IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱鉛筆株式会社の特許一覧

特開2023-31243着色タブレット、及びこれを用いた筆記具用水性インク組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031243
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】着色タブレット、及びこれを用いた筆記具用水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20230301BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20230301BHJP
   C09K 23/42 20220101ALI20230301BHJP
【FI】
C09D11/16
C09K23/52
C09K23/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106403
(22)【出願日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021136476
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】溝口 達也
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 敬幸
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BA13
4J039BA35
4J039BC37
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA07
4J039GA26
(57)【要約】
【課題】溶解性、再分散性に優れる着色タブレット、これを用いた筆記具用水性インク組成物及び筆記具を提供する。
【解決手段】本発明の着色タブレットは、少なくとも、着色剤と、下記A群から選ばれる分散剤とを含有することを特徴とする。
A群:アクリル酸樹脂の水酸化物中和物、スチレンマレイン酸共重合体樹脂の水酸化物中和物、ポリオキシエチレン系界面活性剤、アルキル縮合環スルホン酸塩、アミンエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物、イソブチレン系ポリマー
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色剤と、下記A群から選ばれる分散剤とを含有することを特徴とする着色タブレット。
A群:アクリル酸樹脂の水酸化物中和物、スチレンマレイン酸共重合体樹脂の水酸化物中和物、ポリオキシエチレン系界面活性剤、アルキル縮合環スルホン酸塩、アミンエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物、イソブチレン系ポリマー
【請求項2】
前記着色剤と前記分散剤との質量比が0.5~10であることを特徴とする請求項1記載の着色タブレット。
【請求項3】
さらに、下記B群から選ばれる少なくとも1種の補強材を含有することを特徴とする請求項1に記載の着色タブレット。
B群:ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、グリシンベタイン、尿素、糖アルコール、ラテックス、多糖類、セルロース類、酸化チタン
【請求項4】
硬度が0.02kgf~6.0kgfであることを特徴とする請求項1に記載の着色タブレット。
【請求項5】
形状が粒状体であることを特徴とする請求項1に記載の着色タブレット。
【請求項6】
インク用液体に、請求項1~5の何れか一つに記載の着色タブレットを溶解又は分散させてなる筆記具用水性インク組成物。
【請求項7】
インク用液体に、請求項1~5の何れか一つに記載の着色タブレットを溶解又は分散させることを特徴とする筆記具用水性インク組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性、再分散性に優れる着色タブレット、及びこれを用いた筆記具用水性インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、着色剤を粉末状にして、筆記や書画描画等の際に水やインク用液体に溶解して書画描画材料、インク組成物等として使用する形態が知られている。
【0003】
例えば、以下のインクの使用形態が知られている。
1)有機及び/又は無機の着色材を水溶性樹脂が包含して成る粉体や、その粉体が複数個纏まった構造の粉体凝集体が多数集合して全体が粉末状を呈することを特徴とする墨等の書画描画材料(特許文献1参照)、
【0004】
2)炭酸塩、有機酸、糖類、着色素材を混合し圧力で固めた着色剤ペレットと、この着色剤ペレットを溶解させる溶剤と樹脂と添加剤との混合溶剤とよりなり、前記着色剤ペレットと混合溶剤とをインキの使用時において反応させることを特徴とする筆記具用インキ、このインキを用いた筆記具(特許文献2参照)、
【0005】
3)インク用液体が、これに添加される着色剤が添加されていない状態で収納されているとともに、使用開始に際して該インク用液体が該着色剤を添加されて着色インクとなることを特徴とする筆記具(特許文献3参照)、
【0006】
