(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030948
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ハンドル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136376
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】浅野 巌
(72)【発明者】
【氏名】諏訪間 貴博
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA26
3D030DA35
3D030DA64
3D030DA69
3D030DB83
(57)【要約】
【課題】被覆部材のリム部本体部への取り付けの作業性が良好で、かつ、外観に優れるステアリングホイール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール1は、リム部本体部19と、このリム部本体部19の少なくとも一部を覆う被覆部材12と、を有するリム部5を備える。ステアリングホイール1は、リム部5に対して取り付けられる装飾部21を備える。リム部本体部19は、装飾部21が取り付けられる取付部20をリム部本体部19が延びる方向に対して交差する方向に備える。被覆部材12は、リム部本体部19に対し取付部20を基準として一方と他方とを覆う一方の分割体30と他方の分割体31とを備える。一方の分割体30と他方の分割体31とは、取付部20において対向する端部36,37の少なくとも一部が、互いに相補的な形状となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部本体部と、この把持部本体部の少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有する把持部と、
この把持部に対して取り付けられる装飾部と、を備え、
前記把持部本体部は、前記装飾部が取り付けられる取付部を前記把持部本体部が延びる方向に対して交差する方向に備え、
前記被覆部材は、前記把持部本体部に対し前記取付部を基準として一方と他方とを覆う一方の分割体と他方の分割体とを備え、
前記一方の分割体と前記他方の分割体とは、前記取付部において対向する端部の少なくとも一部が、互いに相補的な形状となっている
ことを特徴とするハンドル。
【請求項2】
一方の分割体と他方の分割体とは、対向する端部の相補的な形状が断続して形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【請求項3】
把持部本体部と、この把持部本体部の少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有する把持部と、この把持部に対して取り付けられる装飾部と、を備え、前記把持部本体部は、前記装飾部が取り付けられる取付部を前記把持部本体部が延びる方向に対して交差する方向に備えるハンドルを製造するハンドルの製造方法であって、
前記被覆部材に分割予定部を予め形成し、
前記分割予定部を前記取付部に位置合わせするように前記被覆部材により前記把持部本体部の少なくとも一部を覆い、
前記分割予定部から前記被覆部材を切断し、
前記取付部に前記装飾部を取り付ける
ことを特徴とするハンドルの製造方法。
【請求項4】
分割予定部を、穴部を断続的に有するように被覆部材に予め形成する
ことを特徴とする請求項3記載のハンドルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持部に対して装飾部が取り付けられるハンドル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のハンドルであるステアリングホイールの把持部であるリム部として、本革などの被覆部材により表面を覆うことで外観を向上したものがある。リム部本体部を被覆部材で覆う際には、輪状につなぎ合わされた被覆部材の長手方向に沿った略中心部をリム部本体の最外周側へ貼り付けた後、引っ張りながら被覆部材の長手方向に沿った両側端縁をリム部本体部の内周側へ引き寄せ、両側端縁を対面接触させた状態で縫い合わせる工程が用いられることが多い。
【0003】
従来、リム部の一部に木目調の装飾部を設けたステアリングホイールが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この構成の場合、被覆部材でリム部本体部を被覆しても装飾部を取り付ける取付部が表面に露出している必要がある。その場合、取付部に該当する箇所の被覆部材を、取付部を囲む形状に予めくり抜くなどして切除した状態でリム部本体部を覆うことにより、上記のような工程での被覆作業が可能となる。
【0004】
