(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003100
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】往復動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 53/16 20060101AFI20221228BHJP
F04B 9/04 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
F04B53/16 B
F04B9/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104065
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】山中 善尊
(72)【発明者】
【氏名】柴田 達夫
【テーマコード(参考)】
3H071
3H075
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071CC28
3H071CC41
3H071DD06
3H071DD43
3H071DD52
3H071DD60
3H075AA02
3H075BB03
3H075CC16
3H075CC29
3H075DA03
3H075DA04
(57)【要約】
【課題】ポンプ部及び駆動部から漏洩する液体を適切に排液する往復動ポンプを提供する。
【解決手段】往復動ポンプは、第1シリンダ11を含む駆動部10と、第1の端部51aが第1シリンダ11の内側に配置され、第1シリンダ11の軸方向に往復動する往復動部材50と、往復動部材50の端部51aとは逆側の端部53aが内側に配置される第2シリンダ31を含むポンプ部30と、往復動部材50の一部を周方向に囲む略筒形状を有し、第1シリンダ11と第2シリンダ31との間に配置されるシールパッキン押さえ60と、を備え、シールパッキン押さえ60の周壁61には、貫通孔が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動ポンプであって、
第1シリンダを含む駆動部と、
第1の端部が前記第1シリンダの内側に配置され、前記第1シリンダの軸方向に往復動する往復動部材と、
前記往復動部材の第1の端部とは逆側の第2の端部が内側に配置される第2シリンダを含むポンプ部と、
前記往復動部材の一部を周方向に囲む略筒形状を有し、前記第1シリンダと前記第2シリンダとの間に配置されるシールパッキン押さえと、
前記第1シリンダと前記シールパッキン押さえとの間に配置され、前記往復動部材と摺接して第1シリンダ内を液密にシールする環状の第1シールパッキンと、
前記第2シリンダと前記シールパッキン押さえとの間に配置され、前記往復動部材と摺接して第2シリンダ内を液密にシールする環状の第2シールパッキンと、を備え、
前記シールパッキン押さえの周壁には、第1の貫通孔と、前記第1の貫通孔よりも前記軸方向において前記第2シールパッキンに近い位置に形成される第2の貫通孔とが形成されており、
前記往復動ポンプが水平面に載置された状態において、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔は、前記シールパッキン押さえの周壁の下面に形成されている、往復動ポンプ。
【請求項2】
前記第1の貫通孔は、前記軸方向に交差する方向に長手方向を有する第1長孔形状部分を含む、請求項1に記載の往復動ポンプ。
【請求項3】
前記第1の貫通孔は、前記軸方向に長手方向を有する第2長孔形状部分を含む、請求項2に記載の往復動ポンプ。
【請求項4】
前記シールパッキン押さえは、前記周壁から径方向内側に向かって突出し、前記第1シールパッキンに当接する、環状の端壁を含み、
前記第1の貫通孔の周縁の一部は、前記端壁に沿って形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の往復動ポンプ。
【請求項5】
