(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031098
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136593
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 佳之
(72)【発明者】
【氏名】黄 雲生
(72)【発明者】
【氏名】重田 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
(72)【発明者】
【氏名】戸山 貴司
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA27
3L211CA20
3L211EA43
3L211EA51
3L211EA56
3L211FB05
3L211GA26
(57)【要約】
【課題】補助ヒータを用いずに十分な暖房能力を担保する。
【解決手段】 冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮機で圧縮された冷媒の熱を車室内に供給する空気に熱交換させるための室内熱交換器、及び、冷媒と外気または他の熱媒体とを熱交換させる吸熱用の熱交換器を含む冷媒回路と、該冷媒回路を制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、前記冷媒回路は、前記室外熱交換器を迂回させ、前記室内熱交換器の下流側から前記圧縮機の吸入側に冷媒を流入させるホットガス回路を有し、前記制御装置は、前記ホットガス回路に冷媒を流通させ、前記熱交換器での冷媒と外気または他の熱媒体との熱交換を行わずに前記圧縮機で圧縮した冷媒の熱により前記車室内を暖房するホットガス暖房モードを含む、複数の暖房モードを選択的に実行可能であり、前記ホットガス暖房モードを選択するホットガス暖房選択条件が設定されている車両用空調装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮機で圧縮された冷媒の熱を車室内に供給する空気に熱交換させるための室内熱交換器、及び、冷媒と外気または他の熱媒体とを熱交換させる吸熱用の熱交換器を含む冷媒回路と、該冷媒回路を制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、
前記冷媒回路は、前記熱交換器を迂回させ、前記室内熱交換器の下流側から前記圧縮機の吸入側に冷媒を流入させるホットガス回路を有し、
前記制御装置は、
前記ホットガス回路に冷媒を流通させ、前記熱交換器での冷媒と外気または他の熱媒体との熱交換を行わずに前記圧縮機で圧縮した冷媒の熱により前記車室内を暖房するホットガス暖房モードを含む、複数の暖房モードを選択的に実行可能であり、
前記ホットガス暖房モードを選択するホットガス暖房選択条件が設定されている車両用空調装置。
【請求項2】
前記ホットガス暖房選択条件は、前記圧縮機の起動前に前記圧縮機に吸入される冷媒の初期圧力値に対する閾値によって設定され、
前記初期圧力値が前記閾値より低い場合に、前記ホットガス暖房モードが選択される請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記冷媒回路は、前記圧縮機の吐出側と吸入側とを接続して、前記圧縮機から吐出した冷媒を再び前記圧縮機に吸入させる吐出バイパス回路を有し、
前記ホットガス暖房モードは、前記吐出バイパス回路を用いない第1ホットガス暖房モードと、前記吐出バイパス回路を用いる第2ホットガス暖房モードと含む請求項1又は請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ホットガス暖房選択条件として、前記圧縮機の起動前に前記圧縮機に吸入される冷媒の初期圧力値に対する第1閾値及び前記第1閾値よりも低い値を示す第2閾値が設定され、
前記初期圧力値が前記第2閾値より大きく前記第1閾値以下である場合に前記第1ホットガス暖房モードが選択され、
前記初期圧力値が前記第2閾値以下である場合に前記第2ホットガス暖房モードが選択される請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記ホットガス暖房選択条件として、前記圧縮機の起動前に前記圧縮機に吸入される冷媒の初期圧力値に対する第1閾値、前記第1閾値よりも低い値を示す第2閾値、及び、前記室外熱交換器への着霜の有無によって設定され、
前記初期圧力値が前記第2閾値より大きく前記第1閾値以下である場合、及び、前記初期圧力値が前記第1閾値より大きく、かつ、前記室外熱交換器への着霜が検出された場合に、前記第1ホットガス暖房モードが選択され、
前記初期圧力値が前記第2閾値以下である場合に、前記第2ホットガス暖房モードが選択される、請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記圧縮機の冷媒吸入側における前記吐出バイパス回路の接続部は、前記圧縮機に吸入される冷媒の圧力値を検出する圧力センサよりも冷媒上流側に設けられる請求項3から請求項5の何れか1項記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記圧縮機の冷媒吸入側における前記吐出バイパス回路の接続部は、前記圧縮機の冷媒上流側に配置されたアキュムレータよりも冷媒上流側に設けられる請求項3から請求項6の何れか1項記載の車両用空調装置。
