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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031152
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】極薄鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20230301BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20230301BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20230301BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20230301BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230301BHJP
   C22C 38/02 20060101ALI20230301BHJP
   C22B 9/00 20060101ALI20230301BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B22D11/06 360B
C21D8/12 H
B22F9/08 A
C21D9/46 P
C22C38/00 303V
C22C38/00 303S
C22C38/02
C22B9/00
H01F1/147 175
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136677
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】592032636
【氏名又は名称】学校法人トヨタ学園
(71)【出願人】
【識別番号】597110836
【氏名又は名称】丸嘉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 敬介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 恒博
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 純平
(72)【発明者】
【氏名】土田 英治
(72)【発明者】
【氏名】土田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】上村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】石山 和志
【テーマコード(参考)】
4E004
4K001
4K017
4K037
5E041
【Fターム(参考)】
4E004DB02
4E004TA02
4E004TA03
4K001AA10
4K001AA23
4K001BA23
4K001FA14
4K001GA17
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB16
4K017DA02
4K017FA15
4K017FA17
4K017FA21
4K037EA28
4K037EB09
4K037EC00
4K037EC02
4K037FG00
4K037FJ02
4K037FJ04
5E041AA02
5E041BD09
5E041NN06
(57)【要約】
【課題】高周波動作に対応できる鉄系の極薄板材の製造方法を提供する。
【解決手段】この極薄鋼板の製造方法1は、鉄に6.5%の珪素が含有されている原材料を真空溶解する真空溶解工程P1と、この真空溶解工程P1で溶解された原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、多結晶構造を有する板状の多結晶素材14に形成される急冷多結晶素材形成工程P2と、この急冷多結晶素材形成工程P2で形成された多結晶素材14が、温間圧延により、延伸板材24に形成される延伸工程P3と、この延伸工程P3で形成された延伸板材24が真空で焼鈍され、真空で焼鈍されたこの延伸板材24が、冷間圧延により、極薄板材32に塑性加工される極薄加工工程P4,P5と、この極薄加工工程P4,P5で加工された極薄板材32が真空焼鈍される真空焼鈍工程P6とを含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極薄鋼板の製造方法であって、
鉄を主成分とする原材料を真空溶解する真空溶解工程と、
該真空溶解工程で溶解された前記原材料を冷却して多結晶構造を有する多結晶素材を形成する急冷多結晶素材形成工程と、
該急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材を延伸させて延伸板材を形成する延伸工程と、
該延伸工程で形成された前記延伸板材を厚さ20マイクロメートル以下の極薄板材に加工する極薄加工工程と、
該極薄加工工程で形成された前記極薄板材を真空で焼鈍する真空焼鈍工程とを含むことを特徴とする極薄鋼板の製造方法。
【請求項2】
前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、
前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、
前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、板状の前記多結晶素材に形成され、
前記延伸工程では、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材が、温間圧延により、前記延伸板材に形成され、
前記極薄加工工程では、前記延伸工程で形成された前記延伸板材が真空で焼鈍され、真空で焼鈍された前記延伸板材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、
前記真空焼鈍工程では、前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項3】
前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、
前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、
前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、線状にされて急冷される急冷紡糸法により、断面形状が略円形の線状の前記多結晶素材に形成され、
前記延伸工程では、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材が、温間圧延により、板状の前記延伸板材に塑性加工され、
前記極薄加工工程では、前記延伸工程で形成された前記延伸板材が真空で焼鈍され、真空で焼鈍された前記延伸板材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、
前記真空焼鈍工程では、前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、
前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、
前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、線状にされて急冷される急冷紡糸法により、断面形状が略円形の線状の前記多結晶素材に形成され、
