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特開2023-31006触媒構造体、燃料改質方法および燃料改質システム
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  • 特開-触媒構造体、燃料改質方法および燃料改質システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031006
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】触媒構造体、燃料改質方法および燃料改質システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/83 20060101AFI20230301BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20230301BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20230301BHJP
   F02M 27/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B01J23/83 M
B01J23/89 M
C01B3/38
F02M27/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136456
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】小島 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】古川 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】嶋根 直人
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕基
(72)【発明者】
【氏名】本田 紘一郎
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EC02
4G140EC03
4G140EC04
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC31A
4G169BC40B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC66A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC75A
4G169CB81
4G169CC17
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA18
4G169EB14Y
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC04Y
4G169EC22Y
4G169FA02
4G169FA06
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】優れた改質活性と、触媒被毒等の劣化要因に対する耐久性に優れ、ロジウムの使用量を最小化した燃料改質触媒を提供する。
【解決手段】排ガスと炭化水素類を含む燃料とから、水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒であって、触媒成分と前記触媒成分が担持された担体とを備え、前記触媒成分はニッケルを含み、前記担体は、ジルコニウムまたはセリウムを含む金属酸化物を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスと炭化水素類を含む燃料とから、水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒であって、
触媒成分と前記触媒成分が担持された担体とを備え、
前記触媒成分はニッケルを含み、
前記担体は、ジルコニウムまたはセリウムを含む金属酸化物を含む、
燃料改質触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物が酸化セリウムである、請求項1に記載の燃料改質触媒。
【請求項3】
前記触媒成分がロジウムをさらに含む、請求項1または2に記載の燃料改質触媒。
【請求項4】
前記担体に、ニッケルおよびロジウムが共担持されている、請求項3に記載の燃料改質触媒。
【請求項5】
前記ロジウムの含有量が、1.2g/L以下であり、ニッケルの含有量が2.0g/L以上である、請求項3または4に記載の燃料改質触媒。
【請求項6】
前記触媒成分は、白金、鉄、銅およびルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料改質触媒を用いた燃料改質方法であって、
炭化水素類を含む燃料を、排気ガスに含まれる水蒸気の存在下で前記燃料改質触媒と接触させて、水素および一酸化炭素を生成することを含む、方法。
【請求項8】
