(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031211
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/00 20060101AFI20230301BHJP
G06Q 50/08 20120101ALN20230301BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
G06Q50/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009602
(22)【出願日】2022-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】202110968216.7
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512314075
【氏名又は名称】▲寧▼波工程学院
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】王飛
(72)【発明者】
【氏名】呂忠達
(72)【発明者】
【氏名】趙卓
(72)【発明者】
【氏名】汪鵬飛
【テーマコード(参考)】
2D050
5L049
【Fターム(参考)】
2D050BB01
2D050CA00
2D050FF04
2D050FF07
5L049CC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】橋梁施工の大水深における大口径場所打ち杭施工のリスクを2次元クラウドモデルに基づいて評価する方法を提供する。
【解決手段】大水深における大口径場所打ち杭のリスク評価方法は、大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク事故の一覧及び各事故を発生させるリスク要因を得る工程と、階層化したリスク評価指標体系を構築する工程と、リスク評価指標体系を基に、結合重み付け2次元クラウドモデル評価方法を運用し、各リスククラウドの数値特性を得る工程と;前記リスククラウドの数値特性をノーマル2次元クラウドジェネレータに入力してリスククラウドチャートを出力し、さらには2次元クラウド類似性を採用してリスクレベルを確認する工程と、を含み、よりシステム的で、現実的に効果的な評価を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大水深における大口径場所打ち杭の施工リスクのデータ要因を得る工程と、
階層化したリスク評価指標体系を構築する工程と、
リスク評価指標体系を基に、結合重み付け2次元クラウドモデル評価方法を運用し、各リスククラウドの数値特性を得る工程と、
前記リスククラウドの数値特性をノーマル2次元クラウドジェネレータに入力して、リスククラウドチャートを出力し、さらに2次元クラウド類似性を採用してリスクレベルを確認する工程と、
を含むことを特徴とする、2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項2】
結合重み付け2次元クラウドモデル評価方法は、リスク評価基準に基づいてリスク確率、損失レベルを得、ゲーム理論に基づく結合重み付けを採用して、前記リスク確率、前記損失レベルに重み付けを行うこと、
2次元クラウドモデルを運用して、前記リスク評価指標体系に対して総合演算を行うことを含むことを特徴とする、請求項1に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項3】
前記ゲーム理論に基づく結合重み付けが、G1順序関係法、エントロピー重み法及びゲーム理論に基づく結合重み付け法を含み、
G1順序関係法は、各リスク指標の重要度順序を確定し、各リスク指標の隣接重要度を確定し、各リスク指標の重み係数を計算し、各リスク指標の重要度順序、各リスク指標の隣接重要度、及び各リスク指標の重み係数に基づいて、総合重み係数を計算し、
エントロピー重み法は、標準評価行列を構築し、予測指標の特徴的な比重
及びエントロピー値e
jを計算し、各指標の客観的エントロピー重みを計算し、
ゲーム理論に基づく結合重み付け法は、重みベクトルセットを構築し、最適な結合重みを求める、
ことを特徴とする、請求項2に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項4】
2次元クラウドモデルが具体的に以下のように得られ、つまり、
リスク要因指標の発生確率及び損失結果を採点し、リスククラウドの数値特性を計算し、初級リスククラウドを得る、
リスク要因指標の初級リスククラウドを集めてリスククラウド行列とし、さらに重み構成法で得られた重みに基づいて2次元クラウドモデルを得る、
