(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031176
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】揺動遊具
(51)【国際特許分類】
A63G 13/08 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
A63G13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136732
(22)【出願日】2021-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】394010171
【氏名又は名称】株式会社中村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】中島 正和
(57)【要約】
【課題】 衝撃力が発生せず、乗り心地が良く、長期間使用しても、部品が破損、劣化し難く、保守、点検、交換作業にそれほど時間を要しない揺動遊具を提供する。
【解決手段】乗り台2と、乗り台支持枠3と、揺動機構4と、支持体5と、から揺動遊具1を構成する。揺動機構4は、固定リンク41と、2体の揺動リンク42,43と、移動リンク44と、から構成される。固定リンク41は、支持体5の支柱52の上端面に固着され、移動リンク44は、乗り台支持枠3の水平杆33の中央部に固定される。揺動リンク42,43は、中間部42b,43bを固定リンク41の前後両側において枢着し、下端部42c,43cを移動リンク44の前後両側において枢着し、さらに、上端部42a,43aに配設した前側筒体45a、後側筒体45b間に亘って摺動軸体47を摺動自在に挿通させ、摺動軸体47に弾性力付勢部材48を外装、配置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り台と、この乗り台を支持する乗り台支持枠と、前記乗り台を前後に揺動させる揺動機構と、前記揺動機構を支持する支持体と、から構成されたものであって、
前記揺動機構は、固定リンクと、2体の揺動リンクと、移動リンクと、から構成される4リンク機構であって、前記固定リンクは、前記支持体の支柱の上端面に固着され、前記移動リンクは、前記乗り台支持枠の水平杆の中央部に固定され、前記揺動リンクは、その中間部を前記固定リンクの前後両側の支点において枢着し、その下端部を前記移動リンクの前後両側の支点において枢着してあると共に、さらに、前記2体の揺動リンクの上端部間にそれぞれ前側筒体、後側筒体を連結、配設してあり、
前記前側筒体、後側筒体間に保持部材を掛け渡して配設し、前側筒体、後側筒体、保持部材間に亘って摺動軸体を摺動自在に挿通させ、この摺動軸体に弾性力付勢部材を外装、配置したことを特徴とする揺動遊具。
【請求項2】
前記弾性力付勢部材は、圧縮バネであることを特徴とする請求項1に記載の揺動遊具。
【請求項3】
前記弾性力付勢部材は、弾性ゴムであることを特徴とする請求項1に記載の揺動遊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園、広場、保育園、幼稚園等に設置され、低年齢の子供が安全に、楽しく遊ぶことができる揺動遊具に関する。
【背景技術】
【0002】
公園、広場、保育園、幼稚園等の子供が遊ぶ施設では、ブランコ、シーソー、滑り台、鉄棒、砂場等の種々形態の遊具が設置されている。この中でも、低年齢の子供が一人で乗って遊ぶ、仔馬、キリン等の動物、自動車、汽車等の乗物等の形態をした揺動遊具は、上下、前後、左右に揺動する等、日常では体験できない動きが楽しめるために、低年齢、特に、幼児期の子供には人気のある遊具の一つである。
【0003】
このような揺動遊具として、垂設した支柱1の先端部にベース盤2を配設し、このベース盤2の中央部に回転軸支柱3を垂設し、この回転軸支柱3に揺動フレーム4を軸支し、前記ベース盤2の前後部に揺動フレーム4を下方側から弾発支持するスプリング7,7を配置した揺動遊具が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
又、垂設した支柱4の先端部にベース7を配設し、このベース7の前後部に2つの揺動アーム8,9を枢着し、前記ベース7に固定側緩衝材12a,12bを、前記揺動アーム8,9に揺動側緩衝材11a,11bを配設し、揺動アーム8,9の回動角度範囲を規制するようにした揺動遊具が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3210637号公報
