(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000311
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法および予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20221222BHJP
【FI】
G16H20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101056
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507234438
【氏名又は名称】広島県公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】521266723
【氏名又は名称】株式会社動きのコツジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹野 有
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正哉
(72)【発明者】
【氏名】生野 達也
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】歩行訓練者が意欲的に訓練に取り組むことのできる予測装置、予測方法および予測プログラムを提案する。
【解決手段】本開示に係る予測装置は、取得部と、生成部と、予測部とを備える。取得部は、歩行訓練者の歩行動作に関する情報を含む第1の情報と、歩行訓練者の身体および症状に関する情報を含む第2の情報とを取得する。生成部は、取得部によって取得された第1の情報および第2の情報を、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報と、過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を学習したモデルに入力し、モデルから出力された結果に基づいて、歩行訓練者に対する訓練内容を生成する。予測部は、生成部によって生成された訓練内容に基づいて、歩行訓練者の将来における歩行機能を予測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行訓練者の歩行動作に関する情報を含む第1の情報と、当該歩行訓練者の身体および症状に関する情報を含む第2の情報とを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された第1の情報および第2の情報を、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報と、当該過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を学習したモデルに入力し、当該モデルから出力された結果に基づいて、前記歩行訓練者に対する訓練内容を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された訓練内容に基づいて、当該歩行訓練者の将来における歩行機能を予測する予測部と、
を備えたことを特徴とする予測装置。
【請求項2】
前記予測部は、
前記歩行訓練者の将来における歩行機能として、当該歩行訓練者の歩行機能の回復内容、回復予測期間、および、異なる訓練内容を新たに実施するまでの期間の少なくともいずれか一つを予測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報を学習データとし、当該過去に実施された歩行訓練の内容および結果もしくは当該学習データに基づいて訓練指導者が判定した歩行訓練の内容および予測結果を正解データとするデータセットを学習した前記モデルを用いて、前記歩行訓練者に対する訓練内容を生成する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記取得部は、
第3の情報として、前記歩行訓練者が所望する訓練内容もしくは訓練期間を取得し、
前記生成部は、
前記取得部によって取得された第3の情報に基づいて、前記歩行訓練者に対する訓練内容を生成する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の予測装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する予測方法であって、
歩行訓練者の歩行動作に関する情報を含む第1の情報と、当該歩行訓練者の身体および症状に関する情報を含む第2の情報とを取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された第1の情報および第2の情報を、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報と、当該過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を学習したモデルに入力し、当該モデルから出力された結果に基づいて、前記歩行訓練者に対する訓練内容を生成する生成工程と、
前記生成工程によって生成された訓練内容に基づいて、当該歩行訓練者の将来における歩行機能を予測する予測工程と、
を含んだことを特徴とする予測方法。
【請求項6】
歩行訓練者の歩行動作に関する情報を含む第1の情報と、当該歩行訓練者の身体および症状に関する情報を含む第2の情報とを取得する取得手順と、
前記取得手順によって取得された第1の情報および第2の情報を、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報と、当該過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を学習したモデルに入力し、当該モデルから出力された結果に基づいて、前記歩行訓練者に対する訓練内容を生成する生成手順と、
前記生成手順によって生成された訓練内容に基づいて、当該歩行訓練者の将来における歩行機能を予測する予測手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行訓練に係る予測処理を行う予測装置、予測方法および予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体の動きに関して様々な研究が進められている。例えば、計測された歩行パターンや、身体に取り付けたセンサから得られる情報に基づいて、人の動きの機能を改善したり、効率よくリハビリテーションを行ったりするための技術が開発されている。
【0003】
