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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031119
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ソール及び靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/12 20060101AFI20230301BHJP
   A43B 13/18 20060101ALI20230301BHJP
   A43B 13/42 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A43B13/12 A
A43B13/18
A43B13/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136625
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】高島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小塚 祐也
(72)【発明者】
【氏名】阪口 正律
(72)【発明者】
【氏名】竹村 周平
(72)【発明者】
【氏名】木暮 孝行
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA02
4F050BA43
4F050BA55
4F050BF01
4F050HA55
4F050HA71
4F050HA73
4F050JA01
(57)【要約】
【課題】接地時における衝撃の低減と、蹴り出し時におけるミッドソール本体の過剰な変形の抑制と、の両立が可能なソール及び靴を提供すること。
【解決手段】ソール10は、ミッドソール本体210と、弾性部250と、押さえ部材300と、を備える。ミッドソール本体210は、収容部212を有する。弾性部250は、圧縮状態で収容部212内に収容されている。押さえ部材300は、圧縮状態における弾性部250の弾性率よりも高い弾性率を有し、かつ、弾性部250が圧縮状態に維持されるように弾性部250を押さえている。圧縮状態における弾性部250の弾性率は、ミッドソール本体210の弾性率よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッドソール本体と、
弾性体からなり、前記ミッドソール本体内に配置された弾性部と、
前記弾性部を押さえる押さえ部材と、を備え、
前記ミッドソール本体は、前記弾性部を収容する収容部を有し、
前記弾性部は、当該弾性部の体積が、当該弾性部に対して外力が作用していない無負荷状態における体積よりも小さくなるように圧縮された圧縮状態で前記収容部内に収容されており、
前記押さえ部材は、前記圧縮状態における前記弾性部の弾性率よりも高い弾性率を有し、かつ、前記弾性部が前記圧縮状態に維持されるように前記弾性部を押さえており、
前記圧縮状態における前記弾性部の弾性率は、前記ミッドソール本体の弾性率よりも大きい、ソール。
【請求項2】
前記ミッドソール本体は、上面を有し、
前記収容部は、前記ミッドソール本体の前記上面に向けて開口する形状を有し、
前記弾性部は、前記収容部から露出しており、着用者の足を間接的に支持する支持面を有し、
前記押さえ部材は、前記ミッドソール本体の前記上面に固定された状態で前記支持面を押さえている、請求項1に記載のソール。
【請求項3】
前記ミッドソール本体は、上面を有し、
前記弾性部は、前記ミッドソール本体と同じ材料で、かつ、前記ミッドソール本体とつながるように前記ミッドソール本体と一体的に形成されており、
前記弾性部は、着用者の足を間接的に支持する支持面を有し、
前記無負荷状態における前記支持面は、前記ミッドソール本体の前記上面よりも上方に突出している、請求項1に記載のソール。
【請求項4】
前記弾性部は、足幅方向における前記支持面の両端につながった端面を有し、
前記端面は、前記無負荷状態において前記支持面から足幅方向における外側に向かうにしたがって次第に下方に向かう形状を有する、請求項3に記載のソール。
【請求項5】
前記ミッドソール本体と前記弾性部との境界には、切込みが設けられている、請求項3又は4に記載のソール。
【請求項6】
前記押さえ部材は、平面視において前記支持面の外形よりも大きな外形を有し、前記支持面の全域を被覆するように配置されている、請求項2から5のいずれかに記載のソール。
【請求項7】
前記押さえ部材は、前記支持面を下方に押し付ける押さえ面を有する、請求項2から6のいずれかに記載のソール。
【請求項8】
前記押さえ部材は、前記押さえ面から前記弾性部に向かって突出する突出部をさらに有し、
前記突出部は、足長方向に延びる形状を有する、請求項7に記載のソール。
【請求項9】
前記押さえ部材は、足幅方向における前記押さえ面の両端から下方に向かって延びる一対の拘束壁をさらに有し、
前記一対の拘束壁は、足幅方向における両側から前記弾性部を拘束している、請求項7又は8に記載のソール。
