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  • 特開-表皮一体発泡品およびその製造方法 図1
  • 特開-表皮一体発泡品およびその製造方法 図2
  • 特開-表皮一体発泡品およびその製造方法 図3
  • 特開-表皮一体発泡品およびその製造方法 図4
  • 特開-表皮一体発泡品およびその製造方法 図5
  • 特開-表皮一体発泡品およびその製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030907
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】表皮一体発泡品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20230301BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20230301BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20230301BHJP
   B60N 2/80 20180101ALI20230301BHJP
【FI】
B60N2/90
B68G7/05 B
B60N2/58
B60N2/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136320
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】宮下 千夏
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、確認し易い刻印が付された表皮一体発泡品を提供する。
【解決手段】表皮一体発泡品であるヘッドレスト10は、袋状に形成された表皮12と、前記表皮12の内側に充填された発泡体14と、前記表皮12に設けられた刻印16と、を備えている。前記刻印16は、例えば超音波加工や高周波加工などによって形成された凹みである。前記刻印16は、例えば、ヘッドレスト10の下面や、前記表皮12に形成した開口部20に設けることができる。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に形成された表皮と、
前記表皮の内側に充填された発泡体と、
前記表皮に設けられた刻印と、を備えている
ことを特徴とする表皮一体発泡品。
【請求項2】
前記表皮は、表層と、前記表層の内側に積層された発泡樹脂層と、を有し、
前記表層および前記発泡樹脂層が、前記刻印の底で薄くなっている請求項1記載の表皮一体発泡品。
【請求項3】
前記刻印は、前記表皮の外側および内側の両方から凹んでいる請求項1または2記載の表皮一体発泡品。
【請求項4】
前記刻印が、前記表皮において表皮一体発泡品と別の部品により隠される部位および/または前記表皮に形成された開口部に設けられている請求項1~3の何れか一項に記載の表皮一体発泡品。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の表皮一体発泡品の製造方法であって、
前記表皮に、超音波加工または高周波加工により前記刻印を形成する
ことを特徴とする表皮一体発泡品の製造方法。
【請求項6】
前記表皮の一面から打刻部を押し付ける超音波加工により、前記表皮の両面から凹む前記刻印を形成する請求項5記載の表皮一体発泡品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表皮と、表皮の内側に充填した発泡体とを備える表皮一体発泡品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リサイクル時に材質を確認するための表示タグが表皮に縫い付けられたヘッドレストが記載されている。また、特許文献2には、シートバッグの上部に差し込んで固定するためのステーに、パッドの材質を表示する材質表示部が設けられたヘッドレストが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4837478号公報
【特許文献2】特許第5496719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、表示タグを別途用意するため、部品点数が増加してしまう。特許文献2は、ヘッドレストの着脱の際に、ステーに設けられた材質表示部が擦れて、材質表示部が確認し難くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、簡単な構成で、情報を確認し易い刻印が設けられた表皮一体発泡品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る表皮一体発泡品は、
袋状に形成された表皮と、
前記表皮の内側に充填された発泡体と、
前記表皮に設けられた刻印と、を備えていることを要旨とする。
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る表皮一体発泡品の製造方法は、
前述した表皮一体発泡品の製造方法であって、
前記表皮に、超音波加工または高周波加工により前記刻印を形成することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る表皮一体発泡品によれば、簡単な構成で、刻印による情報を確認し易くすることができる。
本発明に係る表皮一体発泡品の製造方法によれば、刻印による情報を確認し易い表皮一体発泡品を簡単に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係るヘッドレストを示す斜視図である。
