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特開2023-31034巻取りロールの品質管理装置、巻取りロールの品質管理方法及び巻取りロールの品質管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031034
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】巻取りロールの品質管理装置、巻取りロールの品質管理方法及び巻取りロールの品質管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20230101AFI20230301BHJP
   B65H 18/28 20060101ALI20230301BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20230301BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230301BHJP
【FI】
G06Q10/00
B65H18/28
G06Q50/04
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136496
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】521374110
【氏名又は名称】株式会社SUNAMI
(71)【出願人】
【識別番号】516292030
【氏名又は名称】株式会社クロスコンパス
(72)【発明者】
【氏名】神田 敏満
(72)【発明者】
【氏名】大和田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克信
【テーマコード(参考)】
3F055
5L049
【Fターム(参考)】
3F055AA05
5L049AA20
5L049CC04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】巻取りロールの製造過程において、製造中の巻取りロールについて、巻取りロールの内部状態の計算値をリアルタイムに出力する巻取りロールの品質管理装置、巻取りロールの品質管理方法及び巻取りロールの品質管理プログラムを提供する。
【解決手段】巻取りロールの品質管理装置102は、巻取りロールの製造時において、巻取りロールの製造時における物性パラメータである事前データ111と、巻取りロールを巻き取る巻取り装置101に設けられたセンサー等の取得部からの巻取りロールを製造するために必要な巻取り装置の運転パラメータである製造中データ112とを入力し、製造時における巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を第1のアルゴリズム113に基づいて計算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算する第1のアルゴリズム計算部を有する巻取りロールの品質管理装置。
【請求項2】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第1のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの製造に関する合否判断の結果である第1の合否判断結果との間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを生成する第1の学習部を有する請求項1記載の巻取りロールの品質管理装置。
【請求項3】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第1のロール内部状態計算値を入力し、前記第1の学習済みAIモデルを用いて、前記巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果を出力する第1の推論部を有する請求項1又は2記載の巻取りロールの品質管理装置。
【請求項4】
前記巻取りロールの品質管理装置において、
前記第1の推論部は、
前記巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果が合格と推論された場合、入力された前記第1のロール内部状態計算値に対応する前記製造中データを、前記巻取り装置における次回の運転パラメータである製造用データに反映させる請求項3記載の巻取りロールの品質管理装置。
【請求項5】
前記巻取りロールの品質管理装置において、
前記第1の推論部は、
前記巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果が不合格と推論された場合、エラーを出力する請求項3又は4記載の巻取りロールの品質管理装置。
【請求項6】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、
前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算する巻取りロールの品質管理方法。
【請求項7】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力させ、
前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算させる巻取りロールの品質管理プログラム。
【請求項8】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算する第1のアルゴリズム計算部と、
前記第1のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第1の示唆データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを生成する第1の学習部を有する巻取りロールの品質管理装置。
【請求項9】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第1のロール内部状態計算値を入力し、前記第1の学習済みAIモデルを用いて、前記第1の示唆データを出力する第1の推論部を有する請求項8記載の巻取りロールの品質管理装置。
【請求項10】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、
前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算し、
前記第1のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第1の示唆データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを生成する巻取りロールの品質管理装置。
【請求項11】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力させ、
前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算させ、
前記第1のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第1の示唆データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを生成させる巻取りロールの品質管理プログラム。
【請求項12】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
不具合が発生した前記巻取りロールの第1のロール内部状態計算値を入力し、前記第1のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを用いて、第1の原因解析データを出力する第1の推論部を有する巻取りロールの品質管理装置。
【請求項13】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
不具合が発生した前記巻取りロールの第1のロール内部状態計算値を入力し、
前記第1のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを用いて、第1の原因解析データを出力する巻取りロールの品質管理方法。
【請求項14】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
不具合が発生した前記巻取りロールの第1のロール内部状態計算値を入力させ、
前記第1のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを用いて、第1の原因解析データを出力させる巻取りロールの品質管理プログラム。
【請求項15】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算する第2のアルゴリズム計算部と、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成する第2の学習部を有する巻取りロールの品質管理装置。