前記シールパッキン押さえは、前記軸方向における前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との間の位置に、前記周壁から径方向内側に向かって突出する、環状の仕切壁を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の往復動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、往復動ポンプが開示されている。このポンプは、駆動部であるクランクケースと、クランクケースに接続されるマニホルドとを含む。クランクケースは、往復動部材を案内する案内部を含み、マニホルドは、往復動部分の先端側が挿通されるポンプ室を含む。案内部とポンプ室との間の部分には、ポンプ室及び案内部との間をそれぞれシール部材で液密に封止した空間が形成されており、当該空間を構成する周壁にはオイルパンに連通する孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような往復動ポンプでは、ポンプ室側のシール部材から漏洩した流体と案内部側のシール部材から漏洩した液体(オイル)とが、案内部とポンプ室との間の部分に形成された孔を介してオイルパンに溜まるようになっている。例えば、案内部とポンプ室との間の部分にオイルが溜まってしまった場合、オイルがポンプ室の内部に侵入することが考えられる。
【0005】
本発明は、ポンプ部及び駆動部から漏洩する液体を適切に排液する往復動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例の往復動ポンプは、第1シリンダ(11)を含む駆動部(10)と、第1の端部(51a)が第1シリンダ(11)の内側に配置され、第1シリンダ(11)の軸方向に往復動する往復動部材(50)と、往復動部材(50)の第1の端部(51a)とは逆側の第2の端部(53a)が内側に配置される第2シリンダ(31)を含むポンプ部(30)と、往復動部材(50)の一部を周方向に囲む略筒形状を有し、第1シリンダ(11)と第2シリンダ(31)との間に配置されるシールパッキン押さえ(60)と、第1シリンダ(11)とシールパッキン押さえ(60)との間に配置され、往復動部材(50)と摺接して第1シリンダ(11)内を液密にシールする環状の第1シールパッキン(70)と、第2シリンダ(31)とシールパッキン押さえ(60)との間に配置され、往復動部材(50)と摺接して第2シリンダ(31)内を液密にシールする環状の第2シールパッキン(49)と、を備え、シールパッキン押さえ(60)の周壁(61)には、第1の貫通孔(67)と、第1の貫通孔(67)よりも軸方向において第2シールパッキン(49)に近い位置に形成される第2の貫通孔(69)とが形成されており、往復動ポンプが水平面に載置された状態において、第1の貫通孔(67)及び第2の貫通孔(69)は、シールパッキン押さえ(60)の周壁(61)の下面に形成されている。
【0007】
上記の往復動ポンプでは、第1シリンダ(11)及び第2シリンダ(31)の内側に配置された往復動部材(50)が軸方向に往復動する。第1シリンダ(11)とシールパッキン押さえ(60)との間に配置された第1シールパッキン(70)は、第1シリンダ(11)内を液密にシールする。同様に、第2シリンダ(31)とシールパッキン押さえ(60)との間に配置された第2シールパッキン(49)は、第2シリンダ(31)内を液密にシールする。そのため、第1シリンダ(11)内及び第2シリンダ(31)内に液体がある場合、第1シールパッキン(70)及び第2シールパッキン(49)は当該液体がシールパッキン押さえ(60)内に漏洩することを抑制している。シールパッキン押さえ(60)の下面には、第1シールパッキン(70)に近い第1の貫通孔(67)と第2シールパッキン(49)に近い第2の貫通孔(69)とが設けられている。これにより、第1シールパッキン(70)側から第1シリンダ(11)内の液体が漏洩した場合、第1の貫通孔(67)から排液されやすく、第2シールパッキン(49)側から第2シリンダ(31)内の液体が漏洩した場合、第2の貫通孔(69)から排液されやすい。このように、それぞれのシリンダ内の液体に対応した貫通孔が設けられているため、シールパッキンから漏洩する液体を適切に排液できる。
【0008】
一例の第1の貫通孔(67)は、軸方向に交差する方向に長手方向を有する第1長孔形状部分(67a)を含んでもよい。この構成では、軸方向に交差する方向に広がった液体を第1の貫通孔(67)に導くことができる。
【0009】
一例の第1の貫通孔(67)は、軸方向に長手方向を有する第2長孔形状部分(67b)を含んでもよい。この構成では、往復動部材(50)を伝って滴下する液体を第1の貫通孔(67)に導くことができる。
【0010】
一例のシールパッキン押さえ(60)は、周壁(61)から径方向内側に向かって突出し、第1シールパッキン(70)に当接する、環状の端壁(63)を含んでいてもよい。第1の貫通孔(67)の周縁の一部は、端壁(63)に沿って形成されていてもよい。この構成では、端壁(63)を伝って移動する液体が周壁(61)を介することなく第1の貫通孔(67)に導かれ得る。