であることを特徴とする、請求項2に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項5】
前記2次元クラウドモデルが以下の通りであり、
【数1】
式中、Ex
nは標本期待値、ω
nは重み係数であり、Ex’、En’、He’は2次元クラウドモデルの期待値、エントロピー及び過剰エントロピーであることを特徴とする、請求項2又は4に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項6】
2次元クラウド類似性の公式が以下の通りであり、
【数2】
及びExはそれぞれ標準リスククラウド及び実際のリスククラウドにおける結果レベルの期待値であり、
及びEx’はそれぞれ標準リスククラウド及び実際のリスククラウドにおける確率レベルの期待値であることを特徴とする、請求項1に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋梁施工のリスク評価分野に関し、より具体的には2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型橋梁工事の建造が海洋及び大水深領域に延伸し続けるのに伴い、大水深の杭基礎も大口径化が進んでいる。しかしながら劣悪な海洋の大水深環境、複雑な地質条件、特殊設備及び特殊なプロセスにより、大水深における大口径場所打ち杭基礎の施工事故が頻発し、重大な結果を招いている。このため、大水深における大口径場所打ち杭基礎に対して、科学的な施工リスク評価を実施し、リスク決定に理論的な根拠を提供し、これにより事故が生じる可能性及び生じる結果を小さくすることは、非常に重要な意義を有する。現在、大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価において、建造する水深の増加、杭径の増大に対し、その施工リスクの拡大及びリスク事故に存在する違いについて、いまだ十分に考慮されていない。常用されるファジー数学による評価モデルも不確実なリスクのファジー性から開始するのみでランダム性に及ばず、さらに確率、損失の2重の次元を有するリスクを組み合わせていない。単一の主、客観的重み付け法は専門家に対する依存性も比較的高く、さらに評価結果及び実際が矛盾する可能性が存在するため、よりシステム的で、現実的に効果的な大水深における大口径場所打ち杭のリスク評価方法の運用を急ぎ必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このことを考慮して、本発明は2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法を提供し、これは背景技術に存在する問題を効果的に解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を実現するため、本発明は以下の技術案を採用する。
2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法は、以下の工程を含む。
大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク事故の一覧及び各事故を発生させるリスク要因を得る。
階層化したリスク評価指標体系を構築する。
リスク評価指標体系を基に、結合重み付け2次元クラウドモデル評価方法を運用し、各リスククラウドの数値特性を得る。
前記リスククラウドの数値特性をノーマル2次元クラウドジェネレータに入力してリスククラウドチャートを出力し、さらには2次元クラウド類似性を採用してリスクレベルを確認する。
【0005】
好ましくは、結合重み付け2次元クラウドモデル評価方法は、リスク評価基準に基づいてリスク確率、損失レベルを得、ゲーム理論に基づく結合重み付けを採用して、前記リスク確率、前記損失レベルに重み付けを行うこと;2次元クラウドモデルを運用して、前記リスク評価指標体系に対して総合演算を行うことを含む。
【0006】
好ましくは、前記ゲーム理論に基づく結合重み付けは、G1順序関係法、エントロピー重み法及びゲーム理論に基づく結合重み付け法を含む。
このうち、G1順序関係法は、各リスク指標の重要度順序を確定し、各リスク指標の隣接重要度を確定し、各リスク指標の重み係数を計算し、各リスク指標の重要度順序、各リスク指標の隣接重要度、及び各リスク指標の重み係数に基づいて、総合重み係数を計算する。
エントロピー重み法は、標準評価行列を構築し、予測指標の特徴的な比重plj及びエントロピー値ejを計算し、各指標の客観的エントロピー重みを計算する。
ゲーム理論に基づく結合重み付け法は、重みベクトルセットを構築し、最適な結合重みを求める。
【0007】
以上の技術案は以下の有益な効果を有する。