内燃機関からの燃焼後排ガスおよび請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料改質触媒により、炭化水素類を含む燃料の一部または全部を水素および一酸化炭素に改質し、得られた水素および一酸化炭素を、内燃機関へ供給する燃料に添加する、ことを含む燃料改質エンジンシステム。
【請求項9】
燃料改質触媒がハニカム形状を有する基材に保持されている、請求項8に記載の燃料改質エンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒構造体に関する。より具体的には、炭化水素類を含む燃料を水蒸気により改質して水素を含む合成ガスに改質するための内燃機関用燃料改質触媒構造体、燃料改質方法および燃料改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、窒素酸化物の低減や燃費向上のため、燃焼後の排気ガスの一部を取り入れ再度吸気させる排気再循環(EGR)システムが知られている。近年、EGRシステムに熱交換型燃料改質器と燃料供給手段(燃料噴射弁)とを組み合わせて、燃料の一部を燃料改質器に通した後、気筒内で燃焼させる燃料改質エンジンシステムが提案されている。燃料改質エンジンシステムは、通常のEGRシステムに比べて、熱効率が大幅に向上するという利点がある。これは、内燃機関からの排気ガス中に含まれるHO(水蒸気)と排気ガスの熱を利用して、水蒸気改質反応により燃料の一部から水素および一酸化炭素を生成させ、これらを内燃機関に燃料とともに供給することによって熱効率を向上させるものである。なお、排気ガスの熱は、水蒸気改質反応の吸熱反応に利用される。
【0003】
例えば、特許文献1は、水素富化手段として燃料を用いた燃料改質エンジンシステムに使用される触媒として、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)から選ばれる少なくとも1種の金属触媒成分と、セリア、ジルコニア、アルミナおよびチタニアから選ばれる少なくとも1種の酸化物またはこれらを基本組成とした複合酸化物とを含む燃料改質触媒を開示している。
【0004】
また、特許文献2は、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも1種の金属酸化物と、Pt、Rh、PdおよびNiより選ばれた少なくとも1種の金属成分と、酸化ケイ素とを含む燃料改質触媒を開示している。
【0005】
さらに、特許文献3は、活性金属種であるRhを、セリア-ジルコニア-アルミナ複合酸化物担体に担持した水蒸気改質触媒を提案しており、E20ガソリンの水蒸気改質を行ったことを開示している。
【0006】
一般に自動車排ガスを含む条件で燃料の水蒸気改質反応を行う場合、排ガスには炭化水素に起因するカーボン、NOx、硫黄といった被毒成分が含まれるため、触媒には、それら被毒物質存在下で10年ないし15年の長期にわたり性能低下を起こさないといった実用性が求められる。そのため、特許文献1~3に記載されているようにセリア系粒子またはアルミナ系粒子にロジウムが担持された触媒が内燃機関用途に好適に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-196837号公報
【特許文献2】特開2008-55252号公報
【特許文献3】特開2018-143988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロジウムは触媒活性成分として有用な貴金属元素である一方、希少かつ高価であるため、使用量を低減することが試みられている。特に、2021年4月現在、ロジウムの価格は約10万円/gまで高騰し、これは2020年4月に比べ、5倍近い価格である。これは特許文献3の改質触媒(ロジウム含有量4.8g/L)を想定した場合、ロジウム価格だけで約48万円となり、自動車等の内燃機関用途にロジウムを使用した触媒を使用することが現実的に困難になりつつある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、優れた改質活性と、触媒被毒等の劣化要因に対する耐久性に優れ、ロジウムの使用量を最小化した燃料改質触媒を提供することを目的としている。
また、本発明の別の目的は、該触媒構造体を用いた燃料改質方法および燃料改質エンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ニッケルを主たる触媒活性成分として使用し、ニッケルを特定の金属酸化物に担持した触媒とすることで、上記課題を解決できること見出した。また、触媒活性成分が主としてニッケルを含み、微量のロジウムをさらに含むことで、ロジウム量を大幅に低減した触媒であっても、ロジウムを主たる触媒活性成分とした従来の触媒に近い性能が得られることを見出した。本発明は係る知見に基づくものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0011】
[1] 排ガスと炭化水素類を含む燃料とから、水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒であって、
触媒成分と前記触媒成分が担持された担体とを備え、
前記触媒成分はニッケルを含み、