【特許文献2】特開2010-022394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された揺動遊具は、乗り台31を前後に揺動させた時の緩衝作用及び平常状態に復帰させる際の反発力の付与を前後部に配置したスプリング7,7で実行しているが、揺動遊具を長期間使用していると、このスプリング7,7が破損し、劣化する虞がある。
【0007】
そこで、スプリング7,7の破損、劣化の状態を定期的に確認し、場合によって、交換する必要があるが、スプリング7,7を2本使用しているため、部品及び作業コストがかかると共に、スプリングケース6内に収納されているため、保守、点検、交換作業に時間がかかるという問題点があった。
【0008】
一方、特許文献2に記載された揺動遊具は、上物2を前後に揺動させた時の緩衝作用を固定側緩衝材12a,12b及び揺動側緩衝材11a,11bで実行しているが、緩衝材同士の衝突によっているので、どうしても衝撃力が発生し、緩衝作用が十分ではなく、乗り心地が悪いという問題があった。
【0009】
又、ベース7に固定側緩衝材12a,12bを、揺動アーム8,9に揺動側緩衝材11a,11bを配設するというように、部品点数が多いため、部品及び作業コストがかかると共に、これら部品の破損、劣化の状態を確認するために、一部機構を分解する必要もあって、保守、点検、交換作業に時間がかかるという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたものであって、揺動遊具を前後に揺動させた時に衝撃力が発生せず、乗り心地が良く、又、緩衝作用及び反発力の付与を極力少ない部品点数で実行して、部品及び作業コストが低減されると共に、揺動遊具を長期間使用しても、部品が破損、劣化し難く、保守、点検、交換作業にそれほど時間を要しない揺動遊具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の揺動遊具は、乗り台と、この乗り台を支持する乗り台支持枠と、前記乗り台を前後に揺動させる揺動機構と、前記揺動機構を支持する支持体と、から構成されたものであって、
前記揺動機構は、固定リンクと、2体の揺動リンクと、移動リンクと、から構成される4リンク機構であって、前記固定リンクは、前記支持体の支柱の上端面に固着され、前記移動リンクは、前記乗り台支持枠の水平杆の中央部に固定され、前記揺動リンクは、その中間部を前記固定リンクの前後両側の支点において枢着し、その下端部を前記移動リンクの前後両側の支点において枢着してあると共に、さらに、前記2体の揺動リンクの上端部間にそれぞれ前側筒体、後側筒体を連結、配設してあり、
前記前側筒体、後側筒体間に保持部材を掛け渡して配設し、前側筒体、後側筒体、保持部材間に亘って摺動軸体を摺動自在に挿通させ、この摺動軸体に弾性力付勢部材を外装、配置したことを特徴とする。
【0012】
ここで、弾性力付勢部材は、圧縮バネであってもよく、弾性ゴムであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の揺動遊具によれば、揺動遊具を前後に揺動させた時に衝撃力が発生せず、乗り心地が良く、又、緩衝作用及び反発力の付与を極力少ない部品点数で実行して、部品及び作業コストが低減されると共に、揺動遊具を長期間使用しても、部品が破損、劣化し難く、保守、点検、交換作業にそれほど時間を要しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の揺動機構の(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図3】
図2に示す揺動機構の(A)は拡大平面図、(B)はそのX-X線断面図である。
【
図4】
図2に示す揺動機構を後方に揺動させた状態の正面図である。
【
図5】
図1に示す揺動遊具を前方に揺動させた状態の正面図である。
【
図6】
図1に示す揺動遊具を後方に揺動させた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の揺動遊具の好適な実施形態について、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本発明の揺動遊具1は、
図1に示すように、乗り台2と、乗り台支持枠3と、揺動機構4と、支持体5と、から構成される。
【0017】
乗り台2は、
