(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031234
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】視覚障害者用誘導用マーカーと設置方法
(51)【国際特許分類】
E01F 9/553 20160101AFI20230301BHJP
【FI】
E01F9/553
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086326
(22)【出願日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】22021037411.6
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HK
(71)【出願人】
【識別番号】522209686
【氏名又は名称】奇楠有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】馮俊雄
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA01
2D064AA06
2D064AA22
2D064CA03
2D064CA04
2D064DB01
2D064EA12
2D064JA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レンガや磁器タイルなどの硬い床に穴を開けることにより起こる地面材の損傷を回避できる視覚障害者誘導用マーカーを提供する。また、不十分な粘着剤を充填する問題、歩行者が長期にわたり歩いたり、蹴ったり、踏みつけたりすることによって、緩む傾向にある問題を回避する。
【解決手段】スピゴットの底部にプレートベースが取り付けられた視覚障害者誘導用マーカーであって、視覚障害者誘導用マーカー本体の底部とプレートベースの上部との間に粘着樹脂を入れるリング状の空間があり、プレートベースの直径は、スピゴットの直径の2倍以上か、もしくは視覚障害者誘導用マーカーの直径の半分より長い視覚障害者誘導用マーカー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピゴットの底部にプレートベースが取り付けられた視覚障害者誘導用マーカーであって、
前記視覚障害者誘導用マーカーの本体の底部と前記プレートベースの上部との間に粘着樹脂を入れるリング状の空間があり、
前記プレートベースの直径は、前記スピゴットの直径の2倍以上か、もしくは視覚障害者誘導用マーカーの直径の半分より長い視覚障害者誘導用マーカー。
【請求項2】
前記プレートベースの形状は、円形、四角形、十字形、固定十字形、またはリング形のいずれかである請求項1に記載の視覚障害者誘導用マーカー。
【請求項3】
前記プレートベースは、スピゴットなしで視覚障害者誘導用マーカーの底部に取り付けることができる請求項1に記載の視覚障害者誘導用マーカー。
【請求項4】
前記視覚障害者誘導用マーカーの底部にリング形の付属品を取り付けることができ、
前記リング形の付属品は、数個の鉤状や矢印型のスパイクが付いているもの、または、リング形のベースに取り付けられたシリンダー状のものであり、視覚障害者誘導用マーカー本体の底のリング状の溝に、ハンマーで打ち込むか、圧力をかけて入れ込む請求項3に記載の視覚障害者誘導用マーカー。
【請求項5】
鋼、銅、または合金などの金属でできており、第一の選択肢はステンレス鋼である請求項1に記載の視覚障害者誘導用マーカー。
【請求項6】
前記付属品は、ステンレス鋼、銅、または合金を含む半硬質金属を材料とする請求項4に記載の視覚障害者誘導用マーカー。
【請求項7】
前記視覚障害者誘導用マーカーの形状は、大きな円形、小さな円形、またはバー状である。視覚障害者誘導用マーカーの上部は、ドーム型、台形型、またはアーチ型である請求項1に記載の視覚障害者誘導用マーカー。
【請求項8】
地面に作ったくぼみに請求項1に記載の前記プレートベースと前記スピゴットとを収め、前記プレートベースと前記スピゴットを覆うように樹脂を充填し、前記樹脂が硬化すると、プレートベースがアンカーとして機能し、地面にしっかりと固定する視覚障害者誘導用マーカーの設置方法。
【請求項9】
請求項3に記載の前記プレートベースの上のリング形状の空間を粘着性の樹脂で覆い、樹脂が硬化した後は、プレートベースがアンカー機能の役目を果たす視覚障害者誘導用マーカーの設置方法。
【請求項10】
請求項4に記載のスパイク付きの付属品が取り付けられた視覚障害者誘導用マーカーを地面に打ち込み、または、シリンダー状の付属品を入れることができるよう地面にくぼみを作り、樹脂を充填し、付属品付きの視覚障害者誘導用マーカーを入れることにより固定する視覚障害者誘導用マーカーの設置方法。