前記担体は、ジルコニウムまたはセリウムを含む金属酸化物を含む、
燃料改質触媒。
[2] 前記金属酸化物が酸化セリウムである、[1]に記載の燃料改質触媒。
[3] 前記触媒成分がロジウムをさらに含む、[1]または[2]に記載の燃料改質触媒。
[4] 前記担体に、ニッケルおよびロジウムが共担持されている、[3]に記載の燃料改質触媒。
[5] 前記ロジウムの含有量が、1.2g/L以下であり、ニッケルの含有量が2.0g/L以上である、[3]または[4]に記載の燃料改質触媒。
[6] 前記触媒成分は、白金、鉄、銅およびルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒を用いた燃料改質方法であって、
炭化水素類を含む燃料を、排気ガスに含まれる水蒸気の存在下で前記燃料改質触媒と接触させて、水素および一酸化炭素を生成することを含む、方法。
[8] 内燃機関からの燃焼後排ガスおよび[1]~[6]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒により、炭化水素類を含む燃料の一部または全部を水素および一酸化炭素に改質し、得られた水素および一酸化炭素を、内燃機関へ供給する燃料に添加する、ことを含む燃料改質エンジンシステム。
[9] 燃料改質触媒がハニカム形状を有する基材に保持されている、[8]に記載の燃料改質エンジンシステム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ニッケルを主たる触媒活性成分として使用し、ニッケルを特定の金属酸化物に担持した触媒とすることで、ロジウム量を大幅に低減した触媒であっても、ロジウムを主たる触媒活性成分とした従来の触媒に近い性能を有する燃料改質触媒を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、基材の一実施形態を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<燃料改質触媒>
本発明の一実施形態による燃料改質触媒は、排ガスと炭化水素類を含む燃料とから、水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒であって、触媒成分と前記触媒成分が担持された担体とを備え、前記触媒成分はニッケルを含み、前記担体は、ジルコニウムまたはセリウムを含む金属酸化物を含むものである。以下、本明細書においては、担体に担持された触媒成分および必要に応じて用いられる助触媒成分を併せて「触媒活性種」と呼ぶ場合がある。また、燃料改質触媒(即ち、触媒成分および助触媒成分と、両成分を担持する担体とを備えた触媒)を保持する部材を「基材」と呼ぶ場合がある。
【0015】
[触媒成分]
本発明による燃料改質触媒に使用される触媒成分は、ニッケル(Ni)を主とした触媒活性種を含む。本発明においては、触媒成分としてNi以外の触媒活性種が含まれていてもよく、白金族金属元素や遷移金属元素が含まれていてもよい。白金族金属元素としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)が挙げられ、これらのなかでも、改質反応における触媒活性や被毒耐性の観点から、Ru、Rh、Ptが好ましい。また、遷移金属元素としては、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)が挙げられ、これらのなかでも、改質反応における触媒活性や被毒耐性の観点から、FeおよびCuが好ましい。これら元素は単独で使用されてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明においては、改質反応における触媒活性や被毒耐性の観点から、RhをNiと併用するのが特に好ましい。また、Niと併用される触媒活性種は、Rhに加えて、Ru、Pt、Fe、Cuから選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0017】
本発明において、Niの含有量は、改質反応における触媒活性や被毒耐性の観点から、0.1g/L以上であることが好ましく、主としてRhを触媒成分として含む触媒と同等の性能を維持する観点からは1g/L以上、50g/L以下であることがより好ましく、3g/L以上、20g/L以下が更に好ましい。また、RhをNiと併用する場合であっても、触媒の製造コストを考慮すると、Rhの含有量を1.2g/L以下、Niの含有量を2.0g/L以上とすることが好ましく、Rhの含有量を0.5g/L以下、Niの含有量を5.0g/L以上とすることがより好ましい。
【0018】
触媒成分がNiおよびRh以外の元素を含む場合の割合は特に制限されないが、Ni100質量部に対して、NiおよびRh以外の元素を通常1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは100質量部以上であり、一方上限は通常5000質量部以下、好ましくは3000質量部以下、より好ましくは2000質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下である。割合が上記範囲であると、燃料改質触媒としての性能が向上するとともに硫黄などの被毒物質による失活を抑制することができる。
