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特開2023-31146ステッピングモーター駆動装置及びステッピングモーター駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031146
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ステッピングモーター駆動装置及びステッピングモーター駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/22 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
H02P8/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136670
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】國森 修
(72)【発明者】
【氏名】金 度完
【テーマコード(参考)】
5H580
【Fターム(参考)】
5H580AA05
5H580BB10
5H580CA02
5H580CA12
5H580CB04
5H580FA14
5H580FB01
5H580FB05
5H580HH02
(57)【要約】
【課題】従来と比較してより滑らかにステッピングモーターを回転駆動させることができるようにする。
【解決手段】PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際のステップ切替タイミングを基準クロックに基づいて設定する制御部が、あらかじめ測定されたPM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、前記ステップ切替タイミングを補正し、補正後の当該ステップ切替タイミングに基づいて前記モータードライバを介して前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PM型ステッピングモーターと、
前記PM型ステッピングモーターを駆動するモータードライバと、
前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際のステップ切替タイミングを基準クロックに基づいて設定し、当該ステップ切替タイミングに基づいて前記モータードライバを介して前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、前記ステップ切替タイミングを補正し、補正後の当該ステップ切替タイミングに基づいて前記モータードライバを介して前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動させる
ことを特徴とするステッピングモーター駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、
あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターの前記電気角と前記機械角とのズレに基づいて設定された前記ステップ切替タイミングの補正値を用いて、前記ステップ切替タイミングを補正する
ことを特徴とする請求項1に記載のステッピングモーター駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記補正値を用いて、測定時に前記PM型ステッピングモーターの前記機械角が前記電気角よりも進んでいたステップの時間を短くするとともに、測定時に前記PM型ステッピングモーターの前記機械角が前記電気角よりも遅れていたステップの時間を長くするように、前記ステップ切替タイミングを補正する
ことを特徴とする請求項2に記載のステッピングモーター駆動装置。
【請求項4】
前記PM型ステッピングモーターの前記電気角と前記機械角とのズレを測定し、当該ズレに基づいて前記補正値を設定する測定装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のステッピングモーター駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際に前記モータードライバから前記PM型ステッピングモーターに流されるステップごとのA相電流及びB相電流を制御する機能を有していて、あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターのステップごとの前記電気角と前記機械角とのズレに基づいて、前記ステップ切替タイミングを補正するとともに、測定時に前記機械角が前記電気角よりも進んでいたステップの後半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさを、当該ステップの前半部分の前記A相電流と前記B相電流の比率を保ったまま、当該前半部分の前記A相電流及び前記B相電流よりも小さくする
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のステッピングモーター駆動装置。
【請求項6】
媒体を搬送する為の搬送部をさらに備え、
前記制御部は、
前記PM型ステッピングモーターを用いて前記搬送部を駆動させる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のステッピングモーター駆動装置。
【請求項7】
PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際のステップ切替タイミングを基準クロックに基づいて設定する制御部が、あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、前記ステップ切替タイミングを補正し、補正後の当該ステップ切替タイミングに基づいてモータードライバを介して前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動させる
ことを特徴とするステッピングモーター駆動方法。
【請求項8】
PM型ステッピングモーターと、
前記PM型ステッピングモーターをモータードライバと、
前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際に前記モータードライバから前記PM型ステッピングモーターに流されるステップごとのA相電流及びB相電流を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、測定時に前記機械角が前記電気角よりも進んでいたステップの後半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさを、当該ステップの前半部分の前記A相電流の大きさと前記B相電流の大きさとの比率を保ったまま、当該前半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさよりも小さくする
ことを特徴とするステッピングモーター駆動装置。
【請求項9】
前記制御部は、
あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターの前記電気角と前記機械角とのズレに基づいて設定されたステップごとの前半部分の前記A相電流及び前記B相電流の値と後半部分の前記A相電流及び前記B相電流の値とを用いて、測定時に前記機械角が前記電気角よりも進んでいたステップの後半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさを、当該ステップの前半部分の前記A相電流の大きさと前記B相電流の大きさとの比率を保ったまま、当該前半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさよりも小さくする
ことを特徴とする請求項8に記載のステッピングモーター駆動装置。
【請求項10】
前記PM型ステッピングモーターの前記電気角と前記機械角とのズレを測定し、当該ズレに基づいてステップごとの前記A相電流及び前記B相電流の値を設定する測定装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載のステッピングモーター駆動装置。
【請求項11】
媒体を搬送する搬送部をさらに備え、
前記PM型ステッピングモーターを用いて前記搬送部を駆動させる
ことを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載のステッピングモーター駆動装置。
【請求項12】
PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際にモータードライバから前記PM型ステッピングモーターに流されるステップごとのA相電流及びB相電流を制御する制御部が、あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、測定時に前記機械角が前記電気角よりも進んでいたステップの後半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさを、当該ステップの前半部分の前記A相電流の大きさと前記B相電流の大きさとの比率を保ったまま、当該前半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさよりも小さくする
ことを特徴とするステッピングモーター駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモーター駆動装置及びステッピングモーター駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタなどの画像形成装置では、媒体搬送やプリントヘッドを駆動する駆動手段としてステッピングモーターが用いられている。ステッピングモーターは、一定の角度ずつ回転するモーターであり、パルス信号によって容易に回転角度と速度を制御できるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-160900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ステッピングモーターは、製造誤差などによって電気角と機械角とにズレが生じる場合がある。尚、電気角とは、ステッピングモーターのコイルに流す交流電流の一周期分を360度として表す角度であり、当該360度をステッピングモーターのステップ数で分割した角度が1ステップ当たりの電気角となる。機械角は、実際にステッピングモーターが回転する角度である。理論上の機械角は電気角から算出することができ、例えば、2極の永久磁石ローターを有するPM(Permanent
Magnet)型ステッピングモーターの場合、理論上の機械角は電気角と一致する。
【0005】
ステッピングモーターでは、電気角と機械角とにズレが生じると(つまり理論上の機械角と実際の機械角とにズレが生じると)、滑らかに回転駆動できなくなるという問題を有していた。
【0006】
本発明は以上の点を考慮したものであり、従来と比較してより滑らかにステッピングモーターを回転駆動させることができるステッピングモーター駆動装置及びステッピングモーター駆動方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のステッピングモーター駆動装置は、PM型ステッピングモーターと、前記PM型ステッピングモーターを駆動するモータードライバと、前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際のステップ切替タイミングを基準クロックに基づいて設定し、当該ステップ切替タイミングに基づいて前記モータードライバを介して前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動させる制御部とを備え、前記制御部は、あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、前記ステップ切替タイミングを補正し、補正後の当該ステップ切替タイミングに基づいて前記モータードライバを介して前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動させるようにした。
【0008】
また本発明のステッピングモーター駆動方法は、PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際のステップ切替タイミングを基準クロックに基づいて設定する制御部が、あらかじめ測定されたPM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、前記ステップ切替タイミングを補正し、補正後の当該ステップ切替タイミングに基づいてモータードライバを介して前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動させるようにした。
【0009】
このように、あらかじめ測定したPM型ステッピングモーターの電気角と機械角とのズレに基づいてステップ切替タイミングを補正することにより、PM型ステッピングモーターのステップごとの機械角を電気角に近づけることができる。
【0010】
また本発明のステッピングモーター駆動装置は、PM型ステッピングモーターと、前記PM型ステッピングモーターを駆動するモータードライバと、前記PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際に前記モータードライバからPM型ステッピングモーターに流されるステップごとのA相電流及びB相電流を制御する制御部とを備え、前記制御部は、あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、測定時に前記機械角が前記電気角よりも進んでいたステップの後半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさを、当該ステップの前半部分の前記A相電流の大きさと前記B相電流の大きさとの比率を保ったまま、当該前半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさよりも小さくするようにした。
【0011】
さらに本発明のステッピングモーター駆動方法は、PM型ステッピングモーターをマイクロステップ駆動する際にモータードライバから前記PM型ステッピングモーターに流されるステップごとのA相電流及びB相電流を制御する制御部が、あらかじめ測定された前記PM型ステッピングモーターのステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、測定時に前記機械角が前記電気角よりも進んでいたステップの後半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさを、当該ステップの前半部分の前記A相電流の大きさと前記B相電流の大きさとの比率を保ったまま、当該前半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさよりも小さくするようにした。
【0012】
このように、あらかじめ測定したPM型ステッピングモーターの電気角と機械角とのズレに基づいて、測定時に前記機械角が前記電気角よりも進んでいたステップの後半部分の前記A相電流及び前記B相電流の大きさを補正することにより、PM型ステッピングモーターのステップごとの機械角を電気角に近づけることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来と比較してより滑らかにステッピングモーターを回転駆動させることができるステッピングモーター駆動装置及びステッピングモーター駆動方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態による画像形成装置の印刷機構の構成を示す図である。
図2】第1の実施の形態による画像形成装置のシステム構成を示す図である。
図3】第1の実施の形態による制御部のハードウェア構成を示す図である。
図4】第1の実施の形態によるPM型ステッピングモーターの構成を示す図である。
図5】第1の実施の形態によるステップ切替タイミングの補正値を示す図である。
図6】第1の実施の形態によるPM型ステッピングモーターに流す電流の変化を示す図である。
図7】第1の実施の形態によるPM型ステッピングモーターに流す電流の電流ベクトル図である。
図8】第1の実施の形態によるW1-2励磁の励磁シーケンスを示す図である。
図9】第1の実施の形態による測定装置の構成を示す図である。
図10】第1の実施の形態によるステップ切替タイミングを補正した場合のステップ間隔を示す図である。
図11】従来のステッピングモーター制御方法と第1の実施の形態によるステッピングモーター制御方法とで電気角と機械角のズレを比較した結果を示す図である。
図12】第2の実施の形態による電流制御テーブルの構成を示す図である。
図13】第2の実施の形態によるA相電流のステップごとの変化を示す図である。
図14】第2の実施の形態による測定装置の構成を示す図である。
