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特開2023-30901セパレータ付電気化学反応単セル、および、電気化学反応セルスタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030901
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】セパレータ付電気化学反応単セル、および、電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20230301BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20230301BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20230301BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20230301BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230301BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALN20230301BHJP
【FI】
H01M8/0202
C25B13/02 302
C25B9/23
C25B9/65
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/0273
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136311
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 匡央
(72)【発明者】
【氏名】小野 達也
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA15
4K021DB40
4K021DB43
4K021DB49
4K021DB53
4K021DC03
4K021EA05
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD05
5H126JJ02
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】接合部の張出部分からの汚染物質の拡散を抑制する。
【解決手段】セパレータ付電気化学反応単セルは、単セルと、セパレータと、単セルの一方側の表面とセパレータとを接合する接合部と、を備える。接合部は、単セルに対してガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、第1の特定部分と第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有する。接合部の第1の特定部分と第2の特定部分の少なくとも一方における単セルの外縁に対する張り出し長さは、一対の側方部分の少なくとも一方の張出部分における単セルの外縁に対する張り出し長さより短い。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、
前記単セルの前記第1の方向の一方側の表面に接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、
ロウ材により形成され、前記単セルの前記一方側の表面と前記セパレータとを接合する接合部と、
を備えるセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、
前記接合部は、前記単セルに対して前記第1の方向の他方側を流れるガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、前記ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、前記第1の特定部分と前記第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有しており、
前記接合部のうち、前記一対の側方部分の少なくとも一部は、前記セパレータの前記第1の方向の前記他方側の表面に沿い、かつ、前記第1の方向視で前記単セルの外縁よりも外側に張り出した張出部分を有しており、
前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分の少なくとも一方における前記単セルの外縁に対する張り出し長さは、前記一対の側方部分の少なくとも一方の前記張出部分における前記単セルの外縁に対する張り出し長さより短い、
ことを特徴とするセパレータ付電気化学反応単セル。
【請求項2】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、
前記単セルの前記第1の方向の一方側の表面に接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、
ロウ材により形成され、前記単セルの前記一方側の表面と前記セパレータとを接合する接合部と、
を備えるセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、
前記接合部は、前記単セルに対して前記第1の方向の他方側を流れるガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、前記ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、前記第1の特定部分と前記第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有しており、
前記接合部のうち、前記一対の側方部分の少なくとも一部は、前記セパレータの前記第1の方向の前記他方側の表面に沿い、かつ、前記第1の方向視で前記単セルの外縁よりも外側に張り出した張出部分を有しており、
前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分との少なくとも一方における前記単セルの外縁に対する張り出し面積は、前記一対の側方部分の少なくとも一方の前記張出部分における前記単セルの外縁に対する張り出し面積より小さい、
ことを特徴とするセパレータ付電気化学反応単セル。
【請求項3】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、
前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が前記単セルの前記第1の方向の一方側の表面に接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、
ロウ材により形成され、前記単セルの前記一方側の表面と前記セパレータの前記貫通孔周囲部とを接合する接合部と、
を備えるセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、
前記接合部は、前記単セルに対して前記第1の方向の前記一方側を流れるガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、前記ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、前記第1の特定部分と前記第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有しており、