【0019】
[助触媒成分]
本発明による燃料改質触媒は触媒活性種として、上記した触媒成分に加えて、助触媒成分が含まれていてもよい。触媒媒成分としては、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm) 、サマリウム(Sm) 、ユウロピウム(Eu) 、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等の希土類元素;バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属等が挙げられる。これらの中でも、水蒸気改質反応により生成する水素の発生能力の観点および燃料に含まれる硫黄分による失活耐性の観点から、Nd、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Ba、Ni、Srが好ましく、Ndがより好ましい。希土類元素であるNdを含む助触媒成分と触媒成分とを併用することにより、触媒成分に対して助触媒成分が電子的な相互作用を及ぼし、NdによってNiやRhが還元された状態をとりやすくなり、触媒成分単独とした場合に比べて触媒活性が向上するものと考えられる。
【0020】
触媒成分と助触媒成分との割合は特に制限されないが、触媒成分100質量部に対して、助触媒成分は通常10質量部以上、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、上限は通常2000質量部以下、好ましくは1000質量部以下である。両者の割合が上記範囲であると、触媒成分の触媒活性(燃料改質能力)が向上すると共に、硫黄などの被毒物質による失活を抑制することができる。
なお、触媒成分および助触媒成分として複数の元素が含まれている場合の配合割合は、その総和を意味するものとする。
【0021】
上記した触媒活性種(触媒成分および助触媒成分)の担持量は特に制限されず、目的とする設計条件やコスト要求等に応じて適宜必要量担持させればよいが、金属換算で担体100質量部に対して0.05質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。触媒活性種の担持量が少ないと炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応において十分な触媒活性が得られない傾向にあり、一方、担持量が多すぎると、金属元素が粗大粒子化し、触媒活性種の単位量あたりの触媒活性が向上しない傾向にある。触媒性能とコストとの両立を考慮すると、触媒活性種の担持量は、担体100質量部に対して0.4質量部以上8質量部以下であることがより好ましい。
【0022】
担体に担持される触媒活性種(触媒成分および助触媒成分)は粒子状の形態で担持されていることが好ましい。この場合の触媒活性種の粒子径は、触媒活性の観点からは、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは2~50nmである。触媒活性種の粒子径が小さすぎると触媒活性を示さない酸化物状態になりやすい傾向にあり、一方、粒子径が大きすぎると、活性サイトの量が減少し、触媒活性種の単位量あたり触媒活性が低下する傾向にある。
【0023】
触媒活性種を上記したような所定の粒子径となるようにするには、例えば、触媒成分の供給源(一例として、上記した元素の硝酸塩または酢酸塩)および助触媒成分の供給源(一例として、上記した元素の硝酸塩または酢酸塩)を含有する溶液に、担体を浸漬して所定量の溶液を担体に含浸させた後、これを焼成することによって担体に触媒を担持する方法を用い、当該溶液濃度(触媒活性種の濃度)や当該溶液の含浸量、焼成条件(温度および時間)を制御することにより、触媒粒子の粒子径を調整することができる。
【0024】
本発明による燃料改質触媒は、上記した触媒活性種が担体に担持されたものであるが、触媒活性種以外の他の成分を含有していてもよい。但し、担体を除く燃料改質触媒のうち、上記した触媒活性種の割合が70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、特に95質量%以上(100質量%含む)であることが好ましい。
【0025】
[担体]
上記した触媒活性種を担持する担体として、ジルコニウムまたはセリウムを含む金属酸化物を使用する。本発明の触媒は、上記したようなニッケルを主たる触媒成分とするものであるが、触媒成分を担持する担体として上記金属酸化物を用いることにより、ロジウム量を大幅に低減した触媒であっても、ロジウムを主たる触媒活性成分とした従来の触媒に近い性能を有する燃料改質触媒を実現することができる。この理由は定かではないが、以下のように推測できる。
即ち、ニッケル等遷移金属活性点は酸素共存下で容易に酸化されて、改質活性が低いNiO等の状態になる。Rhが微量存在すると、Rhによる酸素消費(CO酸化)やH生成等によって、Niがメタル状態を取りやすいと推測できる。
【0026】
担体として、ジルコニウム酸化物(ZrO)およびセリウム酸化物(CeO)以外の公知の担体が含まれていてもよく、例えば、α、γ、δ、θなどのアルミナ(Al)、チタニア(TiO)、シリカ(SiO)、またはこれらの複合酸化物が含まれていてもよい。