図15】従来のステッピングモーター制御方法と第2の実施の形態によるステッピングモーター制御方法とで電気角と機械角のズレを比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下、これを実施の形態と呼ぶ)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.画像形成装置の構成]
図1に、第1の実施の形態による画像形成装置1の印刷機構を示す。この画像形成装置1は、電子写真方式のプリンタであり、装置筐体2の下部に設けられた給紙カセット3と装置筐体2の上面に設けられたスタッカ4とを繋ぐ搬送路R上に、レジストローラ5、搬送ローラ6、画像形成部7、定着器8、排出ローラ9、10が設けられている。
【0017】
給紙カセット3は、印刷媒体としての用紙Pを収容し、ホッピングローラ11により、収容している用紙Pを搬送路Rに繰り出す。ホッピングローラ11により搬送路R上に繰り出された用紙Pは、レジストローラ5により斜行を矯正され、その後、所定のタイミングで搬送ローラ6により画像形成部7へと送り出される。
【0018】
画像形成部7は、搬送路Rを挟んで上側に配置された複数の画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)と、搬送路Rを挟んで複数の画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)の下側に位置する搬送ベルト13とを有している。
【0019】
複数の画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)は、搬送路Rに沿って並べて配置されていて、それぞれブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナーを用いて画像を形成する。尚、複数の画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)は、トナーの色が異なる点を除いて同一構成となっている。
【0020】
具体的には、複数の画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)は、それぞれLEDヘッド14とトナーカートリッジ15と感光ドラム16とを有している。複数の画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)は、それぞれLEDヘッド14により感光ドラム16の表面を露光することで感光ドラム16の表面に静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーカートリッジ15から供給されるトナーを付着させて現像することで感光ドラム16の表面にトナー像を形成する。
【0021】
搬送ベルト13は、環状のベルトであり、ベルト駆動ローラ17によって駆動する。またこの搬送ベルト13の内側には、複数の画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)の感光ドラム16のそれぞれと対向する位置に、転写ローラ18(18K、18Y、18M、18C)が設けられている。
【0022】
画像形成部7では、搬送ベルト13により用紙Pを搬送しながら、複数の画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)のそれぞれの感光ドラム16上に形成したトナー像を、転写ローラ18(18K、18Y、18M、18C)により用紙Pに転写する。
【0023】
定着器8は、画像形成部7でトナー像が転写された用紙Pを、用紙Pに定着させる。具体的には、定着器8は、搬送路Rを挟んで対向配置された定着ベルト19とバックアップローラ20とを有している。定着器8では、図示しないヒータにより加熱された定着ベルト19とバックアップローラ20との間を用紙Pが通過する際に、用紙Pを加熱及び加圧することで、用紙Pにトナー像を定着させる。
【0024】
定着器8によりトナー像が定着した用紙Pは、排出ローラ9、10により搬送されて、スタッカ4に排出される。
【0025】
また搬送路R上には、画像形成部7の用紙搬送方向上流側近傍に書出センサ21が設けられ、定着器8の用紙搬送方向下流側にEXITセンサ22が設けられている。書出センサ21及びEXITセンサ22は、搬送路R上の用紙Pを検出するセンサである。画像形成装置1では、書出センサ21の検出信号に基づいてLEDヘッド14の露光タイミング及び転写ローラ18への高電圧印加タイミングを決定し、EXITセンサ22の検出信号に基づいて用紙Pに対する画像形成プロセスが終了したか否かを判断するようになっている。画像形成装置1の印刷機構は、以上のようになっている。
【0026】
つづけて、図2に示すブロック図を用いて、画像形成装置1のシステム構成について説明する。
【0027】
この図2に示すように、画像形成装置1は、画像形成装置1を制御するCPU30と、CPU30からの指令により印刷機構の制御を行う制御部31とを有している。
【0028】
CPU30には、制御部31と、プログラムを格納するROM32と、データを格納するRAM33と、書出センサ21及びEXITセンサ22とが接続されている。CPU30は、ROM32に格納されているプログラムをRAM33に読み出して実行することにより、画像形成装置1を制御する。尚、ROM32としては、不揮発性メモリを用いてもよい。
【0029】
制御部31は、給紙モーター34、ベルトモーター35、IDモーター36、定着モーター37、LEDヘッド14、及び高電圧ユニット38と接続されている。また制御部31は、インタフェース39を介してホストPCと接続されている。
【0030】
給紙モーター34は、用紙Pを給紙及び搬送する為の搬送部としてのローラ(レジストローラ5、搬送ローラ6、ホッピングローラ11)を駆動する為のモーターである。ベルトモーター35は、搬送部としてのベルト駆動ローラ17を駆動する為のモーターである。IDモーター36は、画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)を駆動する為のモーターである。定着モーター37は、定着器8及び排出ローラ9、10を駆動する為のモーターである。LEDヘッド14は、画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)のそれぞれに設けられた露光装置である。高電圧ユニット38は、画像形成ユニット12(12K、12Y、12M、12C)での帯電及び現像、転写ローラ18(18K、18Y、18M、18C)での転写を行う為の高電圧を生成する回路である。
【0031】
尚、給紙モーター34、ベルトモーター35、IDモーター36、定着モーター37のうち、給紙モーター34とベルトモーター35についてはステッピングモーター(DCモーターでも可)が用いられ、IDモーター36と定着モーター37についてはDCモーターが用いられている。また図2では省略しているが、各モーター(給紙モーター34、ベルトモーター35、IDモーター36及び定着モーター37)は、モータードライバを介して制御部31と接続されている。画像形成装置1のシステム構成は、以上のようになっている。
【0032】
ここで、画像形成装置1による印刷動作について簡単に説明する。画像形成装置1は、インタフェース39を介してホストPCから印刷データを受信すると、この印刷データをCPU30がRAM33に格納する。CPU30は、RAM33に格納した印刷データに基づいて画像データを生成する。
【0033】
制御部31は、CPU30により生成された印刷データと、CPU30を介して送られてくる書出センサ21とEXITセンサ22の検出信号とに基づいて、給紙モーター34、ベルトモーター35、IDモーター36、定着モーター37、LEDヘッド14、及び高電圧ユニット38の動作を制御し、用紙Pへの印刷を行う。画像形成装置1による印刷動作は、以上のようになっている。
【0034】
[1-2.制御部の構成]
次に、図3に示すブロック図を用いて、制御部31のハードウェア構成について詳しく説明する。尚、ここでは説明を簡単にする為、制御部31のハードウェア構成のうち、給紙モーター34及びベルトモーター35として用いるステッピングモーターの制御に係る部分についてのみ説明する。
【0035】
ここで、制御部31のハードウェア構成について説明する前に、給紙モーター34及びベルトモーター35として用いるステッピングモーターの構成とステッピングモーターを駆動する励磁方式について簡単に説明する。
【0036】
本実施の形態では、給紙モーター34及びベルトモーター35に用いるステッピングモーターとして、図4に示すPM(Permanent
