(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031068
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】加温容器詰めアルコール飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/06 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136550
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】田中 善久
(72)【発明者】
【氏名】青野 一志
(72)【発明者】
【氏名】寺野 真維
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115MA03
(57)【要約】
【課題】加温されたアルコール飲料において、アルコール感を抑制することができる技術を提供すること。
【解決手段】揮発D-リモネン濃度が、10.0μg/L以上である、加温容器詰めアルコール飲料。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発D-リモネン濃度が、10.0μg/L以上である、加温容器詰めアルコール飲料。
【請求項2】
酸度が0.3以上である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
甘味度が3.0以上である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
液中D-リモネン濃度が10~100mg/Lである、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
アルコール度数が3.0v/v%以上である、請求項1~4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
柑橘類オイルを含む、請求項1~5のいずれかに記載の飲料。
【請求項7】
前記柑橘類オイルが、レモンオイルである、請求項6に記載の飲料。
【請求項8】
40℃以上の温度で飲用されるための飲料である、請求項1~7のいずれかに記載の飲料。
【請求項9】
アルコールを含む飲用可能な液に、揮発D-リモネン濃度が10.0μg/L以上になるようにD-リモネンを添加する工程を含む、加温容器詰めアルコール飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温容器詰めアルコール飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冬季などの寒い時期には、加温された飲料に対する需要がある。加温された容器詰め飲料として、レモン等の柑橘類風味の飲料が知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-174605号公報
【特許文献2】特開2016-168021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、柑橘類風味等のアルコール飲料について、加温された飲料として提供することを検討している。しかしながら、アルコール飲料を加温した場合、アルコール感が際立ってしまい、飲み難くなってしまうという問題があった。
したがって、本発明の目的は、加温されたアルコール飲料において、アルコール感を抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、揮発D-リモネン濃度が加温された飲料におけるアルコール感に関係することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
[1]揮発D-リモネン濃度が、10.0μg/L以上である、加温容器詰めアルコール飲料。
[2]酸度が0.3以上である、[1]に記載の飲料。
[3]甘味度が3.0以上である、[1]又は[2]に記載の飲料。
[4]液中D-リモネン濃度が10~100mg/Lである、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]アルコール度数が3.0v/v%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]柑橘類オイルを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7]前記柑橘類オイルが、レモンオイルである、[6]に記載の飲料。
[8]40℃以上の温度で飲用されるための飲料である、[1]~[7]のいずれかに記載の飲料。