図2】実施例の表皮を分解して示す斜視図である。
図3】(a)は刻印を示す断面図であり、(b)は刻印の1つを拡大して示す断面図である。
図4】刻印の形成過程を示す説明図である。
図5】発泡体の形成過程を示す説明図である。
図6】刻印の配置の別例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る表皮一体発泡品およびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、表皮一体発泡品として、自動車などの車両において、座席におけるシートバックの上部に設置されるヘッドレスト10を例示する。
【実施例0011】
図1に示すように、実施例に係るヘッドレスト10は、袋状に形成された表皮12と、表皮12の内側に充填された発泡体14と、表皮12に設けられた刻印16とを備えている。また、ヘッドレスト10は、発泡体14に一部が埋め込まれたステー18を備えている。ヘッドレスト10は、ステー18において表皮12の下面から突出する2本の脚部18a,18aを、シートバックに差し込んで、座席におけるシートバックの上部に着脱可能に取り付けられる。
【0012】
図1に示すように、表皮12は、ヘッドレスト10の外殻を構成している。1枚のシートで表皮12を構成してもよいが、図2に示すように、実施例の表皮12は、複数の表皮パーツ12a,12b,12cを組み合わせて構成されている。具体的には、表皮12は、シートへの着座者の後頭部を受ける前面及び下面前側を形成する第1表皮パーツ12aと、背面及び左右両側面を形成する第2表皮パーツ12bと、下面後側を形成する第3表皮パーツ12cとを組み合わせている。ここで、表皮12は、合掌状に重ね合わせた表皮パーツ12a,12b,12cの端部を、糸で縫合するなどにより接続している。
【0013】
図1および図5に示すように、表皮12は、内外に通じる開口部20を有している。開口部20は、ヘッドレスト10の下面に設けられている。実施例の表皮12は、ヘッドレスト10の下面を構成する第1表皮パーツ12aおよび第3表皮パーツ12cとの合わせ目に、表皮12の内側に通じる開口部20が設けられている。開口部20は、例えば、第1表皮パーツ12aおよび第3表皮パーツ12cにおいて互いに重なる端部の一部(実施例では中央部)を縫合しないことで形成することができる。開口部20は、通常の状態で第1表皮パーツ12aおよび第3表皮パーツ12cの合わせ目が接して閉じており(図1および図5(b)参照)、第1表皮パーツ12aおよび第3表皮パーツ12cの合わせ目を離すように広げて開くことが可能である(図5(a)および図6参照)。なお、ステー18の脚部18aは、表皮12の厚み方向へ貫通する貫通孔を通って突出している。
【0014】
表皮12は、可撓性を有している。表皮12は、単層であってもよいが、図3(b)に示すように、複数の層が重なる複層構造であることが好ましい。実施例の表皮12は、表層22と、表層22の内側に積層された発泡樹脂層24と、を有している。また、実施例のように、発泡樹脂層24の内側に積層して裏層26を設けてもよい。表層22は、ヘッドレスト10の外側に臨む露出面となっている。表層22としては、塩化ビニルなどの樹脂材や、ファブリック、本革などを用いることができる。発泡樹脂層24としては、スラブウレタンなどのポリウレタンフォームや、ポリエチレンなどのポリオレフィン系フォームなどを用いることができる。裏層26は、内側の発泡体14に接している。裏層26としては、ポリウレタンやポリエチレンなどを用いることができる。実施例の表皮12は、発泡樹脂層24が表層22よりも厚く設定されており、裏層26が他の層22,24と比べて薄く設定されている。なお、表皮12は、表皮12の厚み方向へ弾性変形可能な弾力性を有していることが好ましい。
【0015】
発泡体14は、クッション性を有している。発泡体14としては、ポリウレタン系フォームや、ポリオレフィン系フォームなどを用いることが可能である。
【0016】
刻印16は、文字、記号、図形などの適宜の形状で形成されている。刻印16は、適宜の情報を表示しており、例えば、ヘッドレスト10の内部に入っている発泡体14の材質情報を示している(図1参照)。1つの刻印16によって情報を表示してもよいが、実施例では、図1に示すように、複数の刻印16を並べて形成して、複数の刻印16によって情報を表示するようになっている。
【0017】
刻印16は、ヘッドレスト10の外側から確認可能な位置に設けられている。また、刻印16は、ヘッドレスト10の中で使用者との接触が少なくかつ目立たない位置に設けることが好ましい。例えば、刻印16は、ヘッドレスト10の下面に設けたり(図1参照)、表皮12に形成された開口部20に設けたりすることが可能である(図6参照)。シートバッグにヘッドレスト10を設置したとき、ヘッドレスト10の下面は、シートバッグに隠される部位になるので、ヘッドレスト10の下面に刻印16を設けると使用者と接触し難くかつ目立たなくなる。また、開口部20を形成する第1表皮パーツ12aの端部および/または第3表皮パーツ12cの端部に刻印16を設けると、開口部20が閉じている通常の状態において刻印16が使用者と接触し難くかつ目立たなくなる。
【0018】
図3に示すように、刻印16は、表皮12を凹ませて形成されている。刻印16は、その底が表皮12の厚みよりも薄くなっている。実施例では、表層22および発泡樹脂層24が、刻印16の底で薄くなっている(図3(b)参照)。また、刻印16は、表皮12の外側および内側の両側から凹んでいる(図3参照)。ここで、刻印16は、外側の凹みが内側の凹みよりも深くなっている。