一例として、歩容パターンと歩行パラメータに基づいて、被験者の歩行状態を可視化し、被験者自身の歩行状態の癖をイメージさせる技術が知られている(下記特許文献1を参照)。また、歩行障害者の残存歩行能力に基づいて、より能動的な歩行訓練を行うことができる技術が知られている(下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-204953号公報
【特許文献2】特許第6175050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、歩行者に歩行状態を提示できるので、効果的な歩行訓練を行うことができる。
【0006】
しかしながら、従来技術は、被験者の歩行状態を提示するか、あるいは歩行の補助となるものであり、歩行訓練者が訓練の成果をイメージすることは難しい。すなわち、歩行訓練者は、どの程度の訓練をどの位の期間続けることでどのように歩行機能が改善されるのか、という結果をイメージすることができない。このため、歩行訓練者が訓練に対して意欲を失ったり、不安を抱いたりするおそれがある。
【0007】
そこで、本開示では、歩行訓練者が意欲的に訓練に取り組むことのできる予測装置、予測方法および予測プログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示に係る一形態の予測装置は、歩行訓練者の歩行動作に関する情報を含む第1の情報と、当該歩行訓練者の身体および症状に関する情報を含む第2の情報とを取得する取得部と、前記取得部によって取得された第1の情報および第2の情報を、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報と、当該過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を学習したモデルに入力し、当該モデルから出力された結果に基づいて、前記歩行訓練者に対する訓練内容を生成する生成部と、前記生成部によって生成された訓練内容に基づいて、当該歩行訓練者の将来における歩行機能を予測する予測部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る予測装置が実行する処理の流れを模式的に示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る予測システムの処理手順を示すシーケンス図である。
【
図3】実施形態に係るユーザ端末および予測装置の構成例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るユーザ情報記憶部の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る学習データ記憶部の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係るモデル記憶部の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る予測結果記憶部の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る情報処理の手順を示すフローチャート(1)である。
【
図9】実施形態に係る情報処理の手順を示すフローチャート(2)である。
【
図10】予測装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
(1.実施形態)
[1-1.実施形態に係る予測処理の一例]
図1は、実施形態に係る予測処理の流れを模式的に示したブロック図である。
図1に示す予測装置100は、実施形態に係る予測処理を実行する情報処理装置である。予測装置100は、例えば、リハビリテーション等の歩行訓練を実施する施設や、理学療法士等の訓練指導者によって利用される。
【0012】
リハビリテーション等で実施される歩行訓練では、歩行訓練を受ける者(以下「歩行訓練者」と称する)が、訓練の回復期間や回復内容など将来の歩行機能を意識して取り組むほうが効果は高くなる。一方で、歩行訓練者が将来の歩行機能をイメージできない場合、歩行訓練者が訓練に対して意欲を失い、訓練成果が低下する可能性も生じる。
【0013】
そこで、予測装置100は、以下に説明するように、歩行訓練者が訓練を行うことで歩行機能がどのくらい回復するか、といった内容を予測し、歩行訓練者に提示する。これにより、予測装置100は、歩行訓練者が意欲的に訓練を行うことを支援する。以下、
図1を用いて、予測装置100が実行する処理の概要を流れに沿って説明する。
【0014】
まず、予測装置100は、学習データセットを取得する(ステップS10)。具体的には、予測装置100は、過去に実施された歩行訓練における歩行訓練者の情報と、その歩行訓練の内容および結果とがセットになった各種データを取得する。歩行訓練者の情報とは、例えば、歩行訓練者の身体情報(性別、年齢、身長、体重、股下、足裏サイズ等)である。また、歩行訓練者の情報とは、歩行訓練を行う契機となった症状に関する情報(骨折や捻挫などの具体的症例、発症からの経過期間、症状区分、症状箇所、麻痺の有無、日常生活においてどのくらい動作が可能かといった内容等)である。また、歩行訓練者の情報は、歩行訓練を行う前後や訓練中に取得された歩行データ(例えば歩行時に各種センサによって取得される歩行時の足の圧力、加速度、歩幅等)を含んでもよい。
【0015】
歩行訓練の内容とは、実際に訓練指導者が決定した訓練内容や訓練時間(例えば、平行棒を利用した歩行訓練30分や、ストレッチ、器具を利用した関節や筋などの機能回復等)である。また、歩行訓練の結果とは、歩行機能の回復具合(杖を利用した歩行が可能になった、自立歩行が可能になった、自力での階段の昇降が可能になった等)や、回復期間(症状が発生してからどのくらいの期間で上記回復具合に達したか等)である。
【0016】
予測装置100は、例えば、電子カルテに入力されたデータや、訓練指導者により記録されたログ等から、上記の学習データセットを取得する。なお、学習データセットは、上述した各種情報を組み合わせたものでもよいし、過去に実施された歩行訓練における歩行訓練者の情報(機械学習でいう、いわゆるインプット)と、1つの正解データ(機械学習でいう、いわゆるラベル)とが組み合わされたものでもよい。具体的には、学習データセットは、歩行訓練者の情報(一例としては、(性別、年齢、身長、体重、症例、・・・)といった各インプットを数値化(正規化)したベクトル)と、正解データ(「1日」に「1時間」の「補助を利用した歩行訓練」を実施し、その結果「2か月後」に「杖を利用した歩行が可能」になったという情報)との組み合わせで構成される。
【0017】