[9]アルコールを含む飲用可能な液に、揮発D-リモネン濃度が10.0μg/L以上になるようにD-リモネンを添加する工程を含む、加温容器詰めアルコール飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加温されたアルコール飲料において、アルコール感を抑制することができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、香気成分回収装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る飲料は、揮発D-リモネン濃度が10.0μg/L以上である、加温容器詰めアルコール飲料である。尚、D-リモネンは、柑橘類の風味に寄与する香気成分である。従って、本実施形態に係る飲料は、柑橘類風味の飲料であると言える。
【0009】
本実施形態において、「加温」容器詰め飲料とは、加温された状態で飲用される飲料を指す。飲用時の温度は、好ましくは40℃以上である。このような温度であると、通常、アルコール感が目立ちやすくなる。しかし、本実施形態によれば、揮発D-リモネン濃度が10.0μg/L以上であることにより、加温された飲料においてアルコール感を低減できる。これによって、飲みやすい飲料を得ることができる。
なお、本実施形態の加温容器詰め飲料は、飲用時に加温されるものであればよい。例えば、販売時において加温されており、加温されたまま飲用される飲料でもよい。あるいは、常温又は冷蔵状態で販売された後、ユーザにより容器からコップなどに移され、その後に加温されて飲用されるものであってもよい。
【0010】
本実施形態において、容器詰め飲料とは、容器に密封された状態で提供される飲料を指す。容器としては、プラスチックボトル、缶、及び瓶等が挙げられる。
【0011】
本実施形態において、「揮発D-リモネン濃度」とは、容器を開封した際に飲料から揮発するD-リモネンの濃度を意味している。揮発D-リモネン濃度は、後述する実施例において記載される方法により測定することができる。
【0012】
揮発D-リモネン濃度が10.0μg/L以上であれば、加温されたアルコール飲料におけるアルコール感を十分に抑えることができる。揮発D-リモネン濃度は、好ましくは15.0μg/L以上、より好ましくは20.0μg/L以上、更に好ましくは30.0μg/L以上である。
また、揮発D-リモネン濃度は、風味のバランスを損なわない観点から、例えば120μg/L以下、好ましくは100μg/L以下である。
【0013】
本実施形態に係る飲料において、液中D-リモネン濃度は、例えば10~200mg/L、好ましくは10~100mg/L、より好ましくは10~60mg/L、更に好ましくは15~40mg/L、更に好ましくは15~30mg/Lである。
尚、液中D-リモネン濃度は、通常の意味での飲料におけるD-リモネンの濃度であり、液相中のD-リモネンの濃度である。液中D-リモネン濃度は、公知の方法により測定することができる。例えば、液中D-リモネン濃度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
揮発D-リモネン濃度は、D-リモネンの添加量や、D-リモネンの供給源を適宜選択することにより、調整可能である。
D-リモネンの供給源としては、例えば、柑橘類香料及び柑橘類オイルが挙げられる。
【0015】
柑橘類オイルを使用した場合には、水溶性の柑橘類香料を添加した場合に比べて、同じ液中D-リモネン濃度であっても、揮発D-リモネン濃度が高くなりやすい。柑橘類オイルを飲料に添加すると、液面にD-リモネンを含む液滴が形成される。このような液滴の存在により、揮発D-リモネン濃度を増大させることができる。
【0016】
また、柑橘類香料の種類によっても、揮発D-リモネン濃度が高くなりやすいものや、低くなりやすいものが存在する。従って、柑橘類香料として揮発D-リモネン濃度が高くなりやすいものを選択することにより、揮発D-リモネン濃度を高くすることもできる。
【0017】
なお、柑橘類香料や柑橘類オイルにおける柑橘類としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、シークァーサー、シトラス等が挙げられる。好ましい柑橘類は、レモンである。
【0018】
本実施形態に係る飲料は、アルコール飲料である。アルコール度数(エタノールの体積濃度)は、例えば0.1v/v%以上、好ましくは1.0v/v%以上、より好ましくは3.0v/v%以上である。また、アルコール度数は、例えば30.0v/v%以下、好ましくは15.0v/v%以下、より好ましくは10.0v/v%以下である。
