の共分散をとることを特徴とする請求項5に記載の使用済み核燃料の臨界管理方法。
【請求項7】
前記中性子増倍率kが予め設定された値を上回る場合は、当該使用済み核燃料を隔離することを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の使用済み核燃料の臨界管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に原子力発電プラントで使用された使用済み核燃料は、所定期間冷却された後に輸送容器に収納されて、中間貯蔵施設または再処理施設へ運ばれる。この中間貯蔵施設に送られた使用済み核燃料は、数10年の間さらに冷却された後に永久処分されるか再処理施設へ送られる。
【0003】
再処理施設では、輸送容器から使用済み核燃料を取り出して、発電プラントからの輸送データと実物との照合、あるいは燃焼度などの非破壊検査により、使用済み核燃料が正しく輸送されたことを確認する。そして、この使用済み核燃料は、適当な期間貯蔵された後に、所定のスケジュールに従って再処理される。
【0004】
使用済みウラン燃料は、初期には多くの核分裂性のウラン235が含まれる。初期に含まれるウラン235の量は初期濃縮度と呼ばれ、燃料集合体平均で3~4%程度にウラン235が濃縮されているが、使用済みウラン燃料ではウランの核分裂による減損により、1~2%程度に減少している。しかしながら、使用済みウラン燃料もまだ核分裂の能力が残っており、使用済み燃料再処理工場においては、使用済みウラン燃料が「臨界」とならないように、臨界安全管理を行う必要がある。
【0005】
最も保守的な臨界安全管理方法は「新燃料仮定」と呼ばれ、使用済み核燃料が燃焼していないと仮定して、使用済み核燃料の配置や核分裂を抑制する中性子吸収材の配置を決める方法であるが、コストは上昇する。そこで、燃料の燃焼に伴い、使用済み核燃料の反応度が低下していることを考慮して、臨界安全管理を行う、合理的な臨界安全管理方法は「燃焼度クレジット」と呼ばれる。
【0006】
燃焼度クレジットを採用するためには、燃料の燃焼度を知る必要がある。γ線や中性子測定に基づく、燃料の燃焼度を非破壊で評価する手法および装置はこれまでも知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0007】
燃料の臨界になりやすさの指標として中性子増倍率kが用いられる。中性子増倍率kは(中性子の生成)/(中性子の消滅)で定義される。燃料集合体が無限に配置されていると仮定した場合の中性子増倍率kは無限増倍率k∞として知られている。また、現実の有限体系での中性子増倍率kは実効増倍率keffとして知られている。以下、中性子増倍率kは実効増倍率keffを表すものとする。
【0008】
燃焼に伴い、ウランの濃縮度が低下していき、この無限増倍率k∞が減少することで、臨界になりにくくなる。従来の使用済みウラン燃料の再処理工場では、無限増倍率k∞が一定値以上に低下している、すなわち、燃料がある燃焼度以上燃焼していることを受け入れ条件として制限し(制限燃焼度)、この燃焼度に相当する減少したウラン濃縮度(残留濃縮度)から、臨界安全設計を行っている。これは残留濃縮度管理と呼ばれる。残留ウラン濃縮度を非破壊で評価することは困難であり、上述の通り、γ線や中性子測定から測定可能な燃焼度を評価し、燃焼度から残留濃縮度を算出している。
【0009】
燃焼度の測定は上述の通り、γ線や中性子測定から燃焼度を算出するものであるが、原子燃料の燃焼に伴う、γ線や中性子の生成は、原子炉の運転履歴に依存する。例えば、沸騰水型原子炉(BWR)は原子炉内で気泡(ボイド)が発生する。燃料の下部はボイド発生が少ない。一方燃料の上部はボイド発生が多い。上部の高ボイド率においては同じ燃焼度でも多くの中性子が発生することが知られている。
【0010】
また、誤装荷による想定外の燃焼度の燃料が紛れ込むリスクも完全には排除できない。このため、燃焼度測定装置においては、特異な運転履歴のため、第1ステップにおける中性子係数率の測定による燃焼度の測定において燃焼度制限値を満足しない指示値を出した燃料に対してバックアップの測定装置として、第2ステップが準備されている。六ケ所再処理工場においては、第2ステップにおいて、中性子吸収体であるカドミウムを着脱するカドミ着脱法(例えば、非特許文献1、特許文献1参照。)による中性子増倍率測定が行われる。
【0011】
一方、第2ステップは新たな設備の導入・維持管理が必要であるにも関わらず、特異な燃料が発生する可能性は極めて小さく、使用されることはほとんどない。このため、コスト面では不利である。
【0012】
第1ステップである、燃焼度測定装置のデータから、第2ステップ相当の中性子実効増倍率を測定することができれば、従来のような第2ステップの設備を削除したとしても、特異な燃料に対応でき、かつ、第2ステップの機能を保持することができる。
【0013】
