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特開2023-31148パネルの接合構造及びパネルの設計方法
<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031148
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】パネルの接合構造及びパネルの設計方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
E04F13/08 101B
E04F13/08 101W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136673
(22)【出願日】2021-08-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年7月20日 一般社団法人日本建築学会発行の「2021年度大会(東海) 学術講演梗概集 建築デザイン発表梗概集」(DVD)に発表
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591078929
【氏名又は名称】菊川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 宏武
(72)【発明者】
【氏名】富田 健司
(72)【発明者】
【氏名】中本 康
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃敏
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 春輝
(72)【発明者】
【氏名】横山 広大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秋雄
(72)【発明者】
【氏名】鷹羽 吉雄
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA21
2E110AA23
2E110AA47
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110BD03
2E110CA08
2E110CC04
2E110DA10
2E110DA16
2E110DB14
2E110DC12
2E110DD03
2E110EA06
2E110GA33W
2E110GB02W
2E110GB03W
2E110GB05W
2E110GB06W
2E110GB07W
(57)【要約】
【課題】大きな面外反力が縁部に発生するような強風を受けた場合でも、ねじによる接合部が破損することがない耐風圧性能に優れたパネルの接合構造を提供する。
【解決手段】略長方形の平面の周囲に断面視略L字形の縁部が形成されたパネル2をねじによって支持材に接合させるパネルの接合構造である。
そして、支持材に接触させる縁部に所定の間隔で設けられる複数の通常ねじ接合部3と、パネルの隅角部21に設けられた通常ねじ接合部に隣接して設けられる補強ねじ接合部4とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形の平面の周囲に断面視略L字形の縁部が形成されたパネルをねじによって支持材に接合させるパネルの接合構造であって、
前記支持材に接触させる前記縁部に所定の間隔で設けられる複数の通常ねじ接合部と、
前記パネルの隅角部に設けられた前記通常ねじ接合部に隣接して設けられる補強ねじ接合部とを備えたことを特徴とするパネルの接合構造。
【請求項2】
前記補強ねじ接合部は、前記通常ねじ接合部の間隔の1/3から1/2の長さだけ隣接する前記通常ねじ接合部から離れて設けられることを特徴とする請求項1に記載のパネルの接合構造。
【請求項3】
前記補強ねじ接合部は、隣接する部材との間に架け渡された帯状の補強プレートの端部に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のパネルの接合構造。
【請求項4】
前記補強ねじ接合部は、前記縁部に穿孔された長孔に対して平座金又はフランジを有するねじをねじ込むことで形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパネルの接合構造。
【請求項5】
前記補強ねじ接合部は、前記パネルの一対の長辺側の縁部に設けられるものであって、一方の前記縁部には前記長孔が設けられるとともに、他方の前記縁部には丸孔が設けられることを特徴とする請求項4に記載のパネルの接合構造。
【請求項6】
略長方形の平面の周囲に断面視略L字形の縁部が形成されたパネルをねじによって支持材に接合させるパネルの設計方法であって、
風による作用荷重を設定するステップと、
前記パネルの仕様を設定するステップと、
前記パネルの隅角部に補強ねじ接合部を設けるか否かを設定するステップと、
前記縁部に作用する面外反力を算定するステップと、
前記隅角部の前記縁部に発生する応力と許容耐力とを比較するステップとを備えたことを特徴とするパネルの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略長方形の平面の周囲に断面視略L字形の縁部が形成されたパネルを、ねじによって支持材に接合させるパネルの接合構造及びパネルの設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、正方形を含む長方形の平面のパネルを、壁面や天井などに複数並べて、建物の躯体や下地材などに固定することで、壁や天井を構築する工法が知られている。