前記延伸工程では、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された線状の前記多結晶素材が、該多結晶素材の断面積を縮小させる温間伸線により、断面形状が略円形の線状の前記延伸板材に塑性加工され、
前記極薄加工工程では、前記延伸工程で形成された線状の前記延伸板材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、
前記真空焼鈍工程では、前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、
前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、
前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、噴霧されて急冷される急冷アトマイズ法により、粉体にされ、該粉体が回転する2個のロールの対向する円筒面間で押し固められて、板状の前記多結晶素材に形成され、
前記延伸工程と前記極薄加工工程とは、同一の工程になっており、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された板状の前記多結晶素材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、
前記真空焼鈍工程では、前記延伸工程及び前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記原材料は、純鉄であり、
前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、
前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、板状の前記多結晶素材に形成され、
前記延伸工程と前記極薄加工工程とは、同一の工程になっており、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された板状の前記多結晶素材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、
前記真空焼鈍工程では、前記延伸工程及び前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材の表面に珪素元素が蒸着され、さらに、酸化珪素が蒸着され、その後、真空焼鈍されることにより、前記表面に蒸着された珪素元素が、前記極薄板材の内部に拡散されることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、
前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、
前記急冷多結晶素材形成工程、前記延伸工程及び前記極薄加工工程は、同一の工程になっており、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、多結晶構造を有する前記極薄板材に形成され、
前記真空焼鈍工程では、形成された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記原材料は、純鉄であり、
前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、
前記急冷多結晶素材形成工程、前記延伸工程及び前記極薄加工工程は、同一の工程になっており、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、多結晶構造を有する前記極薄板材に形成され、
前記真空焼鈍工程では、形成された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする請求項1に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記延伸工程において、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材を温間圧延する圧延機の圧延ロールの温度を、温間圧延温度に保持して圧延を行うことを特徴とする請求項2に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記極薄鋼板は、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼であることを特徴とする請求項2乃至7の何れか一項又は請求項9に記載の極薄鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材の結晶粒径が、30マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の極薄鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極薄鋼板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体素子を用いてスイッチング動作を行うことにより、電力変換や制御を行うパワーエレクトロニクスでは、小型軽量化や制御特性向上および大電力化などのため、スイッチング動作周波数を高周波化することが求められている。最近のGaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化珪素)などの半導体デバイスの研究により、1MHz程度の高周波動作が実現されつつある。パワーエレクトロニクス回路の変圧器やモータに使用される磁心には、損失を低減するため、積層鉄心が使用される。積層鉄心は、珪素鋼などの強磁性体の薄板が、電気絶縁層を間に挟んで多数積層された構造をなしている。強磁性体の薄板の板厚を薄くすることにより、積層鉄心に交流磁界が印加されたときに発生する渦電流損が小さくなり、高いスイッチング周波数で回路を動作させることができる。また、薄板の材料として使用される珪素の含有率が6.5%の珪素鋼は、電気抵抗率が高く渦電流損が低減され、磁歪定数が0であり応力感受性が低く、ヒステリシス損が抑制されることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、珪素含有率が4.0%以上の高珪素溶鋼を、高速回転する単一の冷却ロールの表面にスリット状開口を有するノズルを介して噴射し急速凝固させる(単ロール法)、板厚30μmから80μmの高珪素鋼急冷薄帯の製造方法が記載されている。また、板厚20μm以上の実験結果も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-343185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、今後想定される1MHz程度の高周波動作に対応できる、さらに薄い板厚の鋼板の必要性について、明確には言及されていない。また、特許文献1には、単ロール法により高珪素鋼急冷薄帯を製造する方法が記載されているものの、製造されたその高珪素鋼急冷薄帯にさらに圧延等の加工を加えて、板厚をさらに薄くすることについての記載もない。珪素含有率6.5%の珪素鋼は難加工材料であり、薄くできれば渦電流損失が低下し、特性の良い材料になることが予想されていたが加工が困難であるために実現できていなかった。過去の研究では、結晶粒を小さくすれば珪素含有率6.5%の珪素鋼の圧延ができることが示唆されている。しかし、これらの研究で検討されているのは板厚が、mm(ミリメートル)からせいぜい0.1mm程度までの圧延であり、1μmから数μmまで薄くすることは、加工の途中で結晶粒が粗大化するため不可能であった。このような状況の下、本発明者らは、例えば単ロール法のような急冷法であれば、数10μmの厚さで結晶粒の小さな材料ができるため、その材料ならば圧延加工ができ、それにより板厚を薄くして渦電流損失の小さい材料が実現できるとの新しい着想をし、具現化するに至った。