【請求項11】
前記樹脂は、ポリウレタン、シリコン、エポキシ、合成樹脂および自己接着性粘着剤から選択された樹脂である請求項8、9または10に記載の視覚障害者誘導用マーカーの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者用誘導用マーカーと設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者誘導用マーカーは、歩行者専用道路や公共施設にとって著しく欠かせない存在になってきている。この業界で提供されている物の1つは、金属製視覚障害者誘導用マーカーであり、それは一般的にステンレス鋼で作られている。これらの種類は、ほとんどの物が突起形状で、一枚一枚地面に設置するものである。通常、視覚障害者誘導用マーカーの下部にスタッドが配置されており、電動ドリルで地面に穴を開けて使用される。その後、粘着剤を使って設置する。粘着剤を使わずに地面に設置される視覚障害者誘導用マーカーもあり、その代わりにスタッドの周りに合うプラスチック製シースを使い、地面に打ち込んで設置する。他の方法は、ドリルで開けた穴にネジで締める方法もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記に述べた全ての設置方法では、特にレンガや磁器タイルの場合、ドリルで穴を開ける為石材の床を傷つけたり、割れる可能性が高くなる。設置後、歩行者が長期にわたり歩いたり、蹴ったり、踏みつけたりすることで、視覚障害者誘導用マーカーが緩んだり、地盤構造の脆弱化を招く恐れがある。
【0004】
さらに、様々な付属品を追加し、多種にわたる床材に適応できる金属製の視覚障害者誘導用マーカーはない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、レンガや磁器タイルなどの硬い床に穴を開けることにより起こる地面材の損傷を回避できる視覚障害者誘導用マーカーを提供することである。また本発明は、不十分な粘着剤を充填する問題、そして地面に水平に接着しただけの視覚障害者誘導用マーカーの場合に起こる、歩行者が長期にわたり歩いたり、蹴ったり、踏みつけたりすることによって、緩む傾向にある問題を回避する目的もある。
【0006】
もう一つの本発明の目的は、カーペット、プラスチック、ゴムなどの異なる床材に適応することができる設置方法を提供することである。
【0007】
この発明は、視覚障害者誘導用マーカーのスピゴット底部に取り付けられたプレートベースを設計することによって達成できる。プレートベースの上部に粘着樹脂を保持できるリング状の空間を作る。プレートベースの直径は、少なくともスピゴットの直径より2倍の長さ、もしくは視覚障害者誘導用マーカーの直径の半分より長いものである。
【0008】
プレートベースの形状は、円形、四角形、十字形、固定十字形、またはリング形のいずれかである。
【0009】
プレートベースは視覚障害者誘導用マーカーの底部の下にスピゴットなしで付けることができる。
【0010】
その上視覚障害者誘導用マーカーの底部にリング形の付属品を取り付けることができる。リング形の付属品は、数個の鉤状や矢印型のスパイクが付いているもの、または、リング形のベースに取り付けられたシリンダー状のものである。視覚障害者誘導用マーカー本体の底のリング状の溝に、ハンマーで打ち込むか、圧力をかけて入れ込む。
【0011】
視覚障害者誘導用マーカーは鋼、銅、または合金などの金属でできており、第一の選択肢はステンレス鋼である。
【0012】
視覚障害者誘導用マーカーの形状は、大きな円形、小さな円形、またはバー状である。視覚障害者誘導用マーカーの上部は、ドーム型、台形型、またはアーチ型である。
【0013】
設置するためには、地面のレンガに穴を開ける必要はなく、スピゴットとプレートベースをいれるために、地面の表面にくぼみをつけるだけでよい。樹脂をスピゴットとプレートベースを覆うように充填する。樹脂が硬化した後、プレートベースはアンカー機能の役目を果たすため、接触マーカーは床の表面にしっかり固定される。
【0014】
本発明の視覚障害者誘導用マーカーは、アンカー機能としてスピゴットの底に取り付けられたプレートベースがある。通常の視覚障害者誘導用マーカーには、プレートベースはなく、スピゴットの中央に小さなくぼみがあるだけで、スピゴットの上部の直径は、その下部の直径と同じである。本発明の視覚障害者誘導用マーカーは、スピゴットの底部にプレートベースが取り付けられており、これによりスピゴットの底部は広く、上部は狭くなっている。鋳造のプロセスは、離型の技術的な困難さが要され、視覚障害者誘導用マーカー分野の技術者でさえ想像しがたく、過去に市場に現れた例はない。
【0015】
