(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031155
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】プレス装置及びプレス装置を用いた加工対象物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/02 20060101AFI20230301BHJP
B21D 22/28 20060101ALI20230301BHJP
B21D 28/34 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B21D28/02 A
B21D22/28 E
B21D22/28 J
B21D22/28 K
B21D28/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136680
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】521374811
【氏名又は名称】株式会社ティエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】植原 正光
(72)【発明者】
【氏名】大原 茂樹
【テーマコード(参考)】
4E048
4E137
【Fターム(参考)】
4E048LA01
4E048LA10
4E048LA13
4E137AA13
4E137BB01
4E137CA09
4E137CA26
4E137EA01
4E137GA11
4E137GA17
4E137HA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、複数の種類のプレス加工を行う小型化されたプレス装置を提供する。
【解決手段】プレス装置1は、プレススライド4とプレスボルスター5を備え、プレススライド4は、一つの駆動装置によりプレスボルスター5に向かって移動可能でありかつプレスボルスター5はプレス装置1に設置されており、プレススライド4は、ブランクパンチ311と、絞りパンチと322、が取り付けられ、プレスボルスター5は、ブランクダイ312と、絞りダイ322と、が取り付けられており、プレススライド4が、プレスボルスター5に向かって移動し、ブランク加工と絞り加工とが一つの駆動装置により一動作で行われることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク加工と絞り加工とを行う、プレス装置において、
前記プレス装置は、プレススライドとプレスボルスターを備え、
前記プレススライドは、一つの駆動装置により前記プレスボルスターに向かって移動可能でありかつ前記プレスボルスターは前記プレス装置に設置されており、
前記プレススライドは、ブランクパンチと、絞りパンチと、が取り付けられ、
前記プレスボルスターは、ブランクダイと、絞りダイと、が取り付けられており、
前記プレススライドが、前記プレスボルスターに向かって移動し、前記ブランクパンチと前記ブランクダイとで初期加工対象物がブランク加工され、
前記ブランク加工の後に、前記絞りパンチと前記絞りダイとでブランク加工後の加工対象物が絞り加工され、
前記ブランク加工と前記絞り加工とが前記一つの駆動装置により一動作で行われることを特徴とする、プレス装置。
【請求項2】
前記プレス装置は、第1支持手段と第2支持手段とを有し、
前記プレススライドと前記ブランクパンチとが前記第1支持手段とを介して取り付けられ、
前記プレススライドと前記絞りパンチとが前記第2支持手段とを介して取り付けられており、
前記ブランク加工の時において、前記第1支持手段は、前記一つの駆動装置からの圧力を受けて前記初期加工対象物を打ち抜いて切断する力を前記ブランクパンチに与え、
前記絞り加工の時において、前記第2支持手段は、前記一つの駆動装置からの圧力を受けて前記ブランク加工後の加工対象物の全体を前記絞りダイの内部に押し込む力を前記絞りパンチに与えることを特徴とする、請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記プレス装置は、ピアス加工を行うことをさらに備え、
前記プレススライドは、ピアスパンチが取り付けられ、
前記プレスボルスターは、ピアスダイが取り付けられており、
前記絞り加工後に、前記ピアスパンチと前記ピアスダイとで前記絞り加工後の加工対象物がピアス加工され、
前記ブランク加工と前記絞り加工と前記ピアス加工とが前記一つの駆動装置により一動作で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記ブランク加工された加工対象物は、前記ブランクパンチと前記ピアスダイの先端部分とで挟まれて保持された状態で、前記絞りダイに設置されることを特徴とする、請求項3に記載のプレス装置。
【請求項5】
