(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003091
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】電池用電極製造方法および電池用電極製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20221228BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20221228BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M10/058
H01M10/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104049
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB04
5H028BB17
5H028CC08
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL11
5H029CJ03
5H029CJ04
5H029CJ30
5H029HJ12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB11
5H050GA03
5H050GA04
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】帯状の基材フィルムの搬送性の低下を抑制することができる電池用電極製造方法および電池用電極製造装置を提供すること。
【解決手段】搬送方向において隙間が形成された状態で枠体4が固定されており、枠体4の枠内に活物質21Xが供給された状態の帯状の基材フィルム(集電体21X)から電極を製造するものであって、搬送機構300により搬送された帯状の集電体21Xのうち、搬送方向側端部21XEを把持具734,735により把持する把持工程と、帯状の集電体21Xの搬送機構300による搬送に連動して、搬送方向側端部21XEを把持した把持状態で把持具734,735を搬送方向Xに移動させ、帯状の集電体21Xのうち、枠体4が固定された領域を搬送台740する載置工程と、枠体4の搬送方向側の端部および枠体4の搬送方向と反対方向側の端部において帯状の集電体21Xを切断機構720により切断する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向において隙間が形成された状態で枠体が固定されており、前記枠体の枠内に活物質が供給された状態の帯状の基材フィルムから電池用電極の少なくとも一部を製造する電池用電極製造方法であって、
連続して搬送される前記帯状の基材フィルムのうち、搬送方向側端部を把持具により把持する把持工程と、
前記搬送方向側端部を把持した把持状態で前記把持具を搬送方向に移動させ、前記帯状の基材フィルムのうち、少なくとも前記枠体が固定された領域を搬送台に載置する載置工程と、
前記載置される帯状の基材フィルムを切断機構により切断する切断工程と、
を含む電池用電極製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池用電極製造方法において、
押圧治具により前記枠体を搬送台に押圧する押圧工程を含み、
前記押圧工程は、前記載置工程と前記切断工程との間に行われる、
電池用電極製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池用電極製造方法において、
前記把持具は、前記切断工程において、前記把持状態を維持する、
電池用電極製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の電池用電極製造方法において、
搬送機構により搬送された前記帯状の基材フィルムに対して粉体状の活物質を供給する活物質供給工程と、
前記搬送機構により搬送された前記帯状の基材フィルム上の前記活物質をプレス機構により圧縮するプレス工程と、
を含む電池用電極製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電池用電極製造方法において、
前記帯状の基材フィルムが帯状の集電体であり、
前記帯状の集電体に固定された前記枠体に対して、セパレータを配置するセパレータ配置工程をさらに含み、
前記セパレータ配置工程は、前記活物質供給工程と、前記プレス工程との間に行われる、
電池用電極製造方法。
【請求項6】
搬送方向において隙間が形成された状態で枠体が固定されており、前記枠体の枠内に活物質が供給された状態の帯状の基材フィルムから電池用電極の少なくとも一部を製造する電池用電極製造装置であって、
連続して搬送される前記帯状の基材フィルムのうち、搬送方向側端部を把持具により把持する把持機構と、
前記帯状の基材フィルムのうち、少なくとも前記枠体が固定された領域が搬送台に載置された状態で、前記載置される帯状の基材フィルムを切断する切断機構と、
を少なくとも有し、
前記把持機構は、前記搬送方向側端部を把持した把持状態で前記把持具を搬送方向に移動させる、
電池用電極製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造方法および電池用電極製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年注目されているリチウムイオン電池は、一般に、帯状の集電体上に電極として必要な層を積層したのち、帯状の集電体を単体の集電体に分断することで電極を得ることとなる。例えば、特許文献1では、帯状の第1の集電体に正電極、電解質、負電極、および第2集電体を積層して製造された電池構造体が連続形成された被切断体を切断することで単体の電池構造体を得る。例えば、特許文献2では、第1の集電体上に連結して形成された複数の枠体の内側に、正極活物質層、負極活物質層、セパレータおよび第2の集電体を積層して製造された単電池構造体が連続形成されたものを切断することで、単体の単電池構造体を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-53103号公報
【特許文献2】特開2017-41310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