【請求項16】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第2のロール内部状態計算値を入力し、前記第2の学習済みAIモデルを用いて、前記巻取りロールの輸送又は保管に関する第2の合否判断結果を出力する第2の推論部を有する請求項14又は15記載の巻取りロールの品質管理装置。
【請求項17】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算し、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成する巻取りロールの品質管理方法。
【請求項18】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算させ、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成させる巻取りロールの品質管理プログラム。
【請求項19】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算する第2のアルゴリズム計算部と、
前記第2のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第2の示唆データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成する第2の学習部を有する巻取りロールの品質管理装置。
【請求項20】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第2のロール内部状態計算値を入力し、前記第2の学習済みAIモデルを用いて、前記第2の示唆データを出力する第2の推論部を有する請求項19記載の巻取りロールの品質管理装置。
【請求項21】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算し、
前記第2のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第2の示唆データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成する巻取りロールの品質管理方法。
【請求項22】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算させ、
前記第2のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第2の示唆データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成させる巻取りロールの品質管理プログラム。
【請求項23】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記第2のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを用いて、第2の原因解析データを出力する第2の推論部を有する巻取りロールの品質管理装置。
【請求項24】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、
前記第2のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを用いて、第2の原因解析データを出力する巻取りロールの品質管理方法。
【請求項25】
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力させ、
前記第2のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを用いて、第2の原因解析データを出力させる巻取りロールの品質管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
巻取りロールの品質管理装置、巻取りロールの品質管理方法及び巻取りロールの品質管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるフィルムや繊維等のフレキシブルな材料を用いたフレキシブル・エレクトロニクス(Flexible Electronics)や製造工程の一部または全てに塗布・印刷技術を適用したプリンタブル・エレクトロニクス(Printable Electronics)の進展に伴い、 プラスチックフィルム等の薄膜で柔軟な素材であるウェブは、高機能な基幹素材として広く採用されるようになっている。特に、フラットパネルディスプレイ、無線タグ、有機メモリ、圧力センサーシート、生体電位センサー、有機イメージセンサーシート、フレキシブル基板やフレキシブル電池等には、プラスチックフィルムが基幹素材として欠かせないものとなっている。
【0003】
ここで、ロール・ツー・ロール法によるプラスチックフィルムの二次加工工程の概略を説明する。製膜後のフィルムを巻き取ったロールを、巻出し装置によって巻き出しながら搬送し、途中の工程として、塗工、蒸着、印刷、乾燥、裁断などのフィルムの付加価値を高める各種プロセス、二次加工を経て、巻取り装置によって再びロール状に巻き取る。
【0004】
このようなプラスチックフィルムは、完成品としての用途に合わせて上記の様々な二次加工が施され、ロール状に巻き取られて次の加工工程まで保管、輸送され、これを繰り返しながらフィルム製品として仕上げられていくのが一般的である。ここで、巻取りロールが保管、輸送される際、ロールの内部応力状態が環境温度および時間経過に応じて変化し、ロール巻取り直後には顕在しなかった型崩れやシワなどに代表される巻取り不良が発生し、巻取り不良が発生した箇所についてはフィルムの平面性、平坦性が失われ、商品価値が低下する場合がある。なお、ロールの内部応力状態については、巻取りロールにおける、半径方向応力、円周方向応力、空気層厚さを意味する。
【0005】
輸送時及び倉庫等の保管場所に保管された巻取りロールの環境温度は、季節や当該保管場所が位置する国や地域、熱処理の有無や熱処理条件などに応じ、ロール製造工程における巻取り時とは異なる場合が多い。これらの環境条件に起因してロール温度が変化すると、フィルムに熱歪みが生じて巻取りロールの内部応力が変化する。また、保管する期間が長くなるほど、フィルムにクリープが生じて内部応力が変化する。
【0006】
熱歪みは温度変化にともなうプラスチックフィルムの膨張あるいは収縮に起因し、この変形によって内部応力が変化する。また、フィルムは、高分子材料を原料とするために粘弾性特性を有する。巻取りロール内のフィルムは応力が負荷された状態にあるため、フィルムにクリープが生じて内部応力が変化する。なお、応力と温度は高分子材料のクリープ挙動に影響を及ぼすことが知られている(非特許文献1)。したがって、巻取りロールにおける内部応力およびロール温度がフィルムのクリープに作用すると考えられる。
【0007】
そして、巻取りロールの内部応力解析を行うにあたり 、実際の巻取りロールの挙動に近いシミュレーションを行うことのできる巻取りロールの内部応力解析プログラムが知られている(特許文献1)。
【0008】
また、ウェブを巻き取った巻取りロールの内部応力の解析プログラムであって、巻取りロールと新たに巻き取られた層との間に形成される初期空気層の厚さを算出し、巻取りロール内における空気層の厚さを計算し、ロール内の半径方向応力を算出する方法が知られている(特許文献2)。
さらに、熱歪みを考慮した熱弾性モデルおよび粘弾性特性を考慮した粘弾性モデルがそれぞれ知られている。巻取りロールが保管、輸送、熱処理される間、内部応力には熱歪みと粘弾性特性の効果が同時に作用することから、それぞれの先行研究の巻取りモデルにより得られる内部応力の予測値は十分な予測精度を確保しているとは言い難い。この課題に対しフィルムの粘弾性特性と熱歪みの効果を複合した非定常状態における巻取りロールの内部応力に関する熱粘弾性モデルが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-64650号公報
【特許文献2】特開2012-017159号公報
【0010】
【非特許文献1】神田敏満,外1名,「プラスチックフィルムの粘弾性特性を考慮した巻取りロール内部の熱応力解析 (第 2 報,熱粘弾性モデルとその実験検証) 」,日本機械学会論文集(C 編),第77巻,第783号,2011年11月,p.4242(p.282)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ウェブハンドリングの技術分野において、巻取りロールの製造過程において製造中の巻取りロールに関し、巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値をリアルタイムに出力することはできなかった。
【0012】
本願発明は、巻取りロールの製造過程において、製造中の巻取りロールについて、巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値をリアルタイムに出力することが可能な、巻取りロールの品質管理装置、巻取りロールの品質管理方法及び巻取りロールの品質管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る巻取りロールの品質管理装置は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算する第1のアルゴリズム計算部を有することを特徴とする。
