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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031144
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】フラッシュラスト防止剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230301BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20230301BHJP
   C23F 11/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/08
C23F11/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136667
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】末廣 康子
(72)【発明者】
【氏名】白井 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】山下 聖二
【テーマコード(参考)】
4J038
4K062
【Fターム(参考)】
4J038CG011
4J038HA166
4J038JA35
4J038JB04
4J038JC18
4J038MA10
4J038NA03
4J038NA27
4J038PC02
4K062AA01
4K062BB06
4K062BB12
4K062CA04
4K062DA05
(57)【要約】
【課題】亜硝酸塩を含有せず、優れたフラッシュラスト防止効果を発揮するフラッシュラスト防止剤を提供することを目的とする。
【解決手段】脂肪族ジカルボン酸(A1)及びベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸(A)と、
N,N-ジヒドロキシアルキルアミン(B1)及び(ポリ)アルキレンポリアミン(B2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン(B)との塩(AB)を含有してなることを特徴とするフラッシュラスト防止剤を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジカルボン酸(A1)及びベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸(A)と、
N,N-ジヒドロキシアルキルアミン(B1)及び(ポリ)アルキレンポリアミン(B2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン(B)との塩(AB)を含有してなることを特徴とするフラッシュラスト防止剤。
【請求項2】
脂肪族ジカルボン酸(A1)が直鎖状ジカルボン酸である請求項1に記載のフラッシュラスト防止剤。
【請求項3】
脂肪族ジカルボン酸(A1)の炭素数が4~14である請求項1又は2に記載のフラッシュラスト防止剤。
【請求項4】
ベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(A2)が2-ベンゾチアゾリルチオ基を有するカルボン酸である請求項1~3のいずずれかに記載のフラッシュラスト防止剤。
【請求項5】
カルボキシル基の当量数とアミノ基の当量数との当量比(A/B)が1.4~0.7である請求項1~4のいずれかに記載のフラッシュラスト防止剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のフラッシュラスト防止剤、水及びバインダーを含有することを特徴とする水性塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラッシュラスト防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
「鉄面に直接塗装しても、フラッシュラストと言われる、塗面上に広がる点錆や鉄面錆の発生を防止できる防食性水系塗料組成物を提供する」ことを目的として、「水系塗料100重量部と防錆顔料0.5~5重量部と亜硝酸ソーダ、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸カルシウム、亜硫酸ソーダ、安息香酸ナトリウム、安息香酸アンモニウムから選択される1種以上の腐食抑制剤0.05~1.0重量部を含有することを特徴とする防食性水系塗料組成物」が提案されており、腐食抑制剤として、「亜硝酸ソーダ(NaNO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)、亜硝酸カルシウム〔Ca(NO〕、亜硫酸ソーダ(NaSO)、安息香酸ナトリウム(CCOONa)、安息香酸アンモニウム(CCOONH)」が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-73776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で好ましいとされる「亜硝酸ソーダ(NaNO)、亜硝酸アンモニウム(NHNO)、亜硝酸カルシウム〔Ca(NO〕」等の亜硝酸塩は塗料中に含まれる第2級アミンと反応し、発ガン性物質のニトロソアミンを生成するという課題がある。また「亜硫酸ソーダ(NaSO)、安息香酸ナトリウム(CCOONa)、安息香酸アンモニウム(CCOONH)」はフラッシュラスト防止効果が弱いという課題がある。
本発明は亜硝酸塩を含有せず、優れたフラッシュラスト防止効果を発揮するフラッシュラスト防止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフラッシュラスト防止剤の特徴は、脂肪族ジカルボン酸(A1)及びベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸(A)と、