帯状の集電体を用いた電池の製造においては、特許文献1,2に開示されているように、帯状の集電体を切断することとなる。したがって、電池用電極の製造において、帯状の集電体上に複数の枠体を固定して、枠内に活物質を供給し、活物質を圧縮した場合においても、帯状の集電体を切断することで単体の電極を得ることとなる。この場合、搬送方向において隣り合う枠体は、離間して固定されることが考えられる。帯状の集電体は、可撓性を有するため、搬送方向において隣り合う枠体の間に位置する集電体は、剛性が低く、搬送機構による帯状の集電体の搬送によって撓むことがある。従来の搬送機構による搬送では、このように集電体が撓むことがあり、そうすると、帯状の集電体を切断する機構(例えば切断する所定の位置)に搬送するまでに時間を要し、製造効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、帯状の基材フィルムの搬送性の低下を抑制し、製造効率を向上させることができる電池用電極製造方法および電池用電極製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の電池用電極製造方法は、搬送方向において隙間が形成された状態で枠体が固定されており、前記枠体の枠内に活物質が供給された状態の帯状の基材フィルムから電池用電極の少なくとも一部を製造する電池用電極製造方法であって、連続して搬送される前記帯状の基材フィルムのうち、搬送方向側端部を把持具により把持する把持工程と、前記搬送方向側端部を把持した把持状態で前記把持具を搬送方向に移動させ、前記帯状の基材フィルムのうち、少なくとも前記枠体が固定された領域を搬送台に載置する載置工程と、前記載置される帯状の基材フィルムを切断機構により切断する切断工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本発明の電池用電極製造装置は、搬送方向において隙間が形成された状態で枠体が固定されており、前記枠体の枠内に活物質が供給された状態の帯状の基材フィルムから電池用電極の少なくとも一部を製造する電池用電極製造装置であって、連続して搬送される前記帯状の基材フィルムのうち、搬送方向側端部を把持具により把持する把持機構と、前記帯状の基材フィルムのうち、少なくとも前記枠体が固定された領域が搬送台に載置された状態で、前記載置される帯状の基材フィルムを切断する切断機構と、を少なくとも有し、前記把持機構は、前記搬送方向側端部を把持した把持状態で前記把持具を搬送方向に移動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電池用電極製造方法および電池用電極製造装置は、帯状の基材フィルムの搬送性の低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、実施形態に係る電池用電極製造装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電池用電極製造装置の要部拡大概略構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電池用電極製造装置の要部拡大概略構成図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電池用電極製造装置による電池用電極の製造方法を示すフローチャート図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電池用電極製造装置の動作説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る電池用電極製造装置の動作説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る電池用電極製造装置の動作説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る電池用電極製造装置の動作説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る電池用電極製造装置の動作説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る電池用電極製造装置の動作説明図である。
【
図12】
図12は、変形例に係る電池用電極製造装置による電池用電極の製造方法を示すフローチャート図である。
【
図13】
図13は、変形例に係る電池用電極製造装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
図2に示す本実施形態に係る電池用電極製造装置100は、
図1に示す単電池1に適用される電極2を製造するための電池用電極製造装置である。以下では、まず、
図1を参照して単電池1、電極2の基本的な構成について説明した後、
図2等を参照して電池用電極製造装置100について詳細に説明する。
【0013】
<単電池>
単電池(電池セル、単セルともいう。)1は、本実施形態では、非水電解質二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池とは、
図1に示すように、正極2aと負極2bとの間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。なお、以下の説明では、「正極2a」と「負極2b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「電極2」という場合がある。
【0014】
単電池1は、正極2aと、負極2bと、セパレータ3と、枠体4とを有する。正極2aは、単電池1を構成する2つの電極(電池用電極)2のうち、一方の電極2である。負極2bは、単電池1を構成する2つの電極2のうち、他方の電極2である。セパレータ3は、正極2aと負極2bとの間に配置される板状の部材である。枠体4は、セパレータ3の周縁部を囲う枠状の部材である。単電池1は、正極2a、セパレータ3、負極2bの順番で積層され、かつ、枠体4がセパレータ3の周縁部を囲う位置関係で一体化される。
【0015】