【請求項10】
前記弾性部は、それぞれが独立して前記ソールの厚み方向に弾性変形することが可能な複数の弾性要素を含む、請求項1から9のいずれかに記載のソール。
【請求項11】
前記ミッドソール本体は、靴の着用者の足のMP関節を支持するMP関節支持領域を有し、
前記弾性部は、前記MP関節支持領域に設けられている、請求項1から10のいずれかに記載のソール。
【請求項12】
前記押さえ部材は、繊維強化プラスチックからなる、請求項1から11のいずれかに記載のソール。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載のソールと、
前記ソールに直接的または間接的に接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパーと、を備える、靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ソール及び靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミッドソール内に設けられたプレートを有する靴が知られている。例えば、米国特許第9833038号明細書には、上ミッドソール部材と、下ミッドソール部材と、プレートと、を備えるソール構造が開示されている。上ミッドソール部材は、上面と、下面と、貫通孔と、を有している。下ミッドソール部材は、上ミッドソール部材の下面に接する上面と、この上面から隆起するとともに上ミッドソール部材の貫通孔内に位置する隆起部と、を有している。隆起部は、上ミッドソール部材の上面と面一の上面を有している。プレートは、上ミッドソール部材の上面と隆起部の上面とに接している。プレートは、隆起部の上面と接着されており、上ミッドソール部材の上面とは接着されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9833038号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行などの動作を伴う運動用に用いられる靴においては、接地時における衝撃を低減することと、蹴り出し時におけるミッドソールの過剰な変形を抑制することと、が求められる。
【0005】
本開示の目的は、接地時における衝撃の低減と、蹴り出し時におけるミッドソール本体の過剰な変形の抑制と、の両立が可能なソール及び靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の一局面に従ったソールは、ミッドソール本体と、弾性体からなり、前記ミッドソール本体内に配置された弾性部と、前記弾性部を押さえる押さえ部材と、を備え、前記ミッドソール本体は、前記弾性部を収容する収容部を有し、前記弾性部は、当該弾性部の体積が、当該弾性部に対して外力が作用していない無負荷状態における体積よりも小さくなるように圧縮された圧縮状態で前記収容部内に収容されており、前記押さえ部材は、前記圧縮状態における前記弾性部の弾性率よりも高い弾性率を有し、かつ、前記弾性部が前記圧縮状態に維持されるように前記弾性部を押さえており、前記圧縮状態における前記弾性部の弾性率は、前記ミッドソール本体の弾性率よりも大きい。
【0007】
また、この開示の一局面に従った靴は、前記ソールと、前記ソールに直接的または間接的に接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパーと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この開示によれば、接地時における衝撃の低減と、蹴り出し時におけるミッドソール本体の過剰な変形の抑制と、の両立が可能なソール及び靴を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態における靴の断面図である。
図2】ソールの一部と靴の着用者の足の骨との関係を示す平面図である。
図3図1におけるIII-III線での断面図である。
図4】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、押さえ部材の変形例を概略的に示す断面図である。
図5】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、押さえ部材の変形例を概略的に示す断面図である。
図6】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、ミッドソールの変形例を概略的に示す断面図である。
図7】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、弾性部の変形例を概略的に示す断面図である。
図8】弾性部の変形例を概略的に示す平面図である。
図9】弾性部の変形例を概略的に示す平面図である。
図10】弾性部の変形例を概略的に示す平面図である。
図11】弾性部の変形例を概略的に示す平面図である。
図12】本開示の第2実施形態における靴のソールの断面図である。
図13図12に示されるソールにおいて、弾性部が押さえ部材により押さえられる前の状態を示す断面図である。