4)インク用液体が、これに添加される着色剤が添加されていない状態で収納されているとともに、使用開始に際して該インク用液体が該着色剤を添加されて着色インクとなり、筆記尖端へ供給される筆記具であって、前記インク用液体を収容するインク用液体収容室と、前記着色剤を収納する着色剤収納室と、これらインク用液体収容室と着色剤収納室との交通を隔離する隔離手段と、この隔離手段を除去して前記インク用液体収容室と着色剤収納室とを交通させる隔離解除手段とを備えるとともに、前記着色剤収納室と前記インク用液体収容室との交通が隔離されている状態において、同着色剤収納室内は同インク用液体収容室内より負圧に保たれていることを特徴とする筆記具(特許文献4参照)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の墨等の書画描画材料は、カーボンブラック等の着色材をポリビニルアルコール等の水溶性樹脂が包含して成る粉体などを水に溶かして用いるものであるが、溶解性が十分でなく、また、着色材も墨等の黒色に限定されるなどの課題がある。
【0008】
上記特許文献2の筆記具用インキは、インキの調製が着色剤ペレットと混合溶剤とをインキの使用時において反応させること、すなわち、着色剤ペレットに含ませた炭酸塩が水中で有機酸と反応して炭酸ガスを発生し、これと同時にペレット状態を崩壊させ溶剤に溶ける助長剤として作用すること(発泡力)により溶解性を向上させるものであるが、筆記具用インキに必要な他の成分の添加量に影響を与えたり、着色素材も食用色素などの使用に限定されるなどの課題がある。
【0009】
これらの技術のもと、更なる溶解性と再分散性に優れる着色タブレット、これを用いた筆記具用インク組成物の出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-281955号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2006-77226号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2005-271365号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2006-175730号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、溶解性、再分散性に優れる着色タブレット、及びこれを用いた筆記具用水性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、着色剤と、特定の分散剤とを含有する着色タブレットとすることなどにより、上記目的の着色タブレット、これを用いた筆記具用水性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0013】
すなわち、本発明の着色タブレットは、少なくとも、着色剤と、下記A群から選ばれる分散剤とを含有することを特徴とする。
A群:アクリル酸樹脂の水酸化物中和物、スチレンマレイン酸共重合体樹脂の水酸化物中和物、ポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤、アルキル縮合環スルホン酸塩、アミンエチレンオキサイド(EO)プロピレンオキサイド(PO)付加物、イソブチレン系ポリマー
着色剤と分散剤との質量比C/A(Cは着色剤の質量、Aは分散剤の質量を表す)は0.5~10であることが好ましい。
【0014】
着色タブレットには、下記B群から選ばれる少なくとも1種の補強材を含有することが好ましい。
B群:ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、グリシンベタイン、尿素、糖アルコール、ラテックス、多糖類、セルロース類、酸化チタン
着色タブレットの硬度は0.02kgf~6.0kgfであることが好ましい。
着色タブレットの形状は、粒状体であることが好ましい。
本発明の筆記具用水性インク組成物は、溶媒であるインク用液体に、上記構成の着色タブレットを溶解又は分散させて調製される。
本発明の水性インク組成物には、任意の色や、隠蔽性を付与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶解性に優れる着色タブレット、及び、これを用いた再分散性に優れる筆記具用水性インク組成物が提供される。
具体的には、本発明の着色タブレットは、インク用液体を溶媒として混合した際、容易に均一に溶解又は分散させることができる。本発明の着色タブレットをインク用液体に溶解又は分散させることにより調製された水性インク組成物は、長時間静置した後においても、再分散性に優れる。調製された水性インク組成物は、筆記具、例えば、マーキングペンのインク収容室や、ボールペンのリフィールに充填して使用に供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において開示される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
本発明の着色タブレットは、少なくとも、着色剤と、下記A群から選ばれる分散剤とを含有することを特徴とするものである。
A群:アクリル酸樹脂の水酸化物中和物、スチレンマレイン酸共重合体樹脂の水酸化物中和物、ポリオキシエチレン系界面活性剤、アルキル縮合環スルホン酸塩、アミンエチレンオキサイド(EO)プロピレンオキサイド(PO)付加物、イソブチレン系ポリマー
ここで、樹脂の水酸化物中和物とは、構造に含まれるカルボキシル基の少なくとも一部が、金属水酸化物との中和反応による塩を形成している樹脂を言う。
【0018】
