(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031094
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/283 20060101AFI20230301BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20230301BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230301BHJP
H01L 21/331 20060101ALI20230301BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20230301BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230301BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H01L21/283 B
H01L21/90 K
H01L21/283 C
H01L21/90 P
H01L29/06 301S
H01L29/72 P
H01L21/318 B
H01L21/31 C
H01L21/76 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136587
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】514054982
【氏名又は名称】株式会社デンソー岩手
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高見 政利
(72)【発明者】
【氏名】畠山 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】堅田 満孝
【テーマコード(参考)】
4M104
5F003
5F032
5F033
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA09
4M104BB02
4M104BB18
4M104BB30
4M104EE02
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4M104HH20
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5F058BF07
5F058BF23
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF39
5F058BJ03
(57)【要約】
【課題】耐圧の調整を行うことができると共に、製造工程が増加することを抑制できる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板10の一面10a側に絶縁膜40aを形成することと、半導体基板10の一面10a側に、絶縁膜40aの下方を含む部分に電流を流す半導体素子を形成することと、半導体基板10の一面上に層間絶縁膜50を形成することと、層間絶縁膜50に半導体素子の一部を露出させるコンタクトホール50a~50cを形成することと、コンタクトホール50a~50cを通じて半導体素子と電気的に接続される電極61~63を形成することと、を行う。そして、層間絶縁膜50を形成することでは、少なくともプラズマCVD法によって最も半導体基板10の一面10a側に配置される窒化膜を形成することを行い、窒化膜を形成することでは、屈折率が、半導体素子の耐圧が変化する範囲内の値となるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された半導体装置の製造方法であって、
一面(10a)を有する半導体基板(10)を用意することと、
前記半導体基板の一面側に、絶縁膜(40a)を形成することと、
前記半導体基板の一面側に、前記絶縁膜の下方を含む部分に電流を流す前記半導体素子を形成することと、
前記半導体基板の一面上に層間絶縁膜(50)を形成することと、
前記層間絶縁膜に前記半導体素子の一部を露出させるコンタクトホール(50a~50c)を形成することと、
前記コンタクトホールを通じて前記半導体素子と電気的に接続される電極(61~63)を形成することと、を行い、
前記層間絶縁膜を形成することでは、少なくとも、プラズマCVD法によって最も前記半導体基板の一面側に配置される窒化膜を形成することを行い、