ブランク加工と絞り加工とを行う、プレス装置を用いた加工対象物の製造方法において、
前記プレス装置は、プレススライドとプレスボルスターを備え、
前記プレススライドは、一つの駆動装置により前記プレスボルスターに向かって移動可能でありかつ前記プレスボルスターは前記プレス装置に設置されており、
前記プレススライドは、ブランクパンチと、絞りパンチと、が取り付けられ、
前記プレスボルスターは、ブランクダイと、絞りダイと、が取り付けられており、
前記プレススライドが、前記プレスボルスターに向かって移動し、前記ブランクパンチと前記ブランクダイとで初期加工対象物がブランク加工される、ブランク工程と、
前記ブランク工程の後に、前記絞りパンチと前記絞りダイとでブランク加工後の加工対象物が絞り加工される、絞り工程と、を有し、
前記ブランク工程と前記絞り工程とが前記一つの駆動装置により一動作で行われることを特徴とする、プレス装置を用いた加工対象物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置及びプレス装置を用いた加工対象物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の板材に金型を押し付け、金属の板材を切断したり、曲げたりして目的の加工を行うプレス装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、上型又は下型の一方または両方を同心状の多重シリンダによって独立して作動される複数の金型を用いて、多重シリンダの一連の動きによって、金属材料に対してブランク加工、絞り加工及びピアス加工を行うプレス装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のプレス装置では、金型を金属材料に押し付ける動力源として、独立して作動する複数のシリンダを用いているため、シリンダの制御が複雑になり、また、複数のシリンダを用いていることからプレス装置全体が大きくなる問題点がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、複数の種類のプレス加工を行う小型化されたプレス装置及びプレス装置を用いた加工対象物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、一つの駆動装置により一動作で複数の種類のプレス加工を行うことができることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のプレス装置及びプレス装置を用いた加工対象物の製造方法である。
【0008】
上記課題を解決するための、本発明のプレス装置は、ブランク加工と絞り加工とを行う、プレス装置において、プレス装置は、プレススライドとプレスボルスターを備え、プレススライドは、一つの駆動装置によりプレスボルスターに向かって移動可能でありかつプレスボルスターはプレス装置に設置されており、プレススライドは、ブランクパンチと、絞りパンチと、が取り付けられ、プレスボルスターは、ブランクダイと、絞りダイと、が取り付けられており、プレススライドが、プレスボルスターに向かって移動し、ブランクパンチとブランクダイとで初期加工対象物がブランク加工され、ブランク加工の後に、絞りパンチと絞りダイとでブランク加工後の加工対象物が絞り加工され、ブランク加工と絞り加工とが一つの駆動装置により一動作で行われることを特徴とする。
この特徴によれば、プレス装置の駆動装置が一つであることから、構造が簡単で小型化されたプレス装置とすることができ、また、ブランク加工と絞り加工を一動作で行われることから、短時間で複数の工程を行うことができ、作業効率よくプレス加工を行うことができる。
【0009】
さらに、本発明のプレス装置の一実施態様としては、プレス装置は、プレス装置は、第1支持手段と第2支持手段とを有し、プレススライドとブランクパンチとが第1支持手段とを介して取り付けられ、プレススライドと絞りパンチとが第2支持手段とを介して取り付けられており、ブランク加工の時において、第1支持手段は、一つの駆動装置からの圧力を受けて加工対象物を打ち抜く力をブランクパンチに与え、絞り加工の時において、第2支持手段は、一つの駆動装置からの圧力を受けてブランク加工後の加工対象物の全体を絞りダイの内部に押し込む力を絞りパンチに与えることを特徴とする。
【0010】
この特徴によれば、第1支持手段が、初期加工対象物を打ち抜く力をブランクパンチに与え、第2支持手段が、ブランク加工後の加工対象物の全体を、絞りダイの内部に押し込む力を絞りパンチに加えることにより、一動作で効率よく複数のプレス加工ができ、フランジのない、絞り加工がされた加工対象物を製造することができる。
【0011】