本発明の着色タブレットに用いる着色剤としては、水に溶解もしくは分散する全ての染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性粒子等を制限なく使用することができる。
【0019】
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBB等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
【0020】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料が挙げられる。
【0021】
有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7、ニトロソ顔料等が挙げられる。
【0022】
これらの着色剤は、各単独で、又は2種以上(以下、単に「少なくとも1種」という)を混合して用いることができる。また、無機顔料等の平均粒子径は0.1~20μmであることが好ましい。本発明(実施例を含む)において、「平均粒子径」は粒度分布におけるD50の値であり、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装(株)製)〕にて、測定できる。
【0023】
これらの着色剤の含有量は、用途に応じて適宜増減することが可能であり、また、本発明では、用いる分散剤と着色剤の固形分の質量比C/A(Cは着色剤の質量、Aは分散剤の質量を表す)は、0.5~10であることが好ましく、1.0~6.0であることがより好ましい。
使用形態において、着色タブレットは、インク組成物全量に対して、0.1~30質量%(以下、「質量%」を単に「%」ともいう)が望ましい。
【0024】
本発明に用いる分散剤は、下記A群から選ばれる少なくとも1種である。A群から選ばれる分散剤を配合することにより、溶解性の優れた着色タブレットが調製される。
A群:アクリル酸樹脂の水酸化物中和物、スチレンマレイン酸共重合体樹脂の水酸化物中和物、ポリオキシエチレン系界面活性剤、アルキル縮合環スルホン酸塩、アミンエチレンオキサイド(EO)プロピレンオキサイド(PO)付加物、イソブチレン系ポリマー
【0025】
用いることができるアクリル酸樹脂には、一種もしくは複数種の(メタ)アクリル酸系モノマーの重合体からなる樹脂及び(メタ)アクリル酸系モノマーとビニル系モノマーの共重合体からなる樹脂が含まれ、(メタ)アクリル酸単独重合体、スチレン(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸ビニルスルホン酸共重合体が例示される。本発明では、アクリル酸樹脂の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの金属水酸化物による中和物が使用される。
【0026】
アクリル酸樹脂の水酸化物中和物には、スチレンアクリル酸樹脂の水酸化ナトリウム中和物、及び、スチレンアクリル酸樹脂の水酸化カリウム中和物等のスチレンアクリル酸樹脂の金属水酸化物中和物が挙げられ、市販品では、ジョンクリル690(BASF社製)の水酸化ナトリウム中和処理品、ジョンクリル690(BASF社製)の水酸化カリウム中和処理品が挙げられる。また、アクリル酸系モノマーの単独重合体の水酸化物中和物も使用することができる。市販品ではジョンクリルJDX-C3000(BASF社製)、アクアリックDL,HL(日本触媒(株)製)が挙げられる。さらに、スチレンアクリル酸共重合体樹脂であるXIRAN 1000、2000、3000、4000、6000、9000、3500、又は3600(Polyscope社製)を水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液に中和、溶解したものを用いることができる。
【0027】
スチレンマレイン酸共重合体樹脂の水酸化物中和物には、スチレンマレイン酸共重合体樹脂の水酸化ナトリウム中和物、及び、スチレンマレイン酸共重合体樹脂の水酸化カリウム中和物等のスチレンマレイン酸樹脂の金属水酸化物中和物が挙げられ、市販品では、スチレンマレイン酸共重合体樹脂のナトリウム塩の水溶液タイプであるXIRAN 1000HNa、2000HNa、3000HNa(Polyscope社製)及びスチレンマレイン酸共重合体樹脂のカリウム塩の水溶液タイプであるXIRAN 1000HK、2000HK、3000HK(Polyscpe社製)が挙げられる。
【0028】
さらには、アクリル酸マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム中和物であるアクアリックTL(日本触媒(株)製)、アクリル酸ビニルスルホン酸共重合体の水酸化ナトリウム中和物であるアクアリックGL(日本触媒(株)製)も使用することができる。一方、アクリル酸樹脂のアンモニア中和品では、経時によるアンモニア揮発のため、本発明の効果を発揮しないものとなる。
【0029】
ポリオキシエチレン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤を好ましく用いることができる。ポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニル系ノニオン界面活性剤などが挙げられ、好ましくは、本発明の効果を更に発揮せしめる点などから、ポリオキシエチレン多環フェニル系ノニオン界面活性剤である。
【0030】