【0014】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第1のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの製造に関する合否判断の結果である第1の合否判断結果との間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを生成する第1の学習部を有することを特徴とする。
【0015】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第1のロール内部状態計算値を入力し、前記第1の学習済みAIモデルを用いて、前記巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果を出力する第1の推論部を有することを特徴とする。
【0016】
前記巻取りロールの品質管理装置において、
前記第1の推論部は、
前記巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果が合格と推論された場合、入力された前記第1のロール内部状態計算値に対応する前記製造中データを、前記巻取り装置における次回の運転パラメータである製造用データに反映させることを特徴とする。
【0017】
前記巻取りロールの品質管理装置において、
前記第1の推論部は、
前記巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果が不合格と推論された場合、エラーを出力することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る巻取りロールの品質管理方法は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、
前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る巻取りロールの品質管理プログラムは、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力させ、
前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る巻取りロールの品質管理装置は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算する第1のアルゴリズム計算部と、
前記第1のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第1の示唆データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを生成する第1の学習部を有することを特徴とする。
【0021】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第1のロール内部状態計算値を入力し、前記第1の学習済みAIモデルを用いて、前記第1の示唆データを出力する第1の推論部を有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る巻取りロールの品質管理方法は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、
前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算し、
前記第1のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第1の示唆データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを生成することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る巻取りロールの品質管理プログラムは、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの物性パラメータである事前データと、前記巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力させ、
前記巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算させ、
前記第1のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第1の示唆データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを生成させることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る巻取りロールの品質管理装置は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
不具合が発生した前記巻取りロールの第1のロール内部状態計算値を入力し、前記第1のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを用いて、第1の原因解析データを出力する第1の推論部を有することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る巻取りロールの品質管理方法は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
不具合が発生した前記巻取りロールの第1のロール内部状態計算値を入力し、
前記第1のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを用いて、第1の原因解析データを出力することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る巻取りロールの品質管理プログラムは、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
不具合が発生した前記巻取りロールの第1のロール内部状態計算値を入力させ、
前記第1のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデルを用いて、第1の原因解析データを出力させることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る巻取りロールの品質管理装置は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算する第2のアルゴリズム計算部と、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成する第2の学習部を有することを特徴とする。
【0028】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第2のロール内部状態計算値を入力し、前記第2の学習済みAIモデルを用いて、前記巻取りロールの輸送又は保管に関する第2の合否判断結果を出力する第2の推論部を有することを特徴とする。
【0029】
本発明に係る巻取りロールの品質管理方法は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算し、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成することを特徴とする。
【0030】
本発明に係る巻取りロールの品質管理プログラムは、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算させ、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成させることを特徴とする。
【0031】
本発明に係る巻取りロールの品質管理装置は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算する第2のアルゴリズム計算部と、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成する第2の学習部を有することを特徴とする。
【0032】
前記巻取りロールの品質管理装置はさらに、
前記第2のロール内部状態計算値を入力し、前記第2の学習済みAIモデルを用いて、前記巻取りロールの輸送又は保管に関する第2の合否判断結果を出力する第2の推論部を有することを特徴とする。
【0033】
本発明に係る巻取りロールの品質管理方法は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算し、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成することを特徴とする。
【0034】
本発明に係る巻取りロールの品質管理プログラムは、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズムに基づいて計算させ、
前記第2のロール内部状態計算値と前記巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを生成させることを特徴とする。