Magnet)型ステッピングモーター50を用いている。具体的には、このPM型ステッピングモーター50は、90度間隔で配置された4個の固定子51と、固定子51の内側に回転自在に設けられた2極の永久磁石ローター52とで構成され、永久磁石ローター52に図示しないモーター軸が連結されている。このPM型ステッピングモーター50は、対向する2個の固定子51に同一コイルが巻回され、一方のコイルにA相電流、他方のコイルにB相電流を流すことにより発生する磁界により永久磁石ローター52が反発して回転するトルクを発生する2相ステッピングモーターである。
【0037】
このPM型ステッピングモーター50を駆動する励磁方式としては、A相とB相を順番に励磁する1相励磁、A相とB相を同時に励磁する2相励磁、1相励磁と2相励磁を交互に繰り返す1-2相励磁などがあり、さらに高速回転時の振動や騒音を防止する為の励磁方式として、マイクロステップと呼ばれるW1-2励磁、2W1-2励磁などがある。1相励磁、2相励磁、1-2相励磁は、A相とB相の励磁をON/OFF制御する励磁方式であり、W1-2励磁、2W1-2励磁は、A相電流とB相電流の比率(割合)を変更する励磁方式である。
【0038】
1相励磁と2相励磁は4ステップで永久磁石ローター52を電気角360度分回転する励磁方式であり、基本ステップ角度は90度、基本ステップ数は4となる(つまり1ステップごとに90度ずつ回転する)。1-2相励磁は、1相励磁及び2相励磁の2倍の8ステップで電気角360度分回転する励磁方式であり、基本ステップ角度は45度、基本ステップ数は8となる。さらにW1-2励磁は、1-2相励磁の2倍の16ステップで電気角360度分回転する励磁方式であり、基本ステップ角度は22.5度、基本ステップ数は16となる。さらに2W1-2励磁は、W1-2励磁の2倍の32ステップで電気角360度分回転する励磁方式であり、基本ステップ角度は11.25度、基本ステップ数は32となる。
【0039】
本実施の形態では、PM型ステッピングモーター50をマイクロステップで駆動するようになっていて、さらにいうと、W1-2励磁で駆動するようになっている。よって、基本ステップ角度は22.5度、基本ステップ数は16となる。ステッピングモーターの構成と励磁方式についての説明は以上である。
【0040】
上述したステッピングモーターの構成と励磁方式を踏まえて、制御部31のハードウェア構成について説明する。図3に示すように、制御部31は、タイマー部60と、ステップ切替部61と、相切替信号出力部62A及び電流制御信号出力部62Bと、電流制御部63と、補正値格納部64と、電流制御テーブル格納部65を有している。さらに制御部31は、モータードライバ66を介してPM型ステッピングモーター50と接続されている。
【0041】
タイマー部60は、PM型ステッピングモーター50の回転速度に対応する基準クロックをパルス信号として出力する。ステップ切替部61は、タイマー部60から出力される一定周期の基準クロックに基づいて、ステップ切替タイミングを設定し、当該ステップ切替タイミングを示すステップ切替信号を生成して出力する。
【0042】
具体的には、ステップ切替部61は、基準クロックのパルスの立ち上がり(もしくは立ち下がり)を、基準となるステップ切替タイミング(以下、基準ステップ切替タイミングと呼ぶ)とする。つまり、ステップ(1)からステップ(16)までの基準ステップ切替タイミングはパルス周期の一定間隔となっている。
【0043】
ここで、補正値格納部64には、図5に示すように、ステップ(1)からステップ(16)までのステップごとのステップ切替タイミングの補正値が格納されている(図5では、ステップ(9)以降は省略)。詳しくは後述するが、この補正値は、PM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレに基づいて設定されたものであり、0、0.2、-0.4などの数値で表される。この補正値が0であれば、パルスの立ち上がり位置であるステップ切替タイミングを補正しないこと(つまりステップ切替タイミングを基準ステップ切替タイミングとすること)を意味する。また補正値が0.2などの正の数値であれば、ステップ切替タイミングを、基準ステップ切替タイミングから補正値分(例えば0.2パルス分)だけ次の基準ステップ切替タイミング側に進めたタイミングに補正することを意味する。また補正値が-0.4などの負の数値であれば、ステップ切替タイミングを、基準ステップ切替タイミングから補正値分(例えば0.4パルス分)だけ前の基準ステップ切替タイミング側に戻したタイミングに補正することを意味する。
【0044】
ステップ切替部61は、補正値格納部64に格納されている補正値に従って、ステップ切替タイミングを補正する。すなわち、ステップ切替部61は、例えば、ステップ(2)のステップ切替タイミングの補正値(つまりステップ(1)からステップ(2)に切り替える為のステップ切替タイミングの補正値)が0.4であるとすると、ステップ(2)のステップ切替タイミングを、基準ステップ切替タイミングから0.4パルス分だけ進めたタイミングに補正する。
【0045】
このように、ステップ(2)のステップ切替タイミングを、基準ステップ切替タイミングから0.4パルス分だけ進めたタイミングに補正するということは、ステップ(1)のステップ切替タイミングからステップ(2)の切替タイミングまでの時間(つまりステップ(1)の時間)を長くすることを意味する。このように、ステップ(1)のステップ切替タイミングからステップ(2)のステップ切替タイミングまでの時間が長くなると、ステップ(1)でのパルス速度が減少し、これにともなってステップ(1)でのPM型ステッピングモーター50の角速度も減少する。
【0046】
これに対して、ステップ切替部61は、例えば、ステップ(4)のステップ切替タイミングの補正値(つまりステップ(3)からステップ(4)に切り替える為のステップ切替タイミングの補正値)が-0.4である場合、ステップ(4)のステップ切替タイミングを、基準ステップ切替タイミングから0.4パルス分だけ戻したタイミングに補正する。
【0047】
このように、ステップ(4)のステップ切替タイミングを、基準ステップ切替タイミングから0.4パルス分だけ戻したタイミングに補正するということは、ステップ(3)のステップ切替タイミングからステップ(4)の切替タイミングまでの時間(つまりステップ(3)の時間)を短くすることを意味する。このように、ステップ(3)のステップ切替タイミングからステップ(4)のステップ切替タイミングまでの時間が短くなると、ステップ(3)でのパルス速度が増加し、これにともなってステップ(3)でのPM型ステッピングモーター50の角速度も増加する。
【0048】
このようにして、ステップ切替部61は、基準クロックが示すステップごとのステップ切替タイミングを、補正値格納部64に格納されているステップごとの補正値で補正することによりステップ切替信号を生成して出力するようになっている。つまり、このステップ切替信号は、基準クロックのステップ切替タイミング(例えばパルスの立ち上がり)を、補正値により補正したパルス信号となっている。尚、詳しくは後述するが、制御部31では、このようにしてステップ切替タイミングを補正することで、PM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレを抑制するようになっている。
【0049】
相切替信号出力部62Aは、ステップ切替部61から出力されるステップ切替信号に基づいてA相切替信号及びB相切替信号を生成してモータードライバ66に出力する。電流制御信号出力部62Bは、ステップ切替部61から出力されるステップ切替信号と、電流制御テーブル格納部65に格納されている図示しない電流制御テーブルに基づいて、A相電流の値とB相電流の値(具体的には基準電流に対する倍率)を設定する。尚、電流制御テーブルには、ステップごとのA相電流の値(倍率)とB相電流の値(倍率)とが指定されている。電流制御部63は、電流制御信号出力部62Bにより設定されたA相電流とB相電流の値(倍率)に応じたA相電流制御信号とB相電流制御信号とをモータードライバ66に出力する。
【0050】
モータードライバ66は、制御部31から出力されるA相切替信号及びB相切替信号に応じてPM型ステッピングモーター50のA相とB相の向きを切り替える。またモータードライバ66は、制御部31から出力されるA相電流制御信号とB相電流制御信号に応じた値のA相電流とB相電流をPM型ステッピングモーター50のコイルに流す。制御部31のハードウェア構成(PM型ステッピングモーター50の制御に係る部分)は、以上のようになっている。
【0051】