図14】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、ミッドソールの変形例を示す断面図である。
図15】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、ミッドソールの変形例を示す断面図である。
図16】本開示の第3実施形態の靴のソールの断面図である。
図17図16に示されるXVII-XVII線での断面図である。
図18図17から中底が取り外された状態を示す断面図である。
図19】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、ミッドソールの変形例を示す断面図である。
図20】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、ミッドソールの変形例を示す断面図である。
図21】足長方向と直交する平面でのソールの一部の断面であって、ミッドソールの変形例を示す断面図である。
図22図20から押さえ部材が取り外された状態を示す断面図である。
図23】ソールの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。以下の説明では、足長方向、足幅方向、前方、後方等の用語が用いられる。これら方向を示す用語は、地面等の平らな面に置かれた靴1を着用した着用者の視点から見た方向を示す。例えば、前方は、つま先側を指し、後方は、踵側を指す。また、内側は、足幅方向における足の内側(足の第1趾側)を指し、外側は、足幅方向における足の外側を指す。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態における靴の断面図である。本実施形態の靴1は、例えば、スポーツシューズやウォーキングシューズとして適用可能であり、靴1の用途は問わない。
【0012】
図1に示されるように、靴1は、ソール10と、アッパー20と、を備えている。
【0013】
アッパー20は、ソール10に直接的または間接的に接続されており、ソール10とともに着用者の足を収容する空間を形成する。
【0014】
図1及び図3に示されるように、ソール10は、アウターソール100と、ミッドソール200と、押さえ部材300と、を有している。
【0015】
アウターソール100は、接地部を構成している。アウターソール100は、ゴム等からなる。
【0016】
ミッドソール200は、アウターソール100上に設けられている。このミッドソール200上にアッパー20が配置されている。つまり、ミッドソール200は、アッパー20とアウターソール100との間に設けられている。図2に示されるように、ミッドソール200は、前足領域R1と、中足領域R2と、後足領域R3と、を有している。なお、図2には、右足用のソール10の一部が示されているが、左足用のソールは、右足用のソール10と左右対称な形状、もしくは,概ねそれに準じる形状を有している。
【0017】
前足領域R1は、ソール10の厚み方向に靴1の着用者の前足部と重なる領域である。前足部は、着用者の足のうち靴1の長手方向、すなわち、足長方向(図2における上下方向)における前部に位置する部位である。前足領域R1は、靴1の全長に対して靴1の前端部から後端部に向かって0%~30%程度の範囲に位置する領域である。
【0018】
足長方向は、シューズセンターSC(図2を参照)と平行な方向である。なお、シューズセンターSCは、靴1の中心線に限らず、靴1の標準的な着用者の踵骨の中心と第1趾及び第2趾間とを結ぶ直線に対応する線としてもよい。
【0019】
中足領域R2は、ソール10の厚み方向に靴1の着用者の中足部と重なる領域である。中足部は、着用者の足のうち前記長手方向における中央部に位置する部位である。中足領域R2は、靴1の全長に対して靴1の先端部から後端部に向かって30%~80%程度の範囲に位置する領域である。
【0020】
後足領域R3は、ソール10の厚み方向に靴1の着用者の後足部と重なる領域である。後足部は、着用者の足のうち前記長手方向における後部に位置する部位である。後足領域R3は、靴1の全長に対して靴1の前端部から後端部に向かって80%~100%程度の範囲に位置する領域である。
【0021】
図1及び図3に示されるように、ミッドソール200は、ミッドソール本体210と、弾性部250と、を有している。
【0022】
ミッドソール本体210は、樹脂製のフォーム材等により形成されている。ミッドソール本体210は、下側ミッドソール201と、上側ミッドソール202と、を有している。
【0023】
下側ミッドソール201は、アウターソール100上に設けられている。つまり、下側ミッドソール201の下面は、アウターソール100により被覆されている。なお、下側ミッドソール201の下面は、その一部のみがアウターソール100により被覆されていてもよく、その全域がアウターソール100により被覆されていてもよい。
【0024】
上側ミッドソール202は、下側ミッドソール201上に接続されている。上側ミッドソール202は、下側ミッドソール201の剛性よりも高い剛性を有していてもよいし、下側ミッドソール201の剛性と同じ剛性を有していてもよい。
