(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031093
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】水中視認装置
(51)【国際特許分類】
B63C 11/48 20060101AFI20230301BHJP
B63G 8/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B63C11/48 A
B63G8/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136586
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】503017172
【氏名又は名称】株式会社アミューザジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】高川 真一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】透光性を有する部材を介して、気中領域から中領域を見るとき、視認すべき方向を確実に視認可能とする水中視認装置を提供する。
【解決手段】気中領域S及び水中領域Wを隔てる透光性部材10と、透光性部材の気中領域側の面10Aに取り付けられた筐体20と、筐体の一部を構成する透光性を有する平板部22と、を備え、透光性部材の気中領域側の面及び筐体の内面で囲まれた内部空間Kに水が充填され、平板部の気中領域側の面22Aが気中領域の空気に接し、その反対側の水中領域側の面22Bが内部空間内の水に接しており、透光性部材の気中領域側の面が内部空間内の水に接し、その反対側の水中領域側の面10Bが水中領域内の水に接しており、平板部及び透光性部材を介して、気中領域から水中領域を視認する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気で満たされた気中領域及び水で満たされた水中領域を隔てる透光性部材と、
前記透光性部材の気中領域側の面に取り付けられた筐体と、
前記筐体の一部を構成する透光性を有する平板部と、
を備え、
前記透光性部材の気中領域側の面及び前記筐体の内面で囲まれた内部空間に水が充填され、前記平板部の気中領域側の面が前記気中領域内の空気に接し、その反対側の水中領域側の面が前記内部空間内の水に接しており、
前記透光性部材の気中領域側の面が前記内部空間内の水に接し、その反対側の水中領域側の面が前記水中領域内の水に接しており、
前記平板部及び前記透光性部材を介して、前記気中領域から前記水中領域を視認する方向を第1の方向とするとき、
前記透光性部材の気中領域側及び水中領域側の面が、前記第1の方向に対して傾斜した平面または湾曲した面であり、
前記平板部の気中領域側及び水中領域側の面が、前記第1の方向に対して略垂直な平面であることを特徴とする水中視認装置。
【請求項2】
船舶の水中に位置する領域に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の水中視認装置。
【請求項3】
前記船舶が潜水艇であり、
前記透光性部材が前記潜水艇のキャノピの少なくとも一部を構成することを特徴とする請求項2に記載の水中視認装置。
【請求項4】
前記第1の方向が前記潜水艇の前進方向に沿うことを特徴とする請求項3に記載の水中視認装置。
【請求項5】
前記透光性部材及び前記平板部がアクリル樹脂、ポリカーボネートまたは強化ガラスから形成されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の水中視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性を有する部材を介して、空気で満たされた気中領域から水で満たされた水中領域を見るときに用いる水中視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マリンレジャーの普及などに伴って、比較的小型の有人潜水艇が開発されるようになってきている。そのような潜水艇の中には、搭乗スペースから船外の様子が分かるように、透明なキャノピを有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の潜水艇では、透明なキャノピがドーム状に形成されているので、搭乗者は周囲の水中の様子を視認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開特開2011-195126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャノピの面が、見る方向に対して傾斜または湾曲している場合には、キャノピ内の空気で満たされた気中領域からキャノピ外の水中領域を見るとき、空気及び水の屈折率の差により、見ようと思った方向と異なる方向の領域が視界に入ることになる。特に、搭乗者が潜水艇の前進方向を見ようと思っても適格に視認できないので、潜水艇操縦の困難性が増すことになる。