【0006】
そこで、本発明の課題は、高周波動作に対応できる鉄系の極薄板材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、極薄鋼板の製造方法であって、鉄を主成分とする原材料を真空溶解する真空溶解工程と、該真空溶解工程で溶解された前記原材料を冷却して多結晶構造を有する多結晶素材を形成する急冷多結晶素材形成工程と、該急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材を延伸させて延伸板材を形成する延伸工程と、該延伸工程で形成された前記延伸板材を厚さ20マイクロメートル以下の極薄板材に加工する極薄加工工程と、該極薄加工工程で形成された前記極薄板材を真空で焼鈍する真空焼鈍工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、板状の前記多結晶素材に形成され、前記延伸工程では、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材が、温間圧延により、前記延伸板材に形成され、前記極薄加工工程では、前記延伸工程で形成された前記延伸板材が真空で焼鈍され、真空で焼鈍された前記延伸板材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、前記真空焼鈍工程では、前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、線状にされて急冷される急冷紡糸法により、断面形状が略円形の線状の前記多結晶素材に形成され、前記延伸工程では、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材が、温間圧延により、板状の前記延伸板材に塑性加工され、前記極薄加工工程では、前記延伸工程で形成された前記延伸板材が真空で焼鈍され、真空で焼鈍された前記延伸板材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、前記真空焼鈍工程では、前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、線状にされて急冷される急冷紡糸法により、断面形状が略円形の線状の前記多結晶素材に形成され、前記延伸工程では、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された線状の前記多結晶素材が、該多結晶素材の断面積を縮小させる温間伸線により、断面形状が略円形の線状の前記延伸板材に塑性加工され、前記極薄加工工程では、前記延伸工程で形成された線状の前記延伸板材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、前記真空焼鈍工程では、前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、噴霧されて急冷される急冷アトマイズ法により、粉体にされ、該粉体が回転する2個のロールの対向する円筒面間で押し固められて、板状の前記多結晶素材に形成され、前記延伸工程と前記極薄加工工程とは、同一の工程になっており、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された板状の前記多結晶素材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、前記真空焼鈍工程では、前記延伸工程及び前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記原材料は、純鉄であり、前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、前記急冷多結晶素材形成工程では、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、板状の前記多結晶素材に形成され、前記延伸工程と前記極薄加工工程とは、同一の工程になっており、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された板状の前記多結晶素材が、冷間圧延により、前記極薄板材に塑性加工され、前記真空焼鈍工程では、前記延伸工程及び前記極薄加工工程で加工された前記極薄板材の表面に珪素元素が蒸着され、さらに、酸化珪素が蒸着され、その後、真空焼鈍されることにより、前記表面に蒸着された珪素元素が、前記極薄板材の内部に拡散されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記原材料は、鉄に6.5%の珪素が含有されており、前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、前記急冷多結晶素材形成工程、前記延伸工程及び前記極薄加工工程は、同一の工程になっており、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、多結晶構造を有する前記極薄板材に形成され、前記真空焼鈍工程では、形成された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記原材料は、純鉄であり、前記真空溶解工程では、前記原材料が真空溶解され、前記急冷多結晶素材形成工程、前記延伸工程及び前記極薄加工工程は、同一の工程になっており、前記真空溶解工程で溶解された前記原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により、多結晶構造を有する前記極薄板材に形成され、前記真空焼鈍工程では、形成された前記極薄板材が真空焼鈍されることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項2に記載の構成に加えて、前記延伸工程において、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材を温間圧延する圧延機の圧延ロールの温度を、温間圧延温度に保持して圧延を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項2乃至7の何れか一項又は請求項9に記載の構成に加えて、前記極薄鋼板は、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼であることを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項2乃至5の何れか一項に記載の構成に加えて、前記急冷多結晶素材形成工程で形成された前記多結晶素材の結晶粒径が、30マイクロメートル以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、急冷多結晶素材形成工程において、溶解された原材料を冷却して多結晶構造を有する多結晶素材を形成する。アモルファスでなく、多結晶構造を有するため、その後に続く工程の塑性加工が可能になる。また、極薄加工工程で加工される極薄板材の厚さが20マイクロメートル以下であるため、高周波動作の変圧器やモータに使用される磁心の材料として使用することができる。
