(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031022
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20230301BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01B11/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136474
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 宏弥
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
【Fターム(参考)】
2F065AA23
2F065AA24
2F065AA49
2F065AA50
2F065BB01
2F065DD03
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL22
2F065LL24
2F065QQ16
2F065QQ25
2F065QQ27
2F065QQ32
2F065QQ33
2F065QQ42
2F065SS13
2F065TT03
2G051AA90
2G051AB02
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051CC15
2G051EA12
2G051EA17
2G051EB01
2G051EC03
2G051EC04
(57)【要約】
【課題】 被検体からの光線方向に関する情報を含む像を取得して被検体の表面状態を検査する光学検査方法を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、被検体を検査する光学検査方法は、被検体からの光線方向に応じて、第1の波長の光線と、第1の波長とは異なる波長の第2の波長の光線とを、撮像部に向けて、第1の波長の光線強度及び第2の波長の光線強度を相補的な関係として射出し、撮像部で第1の波長の光線に関する第1の像の情報及び第2の波長の光線に関する第2の像の情報をそれぞれ取得させること、第1の像の情報、及び、第2の像の情報を比較し、被検体の凹凸情報を抽出すること、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からの光線方向に応じて、第1の波長の光線と、前記第1の波長とは異なる波長の第2の波長の光線とを、撮像部に向けて、前記第1の波長の光線強度及び前記第2の波長の光線強度を相補的な関係として射出し、前記撮像部で前記第1の波長の光線に関する第1の像の情報及び前記第2の波長の光線に関する第2の像の情報をそれぞれ取得させること、
前記第1の像の情報、及び、前記第2の像の情報を比較し、前記被検体の凹凸情報を抽出すること、
を備える、前記被検体を検査する光学検査方法。
【請求項2】
前記第1の像の情報及び前記第2の像の情報の少なくとも一方に対して、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行うこと、
を備える、請求項1に記載の光学検査方法。
【請求項3】
前記第1の像の情報及び前記第2の像の情報に対して前記画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行うとき、
前記第1の像の情報に対し、第1の画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行い、
前記第2の像の情報に対し、前記第1の画像フィルタとは異なる第2の画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う、
請求項2に記載の光学検査方法。
【請求項4】
前記第1の像の情報に対し、前記第1の画像フィルタとして像の平坦さを強調させる画像フィルタ処理を行い、
前記第2の像の情報に対し、前記第2の画像フィルタとして像の輪郭を強調させる画像フィルタ処理を行う、
請求項3に記載の光学検査方法。
【請求項5】
被検体からの光線方向に応じて、第1の波長の光線と、前記第1の波長とは異なる波長の第2の波長の光線とを、撮像部に向けて、前記第1の波長の光線強度及び前記第2の波長の光線強度を相補的な関係として射出させる光学装置を用いて、前記撮像部で前記第1の波長に関する第1の像の情報及び前記第2の波長の光線に関する第2の像の情報をそれぞれ取得させる処理と、
前記第1の像の情報、及び、前記第2の像の情報を比較し、前記被検体の凹凸情報を抽出する処理と
をプロセッサに実行させる、前記被検体を検査する光学検査プログラム。
【請求項6】
被検体からの光線を結像する結像光学系と、
前記結像光学系の結像面に設けられる撮像部と、
前記結像光学系と前記撮像部との間で前記結像光学系の焦点面に設けられ、前記被検体からの光線方向に応じて、第1の波長の光線と、前記第1の波長とは異なる波長の第2の波長の光線とを、前記撮像部に向けて、前記第1の波長の光線強度及び前記第2の波長の光線強度を相補的な関係を有する状態に射出し、前記撮像部で前記第1の波長の光線に関する第1の像の情報及び前記第2の波長の光線に関する第2の像の情報をそれぞれ取得させる、カラーフィルタと、
前記第1の像の情報と前記第2の像の情報との比較により、前記被検体の凹凸情報を抽出するプロセッサと
を備える、光学検査装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1の像の情報及び前記第2の像の情報の比較を、前記第1の像の情報と前記第2の像の情報との四則演算処理により行う、請求項6に記載の光学検査装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第1の像の情報及び前記第2の像の情報の少なくとも一方に対して、画像フィルタ を畳み込んだ演算処理を行った後、又は、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う前に、前記第1の像の情報及び前記第2の像の情報に対して、前記四則演算処理を行う、請求項7に記載の光学検査装置。
【請求項9】
前記プロセッサが前記第1の像の情報及び前記第2の像の情報に対してそれぞれ前記画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行うとき、
前記第1の像の情報に対し、第1の画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行い、
前記第2の像の情報に対し、前記第1の画像フィルタとは異なる第2の画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う、請求項8に記載の光学検査装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記第1の像の情報に対し、前記第1の画像フィルタとして像の平坦さを強調させる画像フィルタを用い、
前記第2の像の情報に対し、前記第2の画像フィルタとして像の輪郭を強調させる画像フィルタを用いる、請求項9に記載の光学検査装置。
【請求項11】
前記カラーフィルタは、前記被検体からの光線方向に応じて、前記第1の波長の光線及び前記第2の波長とは異なる波長の第3の波長の光線を、前記撮像部に向けて、前記第1の波長の光線強度、前記第2の波長の光線強度、及び、前記第3の波長の光線強度を相補的な関係を有する状態に射出し、前記撮像部で前記第1の像の情報、前記第2の像の情報、及び、前記第3の波長の光線に関する第3の像の情報をそれぞれ取得させ、
前記プロセッサは、前記第1の像の情報、前記第2の像の情報、及び、前記第3の像の情報の少なくとも2つの情報の比較により、前記被検体の凹凸情報を抽出する、
請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載の光学検査装置。
【請求項12】
被検体からの第1の散乱角に応じた第1の波長の光線を第1の像の情報とし、前記被検体からの前記第1の散乱角とは異なる第2の散乱角に応じ、前記第1の波長の光線とは異なる第2の波長の光線を第2の像の情報として取得するとともに、前記第1の波長の光線強度及び第2の波長の光線強度を相補的な関係として取得するカメラと、