【0011】
一例のシールパッキン押さえ(60)は、軸方向における第1の貫通孔(67)と第2の貫通孔(69)との間の位置に、周壁(61)から径方向内側に向かって突出する、環状の仕切壁(68)を含んでもよい。この構成では、第1シリンダ(11)から漏洩した液体と第2シリンダ(31)から漏洩した液体とが周壁(61)上で混ざり合うことが抑制される。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の一形態によれば、ポンプ部及び駆動部から漏洩する液体を適切に排液する往復動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】一例のシールパッキン押さえを示す斜視断面図である。
【
図3】一例のシールパッキン押さえを示す縦断面図である。
【
図5】他の例のシールパッキン押さえを示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一例の往復動ポンプについて、添付図面を参照しながら説明する。本明細書では、一例の往復動ポンプとして、往復動部材を構成するプランジャが水平方向に3列並設された、いわゆる横型3連プランジャポンプについて説明する。なお、以下の説明において、「上」、「下」は、往復動ポンプが水平面に載置された状態を基準として定義され、「前」、「後」は、往復動部材の軸方向を基準として、ポンプ部側が前、駆動部側が後として定義されている。
【0015】
図1は、往復動ポンプを構成する3つのプランジャポンプのうちの1つを示す断面図である。一例の往復動ポンプ1では、
図1に示すポンプ構成がX方向に沿って3つ並設されている。
図1に示すように、往復動ポンプ1は、駆動部10と、ポンプ部30と、往復動部材50と、シールパッキン押さえ60と、を備える。駆動部10は、第1シリンダ11を含む。一例の第1シリンダ11は、クランクケース13に形成されている。クランクケース13は、中空に構成されている。クランクケース13内には、クランク軸15、クランク軸15に回転可能に連結されたコンロッド17、コンロッド17にプランジャロッド51を回転可能に連結するピストンピン18等が配置され、これらにより、往復動部材50を往復駆動させる駆動機構19が構成される。
【0016】
第1シリンダ11は、円筒状をなしており、クランク軸15の軸方向に直交する軸方向を有する。図示例では、クランク軸15の軸方向はX方向に沿っており、第1シリンダ11の軸方向はY方向に沿っている。第1シリンダ11の内側には、ピストンピン18と、コンロッド17の先端とが配置され得る。
【0017】
クランクケース13内には、駆動機構19の潤滑・冷却用のオイル(第1の液体)が充填されている。そこで、一例のクランクケース13には、内側空間にオイルを注入するための注油口13aと、オイルを排出するためのドレンプラグ13bとが設けられている。また、クランクケース13の外面には、往復動ポンプ1を載置するための脚部13cが形成されている。例えば、水平な床面に脚部13cが当接するように往復動ポンプ1を載置した場合、第1シリンダ11の軸方向は水平面に略平行となる。
【0018】
ポンプ部30は、駆動部10を構成するクランクケース13の前端に連結されている。ポンプ部30は、円筒状をなす第2シリンダ31を含む。一例のポンプ部30は、吐出マニホルドとしての第1マニホルド33と、吸水マニホルドとしての第2マニホルド35とを有する。例えば、第1マニホルド33には、ポンプ室37が設けられている。また、第2マニホルド35は、第1マニホルド33及びクランクケース13に連結されており、ポンプ室37に連通する第2シリンダ31を有している。第2シリンダ31は、円筒状を呈しており、第1シリンダ11の軸線に一致する軸線を有する。
【0019】
クランクケース13に当接する第2マニホルド35には、ポンプ室37に水等の使用液体を導入するための吸入口39が設けられ、第2マニホルド35に当接する第1マニホルド33には、ポンプ室37内で圧縮された使用液体を吐出するための吐出口32が設けられる。吸入口39とポンプ室37とを連通する流路36には、吸入弁38が設けられ、ポンプ室37と吐出口32とを連通する流路41には、吐出弁43が設けられる。
【0020】