正極2aは、正極集電体層21aと、正極活物質層22aとを有し、正極集電体層21aの両面のうち、一方の面に正極活物質層22aが電気的に結合している。一方、負極2bは、負極集電体層21bと、負極活物質層22bとを有し、負極集電体層21bの両面のうち、一方の面に負極活物質層22bが電気的に結合している。正極2aおよび負極2bは、全体として双極型電極を構成する。本実施形態における正極2aおよび負極2bは、矩形板状に形成されている。
【0016】
セパレータ3は、正極2aと負極2bとの間の隔壁として機能し、正極活物質層22aと負極活物質層22bとが互いに接触することを抑制するものである。本実施形態におけるセパレータ3は、正極集電体層21aおよび負極集電体層21bよりも小さい矩形板状に形成されている。
【0017】
枠体4は、単電池1の骨格を形成するものである。枠体4は、正極集電体層21aとセパレータ3との間で正極活物質層22aを封止し、負極集電体層21bとセパレータ3との間で、負極活物質層22bを封止するものである。本実施形態における枠体4は、セパレータ3の外周を囲う額縁状に形成されている。
【0018】
単電池1は、正極集電体層21a、正極活物質層22a、セパレータ3、負極活物質層22b、負極集電体層21bの順番で積層される。つまり、単電池1は、正極集電体層21a及び負極活物質層2bが最外層に配置、すなわち単電池1の外部に露出する。
【0019】
なお、本実施形態の単電池1は、セパレータ3の一部が枠体4に入り込むように構成される場合を示している。すなわち、セパレータ3は、枠体4に周縁部を囲まれる正極活物質層2a、負極活物質層2bと比較して、幅が若干大きくなっており、その一部が枠体4に食い込んでいる。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えば、正極活物質層22a、負極活物質層22b、セパレータ3の幅が同じになるように構成してもよい。また、枠体4は、一体的に製造されてもよいし、例えば、正極2a側の枠体4と負極2b側の枠体4とを別個に製造して結合させることにより製造されてもよい。
【0020】
また、以下の説明では、「正極集電体層21a」と「負極集電体層21b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「集電体層21」という場合がある。同様に、「正極活物質層22a」と「負極活物質層22b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「電極活物質層22」という場合がある。
【0021】
<組電池>
単電池1は、複数組み合わせて、電圧及び容量を調節した組電池、すなわち電池パックの形態で使用することが可能である。組電池は、平板状の複数の単電池1を厚さ方向において積層して構成されている。厚さ方向において隣り合う単電池1は、互いの異なる電極2が接触、すなわち一方の正極2aと他方の負極2bとが接触するように積層される。組電池は、可撓性を有する絶縁材料で構成される外層フィルム、例えばラミネートフィルムにより、内部の単電池1が覆われている。組電池は、複数の単電池1の厚さ方向における両端に位置する正極2aおよび負極2bにそれぞれ電気的に接続される取り出し部が設けられる。取り出し部は、一部が外装フィルムの外部に露出しており、外部において電気的に接続された電気機器に電力が供給される。
【0022】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層21aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015-005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層21aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0023】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0024】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。例えば、導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0025】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0026】
正極集電体層21aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層21aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層21aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0027】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層22aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層22aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22aは、正極活物質層22aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0028】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物及び金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0029】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0030】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0031】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0032】
正極活物質層22aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調節したもの、及び、特開平10-255805号公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0033】