【0003】
例えば、アルミニウム合金やステンレスなどの金属製の壁面パネルを、間柱や間柱間に架け渡される胴縁などの支持材に、所定の間隔(ピッチ)でねじ込まれるドリルねじによって接合させることで、建物や土木構造物などの外装が形成される。
【0004】
このようにして壁面パネルによって構成される外装は、風圧を受けることになる。特に、台風などの強風時には、強い面外方向の力を受けることになるので、壁面パネルの接合は、そのような外力に対して耐えうるように設計及び施工されている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-178553号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「アルミニウム合金製橋梁用外装板設計・製作要領」(社団法人日本アルミニウム協会 土木製品開発委員会、平成17年1月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば非特許文献1には、詳細については後述するように、パネルの平面部分については大たわみ式を用いて、平板中央のたわみや応力度の検討が行われているが、支持材に接合させるパネルの縁部に作用する面外反力については、検討が行われていないのが現状である。
【0008】
そこで本発明は、大きな面外反力が縁部に発生するような強風を受けた場合でも、ねじによる接合部が破損することがない耐風圧性能に優れたパネルの接合構造、及びパネルの設計方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のパネルの接合構造は、略長方形の平面の周囲に断面視略L字形の縁部が形成されたパネルをねじによって支持材に接合させるパネルの接合構造であって、前記支持材に接触させる前記縁部に所定の間隔で設けられる複数の通常ねじ接合部と、前記パネルの隅角部に設けられた前記通常ねじ接合部に隣接して設けられる補強ねじ接合部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記補強ねじ接合部は、前記通常ねじ接合部の間隔の1/3から1/2の長さだけ隣接する前記通常ねじ接合部から離れて設けられる構成とすることができる。また、前記補強ねじ接合部は、隣接する部材との間に架け渡された帯状の補強プレートの端部に設けられる構成とすることもできる。
【0011】
さらに、前記補強ねじ接合部は、前記縁部に穿孔された長孔に対して平座金又はフランジを有するねじをねじ込むことで形成されることが好ましい。また、前記補強ねじ接合部は、前記パネルの一対の長辺側の縁部に設けられるものであって、一方の前記縁部には前記長孔が設けられるとともに、他方の前記縁部には丸孔が設けられる構成とすることができる。
【0012】
また、パネルの設計方法の発明は、略長方形の平面の周囲に断面視略L字形の縁部が形成されたパネルをねじによって支持材に接合させるパネルの設計方法であって、風による作用荷重を設定するステップと、前記パネルの仕様を設定するステップと、前記パネルの隅角部に補強ねじ接合部を設けるか否かを設定するステップと、前記縁部に作用する面外反力を算定するステップと、前記隅角部の前記縁部に発生する応力と許容耐力とを比較するステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明のパネルの接合構造は、略長方形の平面のパネルの縁部をねじによって支持材に接合させるに際して、所定の間隔で設けられる複数の通常ねじ接合部を設けるうえに、さらにパネルの隅角部には、通常ねじ接合部に隣接して補強ねじ接合部を設ける。
【0014】
このようにパネルの隅角部に補強ねじ接合部を追加することで、大きな面外反力が縁部に発生するような強風を受けた場合でも、応力が補強ねじ接合部に分散され、ねじによる接合部が破損することがない耐風圧性能に優れたパネルの接合構造にすることができる。
【0015】
こうした補強ねじ接合部は、通常ねじ接合部の間隔の1/3から1/2の長さだけ隣接する通常ねじ接合部から離れたパネルの隅角部に設けると、特に効果的である。また、補強ねじ接合部を、隣接する部材との間に架け渡された帯状の補強プレートの端部に設けることで、支圧面積が広くなって風圧力による応力を分散させることができる。
【0016】
さらに、補強ねじ接合部を長孔に対して設けるのであれば、熱伸縮時や地震時などにパネルの面内方向に発生する層間変位にも追従させることができる。この場合、パネルの一方の縁部に長孔を設け、それに重ねる他方の縁部は大きめの丸孔にすることで、層間変位が作用しても補強ねじ接合部に過大な面内力が作用することを防ぐことができる。
【0017】
また、パネルの設計方法の発明は、パネルの縁部に作用する面外反力を算定し、許容耐力のチェックを行うので、ねじによる接合部が破損することがない耐風圧性能に優れたパネルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態のパネルの接合構造が設けられた外壁の正面図である。