尚、モータードライバ66は、例えば、サンケン電気(登録商標)製のモデル名:A4948SLPを用いている。
【0052】
[1-3.PM型ステッピングモーターの電気角と機械角のズレの測定方法]
次に、PM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレの測定方法について説明する。
【0053】
まずPM型ステッピングモーター50の電気角について説明する。図6に、PM型ステッピングモーター50に流すA相電流とB相電流のステップごとの変化を示す。図中実線で示すA相電流の波形と図中点線で示すB相電流の波形は、横軸をステップ、縦軸をA相電流とB相電流の大きさ及び向きとするグラフ上に示されている。このグラフでは、A相電流とB相電流の大きさを、基準電流に対する倍率で表していて、例えば、A相電流の大きさが1.00である場合、A相電流の値が基準電流の1.00倍に設定されていることを示している。またこのグラフでは、A相電流とB相電流の向きを正負で表している。
【0054】
このグラフに示すように、A相電流は正弦波の交流電流として制御され、B相電流はA相電流から90度進んだ余弦波の交流電流として制御される。A相電流は、実線波形上の四角マークに示すようにステップごとに変化するように制御され、同様に、B相電流も点線波形上の三角マークに示すようにステップごとに変化するように制御される。このようなA相電流とB相電流の制御は、上述した電流制御部63により行われる。
【0055】
図6に示すA相電流及びB相電流の波形の1周期分を360度として表す角度が電気角であり、ステップ数は16であることから、1ステップあたりの電気角は、360/16の22.5度となる。
【0056】
ここで、図7に、A相電流とB相電流の電流ベクトル図を示す。この電流ベクトル図は、横軸をA相電流の大きさ(倍率)及び向き(正負)、縦軸をB相電流の大きさ(倍率)及び向き(大きさ)とする座標系における、ステップごとのA相電流とB相電流の値に対応する座標に三角マークをプロットした図である。三角マークの横の数字は、ステップを表している。
【0057】
このように、A相電流とB相電流を電流ベクトル図で表すと、原点から各ステップの三角マークまでの電流ベクトルの大きさは変わらず、三角マークの位置が電流ベクトルを半径とする円周上をステップごとに1ステップ分の電気角(θ=22.5度)だけ移動するようになっている。
【0058】
ここで、図8に、図7に示す電流ベクトル図に基づくW1-2励磁の励磁シーケンスを示す。この図8に示すように、W1-2励磁では、ステップ切替信号S1のステップ切替タイミング(例えばパルスの立ち上がり)ごとに、PM型ステッピングモーター50に流すA相電流(PHA)とB相電流(PHB)の比率を変化させることでPM型ステッピングモーター50を1ステップ分の電気角(22.5度)ずつ図中反時計回り方向に回転駆動させ、16ステップで電気角360度分回転駆動させるようになっている。
【0059】
つづけて機械角について説明する。機械角は、PM型ステッピングモーター50を電気角の分だけ回転駆動させたときに、PM型ステッピングモーター50の永久磁石ローター52が回転する角度である。
【0060】
理論上の機械角は、電気角から算出することができ、ここでは、説明を簡単にする為、理論上の機械角が、電気角と一致しているとする。つまり、PM型ステッピングモーター50の1ステップ当たりの理論上の機械角を、電気角と同じ22.5度とする。
【0061】
一方で、PM型ステッピングモーター50は、製造誤差などによって理論上の機械角(つまり電気角)と、実際の機械角とにズレが生じる場合がある。このように、電気角と実際の機械角とにズレが生じると、PM型ステッピングモーター50を滑らかに回転駆動させることができなくなってしまう。
【0062】
そこで、本実施の形態では、上述したように、ステップ切替タイミングを補正することで、PM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレを抑制するようになっている。
【0063】
ステップ切替タイミングの補正には、あらかじめPM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレをステップごとに測定しておく必要がある。具体的な測定方法としては、例えば、図9に示す測定装置100を用いる方法がある。
【0064】
測定装置100は、PM型ステッピングモーター50のモーター軸に接続されたロータリーエンコーダ101と、PM型ステッピングモーター50を回転駆動させながらロータリーエンコーダ101の出力を読み取る制御部102とを有している。
【0065】
ロータリーエンコーダ101は、PM型ステッピングモーター50の正逆回転を検知可能なインクリメンタル型のロータリーエンコーダであり、PM型ステッピングモーター50のモーター軸に直接、もしくは破損防止用のカップリングを介して接続されている。尚、PM型ステッピングモーター50のモーター軸に、ロータリーエンコーダ101とは別に、画像形成装置1に組み込まれた際の負荷と同程度の負荷を接続するようにしてもよい。
【0066】
このロータリーエンコーダ101としては、1ステップあたりの機械角を10倍以上の分解能で測定可能なものが望ましく、例えば、OMRON(登録商標)製のモデル名:E6C2-Cなどを用いることができる。
【0067】
制御部102は、PM型ステッピングモーター50をマイクロステップのW1-2励磁で回転駆動させるとともに、ロータリーエンコーダ101の出力から、電気角を1ステップ変化させたときの機械角を、W1-2励磁のステップ(1)~ステップ(16)までのステップごとに求める。
【0068】
さらに制御部102は、ステップ(1)~ステップ(16)までのステップごとに、電気角と機械角のズレを算出する。そして制御部102は、ステップごとの電気角と機械角のズレに基づいて、ステップ切替タイミングの補正値を設定する。
【0069】
具体的には、制御部102は、電気角と機械角が一致するステップにおいては、次のステップのステップ切替タイミングの補正値を0に設定する。また機械角の方が電気角よりも進んでいるステップ(例えば電気角が22.5度で機械角が24.0度の場合など)においては、機械角が電気角に近づくように(つまり当該ステップの時間を長くして角速度が減少するように)、次のステップのステップ切替タイミングの補正値を+の値に設定する。尚、補正値は、例えば機械角が電気角の20%分進んでいるのであれば+0.2(つまり0.2パルス)、40%分進んでいるのであれば+0.4のように設定する。
【0070】
また制御部102は、機械角の方が電気角よりも遅れているステップ(例えば電気角が22.5度で機械角が20.0度の場合など)においては、機械角が電気角に近づくように(つまり当該ステップの時間を短くして角速度が増加するように)、次のステップのステップ切替タイミングの補正値を-の値に設定する。尚、補正値は、例えば機械角が電気角の20%分遅れているのであれば-0.2、40%分遅れているのであれば-0.4のように設定する。尚、このような補正は一例であり、機械角の方が電気角よりも進んでいる場合には、補正値を+の値、遅れている場合には-の値とし、電気角と機械角のズレが大きいほど大きな値とすればよい。
【0071】
このようにして測定装置100の制御部102により設定されたステップ(1)~ステップ(16)までのステップごとの補正値が、PM型ステッピングモーター50を組み込んだ画像形成装置1の補正値格納部64にフィードバック(格納)される。尚、補正値を補正値格納部64に格納する方法としては、例えば、画像形成装置1の制御部31をコントロールする図示しないファームウェアを介して格納する方法などがある。
【0072】
[1-4.ステップ切替タイミングの補正]
次に、ステップ切替タイミングの補正について詳しく説明する。図5を用いて上述したように、補正値格納部64には、ステップ(1)~ステップ(16)までのステップごとのステップ切替タイミングの補正値が格納されている。
【0073】
ステップ切替部61は、補正値格納部64に格納されている補正値を用いて、ステップ切替タイミングを補正する。例えば、図5に示す例では、ステップ(2)の補正値が0.4(つまり+0.4)となっているが、この場合、ステップ切替部61は、ステップ(2)のステップ切替タイミングを、ステップ(2)の基準ステップ切替タイミングから0.4パルス分進めたタイミングに補正する。またステップ(4)の補正値が-0.4となっているが、この場合、ステップ切替部61は、ステップ(4)のステップ切替タイミングを、ステップ(4)の基準ステップ切替タイミングから0.4パルス分戻したタイミングに補正する。
【0074】