なお、訓練内容は、ラベルとして利用されるだけでなく、インプットとして利用されてもよい。すなわち、学習データセットは、「1日」に「どのような訓練」を「何時間」おこなったかを歩行訓練者の情報(インプット)とし、結果として、「2か月後」に「杖を利用した歩行が可能になった」ことを正解データ(ラベル)としてもよい。このような学習データセットの生成や取得、各項目の数値化(正規化)には、各種の既知の技術が利用されてもよい。なお、本明細書では、過去に実施された歩行訓練における歩行訓練者の個々の情報を学習データと称し、学習データと歩行訓練の内容および結果である正解データとのセットを学習データセットと称する。
【0018】
ステップS10で得られた複数の学習データセットに基づいて、予測装置100は、学習処理を行う(ステップS11)。具体的には、予測装置100は、過去に実施された歩行訓練における歩行訓練者の情報と、その歩行訓練の内容および結果との相関性を学習する。
【0019】
すなわち、予測装置100は、過去に実施された歩行訓練における歩行訓練者の情報をインプット(素性や説明変数等とも称される)とし、歩行訓練の内容および結果をラベル(正解データ、教師データ、目的変数とも称される)とする回帰学習モデルを生成する(ステップS12)。
図1での図示は省略するが、予測装置100は、複数のモデルを生成してもよい。例えば、予測装置100は、「歩行訓練者の情報」と「訓練内容」との相関性を学習したモデルと、「歩行訓練者の情報および訓練内容」と「回復内容」や、「歩行訓練者の情報および訓練内容」と「回復期間」との相関性を学習したモデルとを別々に生成してもよい。そして、予測装置100は、後述する生成処理や予測処理において、複数のモデルのうち適切なモデルを用いて各処理を行ってもよい。
【0020】
そして、モデルを生成した予測装置100は、予測対象者から情報を取得した場合に、当該モデルを用いて予測処理を行う。
図1の例では、予測装置100は、予測対象の歩行訓練者であるユーザ20に対して予測処理を行う。
【0021】
実施形態に係る予測処理を行う場合、予測装置100は、モデルに入力されるデータを取得する(ステップS15)。まず、予測装置100は、ユーザ20に関する情報を取得する。具体的には、予測装置100は、スマートフォンやタブレット端末等であるユーザ端末10を介して、ユーザ20の性別や年齢などの身体情報を取得する。予測装置100は、ユーザ端末10から送信された情報を取得してもよいし、訓練指導者が行った問診等により得られた情報をデータ化したものを取得してもよい。なお、本明細書中では、「ユーザ」とは「ユーザが利用するユーザ端末」を意味する場合がある。例えば、「ユーザが身体情報を送信する」とは、実際には、「ユーザが利用するユーザ端末が身体情報を送信する」ことを意味する。
【0022】
また、予測装置100は、ユーザ20を診察した医者等が入力した電子カルテを介して、ユーザ20の症状情報を取得する。あるいは、予測装置100は、理学療法士等が判断した症状情報をデータ化したものを取得してもよい。
【0023】
また、予測装置100は、ユーザ20の歩行状態をセンサで測定した歩行データを取得する。例えば、予測装置100は、リハビリテーションが行われる訓練施設等に設置されたセンサを介して、ユーザ20の歩行における加速度や圧力、歩幅等を取得する。
【0024】
そして、予測装置100は、ステップS15で得られた各種情報をステップS12で生成したモデルに入力する(ステップS16)。
【0025】
続けて、予測装置100は、モデルから出力される情報に基づいて、ユーザ20に対する訓練内容を生成する。また、予測装置100は、生成した訓練内容に基づいて、ユーザ20の回復内容、回復期間を予測する(ステップS17)。
【0026】
例えば、予測装置100は、モデルから出力された情報に基づいて、「1日」に「どのような訓練」を「何時間」おこなうか、といった訓練内容を生成する。具体的には、予測装置100は、ユーザ20の情報を入力したモデルから出力された訓練内容のうちスコアが高い内容や時間、すなわち、ユーザ20に対して適切であると判定された内容を選択し、訓練内容を生成する。例えば、予測装置100が生成したモデルが、訓練の適切さを0から1のスコアとして出力する場合(1に近づくほど適切な訓練内容であると判断される)、予測装置100は、入力された情報に基づいてスコアを出力する。一例として、予測装置100は、「1時間」の「歩行補助具を利用した歩行訓練」のスコアが0.5で、「2時間」の「ストレッチ」のスコアが0.3である場合、よりスコアの高い「1時間」の「歩行補助具を利用した歩行訓練」をユーザ20に対する訓練内容として生成する。なお、予測装置100は、複数のメニューを組み合わせた訓練内容を生成する場合、よりスコアの高い訓練内容から順にメニューを選択して訓練内容を生成してもよい。
【0027】
続けて、予測装置100は、生成した訓練内容に基づいて、ユーザ20の将来における歩行機能、すなわち回復期間や回復内容を予測する。例えば、予測装置100は、入力されるユーザ情報とこれから実施される訓練内容と、回復期間や回復内容との相関性を学習したモデルを用いて、ユーザ20の回復期間や回復内容を予測する。すなわち、予測装置100は、ユーザ20と類似する身体情報や症状情報を有する過去の訓練者が、どのような訓練を実施した場合にどのような結果が生じるか、といった情報を出力させるモデルを利用することで、ユーザ20の将来の歩行機能を予測する。
【0028】
そして、予測装置100は、生成した訓練内容や予測した結果をユーザ端末10に送信し、ユーザ端末10の画面に表示させるよう制御する。これにより、ユーザ20は、これから自身が実施する訓練内容を把握したり、回復期間の予測見込みを立てたりすることができる。
【0029】
なお、ユーザ20は、予測装置100によって生成された訓練内容や予測に対するフィードバックを行ってもよい。例えば、ユーザ20は、気が進まない訓練内容の変更を要求したり、所望する訓練内容を提示したり、より予測回復期間が短くなるよう内容を変更したりするなどのフィードバックを行う。かかるフィードバックを受けた場合、訓練指導者は、専門家の知見から訓練内容を変更してもよいし、予測装置100にさらに情報を入力し、改めて訓練内容を生成させてもよい。
【0030】