第1マニホルド33と第2マニホルド35とは、連通管45を介して接続されている。連通管45は、略円筒状をなす部材であり、第1マニホルド33に形成されたポンプ室37の第2シリンダ31に連通する開口37aと第2マニホルド35に形成された第2シリンダ31とに跨がって配置されている。ポンプ室37と第2シリンダ31との接続部分は、連通管45によって液密に封止されている。第2シリンダ31の内側において、連通管45の後側の位置には高圧シールパッキン47が設けられている。高圧シールパッキン47は、後述のプランジャスリーブ53と摺接して第2シリンダ31内を液密にシールする。
【0021】
第2マニホルド35の第2シリンダ31内において、高圧シールパッキン47よりもクランクケース13側に離れた位置には、高圧シールパッキン47よりもシール圧の低い低圧シールパッキン49(第2シールパッキン)が配置されている。低圧シールパッキン49は、プランジャスリーブ53と摺接して第2シリンダ31内を液密にシールする。また、第2マニホルド35には、高圧シールパッキン47と低圧シールパッキン49との間に、第2シリンダ31内に連通する給水口42及び排水口46が設けられている。給水口42には冷却水が供給され得る。給水口42に供給された冷却水は、第2シリンダ31内において高圧シールパッキン47と低圧シールパッキンとによって封止された空間内を循環する。この冷却水は、高圧シールパッキン47、プランジャスリーブ53及び低圧シールパッキン49を冷却し、排水口46から排水される。
【0022】
往復動部材50は、プランジャロッド51及びプランジャスリーブ53を含む。プランジャロッド51は、第1シリンダ11内に配置される円柱状部分を含んでおり、ピストンピン18を介してコンロッド17に回転可能に連結されている。プランジャスリーブ53は、第2シリンダ31内に配置される円柱状部分を含んでおり、例えばボルト55によってプランジャロッド51の前端に連結されている。一例において、プランジャスリーブ53の直径はプランジャロッド51の直径よりも大きく構成されている。図示例では、プランジャスリーブ53とプランジャロッド51との連結位置において、プランジャスリーブ53の端部に配置された平座金57がプランジャスリーブ53とプランジャロッド51とによって挟持されている。平座金57の直径はプランジャスリーブ53の直径よりも大きい。
【0023】
往復動部材50は、クランク軸15が回転することによって、コンロッド17及びピストンピン18を介して、第1シリンダ11内及び第2シリンダ31内を軸方向に往復動する。往復動部材50が第1シリンダ11内及び第2シリンダ31内を往復動することで、第2シリンダ31の先端側に形成されたポンプ室37でポンプ作用が行われる。この際、プランジャロッド51の後側の端部51a(第1の端部)は第1シリンダ11の内側に配置され、プランジャスリーブ53の前側の端部53a(第2の端部)は第2シリンダ31の内側に配置され得る。プランジャロッド51とプランジャスリーブ53との連結部分は、第1シリンダ11と第2シリンダ31との間に配置されるシールパッキン押さえ60の内側に配置されている。
【0024】
シールパッキン押さえ60は、第1シリンダ11と第2シリンダ31との間に配置されている。シールパッキン押さえ60は、往復動部材50の一部を周方向に囲む略円筒状を有している。例えば、プランジャロッド51とプランジャスリーブ53との連結部分はシールパッキン押さえ60によって囲繞されている。
【0025】
シールパッキン押さえ60は、低圧シールパッキン49を前側に押圧し得る。図示例では、シールパッキン押さえ60と低圧シールパッキン49との間に円筒状のカラー48が配置されており、シールパッキン押さえ60はカラー48を介して低圧シールパッキン49を押圧する。カラー48の内径は、例えばプランジャスリーブ53の外径よりも僅かに大きい。また、カラー48の後端には、外径が小さく形成された段部48aが設けられている。
【0026】
また、シールパッキン押さえ60は、オイルシール70(第1シールパッキン)を保持するとともに、オイルシール70を後側に押圧し得る。オイルシール70は、プランジャロッド51の外周面に液密に摺接する部材であり、クランクケース13内のオイルの漏出を抑制する。例えばオイルシール70は、金属環がゴム部材で被覆された部材であり、円環状をなしている。
【0027】
以下、シールパッキン押さえ60の形状について詳細に説明する。
図2はシールパッキン押さえ60の断面斜視図であり、
図3はシールパッキン押さえ60の縦断面図である。また、
図4は