前記第1の像の情報、及び、前記第2の像の情報の比較により、前記被検体の表面情報を抽出するプロセッサと
を備える、光学検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、物体の非接触での光学検査が重要となっている。光学検査において、光線方向の識別は、物体情報を知る上で重要である。従来、色相(hue)と呼ばれる量を用いて光線方向を識別する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-203796号公報
【特許文献2】特開2019-124542号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】W. L. Hows, "Rainbow schlieren and its applications", Appl. Optics, vol. 23, No. 14, 1984.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、被検体からの光線方向に関する情報を含む像を取得して被検体の表面状態を検査する光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、被検体を検査する光学検査方法は、被検体からの光線方向に応じて、第1の波長の光線と、前記第1の波長とは異なる波長の第2の波長の光線とを、撮像部に向けて、前記第1の波長の光線強度及び前記第2の波長の光線強度を相補的な関係として射出し、前記撮像部で前記第1の波長の光線に関する第1の像の情報及び前記第2の波長の光線に関する第2の像の情報をそれぞれ取得させること、前記第1の像の情報、及び、前記第2の像の情報を比較し、前記被検体の凹凸情報を抽出すること、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1及び第2実施形態に係る光学検査システムを示す概略的なブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る光学検査システムの光学検査装置の一部を示す概略的な斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る光学検査システムの光学検査装置の一部を示す概略図。
【
図4】
図2及び
図3に示す光学検査装置の光学装置のカラーフィルタを示す概略図。
【
図5】第1及び第2実施形態に係る光学検査システムの光学検査装置で用いる画像フィルタプログラムの一例を示す図。
【
図6】第1実施形態に係る光学検査システムの光学検査装置を用いて撮像したRGB像データ、R像データ、G像データ、及び、B像データを示す写真。
【
図7】環境光下において通常のカメラを用いて撮像したRGB像データ、R像データ、G像データ、及び、B像データを示す写真。
【
図8】第1実施形態に係る光学検査システムの光学検査装置を用いて被検体の表面情報(凹凸情報)を取得するための演算処理を示すフローチャート。
【
図9】
図8に示すフローチャートを用いて、R像データ及びB像データから、算出像データを出力した状態を示す概略図。
【
図10】
図8に示すフローチャートの一部を除いて用いて、R像データ及びB像データから、算出像データを出力した状態を示す概略図。
【
図11】
図8に示すフローチャートの一部の順を変更して、R像データ及びB像データから、算出像データを出力した状態を示す概略図。
【
図12】第2実施形態に係る光学検査システムの光学検査装置の一部を示す概略的な斜視図。
【
図13】
図12に示す光学検査システムの光学検査装置を、光軸を含む第1の面で見たときの概略的な断面図。
【
図14】
図12に示す光学検査システムの光学検査装置を、光軸を含む第2の面で見たときの概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
本実施形態に係る光学検査システム2について、
図1から
図11を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る光学検査システム2の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、光学検査システム2は、光学検査装置4と、ディスプレイ6とを備える。
【0011】
光学検査装置4は、光学装置12と、撮像部14と、光源16と、プロセッサ18と、記憶部20と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)24と、を備える。光学装置12と撮像部14とは、いわゆるカメラ13を構成する。
【0012】
図2に示すように、光学装置12は、結像光学系(結像レンズ)32、及び、カラーフィルタ(多波長開口)34を備える。
【0013】
結像光学系32は、1又は複数のレンズを組み合わせて形成される。結像光学系32は、被検体からの光線を結像する。結像光学系32の光軸Cは、カラーフィルタ34の光軸(中心軸)に一致する。カラーフィルタ34は、結像光学系32に対して距離fの焦点面に、結像光学系32の光軸に対して回転対称に配置される。撮像部14は、結像光学系32及びカラーフィルタ34を通す光の光路上に配置される。撮像部14は、結像光学系32に対して距離L(>f)の結像面に設けられる。
【0014】
なお、光は電磁波の一種であり、光には、X線、紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波なども含まれる。本実施形態において、光は可視光であるとし、例えば波長は400nmから760nmの領域にあるとする。
【0015】
図3は、
図2に示す光学装置12の一部及び撮像部14を拡大して示す図である。
図3に示すように、例えば、被検体Sのある物点Oで正反射した光線L11、及び、適宜の角度にそれぞれ散乱した光線L21,L31は、結像光学系32によって屈折され、光線L12,L22,L32が撮像部14の撮像面14aに結像する。
【0016】
図4に示すように、カラーフィルタ34は、本実施形態では、第1の波長選択フィルタ(波長選択領域)42、第2の波長選択フィルタ(波長選択領域)44、及び、第3の波長選択フィルタ(波長選択領域)46を有する。第1の波長選択フィルタ42、第2の波長選択フィルタ44、及び、第3の波長選択フィルタ46は、同心状に形成される。カラーフィルタ34は、波長選択フィルタ42,44,46ごとにおいて、特定の波長(波長スペクトル)の光線を透過させ、特定の波長から外れる波長の光線を遮蔽する性質を有する。
【0017】
第1の波長選択フィルタ42は、円盤状に形成される。第1の波長選択フィルタ42は、結像光学系32の光軸C上に設けられる。第1の波長選択フィルタ42は、結像光学系32を通過した、被検体からの第1の波長の光線を通過させる。なお、第1の波長選択フィルタ42は、第1の波長(特定の波長)と異なる波長の光線を透過させず、遮蔽する性質を有する。
【0018】
第2の波長選択フィルタ44は、第1の波長選択フィルタ42の外周に円環状に形成される。第2の波長選択フィルタ44は、結像光学系32を通過した、被検体からの第1の波長とは異なる第2の波長の光線を通過させる。第2の波長選択フィルタ44の径方向の幅は、適宜に設定可能である。なお、第2の波長選択フィルタ44は、第2の波長(特定の波長)と異なる波長の光線を透過させず、遮蔽する性質を有する。
【0019】
第3の波長選択フィルタ46は、第2の波長選択フィルタ44の外周に円環状に形成される。第3の波長選択フィルタ46は、結像光学系32を通過した、被検体からの第1の波長及び第2の波長とは異なる第3の波長の光線を通過させる。第3の波長選択フィルタ46の径方向の幅は、適宜に設定可能である。なお、第3の波長選択フィルタ46は、第3の波長(特定の波長)と異なる波長の光線を透過させず、遮蔽する性質を有する。
【0020】
なお、第1の波長と、第2の波長及び第3の波長は、重ならないことが好適である。また、第2の波長と、第3の波長とは、重ならないことが好適である。このため、第1の波長、第2の波長、及び、第3の波長は、それぞれ独立している。
【0021】