例えば、予測装置100は、ユーザ20が所望した訓練内容と、「歩行訓練者の情報」と「訓練内容」との相関性を学習したモデルから出力された訓練内容とを比較する。そして、予測装置100は、ユーザ20が所望した訓練内容に対応するスコアと、モデルから出力された訓練内容とスコアとが所定範囲内(例えば0.2以内など)であれば、訓練内容をユーザ20が所望した訓練内容に置き換えるなどの処理を行う。一方、予測装置100は、ユーザ20が所望した訓練内容に対応するスコアと、モデルから出力された訓練内容とスコアとが所定範囲を超えていれば、ユーザ20が所望した訓練内容を却下してもよい。例えば、予測装置100は、ユーザ20が所望した訓練内容に対応するスコアが0.2で、モデルから出力された訓練内容に対応するスコアが0.3であれば、両スコアの差が0.2以内であり所定範囲内と判定して、ユーザ20が所望した訓練内容を採用する。一方、予測装置100は、ユーザ20が所望した訓練内容に対応するスコアがマイナス0.3で、モデルから出力された訓練内容に対応するスコアが0.3であれば、両スコアの差が所定範囲外として、ユーザ20が所望した訓練内容を却下する。このようなスコアの調整は設計事項であり、理学療法士や医師等の訓練指導者により、任意に設定されてよい。
【0031】
以上、
図1を用いて予測装置100が実行する処理の概要を説明した。ここで、実施形態に係る予測処理は、予測装置100を含む予測システム1によって実行されてもよい。そこで、
図2以下を用いて、予測システム1の構成および処理の流れについて説明する。
【0032】
図2は、実施形態に係る予測システム1の処理手順を示すシーケンス図である。
図2に示すように、予測システム1は、ユーザ端末10と、予測装置100と、センサ30とを含む。
【0033】
センサ30は、歩行訓練を実施する施設等に設置される測定機器である。例えば、センサ30は、床に敷いた圧力マットや、歩行訓練時の靴やインソール内に備えた圧力センサ、動作解析用のカメラ等である。なお、センサ30は、測定した情報(歩行データ)をユーザ端末10や予測装置100に送信するための通信機能を備えるものとする。
【0034】
図2に示すように、センサ30は、訓練実施に際して、ユーザ20の歩行データを測定する(ステップS20)。そして、センサ30は、測定した歩行データを予測装置100に送信する(ステップS21)。
【0035】
予測装置100は、センサ30が測定した歩行データを受信する(ステップS22)。また、ユーザ20は、センサ30による測定とともに、自身の身長や体重等、身体情報の測定を行い、ユーザ端末10に入力する(ステップS23)。また、ユーザ20は、医師や訓練指導者によって判断された具体的症例等の症状情報についても身体情報とともにユーザ端末10に入力する。ユーザ20は、例えば、ユーザ端末10にインストールされたアプリ上で情報を入力する。
【0036】
ユーザ端末10は、ユーザ20から入力された身体情報および症状情報を予測装置100に送信する(ステップS24)。予測装置100は、ユーザ端末10から身体情報および症状情報を受信する(ステップS25)。そして、予測装置100は、ステップS22およびステップS25で取得した情報をデータ化してモデルに入力し、訓練内容の生成、および、ユーザ20の将来の歩行機能に関する予測を行う(ステップS26)。
【0037】
予測装置100は、生成した訓練内容および予測内容をユーザ端末10に送信する(ステップS27)。ユーザ端末10は、訓練内容および予測内容を受信し(ステップS28)、その結果を画面上に表示する(ステップS29)。これにより、ユーザ20は、自身の訓練内容および回復予測を把握することができる。
【0038】
以上、
図1および
図2を用いて説明したように、実施形態に係る予測装置100は、歩行訓練者の歩行動作に関する情報(歩行データ)を含む第1の情報と、歩行訓練者の身体および症状に関する情報を含む第2の情報とを取得する。そして、予測装置100は、第1の情報および第2の情報を、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報と、過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を学習したモデルに入力し、モデルから出力された結果に基づいて、歩行訓練者に対する訓練内容を生成する。また、予測装置100は、生成された訓練内容に基づいて、歩行訓練者の将来における歩行機能を予測する。
【0039】
すなわち、予測装置100は、過去の訓練に関する情報に基づいて生成されたモデルを用いて、ユーザ20にこれから実施する訓練内容を生成するとともに、回復までの期間や回復する機能を予測する。これにより、予測装置100は、ユーザ20に対して訓練実施前に訓練内容を把握させることで、意欲的に訓練に取り組ませることができる。また、予測装置100は、提示された訓練内容に対するフィードバックをユーザ20から受け付けることで、ユーザ20がより主体的に訓練に臨む姿勢を支援し、訓練成果を向上させる。
【0040】
[1-2.実施形態に係るユーザ端末および予測装置の構成]
次に、実施形態に係る情報処理を実行するユーザ端末10および予測装置100の構成について説明する。
図3は、実施形態に係るユーザ端末10および予測装置100の構成例を示す図である。
【0041】
まず、ユーザ端末10について説明する。
図3に示すように、ユーザ端末10は、通信部11と、受付部12と、送信部13と、表示制御部14と、ユーザ情報記憶部15とを有する。なお、ユーザ端末10は、ユーザ20等から各種操作を受け付ける入力部(例えばタッチパネル等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0042】
通信部11は、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。通信部11は、ネットワークN(例えばインターネット)と有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、センサ30や予測装置100等との間で情報の送受信を行う。
【0043】
受付部12、送信部13および表示制御部14等の制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、ユーザ端末10内部に記憶されたプログラムがRAM(Random Access Memory)等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0044】
受付部12は、各種情報を受け付ける。例えば、受付部12は、ユーザ20から入力される身体情報(性別、年齢、身長、体重、股下、足裏サイズ等)の入力を受け付ける。また、受付部12は、ユーザの症状情報(具体的症例、発症からの経過期間、症状区分、症状箇所、麻痺の有無、日常生活動作の内容等)を受け付ける。受付部12は、受け付けた情報を適宜、ユーザ情報記憶部15に記憶する。
【0045】
送信部13は、各種情報を送信する。例えば、送信部13は、受付部12によって受け付けられた各種情報を予測装置100に送信する。また、送信部13は、受付部12によって、ユーザ20から訓練内容等に対するフィードバックが受け付けられた場合、かかる情報を予測装置100に送信する。また、送信部13は、センサ30によって測定された情報がユーザ端末10によって受け付けられる場合には、かかる情報を予測装置100に送信する。