一方、近年では求められる装飾部のデザインも多様化している。例えば、リム部の一部に、リム部の短手方向の外周径に沿った一対の半円状の装飾部を嵌め合わせて、リム部の短手方向全周に亘るセンターマークを兼ねた装飾部とするものがある。この場合、装飾部を取り付ける取付部をリム部の表面に露出させるためには、被覆部材の一部を完全に分断させる必要がある。
【0005】
このように分断された被覆部材は、輪状に連続しないものとなるため、リム部本体部への巻き付けの際に被覆部材を分断されている端部側へと引っ張りながら作業をしなければならず、作業が困難であるとともに、充分に引っ張ることができない場合には外観不具合となる皴が発生するなど、製造面と品質面で影響を受けるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-225951号公報 (第3-4頁、
図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、被覆部材の取り付けの作業性を確保しつつ、外観不具合を防止できる構成が望まれている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被覆部材の把持部本体部への取り付けの作業性が良好で、かつ、外観に優れるハンドル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のハンドルは、把持部本体部と、この把持部本体部の少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有する把持部と、この把持部に対して取り付けられる装飾部と、を備え、前記把持部本体部は、前記装飾部が取り付けられる取付部を前記把持部本体部が延びる方向に対して交差する方向に備え、前記被覆部材は、前記把持部本体部に対し前記取付部を基準として一方と他方とを覆う一方の分割体と他方の分割体とを備え、前記一方の分割体と前記他方の分割体とは、前記取付部において対向する端部の少なくとも一部が、互いに相補的な形状となっているものである。
【0010】
請求項2記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、一方の分割体と他方の分割体とは、対向する端部の相補的な形状が断続して形成されているものである。
【0011】
請求項3記載のハンドルの製造方法は、把持部本体部と、この把持部本体部の少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有する把持部と、この把持部に対して取り付けられる装飾部と、を備え、前記把持部本体部は、前記装飾部が取り付けられる取付部を前記把持部本体部が延びる方向に対して交差する方向に備えるハンドルを製造するハンドルの製造方法であって、前記被覆部材に分割予定部を予め形成し、前記分割予定部を前記取付部に位置合わせするように前記被覆部材により前記把持部本体部の少なくとも一部を覆い、前記分割予定部から前記被覆部材を切断し、前記取付部に前記装飾部を取り付けるものである。
【0012】
請求項4記載のハンドルの製造方法は、請求項3記載のハンドルの製造方法において、分割予定部を、穴部を断続的に有するように被覆部材に予め形成するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のハンドルによれば、予め分断されていない被覆部材を把持部本体部へ取り付けた後に被覆部材を取付部の位置で切断することが可能となるため、被覆部材の把持部本体部への取り付けの作業性が良好であるとともに、被覆部材に皴などの外観不良が生じにくく、外観に優れるハンドルを提供できる。
【0014】
請求項2記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加えて、穴部を断続的に有するように被覆部材に予め形成して穴部から被覆部材を切断することが可能となるため、被覆部材により把持部本体部の少なくとも一部を覆う際に、穴部を介して取付部を目視できるので、被覆部材を取付部に対して容易に位置合わせできるとともに、穴部から被覆部材を容易に切断でき、作業性が良好になる。
【0015】
請求項3記載のハンドルの製造方法によれば、被覆部材の把持部本体部への取り付けの作業性が良好であるとともに、被覆部材に皴などの外観不良が生じにくく、外観に優れるハンドルを製造できる。
【0016】
請求項4記載のハンドルの製造方法によれば、請求項3記載のハンドルの製造方法の効果に加えて、被覆部材により把持部本体部の少なくとも一部を覆う際に、穴部を介して取付部を目視できるので、被覆部材を取付部に対して容易に位置合わせできるとともに、穴部から被覆部材を容易に切断でき、作業性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のハンドルの一部を拡大して示す正面図である。
【
図2】(a)は同上ハンドルの把持部本体部に被覆部材を巻き付ける工程を示す斜視図、(b)は(a)に続いて分割予定部から被覆部材を切断する工程を示す斜視図、(c)は(b)により切断された被覆部材の取付部での位置を示す正面図、(d)は(b)に続いて取付部に装飾部を取り付ける工程を示す斜視図である。