図2】パネルとそれを接合させる支持材の構成を説明する斜視図である。
図3】パネルの隅角部を拡大して示した説明図である。
図4】パネルを設置する工程を示した説明図である。
図5】本実施の形態のパネルの接合構造を説明する図であって、(a)は隅角部周辺を拡大して示した正面図、(b)は比較のために示した従来の隅角部周辺の正面図である。
図6】本実施の形態のパネルの接合構造を曲げパネルで説明する断面図である。
図7】本実施の形態のパネルの接合構造をカットパネルで説明する断面図である。
図8】従来の大たわみ式を説明するための説明図である。
図9】パネルに作用する面外反力を確認するために行った数値解析の結果を説明する図であって、(a)は大たわみ式の条件である四周ピン支持モデルの解析結果、(b)は300mm間隔支持モデルの解析結果である。
図10】パネルの端部に増打ち補強を行った場合の効果を確認するために行った耐風圧試験を説明する図であって、(a)は供試体の説明図、(b)は試験結果をミーゼス応力と圧力との関係で示した図である。
図11】パネルの端部に増打ち補強を行った場合の効果を確認するために行った数値解析のモデルを説明する図であって、(a)は無補強パネルの説明図、(b)は端部増打ち補強パネルの説明図である。
図12】数値解析の結果を説明する図であって、(a)は無補強パネルの解析結果、(b)は端部増打ち補強パネルの解析結果である。
図13】実施例1のパネルの設計方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
図14】実施例1のパネルの設計方法を導き出すために行った検討を説明する図であって、(a)は解析結果を変位と圧力との関係で示した図、(b)は解析結果を応力と圧力との関係で示した図である。
図15】解析結果をミーゼス応力と圧力との関係で示した説明図である。
図16】実施例1のパネルの設計方法で使用する各種係数を説明する図であって、(a)は変位倍率α1と補強低減係数α2の説明図、(b)はそれらを使って算出される中央変位と端部応力との関係を示した図である。
図17】実施例1のパネルの設計方法で使用する反力倍率γ1と補強低減係数γ2の説明図である。
図18】実施例1のパネルの設計方法で使用する曲げパネル設計式による算出値と実験値とを、変位と圧力との関係で比較した説明図である。
図19】実施例1のパネルの設計方法で使用する曲げパネル設計式による算出値と実験値とを、応力と圧力との関係で比較した説明図である。
図20】実施例2のパネルの接合構造のパネルの隅角部を拡大して示した説明図である。
図21】実施例2のパネルを設置する工程を示した説明図である。
図22】実施例2のパネルの接合構造を隅角部周辺を拡大して説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態のパネルの接合構造が設けられた外壁1の正面図である。また、図2は、パネル2とそれを接合させる支持材となる胴縁12などの構成を説明する斜視図である。さらに、図3は、パネル2の隅角部21を拡大して示した説明図である。
【0020】
本実施の形態のパネルの接合構造は、図1に示すように、例えば正面視略長方形のパネル2を複数並べて外壁1を構築する場合に適用される。パネル2の適用箇所は、外壁1などの鉛直な壁面を形成する場合に限定されるものではなく、屋根、軒天井、斜壁などを形成する場合にも適用できる。
【0021】
例えば建物や橋梁などの土木構造物の外装材となる外壁1を構築する場合に、図2に示すように、支持材となる胴縁12にパネル2を固定する。胴縁12は、例えば構造物の外面に沿って間隔を置いて鉛直に建てられる間柱11に対して、直交する水平方向に向けて架け渡される。ここで、パネル2を間柱11に固定する場合は、間柱11が支持材となる。また、既設のコンクリート外壁面などに、あと施工アンカーを打設してファスナ13を取り付け、そのファスナ13に胴縁12を取り付けて支持材にすることもできる。
【0022】
図2では、間柱11の外側面に、鉛直方向に所定の間隔を置いてL字状のファスナ13が取り付けられている。ファスナ13は、図4に示すように、ボルトとナットで構成される接合部131を介して間柱11に固定され、ファスナ13の上面には、胴縁12が載せられて接合部132によって固定される。本実施の形態では、この胴縁12の水平方向に延びる側面にパネル2を接合させる。
【0023】
パネル2は、図2に示すように、正面視略長方形の平面に形成され、周囲に縁部(22A,22B,23)が設けられる。本実施の形態では、長辺と短辺との比が2:1の長方形のパネル2を例に説明するが、長辺と短辺の比はこれに限定されるものではなく、任意に設定することができる。また、1:1の正方形であってもよい。
【0024】
ここで、パネル2の長辺側で対向する一対を縁部22A,22Bとし、短辺側を短辺側縁部23とする。縁部(22A,22B,23)は、いずれも断面視略L字形に形成される。
【0025】
ここでは、アルミニウム合金板、ステンレス鋼板、スチール鋼板、チタン合金板、銅合金板などの金属板を折り曲げ加工して製作される曲げパネルを例に説明する。例えば、厚さ2mm以上の金属板が使用できる。
【0026】