【請求項8】
複数の前記暖房モードは、前記室外熱交換器において冷媒と外気との熱交換を行う外気吸熱暖房モードを含み、
前記制御装置は、前記ホットガス暖房モードが選択されない場合に、外気吸熱暖房モードを選択し実行する、請求項1から請求項7の何れか1記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記外気吸熱暖房モードの運転中に前記室外熱交換器への着霜が検出された場合に、外気温度に応じて前記ホットガス暖房モードに切り換える請求項8記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用されるヒートポンプ式の車両用空調装置であって、特に、暖房運転について複数の運転モードを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器、及び膨張弁が接続された冷媒回路を備え、室内熱交換器において冷媒と熱交換した空気を車室内に供給して車室内の空調を行うヒートポンプ式の車両用空調装置が知られている。
【0003】
このような車両用空調装置では、暖房運転中に室外熱交換器が吸熱器として機能するが、外気温度が極端に低い(極低温環境)と、室外熱交換器において冷媒が外気から吸熱することができない場合がある。この場合に、例えば、PTCヒータ等の補助ヒータを用いて車室内に供給する空気を加熱することで暖房運転を補完している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PTCヒータ等の補助ヒータは高価であることから、車両用空調装置の製造コストが嵩んでしまう。このため、極低温環境下などの吸熱用の熱媒体が存在しない場合であっても補助ヒータを用いずに必要な暖房能力を担保して、車両用空調装置において補助ヒータを削減可能とすることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、補助ヒータを用いずに十分な暖房能力を担保すること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮機で圧縮された冷媒の熱を車室内に供給する空気に熱交換させるための室内熱交換器、及び、冷媒と外気または他の熱媒体とを熱交換させる吸熱用の熱交換器を含む冷媒回路と、該冷媒回路を制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、前記冷媒回路は、前記室外熱交換器を迂回させ、前記室内熱交換器の下流側から前記圧縮機の吸入側に冷媒を流入させるホットガス回路を有し、前記制御装置は、前記ホットガス回路に冷媒を流通させ、前記室外熱交換器での冷媒と外気との熱交換を行わずに前記圧縮機で圧縮した冷媒の熱により前記車室内を暖房するホットガス暖房モードを含む、複数の暖房モードを選択的に実行可能であり、前記ホットガス暖房モードを選択するホットガス暖房選択条件が設定されている車両用空調装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、補助ヒータを用いずに十分な暖房能力を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の冷媒回路の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の制御装置としてのヒートポンプECUの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置において、外気吸熱暖房モードによって暖房運転を行う場合の冷媒の流れを示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置において、ホットガス暖房モードによって暖房運転を行う場合の冷媒の流れを示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置において、暖房モードの選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置の冷媒回路の概略構成を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置の制御装置としてのヒートポンプECUの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置において、第1ホットガス暖房モードによって暖房運転を行う場合の冷媒の流れを示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置において、第2ホットガス暖房モードによって暖房運転を行う場合の冷媒の流れを示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置において、暖房モードの選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第2実施形態の変形例に係る車両用空調装置において、暖房モードの選択処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る車両用空調装置において、いずれかの暖房モードによる暖房運転中の暖房モード切替処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置100の概略構成を示す。車両用空調装置100は、例えば、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)やエンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車などの車両に適用することができる。このような車両は、バッテリ(例えば、リチウム電池)が搭載され、外部電源からバッテリに充電された電力を、走行用のモータを含むモータユニットに供給することで駆動し、走行する。車両用空調装置100も、バッテリから供給される電力によって駆動する。