大水深における大口径場所打ち杭に対して指標の重み付けを行うとき、その施工の複雑性及び特殊性を考慮するべきであり、同時にリスク指標の客観的データを考慮する。科学的に合理的な予測は両者を考慮する必要があり、このためゲーム理論に基づく結合重み付け法を導入する。ゲーム理論に基づく結合重み付け法の原理は、主、客観的重みを求め、相対的に均衡し、調和した最適な重みの組合せを得、これと主、客観的重みとの偏差を最小にし、これにより重み付けの科学的正確性を高める。
【0008】
好ましくは、2次元クラウドモデルは具体的に以下のように得られる。
リスク要因指標の発生確率及び損失結果を採点し、リスククラウドの数値特性を計算し、初級リスククラウドを得る。
リスク要因指標の初級リスククラウドを集めてリスククラウド行列とし、さらに重み構成法で得られた重みに基づいて2次元クラウドモデルを得る。
【0009】
好ましくは、前記2次元クラウドモデルは以下の通りである。
【0010】
【0011】
式中、Exnは標本期待値、ωnは重み係数であり、Ex’、En’、He’は2次元クラウドモデルの期待値、エントロピー及び過剰エントロピーである。
【0012】
好ましくは、2次元クラウド類似性の公式は以下の通りである。
【0013】
【0014】
及びExはそれぞれ標準リスククラウド及び実際のリスククラウドにおける結果レベルの期待値である。
及びEx’はそれぞれ標準リスククラウド及び実際のリスククラウドにおける確率レベルの期待値である。
【発明の効果】
【0015】
以上の技術案は以下の有益な効果を有する。
不確実な物事は2つの重要な特徴を有し、それぞれファジー性及びランダム性である。クラウドモデルの特定のアルゴリズムはファジー性及びランダム性の2つの面を比較的良好に組み合わせることができ、指向概念を定量データに転換させ、さらにリスクの2つの次元である確率及び損失を効果的に組み合わせている。最終的にクラウドチャートを出力する形式で示すことができ、従来のファジーセットの方法より、イメージをより科学的で、直観的にする。
【0016】
上記技術案により、既存技術と比較して、本発明の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法は、以下の有益な効果を有することがわかる。
【0017】
大水深における大口径場所打ち杭に対して指標の重み付けを行うとき、その施工の複雑性及び特殊性を考慮するべきであり、同時にリスク指標の客観的データを考慮する。科学的に合理的な予測は両者を考慮する必要があり、このためゲーム理論に基づく結合重み付け法を導入する。ゲーム理論に基づく結合重み付け法の原理は、主、客観的重みを求め、相対的に均衡し、調和した最適な重みの組合せを得、これと主、客観的重みとの偏差を最小にし、これにより重み付けの科学的正確性を高める。
【0018】
本発明の実施例又は既存技術における技術案をより明確に説明するため、以下、実施例又は既存技術の記載で使用する必要がある図を簡単に説明する。以下の記載中の図は本発明の実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的労働を行わない前提で、提供した図に基づいてその他の図を得ることもできることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】
図1aは、本発明の実施例の大水深における大口径場所打ち杭基礎構造の設計図である。
【
図1b】
図1bは、本発明の実施例の大水深における大口径場所打ち杭基礎構造の設計図である。
【
図1c】
図1cは、本発明の実施例の大水深における大口径場所打ち杭基礎構造の設計図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例の大水深における大口径場所打ち杭の施工リスクの総合レベルクラウドチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の実施例の大水深における大口径場所打ち杭施工の各リスク事故の総合レベルクラウドチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例中の図を組み合わせて、本発明の実施例における技術案を明確、完全に記載する。記載する実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例でないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的労働を行わない前提で得たすべてのその他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0021】
本発明の実施例は、2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法を開示している。
図4に示すように、以下の工程を含む。