【0005】
従って、本発明の目的は、透光性を有する部材を介して、空気で満たされた気中領域から水で満たされた水中領域を見るとき、視認すべき方向を確実に視認可能とする水中視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る水中視認装置は、
空気で満たされた気中領域及び水で満たされた水中領域を隔てる透光性部材と、
前記透光性部材の気中領域側の面に取り付けられた筐体と、
前記筐体の一部を構成する透光性を有する平板部と、
を備え、
前記透光性部材の気中領域側の面及び前記筐体の内面で囲まれた内部空間に水が充填され、前記平板部の気中領域側の面が前記気中領域内の空気に接し、その反対側の水中領域側の面が前記内部空間内の水に接しており、
前記透光性部材の気中領域側の面が前記内部空間内の水に接し、その反対側の水中領域側の面が前記水中領域内の水に接しており、
前記平板部及び前記透光性部材を介して、前記気中領域から前記水中領域を視認する方向を第1の方向とするとき、
前記透光性部材の気中領域側及び水中領域側の面が、前記第1の方向に対して傾斜した平面または湾曲した面であり、
前記平板部の気中領域側及び水中領域側の面が、前記第1の方向に対して略垂直な平面である。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明においては、透光性を有する部材を介して、空気で満たされた気中領域から水で満たされた水中領域を見るとき、視認すべき方向を確実に視認可能とする水中視認装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】透光性を有するキャノピを備えた有人潜水艇の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1における断面B-Bを模式的に示す図であって、従来のキャノピの一例を示す側面断面図である。
【
図3】
図1における断面B-Bを模式的に示す図であって、本発明の1つの実施形態に係る水中視認装置を備えたキャノピを示す側面断面図である。
【
図4】
図3における断面C-Cを模式的に示す平面断面図である。
【
図5】従来のキャノピにおける気中領域から水中領域への光の進み方を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の1つの実施形態に係る水中視認装置を備えたキャノピにおける気中領域から水中領域への光の進み方を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する水中視認装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0010】
(1つの実施形態に係る水中視認装置)
はじめに、
図1から
図4を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る水中視認装置について、小型の有人潜水艇のキャノピに適用した場合を例にとって、従来技術と比較しながら説明を行う。
図1は、透光性を有するキャノピを備えた有人潜水艇の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1における断面B-Bを模式的に示す図であって、従来のキャノピの一例を示す側面断面図である。
図3は、
図1における断面B-Bを模式的に示す図であって、本発明の1つの実施形態に係る水中視認装置を備えたキャノピを示す側面断面図である。
図4は、
図3における断面C-Cを模式的に示す平面断面図である。
図2から
図4では、内部が空気で満たされたキャノピが水中に没している状態を示している。
【0011】
図1の括弧内の参照番号に示すように、従来の潜水艇150は、本体152に透光性を有するキャノピ154が装着されている。
図2に示すように、キャノピ154内の搭乗スペースSは空気で満たされ、キャノピ154の外側は、水で覆われている。キャノピ154が透光性を有するので、キャノピ154内にいる搭乗者Pは、キャノピ154を介して、外側の水中の様子を視認することができる。特に、搭乗者Pは、潜水艇150が前進する方向である第1の方向Aを目視することにより操縦を行う。しかし、追って詳細に述べるように、空気及び水の屈折率の差により、実際には、第1の方向Aに沿った水中の様子を視認できないため操縦が困難になる。