前記接合部のうち、前記一対の側方部分の少なくとも一部は、前記単セルの前記一方側の表面に沿い、かつ、前記第1の方向視で前記セパレータの前記貫通孔を画定する内縁よりも内側に張り出した張出部分を有しており、
前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分との少なくとも一方における前記セパレータの内縁に対する張り出し長さは、前記一対の側方部分の少なくとも一方の前記張出部分における前記セパレータの内縁に対する張り出し長さより短い、
ことを特徴とするセパレータ付電気化学反応単セル。
【請求項4】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、
前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が前記単セルの前記第1の方向の一方側の表面に接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、
ロウ材により形成され、前記単セルの前記一方側の表面と前記セパレータの前記貫通孔周囲部とを接合する接合部と、
を備えるセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、
前記接合部は、前記単セルに対して前記第1の方向の前記一方側を流れるガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、前記ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、前記第1の特定部分と前記第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有しており、
前記接合部のうち、前記一対の側方部分の少なくとも一部は、前記単セルの前記一方側の表面に沿い、かつ、前記第1の方向視で前記セパレータの前記貫通孔を画定する内縁よりも内側に張り出した張出部分を有しており、
前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分との少なくとも一方における前記セパレータの内縁に対する張り出し面積は、前記一対の側方部分の少なくとも一方における前記張出部分における前記セパレータの内縁に対する張り出し面積より小さい、
ことを特徴とするセパレータ付電気化学反応単セル。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、
前記一対の側方部分の少なくとも一方の前記張出部分の厚さは、前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分との少なくとも一方の厚さ以上である、ことを特徴とするセパレータ付電気化学反応単セル。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、
前記接合部の前記第1の特定部分は、前記ガスの流れ方向に交差する方向に延びる第1の直線状部分であり、
前記接合部の前記側方部分は、前記ガスの流れ方向に沿って延びる第2の直線状部分と、前記第1の直線状部分と前記第2の直線状部分とを連結する円弧状部分と、を有しており、
前記張出部分は、前記第2の直線状部分から前記円弧状部分の少なくとも一部まで連続的に形成されている、ことを特徴とするセパレータ付電気化学反応単セル。
【請求項7】
複数のセパレータ付電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数のセパレータ付電気化学反応単セルの少なくとも1つは、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のセパレータ付電気化学反応単セルである、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項8】
請求項7に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記接合部の前記張出部分は、遮蔽部材に覆われている、ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、セパレータ付電気化学反応単セルに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCは、一般に、所定の方向に並べて配置された複数のセパレータ付単セルを備える燃料電池スタックの形態で利用される。セパレータ付単セルは、燃料電池単セル(以下、「単セル」という)と、セパレータと、接合部と、を備える。単セルは、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。セパレータは、単セルの第1の方向の一方側の表面に接合され、空気極に面する空気室と燃料極に面する燃料室とを区画する。接合部は、ロウ材により形成され、単セルの上記一方側の表面とセパレータとを接合する。
【0003】
このようなセパレータ付単セルの製造過程において、単セルとセパレータとをロウ材により接合する際、単セルとセパレータとの間からはみ出したロウ材が局所的に貯まって下方に垂れる、いわゆるロウ溜まりが発生するおそれがある。ロウ溜まりが発生すると、例えば燃料電池スタックの組み立て工程や運転中等において、ロウ溜まりに応力が集中することにより、例えば単セルが損傷(割れ等)するおそれがある。
【0004】
これに対して、従来から、ロウ溜まりの発生を抑制するため、内側接合部や外側接合部を備えるセパレータ付単セルが知られている(例えば、特許文献1参照)。内側接合部は、第1の方向視でセパレータの開口部の内周よりセルの表面に沿って内側に全周にわたって均一に張り出した接合部であり、外側接合部は、第1の方向視で単セルの外周よりセパレータの表面に沿って外側に全周にわたって張り出した接合部である。このような構成であれば、単セルとセパレータとを接合する際、単セルとセパレータとの間からはみ出したロウ材は、ロウ材が存在する内側接合部や外側接合部の領域に沿って広がるように流出する。はみ出したロウ材と、内側接合部や外側接合部に存在するロウ材との親和性が高いためである。その結果、ロウ溜まりの発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-135807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のセパレータ付単セルでは、接合部(内側接合部、外側接合部)が、単セルまたはセパレータの全周にわたって均一に張り出してガス室(空気室または燃料室)に露出する構成である。このため、ガス室に流れるガスが接合部の張出部分に接触して浸食することにより、張出部分から接合部(ロウ材)に含まれる汚染物質がガス室に拡散する。汚染物質がガス室に拡散すると、例えば、汚染物質が単セルに付着して単セルの性能が低下したり、ガスの再利用が困難になったりするおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という)の構成単位である電解セル単位にも共通の問題である。