未臨界度の指標としては、上述の通り、中性子増倍率kが用いられる。kは中性子生成と中性子消滅の比であり、k=1で臨界、k<1の時、未臨界である。未臨界度を表す際に、ドル単位が用いられることがある。遅発中性子生成割合βを用いて、k/β がドルと呼ばれる。実際に燃料が臨界となった場合でも、即時に爆発的なエネルギーが放出されるわけではない。kがβを超えたときに、“即発臨界”と呼ばれる制御不能の状態になる。この時に1ドルの反応度が投入されたとされる。1ドルの1/100としてセントが使われるときもある。未臨界の際はk<1であるが、kが1から離れて小さい時に未臨界度が“深い”、kが1に近い時、未臨界度が“浅い”ともいう。
【0014】
現在知られている未臨界度測定技術としては、
(1)負のペリオド法、(2)制御棒落下法、(3)補償法、(4)中性子源増倍法、(5)逆動特性法、(6)炉雑音解析法、(7)パルス中性子源法、
が挙げられる。これらの方法の内、(1)、(2)、(3)の方法は臨界となる原子炉に使用されるものであり、常に未臨界である燃料受け入れ工程には適さない。また(7)の方法は、原子炉を臨界状態にすることなく、未臨界度の絶対測定が可能であるが、原子炉内に中性子パルスを入射する加速器を必要とする点で、新たな大型の追加設備が必要となり、第2ステップの設備の削除の目的に適さない。このため、(4)~(6)の方法が適している。
【0015】
(4)の中性子源増倍法は、数十ドル程度の深い未臨界度まで測定可能であるが、既知の未臨界状態での校正が必要である。既知の未臨界状態での校正は燃料受け入れ工程では困難であり、この方法も第2ステップとしては適さない。
【0016】
(5)の逆動特性法は、未臨界の状態が変動した時に、その時間変化から未臨界度を推定するものであり、燃料受け入れ工程においては、静的な状態で測定が行われ、未臨界度の変化はないことから、第2ステップとしては適さない。
【0017】
(6)の炉雑音解析法には、(8)ロッシα法、(9)ファインマンα法、(10)折れ点周波数法、(11)ミハルゾ法がある。
【0018】
(8)のロッシα法は、原子炉で観測される中性子パルス相互間の時間間隔τの分布がポアソン分布からずれてe-ατに比例する成分を持つことから即発中性子減衰定数αを得て、αと中性子増倍率kの関係
α={1-(1-β)k}/L ……(1)
より、遅発中性子生成割合β、即発中性子寿命Lを与えて中性子増倍率を得るものである(例えば「原子炉物理実験」 コロナ社 参照。)。
【0019】
(9)のファインマンα法は、一定時間幅内の中性子パルスの計数値Mの分散対平均比がポアソン分布の場合の「1」からずれることを利用して、(8)のロッシα法と同様に即発中性子減衰定数αを得るものである(例えば非特許文献2参照。)。
【0020】
(10)の折れ点周波数法は、中性子計数率の周波数特性が未臨界状態における原子炉伝達関数で定まり、その折点角周波数が即発中性子減衰定数αに一致することを利用するものである。
【0021】
このように(8)~(10)の方法はいずれも即発中性子減衰定数αを求め、式(1)に定数β、Lを与えて中性子増倍率を得るものである。これらに対して、(11)のミハルゾ法は、中性子増倍率の絶対測定が可能であるが、中性子源Cf-252を内蔵した特殊な中性子検出器を原子炉の炉心や対象とする体系に設置する必要があるため、既存の燃焼度受け入れ工程に新たな設備導入が必要であり、設備自体は小型であるが、第2ステップの設備の削除の目的にはやや適さない。
【0022】
以上の技術はいずれも原子炉の中性子増倍率を測定する目的で開発されたものであるが、特許文献2では原子炉から取り出した使用済み燃料集合体を収納ラック、輸送・貯蔵容器に収納する場合に、(8)のロッシα法あるいは(9)のファインマンα法を適用して臨界安全性を監視する技術が開示されている。
【0023】
遅発中性子割合βや即発中性子寿命Lは、解析で事前に与える。使用済み核燃料受け入れ工程の場合、燃料集合体の形状は固定されており、また、水と核燃料の割合もほぼ一定であることから、βやLの変化は小さく、解析で与えることによる誤差の影響は小さいと考えられる。
【0024】
上述した(8)~(10)の方法は、既存の中性子検出器からの時系列データを処理することで未臨界度を推定できることから、新たな設備導入が不要である。(8)~(10)の方法の内、深い未臨界度でも適用可能と考えられるのは、(9)のファインマンα法のみであり、第2ステップ代替に適した方法である。
【0025】
これらの原子炉雑音法は、最新の電子技術による計測技術を用いたとしても、数分から数十分、測定精度を向上させるためには数時間の測定時間が必要となるが、第2ステップがほぼ使用されることはないことから、測定時間の制約は問題にならないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2014-137259号公報
【特許文献2】特開2005-106611号公報
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】株式会社東芝 TLR-R001 再処理施設における燃焼度計測装置