【0019】
請求項2乃至5の発明によれば、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を使用することができる。珪素の含有率が6.5%の珪素鋼は、高強度、難加工性であり、割れてしまう現象を伴う材料であるが、これらの製造方法を採用することで、極薄の板材に加工することができる。また、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を使用することにより、急冷多結晶素材形成工程において、急冷してもアモルファスにならず、多結晶構造を有する多結晶素材を得ることができる。このため、その後に続く工程の塑性加工が可能になる。
【0020】
請求項2の発明によれば、急冷多結晶素材形成工程において、単ロール急冷法を用いることで、板状の多結晶素材を安定して製造することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、急冷多結晶素材形成工程において、急冷紡糸法を用いることで、線状の多結晶素材を安定して製造することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、急冷多結晶素材形成工程において、急冷紡糸法を用いることで、線状の多結晶素材を安定して製造することができる。また、延伸工程において、断面形状が略円形の線状の多結晶素材が、多結晶素材の断面積を縮小させる温間伸線により、断面形状が略円形の線状の延伸板材に塑性加工される。線状の多結晶素材から線状の延伸板材に温間伸線することにより、延伸板材の内部組織に結晶粒径が1μm程度の微細粒が生じ、加工性が改善する。
【0023】
請求項5の発明によれば、急冷多結晶素材形成工程において、急冷アトマイズ法を用いることで、多結晶素材の内部組織に結晶粒径が0.5μm程度の微細粒が生じ、加工性が大きく改善する。
【0024】
請求項6の発明によれば、純鉄を原材料として用い、急冷多結晶素材形成工程において、溶解した原材料を単ロール急冷法によって急冷するが、アモルファスでなく、多結晶構造を有する多結晶素材を得るようになっている。このため、その後に続く工程の塑性加工が可能になる。また、真空焼鈍工程において、極薄板材の表面に珪素元素が蒸着され、さらに、酸化珪素が蒸着され、その後、真空焼鈍されることにより、表面に蒸着された珪素元素が、極薄板材の内部に拡散される。極薄板材の表面に蒸着されている珪素元素の層と、酸化珪素の層との二層になった蒸着層について、真空焼鈍により珪素元素のみを鉄に拡散させ、酸化珪素の層はそのまま残り絶縁被膜となる。このため、絶縁被膜塗布工程を省くことができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を使用することができる。また、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を使用することにより、急冷多結晶素材形成工程において、急冷してもアモルファスにならず、多結晶構造を有する極薄板材を得ることができる。また、急冷多結晶素材形成工程において、単ロール急冷法を用いることで、極薄板材を安定して製造することができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、純鉄を原材料として用い、急冷多結晶素材形成工程において、溶解した原材料を単ロール急冷法によって急冷するが、アモルファスでなく、多結晶構造を有する極薄板材を得るようになっている。
【0027】
請求項9の発明によれば、多結晶素材を温間圧延する圧延機の圧延ロールの温度を、温間圧延温度に保持して圧延を行う。圧延ロールの温度が低い場合には、多結晶素材の熱が圧延ロールに吸収され、多結晶素材の温度が低下し、硬くなり塑性加工が困難になることも予想されるが、圧延ロールの温度を、温間圧延温度に保持することにより、多結晶素材の温度が低下することなく圧延加工を行うことができる。
【0028】
請求項10の発明によれば、極薄鋼板は、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼である。この珪素鋼は、磁歪定数がほぼ0になり、応力感受性が低く、ヒステリシス損が低減される。
【0029】
請求項11の発明によれば、急冷多結晶素材形成工程で形成された多結晶素材の結晶粒径が、30マイクロメートル以下であるため、難加工材料の珪素含有率6.5%の珪素鋼でも圧延などの塑性加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】この発明の実施の形態1に係る極薄鋼板の製造方法の流れを示す図である。
図2】同実施の形態1に係る急冷多結晶素材形成工程の冷却方法を示す概略図であり、(a)は単ロール急冷法を示す図、(b)は双ロール急冷法を示す図である。
図3】同実施の形態1に係る極薄鋼板の製造方法の各工程を示す概略図であり、(a)は延伸工程の温間圧延を示す図、(b)は極薄加工工程の真空焼鈍を示す図、(c)は極薄加工工程の冷間圧延を示す図、(d)は真空焼鈍工程の真空焼鈍を示す図である。
図4】この発明の実施の形態2に係る極薄鋼板の製造方法の流れを示す図である。
図5】同実施の形態2に係る急冷多結晶素材形成工程の急冷紡糸法を示す概略図であり、(a)は押出法を示す図、(b)は回転液中紡糸法を示す図である。
図6】同実施の形態2に係る急冷多結晶素材形成工程の急冷紡糸法である改良押出法を示す概略図である。
図7】同実施の形態2に係る急冷多結晶素材形成工程の急冷紡糸法を示す概略図であり、(a)は単ロール紡糸法を示す図、(b)はロール円筒面を示す図、(c)は双ロール紡糸法を示す図である。
図8】この発明の実施の形態3に係る極薄鋼板の製造方法の流れを示す図である。
図9】この発明の実施の形態4に係る極薄鋼板の製造方法の流れを示す図である。
図10】同実施の形態4に係る急冷多結晶素材形成工程の急冷アトマイズ法と双ロール法とを組み合わせた方法を示す概略図である。
図11】この発明の実施の形態5に係る極薄鋼板の製造方法の流れを示す図である。
図12】この発明の実施の形態6に係る極薄鋼板の製造方法の流れを示す図である。
図13】この発明の実施の形態7に係る極薄鋼板の製造方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、極薄鋼板の製造方法であって、鉄を主成分とする原材料を真空溶解する真空溶解工程と、真空溶解工程で溶解された原材料を冷却して多結晶構造を有する多結晶素材を形成する急冷多結晶素材形成工程と、急冷多結晶素材形成工程で形成された多結晶素材を延伸させて延伸板材を形成する延伸工程と、延伸工程で形成された延伸板材を厚さ20μm以下の極薄板材に加工する極薄加工工程と、極薄加工工程で形成された極薄板材を真空で焼鈍する真空焼鈍工程とを含んでいる。
【0032】
変圧器やモータに使用される磁心には、損失を低減するため、積層鉄心が使用される。この積層鉄心は、強磁性体の薄板が、電気絶縁層を間に挟んで多数積層された構造をしている。積層鉄心を構成する薄板の材料には、珪素鋼などが使用される。これは、鉄に珪素を含有させることにより電気抵抗率が高くなり、発生する渦電流が抑制されるためである。また、珪素の含有率が重量割合で6.5%の珪素鋼は、磁歪定数がほぼ0であり、応力感受性が低く、ヒステリシス損を低減することができる。また、積層鉄心を構成する薄板の板厚を薄くすることにより、渦電流損を低減できるが、板厚を浸透深さδ以下にすることが好ましい。