【0027】
触媒成分がNiに加えて他の元素を含む場合、それぞれの触媒成分は別の担体に担持されていてもよいし、同じ担体に担持されていてもよいが、NiとRhとを併用する場合は、同じ担体に共担持されていることが好ましい。
【0028】
担体の形状は特に制限されるものではないが、粒子形状であることが好ましい。担体粒子の平均粒子径(D50)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、大きな比表面積を保持させるとともに耐熱性を高めて自身の触媒活性サイトの数を増大させる等の観点から、0.5~30μmが好ましく、1~20μmがより好ましく、3~15μmさらに好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定されるメディアン径を意味する。
【0029】
本発明の燃料改質触媒に使用される担体は多孔質体であることが好ましい。多孔質体としては、BET比表面積が30m/g~600m/gのものが挙げられる。多孔質体とするには、後記するような従来公知の方法により担体を作製する。例えば、触媒活性種成分および担体成分と、バインダー、造孔剤、溶媒等を、ボールミル等により混練することによりスラリーを調製し、所望の形状に成形した後に乾燥、焼成することにより造孔剤やバインダーが除去され、担体中に細孔が形成される。
【0030】
<燃料改質触媒の製造方法>
上記した燃料改質触媒は、触媒活性種成分(触媒成分および助触媒成分)を担体に担持することによって得ることができる。担持方法は特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用することができ、例えば、触媒成分の供給源(一例として、元素の硝酸塩または酢酸塩)、および必要に応じて助触媒成分の供給源(一例として、元素の硝酸塩または酢酸塩)を含む混合触媒溶液を担体に含浸させた後、還元や焼成を行うことで、担体上に触媒活性種成分を粒子状に析出させることができる。あるいは、触媒成分供給源を先に担体に含浸させ、次いで助触媒成分供給源を担体に含浸させた後に還元や焼成を行うことで両者を担持させたり、逆に、助触媒成分供給源を先に担体に含浸させ、次いで触媒成分供給源を担体に含浸させた後に還元や焼成を行うことで両者を担持させてもよい。その後必要に応じて、洗浄、焼成、水素還元等の処理を行うことで、燃料改質触媒を製造することができる。
【0031】
触媒活性種成分の供給源としては、上記した元素の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン塩等またはそれらの錯体が挙げられる。例えば、ニッケルの酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアミン塩等またはそれらの錯体の溶液が挙げられ、それらのなかでも硝酸塩が好ましい。また、白金族金属元素としてロジウムを併用する場合は、担持されやすさと高分散性の観点から、ロジウムの酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアミン塩等またはそれらの錯体が挙げられ、それらのなかでも硝酸塩が好ましい。
【0032】
[触媒構造体]
上記した燃料改質触媒を、例えば内燃機関向けの燃料改質装置に用いる場合は、基材に、燃料改質触媒が保持された触媒構造体として用いることが好ましい。基材は、後記する触媒層を支持でき、ある程度の耐火性を有する材料からなるものであれば特に制限なく、従来公知のものを使用することができる。例えば、基材の材料として、アルミナ、シリカ、ムライト(アルミナ-シリカ)、コージェライト、コージェライト-アルファアルミナ、ジルコンムライト、アルミナ-シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルミノシリケート類、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックスや、耐火性金属、例えばステンレス鋼または鉄を基とするフェライト系ステンレス等の耐食性合金等の金属材料を挙げることができる。上記した無機または金属材料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記したなかでも、アルミナ、シリカ、ムライト、コージェライト、ステンレススチール、炭化ケイ素が好ましく、コージェライト、ステンレススチール、炭化ケイ素を含むものがより好ましい。この場合、基材全体に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは99質量%以上(100質量%を含む)が上記材料からなる基材を用いるとよい。
【0033】
また、基材は、上記した材料を主成分として他の成分が含まれていてもよい。例えば、担体の耐熱性向上で知られているようなFe、SiO、NaO等を上記した材料に添加してもよい。
【0034】