ポリオキシエチレン多環フェニル系ノニオン界面活性剤は、分子骨格中にフェニル基を2つ以上有し、エチレンオキサイドが付加された構造を有するものであり、フェニル基は置換基を有しても良い。この界面活性剤は、例えば、ジスチレン化フェノールをホルムアルデヒドの存在下でホルマリン縮合してビス体を得た後、触媒存在下でエチレンオキサイドを付加重合させて製造される。
【0031】
用いることができるポリオキシエチレン多環フェニル系ノニオン界面活性剤としては、エチレンオキサイド付加モル数が10~120のものが好ましく、例えば、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化メチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル等が挙げられ、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルが特に好ましい。ポリオキシエチレン多環フェニル系ノニオン界面活性剤の具体的な例としては、エマルゲンA-60、エマルゲンA-90、エマルゲンA-500、エマルゲンB-66(花王(株)製)、ニューコール703、ニューコール704、ニューコール706、ニューコール707(日本乳化剤(株)製)、ノイゲンEA-87、ノイゲンEA-137、ノイゲンEA-157(第一工業製薬(株)製)が挙げられる。
【0032】
用いることができるアルキル縮合環スルホン酸塩としては、例えば、ジイソブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(例えば、ぺレックスNBL;花王(株)製)などの少なくとも1種を挙げることができる。
【0033】
用いることができるアミンエチレンオキサイド(EO)プロピレンオキサイド(PO)付加物としては、1,2-エタンジアミンのエチレンオキサイド(EO付加モル数が0~1000)・プロピレンオキサイド(PO付加モル数が0~1000)付加物(例えば、プルロニック(登録商標)TR701、TR702、TR704、TR913R;(株)アデカ製)などの少なくとも1種を挙げることができる。
【0034】
用いることができるイソブチレン系ポリマーとしては、例えば、イソブチレン無水マレイン酸共重合ポリマー(例えば、イソバン:スタンダードタイプ#18、#10、#06、#04、#600;(株)クラレ製)、または、イソブチレン無水マレイン酸共重合ポリマーを水酸化ナトリウム又はpH調整剤等で処理したもの(例えば、アンモニア変性品、または水酸化ナトリウム中和物、pH調整剤等で処理したもの:イソバン#110、#104;(株)クラレ製)、イソブチレン無水マレイン酸共重合ポリマーのイミド(イソバン#310、#306、#304;(株)クラレ製)などの少なくとも1種を挙げることができる。
【0035】
これらのA群から選ばれる分散剤は、各単独で、又は2種以上(以下、単に「少なくとも1種」という)を混合して用いることができる。
これらの分散剤の含有量は、用途に応じて適宜増減することが可能であり、好ましくは、分散安定性の点、分散効率の点から、用いる分散剤(A)と着色剤(C)の固形分の質量比〔(C)/(A)〕が0.5~10であることが望ましく、1~8であることが更に望ましい。
【0036】
本発明の着色タブレットでは、補強性と溶解性を更に高度に両立させる点、手でつまんだときの防汚性の点から、更に、下記B群から選ばれる少なくとも1種の補強材を含有せしめることが望ましい。B群から選ばれる補強材を配合することにより、堅牢性と溶解性の優れた着色タブレットが調製される。
B群:ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、グリシンベタイン、尿素、糖アルコール、ラテックス、多糖類、セルロース類、酸化チタン
【0037】
用いることができるポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」と略記する)は、ポリ酢酸ビニルのけん化物であり、一般式、-〔CH-CH(OH)〕m-〔CH-CH(OCOCH)〕n-で表される。本発明では、そのけん化度{〔m/(m+n)〕×100}は、作成時の混合性の点、分散性の点から、40~100mol%であるものが望ましい。具体的に用いることができるPVAとしては、市販の日本合成化学工業(株)製のA型ゴーセノールシリーズ、G型ゴーセノールシリーズ、K型ゴーセノールシリーズ(日本合成化学工業(株)製の商品名)、日本酢ビ・ポバール(株)製のJポバールシリーズ(日本酢ビ・ポバール(株)製の商品名)、(株)クラレ製のKURARAYポバールPVAシリーズ((株)クラレ製の商品名)等の中から上記好ましい範囲となるけん化度の好適なものが選択される。
【0038】
また、用いることができる変性PVAとしては、PVAの水酸基、酢酸基をカルボキシル基、スルホン酸基、アセチル基、エチレンオキサイド基などの変性基に変性したもの、または、PVAの側鎖に上記の変性基を有するものが挙げられる。また、部分けん化PVAにアクリル酸とメタクリル酸メチルを共重合したPVA・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体も本発明の変性PVAとして使用することができる。特に、けん化度40~90mol%の部分けん化PVAの変性PVAを用いることが望ましい。
【0039】