工程1、施工リスクの識別を実施する
関連する実際の工程で発生する事故事例に対して調査研究、分析を行い、評価する工程項目における実際の特徴を組み合わせてリスク識別を実施する。大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク事故の一覧を作成し、さらに各事故が発生するリスク要因を識別する。
【0022】
工程2、リスク評価指標体系を構築する
階層化したリスク評価指標体系を構築する。リスク事故を主とし、含まれるリスク要因をリスク指標体系に組み込む。まず、「大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク予測」を確立し、指標体系の第1層であるリスク目標層の指標とする。次に、上記リスクを識別したリスク事故を施工工程に基づいて配置し、指標体系の第2層であるリスク属性層の指標とする。最後に、事故が発生するリスク要因を指標体系の第3層であるリスク要因層の指標とする。
【0023】
工程3、結合重み付け2次元クラウドモデル評価方法を運用する
リスク評価基準に基づいて、評価指標に対してリスク確率、損失レベルの数値化を行って採点し、ゲーム理論に基づく結合重み付け法を採用して各指標に対して重み付けを行う。2次元クラウドモデルを運用してリスク評価指標体系に対して総合演算を行い、各指標のリスククラウドの数値特性を得、これは1級リスククラウド、2級リスククラウド及び最終的な総合リスククラウドを含む。
【0024】
工程3で確定する具体的な工程は以下の通りである。
3.1 ゲーム理論に基づく結合重み付け
(1)G1順序関係法
1)各指標の重要性の順番を確定する
評価基準に基づいて、リスクの各指標の重要度を並び替え、リスク指標x
iの相対的な重要度がx
jより高い場合、
で表す。複数のリスク評価指標が存在するとき、並べ替えの完了後、
で表す。
【0025】
2)各指標の隣接重要度を確定する
各指標の順序関係を確定した後、さらに各隣接する指標間の重要度係数rkを付与する必要がある。rkは前の指標及び後の指標の比率を表すことができ、付与値は表1を参考にする。
【0026】
【0027】
3)各指標の重み係数を計算する
付与したrk値に基づいてm個目の指標の重みを計算する。式(1、2)を参照する。
【0028】
【0029】
4)群の付与値により重み係数を計算する
指標を並べ替え、さらに隣接指標の重要係数を付与し、これを計算して群を評価する最終的な主観的重み係数にまとめる。式(3、4)を参照する。
【0030】
【0031】
(2)エントロピー重み法
1)標準評価行列を構築する
採点行列を構築し、さらに大きいほど良好な正方向指標に対し、式(5)に基づいて正規化処理を行い、標準行列
を得る。
【0032】
【0033】
2)予測指標の特徴的な比重
及びエントロピー値e
jを計算する。
【0034】
【0035】
3)各指標の客観的エントロピー重みを計算する。
【0036】
【0037】
(3)ゲーム理論に基づく結合重み付け法
1)重みベクトルセットを構築する
q種の結合重み付け法を採用して主、客観的重みに対して重み付けを行い、これからq個の基本的な重みベクトル集合
を得ると仮定すると、q個の基本的な重みベクトルの任意の線型結合は以下の通りである。
【0038】
【0039】
2)最適な結合重みを求める
線型結合係数akを最適化し、w及び各wkの偏差を最小化する。式(10)を参照する。
【0040】
【0041】
上の式に対応する解の方程式は以下の通りである。
【0042】
【0043】
求めた線形の最適化した重みに対してスケーリング処理を行い、最終的な結合重みを求める。
【0044】
【0045】
3.2 2次元クラウドモデル
(1)リスククラウド
リスク評価の原則に基づき、リスク要因指標の発生確率及び損失結果を採点し、続いてリスククラウドの数値特性を計算し、初級リスククラウドを得る。具体的な公式は以下の通りである。
【0046】
【0047】
式中、xkは採点値である。
【0048】
【0049】
式中、S2は標本分散である。
【0050】
(2)標準クラウド
構築した大水深における大口径場所打ち杭のリスク評価基準のリスクレベル分けに基づいて、レベルI~IVを[0~10]の4つのサブ区間に細分化する。このうちj個目のサブ区間は[sj
min,sj
max]と表すことができる。リスクレベル分けしたクラウドの数値特性の指標について、具体的な区分基準は表2の通りである。
【0051】
【0052】
標準クラウドの数値特性を計算する公式は以下の通りである。
【0053】
【0054】
(3)総合リスククラウド
得られたリスク要因指標の初級リスククラウドを集めてリスククラウド行列とし、さらに重み構成法で得られた重み行列に基づき、両者を合わせて演算を行うと、2級リスククラウドを得ることができる。具体的な演算の公式は以下の通りである。