図1に示すように、低年齢の子供が跨って乗るものであって、座席部21と、把持棒22を有しており、低年齢の子供は、座席部21に跨って腰掛け、把持棒22を両手で把持して遊ぶ。
【0018】
そして、子供が上体を前方に傾斜させ、重心を前方に移動すれば、
図5に示すように、乗り台2は前方に揺動し、上体を後方に傾斜させ、重心を後方に移動すれば、
図6に示すように、乗り台2は後方に揺動するので、日常では体験できない、上下方向及び前後方向の動きを楽しむことができる。
【0019】
本実施形態では、
図1に示すように、乗り台2を仔馬の形態としてあるが、座席部21と把持棒22を適宜位置に構成できれば、低年齢の子供が興趣を覚えるキリン、クジラ等の動物、自動車、汽車等の乗物等の形態を採用してもよい。
【0020】
乗り台支持枠3は、
図1に示すように、乗り台2の下端前部を支持する垂直杆31と、
乗り台2の下端後部を支持する垂直杆32と、この垂直杆31,32を連結する水平杆33と、から構成される。
【0021】
揺動機構4は、
図2に示すように、固定リンク41と、揺動リンク42,43と、移動リンク44と、から構成される4リンク機構であって、さらに、揺動リンク42,43の上端部間には、円筒状の保持部材46を配設してある。
【0022】
固定リンク41は、
図1及び2に示すように、断面コ型の杆状部材であって、支持体5の支柱52の上端面にボルト、ナットによって締結、固着されている。
【0023】
移動リンク44は、
図1及び2に示すように、矩形の板状部材であって、乗り台支持枠3の水平杆33の中央部にボルト、ナットによって締結、固定されている。
【0024】
揺動リンク42,43は、
図2に示すように、前記固定リンク41の前後両側に配置されて板状部材であって、中間部42b,43bから下端部42c,43cにかけては円弧状を呈し、中間部42b,43bから上端部42a,43aにかけては直線状を呈するように形成してある。
【0025】
揺動リンク42,43の中間部42b,43bは、
図2に示すように、前記固定リンク41の前後両側の支点E2,E3において枢着してあり、下端部42c,43cは、移動リンク44の前後両側の支点F2,F3において枢着してある。そして、支点E2,E3間の距離Mは、支点F2,F3間の距離Nよりも若干長く設定してある。
【0026】
よって、子供が上体を後方に傾斜させ、重心を後方に移動すれば、
図4に示すように、揺動リンク42,43の下端部42c,43cは後方に揺動し、移動リンク44は後方に移動し、逆に、子供が上体を前方に傾斜させ、重心を前方に移動すれば、揺動リンク42,43の下端部42c,43cは前方に揺動し、移動リンク44は前方に移動するようになっている。
【0027】
揺動リンク42,43の上端部42a,43bは、それぞれ、
図2に示すように、前側筒体45a、後側筒体45bによって連結、枢支してあって、各揺動リンク42,43の上端部42a,43bの支点D2,D3となっている。そして、支点D2,D3間の距離L0は、支点E2,E3間の距離Mよりも若干長く設定してある。
【0028】
又、
図2及び3に示すように、前側筒体45a、後側筒体45bの中央部間に、円筒状の保持部材46を掛け渡し、配設すると共に、前側筒体45a、後側筒体45b及び保持部材46に亘って、摺動軸体47を摺動自在に挿通させてある。
ここで、摺動軸体47が前側筒体45a又は後側筒体45bから軸方向に移動して脱出しないように、摺動軸体47の両端部にはナットを螺着して、脱出を規制してある。
【0029】
そして、前側筒体45a、後側筒体45b間の摺動軸体47には、弾性力付勢部材48を外装し、配置してあり、その一端部又は両端部を保持部材46の端面に当接させるようになっている。
【0030】
ここで、弾性力付勢部材48としては、圧縮バネであってもよく、弾性ゴムであってもよいが、揺動遊具1は、通常、屋外に設置されるので、耐久性は勿論のこと、耐候性、耐水性に優れた素材のものを採用するのが好ましい。
【0031】
本発明の揺動遊具1は、以上のような構成であって、次のような機能、作用及び効果を奏する。
【0032】
子供が上体を後方に傾斜させ、重心を後方に移動すれば、
図4に示すように、揺動リンク42,43の下端部42c,43cは後方に揺動し、移動リンク44は後方に移動し、逆に、子供が上体を前方に傾斜させ、重心を前方に移動すれば、揺動リンク42,43の下端部42c,43cは前方に揺動し、移動リンク44は前方に移動する。
【0033】
揺動時には、