ステップ切替部61は、このようにして補正したステップ切替タイミングを示すステップ切替信号を、相切替信号出力部62A及び電流制御信号出力部62Bに送る。この結果、モータードライバ66は、補正後のステップ切替タイミングでステップを切り替えながらPM型ステッピングモーター50を回転駆動することになる。
【0075】
ここで、ステップ切替タイミングを補正した場合のステップごとの長さを図10に示す。この図10は、図7に示す電流ベクトル図の三角マークの間隔をステップごとの基準の長さとして、ステップ切替タイミングが補正されることで、ステップの長さがどのように変化したのかを示す図であり、正確には電流ベクトル図ではない。尚、この図10では、説明を簡単にする為、ステップ(10)以降については省略している。
【0076】
ここで、例えばステップ(1)の長さは、ステップ(2)のステップ切替タイミングが基準ステップ切替タイミングから0.4パルス分進んだタイミングに補正されている為、基準となる長さよりも0.4パルス分長くなっている。このようにステップの長さが基準となる長さよりも長くなるとパルス周波数が低くなることによりPM型ステッピングモーター50の角速度が減少する。つまり、あらかじめ電気角と機械角とのズレを測定した際に機械角が電気角よりも進んでいたステップでは、ステップの長さが長くなるように次のステップのステップ切替タイミングを補正してパルス周波数を低くし、PM型ステッピングモーター50の角速度を減少させることで、当該ステップでの機械角を小さくして電気角に近づけるようになっている。
【0077】
また一方で、例えばステップ(3)の長さは、ステップ(4)のステップ切替タイミングが基準ステップ切替タイミングから0.4パルス分戻したタイミングに補正されている為、基準となる長さよりも0.4パルス分短くなっている。このようにステップの長さが基準となる長さよりも狭くなるとパルス周波数が高くなることによりPM型ステッピングモーター50の角速度が増加する。つまり、あらかじめ電気角と機械角とのズレを測定した際に機械角が電気角よりも遅れていたステップでは、ステップの長さが短くなるように次のステップのステップ切替タイミングを補正してパルス周波数を高くし、PM型ステッピングモーター50の角速度を増加させることで、当該ステップでの機械角を大きくして電気角に近づけるようになっている。
【0078】
このように、本実施の形態では、ステップごとのステップ切替タイミングを、ステップごとの電気角と機械角のズレに基づく補正値で補正することにより、PM型ステッピングモーター50のステップごとの角速度を調整してステップごとの機械角を電気角に近づけることができる。
【0079】
[1-5.まとめと効果]
ここまで説明したように、第1の実施の形態では、ステッピングモーター駆動装置としての画像形成装置1に、PM型ステッピングモーター50と、PM型ステッピングモーター50を駆動するモータードライバ66と、PM型ステッピングモーター50をマイクロステップ駆動する際のステップ切替タイミングを基準クロックに基づいて設定し、当該ステップ切替タイミングに基づいて、モータードライバ66を介してPM型ステッピングモーター50をマイクロステップ駆動させる制御部31とを設けた。そして、制御部31が、あらかじめ測定されたPM型ステッピングモーター50のステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいてステップ切替タイミングを補正するようにした。
【0080】
つまり、制御部31は、あらかじめ測定されたPM型ステッピングモーター50の電気角と機械角とのズレに基づいて設定されたステップ切替タイミングの補正値を用いて、ステップ切替タイミングを補正するようにした。
【0081】
これにより、PM型ステッピングモーター50のステップごとの角速度を調整して、機械角を電気角に近づけることができる。かくして、第1の実施の形態の画像形成装置1では、従来と比較してより滑らかにPM型ステッピングモーター50を回転駆動させることができる。
【0082】
ここで、図11のグラフに、ステップ切替タイミングを補正せずにPM型ステッピングモーター50を回転駆動させる従来のステッピングモーター制御方法と、ステップ切替タイミングを補正してPM型ステッピングモーター50を回転駆動させる第1の実施の形態のステッピングモーター制御方法との比較結果を示す。
【0083】
図11のグラフは、縦軸を電気角と機械角のズレ、横軸をPM型ステッピングモーター50のステップとするグラフであり、縦軸のズレについては、電気角に対して機械角がどの程度ずれているのか(つまり誤差)を%で表している。このグラフに示すように、従来のステッピングモーター制御方法では、PM型ステッピングモーター50を回転させた際に電気角と機械角のズレが60%を超える場合がある。これに対して、第1の実施の形態のステッピングモーター制御方法では、常に電気角と機械角のズレを40%以下に抑えている。
【0084】
このグラフ上に示す電気角と機械角のズレが50%以下のときには、PM型ステッピングモーター50に振動や騒音などの問題は発生しなかった。つまり、第1の実施の形態の画像形成装置1では、電気角と機械角のズレを40%以下に抑えることができ、これにより、PM型ステッピングモーター50に振動や騒音などの問題が発生することを防ぐことができる。
【0085】
また第1の実施の形態では、PM型ステッピングモーター50の駆動を制御する制御部31でステップ切替タイミングを補正するだけなので、別途、電気角と機械角のズレを抑制する為のマイコンなどのハードウェアを追加する必要がなく、既存のシステムへの組み込みが容易であるという利点も有している。
【0086】
[2.第2の実施の形態]
次に第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、PM型ステッピングモーター50の制御方法が第1の実施の形態とは異なる実施の形態である。よって、ここでは主に、PM型ステッピングモーター50の制御に係る部分についてのみ説明する。
【0087】
[2-1.PM型ステッピングモーターの制御]
上述した第1の実施の形態では、PM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレに基づいてステップ切替タイミングを補正したが、第2の実施の形態では、PM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレに基づいてA相電流とB相電流を補正するようになっている。つまり、第2の実施の形態では、ステップ間隔は一定間隔のまま、A相電流とB相電流を補正することで、電気角と機械角のズレを抑制するようになっている。
【0088】
具体的には、第2の実施の形態も第1の実施の形態と同様、画像形成装置1の制御部31が、モータードライバ66を介してPM型ステッピングモーター50をマイクロステップのW1-2励磁で回転駆動させるようになっている。
【0089】
ここで、第1の実施の形態では、補正値格納部64にステップ切替タイミングの補正値を格納するようにしたが、第2の実施の形態では、電流制御テーブル格納部65に格納されている電流制御テーブルを補正するようになっている。
【0090】
ここで、図12に、補正前の電流制御テーブルTbBと、補正後の電流制御テーブルTbAの例を示す。補正前の電流制御テーブルTbBには、ステップ(1)からステップ(16)までのステップごとのA相電流(PHA)とB相電流(PHB)の値(具体的には基準電流に対する倍率)が指定されている。
【0091】
これに対して、補正後の電流制御テーブルTbAは、ステップ(2)と、ステップ(6)と、ステップ(10)と、ステップ(14)で、A相電流とB相電流の値が補正されている。具体的には、補正前の電流制御テーブルTbBでは、ステップ(2)のA相電流が0.71、B相電流が-0.71に設定いるのに対し、補正後の電流制御テーブルTbAでは、ステップ(2)が前半部分(ステップ(2))と後半部分(ステップ(2.5)に分割され、前半部分のA相電流とB相電流の値(倍率)は電流制御テーブルTbBと同じ0.71、-0.71に設定いるのに対し、後半部分のA相電流とB相電流の値(倍率)は0.35、-0.35に補正されている。
【0092】
このように、図12に示す電流制御テーブルTbAは、ステップ(2)と、ステップ(6)と、ステップ(10)と、ステップ(14)とで、それぞれステップの後半部分のA相電流とB相電流の値の絶対値(つまり大きさ)を比率(例えばステップ(2)のA相電流の絶対値とB相電流の絶対値の比率は1:1)は変えずに前半部分よりも小さくなるように補正されている。尚、A相電流とB相電流の値の絶対値の最小値は0である。