【0012】
本実施形態に係る車両用空調装置100は、冷媒回路Rを備え、冷媒回路Rを用いたヒートポンプ運転を行うことにより車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び除霜)を行う。なお、以下の説明において、冷媒とは、ヒートポンプ(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)における状態変化を伴う冷媒回路の循環媒体であり、熱媒体とは、このような状態変化を伴わずに熱の吸収と放熱を行う媒体である。
【0013】
冷媒回路Rは、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内の空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒を放熱させて車室内に供給する空気を加熱する室内熱交換器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる室外膨張弁6と、冷房時には冷媒を放熱させる放熱器(凝縮器)として機能し、暖房時には冷媒を吸熱させる蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させて車室内に供給する空気を冷却する室内熱交換器としての吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13A~13Hにより接続されて構成されている。
【0014】
室外膨張弁6及び室内膨張弁8は、いずれも図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに加えられるパルス数によって全閉から全開までの間で開度が適宜制御される。室外膨張弁6は、室外熱交換器7を用いた暖房運転時や除霜運転時に、室内熱交換器4から流出し室外熱交換器7に流入する冷媒を減圧膨張させる。なお、冷房運転時には電磁弁21が開放され、冷媒は室外膨張弁6を通過せずに電磁弁21を通過する。また、電磁弁21と室外膨張弁6を1つの電子膨張弁で構成することもできる。室内膨張弁8は、吸熱器9に流入する冷媒を減圧膨張させると共に、吸熱器9における冷媒の過熱度を調整する。
【0015】
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aには、逆止弁20、アキュムレータ12、圧縮機2が順次接続されている。冷媒配管13Aは、逆止弁20の出口側とアキュムレータ12の入口側との間で冷媒配管13Bに分岐している。冷媒配管13Bは、逆止弁20の出口側と室内熱交換器4の出口側とを接続している。つまり、冷媒配管13Bは、室外熱交換器7に対して並列に接続され、室外熱交換器7の出口側と室内熱交換器4の出口側とを接続して、室外熱交換器7を迂回するホットガス回路を構成する。冷媒配管13Bには電磁弁22が設けられ、電磁弁22の開閉に応じて冷媒配管13Bに冷媒を流入させるか否か、つまりホットガス回路を用いるか否かを選択できるようになっている。なお、電磁弁22は電子膨張弁であってもよい。
【0016】
冷媒配管13Bは、電磁弁22よりも逆止弁20側において冷媒配管13Cに分岐しており、冷媒配管13Cは吸熱器9の冷媒出口側に連通接続されている。冷媒配管13Cの吸熱器9の入口近傍には室内膨張弁8が設けられている。吸熱器9の冷媒出口は、冷媒配管13Dにより、逆止弁23を介して冷媒配管13Aのアキュムレータ12の冷媒入口に連通接続されている。アキュムレータ12の冷媒出口と圧縮機2の冷媒入口とは冷媒配管13Eによって連通接続され、冷媒配管13Eには、圧縮機2に吸い込まれる冷媒圧力(吸入圧力)及び圧縮機2の吸込冷媒温度を検出する圧縮機センサ72が設けられている。
【0017】
圧縮機2の冷媒出口と室内熱交換器4の冷媒入口とは、冷媒配管13Fにより接続されている。室内熱交換器4の冷媒出口には冷媒配管13Gの一端が接続され、冷媒配管13Gの他端側は電磁弁21を介して室外熱交換器7の冷媒入口に接続されている。冷媒配管13Gは電磁弁21を迂回するように冷媒配管13Hに分岐している。冷媒配管13Hには室外膨張弁6が設けられ、冷媒配管13Hは室外膨張弁6を介して冷媒配管13Gに合流するようになっている。
【0018】
吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されている。吸込口には吸込切換ダンパ26が設けられている。吸込切換ダンパ26により、車室内の空気である内気(内気循環)と、車室外の空気である外気(外気導入)とを適宜切り換えて吸込口から空気流通路3内に導入する。吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0019】