さらに、スピゴットなしで視覚障害者誘導用マーカーの底部をプレートベースに取り付けている場合、地面のレンガに穴を開ける必要はなく、プレートベースを含むよう、地面の表面にくぼみをつけるだけでよい。樹脂をプレートベースを覆うように充填し、樹脂が硬化した後、プレートベースはアンカー機能の役目を果たすため、視覚障害者誘導用マーカーは床の表面にしっかり固定される。
【0016】
視覚障害者誘導用マーカーの底部にリング形の付属品を取り付けることができる。リング形の付属品は、数個の鉤状や矢印型のスパイクが付いているもの、または、リング形のベースに取り付けられたシリンダー状のものである。視覚障害者誘導用マーカー本体の底のリング状の溝に、ハンマーで打ち込むか、圧力をかけて入れ込む。
【0017】
記載されている樹脂はポリウレタン、シリコン、エポキシ、合成樹脂そして自己性接着性粘着剤である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のプレートベースに取り付けられた視覚障害者誘導用マーカーの断面図である。
【
図2】本発明の視覚障害者誘導用マーカーの上面図である。
【
図3】本発明による固定十字型のプレートベースに取り付けられた視覚障害者誘導用マーカーの断面図である。
【
図4】本発明による視覚障害者誘導用マーカー本体の底部の下に取りつけられたリング状のプレートベースの断面図である。
【
図5】本発明による視覚障害者誘導用マーカーをプレートベースに取り付け、地面に設置した断面図である。
【
図6】本発明によるくぼんだリング状のベースに取り付けられたシリンダー付属品を埋め込んだ視覚障害者誘導用マーカーの断面図である。
【
図7】本発明による数個のスパイクが円形に配置された視覚障害者誘導用マーカーの概略図であり、それぞれのスパイクは鉤型または矢印型である。
【
図8】本発明による数個のスパイクが円形に配置された視覚障害者誘導用マーカーの概略図であり、それぞれのスパイクは鉤型または矢印型である。
【
図9】本発明の視覚障害者誘導用マーカーを地面に設置した断面図である。
【
図10】本発明の視覚障害者誘導用マーカーを地面に設置した断面図である。
【
図11】本発明の付属品を埋め込んだ視覚障害者誘導用マーカーを軟質床材に設置した断面図である。
【
図12】長いスピゴットを地面に設置した従来の視覚障害者誘導用マーカーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
[第1実施形態]
本実施形態にかかる視覚障害者誘導用マーカーでは、どのような状況であってもレンガや地面材に穴を開ける必要は全くない。
【0021】
視覚障害者誘導用マーカー100の本体の底部104にスピゴット102を介してプレートベース103が取り付けられ、プレートベース103の上部と視覚障害者誘導用マーカー本体の底部104の間にはリング状の空間が形成される。
【0022】
図1が示すように、プレートベース103の直径は少なくともスピゴット102の直径の2倍である。
図2に示すように、プレートベース103の直径は視覚障害者誘導用マーカー100自体の直径の半分より大きい。
【0023】
図3は、固定十字型のプレートベース303に取り付けられた視覚障害者誘導用マーカー300の断面図である。プレートベース303の直径は少なくともスピゴット302の直径の2倍である。プレートベース303の上部と視覚障害者誘導用マーカー本体の底部304の間にはリング状の空間が形成される。
【0024】
プレートベースの形状は、円形、四角形、十字形(
図1、2参照)、固定十字形(
図3)、またはリング形(
図4、
図6参照)のいずれかである。
図4、
図5に示すように、視覚障害者誘導用マーカー400、500において、プレートベース403、503は、スピゴットなしで視覚障害者誘導用マーカー本体の底部404、504に設けることもできる。
【0025】
視覚障害者誘導用マーカーの底部にリング形の付属品を取り付けてもよい。リング形の付属品700、800は、
図7、
図8に示すように、数個の鉤状や矢印型のスパイク705,805が付いているものでもよい。例えば付属品700は、
図11に示すように、視覚障害者誘導用マーカー1100と組み合わせて用いられる。このとき接続には樹脂1108が用いられる。
【0026】
図6に示すように、リング形のプレートベース603に取り付けられるシリンダー状の付属品でもよい。
【0027】
付属品は、例えば
図11に示すように、視覚障害者誘導用マーカー本体の底のリング状の溝に、ハンマーで打ち込まれるか、圧力をかけて入れ込まれる。視覚障害者誘導用マーカーは鋼、銅、または合金などの金属でできており、第一の選択肢はステンレス鋼である。埋め込まれる付属品は、鋼、銅、または合金を含む半硬質金属で、第一の選択肢はステンレス鋼である。