正極活物質層22aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0034】
正極活物質層22aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0035】
正極活物質層22aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0036】
正極活物質層22aは、湿紛状であることが好ましい。
【0037】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層21bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層21bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層21bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0038】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層22bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層22bを得る方法等は、正極活物質層22aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22aを得る方法と同様である。
【0039】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物などを用いることができるが、特に限定されない。
【0040】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0041】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0042】
負極活物質層22bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0043】
負極活物質層22bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層22aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0044】
負極活物質層22bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層22aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0045】
負極活物質層22bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0046】
負極活物質層22bは、湿紛状であることが好ましい。
【0047】
<セパレータの具体例>
セパレータ3に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマー電解質などが挙げられる。セパレータ3は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ3の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0048】
<枠体の具体例>
枠体4としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体4を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体4としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0049】
<製造装置>
次に、電池用電極製造装置100について説明する。本実施形態に係る電池用電極製造装置100は、
図2~
図4に示すように、外部から帯状の集電体21Xが供給され、正極2aおよび負極2bのいずれかの電極2を製造するものでる。帯状の集電体21Xは、基材フィルムであり、分割されることで集電体層21を形成するものであり、ロール状に巻かれており、図示しないロール保持部により回転自在に支持された状態で、集電体ロール21X´として電池用電極製造装置100の外部に設置されている。ここで、
図2~
図4(
図5~
図13を含む)のX方向は、本実施形態における電池用電極製造装置100の搬送方向である。Y方向は、搬送方向と直交し、本実施形態における電池用電極製造装置100の幅方向である。Z方向は、搬送方向および幅方向と直交し、本実施形態における電池用電極製造装置100の上下方向である。Z1方向は上方向で、Z2方向は下方向である。
【0050】
電池用電極製造装置100は、チャンバー200と、搬送機構300と、枠体供給機構400と、活物質供給機構500と、ロールプレス機構600と、電極化機構700と、収集ボックス800と、電極載置台900と、制御部1000とを有する。なお、枠体供給機構400、活物質供給機構500、ロールプレス機構600および電極化機構700は、チャンバー200の内部空間Sに配置され、外部から搬送される帯状の集電体21Xに対して作業を行う作業機構である。電池用電極製造装置100は、帯状の集電体21Xの搬送方向Xにおいて、枠体供給機構400、活物質供給機構500、ロールプレス機構600、電極化機構700の順番で内部空間Sに設置されている。収集ボックス800は、チャンバー200の内部空間Sに配置され、切断された帯状の集電体21Xの搬送方向側端部21XEを収集空間801に集めるものである。電極載置台900は、チャンバー200の内部空間Sに配置され、製造された電極2が載置されるものである。制御部1000は、電池用電極製造装置100を制御するものであり、各機構300~700に対する同期制御を行うものである。ここで、枠体供給機構400、活物質供給機構500、ロールプレス機構600、電極化機構700は、搬送方向Xにおいて帯状の集電体21Xが一直線状すなわち平坦となるように、チャンバー200に対して設置されている。
【0051】