室内熱交換器4の空気上流側における空気流通路3内には、空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を室内熱交換器4に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。
【0020】
なお、補助暖房手段として、例えば、圧縮機廃熱によって加熱した温水を空気流通路3に配置したヒータコアに循環させることにより、送風空気を加熱する形態とすることもできる。
【0021】
図2に、車両用空調装置100の制御装置としてのヒートポンプECU11の概略構成を示す。ヒートポンプECU11は、走行を含む車両全般の制御を司る車両コントローラ90とCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークにより相互に通信可能に接続され、情報の送受信を行う。ヒートポンプECU11及び車両コントローラ90には何れもプロセッサを備えたコンピュータの一例としてのマイクロコンピュータを適用することができる。
【0022】
ヒートポンプECU11には、以下の各センサや検出器が接続され、これらの各センサや検出器等の出力が入力される。なお、
図2及び以下の説明では、本実施形態に直接関係しないセンサや検出器については図示及び説明を省略している。
【0023】
ヒートポンプECU11には、車両の外気温度を検出する外気温度センサ71、圧縮機2に吸い込まれる冷媒圧力(吸入圧力)及び圧縮機2の吸込冷媒温度を検出する圧縮機センサ72、室内熱交換器4の温度及び室内熱交換器4の圧力(例えば、室内熱交換器4から吐出直後の冷媒の圧力)を検出する室内熱交換器センサ73、室外熱交換器7の温度(例えば、室外熱交換器7から吐出直後の冷媒の温度)と室外熱交換器7の冷媒の圧力(例えば、室外熱交換器7吐出直後の冷媒の圧力)とを検出する室外熱交換器センサ74、及び、設定温度や空調運転の切り換えを設定するための空調操作部75、が接続されている。
【0024】
一方、ヒートポンプECU11の出力には、圧縮機2、室外膨張弁6、室内膨張弁8、及び、電磁弁21,22が接続されている。ヒートポンプECU11は各センサの出力と空調操作部75にて入力された設定と、車両コントローラ90からの情報とに基づいてこれらを制御する。
【0025】
[暖房モードについて]
このように構成された車両用空調装置100では、ヒートポンプECU11により暖房運転について複数の暖房モードを選択的に実行することができる。本実施形態においては、外気吸熱暖房モードと、ホットガス暖房モードとを含む複数の暖房モードを選択的に実行可能となっている。以下、各暖房モードについて説明する。
【0026】
(1)外気吸熱暖房モード(通常の暖房モード)
図3は、外気吸熱暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。ヒートポンプECU11が外気吸熱暖房モードを実行する場合、室外膨張弁6を開放し、電磁弁21を及び室内膨張弁8を全閉とする。
【0027】
圧縮機2、及び、送風機27を運転し、エアミックスダンパ28は送風機27から吹き出された空気が室内熱交換器4に通風される割合を調整する状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒は室内熱交換器4に流入する。室内熱交換器4において空気流通路3内の空気と高温高圧の冷媒とが熱交換し、すなわち、空気流通路3内の空気が冷媒によって加熱され、加熱された空気が吹出口29から車室内へ吹き出されることで暖房が行われる。
【0028】
一方、室内熱交換器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。液化した冷媒は室内熱交換器4を出た後、冷媒配管13G、13Hを経て室外膨張弁6に至る。冷媒は、室外膨張弁6で減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、車両の走行により流入する外気、或いは、室外送風機(図示せず)にて通風される外気中から熱を汲み上げる(吸熱)。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。
【0029】
そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び逆止弁20を経てアキュムレータ12に流入し、アキュムレータ12で気液分離された後、ガス冷媒が冷媒配管13Eを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0030】
(2)ホットガス暖房モード
図4は、ホットガス暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。ヒートポンプECU11がホットガス暖房モードを実行する場合、電磁弁22を開放し、電磁弁21及び室内膨張弁8を全閉とする。
【0031】
圧縮機2、及び、送風機27を運転し、エアミックスダンパ28は送風機27から吹き出された空気が室内熱交換器4に通風される割合を調整する状態とする。室内熱交換器4において空気流通路3内の空気と高温高圧の冷媒とが熱交換し、すなわち、空気流通路3内の空気が冷媒によって加熱され、加熱された空気が吹出口29から車室内へ吹き出されることで暖房が行われる。
【0032】