詳細には、図3に示すように、アルミニウム合金などの金属板の側縁をL字形になるように折り曲げ加工することで、縁部(22A,22B,23)を形成する。すなわち、パネル2の上側の縁部22Aは、起立部222とそれに直交する平坦部221AとによってL字形に形成され、下側の縁部22Bは、起立部222とそれに直交する平坦部221BとによってL字形に形成される。
【0027】
短辺側縁部23も、縁部22A,22Bと同様に、金属板の側縁をL字形になるように折り曲げ加工することで形成し、短辺側縁部23と縁部22A,22Bとが接するコーナーは、溶接によって接合される。
【0028】
本実施の形態で説明するパネル2は、長辺側の縁部22A,22Bのみを胴縁12に接合させることで固定を行う。すなわち、パネル2を2辺支持させる。そして、支持材となる胴縁12に接触させる縁部22A,22Bには、図1に示すように、通常ねじ接合部3と補強ねじ接合部4とが設けられる。
【0029】
通常ねじ接合部3は、縁部22A,22Bの延伸方向に所定の間隔で設けられる。例えば、短辺が900mm以下で、長辺が1800mm以下のパネル2であれば、縁部22A,22Bの全長に亘って、230mmから300mmの間隔(ピッチ)で通常ねじ接合部3が設けられる。
【0030】
一方、補強ねじ接合部4は、長方形のパネル2に4つ存在する隅角部21にそれぞれ設けられる。すなわち、パネル2の隅角部21には、通常ねじ接合部3に隣接して補強ねじ接合部4が設けられる。本実施の形態では、隅角部21の通常ねじ接合部3を挟んだ両側に、補強ねじ接合部4を設けている。
【0031】
図3には、パネル2の下側の縁部22Bにおいて、通常ねじ接合部3を構成する長孔31が、230mmから300mmの間隔(ピッチ)で平坦部221Bに穿孔された状態が図示されている。また、隅角部21の平坦部221Bの長孔31の両側には、補強ねじ接合部4を構成する長孔41がそれぞれ穿孔される。
【0032】
この長孔31と長孔41との間隔は、例えば100mmに設定することができる。すなわち、通常ねじ接合部3の間隔(230mmから300mm)の1/3から1/2の長さだけ、隣接する通常ねじ接合部3から離れて補強ねじ接合部4が設けられる。
【0033】
長孔31,41は、そこにねじ込まれる、ねじとなるドリルねじ33,43の直径よりも、水平方向の長さが長い長円のルーズ孔である。長孔31,41にドリルねじ33,43をねじ込むことで通常ねじ接合部3及び補強ねじ接合部4を構成すれば、熱伸縮時や地震時などにパネル2の面内方向に発生する層間変位にも、追従させることができるようになる。
【0034】
ここで、長孔41にドリルねじ43をねじ込む際には、平座金を併用したり、フランジ付きドリルねじとするなどして、支圧面積を増加させることが好ましい。なお、通常ねじ接合部3のドリルねじ33にも、平座金やフランジ付きを適用することができる。
【0035】
一方、パネル2の上側の縁部22Aの平坦部221Aには、下側の縁部22Bの長孔41の真上となる位置に、丸孔42がそれぞれ穿孔される。すなわち、丸孔42,42の間隔は、長孔31,41間の間隔が100mmの場合は、200mmとなる。
【0036】
また、下側の縁部22Bの長孔31の真上となる位置の平坦部221Aには、長孔32が穿孔される。この長孔32は、パネル2を最初に支えるための荷受け用の孔で、長円にしておくことで、パネル2を胴縁12に取り付ける際に、正確な位置に容易に取り付けることができるようになる。
【0037】
要するに、上下に隣接するパネル2,2間では、下方に設置されるパネル2の上側の縁部22Aの上に、上方に設置されるパネル2の下側の縁部22Bが重ねられる。図4は、パネル2を設置する工程を断面で示した説明図である。
【0038】
この図に示すように、下方のパネル2は、上側の縁部22Aの長孔32にねじ込まれたドリルねじ33によって、胴縁12に固定されている。先に設置されるパネル2の縁部22Aを長孔32にしておくことで、現場において位置出しをして、容易に胴縁12に固定することができる。
【0039】
この長孔32及びそれにねじ込まれるドリルねじ33の頭部は、後から取り付けられるパネル2の平坦部221Bと重ならないように、平坦部221Aの上側に設けられる。そして、縁部22Aの平坦部221Aに対して、上方のパネル2の縁部22Bの平坦部221Bを重ね、ドリルねじ43を長孔41にねじ込む。
【0040】
長孔41にねじ込まれたドリルねじ43の先端は、下方のパネル2の平坦部221Aの丸孔42を貫通して、胴縁12にねじ込まれる。すなわち、重ねられた縁部22Bの平坦部221Bと縁部22Aの平坦部221Aとが、まとめてドリルねじ43によって胴縁12に接合される。
【0041】
図5(a)は、本実施の形態のパネルの接合構造が設けられたパネル2の隅角部21の周辺を拡大して示した正面図である。この図に示すように、パネル2の隅角部21には、300mm間隔で設けられた通常ねじ接合部3に隣接して、それぞれ100mmの間隔を開けて一対の補強ねじ接合部4が設けられる。
【0042】
他方、図5(b)は、比較のために示した従来のパネルa2の隅角部周辺の正面図である。従来のパネルa2では、300mm間隔で通常ねじ接合部3が設けられているだけで、隅角部の補強はされていない。
【0043】
図6は、図5(b)の状態を断面図で示している。この図で説明するパネル2は、金属板の側縁が曲げ加工された曲げパネルで、上下のパネル2,2の縁部22A,22B間には、シーリング材14が介在されている。
【0044】