【0046】
表示制御部14は、各種情報をユーザ端末10の画面上に表示するよう制御する。例えば、表示制御部14は、ユーザ20が身体情報や症状情報を入力するためのユーザインターフェイスを画面上に表示する。また、表示制御部14は、予測装置100が生成した訓練内容や予測結果を画面上に表示する。
【0047】
ユーザ情報記憶部15は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0048】
図4に、ユーザ情報記憶部15が記憶する情報の一例を示す。
図4は、実施形態に係るユーザ情報記憶部15の一例を示す図である。
図4に示した例では、ユーザ情報記憶部15は、「ユーザID」、「身体情報」、「症状情報」といった各項目を有する。さらに、「身体情報」は、「性別」、「年齢」、「身長」、「体重」、「股下」、「足裏サイズ」といった各項目を有する。また、「症状情報」は、「具体的症例」、「発症からの経過期間」、「症状区分」、「症状箇所」、「麻痺の有無」、「生活動作」といった各項目を有する。
【0049】
なお、
図4から
図7に示す例では、ユーザ情報記憶部15および後述する記憶部120に格納される情報を「A001」のように概念的に示す場合があるが、実際には、後述で説明する各情報がユーザ情報記憶部15および記憶部120に記憶される。また、
図4に示した情報は一例であり、ユーザ情報記憶部15は、
図4に示した情報以外にも、一般に歩行訓練において医師や理学療法士等が参照する種々のユーザに関する情報を記憶してもよい。また、ユーザ情報記憶部15は、センサ30が測定したユーザ20の歩行データを記憶してもよい。
【0050】
続いて、予測装置100について説明する。
図3に示すように、予測装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、予測装置100は、予測装置100を管理する管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0051】
通信部110は、例えば、NIC等によって実現される。通信部110は、ネットワークNと有線又は無線で接続され、ネットワークNを介して、ユーザ端末10やセンサ30等との間で情報の送受信を行う。
【0052】
記憶部120は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、学習データ記憶部121と、モデル記憶部122と、予測結果記憶部123とを有する。以下、各記憶部について順に説明する。
【0053】
図5に、学習データ記憶部121が記憶する情報の一例を示す。
図5は、実施形態に係る学習データ記憶部121の一例を示す図である。
図5に示した例では、学習データ記憶部121は、「データID」、「インプット」、「ラベル」といった項目を有する。また、「インプット」は、「身体情報」、「症状情報」、「歩行データ」といった項目を有する。また、「ラベル」は、「訓練内容」、「回復内容」、「回復期間」といった項目を有する。
【0054】
「データID」は、学習データセットを識別するための識別情報である。「インプット」は、学習データセットにおける素性であり、説明変数となりうる各種パラメータである。「身体情報」は、
図4に示した身体情報と対応するデータであり、各歩行訓練者の性別や身長、体重などの身体的な情報である。「症状情報」は、
図4に示した症状情報と対応するデータであり、各歩行訓練者の具体的症例などの症状を示す情報である。
【0055】
「ラベル」は、学習データセットにおける正解データであり、目的変数となりうる各種パラメータである。「訓練内容」は、歩行訓練者に対して実施された訓練の具体的な内容を示す。「回復内容」は、歩行訓練者の訓練ののち、歩行訓練者が獲得した(回復した)歩行機能の具体的な内容を示す。「回復期間」は、歩行訓練者が回復内容に至るまでに経過した訓練期間を示す。
【0056】
なお、学習データ記憶部121に記憶されたデータセットは一例であり、インプットやラベルの組み合わせは、生成するモデルに合わせて任意に組み替えられてもよい。例えば、学習データセットは、インプットが「身体情報」および「症状情報」であり、ラベルが「訓練内容」のみであるデータであってもよい。
【0057】
続いて、
図6に、モデル記憶部122が記憶する情報の一例を示す。
図6は、実施形態に係るモデル記憶部122の一例を示す図である。
図6に示した例では、モデル記憶部122は、「モデルID」、「学習データ」、「生成日時」といった項目を有する。
【0058】
「モデルID」は、生成されたモデルを識別するための識別情報である。「学習データ」は、モデル生成に用いられた学習データセットを示す。「生成日時」は、モデルが生成された日時を示す。なお、モデルは、生成されたあとであっても、学習データセットを増加したり学習手法を変更したりして、適宜、更新されてもよい。
【0059】
続いて、
図7に、予測結果記憶部123が記憶する情報の一例を示す。
図7は、実施形態に係る予測結果記憶部123の一例を示す図である。
図7に示した例では、予測結果記憶部123は、「ユーザID」、「訓練内容」、「回復期間」、「予測日時」といった項目を有する。
【0060】
「ユーザID」は、歩行訓練者を識別するための識別情報である。「訓練内容」は、モデルから出力された情報に基づいて生成された情報であって、歩行訓練者に対して実施される訓練の内容を示す。「回復期間」は、生成された訓練内容に基づいて予測装置100によって予測された情報であって、歩行訓練者が所定の状態まで回復すると予測される期間を示す。「予測日時」は、予測装置100によって予測処理が行われた日時を示す。
【0061】
図3に戻り、説明を続ける。制御部130は、例えば、CPUやMPU、GPU等によって、予測装置100内部に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、コントローラであり、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現されてもよい。
【0062】
図3に示すように、制御部130は、取得部131と、学習部132と、生成部133と、予測部134とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部130の内部構成は、
図3に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
【0063】
取得部131は、各種情報を取得する。例えば、取得部131は、ユーザ20の歩行動作に関する情報を含む第1の情報と、ユーザ20の身体および症状に関する情報を含む第2の情報とを取得する。
【0064】