一方、室内熱交換器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮する。凝縮した冷媒は室内熱交換器4を出た後、冷媒配管13G、13B、13Aを経てアキュムレータ12に流入し、アキュムレータ12で気液分離された後、ガス冷媒が冷媒配管13Eを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このように、ホットガス暖房モードでは、室外熱交換器7で冷媒が外気から吸熱することなく、圧縮機で圧縮されて高温高圧となった冷媒と室内熱交換器4を通過する空気とを熱交換させるサイクルである。したがって、ホットガス暖房モードは、外気温の影響を受けにくく、極低温環境であっても暖房運転が可能である。
【0033】
[暖房モードの選択について]
一般に、車両用空調装置では、外気吸熱暖房モードを実行して車室内を暖房する。上述のように、外気吸熱暖房モードでは、室外熱交換器7において冷媒が蒸発して外気から吸熱するが、外気温が極低温である場合等、冷媒が外気から吸熱することができない場合がある。このような場合には、外気吸熱暖房モードによる暖房運転では所望の暖房運転を行うことができず、補助ヒータ等を駆動させて暖房を補完する必要がある。一方、ホットガス暖房モードは、室外熱交換器7において冷媒と外気とが熱交換を行わないため、外気温の影響を受けにくく、極低温環境であっても暖房運転が可能であり、補助ヒータによる暖房の補完を必ずしも必要としない。
【0034】
そこで、本実施形態に係る車両用空調装置100では、上述の通り、外気吸熱暖房モードと、ホットガス暖房モードとを含む複数の暖房モードを選択的に実行可能としている。そして、ヒートポンプECU11は、予め定められた条件に従って複数の暖房モードから適切な暖房モードを選択して実行する。ヒートポンプECU11には、車両の走行環境に応じた最適な暖房モードを選択するための一条件として、ホットガス暖房モードを選択するホットガス暖房選択条件を予め設定する。
【0035】
ホットガス暖房選択条件は、例えば、圧縮機2における冷媒の圧力値によって、すなわち、圧力値に対する閾値として設定することができる。この場合、ヒートポンプECU11では、圧力値がホットガス暖房選択条件を満たす場合にホットガス暖房モードを選択し、圧力値がホットガス暖房選択条件を満たさない場合に外気吸熱暖房モードを選択する。
【0036】
すなわち、ヒートポンプECU11が、ホットガス暖房選択条件に従って暖房モードを適宜選択して実行することで、例えば、外気温が極低温の場合など、外気吸熱暖房モードは所望の暖房を実現することができない場合に、ホットガス暖房モードを選択して実行する。このようにすることで、車両の走行環境に応じた所望の暖房を、補助ヒータを駆動させずに実現することができる。本実施形態では、ホットガス暖房選択条件として、圧縮機2の起動前の初期圧力値に対する閾値Pth(例えば、0.07MPaG)を定めている。ここで、圧縮機2の起動前の初期圧力値としては、圧縮機2対する起動指示の入力前(入力された瞬間は含まない)であって、圧縮機2が動作していない状態における冷媒の圧力値を用いる。
【0037】
本実施形態では、ヒートポンプECU11が、ホットガス暖房選択条件として定められた圧縮機2の初期圧力値に対する閾値Pthに基づいて、暖房モードを次のように選択して実行する。以下、ヒートポンプECU11における、暖房モードの選択について
図5のフローチャートに従って説明する。
【0038】
図5に示すように、ヒートポンプECU11は、オートモード、又は、空調操作部75へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房運転が選択されると、暖房要求有として(ステップS101)、暖房モードの選択のために圧縮機2の起動前の圧力値、すなわち、初期圧力値を取得する(ステップS102)。ヒートポンプECU11は、初期圧力値と初期圧力値に対する閾値Pthとを比較する(ステップS102)。ステップS102において、初期圧力値が閾値Pth以下の場合には、ホットガス暖房モードが選択され(ステップS103)、初期圧力値が閾値Pthより大きい場合には、外気吸熱暖房モードが選択される(ステップS104)。
【0039】
このように本実施形態によれば、ホットガス暖房選択条件として、圧縮機2の初期圧力値に対する閾値Pthを予め定め、閾値Pthを基準にホットガス暖房モードを選択するか否かを決定する。ここで圧縮機2の初期圧力は、外気温を含む車両の状況を反映した値を示している。したがって、ホットガス暖房選択条件として、初期圧力値に対する閾値Pthを定めることで、車両の状況に応じてホットガス暖房モードを選択して実行することができる。つまり、補助ヒータを用いずに必要な暖房能力を担保することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図6に、本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置200の概略構成を示す。
図6に示すように、本実施形態の車両用空調装置200は、冷媒配管13Aのアキュムレータ12の冷媒入口側で、冷媒配管13Aから分岐した冷媒配管13Iを備えている点で第1実施形態の車両用空調装置100と異なる。
【0041】