【0055】
【0056】
工程4、施工リスクの総合レベル及び重大なリスク事故を判定する
2次元クラウドモデルを運用し、リスク予測指標体系に対して総合演算を行って得られる各指標のリスククラウドの数値特性を、ノーマル2次元クラウドジェネレータに入力してリスククラウドチャートを出力する。2級リスククラウドチャートは各施工事故の総合リスクレベルを示し、重大なリスク事故を判別し、さらに総合リスククラウドチャートは大水深における大口径場所打ち杭全体の総合的な施工リスクレベルを示している。クラウドチャートに基づくと類似性が出現することがあり、リスクレベルを迅速、正確に判別することができず、さらに2次元クラウド類似性を採用してリスクレベルを確認する。具体的な公式は以下の通りである。
【0057】
【0058】
本実施例において、工程の概況について、あるベイブリッジの橋脚部分は、流れが急で波が高く、水深は60mに達する。基礎は比較的大きな水平力に抵抗する必要があり、18本のΦ6.3mの場所打ち杭を用いる案を採用する。杭の頂部にΦ6.8mの鋼製ケーシングを設け、杭長は94m、フーチング平面の寸法は68m×46.4m、厚さは12mである。
図1a、
図1b、
図1cを参照のこと。
【0059】
工程1は施工リスクの識別を実施する。鋼製ケーシングの施工段階で、特殊装置MHU-2400S油圧ハンマーを採用して打撃するように計画する。このうちハンマリングの出力エネルギ、ケーシングの壁厚及び初期欠陥の楕円率はいずれもケーシングの屈曲変形事故を引き起こしやすい。橋脚部分の表層岩盤は比較的細かく、一定の傾斜度を有する。深層岩盤の風化の程度は高くなく、弱風化の花崗岩の一軸圧縮強さは60MPaに達し、鋼製ケーシングの岩盤進入深さは比較的小さい。海域の水位の変化は頻繁であり、杭径及び杭長を長くすると、孔形成の抵抗力は指数関数的に増加し、孔形成機械の定格トルクが大きくなり、ドリルの動作状況がより悪化する。孔形成の施工段階で漏れ;傾斜孔、孔崩壊;ドリルが落下する、ドリルが埋まる事故が容易に発生する。杭形成段階で、大口径杭基礎の水中コンクリートを注入するが、注入する総量及び用いるトレミー管の管径など関連パラメータを重視する必要がある。注入する合計時間が長いと、コンクリートの始発時間を超える可能性があるため、管が詰まる、管が塞がる事故を誘発する。大水深における大口径杭基礎の注入する深さは深く、孔をきれいにするのはいっそう困難で、スライムは厚くなる。このうちトレミー管から孔底部の距離、管径、埋め込む深さの設定が合理的でないと、注入したコンクリートに泥が混ざりやすく、杭側面との接着に影響を及ぼし、コンクリート強度が低下する。杭底部、杭側面及び杭本体にコンクリート注入の欠陥が出現する。
【0060】
工程2はリスク評価指標体系を構築する。あるベイブリッジの大水深における大口径杭基礎の施工リスクに基づいて識別し、リスク評価指標体系の階層化の構想に基づいて、リスク評価指標体系を構築する。表3に示す通りである。
【0061】
【0062】
工程3は結合重み付け2次元クラウドモデル評価方法を運用する。今回のリスク評価は指標に対してリスク確率、損失レベルの定量化を行って採点しており、各指標レベルの点数を表4及び表5に整理してまとめる。リスク指標の確定方法に基づいて、主観、客観的重み付けにより、さらにゲーム理論に基づく結合重み付けにより、各レベルのリスク指標の重みを得、表6にまとめる。2次元クラウドモデルを運用してリスク評価指標体系に対して総合演算を行い、各指標のリスククラウドの数値特性を得、これは1級リスククラウド、2級リスククラウド及び最終的な総合リスククラウドを含む。具体的な各指標のリスククラウドの数値特性を表7にまとめる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
工程4は施工リスクの総合レベル及び重大リスク事故を判定する。
(1)大水深における6.3mの大口径場所打ち杭の施工リスクの総合レベル
施工リスクの総合レベルクラウドチャートを
図2に示す。得られた総合リスククラウドを標準クラウドと比較すると、総合リスククラウドはリスクレベルIV及びIIIの標準クラウドの間にあるが、リスクレベルIIIの標準クラウドに近いことを発見した。類似性の計算により、大水深における6.3mの大口径場所打ち杭の施工リスクの総合レベルをIIIと判定することができることを確認する。総合リスククラウドの数値特性に基づくと、総合施工リスクの確率レベルがIIIであり、総合施工リスクの損失レベルがIVであることをさらに発見することができる。リスク評価基準における各種リスクレベルの管理方針に基づくと、高さを重視するべきであり、大水深における6.3mの大口径場所打ち杭の施工に対して、厳格なリスク制御措置を採る。
【0068】
(2)一般的なリスク事故及び重大なリスク事故