【
図3】同上ハンドルの被覆部材の一例の一部を示す平面図である。
【
図4】(a)は
図5のI-I相当位置の断面図、(b)は
図5のII-II相当位置の断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態の被覆部材の他の例の一部を示す平面図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態のハンドルの切断された被覆部材の取付部での位置を示す正面図である。
【
図8】同上ハンドルの被覆部材のさらに他の例の一部を示す平面図である。
【
図9】本発明の第4の実施の形態のハンドルの切断された被覆部材の取付部での位置を示す正面図である。
【
図10】同上ハンドルの被覆部材のさらに他の例の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図5において、1は例えば車両としての自動車のハンドル(ステアリングハンドル)であるステアリングホイールである。ステアリングホイール1は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体2、及び、ステアリングホイール本体2の乗員側に装着されるモジュール3などを備えている。なお、ステアリングホイール1は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、ステアリングホイール1を運転者(乗員)側から見て、矢印U方向を上側、矢印D方向を下側、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側あるいは背面側、車両の後側すなわち後側下方を後側、手前側あるいは正面側として説明する。また、ステアリングホイール本体2の各部の上下左右などの配置は、ステアリングホイール1の中立(ニュートラル)位置を基準とする。
【0020】
ステアリングホイール本体2は、把持部としてのリム部(グリップ部)5と、リム部5の内側に位置するボス部6と、これらリム部5とボス部6とを連結する複数のスポーク部7とを有する。
【0021】
リム部5は、運転者(乗員)により把持操作される部分である。リム部5は、少なくとも一部が円弧状に形成されている。すなわち、本実施の形態において、リム部5は、周方向に延びている。好ましくは、リム部5は、環状に形成されている。本実施の形態において、リム部5は、円環状に形成されている。
【0022】
ボス部6は、ステアリングシャフトと連結される部分である。また、ボス部6の乗員側には、モジュール3が取り付けられる。さらに、ボス部6は、背面側がカバー体により覆われる。カバー体は、裏カバー、下部カバーあるいはボディカバーとも呼ばれ、合成樹脂などにより形成されている。
【0023】
スポーク部7は、本実施の形態において、左右2本形成されている。これに限らず、スポーク部7は、3本、4本、あるいはそれ以上の本数が形成されていてもよい。
【0024】
モジュール3としては、例えばエアバッグ装置、あるいは衝撃吸収体を収容したものなどのパッド体を用いることができる。なお、モジュール3には、スイッチ装置としてのホーンスイッチ機構などが一体的に組み込まれていてもよい。
【0025】
次に、ステアリングホイール本体2の構造について説明する。
【0026】
図4(a)、
図4(b)及び
図5に示すように、ステアリングホイール本体2は、芯金10と、芯金10を覆う基材層である樹脂層11と、樹脂層11を覆う被覆部材12と、を有する。
【0027】
芯金10は、例えばアルミニウムやマグネシウムなどの金属製である。芯金10は、リム部5の一部をなす把持部芯金部であるリム芯金部15と、ボス部6の一部をなすボス芯金部と、を少なくとも有する。また、芯金10は、スポーク部7の一部をなすスポーク芯金部を有していてもよい。
【0028】
リム芯金部15は、リム部5の形状に対応する形状に形成されている。すなわち、このリム芯金部15は、リム部5の形状に応じて、例えば少なくとも一部が円弧に沿って形成された環状をなしている。本実施の形態において、このリム芯金部15は、円環状に形成されている。
【0029】
ボス芯金部は、ステアリングシャフトと歯合するセレーション構造を備えたボスに、芯体を構成するボスプレートが一体的に固着されて構成されている。
【0030】
スポーク芯金部は、ボス芯金部のボスプレートから放射状に延びて形成されている。スポーク芯金部は、必ずしもすべてのスポーク部7に対応していなくてもよく、少なくとも一部のスポーク部7は、スポーク芯金部を備えずにフィニッシャやカバー体などにより構成されていてもよい。
【0031】