なお、本明細書では、燃料電池発電単位と電解セル単位とをまとめて、電気化学反応単位と呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応単位にも共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題の少なくとも一部を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示されるセパレータ付電気化学反応単セルは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記単セルの前記第1の方向の一方側の表面に接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、ロウ材により形成され、前記単セルの前記一方側の表面と前記セパレータとを接合する接合部と、を備えるセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、前記接合部は、前記単セルに対して前記第1の方向の他方側を流れるガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、前記ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、前記第1の特定部分と前記第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有しており、前記接合部のうち、前記一対の側方部分の少なくとも一部は、前記セパレータの前記第1の方向の前記他方側の表面に沿い、かつ、前記第1の方向視で前記単セルの外縁よりも外側に張り出した張出部分を有しており、前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分の少なくとも一方における前記単セルの外縁に対する張り出し長さは、前記一対の側方部分の少なくとも一方の前記張出部分における前記単セルの外縁に対する張り出し長さより短い。
【0011】
本セパレータ付電気化学反応単セルでは、接合部のうち、一対の側方部分の少なくとも一部は、セパレータの第1の方向の他方側の表面に沿い、かつ、第1の方向視で単セルの外縁よりも外側に張り出した張出部分を有している。このため、単セルとセパレータとの接合の際、接合部のうち、少なくとも張出部分を有する部分についてロウ溜まりの発生を抑制することができる。ここで、接合部の第1の特定部分と第2の特定部分とは、単セルに対してガスの流れ方向における両側に位置しているため、単セルに対してガスの流れ方向に直交する方向の両側に位置する一対の側方部分に比べて、多量のガスに接触して浸食されることにより、ロウ材に含まれる汚染物質が拡散しやすい。これに対して、本セパレータ付電気化学反応単セルでは、接合部の第1の特定部分と第2の特定部分との少なくとも一方(以下、「特定部分」という)の張り出し長さが、一対の側方部分の少なくとも一方の張り出し長さよりも短い。これにより、本セパレータ付電気化学反応単セルによれば、接合部の特定部分の張り出し長さが、一対の側方部分の張り出し長さと同等以上である構成に比べて、接合部の張出部分からの汚染物質の拡散を抑制することができる。
【0012】
(2)本明細書に開示されるセパレータ付電気化学反応単セルは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記単セルの前記第1の方向の一方側の表面に接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、ロウ材により形成され、前記単セルの前記一方側の表面と前記セパレータとを接合する接合部と、を備えるセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、前記接合部は、前記単セルに対して前記第1の方向の他方側を流れるガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、前記ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、前記第1の特定部分と前記第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有しており、前記接合部のうち、前記一対の側方部分の少なくとも一部は、前記セパレータの前記第1の方向の前記他方側の表面に沿い、かつ、前記第1の方向視で前記単セルの外縁よりも外側に張り出した張出部分を有しており、前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分との少なくとも一方における前記単セルの外縁に対する張り出し面積は、前記一対の側方部分の少なくとも一方の前記張出部分における前記単セルの外縁に対する張り出し面積より小さい。本セパレータ付電気化学反応単セルでは、接合部の第1の特定部分と第2の特定部分との少なくとも一方(以下、「特定部分」という)の張り出し面積が、一対の側方部分の少なくとも一方の張り出し面積よりも小さい。これにより、本セパレータ付電気化学反応単セルによれば、接合部の特定部分の張り出し面積が、一対の側方部分の張り出し面積と同等以上である構成に比べて、接合部の張出部分からの汚染物質の拡散を抑制することができる。
【0013】
(3)本明細書に開示されるセパレータ付電気化学反応単セルは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が前記単セルの前記第1の方向の一方側の表面に接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、ロウ材により形成され、前記単セルの前記一方側の表面と前記セパレータの前記貫通孔周囲部とを接合する接合部と、を備えるセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、前記接合部は、前記単セルに対して前記第1の方向の前記一方側を流れるガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、前記ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、前記第1の特定部分と前記第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有しており、前記接合部のうち、前記一対の側方部分の少なくとも一部は、前記単セルの前記一方側の表面に沿い、かつ、前記第1の方向視で前記セパレータの前記貫通孔を画定する内縁よりも内側に張り出した張出部分を有しており、前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分との少なくとも一方における前記セパレータの内縁に対する張り出し長さは、前記一対の側方部分の少なくとも一方の前記張出部分における前記セパレータの内縁に対する張り出し長さより短い。本セパレータ付電気化学反応単セルによれば、接合部の特定部分の張り出し長さが、一対の側方部分の張り出し長さと同等以上である構成に比べて、接合部の張出部分からの汚染物質の拡散を抑制することができる。
【0014】
(4)本明細書に開示されるセパレータ付電気化学反応単セルは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が前記単セルの前記第1の方向の一方側の表面に接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、ロウ材により形成され、前記単セルの前記一方側の表面と前記セパレータの前記貫通孔周囲部とを接合する接合部と、を備えるセパレータ付電気化学反応単セルにおいて、前記接合部は、前記単セルに対して前記第1の方向の前記一方側を流れるガスの流れ方向における一方側に位置する第1の特定部分と、前記ガスの流れ方向における他方側に位置する第2の特定部分と、前記第1の特定部分と前記第2の特定部分とをつなぐ一対の側方部分と、を有しており、前記接合部のうち、前記一対の側方部分の少なくとも一部は、前記単セルの前記一方側の表面に沿い、かつ、前記第1の方向視で前記セパレータの前記貫通孔を画定する内縁よりも内側に張り出した張出部分を有しており、前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分との少なくとも一方における前記セパレータの内縁に対する張り出し面積は、前記一対の側方部分の少なくとも一方における前記張出部分における前記セパレータの内縁に対する張り出し面積より小さい。本セパレータ付電気化学反応単セルによれば、接合部の特定部分の張り出し面積が、一対の側方部分の張り出し面積と同等以上である構成に比べて、接合部の張出部分からの汚染物質の拡散を抑制することができる。