すなわち、冷媒配管13Iの一端はアキュムレータ12の冷媒入口側で冷媒配管13Aに接続され、冷媒配管13Iの他端は冷媒配管13Fの圧縮機2の冷媒吐出側に接続されている。このように、冷媒配管13Iは圧縮機2の出口側と入口側とをバイパスする吐出バイパス回路を形成する。なお、冷媒配管13Iの一端の冷媒配管13Aとの接続部は、アキュムレータ12の冷媒入口側に限られず、圧縮機センサ72よりも冷媒上流側であってもよい。
【0042】
冷媒配管13Iには、冷媒配管13Iへの冷媒の流入を制御する電磁弁24が設けられている。電磁弁24を開放することで、圧縮機2において圧縮された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Fに吐出され、冷媒配管13Fを通過した高温高圧の冷媒の一部が冷媒配管13Iに流入する。冷媒配管13Iに流入した高温高圧の冷媒は、アキュムレータ12を経て再び圧縮機2に吸い込まれる。
【0043】
本実施形態に係る車両用空調装置200では、
図7に示すように、ヒートポンプECU11の出力に、さらに電磁弁24が接続され、電磁弁24もヒートポンプECU11によって、上述した各センサの出力と空調操作部75にて入力された設定と、車両コントローラ90からの情報とに基づいて制御される。
【0044】
[暖房モードについて]
このように構成された車両用空調装置200では、ヒートポンプECU11により暖房運転について、外気吸熱暖房モードと、第1ホットガス暖房モード及び第2ホットガス暖房モードの2つのホットガス暖房モードと、を含む複数の暖房モードを選択的に実行可能となっている。以下、第1ホットガス暖房モード及び第2ホットガス暖房モードについて説明する。
【0045】
(1)第1ホットガス暖房モード
図8は、第1ホットガス暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。なお、第1ホットガス暖房モードは、冷媒を冷媒配管13Iに流通させない、すなわち吐出バイパス回路を用いないホットガス暖房モードであり、冷媒回路Rにおける冷媒の流れは上述した第1実施形態におけるホットガス暖房モード(
図4参照)と同様である。
【0046】
図8に示すように、第1ホットガス暖房モードでは、ヒートポンプECU11がホットガス暖房モードを実行する場合、電磁弁22を開放し、電磁弁21,24及び室内膨張弁8を全閉とする。
【0047】
圧縮機2、及び、送風機27を運転し、エアミックスダンパ28は送風機27から吹き出された空気が室内熱交換器4に通風される割合を調整する状態とする。室内熱交換器4において空気流通路3内の空気と高温高圧の冷媒とが熱交換し、すなわち、空気流通路3内の空気が冷媒によって加熱され、加熱された空気が吹出口29から車室内へ吹き出されることで暖房が行われる。
【0048】
一方、室内熱交換器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮する。凝縮した冷媒は室内熱交換器4を出た後、冷媒配管13G、13B、13Aを経てアキュムレータ12に流入し、アキュムレータ12で気液分離された後、ガス冷媒が冷媒配管13Eを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0049】
(2)第2ホットガス暖房モード
図9は、第2ホットガス暖房モードにおける冷媒回路Rの冷媒の流れ(実線矢印)を示している。第2ホットガス暖房モードは、冷媒を冷媒配管13Iに流通させ、吐出バイパス回路を用いるホットガス暖房モードである。
【0050】
図9に示すように、第2ホットガス暖房モードでは、ヒートポンプECU11がホットガス暖房モードを実行する場合、電磁弁22,24を開放し、電磁弁21及び室内膨張弁8を全閉とする。
【0051】
圧縮機2、及び、送風機27を運転し、エアミックスダンパ28は送風機27から吹き出された空気が室内熱交換器4に通風される割合を調整する状態とする。圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒の一部は、冷媒配管13Fから室内熱交換器4に流入すると共に、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒の残りは、冷媒配管13I(吐出バイパス回路)を経てアキュムレータ12に流入する。
【0052】
室内熱交換器4に流入した高温高圧の冷媒は、空気流通路3内の空気と熱交換することで、空気流通路3内の空気が冷媒によって加熱され、加熱された空気が吹出口29から車室内へ吹き出されて暖房が行われる。室内熱交換器4で熱交換した冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮する。凝縮した冷媒は室内熱交換器4を出た後、冷媒配管13G、13B、13Aを経てアキュムレータ12に流入する。
【0053】
一方、圧縮機2から吐出した高温高圧の冷媒は、冷媒配管13Iを経て再びアキュムレータ12に流入する。すなわち、アキュムレータ12には、室内熱交換器4で液化した冷媒と、圧縮機2で圧縮された高温高圧の冷媒とが流入することとなる。アキュムレータ12に流入した冷媒は、気液分離された後、ガス冷媒として冷媒配管13Eを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0054】
[暖房モードの選択について]