一方、図7は、本実施の形態のパネルの接合構造を適用するパネル2Aを、カットパネルにした場合の断面図である。カットパネルは、アルミニウム合金などの金属板を長方形に成形した平板部20の4周の側縁に、別部材であるフレーム24を取り付けた構成となっている。フレーム24は、平板部20にスタッド溶接されたボルト242に、ナットを用いて固定される。
【0045】
そして、平板部20から突出したフレーム24の断面視略L字形の部分が、パネル2Aの縁部241となる。この縁部241には、曲げパネルで説明した縁部22A,22Bと同様に、長孔31,32,41及び丸孔42が穿孔されている。
【0046】
また、この長孔31,32,41及び丸孔42には、ドリルねじ33,43がねじ込まれて、上下のパネル2A,2Aの縁部241,241が重なった状態で、胴縁12に接合される。
【0047】
次に、本実施の形態のパネルの接合構造の作用について説明する。
まず、図8を参照しながら、従来の大たわみ式について説明する。大たわみ式は、上述したように、非特許文献1に記載されているアルミニウム合金製の外装板の設計に適用されている。
【0048】
大たわみ式は、図8の上段に示すような縦の長さがa、横の長さがbの長方形の平板の4周を、ピン支持させたときの算定式である。算定式では、最も変位が大きくなる平板の中央(A点)のたわみと、最も応力が大きくなる平板の中央下面(B点)の応力度を求める。
【0049】
一方、非特許文献1に記載されている設計方法では、平板の縁部の反力については、言及されていない。また、実際に使用されるパネル2は、上述したように上下の胴縁12に対する2辺支持の場合もあり、更に断面視略L字形の縁部22A,22B,241を介した接合となるため、平板の大たわみ式を適用した設計では、充分とは言えない。
【0050】
そこで、実際のパネル2,2Aの形態に合った高い耐風圧性能が確保できる接合構造について検討する。
まず、パネル2に作用する面外反力について検討する。
【0051】
面外反力は、四周ピン支持させたアルミ平板と、長辺側の2辺のみを300mm間隔でピン支持させたアルミ平板の面外反力を、数値解析であるFEM解析によって求めることで確認した。図9は、その数値解析の結果を説明する図であって、図9(a)は大たわみ式の条件である四周ピン支持モデルの解析結果を示しており、図9(b)は300mm間隔支持モデルの解析結果を示している。
【0052】
図9は、いずれも横軸は面外反力(N)、縦軸はパネルの中央から上方のY座標(長辺側座標)を示している。解析は、アルミ平板の全面に、均等に1kPaから5kPaの分布荷重を作用させて行った。
【0053】
図9の解析結果を見ると、平板の全面に一様な分布荷重を作用させているのに、面外反力の分布は一様ではなく、実際の支持構造に近い図9(b)の端部(Y座標1500mm以上)では、反力値がやや大きくなっていることがわかる。後述するが、曲げパネルでは、端部と中央部との反力の差は、更に大きくなる。
【0054】
また、端部の反力は、図中に点線や一点鎖線などで示した、加圧力に受圧面積を乗じて支点数で除した値を超えていることから、均等負担の仮定に基づく面外反力は、端部に作用する反力を過小に評価していることが確認できた。ここで、「均等負担の仮定」とは、風圧力にパネルの受圧面積を乗じて、留付けねじ本数で除することで、ねじ1本あたりの負担荷重を算出する設計の考え方である。
【0055】
このように、パネル2によって形成される外壁1の耐力が、パネル2の端部(隅角部21)における面外反力で決まると仮定すると、当該部分にのみ留付けねじの増打ち補強を施して応力(反力)を分散させる方法が、最も効果的かつ効率的と考えられる。そこで、端部増打ち補強について、さらに耐風圧試験により効果を確認した。
【0056】
図10は、パネル2の端部(隅角部21)に増打ち補強を行った場合の効果を確認するために行った耐風圧試験を説明する図であって、図10(a)は供試体の説明図である。これらの供試体は、いずれも曲げパネルの長辺側のみを、300mm間隔でドリルねじ(〇印の位置)で支持材に接合させている。
【0057】
そして、右側の「端部増打ち補強」の供試体では、「無補強」の供試体と比べて、4つの隅角部のそれぞれにおいて、2箇所ずつドリルねじ(〇印)による接合が増えている。この2つの供試体を使って耐風圧試験を実施し、供試体に発生する変位及び応力を計測した。
【0058】
図10(b)は、試験結果をミーゼス応力(N/mm2)と圧力(kPa)との関係で示した図である。計測箇所は、図10(a)に図示した、供試体の隅角部にあたる「G1位置」である。
【0059】
この試験結果を見ると、「無補強」に比べて「端部増打ち補強」の方が応力が小さくなっている。なお、図示していないが、供試体の中央で計測した変位を比較しても、「端部増打ち補強」の方が小さくなっていた。
【0060】
また、「無補強」の供試体の端部の応力は、別途実施したアルミ素材(A1100P-H14)の引張試験結果より、加圧力4kPaで公称耐力(σy=95N/mm2)に達し、破壊時の加圧力4.75kPaで引張試験耐力(Rp0.2=119N/mm2)に達した。
【0061】
こうした耐風圧試験では、支持材となる胴縁12のサイズといった実験設備の制約上、パネル留付け部に作用する力(反力)を得る事まではできない。そこで、数値解析(FEM解析)を併用して検討を行うこととする。