【0033】
浸透深さδとは、渦電流が流れる際、表面に流れる電流の大きさに対して、自然対数eの逆数(1/e)である約0.368倍となる大きさの電流が流れる深さのことである。浸透深さδは、周波数f(Hz)、強磁性体の導電率σ(S/m)、強磁性体の周波数fでの等価な磁気透磁率μ(H/m)から算出され、円周率πとすると、(πfμσ)-1/2となる。
【0034】
ここで、強磁性体の周波数fでの等価な磁気透磁率μは、強磁性体の周波数fでの比透磁率μと、真空の透磁率μとの積として求められる。
【0035】
鉄の周波数fに対する浸透深さδを表1に示す。
【0036】
【表1】
鉄の浸透深さδは、周波数fが、100kHzのとき7μm程度、200kHzのとき5μm程度、1MHz(1000kHz)のとき4μm程度、10MHz(10000kHz)のとき1μm程度となる。
【0037】
1MHz程度の高周波動作を想定する場合、積層鉄心を構成する薄板の板厚を、浸透深さδ以下の3μm程度にすると、渦電流の発生が抑制され、低損失となる。板厚を薄くして1μm程度とすると、より高い周波数での動作に対応できるようになる。このように、薄板の板厚を薄くすることは、高周波化につながる。
【0038】
しかし、珪素含有率6.5%の珪素鋼は難加工材料であり、薄くできれば渦電流損失が低下し、特性の良い材料になるが加工が困難であるため、これまで実現されていなかった。過去の研究において、結晶粒を小さくすれば珪素含有率6.5%の珪素鋼の圧延加工が可能であることが示唆されているものの、これらの研究で検討されているのは板厚が、mm(ミリメートル)からせいぜい0.1mm程度までの圧延であり、1μmから数μmまで薄くすることは、圧延加工の途中で結晶粒が粗大化するため不可能であった。本発明者らは、急冷法を用いれば、数10μmの板厚で結晶粒径30μm以下の材料ができるため、その材料であれば圧延加工ができ、圧延により板厚を薄くするとの着想の下、本発明をするに至った。
【0039】
本発明は、高周波動作に対応できる鉄系の極薄板材の製造方法であり、以下に示すように複数の実施形態として実現することができる。
【0040】
[発明の実施の形態1]
この発明の実施の形態1について、図1図3を用いて説明する。
【0041】
図1は、この発明の実施の形態1に係る極薄鋼板の製造方法1の流れを示す図である。この製造方法1は、真空溶解工程P1、急冷多結晶素材形成工程P2、延伸工程P3、極薄加工工程P4,P5及び真空焼鈍工程P6を含んでいる。
【0042】
真空溶解工程P1では、鉄に重量割合6.5%の珪素が含有されている原材料が、誘導加熱により、真空溶解される。
【0043】
次の急冷多結晶素材形成工程P2では、真空溶解工程P1で溶解された原材料が、単ロール急冷法により急冷され、多結晶構造を有する板厚10~20μmの板状の多結晶素材14が形成される。単ロール急冷法は、急冷法の一種である。
【0044】
図2(a)は、単ロール急冷法を示す概略図である。誘導加熱により1500℃程度に加熱され、溶解された溶融金属である溶湯10が、ガス圧によってノズル11から、銅や鋼のロール12に吹き付けられる。このロール12の円筒面は平坦になっており、また、このロール12は、分速3000~5000回転で回転しているため、回転するロール12に吹き付けられた溶湯10は、急速に冷却されて凝固し、板状に形成される。この冷却速度は、秒速10000℃程度である。この作製方法を単ロール急冷法という。
【0045】
単ロール急冷法は、通常、アモルファスの薄板を製造するために用いられるが、本実施形態1のように、珪素の含有率6.5%の鉄を溶解した溶湯10を急冷し凝固させると、内部組織が、アモルファスでなく多結晶になる。アモルファスは、極めて加工性が悪く、圧延できないが、多結晶素材14とすることにより、後段の工程で、圧延による塑性加工を行うことができる。また、この単ロール急冷法により形成された多結晶素材14の結晶粒径が、30μm以下と小さいことによっても、圧延加工ができるようになっている。一般的に、珪素含有率6.5%の珪素鋼の結晶粒径が100μm以上であると、圧延不可能となる。
【0046】
なお、単ロール急冷法に代えて、図2(b)に概略図を示す双ロール急冷法を用いることもできる。双ロール急冷法は、2個の対向する円筒面が平坦の回転ロール16の間に、溶湯10を噴射することにより、溶湯10が急速冷却され、板状に形成される作製方法である。双ロール急冷法は、形成された板状の多結晶素材14を巻き取ることができるという利点がある。双ロール急冷法も、急冷法の一種である。
【0047】
次の図1に示す延伸工程P3では、急冷多結晶素材形成工程P2で形成された板状の多結晶素材14が、600~700℃の温間圧延により、板厚10μm程度の延伸板材24に形成される。
【0048】
図3(a)は、延伸工程P3の温間圧延を示す概略図である。ボビン20に巻き付けられた多結晶素材14が、加熱装置21内で600~700℃に加熱され、加熱された多結晶素材14が圧延機22の圧延ロール23で圧延される。加熱装置21内では、600~700℃に保持された加熱ロール19が、多結晶素材14に接触して熱を伝えるようになっている。
【0049】
ここで、圧延される多結晶素材14の板厚は、10~20μmと薄いため、圧延機22の圧延ロール23に熱を奪われて、多結晶素材14の温度が下がり、600~700℃に加熱した状態での圧延が困難になることも想定される。この問題を回避するために、圧延機22の圧延ロール23の温度を、600~700℃の温間圧延温度に保持して圧延を行うようにしてもよい。
【0050】
次の図1に示す極薄加工工程P4,P5では、延伸工程P3で形成された延伸板材24が600~700℃で真空焼鈍され、真空で焼鈍された延伸板材24が、常温における冷間圧延により、板厚1~5μmの極薄板材32に塑性加工される。
【0051】
極薄加工工程P4の真空焼鈍は、延伸板材24の結晶粒制御のために行うものであり、結晶粒の大きさを加工しやすい大きさに調整する。図3(b)は極薄加工工程P4の真空焼鈍を示す概略図である。600~700℃の真空状態に保持された加熱装置28内で延伸板材24が焼鈍される。
【0052】
図3(c)は極薄加工工程P5の冷間圧延を示す概略図である。ボビン26に巻き付けられた延伸板材24が、圧延機30に送られ、常温で圧延される。
【0053】
次の図1に示す真空焼鈍工程P6では、極薄加工工程P4,P5で加工された極薄板材32が真空焼鈍される。真空焼鈍工程P6は、結晶粒の方向制御や圧延により生じた歪である圧延組織の解消のために行われる。この真空焼鈍工程P6の真空焼鈍によって、極薄板材32の磁気特性が改善する。図3(d)は真空焼鈍工程P6の真空焼鈍を示す概略図である。600~700℃の真空状態に保持された加熱装置35内で極薄板材32が焼鈍される。
【0054】
なお、この真空焼鈍工程P6における真空焼鈍の目的は、磁気特性を改善させるための結晶粒の大きさを大きく成長させることや、圧延の塑性加工により生じた応力を解放することであり、焼鈍の温度を1000~1200℃程度まで高めるようにしてもよい。
【0055】
また、高温下で焼鈍を行うと、表面が酸化鉄になるが、極薄板材32の板厚は、1~5μmと薄いため、極薄板材32の全体が酸化鉄にならないように焼鈍の条件を制御する必要がある。板厚1~5μmの極薄板材32の場合、表面の酸化鉄の層が、10nm(ナノメートル)以下になるように制御することが好ましい。