N,N-ジヒドロキシアルキルアミン(B1)及び(ポリ)アルキレンポリアミン(B2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン(B)との塩(AB)を含有してなる点を要旨とする。
【0006】
本発明の水性塗料の特徴は、上記のフラッシュラスト防止剤、水及びバインダーを含有する点を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフラッシュラスト防止剤は優れたフラッシュラスト防止効果を発揮する。また、本発明のフラッシュラスト防止剤には亜硝酸塩を含まないために第2級アミンと反応することがなく、発ガン性物質の発生の恐れもない。
【0008】
本発明の水性塗料は、上記のフラッシュラスト防止剤を含むので、水性塗料を金属面に直接塗装してもフラッシュラストを生じず、美観に優れた塗膜が得られる。また、発がん性物質の発生の心配もない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の欄において、実施例1のフラッシュラスト防止剤を用いて調製した塗膜表面上のフラッシュラストを評価した際に撮影した写真である。
図2】実施例の欄において、比較例1のフラッシュラスト防止剤を用いて調製した塗膜表面上のフラッシュラストを評価した際に撮影した写真である。
図3】実施例の欄において、フラッシュラスト防止剤を用いないで調製した(ブランク)塗膜表面上のフラッシュラストを評価した際に撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
脂肪族ジカルボン酸(A1)としては、直鎖状ジカルボン酸、分岐状ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸のいずれも使用できるが、直鎖状ジカルボン酸が好ましい。
【0011】
脂肪族ジカルボン酸(A1)の炭素数は、4~14が好ましく、さらに好ましくは6~12、特に好ましくは8~10である。この範囲であると、さらに優れたフラッシュラスト防止効果を発揮する。
【0012】
脂肪族ジカルボン酸(A1)は、市場から容易に入手でき、コハク酸(日本触媒株式会社)、グルタル酸(東京化成工業株式会社)アジピン酸(住友化学株式会社)、ピメリン酸(東京化成工業株式会社)、スベリン酸(東京化成工業株式会社)、アゼライン酸(東京化成工業株式会社)セバシン酸(豊国精油株式会社)、ドデカン二酸(宇部興産株式会社)、テトラデカン二酸(ハイケム株式会社)、マレイン酸(三菱ケミカル株式会社)、フマル酸(扶桑化学工業株式会社)及びイタコン酸(東京化成工業株式会社)等が挙げられる。
【0013】
ベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(A2)としてはベンゾチアゾール環を有するカルボン酸であれば制限なく使用できるが、2-ベンゾチアゾリルチオ基を有するカルボン酸が好ましい。このような好ましいカルボン酸としては、3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、(2-ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、[6-(エトキシカルボニル)-2-ベンゾチアゾリルチオ]酢酸、2-(アセチルアミノ)-3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、4-メチル-2-ベンゾチアゾリルチオ酢酸、6-アミノ-2-ベンゾチアゾリルチオ酢酸、5-カルボキシ-2-ベンゾチアゾリルチオ酢酸、3-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、3-(6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2-ベンゾチアゾリルチオ蟻酸、3-(4,6-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、5-(2-ベンゾチアゾリルチオ)吉草酸、3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)吉草酸、5-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリルチオ)吉草酸、4-(2-ベンゾチアゾリルチオ)酪酸、10-(2-ベンゾチアゾリルチオ)ウンデカン酸、10-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリルチオ)ウンデカン酸、2-(2-ベンゾチアゾリルチオ)安息香酸、2-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリルチオ)安息香酸及び2-(5-カルボキシ-2-ベンゾチアゾリルチオ)安息香酸等が挙げられる。
【0014】
カルボン酸(A)の一部を脂肪族ジカルボン酸(A1)及びベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(A2)以外の他のカルボン酸に置き換えてもよい。
【0015】
他のカルボン酸としては、炭素数3~12の脂肪酸(プロパン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、デカン酸及びドデカン酸等)及び炭素数7~11の芳香族カルボン酸(安息香酸及びナフタレンカルボン酸等)等等が挙げられる。
【0016】