さらに、本発明のプレス装置の一実施態様としては、プレス装置は、ピアス加工を行うことをさらに備え、プレススライドは、ピアスパンチが取り付けられ、プレスボルスターは、ピアスダイが取り付けられており、絞り加工の後に、ピアスパンチとピアスダイとで絞り加工後の加工対象物がピアス加工され、ブランク加工と絞り加工とピアス加工とが一つの駆動装置により一動作で行われることを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、ブランク加工と絞り加工とピアス加工とが一つの駆動装置により一動作で行われることにより、一動作で効率よく複数のプレス加工ができ、フランジのない絞り加工がされかつ絞り加工後の底部に貫通孔が設けられた加工対象物を製造することができる。
【0013】
さらに、本発明のプレス装置の一実施態様としては、ブランク加工された加工対象物は、ブランクパンチとピアスダイの先端部分とで挟まれて保持された状態で、絞りダイに設置されることを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、ブランク加工された加工対象物が、ブランクパンチとピアスダイの先端部分で保持されていることから、ブランク加工後の加工対象物が絞り加工の際に配置すべき適正な位置からずれることを抑制できる効果がある。
【0015】
さらに、本発明のプレス装置を用いた加工対象物の製造方法の一実施態様としては、ブランク加工と絞り加工とを行う、プレス装置を用いた加工対象物の製造方法において、プレス装置は、プレススライドとプレスボルスターを備え、プレススライドは、一つの駆動装置によりプレスボルスターに向かって移動可能でありかつプレスボルスターはプレス装置に設置されており、プレススライドは、ブランクパンチと、絞りパンチと、が取り付けられ、プレスボルスターは、ブランクダイと、絞りダイと、が取り付けられており、プレススライドが、プレスボルスターに向かって移動し、ブランクパンチとブランクダイとで初期加工対象物がブランク加工される、ブランク工程と、ブランク工程の後に、絞りパンチと絞りダイとでブランク加工後の加工対象物が絞り加工される、絞り工程と、を有し、ブランク工程と絞り工程とが一つの駆動装置により一動作で行われることを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、プレス装置の駆動装置が一つであることから、構造が簡単で小型化されたプレス装置とすることができ、また、ブランク加工と絞り加工を一動作で行われることから、短時間で2つの工程を行うことができることから、作業効率のよいプレス装置を用いた加工対象物の製造方法とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のプレス加工を行う小型化されたプレス装置及びプレス装置を用いた加工対象物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施態様におけるプレス装置に加工対象物が設置された状態を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様におけるプレス装置で加工対象物をブランク加工する際の状態を示す概略斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様におけるプレス装置でブランク加工が完了した状態を示す概略斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様におけるプレス装置で絞り加工が完了した状態を示す概略斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施態様におけるプレス装置でピアス加工が完了した状態を示す概略斜視図である。
【
図6】本発明の第1の実施態様におけるプレス装置で一連の加工が完了し、加工完成品が、絞りダイから押し出された状態を示す概略斜視図である。
【
図7】(A1)は、ブランク加工後の加工対象品の状態の概略平面図である。(A2)は、(A1)のイ-イにおける概略断面図である。(B1)は、絞り加工後の加工対象品の状態の概略平面図である。(B2)は、(B1)のロ-ロにおける概略断面図である。(C1)は、ピアス加工後の加工対象品の状態の概略平面図である。(C2)は、(C1)のハ-ハにおける概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のプレス装置は、プレススライド及びプレスボルスターに複数種類の加工用の金型部材が設置され、一つの駆動装置によりプレススライドをプレスボルスターに向かって移動させ、一動作で複数種類の金型部材による異なる種類のプレス加工を順番に行うことを特徴とする。複数種類の加工用の金型部材は、具体的には、ブランク加工金型、絞り加工金型、ピアス加工金型が該当する。