図2及び3に示すように、摺動軸体47が前側筒体45a、後側筒体45b内で摺動するから、揺動リンク42,43の上端部42a,43bの支点D2,D3間の距離L1は、平常時の支点D2,D3間の距離L0よりも短くなる。
【0034】
そして、揺動リンク42,43の上端部42a,43bの支点D2,D3間の距離L1が平常時の支点D2,D3間の距離L0よりも短くなると、摺動軸体47に配設した弾性力付勢部材48が保持部材46に押圧されて、圧縮されることになる。
【0035】
よって、揺動遊具1を前後に揺動させた時には、弾性力付勢部材48の弾性反発力によって、緩衝作用を起生させ、衝撃力が発生せず、乗り心地が良くなると共に、反発力が付与されるから、子供は、揺動遊具1を逆方向へ揺動させるのに、それほど大きな動作をする必要がない。又、反発力によって揺動作用も向上するから、子供により楽しさを与えることになる。
【0036】
支持体5は、
図1に示すように、基台51と、支柱52と、から構成されており、基台51は、公園、広場、保育園、幼稚園等の子供が遊ぶ施設において、地面にコンクリート等を付設し、強固とした設置面に、ボルト、ナット等によって締結することによって、確実に固定される。そして、支柱52の上部には、前記のように、乗り台2、乗り台支持枠3、揺動機構4が配設される。
【0037】
本発明の揺動遊具1は、以上のような構成、機能を有することによって、低年齢の子供が使用し、遊ぶ際には、以下のような作用、効果を奏する。
【0038】
先ず、低年齢の子供は、親等に抱えられる等して、揺動遊具1の乗り台2の座席部21に乗せてもらう。そして、子供は、座席部21に確実に跨ると共に、両手で把持棒22を把持して、揺動遊具1が揺動しても落下しないようにする。
【0039】
そして、子供が上体を前方に傾斜させ、重心を前方に移動すれば、
図5に示すように、揺動リンク42,43の上端部42a,43aは後方に傾動し、下端部42c,43cは前方に傾動するから、乗り台支持枠3は前方に揺動し、結局、乗り台2は前方に揺動することになる。
【0040】
この時、摺動軸体47は、前側筒体45a、後側筒体45b及び保持部材46内で摺動して、揺動リンク42,43の上端部42a,43bの支点D2,D3間の距離L1は、平常時の支点D2,D3間の距離L0よりも短くなるから、弾性力付勢部材48が圧縮され、この弾性反発力によって緩衝作用が起生する。よって、衝撃力は発生せず、乗り心地が良くなる。
【0041】
次いで、子供が上体を後方に傾斜させ、重心を後方に移動すれば、
図6に示すように、揺動リンク42,43の上端部42a,43aは前方に傾動し、下端部42c,43cは後方に傾動するから、乗り台支持枠3は後方に揺動し、結局、乗り台2は後方に揺動することになる。
【0042】
この時、摺動軸体47は、前側筒体45a、後側筒体45b及び保持部材46内で摺動して、揺動リンク42,43の上端部42a,43bの支点D2,D3間の距離L1は、平常時の支点D2,D3間の距離L0よりも短くなるから、弾性力付勢部材48が圧縮され、この弾性反発力によって緩衝作用が起生する。よって、衝撃力は発生せず、乗り心地が良くなる。
【0043】
以上説明したように、本発明の揺動遊具1によれば、揺動遊具1を前後に揺動させた時に、弾性力付勢部材48の弾性反発力によって緩衝作用が起生するから、衝撃力が発生せず、乗り心地が良い。又、弾性力付勢部材48の弾性反発力によって反発作用が起生するから、前方から後方へと円滑に揺動遊具1を揺動させることができる。
【0044】
又、緩衝作用及び反発作用の付与を、摺動軸体47及び弾性力付勢部材48という極力少ない部品点数で実行するから、部品コストが低減されると共に、装着時、保守、交換時等の作業コストも低減される。
【0045】
さらに、緩衝作用及び反発作用の付与を、摺動軸体47及び弾性力付勢部材48という構成が簡単で、単純な部品で実行すると共に、それら部品に大きな衝撃力が付加されないことから、揺動遊具1を長期間使用しても、部品が容易に破損せず、劣化し難くい。又、保守、点検、交換作業にそれほど時間を要しない。
【符号の説明】
【0046】
1 揺動遊具
2 乗り台
3 乗り台支持枠
33 水平杆
4 揺動機構
41 固定リンク
42 揺動リンク
42a 上端部
42b 中間部
42c 下端部
43 揺動リンク
43a 上端部
43b 中間部
43c 下端部
44 移動リンク
45a 前側筒体
45b 後側筒体
46 保持部材
47 摺動軸体
48 弾性力付勢部材
5 支持体
52 支柱
D2 支点
D3 支点
E2 支点
E3 支点
F2 支点
F3 支点