カルボン酸(A)の一部を他のカルボン酸に置き換える場合、他のカルボン酸の含有量(重量%)は、カルボン酸(A)及び他のカルボン酸の重量に対して、10~60が好ましく、さらに好ましくは12~55、特に好ましくは15~52である。この範囲であると、さらに優れたフラッシュラスト防止効果を発揮する。
【0017】
N,N-ジヒドロキシアルキルアミン(B1)としては、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン及びN-ブチルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0018】
(ポリ)アルキレンポリアミン(B2)としては、エチレンジアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びトリエチレンジアミン等が挙げられる。
なお、「(ポリ)アルキレンポリアミン」は、「アルキレンポリアミン」又は「ポリアルキレンポリアミン」を意味する。
【0019】
カルボキシル基の当量数とアミノ基の当量数との当量比(A/B)は、1.4~0.7が好ましく、さらに好ましくは1.3~0.8、特に好ましくは1.1~0.9である。すなわち、カルボン酸(A)とアミン(B)との塩には完全中和塩とカルボン酸(A)又はアミン(B)の未反応官能基(カルボキシル基又はアミノ基)を含んでいてもよい。この範囲であると、さらに優れたフラッシュラスト防止効果を発揮する。
なお、上記のカルボキシル基の当量数には、他のカルボン酸を置き換えた場合の他のカルボン酸のカルボキシル基の当量数も含まれる。
【0020】
本発明のフラッシュラスト防止剤には、必要により公知の添加剤(消泡剤、粘度調整剤、湿潤剤、防錆剤等:発がん性物質及びこれを誘発する物質を除く。)等を含有できる。これらの含有量は、本発明の効果を阻害しなければ制限はないが、カルボン酸(A)とアミン(B)との塩(AB)の重量に基づいて、1~80重量%程度である。
【0021】
本発明のフラッシュラスト防止剤は、カルボン酸(A)とアミン(B)との塩(AB)が含まれれば製造方法に限定はないが、製造効率の観点から、水性溶媒中でカルボン酸(A)とアミン(B)との中和反応を行うことが好ましい。中和反応は加熱冷却してもよく、製造効率の観点から、25~65℃で中和されることが好ましい。必要により公知の添加剤を含む場合、中和反応の後に添加混合することが好ましい。
【0022】
水性溶媒としては、水及び水と容易に溶解する有機溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びテトラハイドロフラン等)等が挙げられる。
【0023】
本発明のフラッシュラスト防止剤は、水性溶媒の溶液又は分散液として用いることができる他、水性溶媒を含まない固状(粉状、粒状等)でも使用できる。
【0024】
本発明のフラッシュラスト防止剤は優れたフラッシュラスト防止効果を発揮するので、水性塗料用のフラッシュラスト防止剤として適している。
【0025】
本発明の水性塗料は上記のフラッシュラスト防止剤、水及びバインダーを含有することが好ましい。
バインダーとしては、水性塗料として使用されるものが使用でき、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素原子含有シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0026】
本発明のフラッシュラスト防止剤を水性塗料に適用する場合、この含有量(重量%)は、塗料の用途等により適宜決定できるが、バインダーの重量に基づいて、0.1~20程度が好ましく、さらに好ましくは0.2~10程度、特に好ましくは0.3~5程度である。
【実施例0027】
以下、特記しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
<実施例1>
水219部、脂肪族ジカルボン酸(a11:コハク酸、日本触媒株式会社)118部(1モル部)及びN,N-ジヒドロキシアルキルアミン(b11:ジエタノールアミン、三井化学株式会社)210部(2モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a11b11;当量比(A/B)1、水分40%)を得た。
【0028】
<実施例2>
水275部、脂肪族ジカルボン酸(a12:セバシン酸、豊国精油株式会社)202部(1モル部)及びN,N-ジヒドロキシアルキルアミン(b11:ジエタノールアミン、三井化学株式会社)210部(2モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a12b11;当量比(A/B)1、水分40%)を得た。
【0029】
<実施例3>
水332部、脂肪族ジカルボン酸(a13:テトラデカン二酸、東京化成工業株式会社)232部(0.9モル部)及びN,N-ジヒドロキシアルキルアミン(b12:ジイソプロパノールアミン、東京化成工業株式会社)266部(2モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a13b12;当量比(A/B)0.9、水分40%)を得た。
【0030】
<実施例4>
水326部、脂肪族ジカルボン酸(a12:セバシン酸、豊国精油株式会社)222部(1.1モル部)及びN,N-ジヒドロキシアルキルアミン(b12:ジイソプロパノールアミン、東京化成工業株式会社)266部(2モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a12b12;当量比(A/B)1.1、水分40%)を得た。
【0031】
<実施例5>
水181部、脂肪族ジカルボン酸(a12:セバシン酸、豊国精油株式会社)202部(1モル部)及び(ポリ)アルキレンポリアミン(b21:ジエチレントリアミン、東ソー株式会社)69部(0.67モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a12b21;当量比(A/B)1、水分40%)を得た。