カラーフィルタ34は、第3の波長選択フィルタ46の外周に光線遮蔽部48を有する。光線遮蔽部48は、例えば黒色の板で形成され、第3の波長選択フィルタ46を保持する。なお、第3の波長選択フィルタ46は、第2の波長選択フィルタ44を保持する。第2の波長選択フィルタ44は、第1の波長選択フィルタ42を保持する。カラーフィルタ34は、例えば内側から外側に向かって、透過する波長の光が連続的に変化するように構成されていてもよい。すなわち、カラーフィルタ34は、内側から外側に円環状に共通の中心軸に対して円環状に同一の波長の光を通すが、異なる波長の光を通さないように構成されている。
【0022】
カラーフィルタ34の第1の波長選択フィルタ42の外周の半径をr1とし、第2の波長選択フィルタ44の外周の半径をr2とし、第3の波長選択フィルタ46の外側の半径をr3とする。このとき、r3>r2>r1である。ここで、第1の波長選択フィルタ42の半径r1内の領域をA1とする。第1の波長選択フィルタ42の外周と第2の波長選択フィルタ44の外周との間の領域をA2とする。第2の波長選択フィルタ44の外周と第3の波長選択フィルタ46の外周との間の領域をA3とする。
【0023】
第1の波長選択フィルタ42の半径r1、第1の波長選択フィルタ42の外周と第2の波長選択フィルタ44の外周との間の距離であるr2-r1、及び、第2の波長選択フィルタ44の外周と第3の波長選択フィルタ46の外周との間の距離であるr3-r2は、適宜に設定可能である。より具体的には、カラーフィルタ34の第1の波長選択フィルタ42の半径r1、第2の波長選択フィルタ44の半径r2、第3の波長選択フィルタ46の半径r3は、変更し得る。このため、領域A1,A2,A3の形状及び大きさは、変化し得る。
【0024】
本実施形態に係る光学装置12では、被検体Sの任意の物点Oから射出された光線のうち、結像光学系32に入射したとき、主光線が光軸Cに平行である青(B)光は、青色の光線として分離されている。つまり、本実施形態に係る光学装置12は、青色の光線について、テレセントリック性を有するテレセントリック光学系である。一方で、本実施形態に係る光学装置12は、赤(R)光及び緑(G)光について、テレセントリック性を有していない非テレセントリック光学系である。
【0025】
本実施形態では、カラーフィルタ34は、説明の簡略化のため、例えば、可視光のうち、波長選択フィルタ42,44,46ごとに、ある波長の光を透過させ、ある波長から外れた波長を遮蔽、すなわち、透過を防止するものとする。
【0026】
なお、本実施形態では、便宜的に、国際照明委員会(CIE:Commission Internationale de I’Eclairage)により決められた、赤(R)光の波長を700nm、緑(G)光の波長を546.1nm、青(B)光の波長を435.8nmとする。
【0027】
本実施形態では、第1の波長選択フィルタ42の領域A1は、可視光のうち、例えば青光(435.8nm)及びその近傍の第1の波長を有するB光を通し、それ以外の波長の光を遮断する。本実施形態では、第2の波長選択フィルタ44の領域A2は、可視光のうち、例えば例えば緑光(546.1nm)及びその近傍の第2の波長を有するG光を通し、それ以外の波長の光を遮断する。本実施形態では、第3の波長選択フィルタ46の領域A3は、可視光のうち、例えば赤光(700nm)及びその近傍の第3の波長を有するR光を通し、それ以外の波長の光を遮断する。なお、第1の波長選択フィルタ42の領域A1が通す第1の波長の範囲、第2の波長選択フィルタ44の領域A2が通す第2の波長の範囲、及び、第3の波長選択フィルタ46の領域A3が通す第3の波長の範囲は、本実施形態では重ならないものとすることが好適である。
【0028】
光学装置12は、ハーフミラー(ビームスプリッタ)36を有する。ハーフミラー36は、結像光学系32と被検体Sとの間に設けられる。ハーフミラー36は、光源16からの照明光(白色光)を被検体Sに向けて照明するとともに、被検体Sからの光を透過させて、結像光学系32に入射させる。
【0029】
撮像部14は、例えば、いわゆるRGBカメラを用いる。すなわち、撮像部14は、各画素でR,G,Bの3チャンネルの色チャンネルを備える。撮像部14は、例えばCMOSイメージセンサや、CCDイメージセンサを用いることができる。なお、撮像部14は、少なくとも2つの画素を有する。ある画素と別のある画素とは、距離的に近位の関係にある。本実施形態で説明する撮像部14は、全画素において、ある画素と別のある画素とは遠位にあるとし、ある画素と別のある画素は近傍であるなど、多数の画素が例えば格子状に配列されているとする。
【0030】
図3に示すように、撮像部14は、結像光学系32及び第1の波長選択フィルタ42の領域A1を通過した第1の波長の光線L12、結像光学系32及び第2の波長選択フィルタ44の領域A2を通過した第2の波長の光線L22、及び、結像光学系32及び第3の波長選択フィルタ46の領域A3を通過した第3の波長の光線L32を撮像する。
【0031】
光源16は、一例として、適宜の輝度の白色光を発光させるものを用いる。このため、光源16の照明光は、赤(R)光、緑(G)光、青(B)光を含む。
【0032】
図1に示すプロセッサ18は、例えば、Central Processing Unit(CPU)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)等の集積回路である。プロセッサ18として、汎用のコンピュータが用いられてもよい。プロセッサ18は、専用回路として設けられている場合に限らず、コンピュータで実行されるプログラムとして設けられていてもよい。この場合、プログラムは、集積回路内の記憶領域、記憶部20等に記録されている。プロセッサ18は、撮像部14及び記憶部20に接続されている。プロセッサ18は、撮像部14の出力に基づいて、被検体Sに係る情報を算出する。
【0033】
図1に示すように、プロセッサ(処理回路)18は、撮像部14で撮像した像データ(RGB像データIrgb、R像データIr、G像データIg、及び、B像データIb)に対する画像処理部としての機能を有する。なお、撮像部14で取得される像データは、少なくとも2つ以上の画素から構成される。
【0034】
なお、プロセッサ18は、光学検査装置4の外部にあってもよい。この場合、撮像部14の出力は、光学検査装置4の外部へ出力されたり、記憶部20へ記録されたりすればよい。つまり、被検体Sに係る情報の算出は、光学検査装置4の内部で行われてもよいし、外部で行われてもよい。プロセッサ18は、ネットワークを介してデータを送受信するクラウドサービスにおけるサーバにあってもよい。
【0035】
プロセッサ18、ROM22、RAM24は、例えばバスを介して各々接続されている。これら記憶部20、ROM22、RAM24は、プロセッサ18と相互に通信可能である。
【0036】
記憶部20は、例えばHDD、SSD、フラッシュメモリのような不揮発性メモリであるが、揮発性メモリをさらに有していてもよい。記憶部20には、本実施形態に係る光学検査プログラム20aが記憶される。この光学検査プログラム20aは、ROM22に記憶されていてもよい。
【0037】
光学検査プログラム20aは、光学検査装置4に予めインストールされていてもよく、不揮発性の記憶媒体に記憶させて、又は、ネットワークを介して配布してもよい。光学検査プログラム20aは、例えば適宜のサーバなど、光学検査装置4の外部にあってもよい。
【0038】
本実施形態では、光学検査プログラム20aは、撮像部14で取得される各種の像データを選択的に画像フィルタリングする各種の画像フィルタプログラム(
図5参照)を含む。すなわち、例えば記憶部20には、各種の画像フィルタプログラムが格納されている。画像フィルタプログラムは、ネットワークを介してサーバ上で実行することも可能である。
【0039】
なお、プロセッサ18は、光学検査プログラム20aにより、像データに合わせて、例えば
図5に示す画像フィルタプログラムから選択して1つ又は複数を実行する。
【0040】
ここでいう画像フィルタは、撮像部14で得た像に対して画像フィルタ処理を行うプログラムをいう。画像フィルタプログラムは、
図5に示すように、種々のタイプのものを用いることができる。画像フィルタプログラムは、ソーベルフィルタ、キャニーフィルタ、ラプラシアンフィルタ、平均化フィルタ、メディアンフィルタ、一次微分フィルタ、プレビットフィルタなど、適宜の空間フィルタを用いることができる。このため、ここでいう空間フィルタは、線形フィルタ、非線形フィルタ、その他、空間微分等を含む。また、画像フィルタプログラムとして、フーリエ変換によるローパスフィルタ、フーリエ変換によるハイパスフィルタ、フーリエ変換によるバンドパスフィルタ、エッジ強調フィルタ、エッジ抽出フィルタ、その他、抽出対象に応じて適宜のプログラムを用いることができる。