チャンバー200は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバー200は、閉空間を形成するチャンバー本体201を有する。チャンバー200の内部空間Sは、減圧ポンプ202により大気圧よりも減圧される。内部空間Sの圧力は、大気圧よりも減圧されていれば任意の値でよいが、例えば、大気圧から1×10-1~1×10-2Paまでの低真空環境となるように調節されていてもよいし、1×10-6~1×10-7Paの高真空環境となるように調節されていてもよいし、それ以上の超高真空や10-8~10-9Paレベルの極高真空であってもよい。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約105Pa)である。
【0052】
チャンバー本体201は、スリット203を有する。スリット203は、外部から内部空間Sに帯状の集電体21Xを導入するものである。チャンバー本体201の搬送方向における上流側の側壁204に形成されている。スリット203は、搬送方向Xに側壁204を貫通して形成されている。なお、スリット203の開口面積は、チャンバー200の減圧時、減圧状態に極力影響を与えないように、小さく形成されている。なお、チャンバー本体201は、本実施形態では1つで形成されているが、複数のチャンバー本体201を連結してもよい。
【0053】
搬送機構300は、帯状の集電体21Xを搬送するためものであり、内部空間Sにおいて帯状の集電体21Xを搬送方向Xに連続して搬送するものである。本実施形態における搬送機構300は、駆動ローラ301および従動ローラ302を有する。駆動ローラ301は、帯状の集電体21Xの上方向側に配置されており、制御部1000による駆動制御により、帯状の集電体21Xを搬送方向Xに搬送する方向(
図3矢印A)に回転駆動するものである。従動ローラ302は、帯状の集電体21Xの下方向側に配置されており、駆動ローラ301の回転駆動により、帯状の集電体21Xが搬送方向Xに移動することに連動して、回転するものである。搬送機構300は、内部空間Sにおいて、搬送方向Xに離間して複数設置されている。最上流側の搬送機構300は、帯状の集電体21Xのみを上下方向において挟み込んで、搬送方向Xに搬送する。最下流側の搬送機構300は、電極化機構700よりも上流側に設置され、少なくとも帯状の集電体21Xおよび枠体4を上下方向において挟み込んで搬送方向Xに搬送する。ここで、制御部1000は、搬送機構300により帯状の集電体21Xを間欠的に搬送方向Xに移動させる。具体的には、制御部1000は、帯状の集電体21Xを一定量移動させたのち、一時的に停止し、再び一定量移動させる。なお、本実施形態における一定量は、帯状の集電体21Xに対して枠体4が連続して供給される際に、搬送方向Xにおいて隣り合う枠体4の間に隙間が形成される量である。
【0054】
枠体供給機構400は、帯状の集電体21Xに対して枠体4を供給することで、集電層21に対して枠体4を積層するものである。枠体供給機構400は、搬送方向Xにおいて最上流に設置される。枠体供給機構400は、枠体供給テーブル401と、ロボットアーム402とを有する。枠体供給テーブル401は、チャンバー本体201の床部205に固定されており、帯状の集電体21Xに対して枠体4が供給される際に、帯状の集電体21Xを支持するものである。ロボットアーム402は、例えば、空気圧により吸着した枠体4を帯状の集電体21X上まで搬送し、空気圧による吸着を解除することで、帯状の集電体21Xに枠体4を供給するものである。従って、帯状の集電体21Xは、搬送方向Xにおいて隙間が形成された状態で枠体4体が固定される。ここで、枠体4は、図示しない接着層により帯状の集電体21Xに固定される。ロボットアーム402は、制御部1000により駆動制御されるものであり、帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、枠体4を供給する。ロボットアーム402が搬送する枠体4は、高さ方向Zから見た場合に、帯状の集電体21Xの外側において、高さ方向Zに積み上げられている。本実施形態におけるロボットアーム402は、枠体供給テーブル401に設置されている。
【0055】
活物質供給機構500は、帯状の集電体21Xに対して活物質22Xを供給することで、集電体21に対して活物質層22を積層するものである。活物質供給機構500は、枠体供給機構400よりも搬送方向Xにおいて下流側に設置され、搬送方向Xにおいて枠体供給機構400と隣り合う。活物質供給機構500は、活物質供給テーブル501と、塗設機構502とを有する。活物質供給テーブル501は、チャンバー本体201の床部205に固定されており、帯状の集電体21Xに固定された枠体4の枠内に対して活物質22Xが供給される際に、帯状の集電体21Xが載置され、帯状の集電体21Xおよび枠体4を支持するものである。活物質供給テーブル501は、帯状の集電体21Xが載置される載置面に図示しない吸引孔が複数形成されており、制御部1000により制御される図示しない減圧ポンプにより吸引孔から内部空間Sの気体が吸引されることで、帯状の集電体21Xが支持されるとともに、飛散した活物質を吸引する。塗設機構502は、チャンバー200の外部に設置されている図示しない活物質供給タンクから活物質22Xが供給され、枠体4の枠内に向かって活物質22Xを一定量吐出することで、帯状の集電体21Xに固定された枠体4の枠内に活物質22Xを塗設するものである。塗設機構502は、例えば、塗設機構502の内部に貯留される活物質22Xを図示しない開口から吐出させるための吐出機構と、貯留されている活物質22Xと、枠体4の枠内に塗設された活物質22Xとを分断する分断機構とを有する。塗設機構502は、制御部1000により駆動制御されるものであり、帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、枠体4の枠内に活物質22Xを塗設するとともに、塗設された活物質22Xを分断する。なお、本実施形態における一定量は、枠体4の枠内に活物質22Xが充填される量であり、塗設機構502が枠体4の枠内のうち一部に上下方向において枠体4よりもはみ出すように塗設する。
【0056】