前記窒化膜を形成することでは、屈折率が、前記半導体素子の耐圧が変化する範囲内の値となるようにする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記窒化膜を形成することでは、前記半導体基板の一面側に位置する所定厚さの初期膜の屈折率が1.89~1.94となる前記窒化膜を形成する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記窒化膜を形成することの後、前記窒化膜の屈折率を判定することを行う請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板の一面側から前記絶縁膜より深い位置までトレンチ分離部(20)を形成することにより、前記半導体基板を複数の素子領域(R)に分離することを行い、
前記半導体素子を形成することでは、前記素子領域に前記半導体素子を形成することを行う請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記窒化膜を形成することでは、前記プラズマCVD法を行う際に印加する高周波電圧の立ち上がり期間(ta)、前記窒化膜を形成する原料ガスとしてのシリコンを含む第1原料ガスの流量、および前記窒化膜を形成する原料ガスとしての窒素を含む第2原料ガスの流量の少なくとも1つを調整して前記窒化膜の屈折率を調整する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化膜で構成される層間絶縁膜を有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子が形成された半導体基板上に、窒化膜を含む層間絶縁膜を形成した半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、窒化膜は、シランガスやアンモニアガス等をチャンバ内に導入し、プラズマを発生させることで成膜されるプラズマCVD(chemical vapor depositionの略)法によって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、上記のような層間絶縁膜を有し、半導体基板に絶縁膜が形成されると共にこの絶縁膜の下方に電流が流れる半導体素子が形成された半導体装置について、要求される耐圧に応じた調整を行うことを検討している。この場合、絶縁膜の半導体基板の面方向に沿った長さ等を変更することにより、半導体装置の耐圧を調整することが可能である。しかしながら、この方法では、要求される耐圧毎に半導体素子を形成するためのマスク等を新たに設計したり、マスクの変更に伴って新たな工程を追加する必要があるため、製造工程が増加し易い。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、耐圧の調整を行うことができると共に、製造工程が増加することを抑制できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1では、半導体素子が形成された半導体装置の製造方法であって、一面(10a)を有する半導体基板(10)を用意することと、半導体基板の一面側に、絶縁膜(40a)を形成することと、半導体基板の一面側に、絶縁膜の下方を含む部分に電流を流す半導体素子を形成することと、半導体基板の一面上に層間絶縁膜(50)を形成することと、層間絶縁膜に半導体素子の一部を露出させるコンタクトホール(50a~50c)を形成することと、コンタクトホールを通じて半導体素子と電気的に接続される電極(61~63)を形成することと、を行い、層間絶縁膜を形成することでは、少なくとも、プラズマCVD法によって最も半導体基板の一面側に配置される窒化膜を形成することを行い、窒化膜を形成することでは、屈折率が、半導体素子の耐圧が変化する範囲内の値となるようにする。
【0007】
これによれば、窒化膜の屈折率を変化させることにより、要求される耐圧に応じた半導体装置を容易に製造できる。また、窒化膜の屈折率を調整することで耐圧を変化させているため、絶縁膜の長さ等を変化させる必要もない。このため、半導体素子を形成するためのマスクを変更する必要もなく、製造工程が増加することを抑制できる。さらに、耐圧を高くする場合でも絶縁膜の長さを長くする必要がないため、半導体装置が大型化することも抑制できる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図2】窒化膜の屈折率と、npnトランジスタの耐圧との関係を示す図である。
【
図3A】
図1に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3B】
図3Aに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3C】
図3Bに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3D】
図3Cに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3E】