図1の部分拡大図であり、シールパッキン押さえ及びその周辺を示す断面図である。シールパッキン押さえ60は、略円筒状をなす周壁61と、周壁61から径方向内側に向かって突出する環状の端壁63を含む。また、シールパッキン押さえ60の前端には、内径が他の部分より大きい段部65が形成されている。一例においては、シールパッキン押さえ60の段部65には、カラー48の段部48aが嵌合されている。
【0028】
シールパッキン押さえ60の周壁61には、第1の貫通孔67と、第2の貫通孔69とが形成されている。第1の貫通孔67は、周壁61の内側と外側とを連通する。一例の第1の貫通孔67は、第1長孔形状部分67aと第2長孔形状部分67bとが組み合わされた略T字状を有している。第1長孔形状部分67aは、軸方向に交差するX方向を長手方向とするトラック形状をなしている。第2長孔形状部分67bは、軸方向を長手方向とするトラック形状をなしている。X方向における中心位置が互いに一致するように、第1長孔形状部分67aが第2長孔形状部分67bにおける後側に連続することにより、第1貫通孔は略T字状をなす。
【0029】
第2の貫通孔69は、第1の貫通孔67よりも軸方向において低圧シールパッキン49に近い位置、すなわち前側の位置に形成されている。一例の第2の貫通孔69は、第1長孔形状部分69aと第2長孔形状部分69bとが組み合わされた略T字状を有している。第1長孔形状部分69aは、軸方向に交差する方向を長手方向とするトラック形状をなしている。第2長孔形状部分69bは、軸方向を長手方向とするトラック形状をなしている。X方向における中心位置が互いに一致するように、第1長孔形状部分69aが第2長孔形状部分69bにおける前側に連続することにより、第2の貫通孔69は略T字状をなす。
【0030】
例えば、第1長孔形状部分67a,69aにおける長手方向(X方向)の大きさは、プランジャロッド51の直径と略同じであってよい。なお、プランジャロッド51の直径と略同じとは、一例としてプランジャロッド51の直径との誤差が±20%に収まることをいう。
【0031】
第1の貫通孔67及び第2の貫通孔69は、往復動ポンプ1が水平面に載置された状態において、シールパッキン押さえ60の周壁61の下面側に位置していてよい。一例では、第1の貫通孔67及び第2の貫通孔69のX方向の中心位置がZ方向から見てプランジャロッド51の中心線に一致している。すなわち、第1の貫通孔67及び第2の貫通孔69はプランジャロッド51の直下に位置している。
【0032】
端壁63は、周壁61の軸方向の後端の位置で周壁61から径方向内側に向かって突出している。一例の端壁63は、円環板状を呈している。端壁63の内径は、少なくともプランジャロッド51の外径よりも大きい。図示例では、端壁63よりも後側に周壁61から軸方向に延在する保持部62が形成されている。保持部62は、略円筒状を有している。保持部62の内径は、周壁61の内径よりも小さく、端壁63の内径よりも大きい。保持部62は、オイルシール70を保持する部分である。したがって、保持部62の内径はオイルシール70の外径と同じであってよく、保持部62の軸方向における長さは、オイルシール70の厚さと同じであってよい。なお、一例の往復動ポンプ1では、シールパッキン押さえ60の後端部が第1シリンダ11の開口部分に嵌合されている。第1シリンダ11の開口部分には、円環板状の位置決め部材12が配置されている。シールパッキン押さえ60の後側への移動は、位置決め部材12によって規制されている。また、位置決め部材12は、保持部62に保持されたオイルシール70の脱落を防止している。例えば、オイルシール70が保持部62に保持された状態では、オイルシール70は、端壁63及び位置決め部材12に当接している。
【0033】
なお、一例において、シールパッキン押さえ60の後端部と第1シリンダ11の開口部分とは、互いに係合する一対の係合部を有し、シールパッキン押さえ60の周方向の位置決めを行ってもよい。一対の係合部は、切欠きと切欠きに係合する凸部、軸方向に形成された凹部と凹部に係合する凸部などのように、周方向の位置決めが可能であれば特に限定されない。このような一対の係合部を含む構成では、第1の貫通孔67及び第2の貫通孔69が周方向の下面側となるように、シールパッキン押さえ60を容易に配置できる。
【0034】
保持部62の外周には、周方向に連続して形成された凹部62aが設けられている。凹部62aには、Oリング66が配置されている。Oリング66は、保持部62の外周と第1シリンダ11の開口部分の内周との間を液密に封止している。
【0035】