基礎的な案の総合リスクレベルがIIIであると確定すると、対応するリスク予防措置を採るべきであり、そのため各種リスク事故の総合リスクレベルを確定する必要がある。各種リスク事故の総合レベルクラウドチャートの
図3及び類似性の式(25)の計算に基づいて、鋼製ケーシングの変形;注入の質の欠陥;傾斜孔、孔の崩壊;ドリルが落下する、埋まる施工事故はリスク総合レベルIIIであり、施工事故の漏れ;管が詰まる、管が塞がる施工事故はリスク総合レベルIIであると確認する。施工リスクの総合レベルがリスク総合レベルIII及びそれ以上に達すると、重大リスク事故と認められ、リスク総合レベルIII以下は一般的リスク事故である。上記分析により、リスク総合レベルIIIの施工事故は重大なリスク事故であり、より厳格で、狙いを定めたリスク予防措置を講じる必要があり、一般的なリスク事故に対しても、相対的な施工監視措置を講じるべきである。
【0069】
開示した実施例の上記説明により、当業者は本発明を実現又は使用することができる。これらの実施例のいくつかの修正は、当業者にとって明らかであり、本文中で定義した一般的な原理は、本発明の主旨又は範囲を逸脱しない状況で、その他の実施例で実現することができる。従って、本発明は本文で示した実施例に制限されることはなく、本文で開示した原理及び新規特徴と一致する最も広い範囲に符合する。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大水深における大口径場所打ち杭の施工リスクのデータ要因を得る工程と、
階層化したリスク評価指標体系を構築する工程と、
リスク評価指標体系を基に、結合重みづけ2次元クラウドモデル評価方法を運用し、リスクの2つの次元である発生確率及び損失結果を組み合わせている各リスククラウドの数値特性を得る工程と、
前記リスク評価指標体系の各層における前記リスククラウドの数値特性をノーマル2次元クラウドジェネレータに入力して、各層におけるリスククラウドチャートを出力し、さらに2次元クラウド類似性を採用してリスクレベルを確認する工程と、
を含むことを特徴とする、2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項2】
結合重み付け2次元クラウドモデル評価方法は、リスク評価基準に基づいてリスク確率、損失レベルを得、ゲーム理論に基づく結合重み付けを採用して、前記リスク確率、前記損失レベルに重み付けを行うこと、
2次元クラウドモデルを運用して、前記リスク評価指標体系に対して総合演算を行うことを含むことを特徴とする、請求項1に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項3】
前記ゲーム理論に基づく結合重み付けが、G1順序関係法、エントロピー重み法及びゲーム理論に基づく結合重み付け法を含み、
G1順序関係法は、各リスク指標の重要度順序を確定し、各リスク指標の隣接重要度を確定し、各リスク指標の重み係数を計算し、各リスク指標の重要度順序、各リスク指標の隣接重要度、及び各リスク指標の重み係数に基づいて、総合重み係数を計算し、
エントロピー重み法は、標準評価行列を構築し、予測指標の特徴的な比重
及びエントロピー値e
jを計算し、各指標の客観的エントロピー重みを計算し、
ゲーム理論に基づく結合重み付け法は、重みベクトルセットを構築し、最適な結合重みを求める、
ことを特徴とする、請求項2に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項4】
2次元クラウドモデルが具体的に以下のように得られ、つまり
リスク要因指標の発生確率及び損失結果を採点し、リスククラウドの数値特性を計算し、初級リスククラウドを得る、
リスク要因指標の初級リスククラウドを集めてリスククラウド行列とし、さらに重み構成法で得られた重みに基づいて2次元クラウドモデルを得る、
であることを特徴とする、請求項2に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項5】
前記2次元クラウドモデルが以下の通りであり、
【数1】
式中、Ex
nは標本期待値、ω
nは重み係数であり、Ex’、En’、He’は2次元クラウドモデルの期待値、エントロピー及び過剰エントロピーであることを特徴とする、請求項2又は4に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。
【請求項6】
2次元クラウド類似性の公式が以下の通りであり、
【数2】
及びExはそれぞれ標準リスククラウド及び実際のリスククラウドにおける結果レベルの期待値であり、
及びEx’はそれぞれ標準リスククラウド及び実際のリスククラウドにおける確率レベルの期待値であることを特徴とする、請求項1に記載の2次元クラウドモデルに基づく大水深における大口径場所打ち杭施工のリスク評価方法。