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るプレス装置の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明に係るプレス装置を用いた加工対象物の製造方法の説明については、本発明に係るプレス装置の構成及び動作に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載するプレス装置及びプレス装置を用いた加工対象物の製造方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0021】
[プレス装置]
図1は、本発明の実施態様におけるプレス装置1の構造を示す概略説明図である。
本発明の実施態様に係るプレス装置1は、板状の金属体のような初期加工対象物2に金型3を押し当てて、初期加工対象物2を加工するものである。
本実施態様におけるプレス装置1は、金型3と、プレススライド4と、プレスボルスター5を備える。本発明のプレス装置1は、一つの駆動装置で一つのプレススライド4をプレスボルスター5の側に移動させてプレス加工を行うものであり、具体的には単動クランクプレスとよばれるプレス装置等が例示できる。
また、金型3は、プレススライド4とプレスボルスター5とに設置される。
【0022】
〔金型〕
金型3は、一対の加工具道具であり、ブランク加工金型31と絞り加工金型32とピアス加工金型33を備える。
【0023】
〈ブランク加工金型〉
ブランク加工金型31は、初期加工対象物2を目的の大きさや形に切断するための金型部材である。ブランク加工金型31は、ブランクパンチ311とブランクダイ312とを備え、ブランクパンチ311とブランクダイ312とで一対の加工具道具となる。
ブランクパンチ311とブランクダイ312は、初期加工対象物2を挟み込み、打ち抜くことにより、初期加工対象物2から、ブランク加工後の加工対象物21が形成される。
ブランクパンチ311は、後述する第1支持手段313を介してプレススライド4に設置され、ブランクダイ312は、プレスボルスター5に設置される。
【0024】
〈絞り加工金型〉
絞り加工金型32は、ブランク加工のされた板状の金属である、ブランク加工後の加工対象物21に圧力を加えて変形させ、底部324(
図6、
図7を参照)を有する筒体の形状に加工するための金型部材である。絞り加工金型32は、絞りパンチ321と絞りダイ322とを備え、絞りパンチ321と絞りダイ322とで一対の加工道具となる。
絞りパンチ321と絞りダイ322に、ブランク加工後の加工対象物21が挟み込まれて、変形させられ、目的の形状に加工される。絞りパンチ321は、駆動装置の圧力を受けて、ブランク加工後の加工対象物21の全体を絞りダイ322の内部に押し込む。ブランク加工後の加工対象物21は、フランジのない絞り加工のされた底部324を有する筒体である、絞り加工後の加工対象物22となる。
絞りパンチ321は、後述する第2支持手段323を介してプレススライド4に設置され、絞りダイ322は、プレスボルスター5に設置される。
【0025】
〈ピアス加工金型〉
ピアス加工金型33は、絞り加工後の加工対象物22に圧力を加えて、絞り加工後の加工対象物22の底部324の中央部分に貫通孔335(
図6、
図7参照)を設ける加工をするための金型部材である。ピアス加工金型33は、ピアスパンチ331とピアスダイ332とを備え、ピアスパンチ331とピアスダイ332とで一対の加工道具となる。
ピアスパンチ331とピアスダイ332に、絞り加工後の加工対象物22の底部324が挟み込まれ、貫通孔335が設けられることにより、絞り加工後の加工対象物22は、ピアス加工後の加工対象物23(加工完了品)となり、プレス加工が完成する。
ピアスパンチ331は、プレススライド4に設置され、ピアスダイ332は、後述する第3支持手段333を介してプレスボルスター5に設置される。
【0026】
≪第1支持手段≫
第1支持手段313は、弾性力を有する部材である。プレス装置1がプレス加工を行う際に、最初にブランク加工金型31で、初期加工対象物2を加工するために、第1支持手段313がブランクパンチ311を、プレスボルスター5の側に弾性力を与えて保持する。
第1支持手段313は、ガススプリングやコイルスプリングのような弾性体が使用できる。プレス装置1の上下方向の小型化の観点から、ガススプリングを使用することが好ましい。
第1支持手段313は、プレス加工がされる際に、ブランクパンチ311がプレススライド4ごとプレスボルスター5の側に移動した際に、プレススライド4とブランクパンチ311の間で圧縮される。第1支持手段313は、ブランクパンチ311に対して、次の加工工程である、絞り加工が開始される前に初期加工対象物2を打ち抜いて切断する力を与えることができるものが使用される。
【0027】
≪第2支持手段≫
第2支持手段323は、弾性力を有する部材である。プレス装置1がプレス加工を行う際に、絞り加工金型32で、ブランク加工後の加工対象物21を加工するために、第2支持手段323が絞りパンチ321を、プレスボルスター5の側に弾性力を与えて保持する。