【0025】
ミッドソール本体210は、弾性部250を収容する収容部212を有している。本実施形態では、図1に示されるように、収容部212は、下側ミッドソール201に形成されている。下側ミッドソール201は、上側ミッドソール202と対向する上面201Sを有し、収容部212は、下側ミッドソール201の上面201Sに向けて開口する形状を有している。収容部212は、下側ミッドソール201の上面201Sから下方に向かって窪む形状を有している。なお、収容部212は、下側ミッドソール201及び上側ミッドソール202に跨がる形状に形成されてもよい。
【0026】
弾性部250は、ミッドソール本体210内に配置されている。具体的に、弾性部250は、収容部212に収容されている。弾性部250は、弾性体からなる。弾性部250は、下側ミッドソール201又は上側ミッドソール202と同じ材料で形成されてもよいし、それらとは異なる材料で形成されてもよい。
【0027】
弾性部250は、当該弾性部250の体積が、当該弾性部250に対して外力が作用していない無負荷状態における体積よりも小さくなるように圧縮された圧縮状態で収容部212内に収容されている。圧縮状態における弾性部250の弾性率は、ミッドソール本体210の弾性率よりも大きい。
【0028】
ここで、無負荷状態とは、着用者が靴1を履いていない状態(着用者の足からの荷重が弾性部250に作用していない状態)で、かつ、後述する押さえ部材300により弾性部250が押さえられていない状態を意味する。
【0029】
図1及び図2に示されるように、弾性部250は、足長方向にMP関節を跨ぐ位置に配置されている。具体的に、ミッドソール本体210は、靴1の着用者の足のMP関節を支持するMP関節支持領域215を有しており、弾性部250は、MP関節支持領域215に設けられている。MP関節支持領域215は、前足領域R1及び中足領域R2を跨ぐ範囲に形成されている。足長方向における弾性部250の長さL1は、靴1の全長に対して10%~70%程度に設定される。ミッドソール本体210の前端部から弾性部250の前端部までの距離は、靴1の全長に対して10%~30%程度に設定される。
【0030】
弾性部250は、支持面250Sを有している。支持面250Sは、弾性部250の上面で構成されている。支持面250Sは、上側ミッドソール202や中敷き(図示略)等を介して着用者の足を間接的に支持する。支持面250Sは、収容部212から露出している。
【0031】
押さえ部材300は、弾性部250を押さえる部材である。本実施形態では、押さえ部材300は、板状に形成されている。ただし、弾性部250を押さえることが可能であれば、押さえ部材300は、ワイヤ等で構成されてもよい。
【0032】
押さえ部材300は、ミッドソール本体210に設けられている。図1に示されるように、本実施形態では、押さえ部材300は、ミッドソール本体210内に配置されている。より詳細には、押さえ部材300は、下側ミッドソール201と上側ミッドソール202との間に配置されている。ミッドソール本体210は、押さえ部材300を収容する空間を有している。その空間は、押さえ部材300の形状に対応する形状を有している。押さえ部材300は、下側ミッドソール201及び上側ミッドソール202の少なくとも一方に接着されている。
【0033】
図2に示されるように、押さえ部材300は、平面視において支持面250Sの外形よりも大きな外形を有している。押さえ部材300は、支持面250Sの全域を被覆するように配置されている。押さえ部材300は、弾性部250を上方から押さえている。なお、押さえ部材300がワイヤで構成される場合、当該ワイヤの収容部212への固定位置は、平面視において弾性部250の外側に位置していればよい。
【0034】
図1に示されるように、弾性部250を基準として押さえ部材300が配置された側とは反対側(下側)にアウターソール100が配置されている。アウターソール100は、弾性部250を基準として押さえ部材300が配置された側とは反対側から弾性部250を支持する支持部102を有している。支持部102は、足長方向における弾性部250の全域と厚み方向に重なる形状に形成されてもよいし、足長方向における弾性部250の一部と厚み方向に重なる形状に形成されてもよい。アウターソール100は、前記圧縮状態における弾性部250の弾性率よりも高い弾性率を有している。
【0035】
押さえ部材300は、前記圧縮状態における弾性部250の弾性率よりも高い弾性率を有している。押さえ部材300は、弾性部250が前記圧縮状態に維持されるように弾性部250を押さえている。押さえ部材300は、特に蹴り出し時におけるミッドソール本体210の過剰な変形を抑制する機能を有している。
【0036】