基材の形状も特に制限されるものではなく、球状、円柱状、ビーズ状、ペレット状、角柱状、打錠状、針状、膜状、ハニカムモノリス状等、用途に応じて種々の形状とすることができる。これらのなかでも、ビーズ状、ペレット状、ハニカムモノリス状であるのが好ましい。したがって、本発明における好ましい実施形態による基材は、材料として、アルミナ、シリカ、ムライト、コージェライト、ステンレススチールからなり、その形状は、ビーズ状、ペレット状またはハニカムモノリス状であるものが好ましく、コージェライト製のハニカムモノリスがより好ましい。
【0035】
基材の形状がビーズ状またはペレット状である場合の基材の平均径は、ハンドリング性や容器内での流動性の観点から、0.5mm以上10mm以下であるのが好ましく、0.7mm以上5mm以下であるのがより好ましく、1mm以上3mm以下であるのがさらに好ましい。また、担体の形状が球状である場合の担体の平均径(直径)は、ハンドリング性や容器内での流動性の観点から、1mm以上10mm以下であるのが好ましく、1mm以上5mm以下であるのがより好ましい。なお、担体の平均径は、光学顕微鏡などを用いて観察し、任意に選択した100個の担体(触媒粒子)の長径および短径を測定して長径と短径の平均を粒子径として算出し、100個の個々の粒子の粒子径の平均値を算出することにより求めることができる。
【0036】
ハニカムモノリス状の形状を有する基材の一実施形態を図面を参照しながら説明する。基材1は、円筒外周面10、入口端部20、および出口端部30を有する円筒状の形状である。基材1は、基材1中に形成された複数の微細な平行のガス流通通路40を備える。流通通路40は、壁部により区画され、入口端部20から出口端部30まで基材1を貫通して延び、排ガス流の流動を可能にするように形成されている。区画する壁部は、排ガスの流通通路40が、実質的に規則的な多角形の形状、例えば正方形を有していてもよい。
【0037】
基材1は、排ガス流動方向に沿って所定長さを有する。基材の長さは、外径にもよるが25.4~400mm程度である。また、基材の外径は76.5mm~400mm程度である。壁部により区画される一つの流通通路40の大きさは、流通通路40の断面が正方形である場合には、一辺が1.0~2.15mm程度である。
【0038】
触媒構造体は、一例として、触媒成分の金属塩、助触媒成分の金属塩、担体、適宜必要に応じてバインダー、分散剤および溶媒を混合してスラリー溶液を調製し、該スラリー溶液をウォッシュコート法等で基材に含浸させ、スラリー溶液を含浸させた基材を焼成することにより燃料改質触媒が保持されたハニカム触媒を得ることができる。
【0039】
上記スラリー溶液の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水および蒸留水等の純水)等の溶媒が挙げられる。
【0040】
スラリー溶液を含浸させた基材を焼成する際の温度は、特に制限されないが通常は200℃以上、800℃以下である。焼成温度が低すぎると触媒活性種元素の供給源が十分に熱分解せず、触媒活性を示すメタル状態になりにくくなるため、活性が低くなる傾向にある。一方、焼成温度が高すぎると、担持した触媒活性種元素が粗大粒子化して炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応における触媒活性が低下する傾向にある。
【0041】
また、焼成する時間も適宜調整することができるが、通常は0.1時間以上、100時間以下であることが好ましい。焼成時間が短すぎると触媒活性種元素の供給源物が十分に熱分解せず、触媒活性を示すメタル状態になりにくくなるため、活性が低くなる傾向にある。一方、焼成時間を必要以上に長くしても効果は得られず、コストと単位時間あたりの生産量が低下する傾向にある。
【0042】
担持された触媒活性種の量は、ICP発光分光分析装置によって測定することができる。担体に含浸させる各供給源の濃度や量を適宜調整することにより、触媒成分の100質量部に対して、助触媒成分を50質量部以上、1000質量部以下の量で担持させることができる。
【0043】
<燃料改質触媒の用途>
本発明による燃料改質触媒は、内燃機関向けのEGR用途はもちろんのこと、そのまま単独の触媒として使用することもでき、水蒸気改質反応に係わる様々な装置における触媒として利用可能である。例えば製油所などの水素プラントや、定置型分散電源における燃料電池用水素製造装置、天然ガスからの水素製造装置等にも適用することができる。
【0044】
<燃料改質方法>
本発明による燃料改質触媒を用いることによって、炭化水素を水蒸気改質することができる。すなわち、炭化水素を含む燃料を水蒸気の存在下で燃料改質触媒と接触させて、水素および一酸化炭素を生成させることができる。
【0045】
本発明の燃料改質方法において、炭化水素類を含む燃料と水蒸気とはそれぞれ独立して反応装置に供給してもよいし、予めこれらを混合した後、反応装置に供給してもよい。
反応装置に水蒸気を供給する際は、改質後の水素燃焼後の排ガスを反応装置に提供する方法を用いると、別途水蒸気供給源を用意しなくともよくなるため装置が簡便となり好ましい。
【0046】