【0041】
プロセッサ18は、例えば記憶部20に記憶されている光学検査プログラム20aをRAM24に書き込んで実行することにより、
図8に示すフローチャートに沿う機能を発揮する。
【0042】
記憶部20には、結像光学系32の光軸Cとカラーフィルタ34との関係が記憶されている。結像光学系32の光軸Cとカラーフィルタ34との関係は、例えば、カラーフィルタ34の第1の波長選択フィルタ42、第2の波長選択フィルタ44、第3の波長選択フィルタ46、光線遮蔽部48の透過波長、遮蔽波長、及び、配置を含む。
【0043】
ここでは、灰色のプラスチック板に人工的にキズを付けた被検体Sを準備し、光学検査装置4を用いて被検体Sに検査を行った。
【0044】
被検体Sとして、標準表面S1に対し、幅、深さがそれぞれ例えば0.5mm程度、長さが10mm程度の異常部(キズ部)S2を形成した。なお、標準表面S1と異常部S2との境界をエッジ部S3とする。なお、被検体Sの表面の標準表面S1は平滑平面であるとして形成されることが好適であるが、細かなキズが形成されている。
【0045】
そして、
図6には、本実施形態に係るカメラ13を用いて標準表面S1、異常部S2及びエッジ部S3を含む被検体Sをカメラ13で撮像したときのRGB像データIrgb、R像データIr、G像データIg、及び、B像データIbを示す。
【0046】
図2から
図4に示す本実施形態に係るカメラ13のカラーフィルタ34の第1の波長選択フィルタ42の領域A1は、被検体Sからの正反射光成分のB光は通過させるが、散乱光成分のR光及びG光は遮蔽する。このため、B光として撮像部14に入射され、撮像部14でB像データ(第1の像データ)Ibとして撮像されるのは、正反射成分だけである。なお、正反射成分は、完全に光軸Cに平行な成分だけでなく、適宜のずれは許容される。本実施形態では、正反射成分は、光軸Cに沿う方向を0としたときに、
図3に示す0≦θbの範囲とする。なお、角度θbは、適宜に変動し得る。この角度θbは、被検体Sとカラーフィルタ34との距離、カラーフィルタ34の第1の波長選択フィルタ42の領域A1の半径r1などに依存する。
【0047】
カメラ13のカラーフィルタ34の第2の波長選択フィルタ44の領域A2は、光軸Cに対して第1の散乱角度θg(θb≦θg<θr)のG光は通過させるが、正反射光成分のB光、及び、別の第2の散乱角度θr(θr≦θ)のR光は遮蔽する。このため、G光として撮像部14に入射され、撮像部14でG像データ(第3の像データ)Igとして撮像されるのは、第1の散乱角度成分だけである。角度θgは、被検体Sとカラーフィルタ34との距離、カラーフィルタ34の第2の波長選択フィルタ44の領域A2の大きさなどに依存する。角度θrは、被検体Sとカラーフィルタ34との距離、カラーフィルタ34の第3の波長選択フィルタ46の領域A3の大きさなどに依存する。
【0048】
カメラ13のカラーフィルタ34の第3の波長選択フィルタ46の領域A3は、光軸Cに対して第2の散乱角度θrのR光は通過させるが、正反射光成分のB光、及び、第1の散乱角度θgのG光は遮蔽する。このため、R光として撮像部14に入射され、撮像部14でR像データ(第2の像データ)Irとして撮像されるのは、第2の散乱角度成分だけである。
【0049】
このため、撮像部14で撮像された
図6に示すRGB像データIrgb、R像データIr、G像データIg、及び、B像データIbには、被検体Sの散乱角度の情報に応じて、色が付けられる。このため、得られるRGB像データIrgbの色は、被検体S自体の色に依存するのでなく、カラーフィルタ34において通す波長を適宜に設定することにより変化する。
【0050】
被検体Sのうち、異常部S2及びエッジ部S3を除く標準表面S1は、細かなキズがあるが、大半が正反射光として、カラーフィルタ34を通して撮像部14に入射される。一方、異常部S2及びエッジ部S3の大半は、標準表面S1に平行な領域ではないため、大半が散乱光として、カラーフィルタ34を通して撮像部14に入射される。
【0051】
カラーフィルタ34を通して撮像部14に入射される光のうち、標準表面S1からの光線は、カラーフィルタ34の光軸C上(領域A1上)を通るB光によるものである。このため、撮像部14は、B像データIbにおいて、標準表面S1からの正反射光を青色の像として得る。異常部S2及びエッジ部S3に相当する位置からの光は、撮像部14には、B光として入射しない。したがって、B像データIbのうち、異常部S2及びエッジ部S3の像は、黒色領域となる。
【0052】
また、カラーフィルタ34を通して撮像部14に入射される光のうち、異常部S2からの光線は、カラーフィルタ34の光軸Cからずれた領域A3上を通るR光によるものである。このため、撮像部14は、R像データIrにおいて、異常部S2からの散乱光を赤色の像として得る。標準表面S1及びエッジ部S3に相当する位置からの光は、撮像部14には、R光として入射しない。したがって、R像データIrのうち、標準表面S1及びエッジ部S3の像は、黒色領域となる。
【0053】
また、カラーフィルタ34を通して撮像部14に入射される光のうち、エッジ部S3からの光線は、カラーフィルタ34の光軸Cからずれた領域A2上を通るG光によるものである。このため、撮像部14は、G像データIgにおいて、エッジ部S3からの散乱光を緑色の像として得る。標準表面S1及び異常部S2に相当する位置からの光は、撮像部14には、G光として入射しない。したがって、G像データIgのうち、標準表面S1及び異常部S2の像は、黒色領域となる。
【0054】
なお、本実施形態に係る光学検査装置4の撮像部14の各画素で取得されるR像データIr、G像データIg、及び、B像データIbの光線強度(画素値)は、相補的に変化する。すなわち、カメラ13は、被検体Sからの第1の散乱角(正反射を含む)に応じた例えばB光(第1の波長の光線)をB像データ(第1の像の情報)とし、被検体Sからの第1の散乱角とは異なる第2の散乱角に応じ、例えば、B光(第1の波長の光線)とは異なるR光(第2の波長の光線)をR像データ(第2の像の情報)として取得するとともに、B光(第1の波長)の光線強度及びR光(第2の波長)の光線強度を相補的な関係として取得する。ここでの第1の散乱角は、0°である正反射を含む意である。光学検査装置4は、カラーフィルタ34を通る光線のうち、R光の光線強度が強くなると、ある画素において、G光の光線強度及びB光の光線強度は弱まる。また、別のある画素において、B光の光線強度が強くなると、R光の光線強度及びG光の光線強度は弱まる。
【0055】
本実施形態に用いるカラーフィルタ34により、標準表面S1に相当する領域での像データの画素値の平均は、B像データIbが最も高く、G像データIg、R像データIrが順に続く。
【0056】
標準表面S1に相当する位置からのR光の一部は、完全に撮像部14に入射されていないわけではなく、B像データIbにおける標準表面S1に相当する領域の画素値の平均よりも低い画素値であるが、撮像部14にR光として入射している。これは、プラスチック板で形成された標準表面S1上の細かいキズを捉えているといえる。
【0057】
同様に、標準表面S1に相当する位置からのG光の一部は、完全に撮像部14に入射されていないわけではなく、B像データIbにおける標準表面S1に相当する領域の画素値の平均よりも低い画素値であるが、撮像部14にG光として入射している。これは、プラスチック板で形成された標準表面S1上の細かいキズを捉えているといえる。
【0058】
したがって、本実施形態に係る光学検査装置4で得られるRGB像データIrgbは、カラーフィルタ34に基づく光線の方向情報に応じた色が付いている。このRGB像データIrgbを各色チャンネルに分離したR像データIr、G像データIg、及び、B像データIbは、それぞれ被検体Sの表面情報(凹凸情報)に基づく画像となっている。このように、本実施形態に係る光学検査装置4は、撮像部14で撮像した像により、被検体Sの構造(凹凸)情報を取得する。
【0059】