【非特許文献2】京大炉KUCA実験テキスト「中性子相関実験 Feynman-α法」、www.rri.kyoto-u.ac.jp/CAD/Insei/2003Text/Chap4_7‐2_r0.pdf.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
燃焼度測定装置においては、特異な燃料に対応するため、中性子増倍率を推定できる第2ステップを備えているが、ほぼ使用されることはなく、設備維持のコスト上昇原因と一つとなっている。第1ステップで測定されるγ線や中性子の情報から第2ステップ相当の中性子増倍率を推定することができれば、従来の第2ステップの設備を削除しても、信頼性を損なうことがなく、コスト低減が可能となる。
【0029】
本発明は、このような従来の事情を考慮してなされたもので、コストの低減を図ることができるとともに、第2ステップの機能である中性子増倍率の推定を可能とすることのできる使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
実施形態の使用済み核燃料の未臨界度測定装置は、使用済み核燃料の中性子計数を測定して燃焼度を測定する第1ステップと、前記第1ステップにおいて燃焼度制限値を満たさない前記使用済み核燃料に対して第2ステップの測定を行う使用済み核燃料の未臨界度測定装置であって、前記中性子計数を時系列データとして蓄積する蓄積手段と、前記時系列データから、原子炉雑音法に基づき即発中性子減衰定数αを算出する時系列データ分析手段と、予め中性子輸送解析により、遅発中性子割合βと即発中性子寿命Lとを算出する事前解析手段と、前記即発中性子減衰定数αと、前記遅発中性子割合βと、前記即発中性子寿命Lとから中性子増倍率kを算出する中性子増倍率算出手段と、を具備し、前記中性子増倍率kによって前記第2ステップの未臨界度を判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
実施形態によれば、コストの低減を図ることができるとともに、第2ステップの機能である中性子増倍率の推定を可能とすることのできる使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態に係る使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法の構成を模式的に示す図。
図2】実施形態に係る使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法のフロー図。
図3】臨界実験装置で得られた実験結果の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態に係る使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法を、図面を参照して説明する。本実施形態の使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法は、再処理施設において、輸送されてきた使用済み核燃料を受け入れる際などに適用される。
【0034】
図1は、実施形態に係る使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法の概略構成を模式的に示す図であり、図2は、燃焼度計測装置からの第1ステップの信号による第2ステップ代替のフローを示している。
【0035】
図1に示すように、使用済みの燃料集合体3の周囲には、燃料集合体3からの中性子を測定するための中性子検出器1、中性子検出器2が2つ設けられている。図1に示すように、本実施形態は、第1ステップ実行部100と、第2ステップ実行部200とを具備している。そして、第1ステップ実行部100による第1ステップで燃焼度制限値を満たさない場合、第2ステップ実行部200による第2ステップを実行する。
【0036】
図1に示すように、第2ステップ実行部200は、中性子計数蓄積部201と、時系列データ分析部202と、事前解析部203と、中性子増倍率算出部204とを具備している。
【0037】
中性子検出器1、中性子検出器2からの中性子計数データは、第1ステップ実行部100に入力されるとともに、中性子計数蓄積部201に時系列データとして蓄積される。
【0038】
図2に示すように、本実施形態では、中性子計数データを取得し(図2のステップ301)、使用済み核燃料の燃焼度を測定する第1ステップにおいて(図2のステップ302)、燃焼度制限値を超える指示値を出した燃焼度制限値を満足していない使用済み核燃料(図2のステップ303のNo)に対して、第2ステップ実行部200の時系列データ分析部202を起動して第2ステップの測定を行う(図2のステップ304)。
【0039】
第2ステップ実行部200の時系列データ分析部202では、第1ステップを実施するために中性子検出器1,中性子検出器2から出力された中性子計数データを、中性子計数蓄積部201に蓄積してこの中性子計数の時系列データを用いる。時系列データを数分から数十分蓄積して時系列データ分析部202で分析し、ファインマンα分析を行い、即発中性子減衰定数αを得る。