【0056】
以上のような図1に示す極薄鋼板の製造方法1により、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼からなる板厚1~5μmの極薄鋼板を製造することができる。
【0057】
上述のように珪素の含有率が6.5%の珪素鋼は、電気抵抗率が高く渦電流が抑制され、また、磁歪定数がほぼ0であり、応力感受性が低く、ヒステリシス損が低減されるという良好な磁気特性を示す。
【0058】
この極薄鋼板の製造方法1では、原材料の成分と、極薄鋼板の成分とが同一になっており、原材料の段階で、成分調整まで完了しているという特徴がある。
【0059】
次に、本発明の実施の形態1の効果を示す。
【0060】
本発明の実施の形態1によれば、急冷多結晶素材形成工程P2において、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を溶解したものを冷却して多結晶構造を有する多結晶素材14を形成する。アモルファスでなく、多結晶構造を有するため、その後に続く工程の塑性加工が可能になる。また、極薄加工工程P4,P5で加工される極薄板材32の厚さが20マイクロメートル以下であるため、高周波動作の変圧器やモータに使用される磁心の材料として使用することができる。
【0061】
また、本発明の実施の形態1によれば、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を使用することができる。珪素の含有率が6.5%の珪素鋼は、高強度、難加工性であり、割れてしまう現象を伴う材料であるが、この製造方法1を採用することで、極薄の板材に加工することができる。また、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を使用することにより、急冷多結晶素材形成工程P2において、急冷してもアモルファスにならず、多結晶構造を有する多結晶素材14を得ることができる。このため、その後に続く工程の塑性加工が可能になる。
【0062】
また、本発明の実施の形態1によれば、急冷多結晶素材形成工程P2において、単ロール急冷法を用いることで、板状の多結晶素材を安定して製造することができる。
【0063】
また、本発明の実施の形態1によれば、急冷多結晶素材形成工程P2で形成された多結晶素材14の結晶粒径が、30マイクロメートル以下であるため、難加工材料の珪素含有率6.5%の珪素鋼でも圧延などの塑性加工を行うことができる。
【0064】
また、本発明の実施の形態1によれば、多結晶素材14を温間圧延する圧延機22の圧延ロール23の温度を、温間圧延温度に保持して圧延を行うようにしてもよい。圧延ロール23の温度が低い場合には、多結晶素材14の熱が圧延ロール23に吸収され、多結晶素材14の温度が低下し、硬くなり塑性加工が困難になることも予想されるが、圧延ロール23の温度を、温間圧延温度に保持することにより、多結晶素材14の温度が低下することなく圧延加工を行うことができる。
【0065】
また、本発明の実施の形態1によれば、極薄鋼板は、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼である。この珪素鋼は、磁歪定数がほぼ0になり、応力感受性が低く、ヒステリシス損が低減される。
【0066】
[発明の実施の形態2]
次に、この発明の実施の形態2について、図4図7を用いて説明する。なお、上述の要素と同一又は対応する要素については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0067】
図4は、この発明の実施の形態2に係る極薄鋼板の製造方法2の流れを示す図である。
【0068】
真空溶解工程P11では、鉄に重量割合6.5%の珪素が含有されている原材料が、誘導加熱により、真空溶解される。
【0069】
次の急冷多結晶素材形成工程P12では、真空溶解工程P11で溶解された原材料が、線状にされて急冷される急冷紡糸法により、多結晶構造を有する断面形状が略円形の線状の多結晶素材47に形成される。この多結晶素材47の略円形の断面形状の直径は、3mm程度であるが、この直径は、3mmに限らず、任意に設定可能である。急冷紡糸法は、急冷法の一種である。また、この急冷紡糸法により形成された多結晶素材47の結晶粒径は、30μm以下と小さく、難加工材料の珪素含有率6.5%の珪素鋼でも圧延などの塑性加工ができるようになっている。
【0070】
急冷紡糸法として、例えば、以下に示すような複数の方法がある。
【0071】
図5(a)は、急冷紡糸法の一例である押出法を示す概略図である。押出法では、加圧容器44内部のるつぼ43の中の金属が、誘導コイル41による誘導加熱によって溶解される。加圧容器44には、流体流入口40からガスが送り込まれ、溶融金属である溶湯42が、ガスの圧力により、紡糸口45から押し出される。紡糸口45から押し出された溶湯42は、冷却容器46内で、流体流入口39から送り込まれるガスにより冷却され、凝固して線状の多結晶素材47に形成される。この線状の多結晶素材47は、巻取り器48によって、ボビン49に巻き取られるようになっている。
【0072】
図5(b)は急冷紡糸法の一例である回転液中紡糸法を示す概略図である。回転液中紡糸法では、回転するロール53の遠心力により、ロール内面54に水が張られ、そこに、ノズル52から溶湯51が押し出される。溶湯51は、ロール内面54に張られた水により、急冷され凝固して線状の多結晶素材47が形成される。
【0073】
図6は、急冷紡糸法の一例である改良押出法を示す概略図である。改良押出法は、図5(a)に示した押出法とほぼ同様の構成を備えている。図5(a)に示した押出法との相違点は、冷却容器46内で流体流入口39から送り込まれる水55などの液体が循環しており、紡糸口45から押し出された溶湯42が、冷却容器46内の水55などの液体により急冷されることである。ガスで冷却する押出法に比較して、図6に示す改良押出法は、循環する水55などの液体により溶湯42が冷却されるため、冷却速度が速くなる。
【0074】
図7(a)は、急冷紡糸法の一例である単ロール紡糸法を示す概略図である。図2(a)に示した単ロール急冷法の構成に類似しているが、単ロール急冷法では、ロール12の円筒面が平坦であったのに対し、単ロール紡糸法に使用されるロール57は、図7(b)に示すように、ロール57円筒面にロール57の回転方向に沿う溝59が形成されている。誘導加熱により溶解された溶湯10が、ノズル11から、ロール57円筒面の溝59部に吹き付けられることにより、急冷され凝固して線状の多結晶素材47が形成される。
【0075】
図7(c)は、急冷紡糸法の一例である双ロール紡糸法を示す概略図である。図7(b)に示した円筒面にロール61の回転方向に沿う溝59が形成された2個のロール61を溝59の位置を合わせるように対向させ、回転させる。溶湯10が、ロール61円筒面の溝59部に吹き付けられることにより、急冷され凝固して線状の多結晶素材47が形成される。
【0076】
次の図4に示す延伸工程P13では、急冷多結晶素材形成工程P12で形成された線状の多結晶素材47が、600~700℃の温間圧延により塑性加工され、板厚20~30μm程度の板状の延伸板材に形成される。
【0077】
次の極薄加工工程P14,P15では、延伸工程P13で形成された延伸板材が600~700℃で真空焼鈍され、真空で焼鈍された延伸板材が、常温で行われる冷間圧延により、板厚1~3μmの極薄板材に塑性加工される。
【0078】