図3Dに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3F】
図3Eに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3G】
図3Fに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4】
図3Eの工程における第1層間絶縁膜を形成する際のタイミングチャートである。
【
図5】高周波電圧の立ち上がり時間と窒化膜の屈折率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための装置として適用されると好適である。まず、本実施形態の半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の構成について説明する。以下では、半導体素子としてのnpnバイポーラトランジスタが形成された半導体装置を例に挙げて説明する。なお、半導体素子は、これに限定されるものではなく、後述する内縁STI分離部40aの下方に電流が流れるものであれば適宜変更可能であり、例えば、pnpバイポーラトランジスタ、nチャネル型のLDMOS(Laterally Double Diffused MOSの略)、pチャネル型のLDMOSであってもよい。
【0012】
本実施形態の半導体装置は、
図1に示されるように、支持基板11上に埋込絶縁膜12を介して活性層13が積層されたSOI(Silicon On Insulatorの略)基板で構成される半導体基板10を用いて構成される。なお、支持基板11は、シリコン等の半導体基板で構成され、埋込絶縁膜12は、酸化膜等で構成されている。活性層13は、所定の不純物濃度とされたn
-型のシリコン基板を用いて構成されている。以下では、半導体基板10のうちの活性層13における埋込絶縁膜12側と反対側の面を半導体基板10の一面10aとして説明する。
【0013】
半導体基板10は、活性層13がトレンチ分離部20によって複数の素子領域Rに素子分離されている。なお、
図1では1つの素子領域Rのみを図示しているが、半導体装置は、実際には複数の素子領域Rを有している。
【0014】
トレンチ分離部20は、半導体基板10の一面10aから埋込絶縁膜12に達するように形成されたトレンチ21に、当該トレンチ21を埋め込むように絶縁膜22が配置されることで構成されている。なお、絶縁膜22は、熱酸化やCVD(Chemical Vapor Depositionの略)法による絶縁材料の埋め込みによってトレンチ21に配置される。
【0015】
活性層13の表層部には、p-型のベース領域31が形成されている。そして、ベース領域31の表層部には、半導体基板10の一面10aから露出するように、n+型のエミッタ領域32およびp+型のコンタクト領域33が形成されている。但し、エミッタ領域32およびコンタクト領域33は、互いに離れた状態で形成されている。また、活性層13の表層部には、ベース領域31から離れた位置にn+型のコレクタ領域34が形成されている。なお、活性層13は、後述するように電流が流れる領域となる。このため、以下では、活性層13をドリフト領域35ともいう。
【0016】
さらに、活性層13の表層部には、STI(Shallow Trench Isolationの略)分離部40が形成されている。STI分離部40は、活性層13の表層部に所定深さのトレンチ41を形成してトレンチ41内を絶縁膜42で埋め込んだ後、CMP(Chemical Mechanical Polishingの略)法等で平坦化することによって形成される。
【0017】
STI分離部40は、活性層13の表層部において、ベース領域31とコレクタ領域34との間を含む位置に形成されつつ、ベース領域31、エミッタ領域32、コンタクト領域33、コレクタ領域34が半導体基板10の一面10aから露出するように形成されている。言い換えると、STI分離部40は、活性層13の表層部のうちの、ベース領域31、エミッタ領域32、コンタクト領域33、コレクタ領域34が形成される部分と異なる部分に形成されている。
【0018】
以下、STI分離部40において、ベース領域31とコレクタ領域34との間に配置された部分を内縁STI分離部40aともいう。つまり、STI分離部40において、ベース領域31とコレクタ領域34とを区画する部分を内縁STI分離部40aともいう。また、STI分離部40において、素子領域Rの外縁部に形成された外縁STI分離部40bともいう。そして、外縁STI分離部40bは、隣合う素子領域Rを跨ぐように配置され、トレンチ分離部20は、外縁STI分離部40bを貫通するように形成されている。なお、本実施形態では、内縁STI分離部40aが絶縁膜に相当する。
【0019】