【0028】
視覚障害者誘導用マーカーの形状は、大きな円形、小さな円形、またはバー状である。視覚障害者誘導用マーカーの上部は、ドーム型、台形型、またはアーチ型である。
【0029】
設置するために地面のレンガに穴を開ける必要はなく、
図9、
図10に示すように、スピゴット902、1002とプレートベース903、1003を収めるために地面906、1006の表面にくぼみ907、1007を作るだけですむ。スピゴット902、1002とプレートベース903、1003を覆うように樹脂908、1008を充填する。樹脂が硬化した後、
図9と
図10に示すように、プレートベース903、1003がアンカー機能の役目を果し、視覚障害者誘導用マーカー900、1000は床の表面にしっかり固定される。
【0030】
視覚障害者誘導用マーカーは、リング状の空間に充填された樹脂508、908、1008と視覚障害者誘導用マーカー500、900、1000自体が融合したものである。樹脂908、1008は、視覚障害者誘導用マーカーをしっかり固定するため、視覚障害者誘導用マーカーを水平に地面506、906、1006に接着するだけの従来の方法よりも接着強度が上がる。
【0031】
本実施形態の設計は、スピゴット102、302、902、1002の底部にプレートベース103、303、903、1003を取り付けアンカーを形成するものである。
【0032】
従来の視覚障害者誘導用マーカーは、コアプリング法(Core pulling method)で製造されており、
図12で示すように、スピゴット1202の中央に小さなくぼみ1209があるだけで、スピゴット1202の上部の直径はスピゴット1202の下部の直径と明らかに同じである。そのため、アンカー機能を発揮することはできない。従来の視覚障害者誘導用マーカー1200は、スピゴット1202にアンカー機能がないため、
図12が示すように、スピゴット1202は、床を貫通する十分な長さがなければ、安定感を得ることができない。
【0033】
本実施形態は、スピゴット102、302、902、1002の下部にプレートベース103、303、903、1003を取り付けた視覚障害者誘導用マーカー100、300、900、1000であり、スピゴット102、302、902、1002の下部を広く、上部を狭くしたものである。リング状の隙間とプレートベース103、303、903、1003の幅広の設計は、離型技術の困難さに加え、鋳造の過程でプレートベースとスピゴットを組み合わせることは、視覚障害者誘導用マーカー分野の技術者でさえ想像し難く、かつて市場に現れた例はない。
【0034】
さらに、
図4、
図5に示すように、視覚障害者誘導用マーカー400、500本体の底部404、504にスピゴットなしにプレートベース403,503を取り付けることもできる。屋内や滑らかな床では、地面を貫通する穴を開ける必要も、地面に穴やくぼみを作る必要もなく、粘着樹脂508のみで設置が可能である。その理由は、大理石やタイルの床の表面が粘着樹脂に非常に適しているからである。プレートベース403,503の上部のリング状の空間に樹脂を充填し、硬化した樹脂508は、
図5に示すように、視覚障害者誘導用マーカー500を地面にしっかりと固定するためのアンカーを形成する。
【0035】
本発明では、
図4が示すように、視覚障害者誘導用マーカー400の底部404に、下部は広く、上部は狭くなっている空間を作るため、鋳造の過程での離型技術の困難さは、視覚障害者誘導用マーカー分野の技術者でさえ想像し難いものである。
図4の断面図に示すように、プレートベース403は複合キャストで、従来の視覚障害者誘導用マーカーを水平に地面に接着する方法とは異なり、硬化した樹脂508がアンカー機能を発揮し、地面への接着強度を高めることができる。
【0036】
上記の樹脂はポリウレタン、シリコン、エポキシ、合成樹脂そして自己接着性粘着剤である。柔らかい床材に充填する場合は、スピゴットなしに視覚障害者誘導用マーカーの底部にプレートベースを取り付けた視覚障害者誘導用マーカーを使うと好適である。
図11に示すように、プレートベースに付属品のスパイク700を埋め込み、床材1106に設置する。
【0037】
現場の床材に合わせて付属品を埋め込むことができるため、柔軟性が著しく高くなり、異なるスピゴットタイプによって異なる視覚障害者誘導用マーカーを鋳造する必要がなく、保管場所の必要性も大幅に軽減される。
【0038】
本例では、鋭利で薄く、半硬質の付属品を強固で硬い視覚障害者誘導用マーカーと融合したものである。精密な測定、詳細な構造、付属品の硬度、そして埋め込み方法などは、視覚障害者誘導用マーカー分野の製造技術者でさえ想像がつかないほどのものである。埋め込み付属品は、異なる床材に適応するよう、違う長さや形状を含む様々な選択ができる。