樹脂層11は、少なくともリム芯金部15を覆って形成されている。そのため、樹脂層11は、少なくとも一部が円弧状に形成され、本実施の形態では環状、または、円環状に形成されている。樹脂層11は、例えば断面円形状(断面略円形状も含む)に形成されている。樹脂層11は、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたものが使用される。リム芯金部15と、このリム芯金部15を覆う樹脂層11と、により、把持部本体部としてのリム部本体部19が構成されている。リム部本体部19は、全体として円形状または略円形状に形成されている。すなわち、リム部本体部19は、少なくとも一部が円弧状となっている。リム部本体部19は、ステアリングホイール1の回動方向、すなわちステアリングシャフトの周方向に延びて位置する。
【0032】
リム部本体部19には、樹脂層11すなわち表面に、取付部20が形成されている。取付部20は、溝状となっており、被覆部材12の一部が収容されるとともに、この被覆部材12の一部を覆って装飾部21が取り付けられる部分である。取付部20は、リム部本体部19が延びる方向、つまりリム部本体部19の長手方向、本実施の形態ではリム部本体部19の周方向と交差する方向に沿って樹脂層11に形成されている。取付部20は、リム部本体部19の経線(メリディアン)方向に沿って樹脂層11に形成されている。つまり、取付部20は、リム部本体部19の小径方向に形成されている。本実施の形態において、取付部20は、ステアリングホイール本体2を正面から見て、リム部本体部19において、アナログ時計の6時方向すなわち下部に位置する。取付部20は、リム部本体部19の経線方向に全周に亘り連なっていてもよいし、断続的でもよい。取付部20は、例えば樹脂層11を成形する際に同時に形成されてもよいし、樹脂層11の成形後に加工されて形成されてもよい。取付部20は、底部20aの両側部から側壁20bが立ち上げられて形成されている。底部20aは、リム部本体部19の樹脂層11の表面から所定の深さの位置に形成されている。本実施の形態において、底部20aは、リム部本体部19の樹脂層11の表面と平行(略平行も含む)に形成されている。図示される例では、底部20aは、リム部本体部19の樹脂層11の経線方向に連なって形成されている。
【0033】
装飾部21は、ステアリングホイール1の表面に露出する加飾部である。本実施の形態の装飾部21は、ステアリングホイール本体2を正面から見て、リム部本体部19において、アナログ時計の6時方向にて径方向に延びるように配置され、リム部5のセンターマークとしての機能を有する。装飾部21は、一定幅または略一定幅の帯状に形成されている。また、装飾部21は、取付部20に嵌合される円環状に形成されている。すなわち、装飾部21は、リム部本体部19の経線方向に円環状となっている。装飾部21は、例えばリム部本体部19の経線方向に複数、例えば一対の装飾体21a,21bに分割され、これら装飾体21a,21bが取付部20にて樹脂層11を挟むように配置されて互いに爪嵌合により係止されることで取付部20に配置されている。装飾部21は、合成樹脂、金属、あるいは木材などの任意の素材により形成されている。
【0034】
装飾部21は、取付部20において、被覆部材12の一部を覆っている。被覆部材12は、運転者(乗員)により直接把持される部分であり、ステアリングホイール1の表面に露出する加飾部である。被覆部材12は、例えば天然皮革や合成皮革などの皮革、あるいは合成樹脂などによりシート状に形成されている。本実施の形態において、被覆部材12は、リム部本体部19の樹脂層11の表面全体を連続的に覆うように配置されている。本実施の形態において、被覆部材12は、複数の被覆部材片25からなり、これら被覆部材片25の端縁部同士が縫製などにより連結されて一体的に形成されている。
【0035】
図3に示すように、被覆部材片25は、長手状に形成されており、短手方向に沿う側縁部25a,25aにおいて、短手方向の中央部が長手方向に沿う端縁部25b,25bよりも長手方向に突出して形成されている。被覆部材片25の短手方向の中央部が、リム部本体部19(
図5)を正面から見た状態でのリム部本体部19(
図5)の外周側に配置され、長手方向に沿う端縁部25b,25bが、リム部本体部19(
図5)の内周側にて互いに縫製などの接合部26(
図2(a))にて接合されることで、被覆部材12がリム部本体部19を覆って取り付けられる。
【0036】
さらに、本実施の形態において、
図5に示すように、被覆部材12は、所定の部分、例えば被覆部材片25同士の連結部がリム部本体部19に形成された溝部の位置にそれぞれ落とし込まれて、リム部5の運転者(乗員)側に、いわゆる木目込み風の意匠を構成する意匠部28を構成している。例えば、意匠部28(溝部)は、ステアリングホイール本体2を正面から見て、リム部本体部19において、アナログ時計の2時、4時、8時、10時方向にそれぞれ配置され、径方向に対して傾斜する直線状となっている。
【0037】
また、被覆部材12(被覆部材片25)は、予め連なって輪状または長手状に形成され、製造時に装飾部21または取付部20の位置で分割される。すなわち、被覆部材12は、装飾部21または取付部20を基準として、一方と他方とに一方の分割体30と他方の分割体31とを備える。本実施の形態では、下部に位置する被覆部材片25が一方の分割体30と他方の分割体31とに分割される。