半導体基板10の一面10a上には、層間絶縁膜50が形成されている。具体的には、層間絶縁膜50は、半導体基板10の一面10a側から順に、第1層間絶縁膜51と第2層間絶縁膜52とが積層されて形成されている。第1層間絶縁膜51は、具体的には後述するが、プラズマCVD法で形成された窒化膜(SiN)で構成されており、屈折率が調整されている。第2層間絶縁膜52は、酸化膜で形成されている。なお、第1層間絶縁膜51は、例えば、100μm程度の厚さに形成される。
【0020】
層間絶縁膜50には、エミッタ領域32を露出させる第1コンタクトホール50a、コンタクト領域33を露出させる第2コンタクトホール50b、コレクタ領域34を露出させる第3コンタクトホール50cが形成されている。
【0021】
そして、層間絶縁膜50上には、第1コンタクトホール50aを通じてエミッタ領域32と接続されるエミッタ電極61、第2コンタクトホール50bを通じてコンタクト領域33(すなわち、ベース領域31)と接続されるベース電極62、第3コンタクトホール50cを通じてコレクタ領域34と接続されるコレクタ電極63が形成されている。
【0022】
本実施形態では、エミッタ電極61、ベース電極62、コレクタ電極63は、それぞれ第1~第3コンタクトホール50a~50cに埋め込まれる埋込部61a~63aを有している。また、エミッタ電極61、ベース電極62、コレクタ電極63は、それぞれ層間絶縁膜50上に配置されて埋込部61a~63aと電気的に接続される主部61b~63bとを有している。
【0023】
本実施形態の埋込部61a~63aは、タングステンプラグ等で構成されている。なお、特に図示しないが、第1~第3コンタクトホール50a~50cの壁面には、タングステンの埋込性を向上させるための下地層が形成されていてもよい。下地層は、例えば、チタンや窒化チタン等で構成される。主部61b~63bは、例えば、アルミニウムやアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金等で構成されている。
【0024】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。なお、本実施形態では、n-型、n+型が第1導電型となり、p-型、p型+が第2導電型となる。
【0025】
このような半導体装置は、ベース-エミッタ間に順バイアスの電圧が印加され、ベース-コレクタ間に逆バイアスの電圧が印加されることにより、ベース領域31に流れるベース電流に依存したコレクタ電流が内縁STI分離部40aの下方を流れる。そして、このような半導体装置では、コレクタ電流が遮断されたオフ状態では、ドリフト領域35のうちのベース領域31とコレクタ領域34との間の領域が耐圧決定領域RVとなる。つまり、このような半導体装置では、内縁STI分離部40aの下方に位置する部分が耐圧決定領域RVとなる。
【0026】
ここで、本発明者らは、上記のような半導体装置について鋭意検討を行い、第1層間絶縁膜51の屈折率を変化させることで半導体装置の耐圧が変化することを見出した。具体的には、第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜は、含有されるシリコンの量によって屈折率が変化し、シリコンが多いほど屈折率が高くなる。また、窒化膜は、シリコンが多い状態では、電子トラップ密度が増加して電子をトラップすることで負に帯電し易くなる。そして、ドリフト領域35のうちの内縁STI分離部40aの下方に位置する耐圧決定領域RVでは、窒化膜が負に帯電することで正電荷hが誘導され易く、正に帯電し易くなる。したがって、耐圧決定領域RVは、窒化膜が負に帯電することで周囲のドリフト領域35よりも電子濃度が低い低電子濃度領域となる。
【0027】
この場合、半導体装置は、第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜中のシリコンが多いほど窒化膜で多量の電子がトラップされるため、耐圧決定領域RVに正電荷hが誘導され易くる。したがって、半導体装置は、第1層間絶縁膜51の屈折率が高いほど耐圧が高くなる。
【0028】
また、本発明者らの検討によれば、耐圧決定領域RVの正電荷hに影響するのは、第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜のうちの半導体基板10側に位置する20μm程度の厚さの部分であることが確認された。そして、本実施形態の半導体装置では、この部分を第1層間絶縁膜51の初期膜とすると、
図2に示されるように、初期膜の屈折率を1.89~1.94の間で変化させることにより、耐圧を変化させることができることが確認される。
【0029】
なお、