【0093】
また、本実施の形態では、ステップを前半部分(前側半分)と後半部分(後側半分)に分け、後半部分のA相電流とB相電流の値(倍率)を補正するようにしたが、これは一例であり、少なくとも後半部分の後端側の一部分のA相電流とB相電流の値(倍率)を補正するようになっていればよい。つまり、例えばステップ(2)の頭からステップ(2.8)までのA相電流とB相電流の値(倍率)は補正せず、ステップ(2.8)からステップ(2)の後端までのA相電流とB相電流の値(倍率)を補正するなどしてもよい。
【0094】
電流制御信号出力部62Bは、ステップ切替部61から出力されるステップ切替信号と、電流制御テーブル格納部65に格納されている電流制御テーブルTbAに基づいて、A相電流の値とB相電流の値(倍率)を設定する。従って、電流制御信号出力部62Bは、例えばステップ(2)の前半部分では、電流制御テーブルTbAに指定されているように、A相電流の値(倍率)とB相電流の値(倍率)を0.71、-0.71に設定し、ステップ(2)の後半部分では、A相電流の値(倍率)とB相電流の値(倍率)を0.35、-0.35に設定する。尚、電流制御信号出力部62Bは、ステップの切替時だけでなくステップの途中でもA相電流の値(倍率)とB相電流の値(倍率)を変更できるようになっている。
【0095】
ここで、図13に、電流制御信号出力部62Bによって設定されるA相電流の値(倍率)のステップごとの変化を示す。尚、B相電流については、A相電流の場合と同様の為、説明は省略する。この図13は、補正後の電流制御テーブルTbAに基づいてA相電流の値を設定した場合の変化を示す実線波形と、補正前の電流制御テーブルTbBに基づいてA相電流の値を設定した場合の変化を示す点線波形とを、グラフ上に描いたものである。
【0096】
図13に示すグラフは、横軸をステップ、縦軸を電流制御テーブルTbBに示されているA相電流の値との差分とする。よって、電流制御テーブルTbBに基づいてA相電流の値を設定した場合の点線波形は差分が0となっている。このグラフからわかるように、電流制御テーブルTbAに基づいて設定されたA相電流の値は、ステップ(2)、(6)、(10)、(14)の後半部分で、電流制御テーブルTbBに基づいて設定されたA相電流の値よりも小さくなっている。
【0097】
このように、ステップの後半部分でA相電流とB相電流の大きさ(絶対値)を小さくすると、PM型ステッピングモーター50のコイルに流れる電流が小さくなって磁界の強さが弱まることにより角速度が減少する。別の言い方をすると、ステップの後半部分でA相電流とB相電流の大きさ(絶対値)を小さくすると、ステップの後半部分でPM型ステッピングモーター50を減速させて、当該ステップでの角速度を減少させることになる。
【0098】
つまり、本実施の形態では、あらかじめ電気角と機械角とのズレを測定した際に機械角が電気角よりも進んでいたステップでは、後半部分でA相電流とB相電流の大きさを小さくしてPM型ステッピングモーター50の角速度を減少させることで、1ステップあたりの機械角を小さくして電気角に近づけるようになっている。尚、本実施の形態では、機械角の方が電気角よりも進んでいたステップのみを、補正の対象としており、機械角の方が電気角よりも遅れているステップについては、補正の対象としていない。
【0099】
[2-2.電気角と機械角のズレの測定方法]
ここで、PM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレの測定方法についても説明しておく。PM型ステッピングモーター50の電気角と機械角のズレについては、第1の実施の形態と同様、図14に示す測定装置100で測定できる。
【0100】
ここで、第1の実施の形態と異なるのは、制御部102が、ステップ(1)~ステップ(16)までのステップごとに、電気角と機械角のズレを算出し、算出したズレに基づいて、ステップの後半部分のA相電流とB相電流の大きさを補正する点である。
【0101】
具体的には、制御部102は、機械角の方が電気角よりも進んでいるステップにおいて、当該ステップの後半部分のA相電流とB相電流の値を、当該ステップの前半部分のA相電流とB相電流の値と符号は同じで絶対値を減少させた値に補正する。尚、例えば機械角が電気角の25%分進んでいるステップであれば、当該ステップの後半部分のA相電流とB相電流の値の絶対値を、前半部分の絶対値と比較して50%減少させる。ここで、A相電流とB相電流の最小値はともに0であり、そもそも前半部分のA相電流もしくはB相電流の値が0の場合には、後半部分のA相電流もしくはB相電流の値も0となる。このような補正は一例であり、電気角と機械角のズレが大きいほど、A相電流とB相電流の絶対値(つまり大きさ)の減少量を大きくすればよい。
【0102】
このようにして測定装置100の制御部102により補正された、ステップの後半部分のA相電流とB相電流の値が、PM型ステッピングモーター50を組み込んだ画像形成装置1の電流制御テーブル格納部65に格納されている電流制御テーブルTbB(図14では省略)にフィードバック(格納)される。これにより、図12に示すように、電流制御テーブルTbBが電流制御テーブルTbAに更新される。尚、A相電流とB相電流の値を電流制御テーブル格納部65に格納する方法としては、例えば、画像形成装置1の制御部31をコントロールする図示しないファームウェアを介して格納する方法などがある。
【0103】
[2-3.まとめと効果]
ここまで説明したように、第2の実施の形態では、ステッピングモーター駆動装置としての画像形成装置1に、PM型ステッピングモーター50と、PM型ステッピングモーター50を駆動するモータードライバ66と、モータードライバ66からPM型ステッピングモーター50に流されるA相電流及びB相電流を制御する制御部31とを設けた。そして、制御部31が、あらかじめ測定されたPM型ステッピングモーター50のステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、測定時に機械角が電気角よりも進んでいたステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を、当該ステップの前半部分のA相電流とB相電流との比率を保ったまま、前半部分のA相電流及びB相電流の大きさよりも小さくした。
【0104】
つまり、制御部31は、あらかじめ測定されたPM型ステッピングモーター50の電気角と機械角とのズレに基づいて設定された電流制御テーブルTbAに指定されているA相電流及びB相電流の値を用いることで、測定時に機械角が電気角よりも進んでいたステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を、当該ステップの前半部分のA相電流とB相電流との比率を保ったまま、前半部分のA相電流及びB相電流の大きさよりも小さくした。
【0105】
こうすることで、第2の実施の形態では、PM型ステッピングモーター50の機械角が電気角よりも進んでいたステップの角速度を減少させて機械角を電気角に近づけることができる。かくして、第2の実施の形態の画像形成装置1では、従来と比較してより滑らかにPM型ステッピングモーター50を回転駆動させることができる。
【0106】
ここで、図15のグラフに、ステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を補正せずにPM型ステッピングモーター50を回転駆動させる従来のステッピングモーター制御方法と、ステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を補正してPM型ステッピングモーター50を回転駆動させる第2の実施の形態のステッピングモーター制御方法との比較結果を示す。
【0107】
図15のグラフは、縦軸を電気角と機械角のズレ、横軸をPM型ステッピングモーター50のステップとするグラフであり、縦軸のズレについては、0(目盛りが付いた直線の位置)より上側が機械角が電気角よりも進む方向のズレを示し、0より下側が機械角が電気角よりも遅れる方向のズレを示している。このグラフに示すように、第2の実施の形態のステッピングモーター制御方法によれば、従来のステッピングモーター制御方法で発生していた、PM型ステッピングモーター50の機械角が電気角よりも進む方向へのズレを抑制できている。これにより、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様、PM型ステッピングモーター50に振動や騒音などの問題が発生することを防ぐことができる。
【0108】