【0015】
(5)上記セパレータ付電気化学反応単セルにおいて、前記一対の側方部分の少なくとも一方の前記張出部分の厚さは、前記接合部の前記第1の特定部分と前記第2の特定部分との少なくとも一方の厚さ以上である構成としてもよい。接合部の第1の特定部分または第2の特定部分(以下、「特定部分」という)では、張り出し長さが相対的に短い、または、張り出し面積が小さいため、ロウ溜まり発生の抑制効果が低い。しかし、本セパレータ付電気化学反応単セルによれば、張出部分の厚さが特定部分の厚さより薄い構成に比べて、単セルとセパレータとをロウ付けする際、加熱によって溶融した特定部分のロウ材が張出部分に流れやすくなり、その結果、特定部分におけるロウ溜まりの発生を抑制することができる。
【0016】
(6)上記セパレータ付電気化学反応単セルにおいて、前記接合部の前記第1の特定部分は、前記ガスの流れ方向に交差する方向に延びる第1の直線状部分であり、前記接合部の前記側方部分は、前記ガスの流れ方向に沿って延びる第2の直線状部分と、前記第1の直線状部分と前記第2の直線状部分とを連結する円弧状部分と、を有しており、前記張出部分は、前記第2の直線状部分から前記円弧状部分の少なくとも一部まで連続的に形成されている構成としてもよい。本セパレータ付電気化学反応単セルによれば、単セルとセパレータとをロウ付けする際、加熱によって溶融した第1の特定部分のロウ材が張出部分にさらに流れやすくなり、その結果、第1の特定部分におけるロウ溜まりの発生を、より効果的に抑制することができる。
【0017】
(7)上記電気化学反応セルスタックにおいて、複数のセパレータ付電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記複数のセパレータ付電気化学反応単セルの少なくとも1つは、上記(1)から(6)までのいずれか一つのセパレータ付電気化学反応単セルである構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、接合部の張出部分からの汚染物質の拡散を抑制することができる。
【0018】
(8)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記接合部の前記張出部分は、遮蔽部材に覆われている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、接合部の張出部分からの汚染物質の拡散を、より効果的に抑制することができる。
【0019】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、セパレータ付電気化学反応単セル(セパレータ付燃料電池単セルまたはセパレータ付電解セル)、複数のセパレータ付電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図6図4のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図7図5のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図8図6に対してセパレータ120および空気極側フレーム130を取り外した状態を示す説明図である。
図9図7に対して単セル110を取り外した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.実施形態:
A-1.装置構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0022】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。
【0023】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0024】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0025】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0026】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0027】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0028】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0029】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、図6は、図4のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図7は、図5のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0030】
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0031】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0032】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0033】
電解質層112は、Z方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な(気孔率が低い)層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、Z方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な(電解質層112より気孔率が高い)層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、Z方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な(電解質層112より気孔率が高い)層である。燃料極116は、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0034】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAg、Au、Pd、Pt等を含むロウ材 これらの金属以外の材料(例えばアルミナ)を副成分として含んでもよい。)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。接合部124の詳細構成については後述する。
【0035】
図6に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0036】