ロールプレス機構600は、搬送された帯状の集電体21X上の活物質22Xを圧縮するものである。ロールプレス機構600は、活物質供給機構500よりも搬送方向Xにおいて下流側に設置され、搬送方向Xにおいて活物質供給機構500と隣り合う。ロールプレス機構600は、第1圧縮ローラ601と、第2圧縮ローラ602とを有する。第1圧縮ローラ601は、ローラ支持部603によりチャンバー本体201の床部205に固定されており、帯状の集電体21Xと接触するものである。第2圧縮ローラ602は、ローラ支持部603によりチャンバー本体201の床部205に固定されており、第1圧縮ローラ601と隙間が形成された状態で、第1圧縮ローラ601と高さ方向Zにおいて対向して配置され、帯状の集電体21X上の活物質22Xと接触するものである。第1圧縮ローラ601よび第2圧縮ローラ602は、制御部1000により回転制御されるものであり、帯状の集電体21Xが搬送方向Xに移動している状態において、帯状の集電体21Xを搬送方向Xに移動させる方向に回転するものであり、帯状の集電体21X上の活物質22Xを圧縮することで、活物質22X内の空気などを外部に放出させて、活物質22Xを帯状の集電体21Xに定着させる。本実施形態におけるロールプレス機構600は、帯状の集電体21Xに固定された枠体4の枠内全域において活物質22Xを充填させる。第1圧縮ローラ601と第2圧縮ローラ602との間の隙間は、図示しない隙間調節機構により調節することができる。
【0057】
電極化機構700は、帯状の集電体21Xを切断し、帯状の集電体21Xから枠体4の枠内に活物質22Xが充填された単体の集電体21Xを生成、本実施形態では電極2を製造するものである。電極化機構700は、ロールプレス機構600よりも搬送方向Xにおいて下流側に設置され、搬送方向Xにおいて搬送機構300を挟んでロールプレス機構600と隣り合う。電極化機構700は、搬送台載置機構710と、切断機構720と、把持機構730と、搬送台740を有する。電極化機構700は、帯状の集電単21Xの搬送機構300による搬送に連動して、搬送方向側端部21XEを把持した把持状態で各把持具734,735を搬送方向Xに移動させ、上下方向から見た場合に、帯状の集電体21Xのうち、枠体4が固定された領域を搬送台740に載置するものでもある。
【0058】
搬送台載置機構710は、単体の集電体21Xが搬送される搬送台740が載置されるものであり、搬送台載置テーブル711と、上下動機構712とを有する。搬送台載置テーブル711は、上下動機構712を介してチャンバー本体201の床部205に固定されており、帯状の集電体21Xがカットされる際に、搬送台740を介して帯状の集電体21Xを支持するものである。上下動機構712は、搬送台740を支持位置と、支持位置よりも下方向側に位置する待機位置との間を移動させるものである。上下動機構712は、例えば、エアシリンダーであり、空気圧により上下方向において搬送台740を移動するものである。上下動機構712は、制御部1000により駆動制御されるものであり、帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、支持位置から待機位置に移動し、再び支持位置に移動するものであり、電極2が載置されている搬送台740を支持位置から待機位置に移動させ、空の搬送台740を待機位置から支持位置に移動させる。
【0059】
切断機構720は、上下方向から見た場合に、枠体4の搬送方向側の端部および枠体4の搬送方向と反対方向側の端部において、帯状の集電体21Xを切断するものである。切断機構720は、押圧機構としても機能し、切断押圧部721と、上下動機構722とを有する。切断押圧部721は、搬送台740に載置された帯状の集電体21Xの枠体4を下方向に押圧し、押圧状態で帯状の集電体21Xを切断するものである。切断押圧部721は、押圧治具723と、一対の刃移動機構724,725と、一対の刃726,727とを有する。押圧治具723は、枠体4と接触し、枠体4を下方向に向かって押圧するものである。押圧治具723は、上下方向から見た場合に、枠体4と重なるように額縁状に形成されている。本実施形態における押圧治具723は、上下方向から見た場合に、枠体4の枠内に充填された活物質22Xとは重ならないように形成されている。各刃移動機構724,725は、各刃726,727にそれぞれ対応するものであり、各刃726,727を切断位置と、切断位置よりも上方向側に位置する待機位置との間を移動させるものである。本実施形態における各刃移動機構724,725は、幅方向Yから見た場合に、押圧治具723の両端部に設けられている。各刃移動機構724,725は、例えば、直動機構であり、モータが回転駆動することにより上下方向において各刃726,727を移動するものである。各刃移動機構724,725は、制御部1000により駆動制御されるものであり、帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、待機位置から切断位置に移動し、再び待機位置に移動するものであり、押圧治具723により枠体4が押圧された状態で、帯状の集電体21Xから1つの枠体4が固定されている領域を分断する。各刃726,727は、帯状の集電体21Xを切断するものである。本実施形態における各刃726,727は、幅方向Yから見た場合に、押圧治具723の搬送方向Xにおける両端部に配置されており、下方向側端部に刃部が形成され、幅方向Yの長さが帯状の集電体21Xの幅方向Yの長さよりも長く形成されている。上下動機構722は、切断押圧部721を待機位置と、待機位置よりも下方向側に位置する押圧位置との間を移動させるものである。上下動機構722は、例えば、エアシリンダーであり、空気圧により上下方向において切断押圧部721を移動するものである。上下動機構722は、制御部1000により駆動制御されるものであり、帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、待機位置から押圧位置に移動し、再び待機位置に移動するものであり、切断押圧部721を待機位置から押圧位置に移動させ、押圧治具723により枠体4を押圧し、各刃移動機構724,725が待機位置から切断位置に移動し再び待機位置に移動してから、切断押圧部721を押圧位置から待機位置に移動させる。
【0060】