極薄加工工程P14の真空焼鈍は、延伸板材の結晶粒制御のために行うものであり、結晶粒の大きさを加工しやすい大きさに調整する。また、この真空焼鈍により、延伸板材の加工硬化も取り除かれる。
【0079】
次の真空焼鈍工程P16では、極薄加工工程P14,P15で加工された極薄板材が600~700℃で真空焼鈍される。真空焼鈍工程P16は、結晶粒の方向制御や圧延により生じた歪である圧延組織の解消のために行われる磁気焼鈍である。この真空焼鈍工程P16の真空焼鈍によって、極薄板材の磁気特性が改善する。なお、上述したように、真空焼鈍の温度を1000~1200℃程度まで高めるようにしてもよい。
【0080】
以上のような図4に示す極薄鋼板の製造方法2により、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼からなる板厚1~3μmの極薄鋼板を製造することができる。
【0081】
本発明の実施の形態2によれば、上述の実施の形態1の効果と、ほぼ同様の効果が得られる。
【0082】
また、本発明の実施の形態2によれば、急冷多結晶素材形成工程P12において、急冷紡糸法を用いることで、線状の多結晶素材47を安定して製造することができる。
【0083】
[発明の実施の形態3]
次に、この発明の実施の形態3について、図8を用いて説明する。
【0084】
図8は、この発明の実施の形態3に係る極薄鋼板の製造方法3の流れを示す図である。
【0085】
真空溶解工程P21では、鉄に重量割合6.5%の珪素が含有されている原材料が、誘導加熱により、真空溶解される。
【0086】
次の急冷多結晶素材形成工程P22では、真空溶解工程P11で溶解された原材料が、線状にされて急冷される急冷紡糸法により、多結晶構造を有する断面形状が略円形の線状の多結晶素材に形成される。この多結晶素材の略円形の断面形状の直径は、3mm程度であるが、この直径は、3mmに限らず、任意に設定可能である。急冷紡糸法としては、上述の押出法(図5(a)参照)、回転液中紡糸法(図5(b)参照)、改良押出法(図6参照)、単ロール紡糸法(図7(a)参照)及び双ロール紡糸法(図7(c)参照)などを用いることができる。
【0087】
次の延伸工程P23では、急冷多結晶素材形成工程P22で形成された断面形状が略円形の線状の多結晶素材が、この多結晶素材の断面積を縮小させる500℃での温間伸線により塑性加工され、断面形状が略円形の線状の延伸板材に形成される。
【0088】
ここで、上記の説明では、断面形状が略円形の線状の「延伸板材」という表現を使用しているが、この「延伸板材」との表現は、他の実施形態と平仄を合わせるためのものであり、本実施形態3においては、「延伸板材」を「延伸線材」と読み替えて認識していただきたい。
【0089】
多結晶素材の略円形の断面形状の直径が3mmであるとすると、この500℃における1回の温間伸線により、延伸板材の略円形の断面形状の直径が1.2mmになる。多結晶素材の断面積と延伸板材の断面積とを比較すると、多結晶素材の断面積の減少割合は、84%程度になる。このように、500℃の環境で、円形断面から円形断面に断面積を減少するように温間伸線を行うと、断面全体に圧縮応力が作用し、この圧縮により再結晶が生じ、結晶粒の直径が1μm程度の微細粒となる。結晶粒径が1μm程度の結晶は、熱処理を施さなくても、伸びやすいという性質を持っており、焼鈍せずに圧延することができ、工程の短縮になる。
【0090】
次の極薄加工工程P24では、延伸工程P23で形成された断面形状が略円形の線状の延伸板材が、常温で行われる冷間圧延により、板厚1~3μmの板状の極薄板材に塑性加工される。
【0091】
次の真空焼鈍工程P25では、極薄加工工程P24で加工された極薄板材が600~700℃で真空焼鈍され、磁気特性が改善される。
【0092】
以上のような図8に示す極薄鋼板の製造方法3により、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼からなる板厚1~3μmの極薄鋼板を製造することができる。
【0093】
本発明の実施の形態3によれば、上述の実施形態1の効果と、ほぼ同様の効果が得られる。
【0094】
また、本発明の実施の形態3によれば、急冷多結晶素材形成工程P22において、急冷紡糸法を用いることで、線状の多結晶素材を安定して製造することができる。また、延伸工程P23において、断面形状が略円形の線状の多結晶素材が、多結晶素材の断面積を縮小させる500℃での温間伸線により、断面形状が略円形の線状の延伸板材に塑性加工される。線状の多結晶素材から線状の延伸板材に温間伸線することにより、延伸板材の内部組織に結晶粒径が1μm程度の微細粒が生じ、加工性が改善する。
【0095】
[発明の実施の形態4]
次に、この発明の実施の形態4について、図9図10を用いて説明する。
【0096】
図9は、この発明の実施の形態4に係る極薄鋼板の製造方法4の流れを示す図である。
【0097】
真空溶解工程P31では、鉄に重量割合6.5%の珪素が含有されている原材料が、誘導加熱により、真空溶解される。
【0098】
次の急冷多結晶素材形成工程P32では、真空溶解工程P31で溶解された原材料が、噴霧されて急冷される急冷アトマイズ法により、粉体70にされ、この粉体70が回転する2個のロール72の対向する円筒面間で押し固められて、多結晶構造を有する板厚10~20μmの板状の多結晶素材74に形成される。急冷アトマイズ法は、急冷法の一種である。
【0099】
図10は、急冷多結晶素材形成工程P32の急冷アトマイズ法と双ロール法とを組み合わせた方法を示す概略図である。この図の上部が急冷アトマイズ法を用いる急冷アトマイズ装置80を示す部分であり、下部が双ロール法を用いる双ロール装置81を示す部分である。急冷アトマイズ法では、流体流入口64から送り込まれる高圧水又は高圧窒素ガスによって、溶湯65がアトマイズノズル67からアトマイズチャンバ68内に噴霧される。噴霧された霧状溶湯69は、アトマイズチャンバ68内で急冷され、粉体70となる。この粉体70は、下部に配置されている回転する2個のロール72の対向する平坦な円筒面間で押し固められて、板状の多結晶素材74に形成される。
【0100】
急冷アトマイズ法によって得られる多結晶素材74は、結晶粒径が0.5μm程度のサブミクロンの大きさになる。このような、結晶粒径が1μmよりも小さい組織は、超塑性加工組織と呼ばれ、加工性が極めて良好である。このため、焼鈍などの熱処理をせずに、次工程の加工を行うことができる。
【0101】
次の図9に示す延伸工程P33と極薄加工工程P33とは、同一の工程になっており、急冷多結晶素材形成工程P32で形成された板状の多結晶素材74が、常温で行われる冷間圧延により、板厚1~3μmの極薄板材に塑性加工される。
【0102】
次の真空焼鈍工程P34では、延伸工程P33と極薄加工工程P33で加工された極薄板材が600~700℃で真空焼鈍され、磁気特性が改善される。
【0103】
以上のような図9に示す極薄鋼板の製造方法4により、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼からなる板厚1~3μmの極薄鋼板を製造することができる。
【0104】
本発明の実施の形態4によれば、上述の実施の形態1の効果と、ほぼ同様の効果が得られる。
【0105】
また、本発明の実施の形態4によれば、急冷多結晶素材形成工程P32において、急冷アトマイズ法を用いることで、多結晶素材74の内部組織に結晶粒径が0.5μm程度の微細粒が生じ、加工性が大きく改善する。
【0106】
[発明の実施の形態5]