図7に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0037】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。また、空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0038】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0039】
また、本実施形態の発電単位102は、さらに、フェルト部材41を備える。図5に示すように、フェルト部材41は、空気室166において、酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向)の両端の位置(Z軸方向において単セル110の空気極114と重ならない位置)に充填されている。また、図4に示すように、フェルト部材41は、燃料室176において、燃料ガスFGの主たる流れ方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)の両端の位置(Z軸方向において単セル110の空気極114と重ならない位置)にも充填されている。フェルト部材41の存在により、空気室166に供給された酸化剤ガスOGまたは燃料室176に供給された燃料ガスFGが、発電にあまり寄与しない領域を通過して空気室166または燃料室176から排出されることを抑制することができ、発電効率を向上させることができる。
【0040】
フェルト部材41は、アルミナ-シリカ(二酸化ケイ素)系のフェルト材料により構成されている。すなわち、フェルト部材41は、セラミックスであるアルミナと、シリカ成分とを含んでいる。フェルト部材41がアルミナを含むことにより、フェルト部材41の耐熱性や柔軟性を向上させることができる。なお、本実施形態で使用されるフェルト部材41は、Alの結晶構造を有すると共に、SiOの結晶構造も有している。このようなフェルト部材41は、Alの結晶構造を有する市販のアルミナ-シリカ系のフェルト原材料を、例えば1000℃以上、1300℃以下で8~12時間の熱処理を行い、その後に成形することにより作製することができる。
【0041】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2図4および図6に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3図5および図7に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0042】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0043】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2図4および図6に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3図5および図7に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0044】
A-3.接合部124の詳細構成:
上述したように、接合部124は、単セル110とセパレータ120とを接合している。図4および図5に示すように、接合部124は、単セル110とセパレータ120との接合対象部分の全長にわたって位置し、単セル110とセパレータ120とを接合している。本実施形態では、単セル110の接合対象部分は、単セル110(電解質層112)における空気極114の側の表面の周縁部であり、セパレータ120の接合対象部分は、セパレータ120における孔121の周囲部分である。
【0045】
具体的には、図6に示すように、セパレータ120の孔121を画定する内縁の上下方向視での形状は、全体として略矩形であり、具体的には、酸化剤ガスOGの流れ方向(X軸方向)に沿って直線状に延びる一対の直線部分と、燃料ガスFG(Y軸方向)の流れ方向に沿って直線状に延びる一対の直線部分と、互いに隣り合う直線部分同士を連結する4つの円弧状部分と、を有した形状である。また、図7に示すように、単セル110の外縁の上下方向視での形状は、セパレータ120の孔121を画定する内縁の上下方向視での形状と略同一(略矩形状)であり、かつ、セパレータ120の孔121を画定する内縁よりも一回り大きい。
【0046】
接合部124の上下方向視での形状は、単セル110およびセパレータ120の孔121を画定する内縁の上下方向視での形状と略同一である。具体的には、接合部124の上下方向視での形状は、図8および図9に示すように、一対のFG平行部分125A,125Bと、一対のOG平行部分125C,125Dと、4つの円弧部分126と、を有する略矩形環状である。一対のFG平行部分125A,125Bは、燃料ガスFGの流れ方向に沿って直線状に延びる一対の直線部分であり、一対のOG平行部分125C,125Dは、酸化剤ガスOGの流れ方向(X軸方向)に沿って直線状に延びる一対の直線部分である。各円弧部分126は、互いに隣り合うFG平行部分125A,125BとOG平行部分125C,125Dとを連結し、かつ、接合部124の外周側に突出する1/4円弧状である。接合部124は、接合基本部分127と内側張出部分200と外側張出部分300とを有している。
【0047】
(接合基本部分127)
接合基本部分127は、上下方向において、単セル110の表面の周縁部とセパレータ120における孔121の周囲部分との間に位置し、かつ、単セル110の表面の周縁部とセパレータ120における孔121の周囲部分との両方に接触することによって両者を接合している。すなわち、接合基本部分127は、単セル110(孔121)の全周にわたって形成されている。換言すれば、接合基本部分127は、接合部124の全周(一対のFG平行部分125A,125Bと、一対のOG平行部分125C,125Dと、1/4つの円弧部分126)にわたって連続的に存在している。
【0048】
(内側張出部分200)
図8は、図6に対してセパレータ120および空気極側フレーム130を取り外した状態を示す説明図である。具体的には、図8では、単セル110に対してセパレータ120および空気極側フレーム130が取り外され、単セル110(電解質層112)の上側表面の周縁部に配置された接合部124の全体が示されている。なお、図8では、便宜上、単セル110および接合部124以外の構成は省略されている。
【0049】
図8に示すように、空気室166側において、接合部124の一対のFG平行部分125A,125Bは、酸化剤ガスOGの流れ方向(X軸方向)に交差する方向(直交する方向)に延びている。FG平行部分125Aは、単セル110に対して酸化剤ガスOGの流れ方向の上流側に位置しており、FG平行部分125Bは、単セル110に対して酸化剤ガスOGの流れ方向の下流側に位置している。接合部124の一対のOG平行部分125C,125Dは、酸化剤ガスOGの流れ方向に沿って延びている。酸化剤ガスOGの流れ方向は、特許請求の範囲における単セルに対して第1の方向の一方側を流れるガスの流れ方向の一例である。一対のFG平行部分125A,125Bは、特許請求の範囲における第1の特定部分および第2の特定部分の一例である。一対のOG平行部分125C,125Dおよび円弧部分126は、特許請求の範囲における一対の側方部分の一例である。
【0050】