把持機構730は、搬送機構300により搬送された帯状の集電体21Xのうち、搬送方向側端部21XEを後述する把持具734,735により把持するものである。把持機構730は、ロボットアーム731と、押圧治具723とを有する。ロボットアーム731は、各把持具734,735による搬送方向側端部21XEの把持状態を維持したまま、各把持具734,735を搬送方向Xに移動させるものである。ロボットアーム731は、制御部1000により駆動制御されるものであり、帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、搬送方向Xにおいて押圧治具723を搬送方向側端部21XEの近傍に移動させ、帯状の集電体21Xが搬送方向Xに移動している状態において、搬送機構300による帯状の集電体21Xの移動に連動して、押圧治具723を搬送方向Xに移動させるものである。押圧治具723は、搬送方向側端部21XEを把持するものであり、ベース部733と、把持具734と、把持具735とを有する。ベース部733は、ロボットアーム731の先端部に固定されている。ベース部733は、各把持具734,735幅方向において離間、本実施形態では、帯状の集電体21Xの幅方向における長さ未満した状態で各把持具734,735を保持する。各把持具734,735は、搬送方向側端部21XEを把持するものである。各把持具734,735は、図示しない回転軸周りに2つの接触部が開位置と閉位置との間で移動するものである。各把持具734,735は、例えば、空気圧により、開閉するものである。各把持具734,735は、制御部1000により駆動制御されるものであり、帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、開状態から閉状態となり、搬送方向側端部21XEを把持し、帯状の集電体21Xが搬送方向Xに移動している状態においては閉状態を維持し、再び帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、ロボットアーム731の移動に連動して閉状態から開状態となり、切断された搬送方向側端部21XEの把持を終了する。
【0061】
搬送台740は、製造された電極2を搬送するものであり、電極化機構700の下流側に位置する電極載置台900近傍まで、図示しないロボットアームやコンベアなどの送台搬送機構により搬送される。搬送台740は、電極載置台900に電極2が載置されると、搬送台搬送機構により再び搬送台載置テーブル711に空の状態で載置される。
【0062】
次に、電池用電極製造装置100による電極2の製造について説明する。ここでは、チャンバー200の内部空間Sは、減圧ポンプ202により大気圧よりも減圧され、チャンバー200が減圧状態であり、搬送機構300により帯状の集電体21Xが間欠的に搬送方向Xに移動することを前提とする。
【0063】
まず、枠体供給機構400は、
図5に示すように、帯状の集電体21Xに対して枠体4を供給し、帯状の集電体21X上に枠体を固定する枠体固定工程を行う(S1)。
【0064】
次に、活物質供給機構500は、帯状の集電体21Xに固定された枠体4の枠内に対して活物質22Xを供給する活物質供給工程を行う(S2)。
【0065】
次に、ロールプレス機構600は、帯状の集電体21Xに固定された枠体4の枠内に供給された活物質22Xを圧縮するプレス工程を行う(S3)。
【0066】
次に、電極化機構700の把持機構730は、帯状の集電体21Xのうち、搬送方向側端部21XEを各把持具734,735により把持する把持工程を行う(S4)。ここで、内部空間Sにおける帯状の集電体21Xの搬送方向側端部21XEは、ロールプレス機構600の下流側に位置、本実施形態では、最下流側の搬送機構300によりも下流側に位置することとなる。把持機構730は、帯状の集電体21Xの移動が一時的に停止した状態において、
図3および
図4に示すように、開状態の各把持具734,735を閉状態とすることにより、搬送方向側端部21XEを把持する。
【0067】
次に、電極化機構700の把持機構730は、
図5に示すように、帯状の集電体21Xの搬送機構300による搬送に連動して、把持状態を維持したまま、ロボットアームを矢印B方向に移動させることで、搬送方向側端部21XEを搬送方向Xに移動させ、帯状の集電体21Xのうち、枠体4が固定された領域を搬送台740に載置する載置工程を行う(S5)。ここでは、搬送台載置機構710は、
図3に示すように、搬送台載置テーブル711を矢印C方向(上方向)に移動させ、
図6および
図7に示すように、搬送台載置テーブル711を待機位置から支持位置とする。
【0068】
次に、電極化機構700の切断機構720は、
図5に示すように、帯状の集電体21X上の枠体4を押圧治具723により下方向に押圧する押圧工程を行う(S6)。ここでは、上下動機構722は、
図6に示すように、切断押圧部721を矢印D方向(下方向)に移動させ、
図8および
図9に示すように、切断押圧部721を待機位置から押圧位置とする。枠体4の下方向側に位置する帯状の集電体21Xは、搬送台740に載置されているため、枠体4が搬送台740に押圧される。従って、後述する切断工程の前に枠体4の位置ずれを抑制することができ、切断工程時において枠体4を含む帯状の集電体21Xが搬送台740に対して移動することを抑制することができる。これにより、切断工程での搬送方向Xにおける両端部の切断位置ずれを抑制することができ、帯状の集電体21Xの切断精度を向上することができ、製造された電極2を構成する集電層21の均一化を図ることができ、製造される電極2の歩留まり向上を図ることができる。
【0069】
次に、電極化機構700の切断機構720は、帯状の集電体21Xを切断する切断工程を行う(S7)。ここでは、切断機構720は、
図8に示すように、各刃726,727を矢印E方向(下方向)に移動させ、
図10に示すように、各刃726,727を待機位置から切断位置とし、枠体4の搬送方向側の端部および枠体4の搬送方向と反対方向側の端部において、帯状の集電体21Xを切断する。
【0070】
次に、電極化機構700の切断機構720は、帯状の集電体21Xを切断する切断工程を行う(S7)。ここでは、切断機構720は、
図8に示すように、各刃726,727を矢印E方向(下方向)に移動させ、
図10に示すように、各刃726,727を待機位置から切断位置とし、枠体4の搬送方向側の端部および枠体4の搬送方向と反対方向側の端部において、帯状の集電体21Xを切断する。なお、把持機構730は、切断工程において、搬送方向側端部21XEの把持状態を維持する。