【0035】
本発明に係る巻取りロールの品質管理装置は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、前記第2のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを用いて、第2の原因解析データを出力する第2の推論部を有することを特徴とする。
【0036】
本発明に係る巻取りロールの品質管理方法は、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理方法において、
コンピュータが、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力し、
前記第2のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを用いて、第2の原因解析データを出力することを特徴とする。
【0037】
本発明に係る巻取りロールの品質管理プログラムは、
巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理プログラムにおいて、
コンピュータに、
前記巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データを入力させ、
前記第2のロール内部状態計算値と、前記巻取りロールを製造するために必要な前記巻取り装置の運転パラメータである製造中データと前記巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデルを用いて、第2の原因解析データを出力させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、本発明に係る巻取りロールの品質管理装置は、巻巻取りロールの品質管理を行う巻取りロールの品質管理装置において、巻取りロールの物性パラメータである事前データと、巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの巻取りロールを製造するために必要な巻取り装置の運転パラメータである製造中データとを入力し、巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズムに基づいて計算することにより、巻取りロールの製造過程において、製造中の巻取りロールについて、巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値をリアルタイムに出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】巻取りロールの品質管理装置のブロック図
図2】ニップローラを有する場合の中心駆動による巻取りロール機の概念図
図3】第1のアルゴリズムを用いて製造時のロール内部状態計算値を算出する場合のフローチャート
図4】第1のアルゴリズムを用いて製造時のロール内部状態計算値を第1のAIモデルに学習させる場合のフローチャート
図5】第1のアルゴリズムを用いて製造時のロール内部状態計算値を第1のAIモデルに推論させる場合のフローチャート
図6】第1のアルゴリズムを用いて製造時の次工程の示唆データを第1のAIモデルに推論させる場合のフローチャート
図7】市場フィードバックデータを第1のAIモデルを用いて不具合の原因となる製造中データを推論させる場合のフローチャート
図8】第2のアルゴリズムを用いて輸送保管時のロール内部状態計算値を第2のAIモデルに学習させる場合のフローチャート
図9】第2のアルゴリズムを用いて輸送保管時のロール内部状態計算値を第2のAIモデルに推論させる場合のフローチャート
図10】第2のアルゴリズムを用いて輸送保管時の次工程の示唆データを第2のAIモデルに推論させる場合のフローチャート
図11】市場フィードバックデータを第2のAIモデルを用いて不具合の原因となる輸送保管データを推論させる場合のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の一形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る巻取りロールの品質管理装置を中心とした巻取りロールの品質管理システムのブロック図である。
巻取り装置101は、巻取りロールの製造工程の最終工程においてウェブを巻取る巻取り装置である。ここで、巻取りロールの品質管理装置102は、一般的には、中央演算処理装置と当該中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)に接続された主記憶装置(メモリ)とを有するコンピュータ等の情報処理装置である。
【0041】
本発明の第1の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102は、巻取りロールの製造時において、巻取りロールの製造時における物性パラメータである事前データ111と、巻取りロールを巻き取る巻取り装置101に設けられた図示しないセンサー等の取得部からの巻取りロールを製造するために必要な巻取り装置の運転パラメータである製造中データ112とを入力し、製造時における巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、後述する第1のアルゴリズム113に基づいて計算する(図示しないが、第1のアルゴリズム113に対応して設けられる)第1のアルゴリズム計算部を有する。
このように、巻取りロールの製造過程において、事前データ111のみならず、巻取り装置101に設けたセンサー等の取得部からの製造中の巻取りロールに関する製造中データ112を巻取り装置101に入力するとともに、巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を出力することにより、製造中の巻取りロールの内部状態をリアルタイムに把握することが可能となる。
【0042】
ここで、事前データ111と製造中データ112の例を、以下にそれぞれ挙げる。
・事前データ(巻取りロールの製造前に事前に取得しておく必要がある入力データ)
ウェブに関する必須データ:ヤング率(半径方向と円周方向)、厚み
コアに関する必須データ:外半径、ヤング率
ウェブに関する任意データ(優先高):線膨張係数(半径方向と円周方向)(※1)、粘弾性特性(半径方向と円周方向)
コアに関する任意データ(優先高):線膨張係数
ウェブに関する任意データ(優先中):表面粗さ、ポアソン比、ウェブ間の静摩擦係数
コアに関する任意データ(優先中):肉厚、ポアソン比
ニップローラに関する任意データ(優先中):外半径、ゴム硬度(あるいはゴムのヤング率)、ポアソン比
ウェブに関する任意データ(優先低):透気度、熱伝導率(※1)、比熱(※1)、密度(※1)
コアに関する任意データ(優先低):熱伝導率(※1)、比熱(※1)、密度(※1)
・製造中データ(巻取りロールの製造中にセンサーで検出される入力データ)
必須データ:張力、ウェブ積層数(あるいは巻取り長)
任意データ(優先高):室内温度(※1)、室内湿度(※1)、製造時間(※2)
任意データ(優先中):ライン速度、ウェブ幅、ニップ荷重
任意データ(優先低):幅方向のウェブ厚みプロファイル
(※1は保管環境の温度・湿度、※2は保管時間に関係するデータ)
【0043】
また、本発明の第2の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102はさらに、第1のアルゴリズム計算部が計算する第1のロール内部状態計算値と巻取りロールの製造に関する合否判断の結果である第1の合否判断結果との間の相関関係を第1の学習前AIモデルに学習させ、第1の学習済みAIモデル114を生成する(図示しないが、第1の学習済みAIモデル114に対応して設けられる)第1の学習部を有する。
ここで、第1の学習部が学習させる第1の学習済みAIモデル114は、(図示しない)未学習のニューラルネットワークである第1の学習前AIモデルについて、第1のロール内部状態計算値と巻取りロールの製造に関する合否判断の結果である第1の合否判断結果との間の相関関係を学習させることにより生成される。
また、当該ニューラルネットワークとしては、オートエンコーダ、CNN(Convolutional Neural Network)又はRNN(Recurrent Neural Network)等から適宜選択して使用することができる。そして、当該第1の学習部による学習方法としては、例えば、巻取りロールの製造に関する合否判断の結果である第1の合否判断結果を教師データ(ラベル)とした教師あり学習を採用することができる。この第1の学習済みAIモデル114については、製造中の巻取りロールの製造に関する合否判断に関する推論に用いることができる。
【0044】
さらに、本発明の第3の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102は、第1のアルゴリズム計算部が計算する第1のロール内部状態計算値と巻取りロールの製造に関する合否判断の結果である第1の合否判断結果との間の相関関係を第1の学習前AIモデルに学習させ、第1の学習済みAIモデル114の生成後において、製造中の巻取りロールに関する第1のロール内部状態計算値を第1の学習済みAIモデル114に入力し、巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果を出力する(図示しないが、第1の学習済みAIモデル114に対応して設けられる)第1の推論部を有する。