【0062】
図11は、パネル2の端部(隅角部21)に増打ち補強を行った場合の効果を確認するために行った数値解析のモデルを説明する図であって、図11(a)は「無補強パネル」の説明図、図11(b)は「端部増打ち補強パネル」の説明図である。それぞれのモデルに記載している「3424」などの数字は、FEM解析で着目した節点の番号を示している。
【0063】
そして、図12は、FEM解析の結果を説明する図であって、図12(a)は「無補強パネル」の解析結果を示しており、図12(b)は「端部増打ち補強パネル」の解析結果である。
【0064】
図12は、縦軸を圧力(kPa)とし横軸を面外反力(N)として、着目した節点の解析結果を示している。図12(a)を見ると、「無補強パネル」では、端部留付け部の位置に該当する節点3424に、大きな面外反力が発生していることがわかる。
【0065】
これに対して図12(b)の「端部増打ち補強パネル」では、端部留付け部の位置に該当する節点3424の面外反力が「無補強パネル」の1/2から1/3程度まで低減され、パネル2の隅角部21周辺のみを補強するだけでも、高い効果が得られることが判明した。
【0066】
要するに、本実施の形態のパネルの接合構造は、略長方形の平面のパネル2の縁部22A,22B,241を、ドリルねじ43によって支持材(胴縁12)に接合させるに際して、所定の間隔で設けられる複数の通常ねじ接合部3を設けるうえに、さらにパネル2の隅角部21には、通常ねじ接合部3に隣接して補強ねじ接合部4を設ける。
【0067】
このようにパネル2の隅角部21に補強ねじ接合部4を追加することで、大きな面外反力が縁部22A,22B,241に発生するような強風を受けた場合でも、応力が補強ねじ接合部4に分散され、ねじによる接合部が破損することがない耐風圧性能に優れたパネルの接合構造とすることができる。要するに、補強ねじ接合部4を追加するという最小限の補強を行うだけで、無補強の従来パネルと比べて、2倍から3倍の耐風圧性能を得ることができるようになる。
【0068】
こうした補強ねじ接合部4は、通常ねじ接合部3,3の間隔(例えば230mmから300mm)の1/3から1/2の長さ(例えば100mm程度)だけ、隣接する通常ねじ接合部3から離れたパネル2の隅角部21に設けると、特に効果的である。
【0069】
さらに、補強ねじ接合部4を長孔41に対して設けるのであれば、熱伸縮時や地震時などにパネル2の面内方向に発生する層間変位にも追従させることができる。この際、長孔41に平座金を介してドリルねじ43をねじ込むか、フランジ付きドリルねじを使用することで、補強に充分な支圧面積を確保することができるようになる。
【0070】
また、パネル2の一方の縁部22Bに長孔41を設けた場合、それに重ねる他方の縁部22Aは直径10mm程度の大きめの丸孔42にしておくことで、層間変位が作用しても補強ねじ接合部4に過大な面内力が作用することを防ぐことができる。
【実施例0071】
以下、前記した実施の形態のパネルの接合構造を設計するためのパネルの設計方法について、図13図19を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0072】
図13は、実施例1のパネルの設計方法の処理の流れを説明するフローチャートである。まずは、実施例1のパネルの設計方法で使用する曲げパネルの設計式を、どのようにして導き出したかについて説明する。
【0073】
図14(a)は、無補強の場合のFEM解析結果を変位と圧力との関係で示した図で、図14(b)は、無補強の場合のFEM解析結果を応力と圧力との関係で示した図である。図14には、上述した平板の大たわみ式によって算出される値となる「平板大たわみ」と、平板のモデルをFEM解析した結果となる「平板FEM」と、曲げパネルをFEM解析した結果となる「曲げパネルFEM」とを併せて示した。
【0074】
「平板大たわみ」、「平板FEM」及び「曲げパネルFEM」の値は、いずれも変位はパネル中央の変位であり、応力はパネル中央の下面応力度である。平板だけで比較すると、変位と応力は、「平板大たわみ」と「平板FEM」とでは、ほぼ同じ値を示した。厳密には、FEM解析値の方が大たわみ式の計算値より僅かに小さくなったが、これは、大たわみ式が略算式であり、厳密解ではないためである。
【0075】
一方、「平板大たわみ」と「曲げパネルFEM」とを比較すると、変位は「曲げパネルFEM」の方がかなり大きくなっており、「平板大たわみ」の略算式では、実際に発生する変位が過小評価される危険がある。
【0076】
図15は、FEM解析によって得られた解析値を、ミーゼス応力と圧力との関係で示した説明図である。ここで、「平板FEM解析値」は平板の中央下面のミーゼス応力を示し、「曲げパネルFEM解析値」は、曲げパネルの端部(隅角部)の上面のミーゼス応力を示している。
【0077】
この図を見ると明らかなように、平板の中央よりも、はるかに大きなミーゼス応力が、曲げパネルの端部に発生することがわかる。すなわち、外装パネルシステムのボトルネックは、端部留付け部の面外耐力であると判断できる。
【0078】
そこで、「曲げパネルFEM」と「平板FEM」の解析結果の倍率等を整理し、大たわみ式から得られる変位(中央)や応力(中央)にスカラー倍することで、曲げパネルの変位(中央)や応力(端部)を安全側に評価できる設計式の導出を行った。
【0079】