具体的に用いることができる変性PVAとしては、市販の三菱化学(株)製のゴーセネックスLシリーズ、ゴーセネックスWOシリーズ(日本合成化学工業(株)製の商品名)、日本酢ビ・ポバール(株)製のアニオン変性PVA(Aシリーズ)(日本酢ビ・ポバール(株)製の商品名)、(株)クラレ製のエクセバール1713((株)クラレ製の商品名)等の中からけん化度、重合度の好適なものが選択される。また、PVA・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重体としては、大同化成工業(株)製のPOVACOAT(大同化成工業(株)製の商品名)等の中から好適なものが選択される。
【0040】
用いることができるポリビニルピロリドン、グリシンベタイン〔(CH(CH)CHCOO〕、尿素は、市販品を使用することができる。
用いることができる糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等の単糖アルコール、イソマルチトール、マルチトール、ラクチトール等の二糖アルコール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、ピニトール等の三糖アルコール、オリゴ糖アルコール等の四糖以上の糖アルコール、これらの糖アルコールからなる還元澱粉糖化物、還元澱粉分解物が挙げられる。
【0041】
用いるラテックスとしては、単独重合体や共重合体等各種公知のラテックスの水分散物であるエマルションを用いることが好ましい。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン等の重合体があり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p-メトオキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体、ポリエステル、各種ポリウレタン等がある。これらの中でもスチレン系ラテックス、スチレンアクリル系ラテックスを用いることが好ましくい。これらのラテックスの平均粒子径は0.05~2.0μmであることが好ましい。
【0042】
用いることができる多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、HMペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガムなどが挙げられ、また、これらの市販品があればそれを使用することができる。
【0043】
用いることができるセルロース類としては、セルロースを酸加水分解又はアルカリ酸化分解して得られる実質的に一定の重合度を有するセルロース結晶子集合物である結晶セルロース、粉末セルロースが含まれ、市販品では、セオラスRC-591、RC-N81、RC-591NF、CL-611、セオラスクリーム〔以上、旭化成(株)製〕等の結晶セルロース、KCフロック W-50、W-100、W-100G、W-100Y、W-200、W-250、W-300G、W-400G、W-50GK、W-85GKN、W-100GK、NPファイバーW-100F、W-300F、W-10MG2〔以上、日本製紙(株)製〕等の粉末セルロースが挙げられる。また、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はこれらのナトリウム塩などが挙げられる。
【0044】
これらのB群から選ばれる補強材は、少なくとも1種を混合して用いることができる。また、これらの補強材の含有量は、着色性の点、分散性の点から、着色タブレット全量に対して、0.1~60質量%、更に好ましくは、0.5~20質量%とすることが望ましい。
【0045】
本発明の着色タブレットには、上記着色剤、分散剤、補強材の他、本発明の効果を損なわない範囲で、着色タブレットの形状等などに応じて、水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等、以下同様)、タブレット形状に押し固める際に、乳糖、デンプン、デキストリン、白糖、沈降シリカ、蜂蜜、コメデンプン、トラガントなどの賦形剤(丸剤の場合、賦形剤が結合剤の役割も果たす)、有機溶剤などを適宜量含有することができる。
【0046】
本発明の着色タブレットは、上記着色剤、分散剤、補強材などの各成分を用いて、混練機などで混練後、例えば、加熱乾燥法、減圧乾燥法、風力乾燥法、噴霧乾燥法、真空凍結乾燥法(フリーズドライ法)などにより、または、打錠法などにより、所定形状となる目的の着色タブレットを製造(成形)することにより得られる。
【0047】
フリーズドライ法では、着色剤、分散剤、補強材、必要に応じて賦形剤などを水と混合して得た水性混合物をフリーズドライ加工(真空凍結乾燥)する。例えば、水性混合物を型に入れ、真空凍結乾燥機を用いて凍結乾燥させることにより、所望の形状の着色タブレットが得られる。
【0048】
また、打錠法においては、着色剤、分散剤、補強材、必要に応じて賦形剤などを混合した組成物を、例えば、50℃、48時間、開放加温して水分を除去し、得られた固形分を乳鉢等で粉末化したものを押し固める。これにより、所定の形状の着色タブレットが得られる。
本発明における好ましい製造方法は、フリーズドライ加工であり、溶解性の優れた着色タブレットが調製される。
【0049】
本発明の着色タブレットは、取り扱い性、輸送時に崩れにくい性状とする点などから、硬度が0.02kgf~6.0kgfであることが好ましく、更に好ましくは、0.03kgf~3.0kgfである。この硬度範囲に調整するためには、上各方法で加工する際に、配合成分量を調整したり、加工(成形)の際の押圧などを調整したりすることにより行うことができる。本発明(後述する実施例等を含む)において、硬度は、破壊試験により測定できる。
【0050】