【0012】
この問題に対処するため、
図1、
図3及び
図4に示すように、本発明の1つの実施形態に係る水中視認装置2が、潜水艇50に備えられている。この潜水艇50も、本体52に透光性を有するキャノピ54が装着され、キャノピ54内の搭乗スペースSは空気で満たされている。また、キャノピ54の外側は、水で覆われている。
【0013】
キャノピ54は、湾曲したドーム状に形成され、全面が透光性を有する。ここで、透光性を有するとは、透明な場合もあり得るし、若干着色や模様を有する場合もあり得る。何れの場合でも、キャノピ54の全面にわたって光が透過するので、搭乗者Pは、キャノピ54の中の搭乗スペースSから、キャノピ54を介して外の水中の様子を視認することができる。以下においては、キャノピ54の内側の空気で満たされた搭乗スペースSを、「気中領域S]と記載し、キャノピ54の外側の水で満たされた領域を「水中領域W]として記載する。
【0014】
本実施形態では、潜水艇50の前進方向に沿う方向である第1の方向Aに沿って、キャノピ54を介して、気中領域Sから水中領域Wを視認するため、キャノピ54の前側に水中視認装置2が取り付けられている。
【0015】
本実施形態に係る水中視認装置2は、空気で満たされた気中領域S及び水で満たされた水中領域Wを隔てる透光性部材10と、透光性部材10の気中領域S側の面10Aに取り付けられた筐体20とを備える。本実施形態では、水中視認装置2の透光性部材10が、キャノピ54の一部を構成している。
【0016】
筐体20は、透光性を有する平板状の平板部22と、平板部22の外縁と、透光性部材10の気中領域S側の面10Aとを繋ぐ繋ぎ部24とから構成される。平面部22の気中領域S側及び水中領域W側の面22A、22Bは、略平行に配置されている。繋ぎ部24は、透光性を有する場合も、有さない場合もあり得る。
【0017】
平面部22及び繋ぎ部24は、気密な状態で接合されて、筐体20が形成されている。平面部22及び繋ぎ部24を接着して、筐体20を形成することもできるし、一体成形で筐体20を形成することもできる。このようにして形成された筐体20が、透光性部材10の気中領域S側の面10Aに気密な状態で接合されている。そして、透光性部材10の気中領域S側の面10A及び筐体20の内面で囲まれた内部空間Kに水が充填されている。
【0018】
これにより、平板部22の気中領域S側の面22Aが気中領域S内の空気に接し、その反対側の水中領域W側の面22Bが内部空間K内の水に接している。一方、透光性部材10の気中領域S側の面10Aが内部空間K内の水に接し、その反対側の水中領域W側の面10Bが水中領域W内の水に接している。
【0019】
上記のように、透光性部材10の気中領域S側及び水中領域W側の面10A、10Bは、湾曲した面である。一方、平板部22の気中領域S側及び水中領域W側の面22A、22Bは、第1の方向Aに対して略垂直な平面になっている。
【0020】
本実施形態では、キャノピ54の一部を構成する透光性部材10及び平面部22が、アクリル樹脂で形成されている。ただし、これに限られるものではなく、例えば、ポリカーボネートや強化ガラスで形成することもできる。何れの材料を用いる場合でも、十分な強度と高い透光性を有することができる。なお、透光性部材10及び平面部22を同一の材料で形成することもできるし、異なる材料で形成することもできる。
【0021】
図示した例では、平板部22の下側を除く外周が、ドーム状のキャノピ54の内面の湾曲に沿った曲面形状を有し、直接、キャノピ54の内面(つまり、透光性部材10の気中領域S側の面10A)に接合されている。平板部22の下側の辺には、繋ぎ部24が接合され、繋ぎ部24が、キャノピ54の内面(つまり、透光性部材10の気中領域S側の面10A)に接合されている。これにより、透光性部材10の気中領域S側の面10A及び筐体20の内面(平板部22及び繋ぎ部24の内面)で囲まれた気密な内部空間Kが形成されている。ただし、これに限られるものではなく、例えば、平板部22が、直接、キャノピ54の内面に接合されておらず、平板部22の全周に繋ぎ部24が接合され、繋ぎ部24を介してキャノピ54の内面に接合されている構造もあり得る。また、筐体20の視界を邪魔しない領域に、内部空間Kへの水の供給を行う開閉可能な開口部を設けることもできる。
【0022】