本実施形態に係る車両用空調装置200では、上述の通り、外気吸熱暖房モード、第1ホットガス暖房モード、及び、第2ホットガス暖房モードを含む複数の暖房モードを選択的に実行可能である。そして、ヒートポンプECU11は、予め定められた条件に従って複数の暖房モードから適切な暖房モードを選択して実行する。ヒートポンプECU11には、車両の走行環境に応じた最適な暖房モードを選択するための一条件として、ホットガス暖房モードを選択するホットガス暖房選択条件を予め定めておく。
【0055】
車両用空調装置200は、第1ホットガス暖房モード及び2ホットガス暖房モードを実行可能であることから、ホットガス暖房選択条件として、圧縮機2の起動前の初期圧力値に対する第1閾値Pth1(例えば、0.07MPaG)及び、第1閾値よりも低い値を示す第2閾値Pth2(例えば、0.05MpaG)を定めている。
【0056】
ヒートポンプECU11は、ホットガス暖房選択条件として定められた圧縮機2の初期圧力値に対する第1閾値Pth1及び第2閾値Pth2に基づいて、暖房モードを次のように選択して実行する。以下、ヒートポンプECU11における、暖房モードの選択について
図10のフローチャートに従って説明する。
【0057】
図10に示すように、ヒートポンプECU11は、自動的にまたは空調操作部75に対するマニュアル操作により暖房運転が選択されると、暖房要求有として(ステップS201)、暖房モードの選択のために圧縮機2の起動前の圧力値、すなわち、初期圧力値を取得する(ステップS202)。ヒートポンプECU11は、初期圧力値と予め設定された初期圧力値に対する第1閾値Pth1とを比較する(ステップS202)。
【0058】
ステップS202において、ヒートポンプECU11は、初期圧力値が第1閾値Pth1より大きい場合には、外気吸熱暖房モードを選択する(ステップS203)。ステップS202において、初期圧力値が第1閾値Pth1以下の場合には、ステップS204に進み、初期圧力値と第2閾値Pth2とを比較する(ステップS204)。ステップS204において、ヒートポンプECU11は、初期圧力値が第2閾値Pth2より大きい場合には、第1ホットガス暖房モードを選択する(ステップS205)。ステップS204において、初期圧力値が第2閾値Pth2以下の場合には、第2ホットガス暖房モードを選択する(ステップS206)。
【0059】
このように、本実施形態によれば、吐出バイパス回路を用いない第1ホットガス暖房モードと、吐出バイパス回路を用いる第2ホットガス暖房モードと、の2つのホットガス暖房モードを選択的に実行可能としている。そして、ホットガス暖房選択条件として、圧縮機2の初期圧力値に対する第1閾値Pth1及び第2閾値Pth2を予め定め、第1閾値Pth1及び第2閾値Pth2に基づいて第1ホットガス暖房モード又は第2ホットガス暖房モードを選択するか否かを決定する。
【0060】
ここで、第2ホットガス暖房モードは、圧縮機2で圧縮され高温高圧となった冷媒を、吐出バイパス回路を経て圧縮機2へ戻すため、圧縮機2での動力の上乗せを行うことができる。このため、第2ホットガス暖房モードは、第1ホットガス暖房モードに比してより早期に車室内へ所望の温度の空気を供給することができる。
【0061】
圧縮機2の初期圧力は、外気温を含む車両の状況を反映した値を示しているため、ホットガス暖房選択条件として、初期圧力値に対する第1閾値Pth1及び第1閾値Pth1よりも低い値を示す第2閾値Pth2を定めることで、車両の状況に応じて第1ホットガス暖房モード又は第2ホットガス暖房モードの何れか最適な暖房モードを選択して実行することができる。つまり、より適切な暖房モードを選択して実行し、補助ヒータを用いなくとも必要な暖房能力を担保することができる。
【0062】
(変形例)
上述のように、外気吸熱暖房モードでは、室外熱交換器7に冷媒を流通させ、室外熱交換器7において冷媒と外気との熱交換を行わせる。このとき、室外熱交換器7では冷媒が蒸発し、室外熱交換器7が低温となるため、室外熱交換器7の表面に外気中の水分が霜となって付着してしまうことがある。室外熱交換器7に着霜が生じると、室外熱交換器7において冷媒が外気から吸熱できず、外気吸熱暖房を行うことができない。
【0063】
したがって、室外熱交換器7に着霜がある場合には、ホットガス暖房モードを選択して実行することが好ましい場合がある。そこで、ヒートポンプECU11は、ホットガス選択条件を、室外熱交換器7への着霜の有無によって設定することができる。例えば、上述した初期圧力値に対する第1閾値Pth1及び第2閾値Pth2に加え、室外熱交換器7への着霜の検出をホットガス暖房選択条件として定めることができる。
【0064】
このようなホットガス暖房選択条件が設定されている場合、ヒートポンプECU11は、
図11に示すフローチャートに従って、外気吸熱暖房モード、第1ホットガス暖房モード、及び、第2ホットガス暖房モードを含む複数の暖房モードから暖房モードを選択して実行する。
【0065】
ヒートポンプECU11は、
図11に示すように、自動的にまたは空調操作部75に対するマニュアル操作により暖房運転が選択されると、暖房要求有として(ステップS301)、暖房モードの選択のために圧縮機2の初期圧力値を取得し、初期圧力値と第1閾値Pth1とを比較する(ステップS302)。
【0066】
ヒートポンプECU11は、ステップS302における初期圧力値と第1閾値Pth1との比較の結果、初期圧力値が第1閾値Pth1より大きい場合に、室外熱交換器7への着霜の有無を判定する(ステップS303)。ステップS303の判定において、室外熱交換器7に着霜がない場合には外気吸熱暖房モードを選択し(ステップS305)、室外熱交換器7に着霜がある場合には第1ホットガス暖房モードを選択する(ステップS306)。