要するに、大たわみ式から計算される変位(中央)及び応力(中央下面)から、曲げパネルの大きな変位が発生する中央変位と、大きな応力が発生する端部応力を評価できる設計式を、下式のとおり定義する。
【0080】
<中央変位δ’(mm)>
δ’=δ×α1×α2
ここで、α1=0.411ln(P)+2.351、α2=-0.012ln(P)+0.975である。但し、無補強の場合は、α2=1.0となる。また、Pは加圧力(kPa)である。
【0081】
<端部応力σ’(N/mm2)>
σ’=β1×δ’β2
ここで、β1=0.106、β2=2.025である。
【0082】
<端部面外反力R’(N)>
R’=103×P×p×a/2×γ1×γ2
ここで、pは留付けねじのピッチ(m)、aは曲げパネルの短辺幅(m)、γ1=0.201ln(P)+2.078、γ2=0.05ln(P)+0.441である。但し、無補強の場合は、γ2=1.0となる。
【0083】
上式のα1,α2は、大たわみ式より算定された変位δ(mm)に乗じる係数で、加圧力P(kPa)より求まる。α1を平板パネルと曲げパネルの変位倍率、α2を増打ち補強による補強低減係数と呼ぶこととする。
【0084】
一方、端部応力σ’は、大たわみ式と同様に変位の関数として表し、曲げパネルの中央変位δ’が求まれば、β1とβ2を用いて端部(隅角部)の最大応力度(ミーゼス応力)が定まるようにした。すなわち、β1,β2は、曲げパネルの中央変位からパネル端部応力を求めるための係数である。
【0085】
そして、端部留付けの端部面外反力R’は、均等負担の仮定に基づいて計算した反力と、加圧力P(kPa)より定まる係数γ1,γ2から求めることができる。ここで、γ1を平板パネルと曲げパネルの反力倍率、γ2を増打ち補強による補強低減係数と呼ぶこととする。
【0086】
図16(a)に、加圧力P(kPa)に対する変位倍率α1と補強低減係数α2の値を示し、図16(b)には、変位倍率α1及び補強低減係数α2を使って算出された中央変位δ’と端部応力σ’との関係を示した。そして、図17には、加圧力P(kPa)に対する反力倍率γ1と補強低減係数γ2の値を示した。
【0087】
これらの係数(α1,α2,β1,β2,γ1,γ2)は、平板と曲げパネルのFEM解析結果から求めている。なお、γ1,γ2については、均等負担の仮定から算出している。上述したとおり、大たわみ式によって計算される平板の変位及び応力値は、FEM解析値より大きくなるため、大たわみ式の計算結果に上記した係数を乗じることで、概ね安全側の評価が可能になるものと考える。
【0088】
図18に示したように、上記した曲げパネル設計式で算出された値は、曲げパネルの実験値と、ほぼ同じになる。以上の結果をまとめると、変位に関しては、実験値が最も大きくなるが、その次が曲げパネルのFEM解析値、大たわみ式の計算値、平板のFEM解析値となる。
【0089】
続いて、応力に関しては、実験値と曲げパネルのFEM解析値とがほぼ同じで、大たわみ式の計算値、平板のFEM解析値の順で値が小さくなる。そして、図19に示したように、上記した曲げパネル設計式で算出された値は、曲げパネルの実験値よりも大きくなって安全側である。
【0090】
そして、反力に関しては、曲げパネルのFEM解析値が平板のFEM解析値より大きくなり、均等負担の場合は、平板のFEM解析値より小さくなる。すなわち、上記した曲げパネル設計式で算出された値は、均等負担の値より大きくなって安全側である。
【0091】
次に、本実施例1のパネルの設計方法の処理の流れについて、図13を参照しながら説明する。
まず、ステップS1で金属製外装パネルとなるパネル2の耐風圧性能の検討を開始する。要するに、図1に示したような、複数のパネル2を上下左右に並べて外壁1を構築するための検討を開始する。
【0092】
設計を行うには、外壁1の建設地(ステップS21)、外装パネル(パネル2)の設置高さ(建物の階数)などの設置位置(ステップS22)、強風の規模を決めるための設計用再現期間(ステップS23)などの設計条件を設定する。そして、ステップS3で、設計条件に基づいて、外装パネルの設計用風荷重(作用荷重)の算定を行う。
【0093】
続いて、ステップS4では、外装パネルの仕様を設定する。例えば、パネル2の材質、形状、厚さなどの断面、支持材に接合させる支持間隔、曲げパネルかカットパネルかなどのパネル形式などを設定する。
【0094】
ステップS5では、パネル2の隅角部21に端部増打ち補強として、補強ねじ接合部4を設けるか否かを決める。それぞれの隅角部21に2箇所ずつ補強ねじ接合部4を設ける場合はステップS61に進む。他方、端部増打ち補強を行わない場合はステップS62に進み、補強低減係数α2を1.0とし、補強低減係数γ2を1.0とする。
【0095】
そして、ステップS7では、均等負担仮定による面外反力Rの計算を行う。続いてステップS8では、ステップS4の仕様設定で設定したパネル形式を確認し、カットパネルの場合は、ステップS81に移行する。カットパネルの場合は、上述した設計式の適用はないので、FEM解析等によって、変位δ'及び応力σ'の検討を行う。
【0096】
一方、パネル形式が曲げパネルの場合は、ステップS9で、大たわみ式によって平板の中央変位δの計算を行う。続いて、ステップS3で算出した設計用風荷重に応じた各種係数(α1,α2,γ1,γ2)と係数(β1,β2)を、図16図17などを使って設定する(ステップS10)。