【0019】
本実施形態に係る飲料のアルコール原料としては、特に限定されない。好ましくは、アルコール原料として、蒸留酒が使用される。蒸留酒としては、例えば、原料用アルコール、焼酎、ウォッカ、ラム、ジン、及びウイスキー等が挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る飲料には、酸成分が含まれていてもよい。酸成分としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム(クエン酸ナトリウム)、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、及びリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、クエン酸が好ましく用いられる。
【0021】
飲料の酸度は、例えば、0.3以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上)である。酸度が高いと、アルコール感をより低減させやすくなる。
また、酸度は、風味のバランスの観点から、例えば2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。
尚、本実施形態において、「酸度」とは、クエン酸換算した酸度を意味し、国税庁所定分析法にて定められた酸度の測定方法に基づいて算出される。本明細書において、酸度の単位は、w/v%である。
【0022】
本実施形態に係る飲料には、甘味料が含まれていてもよい。甘味料としては、例えば、糖類及び高甘味度甘味料が挙げられる。
糖類とは、単糖類及び二糖類を意味する。単糖類としては、ぶどう糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖、及び又は異性化糖などが挙げられ、二糖類としては、蔗糖、麦芽糖、乳糖、及び異性化乳糖などが挙げられる。
高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る飲料は、例えば、甘味度が1.0以上である。甘味度は、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上である。甘味度が高いと、アルコール感をより低減させやすくなる。
また、甘味度は、風味のバランスの観点から、例えば15.0以下、好ましくは10.0以下である。
尚、飲料の甘味度とは、飲料の甘さの強さを示すパラメータであり、飲料中に含まれる甘味料の含有量を、甘味の観点からショ糖に換算して求めたパラメータである。具体的には、飲料に含まれる各甘味料について、その濃度(g/100ml)に、各甘味料の甘味度を乗じることにより、ショ糖に換算した時の各甘味料の含有量(g/100ml)が求められる。そして、飲料に含まれる全甘味料についてのショ糖換算での含有量の合計値(g/100ml)が、「飲料の甘味度」として求められる。
尚、各甘味料の甘味度とは、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータである。各「甘味料の甘味度」としては、例えば、「飲料用語事典、平成11年6月25日発行、株式会社ビバリッジジャパン社、資11」の値が採用される。尚、甘味度の値に幅がある場合には、その中央値を採用される。
例えば、代表的な甘味料の甘味度は、以下の通りである。
ブドウ糖(甘味度0.65)
果糖(甘味度1.5)
スクラロース(甘味度600)
アセスルファムカリウム(甘味度200)
アスパルテーム(甘味度200)
【0024】
本実施形態に係る飲料の製造方法は、特に限定されない。例えば、アルコールを含む飲用可能な液に、必要な成分を加え、更に、揮発D-リモネン濃度が10.0μg/L以上になるようにD-リモネンを添加することにより、本実施形態に係る飲料を得ることができる。
好ましい一形態では、アルコールを含む飲用可能な液に必要な成分を加え、容器に充填する。容器に充填後、液面に液滴が浮くように、D-リモネンを含む柑橘類オイルを添加する。その後、容器を密封する。これにより、本実施形態に係る飲料を得ることができる。
【実施例0025】
以下に、本発明についてより詳しく説明するため、実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されて解釈されるべきものではない。
【0026】
[比較例1~2及び実施例1~5]
表1に比較例1~2及び実施例1~5に係る飲料の各種パラメータを示す。以下の方法により、比較例1~2及び実施例1~5に係る飲料を調製した。
(比較例1)