そして、本実施形態に係る光学検査装置4を用いることにより、撮像部14により得られる像をチャンネルデータとして表示すると、概略、標準表面S1が青色のB像データIb、異常部S2が赤色のR像データIr、エッジ部S3が緑色のG像データIgとして分離した像を得ることができる。このため、プロセッサ18は、被検体Sの表面情報(凹凸情報)を、B像データIb、R像データIr、及び、G像データIgを比較することにより、抽出できる。像データを比較するとは、像データの組み合わせ(つまり、2つ以上の画素から構成されるもの)と、像データの組み合わせ(2つ以上の画素から構成されるもの)とを比較することを意味する。プロセッサ18は、その抽出像データをディスプレイ6に表示させることにより、検査者にディスプレイ6上ではっきりと視認させることができる。そして、これらB像データIb、R像データIr、及び、G像データIgを足し合わせた像データが、RGB像データIrgbとなる。このとき、
図6に示すように、本実施形態に係る光学検査装置4は、検査者が目視で、標準表面S1、異常部S2及びエッジ部S3をはっきりと確認できる画像(RGB像データIrgb)を得ることができる。
【0060】
図7には、比較対象として、同じ位置から同じ被検体Sを、通常のカメラで撮像したRGB像データI0、R像データI1、G像データI2、及び、B像データI3を示す。すなわち、
図7に示すRGB像データI0、R像データI1、G像データI2、及び、B像データI3は、光学検査装置4のカラーフィルタ34を通さずに撮像部14で撮像した像である。
【0061】
RGB像データI0は、被検体Sの色を反映した色として取得される。また、R像データI1は、被検物Sの色から赤色を抽出しただけである。G像データI2は、被検物Sの色から緑色を抽出しただけである。B像データI3は、被検物Sの色から青色を抽出しただけである。すなわち、R像データI1、G像データI2、B像データI3は、被写体のスペクトル情報に基づく画像である。
【0062】
これに対し、本実施形態に係る光学検査装置4で撮像されるRGB像データIrgbは、カラーフィルタ34を通さない、通常のカメラで撮像した被検体SのRGB像データI0と色が異なる。これは、本実施形態に係る光学検査装置4で撮像されるRGB像データIrgbは、R光の波長、B光の波長、G光の波長を、カラーフィルタ34を選択的に透過させて、色情報ではなく、光線の方向情報を撮像部14で取得しているためである。
【0063】
上述したように、本実施形態に係る光学検査装置4の撮像部14の各画素で取得されるR像データIr、G像データIg、及び、B像データIbの光線強度は、相補的に変化する。すなわち、カラーフィルタ34を通る光線のうち、R光の光線強度が強くなると、ある画素において、G光の光線強度及びB光の光線強度は弱まる。また、別のある画素において、B光の光線強度が強くなると、R光の光線強度及びG光の光線強度は弱まる。
【0064】
これに対し、カラーフィルタ34を通さない、通常のカメラで撮像した被検体SのR像データI1、G像データI2、及び、B像データI3では、ある画素におけるR光の光線強度、G像の光線強度、B光の光線強度は、被検体の色によって変化するだけであり、上述した相補的な関係はない。
【0065】
次に、プロセッサ18を用いて、
図6に示す各像データIr,Ig,Ibに対し、異常部S2及びエッジ部S3などの特徴部分を抽出する処理について、
図8に示すフローチャートを用いて説明する。本実施形態では、標準表面S1に対する異常部S2を特徴部分として抽出する処理の例について説明する。
【0066】
プロセッサ(処理回路)18は、撮像部14に像データを取得させると、記憶部20から、結像光学系32の光軸Cとカラーフィルタ34との関係を読み出す。プロセッサ18は、結像光学系32の光軸Cとカラーフィルタ34との関係から、撮像部14で取得したB像データIbが正反射光の像と認識し、撮像部14で取得したG像データIgが被検体Sからの第1の散乱角度θg(<θr)の散乱光の像と認識し、撮像部14で取得したR像データIrが被検体Sからの第2の散乱角度θrの散乱光の像と認識する(ステップST11)。
【0067】
その後、プロセッサ18は、
図5に示す画像フィルタプログラムから各像データに適切な画像フィルタ選択し、R像データIr、G像データIg、B像データIbに対して、同じ又は異なる画像フィルタを畳み込む(ステップST12)。
【0068】
一例として、プロセッサ18は、画像フィルタプログラムに基づいて、R像データIr、G像データIg、及び、B像データIbをそれぞれ空間微分し、隣接する画素同士において、画素値の変化が大きい箇所を抽出する。
【0069】
そして、プロセッサ18は、画像フィルタを畳み込んだR像データ、G像データ、B像データの少なくとも2つを比較する(ステップST13)。プロセッサ18は、画像フィルタを畳み込んだR像データ、G像データ、B像データをそれぞれ比較してもよい。
【0070】
そして、プロセッサ18は、画像フィルタを畳み込んだR像データから、画像フィルタを畳み込んだB像データを減算した、
図9に示す算出像データIc1を得る(ST13)。すなわち、プロセッサ18は、B像データ(第1の像の情報)Ib及びR像データ(第2の像の情報)Irに対して、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行った後、B像データIb及びR像データIrに対して、四則演算処理を行う。算出像データIc1は、被検体Sの凹凸情報を示している。プロセッサ18は、凹凸の大きさに応じて、その被検体S(例えばプラスチック板)が良品であるか、不良品であるか、判断する。良品であるか、不良品であるか、凹凸の大きさや高さの閾値は適宜に設定可能である。
そして、撮像部14の近位の関係(例えば隣り合う関係)にある2つの画素における画素値は相関性が強い。そのため、全画素でなく、必要な領域において、そのような近位の関係にある画素の画素値を比較してもよい。この場合、例えば1つの像データにおいて近位の関係にある画素の画素値を抽出し、別のある1つの像データにおいて近位の関係にある画素の画素値を抽出し、抽出したそれぞれの画素値を像データ同士で比較することで、被検体Sの凹凸の特徴を精度よく抽出できる。反対に、遠位の関係にある2つの画素における画素値は相関性が弱い。そのため、遠位の関係にある画素の画素値を抽出し比較するよりは、近位の画素の画素値を抽出し比較するほうが、被検体Sの凹凸情報の特徴をより強く表すと考えられる。
【0071】
図9に示す例では、R像データIr及びB像データIbを用いて算出像データIc1を得る例について説明した。G像データIg及びB像データIbを用いて算出像データIc1を得てもよい。
【0072】
本実施形態では、
図8に示すフローチャートのステップST12において、R像データIr、G像データIg、B像データIbに対して、同じ又は異なる画像フィルタを畳み込む例について説明した。このステップST12は、省略してもよい。すなわち、ステップST11からステップST12の処理を行わずに、ステップST13の処理を行ってもよい。この場合、
図10に示す例では、R像データIrからB像データIbを減算して、算出像データIc2を得た。
図10に示すR像データIrでは、異常部S2に相当する位置での、R光の像による画素値は、B像データIbでのB光の像による画素値に比べて無視できるほどに大きい。このため、
図10に示す算出像データIc2では、異常部S2に相当する位置での、R光の像による画素値は、殆ど残っている、と想定される。R像データIrでの、標準表面S1に相当する位置での、R光の像による画素値と、B像データIbでの、標準表面S1に相当する位置での、B光の像による画素値との差は、異常部S2に相当する位置での、R光の像による画素値とB光の像による画素値との差に比べて、非常に小さい。このため、算出像データIc2では、異常部S2に相当する位置が、標準表面S1に相当する位置に比べて、明らかに画素値が大きい状態となる。このため、算出像データIc2は、被検体Sの凹凸情報を示している。プロセッサ18は、ある画素の周辺の領域の画素値と、別のある画素の周辺の領域の画素値との差の大きさに応じて、その被検体S(プラスチック板)が良品であるか、不良品であるか、判断する。良品であるか、不良品であるか、画素値の差の大きさの閾値は適宜に設定可能である。
【0073】
なお、
図9及び
図10では、R像データからB像データを減算する例について説明した。減算の代わりに、除算を行っても、光学検査の画像処理を行うことができる。
【0074】
図11には、プロセッサ18が、R像データIrとB像データIbと加算した後、画像フィルタプログラム(