図2は、窒化膜における初期膜の屈折率とトランジスタの耐圧との関係を示している。また、本実施形態では、第1層間絶縁膜51が100nm程度の厚さで構成されるため、初期膜は、第1層間絶縁膜51のうちの半導体基板10側に位置する2割程度の厚さの部分ともいえる。そして、上記のように耐圧決定領域RVの正電荷hに影響するのは、初期膜の厚さであり、第1層間絶縁膜51の全体の厚さには依存しない。
【0030】
次に、上記半導体装置の製造方法について、
図3A~
図3Gを参照しつつ説明する。なお、
図3A~
図3Gでは、支持基板11を省略して示している。
【0031】
まず、
図3Aに示されるように、SOI基板で構成される半導体基板10を用意する。そして、
図3Bに示されるように、STI分離部40を形成する。具体的には、活性層13にトレンチ41を形成し、CVD法等でトレンチ41内に絶縁膜42を埋め込んだ後にCMP法等で平坦化することによってSTI分離部40を形成する。なお、STI分離部40は、ベース領域31、エミッタ領域32、コンタクト領域33、コレクタ領域34が形成される領域と異なる領域に形成される。
【0032】
次に、
図3Cに示されるように、外縁STI分離部40bを貫通するように、トレンチ分離部20を形成する。具体的には、外縁STI分離部40bを貫通して埋込絶縁膜12に達するトレンチ21を形成し、CVD法等でトレンチ21内に絶縁膜42を埋め込んだ後にCMP法等で平坦化することによってトレンチ分離部20を形成する。
【0033】
続いて、
図3Dに示されるように、図示しないマスク等を用いてイオン注入等を行い、ベース領域31、エミッタ領域32、コンタクト領域33、コレクタ領域34を構成する。以下では、上記と同様に、活性層13をドリフト領域35ともいう。これにより、ドリフト領域35のうちの内縁STI分離部40aの下方に位置する領域を耐圧決定領域RVとする半導体素子(すなわち、npnバイポーラトランジスタ)が構成される。
【0034】
次に、
図3Eに示されるように、プラズマCVD法により、窒化膜で構成される第1層間絶縁膜51を形成する。本実施形態では、最初に成膜される20μm程度の厚さの部分を初期膜とし、初期膜の屈折率が1.89~1.94の範囲内となるようにする。
【0035】
本実施形態では、
図4に示されるようにして第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜を形成する。具体的には、特に図示しないが、高周波電源と接続されて高周波電圧が印加される電極を内部に有するチャンバーを用意する。そして、時点T1にて、
図3Dの工程まで行ったものをチャンバー内に配置する。次に、時点T2にて、チャンバー内に、シラン(SiH
4)ガスおよび窒素(N
2)ガスを導入する。その後、時点T3にて、チャンバー内に配置された電極が所定の高周波電圧となるように高周波電源を駆動して第1層間絶縁膜51を形成する。つまり、時点T3から第1層間絶縁膜51を成膜する。そして、第1層間絶縁膜51を所定厚さまで成膜した時点T5にて、高周波電圧を低下させると共に、シランガスおよび窒素ガスの導入を停止する。なお、本実施形態では、シランガスがシリコンを含む第1原料ガスに相当し、窒素ガスが窒素を含む第2原料ガスに相当する。
【0036】
ここで、シランガスは、高周波電圧が低い状態でも、窒素ガスより分解し易い材料である。このため、高周波電源を駆動し始める(すなわち、高周波電圧が立ち上がり始める)時点T3と、高周波電圧が所定電圧となる時点T4との間の高周波電圧の立ち上がり期間taでは、時点T4から時点T5までの期間と比較すると、シランガスの分解が窒素ガスの分解よりも起こり易くなる。
【0037】
このため、高周波電圧の立ち上がり期間taの長さを調整することにより、窒化膜に含まれるシリコンの含有率を変化させることができ、窒化膜の屈折率を調整できる。具体的には、
図5に示されるように、立ち上がり期間taを長くするほどシランガスの分解が多くなり易いため、窒化膜の屈折率は高くなる。そして、
図5に示されるように、高周波電圧の立ち上がり期間taは、0.3~0.7sec程度の際に、窒化膜の屈折率が1.89~1.94となる。なお、
図5における窒化膜の屈折率は、窒化膜の初期膜における屈折率を示している。
【0038】
続いて、特に図示しないが、第1層間絶縁膜51の良否判定を行う。本実施形態では、予め実験等により、初期膜の屈折率を1.89~1.94として全体の窒化膜を形成した場合の屈折率を調査して閾値範囲を設定しておく。そして、第1層間絶縁膜51を形成した後に第1層間絶縁膜51の全体の屈折率を検査する。その後、屈折率が閾値範囲内にあるか否かを判定し、屈折率が閾値範囲内にあれば以降の工程を行う。
【0039】
そして、
図3Fに示されるように、CVD法等により、第1層間絶縁膜51上に、酸化膜等で構成される第2層間絶縁膜52を積層して層間絶縁膜50を構成する。
【0040】
次に、