内側張出部分200は、単セル110(電解質層112)の上側表面に沿いつつ接触し、かつ、上下方向視でセパレータ120の孔121を画定する内縁よりも内側に張り出した張出部分である。内側張出部分200は、セパレータ120の内縁(孔121の輪郭線)の一部に囲まれるように、同内縁の一部に沿って連続的に延びている。具体的には、内側張出部分200は、一対のOG平行部分125C,125Dのそれぞれに形成されており、一対のFG平行部分125A,125Bには形成されていない(図8参照)。すなわち、図6に示すように、単セル110とセパレータ120とが接合された状態では、接合部124のうち、内側張出部分200だけが、セパレータ120の内縁から張り出している。ただし、内側張出部分200の全体がフェルト部材41に覆われているため、内側張出部分200は、空気室166に露出しない(図4から図6参照)。フェルト部材41は、特許請求の範囲における遮蔽部材の一例である。
【0051】
要するに、空気室166側において、各FG平行部分125A,125Bにおけるセパレータ120の内縁に対する張り出し長さ(例えば張り出した部分のセパレータ120の内縁に対して直交する張り出し長さの平均値)は、各OG平行部分125C,125Dの内側張出部分200におけるセパレータ120の内縁に対する張り出し長さより短い。また、空気室166側において、各FG平行部分125A,125Bにおけるセパレータ120の内縁に対する張り出し面積(例えば張り出した部分のうち、単セル110と接する表面を除く総面積)は、各OG平行部分125C,125Dの内側張出部分200におけるセパレータ120の内縁に対する張り出し面積よりも小さい。
【0052】
内側張出部分200の上下方向の厚さは、各FG平行部分125A,125Bの上下方向の厚さと同じである(図4および図5参照)。
【0053】
内側張出部分200は、各OG平行部分125C,125Dから円弧部分126の少なくとも一部まで連続的に形成されている。具体的には、図8に示すように、内側張出部分200の一端は、上流側のFG平行部分125Aとの間に位置する円弧部分126に沿って連続的に延びている。また、内側張出部分200の他端は、下流側のFG平行部分125Bとの間に位置する円弧部分126に沿って連続的に延びている。本実施形態では、図8に拡大して示すように、内側張出部分200の各端は、各OG平行部分125C,125Dから円弧部分126に沿って中心角θ2(≦90度)分だけ連続的に延びている。中心角θ2は、30度以下でもよいし、60度以下でもよい(本実施形態では30度)。このとき、FG平行部分125A,125Bは、特許請求の範囲における第1の直線状部分の一例であり、OG平行部分125C,125Dは、特許請求の範囲における第2の直線状部分の一例である。
【0054】
(外側張出部分300)
図9は、図7に対して単セル110を取り外した状態を示す説明図である。具体的には、図9では、セパレータ120に対して単セル110が取り外され、セパレータ120の下側表面における孔121の周囲部分に配置された接合部124の全体が示されている。
【0055】
図9に示すように、燃料室176側において、接合部124の一対のOG平行部分125C,125Dは、燃料ガスFGの流れ方向(Y軸方向)に交差する方向(直交する方向)に延びている。OG平行部分125Cは、単セル110に対して燃料ガスFGの流れ方向の上流側に位置しており、OG平行部分125Dは、単セル110に対して燃料ガスFGの流れ方向の下流側に位置している。接合部124の一対のFG平行部分125A,125Bは、燃料ガスFGの流れ方向に沿って延びている。燃料ガスFGの流れ方向は、特許請求の範囲における単セルに対して第1の方向の他方側を流れるガスの流れ方向の一例である。一対のOG平行部分125C,125Dは、特許請求の範囲における第1の特定部分および第2の特定部分の一例である。一対のFG平行部分125A,125Bおよび円弧部分126は、特許請求の範囲における一対の側方部分の一例である。
【0056】
外側張出部分300は、セパレータ120の下側表面に沿いつつ接触し、かつ、上下方向視で単セル110(燃料極116)の外縁よりも外側に張り出した張出部分である。外側張出部分300は、単セル110の外縁の一部を囲むように、同外縁の一部に沿って連続的に延びている。具体的には、外側張出部分300は、一対のFG平行部分125A,125Bのそれぞれに形成されており、一対のOG平行部分125C,125Dには形成されていない(図9参照)。すなわち、図7に示すように、単セル110とセパレータ120とが接合された状態では、接合部124のうち、外側張出部分300だけが、単セル110の外縁から張り出している。ただし、外側張出部分300の全体がフェルト部材41に覆われているため、外側張出部分300は、燃料室176に露出しない(図4参照)。
【0057】
要するに、燃料室176側において、各OG平行部分125C,125Dにおける単セル110の外縁に対する張り出し長さは、各FG平行部分125A,125Bの外側張出部分300における単セル110の外縁に対する張り出し長さより短い。また、燃料室176側において、各OG平行部分125C,125Dにおける単セル110の外縁に対する張り出し面積は、各FG平行部分125A,125Bの外側張出部分300における単セル110の外縁に対する張り出し面積よりも小さい。
【0058】
外側張出部分300の上下方向の厚さは、各OG平行部分125C,125Dの上下方向の厚さと同じである(図4および図5参照)。
【0059】
外側張出部分300は、各FG平行部分125A,125Bから円弧部分126の少なくとも一部まで連続的に形成されている。具体的には、図9に示すように、外側張出部分300の一端は、上流側のOG平行部分125Cとの間に位置する円弧部分126に沿って連続的に延びている。また、外側張出部分300の他端は、下流側のOG平行部分125Dとの間に位置する円弧部分126に沿って連続的に延びている。本実施形態では、図9に拡大して示すように、外側張出部分300の各端は、各FG平行部分125A,125Bから円弧部分126に沿って中心角θ1(<90度)分だけ連続的に延びている。中心角θ1は、30度以下でもよいし、60度以下でもよい(本実施形態では30度)。このとき、OG平行部分125C,125Dは、特許請求の範囲における第1の直線状部分の一例であり、FG平行部分125A,125Bは、特許請求の範囲における第2の直線状部分の一例である。
【0060】
なお、図8および図9に示すように、接合部124のうち、内側張出部分200が形成された部分の厚さD1は、内側張出部分200と外側張出部分300とのいずれも形成されていない接合基本部分127だけの部分の厚さD2よりも厚く、例えば厚さD2の1.4倍以上であり、2倍未満である。また、内側張出部分300が形成された部分の厚さD3は、接合基本部分127だけの部分の厚さD2よりも厚く、例えば厚さD2の1.4倍以上であり、2倍未満である。
【0061】
A-4.本実施形態の効果:
(空気室166側について)
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池スタック100では、図6および図8に示すように、空気室166側において、各FG平行部分125A,125Bは、単セル110に対して酸化剤ガスOGの流れ方向(X軸方向)の両側に位置し、各OG平行部分125C,125Dは、単セル110に対して酸化剤ガスOGの流れ方向に直交する方向(Y軸方向)の両側に位置する。このため、すなわち、各FG平行部分125A,125Bは、酸化剤ガスOGのガス流路を交差するように位置するため、各OG平行部分125C,125Dに比べて、多量の酸化剤ガスOGに接触して浸食されることにより、ロウ材に含まれる汚染物質が拡散しやすい。
【0062】