また第2の実施の形態も、第1の実施の形態と同様、PM型ステッピングモーター50の駆動を制御する制御部31でステップの後半部分のA相電流及びB相電流を調整するだけなので、別途、電気角と機械角のズレを抑制する為のマイコンなどのハードウェアを追加する必要がなく、既存のシステムへの組み込みが容易であるという利点も有している。
【0109】
また第2の実施の形態では、機械角が電気角よりも進んでいるステップの後半部分のA相電流及びB相電流の絶対値を下げることで、A相電流及びB相電流が無駄に消耗されることを防いで省電力化することもできる。
【0110】
[3.他の実施の形態]
[3-1.他の実施の形態1]
尚、上述した第1の実施の形態では、制御部31が、あらかじめ測定されたPM型ステッピングモーター50のステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいてステップ切替タイミングを補正するようにした。一方で、第2の実施の形態では、あらかじめ測定されたステップごとの電気角と機械角とのズレに基づいて、測定時に機械角が電気角よりも進んでいたステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさを、前半部分のA相電流及びB相電流の大きさよりも小さくした。
【0111】
ここで、第1の実施の形態と第2の実施の形態とを組み合わせ、電気角と機械角とのズレに基づいてステップ切替タイミングを補正するとともに、測定時に機械角が電気角よりも進んでいたステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさを補正する(当該ステップの前半部分の大きさよりも小さくする)ようにしてもよい。
【0112】
この場合、測定装置100の制御部102は、例えば、機械角が電気角よりも進んでいたステップについて、ステップ切替タイミングとA相電流及びB相電流の両方を補正することを考慮して、それぞれの補正量を決定するようにすればよい。
【0113】
[3-2.他の実施の形態2]
また上述した第1及び第2の実施の形態では、画像形成装置1の制御部31が、PM型ステッピングモーター50をマイクロステップのW1-2励磁で駆動する際に、ステップ切替タイミングとA相電流及びB相電流とを補正するようにした。これに限らず、PM型ステッピングモーター50をマイクロステップの他の励磁方式で駆動する際にも、上述した第1及び第2の実施の形態と同様にして、ステップ切替タイミングとA相電流及びB相電流とを補正するようにしてもよい。
【0114】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態では、PM型ステッピングモーター50を用いたが、PM型のものであれば、PM型ステッピングモーター50とは一部構成が異なるステッピングモーターを用いてもよい。
【0115】
[3-3.他の実施の形態3]
さらに上述した第1及び第2の実施の形態では、測定装置100によって、PM型ステッピングモーター50をマイクロステップ駆動する際の電気角と機械角のズレを測定するようにしたが、この測定装置100を、画像形成装置1に組み込むようにしてもよい。このようにすれば、画像形成装置1単体で、電気角と機械角のズレの測定から、ステップ切替タイミングとA相電流及びB相電流の補正まで行うことができる。尚、この場合、制御部31に、制御部102の機能を持たせてもよい。
【0116】
また上述した第2の実施の形態では、測定装置100の制御部102が、測定した電気角と機械角のズレに基づいて、機械角の方が電気角よりも進んでいるステップにおいて、当該ステップの後半部分のA相電流とB相電流の大きさを補正して、電流制御テーブル格納部65に格納されている電流制御テーブルTbBにフィードバック(格納)するようにした。これに限らず、制御部102が、機械角の方が電気角よりも進んでいるステップにおいて、当該ステップの後半部分のA相電流とB相電流の大きさをどの程度下げるのかを示す補正値を決定して、この補正値を、補正値格納部64にフィードバック(格納)するようにしてもよい。
【0117】
この場合、電流制御信号出力部62Bが、電流制御テーブル格納部65に格納されている電流制御テーブルTbBと、補正値格納部64に格納されている補正値とに基づいて、A相電流の値とB相電流の値(倍率)を設定するようにすればよい。
【0118】
[3-4.他の実施の形態4]
さらに上述した第2の実施の形態では、測定時に機械角が電気角よりも進んでいたステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を、機械角と電気角とのズレに基づいて、前半部分のA相電流及びB相電流の大きさよりも小さくした。つまり、第2の実施の形態では、機械角と電気角とのズレが大きいほど、ステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさをより小さくした。これに限らず、測定時に機械角が電気角よりも進んでいたステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を、前半部分のA相電流及びB相電流の大きさよりも所定量だけ小さくし(例えば半分にし)、機械角と電気角とのズレに基づいて、ステップの後半部分における、A相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を小さくする時間を調整するようにしてもよい。つまり、機械角と電気角とのズレが大きいほど、ステップの後半部分における、A相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を小さくする時間を長くするようにしてもよい。
【0119】
尚、ステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)については、PM型ステッピングモーター50の回転位置を保持する電流が必要ない場合には、0まで下げてもよい。
【0120】
[3-5.他の実施の形態5]
さらに上述した第2の実施の形態では、測定時に機械角が電気角よりも進んでいたステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を、機械角と電気角とのズレに基づいて、前半部分のA相電流及びB相電流の大きさよりも小さくすることで、機械角と電気角のズレを抑制するようにした。これに限らず、測定時に機械角が電気角よりも遅れていたステップの後半部分のA相電流及びB相電流の大きさ(絶対値)を、機械角と電気角とのズレに基づいて、前半部分のA相電流及びB相電流の大きさよりも大きくすることで、機械角と電気角のズレを抑制するようにしてもよい。
【0121】
[3-6.他の実施の形態6]
さらに上述した第1及び第2の実施の形態では、PM型ステッピングモーター50を駆動するステッピングモーター駆動装置としての画像形成装置1に本発明を適用したが、これに限らず、PM型ステッピングモーター50を駆動する様々なステッピングモーター駆動装置に適用できる。
【0122】
また上述した第1及び第2の実施の形態では、説明を簡単にする為、PM型ステッピングモーター50の理論上の機械角が、電気角と一致しているとした。これに限らず、PM型ステッピングモーター50の理論上の機械角が、電気角と一致していなくてもよい。この場合、測定装置100の制御部102が、電気角を1ステップ変化させたときの機械角と、電気角から算出した理論上の機械角とのズレを算出し、ステップごとの理論上の機械角と測定した機械角のズレに基づいて、ステップ切替タイミングの補正値や、A相電流及びB相電流の値を設定すればよい。
【0123】
[3-7.他の実施の形態7]
さらに本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、例えば、PM型ステッピングモーターを駆動する様々なステッピングモーター駆動装置で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1……画像形成装置、30……CPU、31……制御部、32……ROM、33……RAM、34……給紙モーター、35……ベルトモーター、36……IDモーター、37……定着モーター、50……PM型ステッピングモーター、51……固定子、52……永久磁石ローター、60……タイマー部、61……ステップ切替部、62A……相切替信号出力部、62B……電流制御信号出力部、63……電流制御部、64……補正値格納部、65……電流制御テーブル格納部、66……モータードライバ、TbA、TbB……電流制御テーブル。
図1
図2
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