原料用アルコール(Alc.95.3%)、ショ糖、無水クエン酸及びクエン酸ナトリウムを水と混合し、表1に記載されたアルコール度数、酸度、及び甘味度を有するアルコール飲料を得た。得られたアルコール飲料350mlを缶容器に充填し、ステイオンタブ式の缶蓋により巻締し、比較例1に係る容器詰めアルコール飲料とした。
(比較例2)
比較例1と同様の方法により、比較例2に係る飲料を得た。但し、D-リモネンを含むレモン香料を更に添加した。
(実施例1~3)
比較例2と同様の方法により、実施例1~3に係る飲料を得た。但し、レモン香料として、互いに異なる種類のものを用いた。また、液中D-リモネン濃度が同程度となるように、レモン香料の添加量を変更した。
(実施例4)
実施例1と同様の方法でアルコール飲料を調製し、缶容器に充填した。充填後、更に、D-リモネンを含むレモンオイルを添加した。尚、添加後、液面には、レモンオイルの液滴が浮いていた。レモンオイルの添加後、実施例1と同様に缶蓋により巻締し、実施例4に係る飲料を得た。
(実施例5)
レモンオイルの添加量を変更した点を除いて実施例4と同様の方法により、実施例5に係る飲料を得た。
【0027】
[比較例3~4及び実施例6~10]
表2に比較例3~4及び実施例6~10に係る飲料の各種パラメータを示す。各原料の使用量を変更することにより、酸度、アルコール度数、及び甘味度を変更した。その他の点については、比較例1~2及び実施例1~5と同様にして、比較例3~4及び実施例6~10に係る飲料を調製した。すなわち、レモン香料及びレモンオイルの使用有無、並びに、それらの添加量を変更することにより、液中D-リモネン濃度及び揮発D-リモネン濃度が異なる比較例3~4及び実施例6~10に係る飲料を調製した。
【0028】
[比較例5~6及び実施例11~15]
表3に比較例5~6及び実施例11~15に係る飲料の各種パラメータを示す。各原料の使用量を変更することにより、酸度、アルコール度数、及び甘味度を変更した。その他の点については、比較例1~2及び実施例1~5と同様にして、比較例5~6及び実施例11~15に係る飲料を調製した。すなわち、レモン香料及びレモンオイルの使用有無、並びに、それらの添加量を変更することにより、液中D-リモネン濃度及び揮発D-リモネン濃度が異なる比較例5~6及び実施例11~15に係る飲料を調製した。
【0029】
[温度によるアルコール感の違いの検討]
まず、温度によりアルコール感が変化するか否かを確認した。具体的には、比較例2について、4℃、25℃及び40℃のそれぞれの温度でのアルコール感を、官能評価により評価した。評価にあたっては、25℃のサンプルを対照として、下記の5段階で評価した。
(アルコール感)
5:対照より強い
4:対照よりやや強い
3:対照と同等
2:対照よりやや弱い
1:対照より弱い
【0030】
結果を表4に示す。表4に示されるように、温度が高くなるに従い、アルコール感が高まった。すなわち、加温された飲料では、アルコール感が強く感じられることが判る。
【0031】
[揮発D-リモネン濃度の検討]
各飲料の揮発D-リモネン濃度を測定した。揮発D-リモネン濃度は、後述する方法により測定した。
【0032】
結果を表1~3に示す。
異なるレモン香料を使用した比較例2及び実施例1~3では、液中D-リモネン濃度がおおむね同程度であるが、揮発D-リモネン濃度は異なっていた。この結果から、使用する香料により、揮発D-リモネン濃度に違いが生じることが判る。尚、異なるレモン香料を使用した比較例4及び実施例6~8の比較結果からも、同様の傾向が読み取れた。比較例6及び実施例11~13の比較結果からも同様の傾向が読み取れた。
【0033】
実施例1に対して、更にレモンオイルを添加した実施例4及び5では、実施例1に比べて、液中D-リモネン濃度及び揮発D-リモネン濃度が増加していた。このうち、揮発D-リモネン濃度の増加の度合いの方が、液中D-リモネン濃度の増加の度合いよりも大きかった。このことから、レモンオイルを使用すると、揮発D-リモネン濃度が増加しやすいことが判る。
なお、実施例6、9及び10の結果からも、同様の傾向がみてとれた。実施例11、14及び15の結果からも、同様の傾向が見て取れた。
【0034】
[アルコール感の低減効果について検討]
比較例1~2及び実施例1~5に係る容器詰め飲料を60℃に加温した。そして、比較例1を対照として、官能評価によりアルコール感を確認した。評価基準は、[温度によるアルコール感の違いの検討]において記載した基準を用いた。但し、対照としては、比較例1に係る飲料を採用した。
【0035】
同様に、比較例3~4及び実施例6~10に係る容器詰め飲料についても、官能評価により、アルコール感を確認した。尚、対照としては、比較例3を用いた。
【0036】