次に、この発明の実施の形態5について、図11を用いて説明する。
【0107】
図11は、この発明の実施の形態5に係る極薄鋼板の製造方法5の流れを示す図である。
【0108】
真空溶解工程P41では、原材料である純鉄が、誘導加熱により、真空溶解される。
【0109】
次の急冷多結晶素材形成工程P42では、真空溶解工程P41で溶解された純鉄が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により急冷され、多結晶構造を有する板厚10~20μmの板状の多結晶素材が形成される。単ロール急冷法については、図2(a)を用いてすでに説明を行っている。純鉄を単ロール急冷法によって急冷すると、条件によっては、アモルファスになるため、多結晶構造を有する多結晶素材が得られるように条件を制御する必要がある。アモルファスは、極めて加工性が悪く、圧延できないが、多結晶素材にすることにより、後段の工程で、圧延による塑性加工を行うことができるようになる。
【0110】
なお、単ロール急冷法に代えて、図2(b)に示した双ロール急冷法を用いることもできる。
【0111】
次の図11に示す延伸工程P43と極薄加工工程P43とは、同一の工程になっており、急冷多結晶素材形成工程P42で形成された板状の多結晶素材が、常温における冷間圧延により、板厚1~3μmの極薄板材に塑性加工される。
【0112】
次の真空焼鈍工程P44,P45,P46では、延伸工程P43と極薄加工工程P43で加工された極薄板材の表面に化学気相成膜法(CVD法)により珪素元素が蒸着され(P44プロセス)、さらに、二酸化珪素が蒸着され(P45プロセス)、その後、真空焼鈍されることにより、表面に蒸着された珪素元素が、極薄板材の内部に拡散する(P46プロセス)。この真空拡散焼鈍(P46プロセス)によって、純鉄に珪素を浸珪して、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼からなる板厚1~3μmの極薄鋼板を製造する。また、この真空拡散焼鈍(P46プロセス)では、珪素元素だけが極薄板材の内部に拡散し、二酸化珪素の層はそのまま残り、絶縁被膜として作用する。
【0113】
なお、極薄板材の表面には、珪素元素のみを蒸着し、真空拡散焼鈍を適切に制御することにより、極薄板材の表面側(内側)の珪素元素が極薄板材内部に拡散し、大気側(外側)の珪素元素が酸化珪素の絶縁層を形成するようにしてもよい。
【0114】
本発明の実施の形態5の効果を以下に示す。
【0115】
本発明の実施の形態5によれば、純鉄を原材料として用い、急冷多結晶素材形成工程P42において、溶解した純鉄を単ロール急冷法によって急冷するが、アモルファスでなく、多結晶構造を有する多結晶素材を得るようになっている。このため、その後に続く工程の塑性加工が可能になる。また、真空焼鈍工程P44,P45,P46において、極薄板材の表面に珪素元素が蒸着され、さらに、酸化珪素が蒸着され、その後、真空焼鈍されることにより、表面に蒸着された珪素元素が、極薄板材の内部に拡散される。極薄板材の表面に蒸着されている珪素元素の層と、酸化珪素の層との二層になった蒸着層について、真空焼鈍により珪素元素のみを鉄に拡散させ、酸化珪素の層はそのまま残り絶縁被膜となる。このため、絶縁被膜塗布工程を省くことができる。
【0116】
[発明の実施の形態6]
次に、この発明の実施の形態6について、図12を用いて説明する。
【0117】
図12は、この発明の実施の形態6に係る極薄鋼板の製造方法6の流れを示す図である。
【0118】
真空溶解工程P51では、鉄に重量割合6.5%の珪素が含有されている原材料が、誘導加熱により、真空溶解される。
【0119】
次の急冷多結晶素材形成工程P52、延伸工程P52及び極薄加工工程P52は、同一の工程になっており、真空溶解工程P51で溶解された原材料が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により急冷され、多結晶構造を有する板厚10~20μmの板状の極薄板材が形成される。単ロール急冷法については、図2(a)を用いてすでに説明を行っている。
【0120】
次の真空焼鈍工程P53では、極薄板材が真空焼鈍され、磁気特性が改善される。
【0121】
以上のようなこの極薄鋼板の製造方法6により、珪素の含有率が6.5%の珪素鋼からなる板厚10~20μmの極薄鋼板を製造することができる。
【0122】
本発明の実施の形態6によれば、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を使用することができる。また、鉄に6.5%の珪素が含有する原材料を使用することにより、急冷多結晶素材形成工程P52、延伸工程P52及び極薄加工工程P52において、急冷してもアモルファスにならず、多結晶構造を有する極薄板材を得ることができる。また、単ロール急冷法を用いることで、極薄板材を安定して製造することができる。
【0123】
[発明の実施の形態7]
次に、この発明の実施の形態7について、図13を用いて説明する。
【0124】
図13は、この発明の実施の形態7に係る極薄鋼板の製造方法7の流れを示す図である。
【0125】
真空溶解工程P61では、原材料である純鉄が、誘導加熱により、真空溶解される。
【0126】
次の急冷多結晶素材形成工程P62、延伸工程P62、極薄加工工程P62は、同一の工程になっており、真空溶解工程P61で溶解された純鉄が、回転するロールに吹き付けられ急冷される単ロール急冷法により急冷され、多結晶構造を有する板厚10~20μmの板状の極薄板材が形成される。単ロール急冷法については、図2(a)を用いてすでに説明を行っている。純鉄を単ロール急冷法によって急冷すると、条件によっては、アモルファスになるため、多結晶構造を有する極薄板材が得られるように条件を制御する必要がある。
【0127】
次の真空焼鈍工程P63では、極薄板材が真空焼鈍され、磁気特性が改善される。
【0128】
本発明の実施の形態7によれば、純鉄を原材料として用い、急冷多結晶素材形成工程P62、延伸工程P62及び極薄加工工程P62において、溶解した純鉄を単ロール急冷法によって急冷するが、アモルファスでなく、多結晶構造を有する極薄板材を得るようになっている。
【符号の説明】
【0129】
1,2,3,4,5,6,7…極薄鋼板の製造方法、P1,P11,P21,P31,P41,P51,P61…真空溶解工程、P2,P12,P22,P32,P42,P52,P62…急冷多結晶素材形成工程、P3,P13,P23,P33,P43,P52,P62…延伸工程、P4,P5,P14,P15,P24,P33,P43,P52,P62…極薄加工工程、P6,P16,P25,P34,P44,P45,P46,P53,P63…真空焼鈍工程、14,47,74…多結晶素材、24…延伸板材、32…極薄板材、10,42,51,65…溶湯(溶融金属)、11,52…ノズル、12…ロール、16…回転ロール、20,26…ボビン、21…加熱装置、22,30…圧延機、23…圧延ロール、19…ロール、39,40…流体流入口、41…誘導コイル、43…るつぼ、44…加圧容器、45…紡糸口、46…冷却容器、48…巻取り器、49…ボビン、50…移動機構、53…ロール、54…ロール内面、55…水、57,61…ロール、59…溝、64…流体流入口、67…アトマイズノズル、68…アトマイズチャンバ、69…霧状溶湯、70…粉体、72…ロール、80…急冷アトマイズ装置、81…双ロール装置
図1
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