また、一例のシールパッキン押さえ60は、円環状の仕切壁68を含む。仕切壁68は、軸方向における第1の貫通孔67と第2の貫通孔69との間の位置において、周方向に連続して形成されている。仕切壁68は、周壁61から径方向内側に向かって突出している。仕切壁68の内径は、少なくとも平座金57の外径よりも大きい。
【0036】
また、仕切壁68から第1の貫通孔67までの軸方向における距離L1は、仕切壁68の高さL2よりも小さい。同様に、仕切壁68から第2の貫通孔69までの軸方向における距離L3は、仕切壁68の高さL2よりも小さい。なお、仕切壁68の高さL2は、周壁61の内面からの突出方向(径方向)における大きさである。
【0037】
また、第1の貫通孔67の周縁の一部は、端壁63に沿って形成されている。一例において、第1の貫通孔67は、端壁63の外縁に沿って形成された周縁を含む。図示例では、第1の貫通孔67を構成する第1長孔形状部分67aの長手方向に沿った周縁のうち軸方向の後側の周縁67a1の位置が端壁63の外縁の位置に実質的に一致している。
【0038】
以上説明したように、一例の往復動ポンプ1は、第1シリンダ11を含む駆動部10と、端部51aが第1シリンダ11の内側に配置され、第1シリンダ11の軸方向に往復動する往復動部材50と、往復動部材50の端部51aとは逆側の端部53aが内側に配置される第2シリンダ31を含むポンプ部30と、往復動部材50の一部を周方向に囲む略筒形状を有し、第1シリンダ11と第2シリンダ31との間に配置されるシールパッキン押さえ60と、第1シリンダ11とシールパッキン押さえ60との間に配置され、往復動部材50と摺接して第1シリンダ11内を液密にシールする環状のオイルシール70と、第2シリンダ31とシールパッキン押さえ60との間に配置され、往復動部材50と摺接して第2シリンダ31内を液密にシールする環状の低圧シールパッキン49と、を備える。シールパッキン押さえ60の周壁61には、第1の貫通孔67と、第1の貫通孔67よりも軸方向において低圧シールパッキン49に近い位置に形成される第2の貫通孔69とが形成されている。往復動ポンプ1が水平面に載置された状態において、第1の貫通孔67及び第2の貫通孔69は、シールパッキン押さえ60の周壁61の下面に形成されている。
【0039】
上記の往復動ポンプ1では、クランク軸15が回転し、コンロッド17及びピストンピン18を介してクランク軸15に連結された往復動部材50が往復動する。吸水工程において、往復動部材50が駆動部10側へ向かい後退移動することによってポンプ室37が減圧される。これにより、第1マニホルド33の吸入弁38が開となり、吐出弁43がそれぞれ閉となる。使用液体は、吸入口39及び吸入弁38を通してポンプ室37へ吸入される。一方、吐出工程において、往復動部材50はポンプ部30側へ向かい前進移動することによってポンプ室37が加圧される。これにより、吸入弁38が閉となり、吐出弁43が開となる。ポンプ室37の使用液体は吐出弁43を通して吐出口32へ吐出される。すなわち、ポンプ作用が行われる。
【0040】
第1シリンダ11とシールパッキン押さえ60との間に配置されたオイルシール70は、第1シリンダ11内を液密にシールする。同様に、第2シリンダ31とシールパッキン押さえ60との間に配置された低圧シールパッキン49は、第2シリンダ31内を液密にシールする。これにより、オイルシール70は第1シリンダ11内のオイルがシールパッキン押さえ60内に漏洩することを抑制している。また、低圧シールパッキン49は第2シリンダ31内の冷却水及び使用流体がシールパッキン押さえ60内に漏洩することを抑制している。
【0041】
老朽化等によって低圧シールパッキン49及びオイルシール70の封止性能が低下した場合、オイルシール70とプランジャロッド51との間からオイルが漏洩し、低圧シールパッキン49とプランジャスリーブ53との間から冷却水が漏洩し得る。漏洩したオイル等はシールパッキン押さえ60を介して排出される。例えば、漏洩したオイルがシールパッキン押さえ60の内側に溜まってしまうと、プランジャスリーブ53に接触したオイルが低圧シールパッキン49とプランジャスリーブ53との間から第2シリンダ31内に入り込むことが考えられる。上記の往復動ポンプ1では、シールパッキン押さえ60の周壁61に、第1の貫通孔67が設けられている。これにより、オイルシール70側から第1シリンダ11内のオイルが漏洩した場合、当該オイルは第1の貫通孔67から容易に排液される。
【0042】
また、低圧シールパッキン49から漏洩があったとしても、漏洩した冷却水は第2の貫通孔69から容易に排液される。このように、それぞれのシリンダ内の液体に対応した貫通孔が設けられているため、シールパッキンから漏洩する液体を適切に排液できる。