そこで、本実施形態では、空気室166側において、各FG平行部分125A,125Bにおけるセパレータ120の内縁に対する張り出し長さは、各OG平行部分125C,125Dの内側張出部分200におけるセパレータ120の内縁に対する張り出し長さより短い(図6参照)。また、空気室166側において、各FG平行部分125A,125Bにおけるセパレータ120の内縁に対する張り出し面積(例えば張り出した部分の総面積)は、各OG平行部分125C,125Dの内側張出部分200におけるセパレータ120の内縁に対する張り出し面積よりも小さい。このため、本実施形態によれば、上流側に位置するFG平行部分125Aの張り出し長さや張り出し面積が、OG平行部分125C,125Dと同等以上である構成に比べて、FG平行部分125Aからの汚染物質の拡散が抑制されるため、例えば、汚染物質が単セル110に付着して単セル110の性能が低下することが抑制される。また、本実施形態によれば、下流側に位置するFG平行部分125Bの張り出し長さや張り出し面積が、OG平行部分125C,125Dと同等以上である構成に比べて、FG平行部分125Bからの汚染物質の拡散が抑制されるため、例えば、空気室166から排出される酸化剤オフガスOOGを、燃料電池スタック100で循環させたり、別のスタックで使用したりして再利用することが可能である。
【0063】
また、本実施形態では、接合部124のOG平行部分125C,125Dは、内側張出部分200を有している(図6参照)。このため、単セル110とセパレータ120との接合の際、接合部124のうち、少なくとも内側張出部分200を有するOG平行部分125C,125Dについて、例えば単セル110の厚さと同等以上の長さを有する、ロウ溜まりの発生を抑制することができる。
【0064】
ここで、上述したように、本実施形態では、内側張出部分200は、各OG平行部分125C,125Dから円弧部分126の少なくとも一部まで連続的に形成されている(図8の拡大図参照)。このため、単セル110とセパレータ120とをロウ付けする際、加熱によって溶融した各FG平行部分125A,125Bのロウ材が内側張出部分200に流れやすくなり、その結果、内側張出部分200を有しない各FG平行部分125A,125Bにおけるロウ溜まりの発生を、より効果的に抑制することができる。
【0065】
一方、内側張出部分200の全体がフェルト部材41に覆われているため、内側張出部分200は、空気室166に露出しない(図4から図6参照)。このため、内側張出部分200からの汚染物質の拡散が抑制される。これにより、ロウ溜まりの発生の抑制と、ロウ材に起因する単セル110の性能低下の抑制との両立を図ることができる。
【0066】
接合部124の各FG平行部分125A,125Bでは、張り出し長さが相対的に短い、または、張り出し面積が小さいため、ロウ溜まり発生の抑制効果が低い。しかし、本実施形態では、内側張出部分200の上下方向の厚さは、各FG平行部分125A,125Bの上下方向の厚さと同じである(図4および図5参照)。このため、内側張出部分200の上下方向の厚さが各FG平行部分125A,125Bの厚さより薄い構成に比べて、単セル110とセパレータ120とをロウ付けする際、加熱によって溶融した各FG平行部分125A,125Bのロウ材が内側張出部分200に流れやすくなり、その結果、各FG平行部分125A,125Bにおけるロウ溜まりの発生を抑制することができる。
【0067】
(燃料室176側について)
本実施形態では、図7および図9に示すように、燃料室176側において、各OG平行部分125C,125Dは、単セル110に対して燃料ガスFGの流れ方向(Y軸方向)の両側に位置し、各FG平行部分125A,125Bは、単セル110に対して燃料ガスFGの流れ方向に直交する方向(X軸方向)の両側に位置する。このため、すなわち、各OG平行部分125C,125Dは、燃料ガスFGのガス流路を交差するように位置するため、各FG平行部分125A,125Bに比べて、多量の燃料ガスFGに接触して浸食されることにより、ロウ材に含まれる汚染物質が拡散しやすい。
【0068】
そこで、本実施形態では、燃料室176側において、各OG平行部分125C,125Dにおける単セル110の外縁に対する張り出し長さは、各FG平行部分125A,125Bの外側張出部分300における単セル110の外縁に対する張り出し長さより短い(図7参照)。また、燃料室176側において、各OG平行部分125C,125Dにおける単セル110の外縁に対する張り出し面積は、各FG平行部分125A,125Bの外側張出部分300における単セル110の外縁に対する張り出し面積より小さい。このため、本実施形態によれば、上流側に位置するOG平行部分125Cの張り出し長さや張り出し面積が、FG平行部分125A,125Bと同等以上である構成に比べて、OG平行部分125Cからの汚染物質の拡散が抑制されるため、例えば、汚染物質が単セル110に付着して単セル110の性能が低下することが抑制される。また、本実施形態によれば、下流側に位置するOG平行部分125Dの張り出し長さや張り出し面積が、FG平行部分125A,125Bと同等以上である構成に比べて、OG平行部分125Dからの汚染物質の拡散が抑制されるため、例えば、燃料室176から排出される燃料オフガスFOGを、燃料電池スタック100で循環させたり、別のスタックで使用したりして再利用することが可能である。
【0069】
また、本実施形態では、接合部124のFG平行部分125A,125Bは、外側張出部分300を有している(図7参照)。このため、単セル110とセパレータ120との接合の際、接合部124のうち、少なくとも外側張出部分300を有するFG平行部分125A,125Bについてロウ溜まりの発生を抑制することができる。
【0070】
ここで、上述したように、本実施形態では、外側張出部分300は、各FG平行部分125A,125Bから円弧部分126の少なくとも一部まで連続的に形成されている(図9の拡大図参照)。このため、単セル110とセパレータ120とをロウ付けする際、加熱によって溶融した各OG平行部分125C,125Dのロウ材が外側張出部分300に流れやすくなり、その結果、外側張出部分300を有しない各OG平行部分125C,125Dにおけるロウ溜まりの発生を、より効果的に抑制することができる。
【0071】
一方、外側張出部分300の全体がフェルト部材41に覆われているため、外側張出部分300は、燃料室176に露出しない(図4図5図7参照)。このため、外側張出部分300からの汚染物質の拡散が抑制される。これにより、ロウ溜まりの発生の抑制と、ロウ材に起因する単セル110の性能低下の抑制との両立を図ることができる。
【0072】
接合部124の各OG平行部分125C,125Dでは、張り出し長さが相対的に短い、または、張り出し面積が小さいため、ロウ溜まり発生の抑制効果が低い。しかし、本実施形態では、外側張出部分300の上下方向の厚さは、各OG平行部分125C,125Dの上下方向の厚さと同じである(図4および図5参照)。このため、外側張出部分300の上下方向の厚さが各OG平行部分125C,125Dの厚さより薄い構成に比べて、単セル110とセパレータ120とをロウ付けする際、加熱によって溶融した各OG平行部分125C,125Dのロウ材が外側張出部分300に流れやすくなり、その結果、各OG平行部分125C,125Dにおけるロウ溜まりの発生を抑制することができる。
【0073】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。例えば、セパレータ120は、孔121が形成された構成に限らず、例えば、互いに離間して配置された1組の板状部材などでもよい。上記実施形態において、単セル110とセパレータ120との接合対象部分は、4つの円弧部分126を有する略矩形状であったが、例えば円弧部分を有しない矩形状でもよいし、矩形以外の形状でもよい。