なお、上記では、本実施形態に係る水中視認装置2が、湾曲したドーム状のキャノピ54に用いられる場合を例として説明したが、これに限られるものではない。船舶の水中に配置されるその他の任意の形状の窓領域に、本実施形態に係る水中視認装置2を適用することができる。例えば、潜水艇の円錐台形状の窓に水中視認装置2を用いることもできる。円錐台形状の窓の場合、底面側から上面側に進むにつれて狭まった斜面部で、圧力(水圧)を受ける構造になっている。従来、円錐台の平行な上面側(小径側)から底面側(大径側)を見ることにより、気中領域Sから水中領域Wへの視認を行う。この場合、視野は、小さな窓枠で囲まれるために小さいうえ、屈折によって更に小さくなる。しかし、本実施形態に係る水中視認装置2をこの円錐台形状の窓の小径側に用いることにより、気中領域Sから水中領域Wを的確に視認することができるようになる。
【0023】
(光の進み方)
次に、
図5及び
図6を参照しながら、
図2に示すような従来のキャノピ154における光の進み方、及び
図3及び
図4に示すような、本実施形態に係る水中視認装置2を備えたキャノピ54における光の進み方について説明する。
図5は、従来のキャノピにおける気中領域から水中領域への光の進み方を模式的に示す図である。
図6は、本発明の1つの実施形態に係る水中視認装置を備えたキャノピにおける気中領域から水中領域への光の進み方を模式的に示す図である。
【0024】
キャノピ54(154)は湾曲しているが、その曲率は大きくはないので、ここでは、第1の方向Aに対して斜めに配置された平板とみなして説明を行う。キャノピ54(154)の面が、第1の方向Aに対して垂直である場合を除き、第1の方向Aに対して傾斜した平面または湾曲した面である場合には、下記と同様な光の進み方が生じる。
空気の屈折率を1とすると、水の屈折率は約1.33である。キャノピ54(平板部22)、平面部22及びキャノピ154の材質として、アクリル樹脂を用いた場合には、屈折率は約1.49であり、ポリカーボネートを用いた場合には、屈折率は約1.58であり、強化ガラスを用いた場合には、屈折率は約1.52である。何れの材料を用いた場合でも、水の屈折率より大きな値になっている。
【0025】
従来のキャノピ154では、気中領域S内を第1の方向Aに進んだ光が、傾斜したキャノピ154の入射面に、その法線に対してθin’の角度で入射する。そして、光は、法線に対してθin’より小さな角度θm’で、キャノピ154のシェルの中を進んで出射面に達する。そして、出射面から、出射面の法線に対して、θm’より大きく、θin’より小さな角度θout’で、水中領域Wへ出射される。θin’>θout’の関係を有するので、
図5に示すように、水中領域Wでは、第1の方向Aに対して斜めの方向に光が進む。
【0026】
光が入射する場合も同様であり、搭乗者Pが、キャノピ154を介して、第1の方向Aに沿って、気中領域S内から水中領域Wを見ようとしても、第1の方向Aと異なる方向の水中領域Wが視界に入ることになる。よって、潜水艇150の操縦に困難をきたす虞がある。
【0027】
一方、本実施形態に係る水中視認装置2を備えたキャノピ54では、気中領域S内を第1の方向Aに進んだ光が、平板部22に入射する。平板部22の気中領域S側の面22Aが空気に接し、水中領域W側の面22Bが水に接しているので、仮に、面22Aの法線に対して斜めに入射した場合には、空気と水の屈折率の差により、光の進む方向が変化する。しかし、本実施形態では、気中領域S内を第1の方向Aに進んだ光が、平板部22の気中領域S側の面22A(面22Bも同様)の法線方向に沿って入射するので、ほぼ第1の方向Aに沿って平板部22内を進み、平板部22から内部空間K内の水中を、ほぼ第1の方向Aに沿って進む。
【0028】
そして、内部空間K内の水中をほぼ第1の方向Aに沿って進んだ光が、傾斜した透光性部材10の入射面である気中領域S側の面10Aの法線に対して、θinの角度で入射する。本実施形態では、透光性部材10の気中領域S側の面10Aが水に接し、水中領域W側の面10Bも水に接している。つまり、透光性部材10の両側の面10A、10Bが水に接している。
【0029】
よって、透光性部材10に入射した光は、気中領域S側の面10Aの法線に対してθinより小さな角度θmで、透光性部材10の中を進んで出射面に達する。そして、光は、出射面である気中領域S側の面10Aから、その法線に対して、θinと同じ角度である角度θoutで、水中領域Wへ出射される。θin=θoutの関係を有するので、
図6に示すように、水中領域Wにおいても、ほぼ第1の方向に沿って光が進む。また、光が入射する場合も同様である。
【0030】
以上のように、透光性部材10の気中領域S側及び水中領域W側の面10A、10Bが、第1の方向Aに対して傾斜した平面または湾曲した面であっても、透光性部材10の両側の面10A、10Bが水に接するようにすることにより、水中領域W内でも、光が第1の方向Aに沿って進行する。