【0019】
次に、実施例のヘッドレスト10の製造方法について説明する。まず、シートを打ち抜き加工などすることで所定形状に形成した表皮パーツ12a,12b,12cを用意する(図2参照)。第3表皮パーツ12cを打刻装置の加工台にセットし、打刻装置の打刻部30を表皮12における外側となる一面に押し当てる(図4(a)参照)。このとき、所定周波数で振動する打刻部30によって表皮12が加熱されて、表層22が溶け、表皮12が加工台と打刻部30との間で圧縮される(図4(b)参照)。打刻部30を退避させると、表層22および発泡樹脂層24が圧縮された状態のまま固化して、表皮12の外側から凹んだ形状が形成される。また、表層22および発泡樹脂層24の固化による収縮などによって、表皮12の内側から凹んだ形状が形成される。これにより、表層22および発泡樹脂層24が、その底で薄くなると共に外側および内側の両側から凹んだ刻印16が表皮12に形成される(図4(c)参照)。
【0020】
次に、表皮パーツ12a,12b,12cの端部同士を重ね合わせて、ミシン等によって縫合することなどで表皮パーツ12a,12b,12cを連結して、裏層26を外側にした袋状の表皮12を形成する。そして、袋状の表皮12を裏返すことで、表皮パーツ12a,12b,12cの重なった端部を内側にし、表層22を外側にする。
【0021】
図5(a)に示すように、表皮12を型32にセットし、供給ノズル34を開口部20に差し込む。そして、供給ノズル34から発泡体原料を表皮12の内側に供給する。発泡体原料が表皮12の内側で発泡して硬化し、型32によって発泡体14が所定形状に成形される(図5(b)参照)。なお、表皮12の内側に発泡体14が充填されることで、発泡体14に押されて開口部20が閉じる。このように、表皮12に刻印16が付されたヘッドレスト10が得られる。
【0022】
ヘッドレスト10は、表皮12に刻印16を設けているので、タグを付加する場合のように表皮12と別の部品を用意する必要がないことから部品点数を減らすことができ、情報を表示するための構成が簡単になる。また、刻印16を表皮12に設けることで、ステー18に設ける場合のように、刻印16が強く擦れることを回避でき、ヘッドレスト10を長期間使用しても、刻印16の変化を抑えて、刻印16を確認し易くすることができる。
【0023】
刻印16は、表層22および発泡樹脂層24が、刻印16の底で薄くなるように形成されている。このとき表皮12を圧縮するように刻印16を形成することで、刻印16の形成によって表皮12の厚みが減少しても強度を保つことができる。
【0024】
刻印16を、表皮12の外側および内側の両方から凹むように形成している。このように、刻印16の底を表皮12における厚み方向の中間部に配置することで、刻印16をより明りょうにして、確認し易くすることができる。
【0025】
刻印16を超音波加工または高周波加工によって形成することで、刻印16の輪郭を明りょうにすることができる。しかも、打刻部30を押し付けるだけで、刻印16を形成することができ、タグを縫い付ける場合と比べて製造の手間を省いて、製造コストを抑えることができる。また、打刻部30を押し付けるだけで、表層22および発泡樹脂層24を溶かして、底を圧縮した刻印16を簡単に形作ることができる。
【0026】
表皮12の一面から打刻部30を押し付ける超音波加工により、表皮12の両面から凹む刻印16を形成することができる。ここで、刻印16の輪郭を明りょうにするためには、打刻部30を表皮12に深く押し付けた方がよいが、底が深くなってしまうと刻印16がかえってぼやけてしまうおそれがある。前述したように、表皮12の一面から打刻部30を深く押し付けても、得られる刻印16の底を表皮12における厚み方向の中間部に配置することができ、刻印16を明りょうに形成し、刻印16が示す情報をより確認し易くできる。
【0027】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例および以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)表皮の層構造は、1層であっても、2層であっても、4層以上であってもよい。例えば、独立気泡構造の発泡樹脂層を用いる場合、発泡体の含浸を防止するための裏層を省略することができる。
(2)刻印の位置は、実施例に限らず、表皮の様々な位置に配置可能である。また、刻印は、1箇所にまとめて設けることに限らず、複数箇所に設けてもよい。
(3)刻印を示す情報としては、材質表示に限らず、例えば、材質表示に代えてまたは材質表示に加えて、ヘッドレストの種別を示す情報やその他の情報を表示するようにしてもよい。
(4)実施例では、刻印を表皮の外側から押して形成したが、表皮の内側から押して刻印を形成してもよい。表皮の内側から打刻しても、前述したように表皮の外側に凹んだ刻印を形成可能である。
(5)ヘッドレストに限らず、アームレストやシートパッドやシートバッグなど、表皮の中に発泡体が配置される車両内装部材に、前述した事項を適用してもよい。
(6)表皮の中で発泡体原料を発泡させて発泡体を充填する表皮一体発泡品だけでなく、表皮の中に予め成形された発泡体を入れた表皮被覆発泡品に、前述した事項を適用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 ヘッドレスト,12 表皮,14 発泡体,16 刻印,20 開口部,
22 表層,24 発泡樹脂層,30 打刻部
図1
図2
図3
図4
図5
図6