押さえ部材300は、繊維強化樹脂や非繊維強化樹脂からなる。繊維強化樹脂に用いられる繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ダイニーマ繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等が挙げられる。非繊維強化樹脂としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)やアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等のポリマー樹脂が挙げられる。押さえ部材300は、合成樹脂と上記繊維とを含む繊維強化プラスチックからなることが好ましく、合成樹脂と炭素繊維とを含む炭素繊維強化プラスチックからなることがより好ましい。
【0037】
以上に説明したように、本実施形態のソール10では、弾性部250が圧縮状態でミッドソール本体210の収容部212に収容されており、かつ、圧縮状態における弾性部250の弾性率は、ミッドソール本体210の弾性率よりも大きいため、蹴り出し時において、弾性部250は、ミッドソール本体210の過剰な変形を抑制する。また、接地時には、ミッドソール本体210が主として衝撃緩衝性を発揮する。
【0038】
以下、上記実施形態における変形例について説明する。
【0039】
(第1変形例)
図4に示されるように、押さえ部材300は、ベース部310と、少なくとも一つの突出部312と、を有していてもよい。
【0040】
ベース部310は、弾性部250を下方に押し付ける押さえ面310Sを有している。押さえ面310Sは、支持面250S及び下側ミッドソール201の上面201Sと対応する形状を有している。
【0041】
突出部312は、押さえ面310Sから弾性部250に向かって突出している。突出部312は、足長方向に延びる形状を有している。より詳細には、突出部312は、足長方向に同じ形状を有するリブ状に形成されているのが好ましい。足幅方向(図3における左右方向)における突出部312の長さは、押さえ面310Sから離間するにしたがって次第に小さくなるように形成されていてもよい。図3に示される例では、少なくとも一つの突出部312は、複数の突出部312を含んでいる。各突出部312は、足幅方向に間隔を置いて並ぶように配置されている。また図示はしないが、足幅方向に延びるリブ状としてもよい。
【0042】
この態様では、突出部312によって弾性部250が足幅方向における外側に膨張することが抑制されるため、弾性部250が有効に圧縮状態に維持される。
【0043】
(第2変形例)
図5に示されるように、押さえ部材300は、ベース部310と、一対の拘束壁330と、を有していてもよい。ベース部310の形状は、第1変形例のそれと同じである。ベース部310の押さえ面310Sは、支持面250Sと接着されている。
【0044】
一対の拘束壁330は、足幅方向(図5における左右方向)における押さえ面310Sの両端から下方に向かって延びている。一対の拘束壁330は、足幅方向における両側から弾性部250を拘束している。各拘束壁330の内側面は、弾性部250に接着されていない。拘束壁330は、たとえば足長方向にリブ状に延びるのが好ましい。また、拘束壁330は、弾性部250の周囲を包囲する環状(平面視で四角形などの多角形、円形、楕円形、直線や曲線で囲まれる閉じた図形)として形成されるのがさらに好ましい。
【0045】
この態様では、足幅方向における両側から弾性部250が拘束されるため、弾性部250が有効に圧縮状態に維持される。また、拘束壁330の内側面と弾性部250の側面が非接着なので、荷重がかかった際に、弾性部250がスムーズに変形して拘束壁330内に入るように変形できる。
【0046】
(第3変形例)
図6に示されるように、ソール10は、支持部材350をさらに有していてもよい。支持部材350は、弾性部250を基準として押さえ部材300が配置されている側とは反対側(図6の例では下側)に配置されており、弾性部250を支持する。支持部材350は、押さえ部材300とともに弾性部250を挟持している。支持部材350は、押さえ部材300と同じ材料で形成されてもよい。支持部材350は、前記圧縮状態における弾性部250の弾性率よりも高い弾性率を有している。図示しないが、支持部材350の下方にミッドソール本体210が設けられていなくてもよい。この場合、アウターソール100が支持部材の機能を果たす。
【0047】
(第4変形例)
図7に示されるように、弾性部250は、複数の弾性要素251を有していてもよい。各弾性要素251は、互いに接している。各弾性要素251は、独立してソール10の厚み方向に弾性変形することが可能である。各弾性要素251は、互いに同じ材料で形成されてもよいし、互いに異なる材料で形成されてもよい。
【0048】
この態様では、各弾性要素251の弾性率を調整することにより、弾性部250内における領域ごとの弾性率の調整が可能となる。また、各弾性要素251が独立して変形することができ、荷重が加わった部位が適切に変形することが可能となる。
【0049】
(第5変形例)
図8に示されるように、弾性部250は、足幅方向における外足側(図8における右側)において内足側よりも足長方向に長く延びる形状を有していてもよい。足長方向における弾性部250の長さL2は、例えば、靴1の全長に対して10%~70%程度に設定される。このようにすれば、前足部で接地するタイプの着用者の蹴り出し時におけるミッドソール本体の過剰な変形の抑制と、の両立が可能となる。