具体的には、取得部131は、第1の情報として、センサ30により検知されるユーザ20の歩行における加速度、圧力、歩幅の少なくともいずれか一つを取得する。
【0065】
また、取得部131は、第2の情報として、ユーザ20の性別、年齢、身長、体重、股下、足裏サイズの少なくともいずれか一つを身体情報として取得する。また、取得部131は、ユーザ20の具体的症例、発症からの経過期間、症状区分、症状箇所、麻痺の有無、日常生活動作の内容の少なくともいずれか一つを症状情報として取得する。
【0066】
また、取得部131は、第3の情報として、ユーザ20が所望する訓練内容もしくは訓練期間を取得してもよい。取得部131は、第1の情報および第2の情報をモデルに入力する前にユーザ20が所望する訓練内容もしくは訓練期間を取得してもよいし、生成した訓練内容や回復期間をユーザ20に提示した後に、フィードバックとしてユーザ20が所望する訓練内容もしくは訓練期間を取得してもよい。
【0067】
取得部131は、取得した情報を適宜、記憶部120に記憶する。また、取得部131は、学習部132、生成部133および予測部134が処理に用いる情報を、適宜、記憶部120から取得してもよい。
【0068】
学習部132は、過去に実施された歩行訓練における歩行訓練者の情報と、過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を学習する。そして、学習部132は、歩行訓練を実施しようとするユーザ20の情報を入力した場合に、ユーザ20に対して実施する訓練内容および回復内容、回復期間を出力することのできるモデルを生成する。学習部132は、生成したモデルをモデル記憶部122に記憶する。上述のように、学習部132は、モデル生成や学習データセットの生成や正規化等に関して、各種既知技術を用いてもよい。
【0069】
生成部133は、取得部131によって取得された第1の情報および第2の情報を、学習部132によって生成されたモデルに入力し、モデルから出力された結果に基づいて、ユーザ20に対する訓練内容を生成する。
【0070】
また、生成部133は、ユーザ20が所望する訓練内容もしくは訓練期間に基づいて、ユーザ20に対する訓練内容を生成してもよい。例えば、生成部133は、第1の情報および第2の情報に基づいて、ユーザ20に適する複数の訓練内容を生成する。そして、生成部133は、生成した訓練内容にユーザ20が所望する訓練内容が含まれる場合、所定のスコアを加算したのち、実際にユーザ20に提示する訓練内容を決定する。これにより、生成部133は、ユーザ20の希望に即した訓練内容を生成することができる。
【0071】
また、生成部133は、生成した訓練内容をユーザ20に提示したのちに、ユーザ20から所望する訓練内容もしくは訓練期間を取得した場合、ユーザ20が所望した訓練内容に対応するスコアと、モデルから出力された訓練内容とを比較し、所望する訓練内容を置き換えるか否かを判定してもよい。
【0072】
予測部134は、生成部133によって生成された訓練内容に基づいて、ユーザ20の将来における歩行機能を予測する。
【0073】
例えば、予測部134は、ユーザ20の将来における歩行機能として、ユーザ20の歩行機能の回復内容や回復予測期間もしくは異なる訓練内容を新たに実施するまでの期間を予測する。異なる訓練内容を新たに実施するまでの期間とは、例えば「杖を利用した歩行訓練」を終了して、新たに次の段階の歩行訓練に進むまでの期間を示す。すなわち、予測部134は、歩行機能が予測された回復内容に到達するまでの期間を示すのみならず、歩行訓練の段階ごとに期間を予測してもよい。すなわち、予測部134は、直近の段階までの回復期間を段階的に示すことで、ユーザ20の訓練に関する意欲を失わせないようにすることができる。
【0074】
予測部134は、予測した結果をユーザ端末10に送信し、ユーザ端末10の画面上に表示させる。その後、予測部134は、ユーザ20からフィードバックを受け付けた場合、画面上において、新たな予測結果を表示させてもよい。例えば、予測部134は、ユーザ20から「もっと短い期間で訓練を行いたい」といったフィードバックを受け付けた場合、回復期間と訓練内容との相関性を学習したモデルを利用して、より回復期間が短くなるような訓練内容を生成する。そして、予測部134は、生成された訓練内容に即して予測される、新たな訓練期間をユーザ端末10に表示させる。このように、予測部134は、ユーザ20と相互にやり取りをしながら予測処理を行うことで、ユーザ20の希望に沿った訓練期間を予測することができる。
【0075】
[1-3.実施形態に係る情報処理の手順]
次に、
図8および
図9を用いて、実施形態に係る情報処理の手順について説明する。まず、
図8を用いて、実施形態に係る予測装置100が実行する学習処理の流れについて説明する。
図8は、実施形態に係る情報処理の手順を示すフローチャート(1)である。
【0076】
図8に示すように、予測装置100は、学習データセットを取得する(ステップS101)。例えば、予測装置100は、電子カルテの情報を自動的に取得したり、訓練指導者による入力作業を介したりして、過去に実施された歩行訓練における歩行訓練者の情報と、過去に実施された歩行訓練の内容および結果とが組み合わせられた学習データセットを取得する。
【0077】
続いて、予測装置100は、取得した学習データセットに基づいてモデルを生成する(ステップS102)。具体的には、予測装置100は、過去に実施された歩行訓練における歩行訓練者の情報と、過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を示すモデルを生成する。そして、予測装置100は、生成したモデルを記憶部120内に格納する(ステップS103)。
【0078】
続いて、
図9を用いて、実施形態に係る予測装置100が実行する予測処理の流れについて説明する。
図9は、実施形態に係る情報処理の手順を示すフローチャート(2)である。
【0079】
図9に示すように、予測装置100は、予測処理の対象となるユーザ20のユーザ情報(身体情報および症状情報)を取得する(ステップS201)。また、予測装置100は、ユーザ20の歩行データを取得する(ステップS202)。なお、予測装置100は、ステップS201に先立って歩行データを取得してもよい。
【0080】
続いて、予測装置100は、ユーザ20や訓練指導者等、歩行訓練者から希望を訓練指導者が聞いたか否かを判定する(ステップS203)。歩行訓練者の希望とは、例えば、ユーザ20が所望する訓練内容や訓練期間、もしくは、訓練指導者がユーザ20に対して推奨する訓練内容や訓練期間等である。
【0081】