【0045】
次に、当該第1の推論部は、巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果が合格と推論された場合、入力された第1のロール内部状態計算値に対応する製造中データ112を、巻取り装置101における次回の運転パラメータである製造用データ117に反映させることにより、最適な運転パラメータにより巻取りロールの最適な製造を行うことができる。
【0046】
また、第1の推論部は、巻取りロールの製造に関する第1の合否判断結果が不合格と推論された場合、第1の通知出力115としてエラーを出力する。さらに、当該エラーが出力された場合、製造ラインを自動的に停止することにより、品質が不合格とされうる巻取りロールの製造をいち早く停止して無駄なコストを削減することができる。
【0047】
そして、本発明の第4の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102は、巻取りロールの製造時において、巻取りロールの物性パラメータである事前データ111と、巻取りロールを巻き取る巻取り装置に設けられた取得部からの巻取りロールを製造するために必要な巻取り装置の運転パラメータである製造中データ112とを入力し、巻取りロールの内部状態の計算値である第1のロール内部状態計算値を、第1のアルゴリズム113に基づいて計算する(図示しないが、第1のアルゴリズム113に対応して設けられる)第1のアルゴリズム計算部と、第1のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第1の次工程示唆データ116との間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデル114を生成する(図示しないが、第1の学習済みAIモデル114に対応して設けられる)第1の学習部を有する。
この第1の学習済みAIモデル114については、次工程の製造パラメータを示唆する第1の次工程示唆データ116に関する推論に用いることができる。
【0048】
さらに、巻取りロールの品質管理装置102は、第1のアルゴリズム計算部が第1のアルゴリズム113に基づいて計算した巻取りロールの第1のロール内部状態計算値を入力し、第1の学習済みAIモデル114を用いて、第1の次工程示唆データ116を出力する(図示しないが、第1の学習済みAIモデル114に対応して設けられる)第1の推論部を有する。
この第1の推論部により、巻取りロールの内部状態に基づいて、次工程の製造ラインの製造パラメータを示唆するデータである第1の次工程示唆データ116を出力し、巻取りロールの次工程における製造等を最適に行うことができる。
【0049】
次に、本発明の第5の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102は、市場において不具合が発生した巻取りロールについて、市場フィードバックデータとして第1のロール内部状態計算値を入力し、当該第1のロール内部状態計算値と、当該巻取りロールを製造するために必要な巻取り装置の運転パラメータである製造中データと巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデル114を用いて、第1の原因解析データ119を出力する(図示しないが、第1の学習済みAIモデル114に対応して設けられる)第1の推論部を有する。
この第1の推論部により、市場からのフィードバックデータとして第1のロール内部状態計算値を入力し、不具合の原因となった第1の原因解析データを出力することができ、巻取りロールに関して不具合の解析が容易になる。
【0050】
また、本発明の第6の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102は、巻取りロールの輸送又は保管時において、巻取りロールの輸送または保管に関する環境パラメータである輸送保管データ121を入力し、輸送又は保管時における巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、後述する第2のアルゴリズム122に基づいて計算する(図示しないが、第2のアルゴリズム122に対応して設けられる)第2のアルゴリズム計算部と、第2のアルゴリズム計算部が計算する第2のロール内部状態計算値と巻取りロールの輸出又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を第1の学習前AIモデルに学習させ、第2の学習済みAIモデル123を生成する(図示しないが、第2の学習済みAIモデル123に対応して設けられる)第2の学習部とを有する。
この第2の学習済みAIモデル123については、輸送又は保管中の巻取りロールの輸送又は保管の合否判断に関する推論に用いることができる。
【0051】
ここで、輸送保管データ121の例を、以下に挙げる。
・保管データ(巻取りロールの輸送保管状態の想定値としての入力データ:巻取りロールの輸送保管状態の未来を推定するための入力値)
必須項目:時間
任意項目(優先高):温度(あるいは温度差)(※1)、湿度(あるいは湿度差)(※1)、保管時間(※2)
任意項目(優先中):温度変化速度、湿度変化速度、巻取りロールの内側と外側の熱伝達率
任意項目(優先低):温度や湿度の変化量・変化加速度の任意変動
(※1は保管環境の温度・湿度、※2は保管時間に関係するデータ)
【0052】
さらに、本発明の第7の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102はさらに、輸送又は保管中の巻取りロールの第2のロール内部状態計算値を入力し、第2の学習済みAIモデル123を用いて、巻取りロールの輸送又は保管に関する第2の合否判断結果を出力する(図示しないが、第2の学習済みAIモデル123に対応して設けられる)第2の推論部を有する。
【0053】
そして、第2の推論部は、巻取りロールの輸送又は保管に関する第2の合否判断結果が不合格と推論された場合、第2の通知出力124としてエラーを出力する。
さらに、当該エラーが出力された場合、輸送又は保管を停止することにより、品質が不合格とされうる巻取りロールの輸送又は保管をいち早く停止して無駄なコストを削減することができる。
【0054】
次に、本発明の第8の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102は、巻取りロールの輸送又は保管時において、巻取りロールの輸送又は保管に関する環境パラメータである輸送保管データ121を入力し、巻取りロールの内部状態の計算値である第2のロール内部状態計算値を、第2のアルゴリズム122に基づいて計算する(図示しないが、第2のアルゴリズム122に対応して設けられる)第2のアルゴリズム計算部と、第2のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第2の次工程示唆データ125との間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデル123を生成する(図示しないが、第2の学習済みAIモデル123に対応して設けられる)第2の学習部を有する。
この第2の学習済みAIモデル123については、次工程の製造パラメータを示唆する第2の次工程示唆データ125に関する推論に用いることができる。
【0055】
また、巻取りロールの品質管理装置102は、第2のアルゴリズム計算部が第2のアルゴリズム122に基づいて計算した巻取りロールの第2のロール内部状態計算値を入力し、第2の学習済みAIモデル123を用いて、第2の次工程示唆データ125を出力する(図示しないが、第1の学習済みAIモデル123に対応して設けられる)第2の推論部を有する。
この第2の推論部により、輸送又は保管時における巻取りロールの内部状態に基づいて、次工程の製造ラインの製造パラメータを示唆するデータである第2の次工程示唆データ125を出力し、巻取りロールの次工程における製造等を最適に行うことができる。
【0056】
さらに、本発明の第9の実施形態において、巻取りロールの品質管理装置102は、市場において不具合が発生した巻取りロールについて、第2のロール内部状態計算値を入力し、当該第2のロール内部状態計算値と、巻取りロールの輸送又は保管における環境パラメータである輸送保管データを含む不具合の原因となったデータである第2の原因解析データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデル123を用いて、第2の原因解析データ127を出力する(図示しないが、第2の学習済みAIモデル123に対応して設けられる)第2の推論部を有する。
この第2の推論部により、市場からのフィードバックデータとして第2のロール内部状態計算値を入力し、不具合の原因となった第2の原因解析データを出力することができ、巻取りロールに関して輸送又は保管時における不具合の解析が容易になる。
【0057】