【0050】
(第6変形例)
図9に示されるように、弾性部250は、後足領域R3及び中足領域R2に跨がる領域と厚み方向に重なる位置に配置されていてもよい。弾性部250は、足長方向における前方に向かうにしたがって次第に外足側に向かうとともに、足幅方向における長さが小さくなる形状を有している。足長方向における弾性部250の長さL3は、例えば、靴1の全長に対して10%~70%程度に設定される。このようにすれば、踵で接地するタイプの着用者の蹴り出し時におけるミッドソール本体の過剰な変形が抑制される。
【0051】
(第7変形例)
図10に示されるように、弾性部250は、MP関節支持領域215のうち内足側に偏倚した位置に配置されていてもよい。足長方向における弾性部250の長さL4は、例えば、靴1の全長に対して10%~70%程度に設定される。このようにすれば、前足部の内側寄りで接地するタイプの着用者の蹴り出し時におけるミッドソール本体の過剰な変形の抑制と、の両立が可能となる。また、弾性部250の形成範囲が小さいので製造が容易になる。
【0052】
(第8変形例)
図11に示されるように、弾性部250は、MP関節支持領域215のうち足幅方向における中央部に配置されていてもよい。足長方向における弾性部250の長さL5は、例えば、靴1の全長に対して10%~70%程度に設定される。このようにすれば、前足部の中央寄りで接地するタイプの着用者の蹴り出し時におけるミッドソール本体の過剰な変形の抑制と、の両立が可能となる。また、弾性部250の形成範囲が小さいので製造が容易になる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、図12及び図13を参照しながら、本開示の第2実施形態のソール10について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。第2実施形態においても、第1実施形態における各変形例の適用が可能である。
【0054】
本実施形態では、弾性部250は、ミッドソール本体210と同じ材料で、かつ、ミッドソール本体210とつながるようにミッドソール本体210と一体的に形成されている。具体的に、弾性部250は、下側ミッドソール201と同じ材料で、かつ、下側ミッドソール201とつながるように下側ミッドソール201と一体的に形成されている。なお、図12及び図13には、厚み方向における弾性部250と下側ミッドソール201との境界部が二点鎖線で示されている。図12では、その境界部を表す二点鎖線が直線状に延びているが、実際は、この二点鎖線は、僅かに下向きに凸となるように湾曲する形状となる。さらに厳密には、弾性部250の圧縮に伴い、下側ミッドソール201のうちアウターソール100と弾性部250との間に介在する部位も圧縮され、境界線は上記と異なる形状に変形する場合もある。
【0055】
図13には、弾性部250が押さえ部材300により押さえられる前の状態、すなわち、前記無負荷状態における弾性部250が示されており、図12には、前記圧縮状態における弾性部250が示されている。図13に示されるように、前記無負荷状態における弾性部250の支持面250Sは、下側ミッドソール201の上面201Sよりも上方に突出している。前記圧縮状態における弾性部250の支持面250Sは、下側ミッドソール201の上面201Sと面一となっている。
【0056】
下側ミッドソール201と弾性部250との境界には、切込みSが設けられていてもよい。このようにすれば、弾性部250が収容部212内に圧縮状態で収まりやすくなる。
【0057】
この実施形態では、切込みS、切込みSの上端部を通る面、及び、切込みSの下端部を通る面(厚み方向における弾性部250と下側ミッドソール201との境界部)で囲まれる領域が収容部212に相当する。
【0058】
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
【0059】
(第9変形例)
図14に示されるように、下側ミッドソール201と弾性部250との境界には、溝部214が設けられていてもよい。溝部214の幅は、下側ミッドソール201の上面201Sから下方に向かうにしたがって次第に小さくなることが好ましい。なお、溝部214の幅は、前記無負荷状態における弾性部250の外周面と下側ミッドソール201との間の距離を意味する。この態様においても、弾性部250が収容部212内に圧縮状態で収まりやすくなる。
【0060】
なお、図14においても、厚み方向における弾性部250と下側ミッドソール201との境界部が二点鎖線で示されている。
【0061】
(第10変形例)
図15に示されるように、弾性部250は、足幅方向における支持面250Sの両端につながった端面252を有していてもよい。端面252は、前記無負荷状態において支持面250Sから足幅方向における外側に向かうにしたがって次第に下方に向かう形状を有している。
【0062】
なお、図15においても、厚み方向における弾性部250と下側ミッドソール201との境界部が二点鎖線で示されている。
【0063】