【0040】
以下に、ファインマンα法の具体的な処理方法を述べる。
放射性崩壊の頻度はポアソン分布に基づいているが、中性子が同時に複数個発生する場合や、核分裂性物質による連鎖反応が生じる場合は、ポアソン分布からずれることが知られている(例えば、非特許文献2参照。)。ポアソン分布からのずれの指標として、分散と平均の比(分散対平均比)が用いられる。ある時間間隔t~t+Δtの中性子カウントをM(i)とし、imax個のデータがあるとすると、平均、分散、分散/平均比は以下のように表せる。第2ステップ実行部200の時系列データ分析部202では、以下に示すように、平均の算出(図2のステップ305)、分散の算出(図2のステップ306)、分散対平均比の算出(図2のステップ307)、即発中性子減衰定数αの算出(図2のステップ308)を順次実行する。
【0041】
平均
【数1】
【0042】
分散
【数2】
【0043】
分散/平均比
【数3】
【0044】
Y=C[1-{1-exp(-αΔt)}/αΔt]
ここでCは定数である。
【0045】
即発中性子減衰定数αの算出では、Δtを変化させた時のYをプロットし、上記の関数でフィッティングすることで即発中性子減衰定数α値を得る。図3のグラフは、臨界実験装置(Toshiba Critical Assembly:NCA)で得られた実験の一例の結果を示しているが、ゲート幅(Δt)とYの関係から即発中性子減衰定数αを得ることができていることがわかる。
【0046】
なお、図中に示される水位は、臨界実験装置の炉心タンクの水位(mm)を示している。高い水位の方が中性子増倍率が高く、水位1000は900より臨界に近い状態である。ゲート幅が上述のΔtに相当する。なお、定数Cもフィッティングにより同時に求めることができる。
【0047】
また、事前解析部203により、予め中性子輸送解析にて遅発中性子割合βと即発中性子寿命Lとを求めておく。そして、中性子増倍率算出部204にて、これらの遅発中性子割合β、即発中性子寿命L、即発中性子減衰定数αを用いて、以下に示す前述した関係式(1)を用いて中性子増倍率kを得る(図2のステップ309)。
α={1-(1-β)k}/L …(1)
【0048】
この方法は、中性子計数率の絶対値に依存しないので、運転履歴等の影響により、燃焼度-中性子強度またはγ線強度の関係が特異な燃料に対しても、中性子計数率の変動に影響されず、中性子増倍率kを推定できるという利点がある。
【0049】
そして、この得られた中性子増倍率kが、設定値、例えばk=0.8を下回る場合は(図2のステップ310のYes)、異常なしとして通常ルートで処理する(図2のステップ311)。一方、中性子増倍率kが、設定値を上回る場合は(図2のステップ310のNo)、異常ありとして隔離するなどの措置をとる(図2のステップ312)。
【0050】
以上のように、実施形態の使用済み核燃料の未臨界度測定装置及び使用済み核燃料の臨界管理方法によれば、コストの低減を図ることができるとともに、第2ステップの機能である中性子増倍率の推定を可能とすることができる。
【0051】
なお、図1では、ファインマンα法により時系列データの分析を行っているが、ロッシα法や折れ点周波数法を用いてもよい。また、Cf-252中性子源という特殊な中性子検出器が準備できるなら、ミハルゾ法を用いてもよい。また、これらのうちの複数の方法を用いてもよい。
【0052】
複数の情報を元に分析することで、特異な燃料の原因を早期に突き止め、隔離の判断を行った場合でも、どのような経緯で特異な燃料が発生したかを判断することができる。
【0053】
なお、時系列データの分析は常時、バックアップとして実行し、通常時は工程の異常の有無の判定には使用せず、特異な燃料が生じた時のみ異常の有無の判定に使用するようにしても良い。
【0054】
中性子輸送解析法としては、連続エネルギーモンテカルロ法を用いるのが最も適しているが、Sn輸送計算法や拡散計算法を用いてもよい。
【0055】
連続エネルギーモンテカルロ法には、米国ロスアラモス研究所で開発されたMCNPや日本原子力研究開発機構で開発されたMVP等がある。Sn輸送計算法には、米国オークリッジ研究所で開発されたDOORS等がある。拡散計算コードには米国オークリッジ研究所で開発されたCITATION等がある(例えば、日本原子力学会「放射線遮蔽ハンドブック(基礎編)」参照。)。
【0056】
ファインマンα法において、分散の代わりに検出器1と検出器2の共分散を用いてもよい。共分散を用いる原子炉雑音解析は、例えば、「日本原子力学会誌vol.37,No.6 (1995) 共分散法に基づく実効遅発中性子割合の測定」等の文献にも示されている。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1……中性子検出器、2……中性子検出器、3……燃料集合体。
図1
図2
図3