図2は、基本的な巻取り方式の一つであるニップローラ203を有する場合の中心駆動による巻取り装置の概念図を示す。プラスチックフィルム等のウェブ201は、巻取り張力Twとニップローラ203とによる押付け荷重Lが与えられた状態で巻芯202に巻き取られ、巻取りの進行にともない新たな層が追加されると、既に巻き取られた部分の応力が逐次変化する。
これと同時に、ウェブ201の粘弾性特性とロール温度の変化にともなう熱歪みの効果により、巻取り開始から巻取り中および巻取り完了後も内部応力は時々刻々と変化する。
なお、巻取り装置にニップローラ203は必ずしも必須ではなく、ニップローラ203が無くても適切な巻取り張力Twが得られる場合には省略することが可能である。
【0058】
また、ウェブ201は、通常大気中で巻き取られることとなる。その際、周辺の空気はその粘性作用によって巻取り中における最外層と既に巻き取られた部分の間に流入し、その結果として巻取りロール内のウェブ201間に空気層が形成される。
このような空気層が存在する場合、巻取りロール204の見かけの剛性は著しく低下し、内部応力が大きく変化する。これに対し、ニップローラ203は巻き込み空気量を制限し、巻取りロール204の見かけの剛性を調整する目的で使用される。
【0059】
図2における巻取りロールの概念図に関し、以下、第1のアルゴリズムを説明する。
ここで、巻取りモデルの定式化に際し、(1)巻取りロールは完全な円筒形状を保ち、ウェブの厚さ、幅、表面粗さなどは均一である、(2)ウェブかスパイラル状に巻かれている効果は無視でき、巻取りロールを薄肉円筒の重ね合わせで表現し得る、(3)巻取りロール内部において半径方向応力と円周方向応力が支配的であり、軸方向応力は考慮しなくてよいとする仮定を置く。
【0060】
まず、巻取りロールの製造時において、第1のアルゴリズムによる半径方向における第1の内部状態計算値の一つである第1の半径方向応力σrの算出に関しては以下の通りである。
新たなウェブを巻取りロールの最外層に巻き取ったことによる当該巻取りロール内の前記半径方向の応力増分Δσrを、以下の式(1)で表される巻取りロールの最内層の境界条件と、以下の式(2)で表される最外層の境界条件と、以下の基礎方程式(3)と、に基づいて算出する。
【数1】
・・・(1)
θ:ウェブと空気層を複合した等価層としたときの円周方向のヤング率(Pa)
c:巻芯のヤング率(Pa)
ν:ウェブのポアソン比
c:前記巻芯の半径(m)

【数2】
・・・(2)
out:巻取りロールの最外層半径(m)

【数3】
・・・(3)
r:巻取りロールの半径(m)
r:ウェブと空気層を複合した等価層における半径方向のヤング率(Pa)
【0061】
そうすると、第1のアルゴリズムによる半径方向における第1の内部状態計算値の一つである、第i層まで巻き取った巻取りロール内の第j層における第1の半径方向応力σr,j.iの算出に関しては以下の通りである。
【数4】
・・・(4)
σr,j.i:第i層まで巻き取った巻取りロールにおける第j層の半径方向応力(Pa)
【0062】
また、巻取りロールの製造時において、第1のアルゴリズムにおける第1の内部状態計算値の一つである第1の円周方向応力σθの算出に関しては、以下の式(5)にσrとrの計算値を代入することにより算出できる。
【数5】
・・・(5)
【0063】
次に、巻取りロールの製造時において、第1のアルゴリズムにおける第1の内部状態計算値の一つである第1の空気層厚さhaの算出に関しては、巻取りロールと新たに巻き取られたウェブ層との間に形成される初期空気層の厚さha0(m)を、以下の式(6)に基づいて算出し、第i層のウェブ層における解析対象の空気層の厚さha.i(m)を、以下の式(8)に基づいて算出することができる。

【数6】
・・・(6)
out:巻取りロールの最外層半径(m)
η:空気の粘度(Pa・s)
V:巻取り速度(m/s)
W:巻取り張力(N/m)
λ:ウェブの幅W(m)に関する無次元パラメータであり以下の式(7)で定義される

【数7】
・・・(7)
そして、時間増分Δtiにおける第i層のウェブにおける解析対象の空気層 の厚さha.i(m)を、以下の式(8)に基づいて算出する。

【数8】
・・・(8)
【0064】
次に、図2における巻取りロールの概念図に関し、以下、第2のアルゴリズムを説明する。
ここで、巻取りモデルの定式化に際し、(1)巻取りロールは完全な円筒形状を保ち、ウェブの厚さ、幅、表面粗さなどは均一である、(2)ウェブかスパイラル状に巻かれている効果は無視でき、巻取りロールを薄肉円筒の重ね合わせで表現し得る、(3)巻取りロール内部において半径方向応力と円周方向応力が支配的であり、軸方向応力は考慮しなくてよいとする仮定を置くのは、第1のアルゴリズムと同様である。
【0065】
まず、巻取りロールの輸送又は保管時において、第2のアルゴリズムによる半径方向における第2の内部状態計算値の一つである第2の半径方向応力σrの算出に関しては以下の通りである。
最内層の境界条件式(9)及び最外層の境界条件式(10)を、前記巻取りロールの半径方向の応力増分に関する下記基礎方程式(11)に用いることにより、時間増分Δti における巻取りロールの第k層に生じる応力増分Δσr.k(ti)を求め、求められた応力増分Δσr .k(ti)を、式(12)に適用して、時間tiにおける半径方向応力σr .k(ti) を求めることができる。
【数9】
・・・(9)
θ(Δti):ウェブの円周方向クリープ関数(1/Pa)
r:巻取りロールの半径(m)
αθ:ウェブの円周方向膨張係数(1/℃)
f.k(ti):巻取りロールの第k番目のウェブ層の時間tiにおけるウェブの温度(℃)
ΔTf.k(ti):巻取りロールの第k番目のウェブ層の時間tiにおけるウェブの温度増分(℃)
ΔTc(ti):時間tiにおける巻芯の温度増分(℃)
c:巻芯の半径(m)
c:巻芯のヤング率(Pa)
αc:巻芯の線膨張係数(1/℃)

【数10】
・・・(10)
out:巻取りロールの最外層半径(m)

【数11】
・・・(11)
α:ウェブの半径方向線膨張係数(1/℃)
(Δti):時間増分Δtにおけるウェブの半径方向クリープ関数(1/Pa)

【数12】
・・・(12)
【0066】
また、巻取りロールの輸送又は保管時において、第2のアルゴリズムにおける第2の内部状態計算値の一つである第2の円周方向応力σθの算出に関しては、第1のアルゴリズムにおける式(5)を用いた算出と同様に算出ができるので、ここではその説明を省略する。
【0067】
次に、巻取りロールの輸送又は保管時において、第2のアルゴリズムによる円周方向における第2の内部状態計算値の一つである第2の空気層厚さhaの算出に関しては、第1のアルゴリズムにおける式(8)を用いた算出と同様に算出ができるので、ここではその説明を省略する。
【0068】
図3は、本実施形態のうち、第1の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、第1のアルゴリズムを用いて製造時のロール内部状態計算値を算出する場合のフローチャートである。
【0069】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S301)。
まず、図1における品質管理装置102に巻取りロールの製造時において、巻取りロールの製造時における物性パラメータである事前データ111が入力される(S302)。
また、巻取りロールにおいて、巻取りロールの内部状態の計算値の対象となる層番号を指定する変数n(nは正の整数)が1に初期化される(S303)。
そして、品質管理装置102が巻取り装置101に接続されている場合、巻取り装置101からの巻取りロールの製造時における製造中データ112が品質管理装置102の第1のアルゴリズム計算部にリアルタイムに入力される(S304)。
次に、第1のアルゴリズム計算部により、第1のアルゴリズム113を用いた第1層目から第n層目迄の第1のロール内部状態計算値の算出がリアルタイムに実行される(S305)。
【0070】
第1のアルゴリズム113を用いた第1層目から第n層目迄の第1のロール内部状態計算値の算出の実行完了後、ロールの巻取りが完了したかが判断される(S306)。
ステップS306において、ロールの巻取りが完了していないと判断された場合(NOの場合)、層番号を指定する変数nに+1して、ステップS304に移動してステップS304以降を、ロールの巻取りが完了するまで実行する(S307)。
或いは、ステップS306において、ロールの巻取りが完了したと判断された場合(YESの場合)、品質管理装置102の動作は終了する(S308)。
【0071】
図4は、本実施形態のうち、第2の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、第1のアルゴリズムを用いて製造時のロール内部状態計算値を算出する場合のフローチャートである。
【0072】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S401)。
まず、図1における品質管理装置102に巻取りロールの製造時において、巻取りロールの製造時における物性パラメータである事前データ111が入力される(S402)。
また、巻取りロールにおいて、巻取りロールの内部状態の計算値の対象となる層番号を指定する変数n(nは正の整数)が1に初期化される(S403)。