(第3実施形態)
次に、図16図18を参照しながら、本開示の第3実施形態のソール10について説明する。第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。第3実施形態においても、第1実施形態における各変形例の適用が可能である。
【0064】
本実施形態では、ソール10は、ミッドソール200と、押さえ部材300と、中底400と、を有している。
【0065】
ミッドソール200は、ミッドソール本体210と、弾性部250と、有している。本実施形態では、ミッドソール本体210は、第1本体部203と、第2本体部204と、を有している。
【0066】
第1本体部203は、足長方向における前端部から後端部に至るように延びる形状を有している。第1本体部203の厚みは、第1実施形態におけるミッドソール本体210の厚みよりも小さい。この第1本体部203に収容部212が設けられている。図16及び図17に示されるように、収容部212は、第1本体部203の上面及び下面に向けて開口している。つまり、収容部212は、第1本体部203をその厚み方向に貫通している。
【0067】
第2本体部204は、足長方向における第1本体部203の後部の下面に接続されている。第2本体部204は、着用者の足の踵部と厚み方向に重なる位置に配置されている。
【0068】
弾性部250は、収容部212に前記圧縮状態で収容されている。弾性部250は、第1本体部203又は第2本体部204と同じ材料で形成されてもよいし、それらとは異なる材料で形成されてもよい。弾性部250は、第1本体部203とは別体で構成されている。
【0069】
図17は、図16におけるXVII-XVII線での断面図を示しており、図18は、図17から中底400が取り外された状態を示している。図18には、前記無負荷状態における弾性部250が示されている。図18に示されるように、前記無負荷状態における弾性部250の支持面250Sは、第1本体部203の上面203Sよりも上方に位置している。
【0070】
押さえ部材300は、第1本体部203の下面に接続されている。本実施形態では、押さえ部材300は、アウターソールを構成している。押さえ部材300は、樹脂からなる。押さえ部材300は、弾性部250を下方から押さえている。図16に示されるように、押さえ部材300の後部は、第1本体部203と第2本体部204との間に配置されている。
【0071】
中底400は、ミッドソール200上に接続されている。中底400は、第1本体部203の上面に接続されており、支持面250Sを被覆している。中底400は、支持面250Sに接着されていることが好ましい。中底400は、弾性部250を基準として押さえ部材300が配置された側とは反対側(上側)から弾性部250を支持する支持部402を有している。
【0072】
以下、第3実施形態における変形例について説明する。
【0073】
(第11変形例)
図19に示されるように、第1本体部203は、弾性部250と押さえ部材300との間に介在する下介在部217を有していてもよい。
【0074】
(第12変形例)
図20に示されるように、第1本体部203は、弾性部250と中底400との間に介在する上介在部218を有していてもよい。
【0075】
(第13変形例)
図21に示されるように、第1本体部203は、弾性部250と中底400との間に介在する上介在部218を有しており、弾性部250は、第1本体部203と同じ材料で、かつ、上介在部218とつながるように第1本体部203と一体的に形成されていてもよい。なお、図21には、収容部212の外形のうち弾性部250と上介在部218との境界部が二点鎖線で示されている。収容部212の定義は、第2実施形態と同じである。
【0076】
図22は、図21から押さえ部材300が取り外された状態を示している。図22には、前記無負荷状態における弾性部250が示されている。図22に示されるように、前記無負荷状態における弾性部250の下面250S2は、第1本体部203の下面203S2よりも下方に位置している。第1本体部203と弾性部250との境界には、切込みSが設けられていてもよい。
【0077】
(第14変形例)
図23に示されるように、ミッドソール本体210は、単一の部材で構成されてもよい。この例では、ミッドソール本体210の厚みは、第3実施形態におけるミッドソール本体210の厚みよりも小さい。
【0078】
押さえ部材300は、ミッドソール本体210の下面に接続されている。この例では、足長方向における押さえ部材300の全域が接地部を構成している。
【0079】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0080】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0081】