【0071】
次に、電極化機構700は、
図10に示すように、各刃726,727を矢印G方向(上方向)に移動させ、各刃726,727を切断位置から待機位置とし、切断押圧部721を矢印H方向(上方向)に移動させ、切断押圧部721を押圧位置から待機位置とし、各把持具734,735を矢印F方向(搬送方向X)に移動させ、上下方向から見た場合に、各把持具734,735が収集ボックス800に対向した際に、各把持具734,735を閉状態から開状態として、切断された帯状の集電体21Xの搬送方向側端部21XEを収集空間801に挿入し、搬送台載置テーブル711を矢印I方向(下方向)に移動させ、
図11に示すように、搬送台載置テーブル711を支持位置から待機位置とする。
【0072】
次に、電極化機構700は、帯状の集電体21Xを切断することで製造される電極2を搬送台移動機構により電極載置台900に載置されたのち、各把持具734,735を矢印K方向に移動させることで、新たに生成された搬送方向側端部21XEの近傍まで移動し、搬送台移動機構により、空の搬送台740を矢印J方向に移動させることで、待機位置の搬送台載置テーブル711に搬送台740を載置し、再び上記工程を繰り返す。
【0073】
以上のように、本実施形態における把持機構730は、搬送機構300による帯状の集電体21Xの搬送に連動して、帯状の集電体21Xの搬送方向側端部21XEを把持した状態で、搬送方向側端部21XEを搬送する。従って、帯状の集電体21Xの搬送台740までの搬送は、搬送方向側端部21XEを把持した把持機構730が帯状の集電体21Xを搬送方向Xに引っ張り、搬送機構300が上流側の帯状の集電体21Xを搬送方向Xに押し出すことにより行われる。これにより、最下流側の搬送機構300のみにより帯状の集電体21Xを搬送台740まで搬送する場合と比較して、搬送方向側端部21XEが搬送時に暴れることがなく、帯状の基材フィルムの搬送性の低下を抑制することができ、製造される電極2の歩留まり向上を図ることができる。
【0074】
また、本実施形態における把持機構730は、切断機構720による帯状の集電体21Xの切断時においても、搬送方向側端部21XEを把持している。従って、切断工程時において搬送方向側端部21XEが撓むことを抑制することができる。これにより、帯状の集電体21Xの切断精度を向上することができ、製造された電極2を構成する集電層21の均一化を図ることができ、製造される電極2の歩留まり向上を図ることができる。
【0075】
なお、本実施形態における電池用電極製造装置100は、セパレータ3を配置した状態で電極2を製造するものであってもよい。この場合は、活物質供給機構500と、ロールプレス機構600との間に図示しないセパレータ配置機構を内部空間Sに配置し、
図12に示すように、活物質供給機構500による活物質供給工程と、ロールプレス機構600によるプレス工程の間に枠体4に対してセパレータ3を配置することが好ましい。例えば、セパレータ配置機構は、帯状のセパレータ3を枠体4に対して配置するものであり、帯状のセパレータ3を介して、ロールプレス機構600が活物質22Xを圧縮し、ロールプレス機構600と電極化機構700との間に設置されたセパレータ切断固定機構により、帯状のセパレータ3から各枠体4にそれぞれ対応する単体のセパレータ3を切断し、熱融着などの固定方法により単体のセパレータ3を枠体4に固定する。電極化機構700は、
図13に示すように、枠体4に対してセパレータ3が固定された状態の帯状の集電体21Xを切断する。ロールプレス機構600は、活物質22Xを圧縮する際に、活物質22Xと直接接触せずに、セパレータ3を介して圧縮することができる。特に、活物質22Xが湿紛状である場合に、ロールプレス機構600の第2圧縮ローラ602に活物質22Xが付着することを確実に抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態における枠体供給機構400は、内部空間Sに配置されるがこれに限定されるものではなく、チャンバー200の外部に設けられていてもよい。この場合、帯状の集電体21Xは、枠体4が固定された状態で、内部空間Sに搬入される。
【0077】
また、本実施形態においては、基材フィルムとして集電体21Xの場合を説明したが、これに限定されるものではない。基材フィルムは、集電体21Xの他に、セパレータ3、または、転写用のフィルムであってもよい。基材フィルムがセパレータ3の場合は、帯状のセパレータ3がチャンバー200内に搬入され、枠体供給機構400により枠体4が固定され、活物質供給機構500により活物質22Xが枠体4の枠内に供給され、ロールプレス機構600により搬送された帯状のセパレータ3上の活物質22Xが圧縮され、電極化機構700により帯状のセパレータ3が切断され、帯状のセパレータ3から枠体4の枠内に活物質22Xが充填された単体のセパレータ3、すなわち電極2の一部を生成することとしてもよい。また、基材フィルムが転写フィルムの場合は、帯状の転写フィルムがチャンバー200内に搬入され、転写フィルム上にマスクなど内部に活物質を形成できる空間のあるものが載置され、その内部に活物質供給機構500により活物質22Xが供給され、ロールプレス機構600により搬送された帯状の転写フィルム上の活物質22Xが圧縮され、電極化機構700により帯状の転写フィルムが切断される、としてもよい。転写フィルム上に形成された活物質層(電極の一部)が、集電体又は枠体4が載置された集電体(枠付き集電体)上に転写されることで、集電体上に電極が形成される。その際の枠体4の設置は、電極形成前又は電極形成後のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1:単電池、 2:電極、 2a:正極、 2b:負極、 21:集電体層、
21a:正極集電体層、 21b:負極集電体層、 21X:集電体、
22:電極活物質層、 22a:正極活物質層、 22b:負極集電体層、
22X:活物質、 3:セパレータ、 4:枠体、
100:電池用電極製造装置、 200:チャンバー、300:搬送機構、
400:枠体供給機構、 500:活物質供給機構、 600:ロールプレス機構、
700:電極化機構、 710:搬送台載置機構、 720:切断機構、
730:把持機構、 740:搬送台、 800:収集ボックス、
900:電極載置台