【0074】
上記実施形態において、内側張出部分200と外側張出部分300とのいずれか一方だけを備える構成でもよい。
【0075】
上記実施形態の空気室166側において、各FG平行部分125A,125Bは、各OG平行部分125C,125Dの内側張出部分200に比べて、張り出し長さが短いことと、張り出し面積が小さいことの少なくとも1つを満たせば、FG平行部分125A,125Bの少なくとも一方からのガスの拡散を抑制することができる。また、上記実施形態の空気室166側において、一対のFG平行部分125A,125Bのいずれか一方だけ、各OG平行部分125C,125Dの内側張出部分200に比べて、張り出し長さが短いことと、張り出し面積が小さいことの少なくとも1つを満たす構成でもよい。また、上記実施形態の空気室166側において、各FG平行部分125A,125Bは、張り出し部分を有しない(張り出し長さおよび張り出し面積は、ゼロ)構成であったが、FG平行部分125A,125Bの少なくとも一方が張り出し部分を有する構成でもよい。このような構成でも、FG平行部分125A,125Bの少なくとも一方が、OG平行部分125C,125Dに比べて、張り出し長さが短いことと張り出し面積が小さいことの少なくとも一方を満たせば、FG平行部分125A,125Bの少なくとも一方からのガスの拡散を抑制することができる。また、内側張出部分200の上下方向の厚さは、各FG平行部分125A,125Bの上下方向の厚さよりも厚くても薄くてもよい。ただし、内側張出部分200の上下方向の厚さが、各FG平行部分125A,125Bの上下方向の厚さよりも厚ければ、FG平行部分125A,125Bでのロウ溜まりの発生を、より効果的に抑制できる。また、FG平行部分125A,125Bは、酸化剤ガスOGの流れ方向に対して斜めに交差する構成でもよい。
【0076】
上記実施形態の燃料室176側において、各OG平行部分125C,125Dは、各FG平行部分125A,125Bの外側張出部分300に比べて、張り出し長さが短いことと、張り出し面積が小さいことの少なくとも1つを満たせば、OG平行部分125C,125Dの少なくとも一方からのガスの拡散を抑制することができる。また、上記実施形態の燃料室176側において、一対のOG平行部分125C,125Dのいずれか一方だけ、各FG平行部分125A,125Bの外側張出部分300に比べて、張り出し長さが短いことと、張り出し面積が小さいことの少なくとも1つを満たす構成でもよい。また、上記実施形態の燃料室176側において、各OG平行部分125C,125Dは、張り出し部分を有しない(張り出し長さおよび張り出し面積は、ゼロ)構成であったが、OG平行部分125C,125Dの少なくとも一方が張り出し部分を有する構成でもよい。このような構成でも、OG平行部分125C,125Dの少なくとも一方が、FG平行部分125A,125Bに比べて、張り出し長さが短いことと張り出し面積が小さいことの少なくとも一方を満たせば、OG平行部分125C,125Dの少なくとも一方からのガスの拡散を抑制することができる。また、外側張出部分300の上下方向の厚さは、各OG平行部分125C,125Dの上下方向の厚さよりも厚くても薄くてもよい。ただし、外側張出部分300の上下方向の厚さが、各OG平行部分125C,125Dの上下方向の厚さよりも厚ければ、OG平行部分125C,125Dでのロウ溜まりの発生を、より効果的に抑制できる。また、OG平行部分125C,125Dは、燃料ガスFGの流れ方向に対して斜めに交差する構成でもよい。
【0077】
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態におけるフェルト部材41の充填位置は、あくまで一例であり、フェルト部材41を燃料電池スタック100の他の位置に充填してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、フェルト部材41は、アルミナ-シリカ系のフェルト材料により構成されているが、他のアルミナ以外のセラミックス-シリカ系のフェルト材料により構成されていてもよい。あるいは、フェルト部材41は、金属-シリカ系のフェルト材料(例えば、ニッケルフェルト)により構成されていてもよい。このような構成においても、フェルト部材41が、セラミックスまたは金属とシリカ成分とを含むと共に、フェルト部材41のSi含有量が0.9質量%以上、13.2質量%以下であれば、フェルト部材41の強度を確保しつつ、フェルト部材41からのSiの飛散を抑制することができ、Siによる被毒を原因とした単セル110の性能低下の発生を抑制することができる。また、上記実施形態では、遮蔽部材として、フェルト部材41を例示したが、接合部張出部分を覆う部材であればよく、例えば、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140の肉厚を厚くして内側張出部分200や外側張出部分300を覆ってもよい。上記実施形態では、フェルト部材41が、内側張出部分200や外側張出部分300の全体(円弧部分126を含む)を覆う構成であったが、フェルト部材41が、内側張出部分200や外側張出部分300の一部だけ(例えば直線状部分だけ)を覆う構成であっても、接合部124の張出部分からのロウ材の拡散を抑制することができる。
【0079】
また、本明細書において、部材(または部材のある部分、以下同様)Aを挟んで部材Bと部材Cとが互いに対向するとは、部材Aと部材Bまたは部材Cとが隣接する形態に限定されず、部材Aと部材Bまたは部材Cとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に他の層が設けられていてもよい。このような構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
【0080】
また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。例えば、セパレータ120は、金属以外の材料により形成されたものでもよい。また、遮蔽部材は、フェルト以外の材料により形成されたものでもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100は複数の平板形の発電単位102が積層された構成であるが、本発明は、他の構成、例えば国際公開第2012/165409号に記載されているように、複数の略円筒形の燃料電池単セルが直列に接続された構成にも同様に適用可能である。
【0082】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位においても、上述した構成の接合部124が採用されれば、接合部124の張出部分からの汚染物質の拡散を抑制することができる。
【0083】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 41:フェルト部材 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104,106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 125A,125B:FG平行部分 125C,125D:OG平行部分 126:円弧部分 127:接合基本部分 130:空気極側フレーム 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 200:内側張出部分 300:外側張出部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9