図5参照)から適宜のプログラムを選択して輪郭強調処理を行い、算出像データIc3を得た。この場合、プロセッサ18は、例えばB像データ(第1の像の情報)Ib及びR像データ(第2の像の情報)Irに対し、画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行う前に、B像データ(第1の像の情報)Ib及びR像データ(第2の像の情報)Irに対して、加算などの四則演算処理を行った。すなわち、ステップST12と、ステップST13とは、順序が反対であってもよい。
【0075】
エッジ部S3は、G像データIgとして得られていた。このため、R像データIrとB像データIbと加算したとき、その算出像データのエッジ部S3に相当する位置は、黒色像となる。また、R像データIrとB像データIbと加算したとき、その算出像データの標準表面S1に相当する位置の画素値、異常部S2に相当する位置の画素値は、足される。したがって、その算出像データの標準表面S1に相当する位置、異常部S2に相当する位置は、黒色とは反対の明部として得られる。このため、算出像データに画像処理として、輪郭強調処理を行った場合、算出像データIc3は、エッジ部S3に相当する位置が強調された像として得られる。なお、標準表面S1に相当する位置のR像データIrの画素値とB像データIbの画素値とが足されたときの算出像データの画素値は、異常部S2に相当する位置のR像データIrの画素値とB像データIbの画素値とが足されたときの算出像データの画素値に比べて大幅に小さい。このため、標準表面S1の細かなキズは、輪郭強調処理により、エッジ部S3に相当する位置と同様に、強調された状態となる。このため、算出像データIc3は、被検体Sのエッジ部S3に相当する位置の凹凸情報を示している。プロセッサ18は、算出像データIc3における輪郭強調された部位の画素値と、その他の黒色部分の領域の画素値との差の大きさに応じて、その被検体S(プラスチック板)が良品であるか、不良品であるか、判断する。なお、算出像データIc3において、異常部S2に相当する位置は、輪郭強調された領域として含まれていない。これは、本実施形態に係る異常部S2に相当する位置自体に、エッジ部S3が殆んど含まれていないことを意味する。
【0076】
なお、
図11では、R像データとB像データとを加算する例について説明した。加算の代わりに、乗算を行っても、光学検査の画像処理を行うことができる。
【0077】
その他、例えば、B像データIbは、正反射光の像である。このため、プロセッサ18は、B像データIbに対して、画像フィルタプログラムとして、例えば、平坦さを強調するメディアンフィルタ、又は、フーリエ変換によるローパスフィルタ(第1の画像フィルタ)を採用する。画像フィルタプログラムとして、例えばローパスフィルタを用いる場合、プロセッサ18は、画素値の変化が小さい各位置の情報を通し、画素値の変化が大きい各位置の情報をカットする。
【0078】
例えば、R像データIrは、第2の散乱角θrの散乱光の像である。このため、プロセッサ18は、画像フィルタプログラムとして、例えば、フーリエ変換によるハイパスフィルタ又はソーベルフィルタ(第2の画像フィルタ)を採用し、例えば、R像データIrにおける画素値の変化が大きい各位置の輪郭を強調する処理を行う。画像フィルタプログラムとして、例えばハイパスフィルタを用いる場合、プロセッサ18は、画素値の変化が大きい各位置の情報を通し、画素値の変化が小さい各位置の情報をカットする。
【0079】
G像データIgは、第1の散乱角θgの散乱光の像である。このため、プロセッサ18は、G像データIgには、R像データIrと同様に、画像フィルタプログラムとして、例えば、高周波フーリエ変換によるハイパスフィルタ、又は、ソーベルフィルタを採用し、例えば、G像データIgにおける各位置の輪郭を強調する処理を行う。画像フィルタプログラムとして、例えばハイパスフィルタを用いる場合、プロセッサ18は、画素値の変化が大きい各位置の情報を通し、画素値の変化が小さい各位置の情報をカットする。
【0080】
このように、プロセッサ18は、B像データ(第1の像の情報)Ibに対し、第1の画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行い、R像データ(第2の像の情報)Ir又はG像データ(第3の像の情報)Igに対し、第1の画像フィルタとは異なる第2の画像フィルタを畳み込んだ演算処理を行ってもよい。この場合、プロセッサ18は、B像データIbからは、例えばエッジ情報などを減少させ、R像データIr又はG像データIgからは、エッジ情報などを増幅させるため、被検体Sの表面の凹凸状態をより抽出し易くすることができる。
【0081】
プロセッサ18は、このような処理によっても、被検体Sの表面状態を検査することができる。
【0082】
なお、カラーフィルタ34は、被検体Sからの光線方向に応じて、B光(第1の波長の光線)及びR光(第2の波長の光線)とは異なる波長のG光(第3の波長の光線)を、撮像部14に向けて、B光の光線強度、R光の光線強度、及び、G光の光線強度を相補的な関係を有する状態に射出し、撮像部14でB像データ(第1の像の情報)Ib、R像データ(第2の像の情報)Ir、及び、G像データ(第3の波長の光線に関する第3の像の情報)Igをそれぞれ取得させる。また、プロセッサ18は、B像データ(第1の像の情報)Ib、R像データ(第2の像の情報)Ir、及び、G像データ(第3の像の情報)Igの少なくとも2つの情報の比較により、被検体Sの凹凸情報を抽出する。
【0083】
また、例えば、被検体Sにキズ(異常部S2)でなく、汚れがあるとする。このとき、カラーフィルタ34を通さない、通常のカメラで撮像した被検体SのRGB像データI0、R像データI1、G像データI2、B像データI3は、その汚れに対して色情報を抽出する。これに対し、本実施形態に係る光学検査装置4で撮像されるRGB像データIrgb、R像データIr、G像データIg、B像データIbは、その汚れがキズ(異常部S2)でなければ、その汚れ部分の情報は像に反映されない。したがって、本実施形態に係る光学検査装置4のプロセッサ18は、被検体S上の単なる汚れを無視し、被検物Sが製品となったときに、被検体Sの異常部S2が問題を引き起こし得るか否かを出力することができる。このため、本実施形態によれば、R像データIr、G像データIg、B像データIbを比較することにより、従来よりも精度よく被検体Sを光学検査することができる。
【0084】
このように、本実施形態によれば、被検体Sからの光線方向に関する情報を含む像を取得して、その像を画像処理することにより、被検体Sの表面状態を検査する光学検査方法、光学検査プログラム20a、及び、光学検査装置4を提供することができる。
【0085】
なお、上述したプロセッサ18は、光学検査プログラム20aを実行するときに、四則演算処理(加減乗除処理)を適宜に用いることができる。
【0086】
また、上述したプロセッサ18は、光学検査プログラム20aを実行するときに、R像データIr、G像データIg、B像データIbの少なくとも1つに画像フィルタ処理を行うことができる。なお、画像フィルタ処理は、ある像データに対して、1つの画像フィルタプログラムだけでなく、複数の画像フィルタプログラムを実行して所望の算出像データを得てもよい。
【0087】
また、上述したプロセッサ18は、光学検査プログラム20aを実行するときに、目的とする算出像データに合わせて、R像データIr、G像データIg、B像データIbの四則演算処理と、画像フィルタ処理との順番を適宜に設定することができる。
【0088】
本実施形態では、被検体Sの標準表面S1は、平面であるとして説明した。被検体Sの標準表面S1は、実際には、曲面など、平面でなくてもよい。本実施形態に係る光学検査システム2は、被検体Sの拡大等により、平面と同視できる部分に対して、光学検査を行うことができる。
【0089】
(第2実施形態)
図12から
図14を用いて第2実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態の変形例であり、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0090】
図12に示すように、光学検査装置4の光学装置12は、結像光学系(結像レンズ)32、及び、カラーフィルタ(多波長開口)134を備える。
【0091】