また、平板部22の気中領域S側及び水中領域W側の面22A、22Bは、屈折率の異なる流体(空気、水)に接しているが、第1の方向Aに対して略垂直な平面であるので、光は第1の方向Aに沿って進行する。
【0031】
これにより、本実施形態では、平板部22及び透光性部材10を介して、第1の方向Aに沿って、気中領域Sから水中領域Wを見ようとした場合、ほぼ第1の方向Aに沿った先の水中領域Wが視界に入ることになる。よって、搭乗者Pは、空気と水の屈折率の差の影響を受けることなく、潜水艇50を適切に操縦することができる。
【0032】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、第1の方向Aが潜水艇50の前進方向に沿う場合を示しているが、これに限られるものではない。例えば、第1の方向Aが、潜水艇50の後進方向、潜水艇50の進行方向に対して、直交する方向、斜めに交わる方向等とすることもできる。つまり、第1の方向Aが任意の方向に沿うように、水中視認装置2を配置することができる。
【0033】
また、透光性部材10及び筐体20の接合部分に摺動可能なシール部材を配置して、内部空間K内の気密な状態を維持したまま、筐体20を透光性部材10の面10Aに沿って移動可能にすることも考えられる。これにより、1つの水中視認装置2で、任意の方向の水中領域Wを的確に視認することができる。
【0034】
上記の実施形態では、水中視認装置2が潜水艇50のキャノピ54に備えられた場合を示したが、これに限られるものではない。例えば、水中視認装置2をその他の任意の船舶の水中に位置する領域に取り付けることもできる。例えば、船舶に水中を覗くための湾曲した覗き窓が設けられている場合に、その湾曲した覗き窓に水中視認装置2を取り付けることもできる。この場合には、透光性部材10が覗き窓の一部を構成することになる。
【0035】
また、潜水を行うダイバー装着する湾曲した視認領域を有するヘルメット、マスク等に、水中視認装置2を取り付けることもできる。この場合には、透光性部材10が、ヘルメット等の視認領域の一部を構成することになる。
更に、透明な湾曲した面を有する水槽の外面に水中視認装置2を取り付けて、外から水槽内を見るときに用いることもできる。この場合には、透光性部材10が、水槽の透明な外壁面の一部を構成することになる。
【0036】
以上のように、上記の様々な実施形態に係る水中視認装置2は、空気で満たされた気中領域S及び水で満たされた水中領域Wを隔てる透光性部材10と、透光性部材10の気中領域S側の面10Aに取り付けられた筐体20と、筐体20の一部を構成する透光性を有する平板部22と、を備え、透光性部材10の気中領域S側の面10A及び筐体20の内面で囲まれた内部空間Kに水が充填され、平面部22の気中領域S側の面22Aが気中領域S内の空気に接し、その反対側の水中領域W側の面22Bが内部空間K内の水に接しており、透光性部材10の気中領域W側の面10Aが内部空間K内の水に接し、その反対側の水中領域W側の面10Bが水中領域W内の水に接しており、平板部22及び透光性部材10を介して、気中領域Sから水中領域Wを視認する方向を第1の方向Aとするとき、透光性部材10の気中領域S側及び水中領域W側の面10A、10Bが、第1の方向Aに対して傾斜した平面または湾曲した面であり、平板部22の気中領域S側及び水中領域W側の面22A、22Bが、第1の方向Aに対して略垂直な平面である。
【0037】
これにより、透光性部材10を介して、空気で満たされた気中領域Sから水で満たされた水中領域Wを見るとき、視認すべき方向を確実に視認可能とする水中視認装置2を提供することができる。
【0038】
水中視認装置2を、船舶の水中に位置する領域に取り付けることにより、所望の方向に沿った水中の物体を的確に視認することができる。
特に、船舶が潜水艇50であり、透光性部材10が潜水艇50のキャノピ54の少なくとも一部を構成する場合には、水中視認装置2の機能を潜水艇50に有効に活用することができる。
更に、第1の方向Aが潜水艇50の前進方向に沿う場合には、搭乗者Pは、潜水艇50の進行方向の水中領域Wを確実に視認することができるので、安全に的確な操縦を行うことができる。
【0039】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0040】
2 水中視認装置
10 透光性部材
10A 気中領域側の面
10B 水中領域側の面
20 筐体
22 平板部
22A 気中領域側の面
22B 水中領域側の面
24 繋ぎ部
50 潜水艇
52 本体
54 キャノピ
150 潜水艇
152 本体
154 キャノピ
P 搭乗者
S 気中領域(搭乗スペース)
W 水中領域
K 内部空間