(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030968
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】防草シート
(51)【国際特許分類】
A01M 21/00 20060101AFI20230301BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20230301BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20230301BHJP
D03D 15/37 20210101ALI20230301BHJP
D03D 15/20 20210101ALI20230301BHJP
D03D 15/54 20210101ALI20230301BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A01M21/00 A
D03D11/00 Z
D03D1/00 Z
D03D15/00 B
D03D15/00 E
D03D15/00 102Z
D06M13/224
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136398
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】392002918
【氏名又は名称】日本ワイドクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】廣橋 敏章
(72)【発明者】
【氏名】今西 國廣
(72)【発明者】
【氏名】大石 健治
【テーマコード(参考)】
2B121
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121BB28
2B121BB31
2B121EA21
2B121FA12
4L033AB05
4L033AC07
4L033BA21
4L048AA15
4L048AA37
4L048AA56
4L048AB06
4L048AC01
4L048BA09
4L048CA00
4L048DA28
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】性能の良いフラットヤーンを用いずとも所望の機能を有する防草シートが得られるようにするとともに、光反射機能と防草機能の両立をはかれる多機能の防草シートを提供する。
【解決手段】光遮断性織物13からなる防草シート11において、光遮断性織物13の表面に光反射性織物12を重ねる。光反射性織物12は光遮断性織物13との二重織りで構成するとともに、光反射性織物12と光遮断性織物13の織物組織を絡ませた連結部15を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重織りで構成されて互いに重なり合う光反射性織物と光遮断性織物を有し、
前記光反射性織物と前記光遮断性織物の織物組織を絡ませた連結部が形成された
防草シート。
【請求項2】
二重織りで構成されて互いに重なり合う光反射性織物と光遮断性織物を有し、
前記光反射性織物と前記光遮断性織物の織物組織を絡ませた連結部が形成された
太陽光発電用防草シート。
【請求項3】
二重織りで構成されて互いに重なり合う光反射性織物と光遮断性織物を有し、
前記光反射性織物と前記光遮断性織物の織物組織を絡ませた連結部が形成された
農業用防草シート。
【請求項4】
前記連結部が線状であるとともに、
前記連結部が縦横に交差する格子状をなす
請求項1に記載の防草シート。
【請求項5】
前記光反射性織物が白色のフラットヤーンで構成され、
前記光遮断性織物が黒色のフラットヤーンで構成された
請求項1または請求項2に記載の防草シート。
【請求項6】
前記光反射性織物と前記光遮断性織物に、又はこれらを構成する経糸及び緯糸に、界面活性剤を含有する被覆層が形成された
請求項1、請求項4または請求項5に記載の防草シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光反射機能を有する防草シートに関する。
【背景技術】
【0002】
防草シートに要求される機能には、遮光性や透水性、貫通抵抗力、耐久性(強度、耐候性)がある。つまり、光を遮って雑草が生えないようにし、透水性により水たまりや泥だまりができないようにして草が生えるのを防止する。また、地下茎で成長する草などによって突き破られることを防止し、耐久性によりそれらの効力を維持させる。
【0003】
遮光性を得るため、防草シートの色は一般に黒色であり、黒いフラットヤーンを織って構成される。敷設時の外観を考慮して緑色に構成されるものもある。
【0004】
一例として、下記特許文献1のような防草シートがある。これは、カーボンブラックを含有するポリオレフィン系樹脂から成形される特定の単糸繊度のフラットヤーンを緻密に織成して、遮光率が90%以上、透水度が50~300g/m2・hr、かつ引張強度が100kgf/5cm以上、引裂強度が20kgf以上とした防草シートである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
防草シートは特許文献1のように所望の機能が得られるように工夫されるが、これまでの防草シートは1枚のシート(織物シート)で構成されている。このため、それを構成するフラットヤーンに求められる性能は高度なものとなる。
【0007】
また、防草シートは前述のように一般的に黒色であったが、光反射性と遮熱性を得られるように白色にしたものも提案されている。