【0032】
<実施例6>
水220部、ベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(a21:(2-ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、三新化学工業株式会社)225部(1モル部)及びN,N-ジヒドロキシアルキルアミン(b11:ジエタノールアミン、三井化学株式会社)105部(1モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a21b11;当量比(A/B)1、水分40%)を得た。
【0033】
<実施例7>
水230部、ベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(a21:(2-ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、三新化学工業株式会社)225部(1モル部)及びN,N-ジヒドロキシアルキルアミン(b13:N-メチルジエタノールアミン、東京化成工業株式会社)119部(1モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a21b13;当量比(A/B)1、水分40%)を得た。
【0034】
<実施例8>
水230部、ベンゾチアゾール環を有するカルボン酸(a22:(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、三新化学工業株式会社)239部(1モル部)及びN,N-ジヒドロキシアルキルアミン(b11:ジエタノールアミン、三井化学株式会社)105部(1モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a22b11;当量比(A/B)1、水分40%)を得た。
【0035】
<実施例9>
水361部、脂肪族ジカルボン酸(a12:セバシン酸、豊国精油株式会社)202部(1モル部)、他のカルボン酸(安息香酸、Emerald Kalama Chemical社製)211部(1.7モル部)及び(ポリ)アルキレンポリアミン(b21:ジエチレントリアミン、東ソー株式会社)128部(1.2モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a12’b21;当量比(A/B)1、水分40%)を得た。
【0036】
<実施例10>
水211部、脂肪族ジカルボン酸(a12:セバシン酸、豊国精油株式会社)202部(1モル部)、他のカルボン酸(安息香酸、Emerald Kalama Chemical社製)36部(0.3モル部)及び(ポリ)アルキレンポリアミン(b21:ジエチレントリアミン、東ソー株式会社)79部(0.8モル部)を攪拌しながら60℃まで昇温し、この温度にてさらに2時間攪拌を続けてから、攪拌しながら約25℃まで冷却して、本発明のフラッシュラスト防止剤(a12’b21;当量比(A/B)1、水分40%)を得た。
【0037】
<比較例>
特許文献1(特開平8-73776号公報)の実施例6の記載に基づいて、安息香酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社)をフラッシュラスト防止剤(H)とした。
【0038】
以下のように、評価用水性塗料を調製してフラッシュラスト防止性について評価した。
【0039】
(1)エマルションベース塗料の調製
下表の原料組成にて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精器株式会社、モデルED)を用いて、グラインディング及びレットダウンしてエマルションベース塗料を得た。
【0040】
【表1】
【0041】
※1 増粘剤、サンノプコ株式会社
※2 分散剤、サンノプコ株式会社
※3 炭酸カルシウム、竹原化学工業株式会社、
※4 酸化チタン、石原産業株式会社、「タイペーク」は同社の登録商標である。
※5 アクリル系バインダー、樹脂濃度50%、ビーエーエスエフ社、「ACRONAL」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標である。※6 2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、KHネオケム株式会社、「キョーワノール」はKHネオケム株式会社の登録商標である。
※7 増粘剤、サンノプコ株式会社
【0042】
(2)水性塗料の調製
エマルションベース塗料100部に、実施例で調製したフラッシュラスト防止剤(水分40%)のいずれかを0.84部又は比較例で調製したフラッシュラスト防止剤(H:水分0%)を0.5部加えて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて15~25℃、2000rpm、5分間攪拌混合して評価用水性塗料(1~10、H)を得た。また、フラッシュラスト防止剤を添加しないこと以外、上記と同様にして、評価用水性塗料(ブランク)を得た。
【0043】
(3)フラッシュラスト防止性の評価
アプリケータを用いて評価用エマルション塗料を構造用鋼板SS400(TP技研株式会社、15cm×7cm×1.6cm、JIS G3101:2015)上にウェット膜厚100μmになるように塗装し、恒温恒湿槽(温度50℃、相対湿度90%)に1時間放置し、乾燥後、塗膜表面上のフラッシュラストを目視で評価し、その結果を下表に示した。
【0044】
【表2】

○:フラッシュラスト無し
×:フラッシュラストが部分的に有り
××:フラッシュラストが全体的に有り
【0045】
本発明のフラッシュラスト防止剤を用いた水性塗料は、比較用のフラッシュラスト防止剤を用いたものに比べて、フラッシュラスト防止性に優れていた。
図1
図2
図3