【0067】
ヒートポンプECU11は、ステップS302における初期圧力値と第1閾値Pth1との比較の結果、初期圧力値が第1閾値Pth1以下の場合には、初期圧力値と第2閾値Pth2とを比較する(ステップS304)。ヒートポンプECU11は、ステップS304において、初期圧力値が第2閾値Pth2より大きい場合には、第1ホットガス暖房モードを選択する(ステップS306)。ステップS304において、初期圧力値が第2閾値Pth2以下の場合には、第2ホットガス暖房モードを選択する(ステップS307)。
【0068】
本変形例では、ホットガス暖房選択条件に、室外熱交換器7への着霜の有無を含めることで、車両の状況に応じて、より最適な暖房モードを選択して実行することができる。
なお、着霜の検出は、例えば、外気温度センサ71で検出された外気温度Tamから、室外熱交換器センサ74で検出された室外熱交換器7の表面温度を差し引いた差分値に基づいて行うことができる。つまり、差分値が、予め定めた温度よりも大きな値である場合に着霜を検出する。また、ヒートポンプECU11は、例えば、室外熱交換器7への着霜が検出された場合に、直ちにホットガス暖房モードが選択されるようなホットガス暖房選択条件を設定することもできる。
【0069】
(第3実施形態)
上記した第2実施形態及びその変形例では、車両用空調装置200において、暖房要求があった場合の暖房モードの選択について説明したが、車両の走行中に着霜が生じる場合も考えられる。そこで、本実施形態では、いずれかの暖房モードの実行中に、着霜の有無を判定した結果に基づく暖房モードの選択ないしは切替えについて
図12のフローチャートに従って説明する。
【0070】
図12に示すように、ヒートポンプECU11は、暖房運転中であるか否か(ステップS401)、特に、外気吸熱暖房モードによる暖房運転中であるか否か(ステップS402)を判定する。ステップS402の判定において、運転中の暖房モードが外気吸熱暖房モードではないと判定された場合には、運転中の暖房モードを維持し、運転中の暖房モードの実行を継続する(ステップS404)。ステップS402の判定において、運転中の暖房モードが外気吸熱暖房モードであると判定された場合には、室外熱交換器7への着霜の有無を判定する(ステップS403)。
【0071】
ヒートポンプECU11は、ステップS403における判定の結果、室外熱交換器7に着霜がないと判定された場合には、運転中の暖房モードを維持し、運転中の暖房モードの実行を継続する(ステップS404)。ヒートポンプECU11は、ステップS403における判定の結果、室外熱交換器7に着霜があると判定された場合には、外気温度センサ71で検出された外気温度Tamを取得し、外気温度Tamと予め定めた外気温に対する閾値温度Tthとを比較する(ステップS405)。
【0072】
ヒートポンプECU11は、ステップS405における外気温度Tamと閾値温度Tthとの比較の結果、外気温度Tamが閾値温度Tthより大きい場合には、第1ホットガス暖房モードを選択し(S406)、外気吸熱暖房モードから第1ホットガス暖房モードへ切り替えて暖房運転を行う。
【0073】
ヒートポンプECU11は、ステップS405における外気温度Tamと閾値温度Tthとの比較の結果、外気温度Tamが閾値温度Tth以下の場合には、第2ホットガス暖房モードを選択し(S407)、外気吸熱暖房モードから第2ホットガス暖房モードへ切り替えて暖房運転を行う。
【0074】
このように車両の走行中に着霜が生じ、外気吸熱暖房モードでは暖房能力を担保できない場合に、車両の状況に応じて第1ホットガス暖房モード又は第2ホットガス暖房モードを選択し、外気吸熱暖房モードから切替えて実行することができる。したがって、車両の状況に応じて、補助ヒータ等を用いることなく、必要な暖房能力を担保することができる。
【0075】
なお、上述の各例では、複数の暖房モードのうち、ホットガス暖房モード以外の暖房モードの例として、吸熱用の熱交換器に室外熱交換器を用いる外気吸熱暖房モードについて説明した。この他、例えば、冷媒―熱媒体熱交換器を用いてバッテリやモータ等の廃熱を回収して熱媒体を介して冷媒に吸熱させて利用する廃熱回収暖房モードを含んでいてもよい。
【0076】
以上説明してきたように、上記した実施形態に係る車両用空調装置100、200及びその変形例によれば、ヒートポンプECU11は、ホットガス暖房モード(第1ホットガス暖房モード、第2ホットガス暖房モード)と外気吸熱暖房モードを含む複数の暖房モードを実行可能である。そして、予め定められたホットガス暖房選択条件に従って、外気温の影響を受けにくく補助ヒータ等による補完を必要としない暖房を実現できるホットガス暖房モードを実行しながら、ホットガス暖房モードを必要としない場合に外気吸熱暖房モードを実行する。これにより、補助ヒータ等による補完を行わなくとも車両の状況に応じて適切な暖房モードを選択して実行することができ、十分な暖房能力を担保することができる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
100,200:車両用空調装置,2:圧縮機,3:空気流通路,4:室内熱交換器,6:室外膨張弁,7:室外熱交換器,8:室内膨張弁,9:吸熱器,10:HVACユニット,11:ヒートポンプECU(制御装置),12:アキュムレータ,21,22,24:電磁弁,72:圧縮機センサ