この開示の一局面に従ったプレートは、ミッドソール本体と、弾性体からなり、前記ミッドソール本体内に配置された弾性部と、前記弾性部を押さえる押さえ部材と、を備え、前記ミッドソール本体は、前記弾性部を収容する収容部を有し、前記弾性部は、当該弾性部の体積が、当該弾性部に対して外力が作用していない無負荷状態における体積よりも小さくなるように圧縮された圧縮状態で前記収容部内に収容されており、前記押さえ部材は、前記圧縮状態における前記弾性部の弾性率よりも高い弾性率を有し、かつ、前記弾性部が前記圧縮状態に維持されるように前記弾性部を押さえており、前記圧縮状態における前記弾性部の弾性率は、前記ミッドソール本体の弾性率よりも大きい。
【0082】
このソールでは、弾性部が圧縮状態でミッドソール本体の収容部に収容されており、かつ、圧縮状態における弾性部の弾性率は、ミッドソール本体の弾性率よりも大きいため、蹴り出し時において、弾性部は、ミッドソール本体の過剰な変形を抑制する。また、接地時には、ミッドソール本体が主として衝撃緩衝性を発揮する。
【0083】
また、前記ミッドソール本体は、上面を有し、前記収容部は、前記ミッドソール本体の前記上面に向けて開口する形状を有していてもよい。この場合において、前記弾性部は、前記収容部から露出しており、着用者の足を間接的に支持する支持面を有していてもよく、前記押さえ部材は、前記ミッドソール本体の前記上面に固定された状態で前記支持面を押さえていてもよい。
【0084】
この態様では、押さえ部材が弾性部の支持面を押さえるため、弾性部が圧縮状態で収容部内に収容される。
【0085】
また、前記弾性部は、前記ミッドソール本体と同じ材料で、かつ、前記ミッドソール本体とつながるように前記ミッドソール本体と一体的に形成されていてもよい。この場合において、前記弾性部は、着用者の足を間接的に支持する支持面を有し、前記無負荷状態における前記支持面は、前記ミッドソール本体の前記上面よりも上方に突出している。
【0086】
この態様では、押さえ部材がミッドソール本体の上面に固定されることにより、弾性部が圧縮状態で収容部に収容される。
【0087】
この場合において、前記弾性部は、足幅方向における前記支持面の両端につながった端面を有していてもよい。前記端面は、前記無負荷状態において前記支持面から足幅方向における外側に向かうにしたがって次第に下方に向かう形状を有することが好ましい。
【0088】
この態様では、弾性部が収容部内に圧縮状態で収まりやすくなる。
【0089】
また、前記ミッドソール本体と前記弾性部との境界には、切込みが設けられていることが好ましい。
【0090】
この態様においても、弾性部が収容部内に圧縮状態で収まりやすくなる。
【0091】
また、前記押さえ部材は、平面視において前記支持面の外形よりも大きな外形を有し、前記支持面の全域を被覆するように配置されていることが好ましい。
【0092】
この態様では、弾性部が均一に圧縮される。
【0093】
また、前記押さえ部材は、前記支持面を下方に押し付ける押さえ面を有していてもよい。
【0094】
この場合において、前記押さえ部材は、前記押さえ面から前記弾性部に向かって突出する突出部をさらに有していてもよい。前記突出部は、足長方向に延びる形状を有することが好ましい。
【0095】
この態様では、突出部によって弾性部が足幅方向における外側に膨張することが抑制されるため、弾性部が有効に圧縮状態に維持される。
【0096】
また、前記押さえ部材は、足幅方向における前記押さえ面の両端から下方に向かって延びる一対の拘束壁をさらに有していてもよい。前記一対の拘束壁は、足幅方向における両側から前記弾性部を拘束していることが好ましい。
【0097】
この態様では、足幅方向における両側から弾性部が拘束されるため、弾性部が有効に圧縮状態に維持される。
【0098】
また、前記弾性部は、それぞれが独立して前記ソールの厚み方向に弾性変形することが可能な複数の弾性要素を含んでいてもよい。
【0099】
この態様では、各弾性要素の弾性率を調整することにより、弾性部内における領域ごとの弾性率の調整が可能となる。また、各弾性要素が独立して変形することができ、荷重が加わった部位が適切に変形することが可能となる。
【0100】
また、前記ミッドソール本体は、靴の着用者の足のMP関節を支持するMP関節支持領域を有していてもよい。この場合において、前記弾性部は、前記MP関節支持領域に設けられていることが好ましい。
【0101】
また、前記押さえ部材は、繊維強化プラスチックからなることが好ましい。
【0102】
また、この開示の一局面に従った靴は、前記ソールと、前記ソールに直接的または間接的に接続されており、前記ソールの上方に位置するアッパーと、を備える。
【符号の説明】
【0103】
1 靴、10 ソール、20 アッパー、100 アウターソール、102 支持部、200 ミッドソール、201 下側ミッドソール、201S 上面、202 上側ミッドソール、210 ミッドソール本体、212 収容部、214 溝部、215 MP関節支持領域、250 弾性部、250S 支持面、251 弾性要素、252 端面、300 押さえ部材、310 ベース部、310S 押さえ面、312 突出部、330 拘束壁、400 中底、402 支持部、R1 前足領域、R2 中足領域、R3 後足領域、S 切込み、SC シューズセンター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23