【0038】
一方の分割体30と他方の分割体31とは、
図3に示す分割予定部32から分割されて形成される。分割予定部32は、被覆部材12(被覆部材片25)の長手方向に対して交差する方向に直線状などに予め形成されている。そのため、分割予定部32は、被覆部材12によりリム部本体部19(
図5)を被覆した状態でリム部本体部19(
図5)の経線方向に沿うように配置される。
【0039】
分割予定部32は、任意に形成してよいが、一例として、被覆部材12に断続的に形成された穴部33と、穴部33,33間の連続部34とからなるものとして形成可能である。
【0040】
穴部33は、好ましくは、幅が2mm、長さが10mm±5mm、さらに好ましくは11mmなどに設定されている。穴部33,33間の連続部34のピッチは、好ましくは穴部33の長さ以上とする。穴部33の大きさが小さ過ぎると、穴部33からリム部本体部19(
図5)が見えづらくなり、穴部33の大きさが大き過ぎると、被覆部材12によりリム部本体部19(
図5)の少なくとも一部を覆う際に穴部33が開く、いわゆる口開きが生じるため、被覆部材12をリム部本体部19(
図5)に対して位置合わせしづらくなる。
【0041】
分割予定部32から分割された被覆部材12の一方の分割体30と他方の分割体31とのそれぞれは、
図1に示す端部36,37が、取付部20に挿入されて互いにリム部本体部19が延びる方向である緯線(ロンジチュード)方向に対向して位置し、取付部20に取り付けられた装飾部21によって覆い隠されている。端部36は、分割予定部32(
図3)の一方の縁部であり、端部37は、分割予定部32(
図3)の他方の縁部である。したがって、端部36,37には、少なくとも一部に、連続部34(
図3)が切断された切断部38,39が位置する。本実施の形態において、切断部38,39は、穴部33(
図3)の側縁部となる非切断部40,40間及び非切断部41,41間に位置して断続的となっている。切断部38,39は、互いに相補的な形状となっている。すなわち、切断部38,39は、互いに平行または略平行な直線状、または、曲率(曲率半径)の大きさが互いに等しく符号が互いに逆の曲線状となっている。本実施の形態において、切断部38,39は、端部36,37を並べた状態で互いに連なるように一致する。また、本実施の形態において、端部36は、切断部38と非切断部40とが緯線方向に交互に並ぶ矩形波状の形状となっている。同様に、端部37は、切断部39と非切断部41とが緯線方向に交互に並ぶ矩形波状の形状となっている。
【0042】
そして、ステアリングホイール1を製造する際には、まず、予め成形された芯金10を成形型にセットした後、キャビティに対して、合成樹脂原料を攪拌混合して射出する。この結果、合成樹脂原料が発泡を伴いながら反応してポリウレタンとなりつつ流動末端に向かって流れていく。
【0043】
次いで、キャビティ内で樹脂層11がリム芯金部15を覆って形成された中間体を、成形型から脱型し、ばりなどをカットする。
【0044】
この後、中間体の樹脂層11の表面を被覆部材12により覆う。被覆部材12は、例えば予め複数の被覆部材片25の側縁部25a同士を縫製などにより連結して長手状としておき、被覆部材12を樹脂層11に対して外周側から内周側に向かい巻き付けるように取り付ける。このとき、
図2(a)に示すように、分割予定部32を、樹脂層11に形成された取付部20の位置に合わせ、樹脂層11の内周側の位置で、被覆部材片25の端縁部25b,25b同士を、分割予定部32を除き縫製などの接合部26により接合することで、被覆部材12をリム部本体部19に固定する。この作業において、分割予定部32に穴部33を形成している場合には、作業者が穴部33を介して取付部20を目視できることで、分割予定部32を取付部20に対して容易に位置合わせできる。
【0045】
また、被覆部材片25同士の連結部を樹脂層11に形成された溝部にそれぞれ落とし込むとともに、被覆部材12の両端部同士を一つの溝部に対応する位置で縫製などにより接合し、この溝部に落とし込んで意匠部28(
図5)として固定する。
【0046】
被覆部材12による樹脂層11の被覆が完了すると、
図2(b)に示すように、分割予定部32から被覆部材12を分割する。例えば、分割予定部32は、鋏やカッターなどの工具Tを用いて連続部34をリム部本体部19の経線方向全周に亘り切断する。このとき、工具Tにより分割予定部32を一方向に切断してもよいし、リム部本体部19の経線方向の半周分を一方向に切断し、残りの半周分をその反対方向に切断するなどしてもよい。分割予定部32から被覆部材12が分割されることで、
図2(c)に示すように、一方の分割体30の端部36及び他方の分割体31の端部37が取付部20を基準として一方と他方とに位置し、互いに緯線方向に対向する。
【0047】
この状態で、
図1及び