【0008】
しかし、白色の防草シートも1枚のシートで構成されているので、光反射性は発揮できるものの、シートが白色であるため一部の光が透過する。このため雑草の繁殖を防止する点では十分ではない。
【0009】
とはいえ、黒色の防草シートでは光反射性が得られず、光合成を促進させたり農業用ハウス内を明るくしたりすることはできない。また、例えば太陽電池パネル設置場所の防草に利用した場合、太陽電池パネルが片面受光型であれば何の不足もないが、両面受光型であるときには裏面での発電ができず、両面で発電することのメリットを享受できない。
【0010】
そこで、この発明は、性能の良いフラットヤーンを用いずとも所望の機能を有する防草シートが得られるようにするとともに、光反射機能と防草機能の両立をはかれる多機能の防草シートを得ることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのための手段は、二重織りで構成されて互いに重なり合う光反射性織物と光遮断性織物を有し、前記光反射性織物と前記光遮断性織物の織物組織を絡ませた連結部が形成された防草シートである。
【0012】
この構成では、光遮断性織物と重なり合う光反射性織物が、光遮断性織物の遮光性、貫通抵抗力、強度といった機能を補う。また、連結部が光反射性織物と光遮断性織物の相互のずれを抑制し、一体性を高める。光反射性織物が表に向けて敷設されると、光反射性織物は受けた光を上方に向けて反射する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、光反射性織物が光遮断性織物の機能を補う構成であるので、光遮断性織物に使用される材料の質を高めずとも、所望の機能を有する防草シートが得られる。特に、二重構造であるので、遮光性や貫通抵抗力、引張強度を十分に得られる。しかも、光反射性織物と光遮断性織物は連結部によって高い一体性を有するので、殊に強度の点ではより十分な引張強度や耐摩耗性を得られる。そのうえ、製造の点では、2枚の織物を貼り合わせる場合と比べて工程を省けて有利であり、施工の点では、固定のための釘などの部材数を低減できるとともに作業時間を短縮できて有益である。
【0014】
そして、太陽光発電用防草シートとして、光反射性織物を上に向けて両面受光型の太陽電池パネル設置場所に敷設すると、光反射性織物で反射した光によって、裏面でも発電ができ、太陽電池パネルの発電量の増大をはかることができる。農業用防草シートとして、光反射性織物を上に向けて農業用ハウス内や果樹園内に敷設すると、トマトやイチゴ等の野菜をはじめ、さくらんぼや桃、イチジク、ぶどう、みかんなどの果樹の光合成促進、果実の色づき向上、地温の上昇抑制をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】防草シートとその経糸及び緯糸の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0017】
図1に、防草シート11の平面図と、その一部の構造を表す拡大図を示す。防草シート11は、光反射機能を有する多機能防草シートであって、特に太陽光発電用防草シートとして、また農業用防草シートとして使用し得るものである。
【0018】
この図に示したように防草シート11は、外観が異なる2枚のシート12,13が重なり合い一体をなすものである。2枚のシートとは、光反射性織物12と光遮断性織物13である。
図1における表面側には光反射性織物12が位置し、裏面側に光遮断性織物13が位置している。光反射性織物12の表裏両面は外観が同じであり、光遮断性織物13の表裏両面も外観は同じである。
【0019】
2枚のシート12,13は、合成樹脂製のフラットヤーンを経糸12a,132a及び緯糸12b,13bにして織って構成したものであり、互いの一部が織成時に一体となる。
【0020】
つまり、防草シート11は、二重織りで構成されて互いに重なり合う光反射性織物12と光遮断性織物13を有している。換言すれば、防草シート11は、光遮断性織物13からなり、光遮断性織物13の表面に光反射性織物12を重ね、この光反射性織物12を光遮断性織物13との二重織りで構成している。
【0021】
図2の(a)は光反射性織物12の、
図2の(b)は光遮断性織物13の一部を拡大した表面図であり、経糸12a,13aと緯糸12b,13bには適宜の有色素材、例えばポリプロピレンやポリエチレン製のものが使用される。
【0022】
光反射性織物12を構成する経糸12aと緯糸12bは共に白色である。一方、光遮断性織物13を構成する経糸13aと緯糸13bは共に黒色である。図面では、黒色であることをあらわすため黒色の経糸13aと緯糸13bにはドットを施している。
【0023】
光反射性織物12と光遮断性織物13を構成する経糸12a,13aと緯糸12b,13bは糸間に隙間ができないようにいずれも密に織り込まれている。この織成に際して、
図1のA部分を示す
図3の平面図に見られるように光反射性織物12と光遮断性織物13の織物組織を絡ませた連結部15が形成されて、前述のように一部が一体となる。連結部15の形成は袋織りにより行える。なお、
図3では図示の便宜上、経糸12a,13aと緯糸12b,13bの間に隙間をあけてあらわしている。
【0024】
連結部15は、
図1に示したように線状であるとともに、連結部15は縦横に交差する格子状をなしている。具体的には、連結部15は一定幅の直線状であり、縦横同じ太さに形成されている。連結部15の太さは十分な強度を有するように適宜設定でき、例えば5mm~10mm程度にするとよい。