燃料に含まれる炭化水素類としては特に制限はなく、例えば、アルカン類、アルケン類、アルキン類、芳香族化合物、アルコール類、アルデヒド類等が含まれるものが挙げられ、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖状または分岐状の飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式飽和炭化水素、単環または多環芳香族炭化水素等のガス状または液状の炭素数が2以上12以下の炭化水素類が好ましく、炭素数2以上8以下の炭化水素がより好ましい。これらのなかでも飽和脂肪族炭化水素が好ましく、燃料の50%以上が飽和脂肪族炭化水素であることがより好ましい。
【0047】
また、炭化水素類からなる燃料としては、エタノール、ガソリン、ディーゼル燃料(軽油)、天然ガス、炭化水素ガス、バイオディーゼル等の炭化水素類からなるバイオマス燃料を用いることができる。更に、自動車等の内燃機関において炭化水素類からなる燃料として使用する場合には、例えば、エタノールとガソリンとの混合燃料を用いることができる。このような混合燃料としては、エタノールはオクタン価が高いので、オクタン価が低いガソリン(例えば、30~85の範囲)とエタノールを混合することにより、通常のガソリン燃料と同等の80~100の範囲のオクタン価に調整した混合燃料を得ることができ、自動車等の内燃機関の燃料として好適に用いることができる。
【0048】
炭化水素類を含む燃料のうち、常温で液体であるため取り扱いやすく、安全性が高く、水(水蒸気)との親和性が高く、入手がしやすいという観点から、本発明の燃料改質方法を、天然ガス、メタノール、エタノールおよびガソリンに対して適用することが好ましく、エタノール、ガソリン、およびエタノールとガソリンとの混合燃料に対して適用することがより好ましい。
【0049】
炭化水素類を含む燃料と排ガス中に含まれる水蒸気との混合比は特に制限はないが、例えば、炭化水素類を含む燃料がエタノールの場合においては、水蒸気と炭素のモル比(S/C)が0.2~10であることが好ましく、0.4~5であることがより好ましい。本発明の燃料改質触媒を用いることによって、コーキングが発生していた低S/Cの条件下においても炭化水素類を含む燃料を改質することができる。
【0050】
また、改質反応の温度としては250~800℃が好ましく、350~700℃がより好ましい。本発明の燃料改質触媒によれば、従来、触媒活性が低く、炭化水素類を含む燃料の水蒸気改質が困難であった400℃以下の低温においても炭化水素類からなる燃料を改質させることが可能となる。また、550℃以上の高温においても高い活性を保持することが可能となり、炭化水素類からなる燃料を水蒸気により改質させることが可能となる。
また、熱源として内燃機関燃焼後の排ガスを反応器に供給することで、別途熱源の用意が不要となり、構造やコスト的に優位となる。
【0051】
また、本発明による燃料改質触媒は、耐硫黄被毒性に優れているため、燃料が硫黄成分を含む場合であっても、安定した触媒性能を長期間にわたって発揮することができる。燃料に含まれる硫黄成分としては、例えば、S、S2-、SO、SO、SO、SO 2-等のほか、Sを含む化合物が挙げられる。主な硫黄成分の由来としては、燃料に含まれる硫黄成分との接触や燃料燃焼後の排ガスに含まれる硫黄成分が挙げられる。
【0052】
<燃料改質エンジンシステム>
ガソリンを燃料に含み、水蒸気及び熱源に内燃機関の排ガスを用いたEGRシステムは、改質装置の構造が簡便となりコスト的に優位となるが、燃料改質触媒と硫黄分との接触量も増え、触媒寿命が低下するという問題が発生しやすくなる。
これに対し、本発明による燃料改質触媒を用いた燃料改質方法は、EGRシステムに組み合わせることにより、熱効率を向上させることができる。例えば、内燃機関からの燃焼後排ガスに含まれる水蒸気を利用して、炭化水素類を含む燃料を水蒸気の存在下で本発明による燃料改質触媒と接触させることにより、燃料の一部または全部を水素および一酸化炭素に改質し、得られた水素および一酸化炭素を、内燃機関へ供給する燃料に添加することで、エンジンの熱効率を向上させることができる。
【実施例0053】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。
【0054】
[参考例1]
γ―アルミナ粉末(平均粒子径が28μm、BET比表面積が141m/g)に、硝酸ネオジム水溶液を含浸させ、乾燥させた。次いで、硝酸ネオジム水溶液(Nd換算で約25wt%)を含浸させたγアルミナ粉末に、硝酸ロジウム水溶液(Rh換算で約7wt%)を含浸させた後、大気雰囲気化中、600℃で30分間焼成して、ロジウム-ネオジム担持アルミナ前駆体を得た。
得られたロジウム-ネオジム担持アルミナ粉末に、硝酸および水を添加しpHを4~5に調整した後、ボールミルにて粒子径(D90)が12μm以下となるまで湿式粉砕し、触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
【0055】
次いで、シリコンカーバイド製のハニカム基材(セル数/ミル厚:600cpsi/4mil)を用意し、ハニカム基材の端部をスラリー溶液に浸漬させ、ハニカム基材の反対側の端部側から減圧吸引して、基材表面にスラリー溶液を含浸させた(ウォッシュコート量150g/L)。