そして、品質管理装置102が巻取り装置101に接続されている場合、巻取り装置101からの巻取りロールの製造時における製造中データ112が品質管理装置102の第1のアルゴリズム計算部にリアルタイムに入力される(S404)。
次に、第1のアルゴリズム計算部により、第1のアルゴリズム113を用いた第1層目から第n層目迄の第1のロール内部状態計算値の算出がリアルタイムに実行される(S405)。
第1のロール内部状態計算値が算出された後、第1のアルゴリズム計算部が計算する第1のロール内部状態計算値と巻取りロールの製造に関する合否判断の結果である第1の合否判断結果との間の相関関係を第1の学習前AIモデルに学習させ、第1の学習済みAIモデル114を生成する(S406)。
【0073】
第1のアルゴリズム113を用いた第1層目から第n層目迄の第1のロール内部状態計算値の算出の実行完了後、ロールの巻取りが完了したかが判断される(S407)。
ステップS407において、ロールの巻取りが完了していないと判断された場合(NOの場合)、層番号を指定する変数nに+1して、ステップS404以降を、ロールの巻取りが完了するまで実行する(S408)。
或いは、ステップS407において、ロールの巻取りが完了したと判断された場合(YESの場合)、品質管理装置102の動作は終了し、第1の学習済みAIモデル114の生成が完了する(S409)。
【0074】
図5は、本実施形態のうち、第3の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、第1のアルゴリズムを用いて製造時のロール内部状態計算値を第1のAIモデルに学習させる場合のフローチャートである。
【0075】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S501)。
まず、図1における品質管理装置102に巻取りロールの製造時において、巻取りロールの製造時における物性パラメータである事前データ111が入力される(S502)。
また、巻取りロールにおいて、巻取りロールの内部状態の計算値の対象となる層番号を指定する変数n(nは正の整数)が1に初期化される(S503)。
そして、品質管理装置102が巻取り装置101に接続されている場合、巻取り装置101からの巻取りロールの製造時における製造中データ112が品質管理装置102の第1のアルゴリズム計算部にリアルタイムに入力される(S504)。
次に、第1のアルゴリズム計算部により、第1のアルゴリズム113を用いた第1層目から第n層目迄の第1のロール内部状態計算値の算出がリアルタイムに実行される(S505)。
第1のロール内部状態計算値が算出された後、第1のアルゴリズム計算部が計算する第1のロール内部状態計算値と巻取りロールの製造に関する合否判断の結果である第1の合否判断結果との間の相関関係を学習した、第1の学習済みAIモデル114を用いて、第1の推論部が、第1のアルゴリズム計算部が計算する第1のロール内部状態計算値をリアルタイムに推論する(S506)。
【0076】
ステップS506における第1の学習済みAIモデル114による第1のロール内部状態計算値に対する推論の結果として、巻取りロールの製品品質が正常か否かを判断する(S507)。
ステップS507において、巻取りロールの製品品質が正常であると推論された場合(YESの場合)、製造用データを巻取り装置の運転パラメータである製造中データ等に反映することにより、製造ラインへのフィードバックを行う(S508)。
或いは、ステップS507において、巻取りロールの製品品質が異常であると推論された場合(NOの場合)、第1の通知出力115としてエラーを出力する。さらに、当該エラーが出力された場合、製造ラインを自動的に停止する(S509)。
【0077】
第1のアルゴリズム113を用いた第1層目から第n層目迄の第1のロール内部状態計算値の算出の実行完了後、ロールの巻取りが完了したかが判断される(S510)。
ステップS510において、ロールの巻取りが完了していないと判断された場合(NOの場合)、層番号を指定する変数nに+1して、ステップS504以降を、ロールの巻取りが完了するまで実行する(S511)。
或いは、ステップS510において、ロールの巻取りが完了したと判断された場合(YESの場合)、品質管理装置102の動作は終了する(S512)。
【0078】
図6は、本実施形態のうち、第4の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、第1のアルゴリズムを用いて製造時の次工程の示唆データを第1のAIモデルに推論させる場合のフローチャートである。
【0079】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S601)。
まず、図1における品質管理装置102に巻取りロールの製造時において、巻取りロールの製造時における物性パラメータである事前データ111が入力される(S602)。
また、巻取りロールにおいて、巻取りロールの内部状態の計算値の対象となる層番号を指定する変数n(nは正の整数)が1に初期化される(S603)。
そして、品質管理装置102が巻取り装置101に接続されている場合、巻取り装置101からの巻取りロールの製造時における製造中データ112が品質管理装置102の第1のアルゴリズム計算部にリアルタイムに入力される(S604)。
次に、第1のアルゴリズム計算部により、第1のアルゴリズム113を用いた第1層目から第n層目迄の第1のロール内部状態計算値の算出がリアルタイムに実行される(S605)。
第1のロール内部状態計算値が算出された後、第1のアルゴリズム計算部が計算する第1のロール内部状態計算値と次工程の製造パラメータを示唆するデータである第1の次工程示唆データ116との間の相関関係を学習した、第1の学習済みAIモデル114を用いて、第1の推論部が、第1のロール内部状態計算値に基づき、第1の次工程示唆データ116をリアルタイムに推論し、第1の次工程示唆データ116を出力する(S606)。
【0080】
次に、ステップS607において、第1の推論部により推論された第1の次工程示唆データ116が所定範囲内に属しているかが判断される(S607)。
ステップS607において、第1の次工程示唆データ116が所定範囲内に属していると判断された場合(YESの場合)、第1の次工程示唆データ116を製造ラインにおける次工程の製造データ等に反映することにより、次工程の製造ラインへのフィードバックを行う(S608)。
或いは、ステップS607において、第1の次工程示唆データ116が所定範囲内に属していないと判断された場合(NOの場合)、第1の通知出力115としてエラーを出力する。さらに、当該エラーが出力された場合、製造ラインを自動的に停止する(S609)。
【0081】
第1のアルゴリズム113を用いた第1層目から第n層目迄の第1の次工程示唆データ116の推論の実行完了後、ロールの巻取りが完了したかが判断される(S610)。
ステップS610において、ロールの巻取りが完了していないと判断された場合(NOの場合)、層番号を指定する変数nに+1して、ステップS604以降を、ロールの巻取りが完了するまで実行する(S611)。
或いは、ステップS610において、ロールの巻取りが完了したと判断された場合(YESの場合)、品質管理装置102の動作は終了する(S612)。
【0082】
図7は、本実施形態のうち、第5の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、第1のアルゴリズムを用いて製造時の次工程の示唆データを第1のAIモデルに推論させる場合のフローチャートである。
【0083】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S701)。
まず、市場において不具合が発生した巻取りロールについて、巻取り装置101に、市場フィードバックデータとして第1のロール内部状態計算値、巻取りロールの製造時における物性パラメータである事前データ111、又は/及び、巻取り装置101からの巻取りロールの製造時における製造中データ112等が入力される(S702)。
【0084】
次に、品質管理装置102は、市場において不具合が発生した巻取りロールについて、市場フィードバックデータとして第1のロール内部状態計算値を入力し、第1の推論部が、当該第1のロール内部状態計算値と、当該巻取りロールを製造するために必要な巻取り装置の運転パラメータである製造中データと巻取りロールの物性パラメータである事前データとを含む不具合の原因となったデータである第1の原因解析データとの間の相関関係を学習した第1の学習済みAIモデル114を用いて、第1の原因解析データ119を出力する(S703)。
第1の推論部による第1の原因解析データ119の出力後、品質管理装置102の動作は終了し、出力された第1の原因解析データ119が市場において不具合が発生した巻取りロールの当該不具合の解析に用いられることとなる(S704)。
【0085】
図8は、本実施形態のうち、第6の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、第2のアルゴリズムを用いて輸送保管時のロール内部状態計算値を第2のAIモデルに学習させる場合のフローチャートである。