歩行訓練者に希望がある場合(ステップS203;Yes)、予測装置100は、歩行訓練者が希望する内容を取得する(ステップS204)。一方、歩行訓練者に希望がない場合(ステップS203;No)、予測装置100は、ステップS204の処理をスキップする。
【0082】
続いて、予測装置100は、取得した各種情報をモデルに入力する(ステップS205)。そして、予測装置100は、出力された情報(生成した訓練内容および予測結果)をユーザ端末10に送信する(ステップS206)。
【0083】
その後、予測装置100は、ユーザ20や訓練指導者等からフィードバックを得たか否かを判定する(ステップS207)。フィードバックとは、例えば、ユーザ20が所望する訓練内容や訓練期間、もしくは、提示された訓練内容の変更等の要望である。
【0084】
フィードバックを得た場合(ステップS207;Yes)、予測装置100は、フィードバックされた情報に基づき生成処理もしくは予測処理を実行し、更新した情報をさらにユーザ端末10に送信する(ステップS208)。一方、フィードバックを得なかった場合(ステップS207;No)、予測装置100は、ステップS208の処理をスキップして、予測処理を終了する。
【0085】
(2.実施形態の変形例)
[2-1.装置の構成]
上記実施形態では、本開示に係るユーザ端末10は、ユーザ20が扱う端末で、スマートフォンやタブレット端末である例を示した。しかし、ユーザ端末10の構成は、実施形態で示した処理を実行できる構成であれば、この例に限られない。
【0086】
例えば、ユーザ端末10は、複数のスマートフォンやタブレット端末で構成されてもよい。具体的には、ユーザ端末10は、ユーザ20が使用するスマートフォンと、訓練指導者や医師が提供するタブレット端末とを含む、複数台の端末で構成されてもよい。
【0087】
また、センサ30は、圧力センサと、ユーザ20の歩行状態を測定するカメラと、温度計や湿度計等を含む複数の測定機器と、測定されたデータを送受信する機能を有した端末装置とで構成されてもよい。
【0088】
[2-2.学習データ]
上記実施形態では、学習データセットは、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報と、その訓練で実施された内容および結果との組み合わせである例を示した。しかし、学習データセットはこれに限られない。例えば、学習データセットは、医師や理学療法士等の専門家の知見を取り入れるものであってもよい。
【0089】
例えば、正解データは、過去に実施された歩行訓練の内容および結果のみならず、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報に基づいて訓練指導者が判定した歩行訓練の内容および予測結果であってもよい。すなわち、予測装置100は、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報を学習データとし、過去に実施された歩行訓練の内容および結果もしくは当該学習データに基づいて訓練指導者が判定した歩行訓練の内容および予測結果を正解データとするデータセットを学習したモデルを用いて、ユーザ20に対する訓練内容を生成してもよい。
【0090】
歩行訓練の内容は、専門家の知見に基づいて決定されることも多い。このため、学習データセットは、実際の過去の訓練のみならず、歩行訓練者の現状から専門家が判断した訓練内容や、回復期間の予測を用いてもよい。これにより、予測装置100は、専門家の判断を加味した、より現実に即して訓練内容や結果を予測するためのモデルを生成することができる。また、予測装置100は、不足しがちな実際の症例に基づく学習データセットのみならず、専門家の知見に基づくデータを学習データセットとして取得することで、大量の学習データセットを学習できるので、精度の高いモデルを生成することができる。
【0091】
[2-3.歩行訓練者の希望に基づく生成および予測処理]
予測装置100は、歩行訓練者が希望する訓練内容や期間について、例えば専門家との面接を介して取得してもよい。
【0092】
例えば、予測装置100は、ユーザ20と訓練指導者との会話もしくはメッセージのやり取りから、ユーザ20が所望する訓練内容もしくは訓練期間を抽出し、抽出した訓練内容もしくは訓練期間を第3の情報として取得してもよい。具体的には、予測装置100は、ユーザ20と訓練指導者との会話を音声認識し、あるいはメッセージのテキストデータを取得し、かかるデータの形態素解析等を経て、ユーザ20の希望する訓練内容や期間を取得する。
【0093】
例えば、予測装置100は、ユーザ20が発話した「一日の訓練は1時間までにしたい」や、「なるべく早く訓練を終えたい」や、「補助者を付けずに訓練を行いたい」といった内容を音声認識により取得する。そして、予測装置100は、これら取得した情報に基づいて、訓練内容や訓練期間を生成してもよい。これにより、予測装置100は、ユーザ20がユーザ端末10に入力操作を行わずとも、ユーザ20の希望に即した訓練内容等を生成することができる。
【0094】
このように、かかる処理は、ユーザ端末10と予測装置100とのインタラクティブな処理を経て実現可能である。すなわち、予測装置100は、予測されたユーザ20の将来における歩行機能を表示したユーザ端末10を介して第3の情報を取得する。さらに、予測装置100は、第3の情報に基づいて新たに生成されたユーザ20に対する訓練内容と、新たに生成された訓練内容に基づいて新たに予測した、ユーザ20の将来における歩行機能に関する情報をユーザ端末10に表示する。すなわち、予測装置100は、ユーザ端末10に訓練内容が表示された際に、その表示を閲覧したユーザ20が発話した内容を音声認識して第3の情報を取得してもよいし、ユーザ端末10でのユーザ20の入力を介して第3の情報を取得してもよい。そして、予測装置100は、第3の情報が得られた場合、それを反映させた訓練内容および予測結果をユーザ端末10に表示する。このように、予測装置100によれば、ユーザ20と予測装置100とが対話するような形式で訓練内容を決定できるので、ユーザ20に主体性を持たせた訓練を実施することができる。
【0095】
(3.その他の実施形態)
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0096】
例えば、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0097】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0098】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0099】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0100】