このようにしてスラリー溶液を含浸させたハニカム基材を150℃で乾燥させ、大気雰囲気下、450℃で焼成することにより、触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)はRh 7.9g/L、Nd 6g/Lであった。
【0056】
[実施例1]
酸化セリウム粉末(D90が14.1μm、平均粒子径D50が9.6μm、BET比表面積が160m/g)に、硝酸ニッケル水溶液を含浸させ、乾燥させたのち大気雰囲気化中、600℃で30分間焼成して、ニッケル担持酸化セリウム前駆体を得た。
得られたニッケル担持酸化セリウム前駆体に、硝酸および水を添加しpHを4~5に調整した後、ボールミルにて粒子径(D90)が12μm以下となるまで湿式粉砕し、ニッケル担持酸化セリウム粒子のスラリー溶液を調製した。
【0057】
次いで、シリコンカーバイド製のハニカム基材(セル数/ミル厚:600cpsi/4mil)を用意し、ハニカム基材の端部をスラリー溶液に浸漬させ、ハニカム基材の反対側の端部側から減圧吸引して、基材表面にスラリー溶液を含浸させた(ウォッシュコート量150g/L)。
このようにしてスラリー溶液を含浸させたハニカム基材を150℃で乾燥させ、大気雰囲気下、450℃で焼成することにより、触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)はNi 7.9g/Lであった。
【0058】
[実施例2]
担体を酸化イットリウム-ジルコニア酸化物に変更した以外は実施例1と同様にして触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)は表1に示すとおりであった。
【0059】
[実施例3~4]
参考例1に記載の方法で表1に示す担持量となるように調整し製造した触媒担持アルミナ粉のスラリー溶液と、実施例1に記載のニッケル担持酸化セリウム粒子のスラリー溶液を重量比100:150の割合で混合したスラリー混合液を用い、ウォッシュコート量を250g/Lとした以外は実施例1と同様にして触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)は表1に示すとおりであった。
【0060】
[比較例1~7]
表1に示す硝酸金属塩および担体に変更した以外は、実施例1と同様にして触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)は表1に示すとおりであった。
【0061】
[参考例2]
基材としてシリコンカーバイド製のハニカム基材に代えて、コージェライト製のハニカム基材(セル数/ミル厚:600cpsi/3.5mil)を使用し、ウォッシュコート量を250g/Lに変更した以外は参考例1と同様にして触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)は表1に示すとおりであった。
【0062】
[実施例5]
前記酸化セリウム粉末に、硝酸ニッケル水溶液と、硝酸ロジウム水溶液の混合液に含浸させ、乾燥させたのち大気雰囲気化中、600℃で30分間焼成して、ニッケル/ロジウム担持酸化セリウム前駆体を得た。
得られたニッケル/ロジウム担持酸化セリウム前駆体に、硝酸および水を添加しpHを4~5に調整した後、ボールミルにて粒子径(D90)が12μm以下となるまで湿式粉砕し、ニッケル/ロジウム担持酸化セリウム粒子のスラリー溶液を調製した。
【0063】
次いで、コージェライト製のハニカム基材(セル数/ミル厚:600cpsi/3.5mil)を用意し、ハニカム基材の端部をスラリー溶液に浸漬させ、ハニカム基材の反対側の端部側から減圧吸引して、基材表面にスラリー溶液を含浸させた(ウォッシュコート量250g/L)。
このようにしてスラリー溶液を含浸させたハニカム基材を150℃で乾燥させ、大気雰囲気下、450℃で焼成することにより、触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)は表1に示すとおりであった。
【0064】
[実施例6]
参考例2に記載の方法で表1に示す担持量となるように調整し製造した触媒担持アルミナ粉のスラリー溶液と、実施例5に記載のニッケル/ロジウム担持酸化セリウム粒子のスラリー溶液を重量比60:190の割合で混合したスラリー混合液を用い、ウォッシュコート量を250g/Lとした以外は実施例5と同様にして触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)は表1に示すとおりであった。
【0065】
[水素改質評価]
上記のようにして得られた各触媒担持ハニカム基材を用いて、エンジン排ガスを模したガス(CO:0.22%、C3H6:360ppm、NO:1350ppm、O:0.52%、CO:13%、HO:12%、N:Balance、)と、ハイオクガソリンを混合したガスの水蒸気改質を行った。尚、その際の試験条件は、S/C=1.0、入り口ガス温度630℃、SV≒30k/h又は60k/hとし、水素発生量および被毒物質存在下での耐久性評価を行った。原料ガスに切り替え、5分経過時点での水素発生量から、原料ガスの改質触媒による改質率を評価した。評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
【0066】
【表1】
図1