【0097】
そして、曲げパネルの中央変位δ’を上記した設計式で算出し(ステップS11)、その中央変位δ’に基づいて、上記した設計式で端部(隅角部21)の端部応力σ’を算出する(ステップS12)。また、ステップS13では、パネル2の端部(隅角部21)の最外端支持部の面外反力を、端部面外反力R’として上記した設計式で算出する。
【0098】
このようにして算定された端部応力σ’及び端部面外反力R’は、ステップS14で外装パネルなどの許容耐力と比較され、許容耐力の範囲内に収まっていれば、施工を行うことができるようになる(ステップS15)。
【0099】
次に、本実施例1のパネルの設計方法の作用について説明する。
このようにして行われる実施例1のパネルの設計方法は、パネル2の縁部22A,22Bに作用する面外反力を算定し、許容耐力のチェックを行うので、ドリルねじ43による補強ねじ接合部4や通常ねじ接合部3が破損することがない、耐風圧性能に優れたパネル2にすることができる。
【0100】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例0101】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例2について、図20図22を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0102】
前記実施の形態では、隅角部21の通常ねじ接合部3の両側に、一対の補強ねじ接合部4,4を追加する場合について説明した。本実施例2では、図20に示すように、パネル2の隅角部21に補強プレート5を配置する場合について説明する。
【0103】
ここで、図21は、実施例2のパネル2を設置する工程を示した説明図である。また、図22は、実施例2のパネルの接合構造を、隅角部21周辺を拡大して説明する正面図である。
【0104】
補強プレート5は、パネル2と、それに隣接する部材との間に架け渡される帯状の板材である。例えば図22に示すように、左右に隣接するパネル2,2間に、補強プレート5が架け渡される。なお、隣接する部材は、パネル2に限定されるものではなく、躯体や柱などであってもよい。
【0105】
補強プレート5は、ステンレスなどの金属板などによって、2つの部材に架け渡し可能な長さに成形される。例えば、厚さ1.5mm、長さ150mm、幅15mm程度のステンレス(SUS)板によって製作することができる。また、補強プレート5には、図20に示すように、両側の端部51,51にそれぞれ丸孔511,511が穿孔される。
【0106】
そして、この補強プレート5の端部51に、実施例2の補強ねじ接合部4Aが設けられる。この補強ねじ接合部4Aは、通常ねじ接合部3(長孔31の位置)に隣接して設けられる。補強ねじ接合部4Aでは、図21に示すように、平坦部221Bの長孔41の位置に補強プレート5の端部51の丸孔511が重ねられ、ドリルねじ43がねじ込まれる。
【0107】
丸孔511及び長孔41にねじ込まれたドリルねじ43の先端は、下方のパネル2の平坦部221Aの丸孔42を貫通して、胴縁12にねじ込まれる。すなわち、重ねられた補強プレート5と縁部22Bの平坦部221Bと縁部22Aの平坦部221Aとが、まとめてドリルねじ43によって胴縁12に接合される。
【0108】
このようにして設けられる補強ねじ接合部4Aは、図22に示すように、パネル2の隅角部21の最外端に設けられる。例えば、補強ねじ接合部4Aとパネル2の短辺縁との間隔は50mm程度、補強ねじ接合部4Aと隣接する通常ねじ接合部3との間隔は100mm程度になる。また、補強プレート5の両側の端部51,51に設けられる補強ねじ接合部4A,4A間の間隔は、100mm程度になる。
【0109】
このように構成された実施例2のパネルの接合構造は、補強ねじ接合部4Aを、隣接する部材(パネル2)との間に架け渡された帯状の補強プレート5の端部51に設けることで、支圧面積が広くなって風圧力による応力を分散させることができる。
【0110】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0111】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0112】
例えば、前記実施の形態及び実施例1,2では、鉛直な外壁面を形成するパネル2を例に説明したが、これに限定されるものではなく、屋根面、軒天井面、斜壁面などを形成するパネルにも本発明を適用することができる。
【0113】
また、前記実施例2では、補強プレート5を曲げパネルに適用する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、カットパネルを使用する場合も、補強プレート5を使って補強ねじ接合部4Aを設けることができる。
【符号の説明】
【0114】
12 :胴縁(支持材)
2,2A :パネル
21 :隅角部
22A,22B:縁部
241 :縁部
3 :通常ねじ接合部
33 :ドリルねじ(ねじ)
4 :補強ねじ接合部
41 :長孔
42 :丸孔
43 :ドリルねじ(ねじ)
4A :補強ねじ接合部
5 :補強プレート
51 :端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22