(4.本開示に係る予測装置の効果)
上述してきたように、本開示に係る予測装置(実施形態では予測装置100)は、取得部(実施形態では取得部131)と、生成部(実施形態では生成部133)と、予測部(実施形態では予測部134)とを含む。取得部は、歩行訓練者の歩行動作に関する情報を含む第1の情報と、歩行訓練者の身体および症状に関する情報を含む第2の情報とを取得する。生成部は、取得部によって取得された第1の情報および第2の情報を、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報と、過去に実施された歩行訓練の内容および結果との相関性を学習したモデルに入力し、モデルから出力された結果に基づいて、歩行訓練者に対する訓練内容を生成する。予測部は、生成部によって生成された訓練内容に基づいて、歩行訓練者の将来における歩行機能を予測する。
【0101】
このように、本開示に係る予測装置は、訓練実施前に将来の歩行機能の予測を行うことで、歩行訓練者が主体的に訓練に臨むことを支援できるので、訓練成果を向上させることができる。すなわち、予測装置によれば、歩行訓練者が意欲的に訓練に取り組むことができるという効果を奏する。
【0102】
また、予測部は、歩行訓練者の将来における歩行機能として、歩行訓練者の歩行機能の回復内容、回復予測期間もしくは異なる訓練内容を新たに実施するまでの期間を予測する。
【0103】
このように、予測装置は、回復内容や回復予測期間、次の段階の訓練に進むまでの期間を予測することで、歩行訓練者に訓練期間を把握させ、訓練に対する意欲を喚起させることができる。
【0104】
また、生成部は、過去に実施された歩行訓練における他の歩行訓練者の情報を学習データとし、過去に実施された歩行訓練の内容および結果もしくは学習データに基づいて訓練指導者が判定した歩行訓練の内容および予測結果を正解データとするデータセットを学習したモデルを用いて、歩行訓練者に対する訓練内容を生成する。
【0105】
このように、予測装置は、訓練指導者等の専門家が判断した知見をとりいれた学習データセットを用いて学習することで、より精度の高いモデルを生成することができる。
【0106】
また、取得部は、第3の情報として、歩行訓練者が所望する訓練内容もしくは訓練期間を取得する。生成部は、取得部によって取得された第3の情報に基づいて、歩行訓練者に対する訓練内容を生成する。
【0107】
このように、予測装置は、歩行訓練者の希望をとりいれた訓練内容を生成することで、治療やリハビリテーションに対して歩行訓練者が意欲的に取り組むことのできる環境を構築することができる。
【0108】
(5.ハードウェア構成)
上述してきた実施形態に係るユーザ端末10や予測装置100等の情報機器は、例えば
図10に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、実施形態に係る予測装置100を例に挙げて説明する。
図10は、予測装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM(Read Only Memory)1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インターフェイス1500、及び入出力インターフェイス1600を有する。コンピュータ1000の各部は、バス1050によって接続される。
【0109】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。例えば、CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に格納されたプログラムをRAM1200に展開し、各種プログラムに対応した処理を実行する。
【0110】
ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるBIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0111】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を非一時的に記録する、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。具体的には、HDD1400は、プログラムデータ1450の一例である本開示に係る情報処理プログラムを記録する記録媒体である。
【0112】
通信インターフェイス1500は、コンピュータ1000が外部ネットワーク1550(例えばインターネット)と接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、通信インターフェイス1500を介して、他の機器からデータを受信したり、CPU1100が生成したデータを他の機器へ送信したりする。
【0113】
入出力インターフェイス1600は、入出力デバイス1650とコンピュータ1000とを接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、キーボードやマウス等の入力デバイスからデータを受信する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやスピーカーやプリンタ等の出力デバイスにデータを送信する。また、入出力インターフェイス1600は、所定の記録媒体(メディア)に記録されたプログラム等を読み取るメディアインターフェイスとして機能してもよい。メディアとは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0114】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る予測装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされた情報処理プログラムを実行することにより、制御部130等の機能を実現する。また、HDD1400には、本開示に係る情報処理プログラムや、記憶部120内のデータが格納される。なお、CPU1100は、プログラムデータ1450をHDD1400から読み取って実行するが、他の例として、外部ネットワーク1550を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得してもよい。
【0115】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 予測システム
10 ユーザ端末
30 センサ
100 予測装置
110 通信部
120 記憶部
121 学習データ記憶部
122 モデル記憶部
123 予測結果記憶部
130 制御部
131 取得部
132 学習部
133 生成部
134 予測部