図3Gに示されるように、図示しないマスクを用いて第1~第3コンタクトホール50a~50cを形成する。そして、CVD法等により、第1~第3コンタクトホール50a~50cを埋め込む埋込部61a~63aを配置する。その後、CVD法等により、層間絶縁膜50上に金属膜を配置し、当該金属膜をパターニングして、エミッタ電極61、ベース電極62、コレクタ電極63を形成することにより、上記
図1に示す半導体装置が製造される。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜の屈折率が、耐圧の変化する範囲内の値とされている。このため、要求される耐圧に応じた半導体装置を容易に製造できる。また、第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜の屈折率を調整することで耐圧を変化させているため、内縁STI分離部40aの長さ等を変化させる必要もない。このため、半導体素子を形成するためのマスクを変更する必要もなく、製造工程が増加することを抑制できる。さらに、耐圧を高くするために内縁STI分離部40aの長さを長くする必要もないため、半導体装置が大型化することも抑制できる。
【0042】
(1)本実施形態では、第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜の初期膜の屈折率は、1.89~1.94とされている。このため、第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜の初期膜の屈折率を変更することにより、半導体装置の耐圧を容易に変更できる。
【0043】
(2)本実施形態では、第1層間絶縁膜51を形成した後、第1層間絶縁膜51の屈折率に基づいた良否判定を行っている。このため、要求される耐圧を満たしていない半導体装置が製造されることを抑制できる。
【0044】
(3)本実施形態では、素子領域Rをトレンチ分離部20によって分離している。このため、隣合う素子領域Rの影響を受けることを抑制でき、特性が変化することを抑制できる。
【0045】
(4)本実施形態では、高周波電圧の立ち上がり期間taを調整することにより、第1層間絶縁膜51を構成する窒化膜における初期膜の屈折率を調整している。このため、新たな別工程を行う必要もなく、製造工程が増加することを抑制できる。
【0046】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0047】
例えば、上記第1実施形態では、第1層間絶縁膜51を形成する際、高周波電圧の立ち上がり期間taを調整することによって初期膜の屈折率を調整する例について説明した。しかしながら、初期膜の屈折率は、次のように変更してもよい。例えば、シランガスや窒素ガスの流量の少なくとも一方を変更することで初期膜の屈折率を変更するようにしてもよい。また、初期膜の屈折率は、高周波電圧の立ち上がり期間taを調整しつつ、シランガスおよび窒素ガスの流量の少なくとも一方を調整するようにしてもよい。
【0048】
また、上記第1実施形態では、トレンチ分離部20を半導体素子を形成する前に形成しているが、半導体素子を形成した後にトレンチ分離部20を形成するようにしてもよい。さらに、各素子領域Rは、トレンチ分離部20ではなく、拡散層等によって分離されていてもよい。なお、拡散層によって各素子領域Rを素子分離する場合、拡散層は、耐圧決定領域RVよりも深くまで形成されることが好ましい。
【0049】
そして、上記第1実施形態において、トレンチ分離部20は、埋込絶縁膜12に達するように形成されていなくてもよく、内縁STI分離部40aよりも一面10aから深い位置まで形成されていればよい。
【0050】
また、上記第1実施形態において、ベース領域31とコレクタ領域34との間に配置されるのは、内縁STI分離部40aではなく、LOCOS(local oxidation of siliconの略)膜であってもよい。この場合は、LOCOS膜が絶縁膜に相当する。
【0051】
さらに、上記第1実施形態において、トレンチ分離部20は、埋込絶縁膜12に達するように形成されていなくてもよく、内縁STI分離部40aよりも一面10aから深い位置まで形成されていればよい。
【0052】
そして、上記第1実施形態において、半導体基板10は、SOI基板で構成されていなくてもよい。例えば、半導体基板10は、支持基板11と活性層13との間に、活性層13よりも高不純物濃度とされると共に、支持基板11と逆導電型とされた高濃度層が配置されたもので構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 半導体基板
10a 一面
40a 内縁STI分離部(絶縁膜)
50 層間絶縁膜
50a~50c コンタクトホール
61~63 電極