第2支持手段323は、ガススプリングやコイルスプリングのような弾性体が使用できる。プレス装置1の上下方向の小型化の観点から、ガススプリングを使用することが好ましい。
第2支持手段323は、プレス加工がされる際に、絞りパンチ321がプレススライド4ごとプレスボルスター5の側に移動した際に、プレススライド4と絞りパンチ321との間で圧縮される。第2支持手段323は、絞りパンチ321に対して、次の加工工程である、ピアス加工が開始される前にブランク加工後の加工対象物21の全体を、絞りダイ322の内部へ押し込む力を与え、目的の形状に変形させることができるものが使用される。
【0028】
≪第3支持手段≫
第3支持手段333は、弾性力を有する部材である。第3支持手段333は、プレス装置1がプレス加工を行う際に、ピアスダイ332をプレススライド4の側に弾性力を与えて保持する。
第3支持手段333は、ガススプリングやコイルスプリングのような弾性体が使用できる。プレス装置1の上下方向の小型化の観点から、ガススプリングを使用することが好ましい。
第3支持手段333は、プレス加工がされる際に、ピアスダイ332の先端部分334がブランクダイ312よりも上側に突出しない位置で停止しており、ブランク加工後の加工対象物21を、下側から支える。言い換えると、ブランク加工後の加工対象物21は、ブランクパンチ311とピアスダイ332の先端部分334とで挟まれて保持された状態で絞りダイ322に設置される。このような構造とすることで、ブランク加工後の加工対象物21が絞り加工の際に配置すべき適正な位置からずれることを抑制できる効果がある。
【0029】
第3支持手段333を介して設置されたピアスダイ332は、第2支持手段323を介して設置された絞りパンチ321からの圧力を受けてプレスボルスター5の側に移動することができる。つまり、第3支持手段333は、絞りパンチ321が絞りダイ322の内部にブランク加工後の加工対象物21の全体を押し込むことが可能な部材が使用され、絞り加工中のブランク加工後の加工対象物21をピアスダイ332の先端部分334が下側から支える力をピアスダイ332に与える。
また、第3支持手段333は、一動作のプレス加工の完了後、プレススライド4が上に移動(上支点)させられた際に、加工されたフランジのないピアス加工後の加工対象物23(プレス加工完成品)を押し上げ、プレス装置1から取り出しやすくする。
【0030】
〔プレス装置の動作〕
以下、
図1~
図6を参照し、本実施態様のプレス装置1で初期加工対象物2を加工する手順について説明する。
【0031】
図1に示すように、プレス装置1のプレススライド4がプレスボルスター5から離れた状態(プレススライド4の上支点)において、プレスボルスター5のブランクダイ312の上面に初期加工対象物2が加工配置される。この工程を加工対象物配置工程とする。
【0032】
次にプレス装置1の駆動装置が動作し、
図2及び
図3に示すように、プレススライド4が上支点からプレスボルスター5の方に移動させられて、ブランク加工金型31での加工が行われる。初期加工対象物2がブランクパンチ311とブランクダイ312との間に挟み込まれ、第1支持手段313が圧縮され、初期加工対象物2を打ち抜く力がブランクパンチ311に加えられる。
このように、プレススライド4が、プレスボルスター5に向かって移動し、ブランクパンチ311とブランクダイ312とで初期加工対象物2がブランク加工される工程をブランク工程とする。
【0033】
なお、初期加工対象物2が打ち抜かれる前に、初期加工対象物2がブランクパンチ311とピアスダイ332とので挟みこまれた状態となり、その状態で、初期加工対象物2が打ち抜かれて切断され、ブランク加工後の加工対象物21となる。この工程をブランク保持工程とする。
【0034】
次に、ブランク加工後の加工対象物21が、ブランクパンチ311とピアスダイ332とで挟みこまれた状態を維持したまま、ブランクパンチ311がプレススライド4ごと下側に移動させられ、ブランクダイ312よりも下側に配置された絞りダイ322の設置位置に配置される。この工程を、絞り加工対象物配置工程とする。
このように、ブランクパンチ311とピアスダイ332とで挟みこまれた状態で、絞りダイ322の設置位置に配置できることから、正確な位置にブランク加工後の加工対象物21を配置できる。
なお、絞り加工対象物配置工程の後、図示しないストッパーにより、ブランクパンチ311の下側への移動が規制される。
【0035】
次に
図4に示すように、ブランク加工後の加工対象物21に対し、絞り加工金型32での加工が行われる。プレス装置1の駆動装置によりプレススライド4がさらにプレスボルスター5の方に移動する。ブランク加工後の加工対象物21が絞りパンチ321と絞りダイ322との間に挟み込まれ、第2支持手段323が圧縮されてブランク加工後の加工対象物21の全体を絞りダイ322の内部に押し込む力を絞りパンチ321に与える。