【0086】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S801)。
まず、第1のアルゴリズム113で算出した、第n層までウェブが巻き取られた巻取りロールの内部状態を入力する。(S802)
また、巻取りロールの内部状態の計算値の対象となるステップ番号を指定する変数s(sは0又は正の整数)が0に初期化される(S803)。
そして、巻取りロールの輸送又は保管時における巻取りロールの第1層目及び第n層目の輸送保管データ121が品質管理装置102の第2のアルゴリズム計算部に入力される(S804)。
次に、第2のアルゴリズム計算部により、第2のアルゴリズム122を用いた第1層目から第n層目迄の第2のロール内部状態計算値の算出が実行される(S805)。
第2のロール内部状態計算値が算出された後、第2のアルゴリズム計算部が計算する第2のロール内部状態計算値と巻取りロールの輸送又は保管時に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を第2の学習前AIモデルに学習させ、第2の学習済みAIモデル123を生成する(S806)。
【0087】
ステップS807において、第2のアルゴリズム122を用いた第1層目から第n層目迄の第1のロール内部状態計算値の算出の実行完了後、sが最終ステップ数SMAX(SMAXは正の整数)と等しいかが判断される(S807)。
ステップS807において、sが最終ステップ数SMAXと等しくないと判断された場合(NOの場合)、ステップ番号を指定する変数sに+1して、ステップS804以降を、sが最終ステップ数SMAXに達するまで実行する(S808)。
或いは、ステップS807において、sが最終ステップ数SMAXと等しいと判断された場合(YESの場合)、品質管理装置102の動作は終了し、第2の学習済みAIモデル123の生成が完了する(S809)。
【0088】
図9は、本実施形態のうち、第7の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、第2のアルゴリズムを用いて輸送保管時のロール内部状態計算値を第2のAIモデルに学習させる場合のフローチャートである。
【0089】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S901)。
まず、第1のアルゴリズム113で算出した、第n層までウェブが巻き取られた巻取りロールの内部状態を入力する。(S902)
また、巻取りロールの内部状態の計算値の対象となるステップ番号を指定する変数s(sは0又は正の整数)が0に初期化される(S903)。
そして、巻取りロールの輸送又は保管時における巻取りロールの第1層目及び第n層目の輸送保管データ121が品質管理装置102の第2のアルゴリズム計算部に入力される(S904)。
次に、第2のアルゴリズム計算部により、第2のアルゴリズム122を用いた第1層目から第n層目迄の第2のロール内部状態計算値の算出が実行される(S905)。
第2のロール内部状態計算値が算出された後、第2のアルゴリズム計算部が計算する第2のロール内部状態計算値と巻取りロールの輸送又は保管に関する合否判断の結果である第2の合否判断結果との間の相関関係を学習した、第2の学習済みAIモデル123を用いて、第2の推論部が、第2のアルゴリズム計算部が計算する第2のロール内部状態計算値を推論する(S906)。
【0090】
ステップS906における第2の学習済みAIモデル123による第2のロール内部状態計算値に対する推論の結果として、巻取りロールの製品品質が正常か否かを判断する(S907)。
ステップS907において、巻取りロールの製品品質が正常であると推論された場合(YESの場合)、sが最大層数最終ステップ数SMAX(SMAXは正の整数)と等しいかが判断される(S908)。
或いは、ステップS907において、巻取りロールの製品品質が異常であると推論された場合(NOの場合)、第2の通知出力124としてエラーを出力する(S909)。
ステップS908において、sが最大層数最終ステップ数SMAXと等しくないと判断された場合(NOの場合)、ステップ番号を指定する変数sに+1して、ステップS904以降を、sが最終ステップ数SMAXに達するまで実行する(S910)。
ステップS908において、sが最終ステップ数SMAXと等しいと判断された場合(YESの場合)、品質管理装置102の動作は終了する(S911)。
【0091】
図10は、本実施形態のうち、第8の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、第2のアルゴリズムを用いて輸送保管時のロール内部状態計算値を第2のAIモデルに推論させる場合のフローチャートである。
【0092】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S1001)。
まず、第1のアルゴリズム113で算出した、第n層までウェブが巻き取られた巻取りロールの内部状態を入力する。(S1002)
において、巻取りロールの内部状態の計算値の対象となるステップ番号を指定する変数s(sは0又は正の整数)が0に初期化される(S1003)。
そして、巻取りロールの輸送又は保管時における巻取りロールの第1層目及び第n層目の輸送保管データ121が品質管理装置102の第2のアルゴリズム計算部に入力される(S1004)。
次に、第2のアルゴリズム計算部により、第2のアルゴリズム122を用いた第1層目から第n層目迄の第2のロール内部状態計算値の算出が実行される(S1005)。
第2のロール内部状態計算値が算出された後、第2のアルゴリズム計算部が計算する第2のロール内部状態計算値と次工程の輸送保管パラメータを示唆するデータである第2の次工程示唆データ125との間の相関関係を学習した、第2の学習済みAIモデル123を用いて、第2の推論部が、第2のロール内部状態計算値に基づき、第2の次工程示唆データ125を推論し、第2の次工程示唆データ125を出力する(S1006)。
【0093】
次に、ステップS1006において、第2の推論部により推論された第2の次工程示唆データ125が所定範囲内に属しているかが判断される(S1007)。
ステップS1007において、第2の次工程示唆データ125が所定範囲内に属していると判断された場合(YESの場合)、第2の次工程示唆データ125を輸送又は保管工程における次工程の輸送保管データ等に反映することにより、輸送保管工程へのフィードバックを行う(S1008)。
或いは、ステップS1007において、第2の次工程示唆データ125が所定範囲内に属していないと判断された場合(NOの場合)、第2の通知出力124としてエラーを出力する(S1010)。
【0094】
第2のアルゴリズム122を用いた第1層目から第n層目迄の第2の次工程示唆データ125の推論の実行完了後、sが最大層数最終ステップ数(SMAXは正の整数)と等しいかが判断される(S1008)。
ステップS1009において、sが最終ステップ数SMAXと等しくないと判断された場合(NOの場合)、ステップ番号を指定する変数sに+1して、ステップS1004以降を、sが最終ステップ数SMAXに達するまで実行する(S1011)。
ステップS1009において、sが最終ステップ数SMAXと等しいと判断された場合(YESの場合)、品質管理装置102の動作は終了する(S1012)。
【0095】
図11は、本実施形態のうち、第9の実施形態に係る巻取りロールの品質管理装置の動作、巻取りロールの品質管理方法又は巻取りロールの品質管理プログラムを経時的に説明する、市場フィードバックデータを第2のAIモデルを用いて不具合の原因となる輸送保管時データを推論させる場合のフローチャートである。
【0096】
品質管理装置の動作は、スタートから動作が開始される(S1101)。
まず、品質管理装置102は、市場において不具合が発生した巻取りロールについて、市場フィードバックデータとして第2のロール内部状態計算値が入力される(S1102)。
【0097】
次に、第2の推論部が、当該第2のロール内部状態計算値と、輸送保管データとを含む不具合の原因となったデータである第2の原因解析データとの間の相関関係を学習した第2の学習済みAIモデル123を用いて、第2の原因解析データ127を出力する(S1103)。
第2の推論部による第2の原因解析データ127の出力後、品質管理装置102の動作は終了し、出力された第2の原因解析データ127が市場において不具合が発生した巻取りロールの当該不具合の解析に用いられることとなる(S1104)。
【0098】
以上詳述したように本実施形態によれば、ウェブハンドリングの技術分野において、巻取りロールの製造過程において製造中の巻取りロールに関し、巻取りロールの内部状態の計算値であるロール内部状態計算値をリアルタイムに出力するとともに、生成した学習済みAIモデルを用いて、様々なデータを推論することにより、巻取りロールの品質管理を行うことができる。
【符号の説明】
【0099】
101 巻取り装置
102 品質管理装置
113 第1のアルゴリズム
114 第1のAIモデル
122 第2のアルゴリズム
123 第2のAIモデル
201 ウェブ
202 巻芯
203 ニップローラ
204 巻取りロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11