【0043】
一例の第1の貫通孔67は、軸方向に交差する方向に長手方向を有する第1長孔形状部分を含んでいる。この構成では、軸方向に交差する方向に広がった液体を第1の貫通孔67に容易に導くことができる。
【0044】
一例の第1の貫通孔67は、軸方向に長手方向を有する第2長孔形状部分を含んでいる。この構成では、プランジャを伝って滴下する液体を第1の貫通孔67に容易に導くことができる。
【0045】
一例のシールパッキン押さえ60は、環状の端壁63を含んでおり、端壁63は、周壁61から径方向内側に向かって突出し、オイルシール70に当接している。この構成では、オイルシール70から漏洩したオイルは端壁63を伝って移動しやすい。一例の往復動ポンプ1においては、第1の貫通孔67の周縁の一部(周縁67a1)は、端壁63に沿って形成されている。そのため、端壁63を伝って移動したオイルは、周壁61を介することなく第1の貫通孔67に導かれやすい。
【0046】
また、シールパッキン押さえ60は、仕切壁68を有さなくてもよい。この場合、オイルシール70から漏洩したオイルと低圧シールパッキン49から漏洩した冷却水とがシールパッキン押さえ60の内側で混ざり合うことが考えられる。オイルと冷却水とが混ざり合った場合、この混合液は、それぞれの漏洩部分に接し得る。この場合、例えば、オイルを含む混合液が低圧シールパッキン49とプランジャスリーブ53との接触部分から第2シリンダ31内に入り込むことが考えられる。一例のシールパッキン押さえ60は、軸方向における第1の貫通孔67と第2の貫通孔69との間の位置に、周壁61から径方向内側に向かって突出する、環状の仕切壁68を含んでもいる。この構成では、第1シリンダ11から漏洩した液体と第2シリンダ31から漏洩した液体とが周壁61上で混ざり合うことが抑制される。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の具体的形態は上記の例に限定されない。
【0048】
図5は、シールパッキン押さえの他の形状を示す断面斜視図である。一例においては、往復動ポンプ1のシールパッキン押さえ60に代えて
図5のシールパッキン押さえ160を利用することができる。シールパッキン押さえ160は、第1の貫通孔及び第2の貫通孔の形状のみにおいて、シールパッキン押さえ60と相違している。すなわち、シールパッキン押さえ160は、周壁61、端壁63、保持部62等を含む。
【0049】
シールパッキン押さえ160の第1の貫通孔167は、周壁61の内側と外側とを連通する。第1の貫通孔167は、シールパッキン押さえ60の第1の貫通孔67における第1長孔形状部分67aと同様に、長孔形状を有している。すなわち、第1の貫通孔167は、軸方向に交差する方向を長手方向とするトラック形状をなしている。また、第1の貫通孔167の長手方向に沿った周縁のうち軸方向の後側の周縁167aの位置は、端壁63の外縁の位置に実質的に一致している。
【0050】
シールパッキン押さえ160の第2の貫通孔169は、第1の貫通孔167よりも軸方向において低圧シールパッキン49に近い位置、すなわち前側の位置に形成されている。一例の第2の貫通孔169は、シールパッキン押さえ60の第2の貫通孔69における第1長孔形状部分69aと同様に、長孔形状を有している。すなわち、第2の貫通孔169は、軸方向に交差する方向を長手方向とするトラック形状をなしている。
【0051】
なお、第1の貫通孔167及び第2の貫通孔169の形状は、上記の例示した形状に限定されない。例えば、第1の貫通孔167及び第2の貫通孔169の形状は、円形、楕円形、半円形等であってもよいし、三角形、四角形等の多角形であってもよい。また、第1の貫通孔167と第2の貫通孔169とは互いに異なる形状を有していてもよい。なお、例えば、第2の貫通孔69を有しておらず、第1の貫通孔67のみを有するシールパッキン押さえを利用した場合、漏洩したオイルと冷却水とが混ざり合う可能性があるが、この場合であっても、漏洩したオイルは、端壁を伝って移動し、周壁を介することなく第1の貫通孔に導かれやすい。
【符号の説明】
【0052】
1…往復動ポンプ、10…駆動部、11…第1シリンダ、30…ポンプ部、31…第2シリンダ、49…低圧シールパッキン(第2シールパッキン)、50…往復動部材、60…シールパッキン押さえ、61…周壁、67…第1の貫通孔、69…第2の貫通孔、70…オイルシール(第1シールパッキン)。