図1のA部分は、連結部15が縦横に交差した部分である。
【0025】
連結部15の格子形状は正方形であり、一定の大きさに設定されている。格子形状は正方形に限られず、長方形などであってもよい。連結部15間の長さは適宜設定し得るが、長さを例えば10cmや25cmなどにすることによって、連結部15は使用に際して切り離すときに長さの目安としやすくなる。
【0026】
防草シート11の左右両側縁は耳部16であり、連結部15と同様に光反射性織物12と光遮断性織物13の織物組織を絡ませて一定幅に形成されている。
【0027】
連結部15と耳部16は光反射性織物12と光遮断性織物13の織成と同時に形成される。このため、2枚のシート12,13を別工程で接合する場合と比べて、容易に製造できる。
【0028】
また、防草シート11は高い透水性を有するように、透水性付与加工がなされている。すなわち、
図4の断面図(a)に示したように、光反射性織物12と光遮断性織物13に界面活性剤を含有する被覆層17が形成されている。あるいは、
図4の断面図(b)に示したように、光反射性織物12と光遮断性織物13を構成する経糸12a,13a及び緯糸12b,13bに、界面活性剤を含有する被覆層17が形成されている。なお、
図4の(a)では図示の便宜上、経糸12a,13aと緯糸12b,13bの間に隙間をあけてあらわしている。
【0029】
被覆層17は液状の適宜の界面活性剤を浸漬法、コーティング法、フラッシング法、スプレー法等で適用して形成される。界面活性剤には、特に、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル系化合物が好適に用いられる。これはポリエチレングリコールと飽和乃至不飽和高級脂肪酸カルボン酸とから誘導されたエステル系化合物で、非イオン系界面活性剤に属するものである。具体的には、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどがある。
【0030】
以上のように構成された防草シート11は、太陽光発電用防草シートとして使用する場合、
図5に概略を示すように、太陽電池パネル21を設置する地面22に敷いて使用される。防草シート11の地面22に対する固定は、図示しないペグや重錘などの適宜手段によって行える。
【0031】
図5中、防草シート11を表す破線部分は光反射性織物12を示し、実線は光遮断性織物13を示している。すなわち、防草シート11の敷設に際して、光反射性織物12を表に向ける。
【0032】
防草シート11を農業用防草シートとして使用する場合も同様であり、光反射機能を享受するためには、敷設に際して光反射性織物12を表に向ける。
【0033】
このようにして使用される防草シート11は、表にある光反射性織物12で光を反射して下への透過を制限し、地面側に位置する光遮断性織物13の機能を補う。また、光反射性織物12は光遮断性織物13に対して重なっているので、光遮断性織物13にかかる負荷の一部を受けて、光遮断性織物13が1枚の場合に比べて引張強度や貫通抵抗力を向上する。このため、光遮断性織物13の性能を下げて低コスト化をはかることも可能である。
【0034】
しかも、光反射性織物12と光遮断性織物13は連結部15で一体化されているので、使用時に両者が徒にこすれ合うこともなく、高い一体性が得られ、擦り切れなどを抑制できる。
【0035】
連結部15は線状であるので、全体が厚ぼったくなることはなく、密に織っても通気性を確保でき、防草シート11の過度の昇温も防止できる。
【0036】
しかも、連結部15は格子状に形成されているので、全体に偏りなく均等に一体性を付与できる。そのうえ、固定の際に連結部同士の間が開いていても、風を受けた際に大きく煽られることはなく、安定した敷設状態を維持できる。
【0037】
また、防草シート11は界面活性剤を含有する被覆層17によって良好な透水性を有するので、水たまりや泥だまりができることを確実に防止でき、この点からも高い防草性を得られる。このほか、透水性が良いことから防汚性も得られる。このため、光反射性織物12での光反射機能を良好に維持できる。
【0038】
このように光反射性織物12は防草シート11としての機能を補い、高めるとともに、受けた光を上方へ反射する。しかも、被覆層17の存在によって光反射性は良好であり持続性もある。
【0039】
このため、防草シート11を太陽光発電用防草シートとして使用した場合には、両面受光型の太陽電池パネル21の発電量を増大させることができる。防草シート11を農業用防草シートとして使用した場合には、農業用ハウス内や果樹園の光を必要とする作物の光合成促進や果実の色づき向上をはかることができるうえに、遮熱機能によって農業用ハウス内や果樹園の地温の上昇を抑制できる。
【0040】
なお、光反射機能が不要な場合には、光遮断性織物13を表に向けて敷設してもよい。
【0041】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0042】
例えば、光遮断性織物13は先の例では黒色のフラットヤーンで構成したが、光遮断性を有すれば足り、黒以外の色、例えば緑色や茶色のフラットヤーンで、又はこれを経糸13a又は緯糸13bとして用いて構成するもできる。光反射性織物12についても同様であり、先の例では白色のフラットヤーンで構成したが、光反射性を有すれば足り、白以外の色、例えば銀色のフラットヤーンで、又はこれを経糸12a又は緯糸12bとして用いて構成することもできる。
【符号の説明】
【0043】
11…防草シート
12…光反射性織物
13…光遮断性織物
15…連結部
17…被覆部
21…太陽電池パネル