ここで、第1実施形態に係る光学検査装置4の光学装置12のカラーフィルタ34は、光軸Cに対して回転対象、すなわち、等方である例について説明した。本実施形態では、カラーフィルタ134が非等方である例について説明する。
【0092】
カラーフィルタ134は、光軸Cに直交する一方向(後述する第2の軸Ayに平行な方向)を長手方向とする、例えば矩形状に形成されている。カラーフィルタ134は、本実施形態では、第1の波長と、第1の波長と異なる第2の波長とを選択的に通過させる。カラーフィルタ134は、第1の波長選択フィルタ(波長選択領域)142及び第2の波長選択フィルタ(波長選択領域)144を有する。なお、カラーフィルタ134の第1の波長選択フィルタ142及び第2の波長選択フィルタ144の周囲は、光線遮蔽部148を有する。光線遮蔽部148は、例えば黒色の板で形成され、第1の波長選択フィルタ142及び第2の波長選択フィルタ144を保持する。
【0093】
ここで、本実施形態では、結像光学系32の光軸Cに対して直交するように第1の軸Axを取る。本実施形態では、第1の軸Axの軸方向は、第1の波長選択フィルタ142と第2の波長選択フィルタ144とが並ぶ方向に一致する。すなわち、第1の波長選択フィルタ142及び第2の波長選択フィルタ144は、第1の軸Axの軸方向にずれて配置される。本実施形態では、第2の軸Ayを、第1の軸Axと光軸Cとの両者に直交する方向に取る。本実施形態では、第2の軸Ayの軸方向は、カラーフィルタ134の長手方向に沿う。
【0094】
第1の波長選択フィルタ142及び第2の波長選択フィルタ144は、それぞれ、カラーフィルタ134の長手方向に沿って形成されている。第1の波長選択フィルタ142は、例えば光軸C上に配置されている。第1の波長選択フィルタ142は、第2の波長選択フィルタ144に隣り合う。カラーフィルタ134の第1の波長選択フィルタ142及び第2の波長選択フィルタ144は、第2の軸Ayに平行な軸に並進対称に形成されている。
【0095】
第1の波長選択フィルタ142は、第1の波長を有する光線(第1の光線)を通過させる。例えば、第1の波長は、青光(435.8nm)及びその近傍の第1の波長を有するB光とする。第2の波長選択フィルタ144は第2の波長の光線(第2の光線)を通過させる。第2の波長は、赤光(700nm)及びその近傍の第2の波長を有するR光とする。なお、第1の波長選択フィルタ142は、第1の波長とは異なる波長(第2の波長を含む)の光線を遮蔽する。第2の波長選択フィルタ144は、第2の波長とは異なる波長(第1の波長を含む)の光線を遮蔽する。
【0096】
撮像部14はエリアセンサーでもよく、ラインセンサーでもよい。また、撮像部14は、各画素でR,G,Bの3チャンネルの色チャンネルを備えるものでよい。ここでは、
図12に示すように、撮像部14はエリアセンサーとし、各画素は赤と青の2つの色チャンネルを備えるものとする。つまり、撮像部14は、B光とR光とをそれぞれ独立な色チャンネルで受光できる。
【0097】
なお、本実施形態では、
図12に示すように、光学検査装置4に光源16及びハーフミラー36を含まない。被検体Sをカメラ13を用いて撮像することができれば、必ずしも光源16及びハーフミラー36は必要でない。もちろん、光学検査装置4に光源16及びハーフミラーを含んでいてもよい。
【0098】
第1の軸Axと光軸Cとが張る面を第1の面(仮想面)とし、第2の軸Ayと光軸Cとが張る面を第2の面(仮想面)とする。
図13には、第1の面に沿う光学検査装置4の断面図を示す。
図14には、第2の面に沿う光学検査装置4の断面図を示す。
【0099】
図12及び
図13に示すように、被検体Sからの光線のうち、光軸Cに平行であり、かつ第1の面内にある光線を第1の光線群L1とする。第1の光線群L1を代表して、第1の光線L1a及び第1の光線L1bの2つの光線を考える。物体側からの光線のうち、光軸Cに対して傾斜する方向であり、かつ第1の面内にある光線を第2の光線群L2とする。第2の光線群L2を代表して、第2の光線L2a及び第2の光線L2bの2つの光線を考える。
【0100】
図12及び
図14に示すように、物体側からの光線のうち、光軸Cに平行であり、かつ第2の面内にある光線を第3の光線群とする。第3の光線群を代表して、第3の光線L3を考える。物体側からの光線のうち、光軸Cに対して傾斜する方向であり、かつ第2の面内にある光線を第4の光線群とする。第4の光線群を代表して、第4の光線L4を考える。
【0101】
図12及び
図13に示すように、第1の面に平行な面は、カラーフィルタ134の第1の波長選択フィルタ142及び第2の波長選択フィルタ144に同時に交差する。つまり、第1の面に平行な面は、カラーフィルタ134の少なくとも2つの異なる波長選択フィルタ142,144に交差する。
図12及び
図14に示すように、第2の面に平行な面は、カラーフィルタ134の一つの波長選択フィルタ142に交差する。つまり、カラーフィルタ134は、第1の面と第2の面でカラーフィルタ134の波長選択フィルタ142,144に交差する数が異なるため、非等方であり、異方性がある。言い換えると、カラーフィルタ134は、第1の軸Axと第2の軸Ayとの方向によって波長選択フィルタ142,144の分布が異なり、非等方である。
【0102】
結像光学系32によって被検体Sの物点Oからの光線が像点に結像される光学系において、一般的に、物体側において主光線が光軸Cに対して平行になるような光学系を、物体側テレセントリック光学系と呼ぶ。本実施形態において、物体側で光軸Cに対して実質的に平行な光線が結像光学系32によって結像されるとき、光線は物体側テレセントリック性を有すると定める。一方、物体側で光軸Cに対して実質的に平行でなく、傾斜した光線が結像光学系32によって結像されるとき、光線は物体側非テレセントリック性を有すると定める。
【0103】
物体側からの第1の光線群の光線L1a,L1bは、光軸Cに平行である。光線L1a,L1bは、結像光学系32の焦点面の焦点に到達する。このため、第1の光線L1a,L1bは、焦点面に置かれたカラーフィルタ134の第1の波長選択フィルタ142に到達する。すなわち、第1の面内でテレセントリック性を有する第1の光線L1a,L1bは、第1の波長選択フィルタ142に到達する。
【0104】
物体側からの第2の光線群の光線L2a,L2bは、第1の面内で光軸Cに対して傾斜する。第2の光線群の光線L2a,L2bは、結像光学系32の焦点面において焦点から外れ、例えば第2の波長選択フィルタ144に到達する。つまり、第2の光線L2a,L2bは、第2の波長選択フィルタ144に到達する。すなわち、第1の面内で非テレセントリック性を有する光線L2a,L2bは、第2の波長選択フィルタ144に到達する。
【0105】
なお、第1の面内で光軸Cに対して傾斜する物体側の光線の一部は、第2の波長選択フィルタ144に到達するほか、光線遮蔽部148に到達する。
【0106】
物体側からの第3の光線群の光線L3は、第2の面内で光軸Cに平行である。第3の光線群の光線L3は、結像光学系32の焦点面の焦点に到達する。このため、第3の光線L3は、焦点面に置かれたカラーフィルタ134の第1の波長選択フィルタ142に到達する。すなわち、第2の面内でテレセントリック性を有する光線L3は、第1の波長選択フィルタ142に到達する。
【0107】
物体側からの第4の光線群の光線L4は、第2の面内で光軸Cに対して傾斜する。第4の光線群の光線L4は、結像光学系32の焦点面において焦点から外れたところである第1の波長選択フィルタ142に到達する。つまり、第4の光線L4は、第1の波長選択フィルタ142に到達する。すなわち、第2の面内で非テレセントリック性を有する光線は、第1の波長選択フィルタ142に到達する。
【0108】
なお、第2の面内で光軸Cに対して傾斜する物体側の光線が光線遮蔽部148に到達することはない。
【0109】
このように、第1の面内において、テレセントリック性を有する光線L1a,L1bと非テレセントリック性を有する光線L2a,L2bは、それぞれ異なる波長選択領域に到達する。一方、第2の面内において、テレセントリック性を有する光線L3と非テレセントリック性を有する光線L4は、いずれも同じ波長選択フィルタ142に到達する。
【0110】
物体側から任意の方向で結像光学系32に到達する任意の光線に対し、その経路を第1の面に投影したもの(
図12及び
図13参照)と第2の面に投影したもの(
図12及び