このように、ブランク工程の後に、絞りパンチ321と絞りダイ322とでブランク加工後の加工対象物21が絞り加工される工程を、絞り工程とする。
【0036】
ブランク加工後の加工対象物21の全体が、絞りダイ322の内部に押し込まれることから、フランジのない底部324を有する筒状の、絞り加工後の加工対象物22が形成される。
【0037】
なお、絞りパンチ321が、ブランク加工後の加工対象物21の全体を絞りダイ322の内部に押し込むにしたがって、ピアスダイ332が下方に移動する。また、絞り加工金型32による加工中、図示しないストッパーにより、絞りパンチ321の下側への移動が規制される。
また、絞り工程中にブランクパンチ311が停止しているのは、第1支持手段313が、第1支持手段313のストロークの範囲内で駆動装置の圧力を吸収しているためである。
【0038】
次に、
図5に示すように、絞り加工後の加工対象物22に対し、ピアス加工金型33での加工が行われる。プレス装置1の駆動装置によりプレススライド4がさらにプレスボルスター5の方に移動する。絞り加工後の加工対象物22がピアスパンチ331とピアスダイ332との間に挟み込まれ、プレススライド4が絞り加工後の加工対象物22の底部324に貫通孔335を設けることができる力をピアスパンチ331に与える。このとき、ピアスダイ332は、図示しないストッパーにより、下方への移動が規制された状態となる。
このように、絞り加工後に、ピアスパンチ331とピアスダイ332とで絞り加工後の加工対象物22がピアス加工される工程を、ピアス工程とする。プレススライド4が下支点に位置することで、ピアスパンチ331は、絞り加工後の加工対象物22の底部324を打ち抜いた場所に位置する状態となる。
なお、ピアス工程中にブランクパンチ311及び絞りパンチ321が停止しているのは、第1支持手段313及び第2支持手段323が第1支持手段313及び第2支持手段323のストロークの範囲内で駆動装置の圧力を吸収しているためである。
【0039】
そして、ピアス加工後の加工対象物23は、底部324に貫通孔335を有する状態となり、プレス加工完成品となり、プレス装置1での加工が完了する。
以上のように、一連の動作でブランク加工、絞り加工及びピアス加工が完了する。
【0040】
その後、
図6に示すように、プレス装置1の駆動装置によりプレススライド4が下支点から上支点に移動させられることで、ピアスパンチ331とピアスダイ332とが離れ、次に絞りパンチ321と絞りダイ322とが離れ、さらにブランクパンチ311とブランクダイ312とが離れる。よって、プレススライド4が下支点から上支点に移動させられるに伴い、圧縮された第3支持手段が、ピアスダイ332を上方向に押し上げることで、プレス加工完成品が絞りダイ322から押し上げられ、プレス装置1から取り出しやすい状態となる。
【0041】
本実施態様では、初期加工対象物2を、ブランクダイ312の上面に初期加工対象物2が配置され加工される場合を例示して説明したが、初期加工対象物2は、予めブランク加工しやすい状態に切り取られた材料でもよく、また、レベラーフィーダーと呼ばれる、帯状の金属板が巻き取られた材料(コイル材とも呼ばれる)のひずみを取り除き、平らな状態の金属板を送り出す装置から直接、プレス装置1に設置されるようにしてもよい。レベラーフィーダーから直接、プレス装置1に初期加工対象物2を設置する場合であれば、プレス装置1による一連の動作でのプレス加工を連続的に行うことができ、コイル材をプレス装置1に設置しやすい大きさに切断し、プレス装置1に設置するという工程を省略することができる。よって、効率のよくプレス加工作業を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のプレス装置は、一つの駆動装置でプレススライドを移動させて複数種類のプレス加工を一連の動作で行う場合に使用でき、特に、ブランク加工、絞り加工、ピアス加工を一連の動作で行うプレス装置へ好適に利用可能である。
また、本発明のプレス装置を用いた加工対象物の製造方法は、一つの駆動装置でプレススライドを移動させて複数種類のプレス加工を一連の動作で行う場合に使用でき、特に、ブランク加工、絞り加工、ピアス加工を一連の動作で行うプレス装置を用いた加工対象物の製造方法に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…プレス装置、2…初期加工対象物、21…ブランク加工後の加工対象物、22…絞り加工後の加工対象物、23…ピアス加工後の加工対象物、3…金型、4…プレススライド、5…プレスボルスター、31…ブランク加工金型、311…ブランクパンチ、312…ブランクダイ、313…第1支持手段、32絞り加工金型、321…絞りパンチ、322…絞りダイ、323…第2支持手段、33…ピアス加工金型、331…ピアスパンチ、332…ピアスダイ、333…第3支持手段、334…先端部分。