図2(d)に示すように、一方の分割体30の端部36および他方の分割体31の端部37を覆いつつ、装飾部21を取付部20に対して取り付ける。
【0048】
そして、完成したステアリングホイール本体2において、ステアリングホイール本体2にモジュール3やカバー体などを取り付けて、ステアリングホイール1が完成する。
【0049】
このように、第1の実施の形態では、被覆部材12に分割予定部32を予め形成し、分割予定部32を取付部20に位置合わせするように被覆部材12によりリム部本体部19の少なくとも一部を覆い、分割予定部32から被覆部材12を切断した後、取付部20に装飾部21を取り付ける。そのため、被覆部材12が、リム部本体部19に対し取付部20を基準として一方と他方とを覆う一方の分割体30と他方の分割体31とに分断され、一方の分割体30と他方の分割体31との取付部20において互いに対向する端部36,37の少なくとも一部が互いに相補的な形状となる。すなわち、予め分断されていない被覆部材12をリム部本体部19へ取り付けた後に被覆部材12を取付部20の位置で切断することが可能となるので、被覆部材12のリム部本体部19への取り付けの作業性が良好であるとともに、被覆部材12に皴などの外観不良が生じにくく、外観に優れるステアリングホイール1を提供できる。
【0050】
また、本実施の形態では、分割予定部32を、穴部33を断続的に有するように被覆部材12に予め形成し、穴部33から被覆部材12を切断する。そのため、分割予定部32から被覆部材12を切断した後の一方の分割体30と他方の分割体31との互いに対向する端部36,37に、相補的な形状、つまり切断部38,39が断続して形成される。この場合には、被覆部材12によりリム部本体部19の少なくとも一部を覆う際に、穴部33を介して取付部20を目視できるので、被覆部材12の分割予定部32を取付部20に対して容易に位置合わせできるとともに、穴部33から被覆部材12を分割予定部32にて容易に切断でき、作業性が良好になる。
【0051】
なお、第1の実施の形態において、穴部33は、隙間を生じないスリット状などとしてもよい。
【0052】
また、
図6に示す第2の実施の形態のように、穴部33,33間に、分割予定部32からの切断を補助するための分割補助部43が穴部33から離間された位置にて連続部34の少なくともいずれかに形成されていてもよい。特に、分割補助部43は、穴部33,33間のピッチが所定より大きい箇所に形成することが好ましい。分割補助部43は、例えばスリットあるいは薄肉部などとして形成される。この場合には、分割予定部32から被覆部材12を容易に切断できるとともに、分割予定部32において切断距離が短くなり、切断精度を向上できる。
【0053】
なお、分割予定部32から被覆部材12を分割する工具は、分割予定部32を部分的に除去するものでもよい。例えば、
図7及び
図8に示す第3の実施の形態のように、工具によって、分割予定部32を帯状に除去するものでもよい。この場合、端部36,37の切断部38,39は、互いに連なるように一致はしないものの、互いに相補的な形状となる。また、図示される例では、非切断部40,41が端部36,37に僅かに残留して端部36,37が矩形波状となっているが、これに限らず、切断部38と非切断部40と、及び、切断部39と非切断部41と、がそれぞれ面一状に連なっていてもよい。この場合でも、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
また、
図9及び
図10に示す第4の実施の形態のように、分割予定部32は、目印線として形成しても、同様の作用効果を奏することができる。目印線は、被覆部材12(被覆部材片25)の表面に印刷などされていてもよいし、被覆部材12(被覆部材片25)の他の部分よりも薄肉に形成されていてもよい。この場合、分割予定部32から分割された一方の分割体30の端部36と他方の分割体31の端部37とは、全体が連なる切断部となり、互いに相補的な形状となる。
【0055】
さらに、上記各実施の形態において、取付部20は、リム部本体部19が延びる方向と交差する方向に形成されて被覆部材12を切断するものであれば、ステアリングホイール1のデザインなどに応じて、その位置や数を任意に設定できる。
【0056】
また、リム部5は、円環の全体でも一部でもよいし、少なくとも一部が直線状などでもよい。
【0057】
そして、ステアリングホイール1は、自動車などの車両だけでなく、任意の乗物のステアリング用のハンドルとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば電気自動車などの自動車のステアリングホイールとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ハンドルであるステアリングホイール
5 把持部としてのリム部
12 被覆部材
19 把持部本体部としてのリム部本体部
20 取付部
21 装飾部
30 一方の分割体
31 他方の分割体
32 分割予定部
33 穴部
36,37 端部