図14参照)を考える。それらの投影された光線に対し、上述した性質が同様にそれぞれ成立する。つまり、第1の面に投影した光線であり、テレセントリック性を有する光線と非テレセントリック性を有する光線は、カラーフィルタ134の異なる波長選択領域に到達する。一方、第2の面に投影した光線であり、テレセントリック性を有する光線と非テレセントリック性を有する光線は、いずれも同じ波長選択フィルタ142に到達する。
【0111】
本実施形態の光学検査装置4の撮像部14で物体のB光(第1の波長の光線)を撮像する場合、すなわち、B像データIbを得るとき、カラーフィルタ134の第1の波長選択フィルタ142は、B光を撮像部14に向けて射出する。このとき、カラーフィルタ134の第1の波長選択フィルタ142は、R光(第2の波長の光線)を遮蔽する。B光は第1の軸Axの軸方向にテレセントリック性を有する。したがって、光学検査装置4は、撮像部14で、テレセントリック性を有するB像データIbを取得できる。テレセントリック性を有する画像は物体の遠近によらないという性質がある。これにより、第1の軸Axの軸方向に関しては物体の実寸を取得することができる。一方、B光は、第2の軸Ayの軸方向に非テレセントリック性を有する。これはエントセントリック性を有するとも言い換えることができる。つまり、第2の軸Ayの軸方向には画角の広い、遠近感のあるエントセントリック画像を取得することができる。
【0112】
光学検査装置4の撮像部14で物体のR光(第2の波長の光線)を撮像する場合、すなわち、R像データIrを得るとき、カラーフィルタ134の第2の波長選択フィルタ144は、R光を撮像部14に向けて射出する。このとき、カラーフィルタ134の第2の波長選択フィルタ144は、B光(第1の波長の光線)を遮蔽する。R光は第1の軸Axの軸方向にも第2の軸Ayの軸方向にも非テレセントリック性を有する。これはエントセントリック性を有するとも言い換えることができる。つまり、光学検査装置4は、撮像部14で、R光のエントセントリック画像を取得できる。これにより、光学検査装置4は、画角の大きな画像を取得することができる。
【0113】
このように、本実施形態に係る光学検査装置4の撮像部14は、第1の軸Axの方向に沿って、B光(例えば正反射光に相当)、及び、R光(例えば散乱光に相当)の像を同時に取得する。
【0114】
このように、結像光学系32と撮像部14との間で結像光学系32の焦点面に設けられるカラーフィルタ134は、被検体Sからの光線方向に応じて、第1の波長の光線(例えばB光)と、第1の波長とは異なる波長の第2の波長の光線(例えばR光)とを、撮像部14に向けて、射出する。そして、カラーフィルタ134は、撮像部14において、第1の波長に関する第1の像の情報及び第2の波長の光線に関する第2の像の情報をそれぞれ取得させる。このとき、撮像部14は、カラーフィルタ134を通過した第1の波長および第2の波長の光線の画像を同時に取得する。
【0115】
なお、本実施形態に係る光学検査装置4の撮像部14の各画素で取得されるR像データIr、及び、B像データIbの光線強度は、相補的に変化する。すなわち、ある画素において、カラーフィルタ134を通る光線のうち、R光の光線強度が強くなると、その同じある画素において、B光の光線強度は弱まる。また、別のある画素において、B光の光線強度が強くなると、その別のある画素において、R光の光線強度は弱まる。
【0116】
標準表面S1に対する異常部S2など、特徴部分を抽出する画像処理フローについては、第1実施形態で説明した
図8に示すフローチャートに沿って行うことができる。このため、画像処理フローについては、適宜にここでの説明を省略する。
【0117】
まず、プロセッサ(処理回路)18は、撮像部14に像データを取得させると、記憶部20から、結像光学系32の光軸Cとカラーフィルタ34との関係を読み出す(ステップST11)。
【0118】
本実施形態の場合、カラーフィルタ134は、第1の波長選択フィルタ142、第2の波長選択フィルタ144を有する。プロセッサ18は、2つの波長の情報(R像データIr、B像データIb)を画像処理することを認識する。プロセッサ18は、結像光学系32の光軸Cとカラーフィルタ34との関係から、撮像部14で取得したB像データIbが被検体Sの標準表面S1からの正反射光の像と認識し、撮像部14で取得したR像データIrが被検体Sの異常部S2からの散乱光の像と認識する。
【0119】
このため、被検体Sの表面からの正反射光成分について、撮像部14は、B光のB像データとして像を取得する。被検体Sの表面に異物や、光の波長に近いスケールの微細な凹凸などの異常部S2があると、その異常部S2からの光線は散乱し、撮像部14は、R光のR像データとして像を取得する。
【0120】
第1実施形態で説明したように、プロセッサ18は、画像フィルタの畳み込み処理(ST12)及び、B像データとR像データとの比較処理(ST13)を行うことで、被検体Sの凹凸情報を得る(ST14)。
【0121】
このように、本実施形態によれば、被検体Sからの光線方向に関する情報を含む像を取得して、その像を画像処理することにより、被検体Sの表面状態を検査する光学検査方法、光学検査プログラム20a、及び、光学検査装置4を提供することができる。
【0122】
本実施形態に係る例でも、像データに対して必ずしも画像フィルタを畳み込み処理する必要はない。すなわち、ステップST12は、適宜に省略することができる。また、ステップST12、ステップST13は、適宜に順番を入れ替えることができる。
【0123】
本実施形態では、被検体Sの標準表面S1は、曲面など、平面でなくてもよい。本実施形態に係る光学検査システム2は、被検体Sの拡大等により、平面と同視できる部分に対して、光学検査を行うことができる。
【0124】
本実施形態では、第1の波長選択フィルタ142で通過させる光線をB光とし、遮蔽する光線をR光とした。第2の波長選択フィルタ144で通過させる光線をR光とし、遮蔽する光線をB光とした。第1の波長選択フィルタ142で通過させる光線をR光とし、遮蔽する光線をB光とし、第2の波長選択フィルタ144で通過させる光線をB光とし、遮蔽する光線をR光としてもよい。
【0125】
なお、本実施形態では、カラーフィルタ134の2つの色の第1の波長選択フィルタ142および第2の波長選択フィルタ144は、緑光(546.1nm)及びその近傍の波長である、G光の波長を外している。これは、B光とG光の波長の重複部分、G光とR光の波長の重複部分が、B光およびR光の波長の重複部分に比べて多いためである。
【0126】
G光の波長は、B光の波長およびR光の波長の間にあるため、G光の波長を用いるよりもB光の波長およびR光の波長の切り分けが容易なためである。第1の波長の範囲、第2の波長の範囲は、お互いが異なる波長であれば、上述した波長に限らず、何でもよい。また、カラーフィルタ134の異なる波長選択領域を通過する光線のスペクトルは異なるとする。スペクトルが異なれば、色相は異なる。
【0127】
本実施形態では、B光及びR光のような適宜の波長範囲を含む撮像部14を用いる例について説明した。撮像部14として、マルチスペクトルカメラ又はハイパースペクトルカメラを用いることで、例えば可視光の波長領域400nmから760nmを適宜の波長(ハイパースペクトルカメラであれば例えば5nmの波長)ごとに、色を分離して像を得ることができる。したがって、撮像部14としてマルチスペクトルカメラ又はハイパースペクトルカメラを上述したように用いることで、物体面の情報を取得することができる。この場合、カラーフィルタ134は、2つの波長選択フィルタ142,144だけでなく、多数に分けてもよい。
【0128】
以上述べた少なくともひとつの実施形態によれば、被検体からの光線方向に関する情報を含む像を取得して、その像を画像処理することにより、被検体の表面状態を検査する光学検査方法、光学検査プログラム、及び、光学検査装置を提供することができる。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
2…光学検査システム、4…光学検査装置、6…ディスプレイ、12…光学装置、13…カメラ、14…撮像部、14a…撮像面、16…光源、32…結像光学系、34…カラーフィルタ、36…ハーフミラー、42…第1の波長選択フィルタ、44…第2の波長選択フィルタ、46…第3の波長選択フィルタ、48…光線遮蔽部、S1…標準表面、S2…異常部、S3…エッジ部