同様に、比較例5~6及び実施例11~15に係る容器詰め飲料についても、官能評価により、アルコール感を確認した。尚、対照としては、比較例5を用いた。
【0037】
結果を表1~表3に示す。
【0038】
表1に示されるように、比較例2は、比較例1と比べて、僅かにアルコール感が低下していた。一方、実施例1~5は、比較例1及び2に比べて、アルコール感が大きく低下していた。実施例1~5は、液中D-リモネン濃度は比較例2とさほど変わらないが、揮発D-リモネン濃度が比較例2よりも2倍以上となっているものである。この結果から、揮発D-リモネン濃度を増加させることにより、加温された飲料におけるアルコール感が低減できることが判る。
なお、表2及び表3の結果からも、表1と同様に、揮発D-リモネン濃度が高い実施例に係る飲料の方が、比較例に係る飲料よりも、アルコール感が少なくなることが確認された。
【0039】
また、同程度の揮発D-リモネン濃度である場合、酸度及び甘味度が大きい方が、アルコール感が小さくなりやすい傾向にあった(例えば、実施例2、7、12の比較)。
【0040】
[揮発D-リモネン濃度の測定方法]
まず、
図1に示されるような香気成分回収装置1を用意した。この香気成分回収装置1は、1L容の2口セパラブルフラスコ2と、捕集管3と、定量ポンプ4と、複数のシリコン製チューブ5と、活性炭フィルター6とを備えている。2口セパラブルフラスコ2には、吸気口2a及び排気口2bが設けられている。吸気口2aは、チューブ5を介して、活性炭フィルター6の一端に接続されている。活性炭フィルター6の他端は、チューブ5を介して外部に開放されている。また、排気口2bには、チューブ5を介して捕集管3の一端が接続されている。捕集管3の他端は、定量ポンプ4に接続されている。定量ポンプ4は、外部から、活性炭フィルター6、2口セパラブルフラスコ2、及び捕集管3を介して空気を取り込み、再び外部に排気するように構成されている。
捕集管3としては、100mgの「TENAX TA」(2.6-Diphenyl-p-phenylene Oxideを主成分とする吸着剤、ジーエルサイエンス社製)が充填されたカラムが用いられる。
【0041】
香気成分回収装置1を用意した後、常温で開封した容器詰め飲料7(350mlステイオンタブ缶に詰めた飲料)を、2口セパラブルフラスコ2内に配置した。そして、定量ポンプ4を、毎分50mLの流量で5分間稼働させた。
【0042】
続いて、捕集管3を香気成分回収用装置1から取り外し、TDU(Thermal Desorption Unit))CIS(Cooled Injection System)装置にセットして、吸着した成分を加熱脱着させた。更に、脱着させた香気成分を、低温で濃縮した。濃縮後のサンプルを、GC/MS装置のGCに加熱導入し、D-リモネン濃度を測定した。
【0043】
GC/MSは下記の条件で行った。電子衝撃イオン化法を用いてスキャンモードでマススペクトルを測定することにより、m/z=136がD-リモネンの主要なフラグメントイオンであることを確認し、SIMモードで測定を行った。
(GC/MS条件)
GC/MS装置:HP7890A/5975C(アジレント・テクノロジー社製)
キャピラリカラム:DB-5MS(60m×0.25mm×0.25μm、アジレント・テクノロジー社製)
キャリアガス:ヘリウム
流量:1mL/分
注入口温度:250℃
注入モード:スプリットレスモード
温度プログラム:40℃で5分間保持→160℃まで5℃/分で昇温→240℃まで10℃/分で昇温→240℃で10分間保持
【0044】
得られたクロマトグラムから、D-リモネンのピーク面積を算出し、全ピーク面積に対する比率(D-リモネンのピーク面積比率)を求めた。
濃度既知のD-リモネンのエタノール溶液を吸着させた捕集管について同様に同じ装置に供し、D-リモネンのピーク面積比率を求めて、D-リモネン量とピーク面積比率の関係を示す検量線を作成した。作成した検量線に基づき、容器詰飲料から回収されたD-リモネンを定量した。その結果に基づき、容器詰め飲料の容量に対する回収されたD-リモネの量を算出し、揮発D-リモネン濃度とした。
【0045】
[液中D-リモネン濃度の測定方法]
常温の容器詰め飲料を50mL容遠沈管に量り取り、2.5g/Lに調整した酢酸ヘキシルのエタノール溶液を100μL、塩化ナトリウム6g、ヘキサン10mLを添加して密栓し、リストアクションで200rpm、20分間の条件で抽出した。これを遠心機で3000rpm、10分間の条件で分離させ、ヘキサン層を無水硫酸2.00gが入った10mL容試験管に採取し、30分間静置して脱水させた。これをヘキサンで10倍に希釈し、1μLを上記と同条のGC/MS分析に供し、D-リモネン濃度を定量した。
【0046】