また、着色タブレットの形状、大きさなどは、筆記具用インクして使用するインク種、また、用いる筆記具の構造(ボールペン、マーキングペン)等に応じて、所望の形状に形成される。例えば、球状、半球状、円柱状、多角柱状、シート状、針状、マカロニ状、ドーナツ状などの各形状に形成することができ、球状、半球状、円柱状、マカロニ状の形状を有する粒状体が、使用の利便性から好ましい。また、着色タブレットの大きさは、インク種、用いる筆記具の大きさなどに応じて決められ、例えば、直交軸で計測される径が1mm×1mm×1mm(球の場合は直径:φ1mm)~10mm×10mm×10mm(直径:φ10mm)、好ましくは、3mm×3mm×3mm(直径:φ3mm)~7mm×7mm×7mm(直径:φ7mm)の範囲に調整される。
【0051】
更に、取り扱い時に手等が汚れにくい性状とするために、着色タブレット表面を水溶性高分子でコーティングしたり、スチーム加工などを施してもよい。
【0052】
このように構成される本発明の着色タブレットは、少なくとも、着色剤と、A群から選ばれる分散剤とを含有することにより、溶解性と再分散性とが高度に優れる着色タブレットとすることができる。
【0053】
次に、本発明の筆記具用水性インク組成物は、少なくとも、溶媒であるインク用液体に、上記構成の着色タブレットを溶解又は分散させてなることを特徴とする。
用いるインク用液体としては、水を主溶剤として用いることができ、さらに、溶剤として、保水性の付与、筆記感の向上の点から、水に相溶性のある水溶性溶剤を使用することができる。
【0054】
用いることができる水溶性溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ホルムアミドおよびその誘導体などのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類など、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルなどのエーテル類が挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0055】
これらの水溶性溶剤の含有量は、インク組成物全量に対して、1~30%、好ましくは、5~25%とすることが望ましい。
【0056】
本発明の筆記具用水性インク組成物には、更に、上記以外の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記着色タブレットと併せて補助的に着色剤(前記着色タブレット以外の顔料、染料など)を添加することもでき、また、水性インクなどに汎用されている添加剤(任意成分)などを用いることができる。
【0057】
用いることができる添加剤としては、例えば、pH調整剤として、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリポリ燐酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの燐酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、防錆剤もしくは防黴剤として、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン3-オン、2,3,4,5-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、安息香酸ナトリウムなど、安息香酸やソルビタン酸やデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。更に、必要に応じて、劣化防止剤や紫外線吸収剤等の添加剤も配合することができる。
【0058】
本発明の筆記具用水性インク組成物は、溶媒である上記インク用液体に、上記構成の着色タブレットを常法により溶解又は分散せしめることにより、容易に調製することができる。上記調製の際の着色タブレットの含有量は、インクの色の調製、筆記具の用途等により、変動するものであり、インク組成物全量に対して、0.1~30質量%程度である。
【0059】
また、上記インク組成物を調製する際に、例えば、他種類の色彩の着色タブレットを用意し、その中から所望のものを選んで溶解等させたり、また、任意の組合せで混色を楽しんだりすることも可能となる。
着色タブレットを、使用者が任意に選択できる単色又は2色以上の混色とすることで、使用者の好みに応じて、または必要に応じて、インクの色を調色できる筆記具用水性インク組成物とすることが可能となる。
【0060】
例えば、着色タブレットの着色剤の色が、例えば、赤、青、黄(シアン、マゼンタ、イエロー)となる3種類の着色剤を用いて調製された着色タブレットを用意し、それぞれ検量し複数個用意することも可能である。このとき、使用者は3種類の着色タブレットから任意の組み合わせで、着色タブレット2個を選択する。選んだ2個の着色タブレットとインク用液体とを混合し使用する。このとき、使用者が赤色の着色タブレットを選択したときインクは赤色を呈するが、例えば、赤、青の組み合わせの着色タブレットならば、紫色のインクが作成でき、赤、黄の着色タブレットの組み合わせならば、橙色のインクが作成できる。選択できる着色タブレットの色数を、n個とすると、そのうち2つを選んで調色できる色の数は、同色同士の組合せも可能とすれば、(+n)個となる。さらに1度に混合する着色タブレットの数を2個以上に増やすことで、調色可能となる色の数を飛躍的に増やすことができる。更に、着色タブレットの着色剤として酸化チタン(白色を選択)とすることで、調色するインクに隠蔽性を付与したりとすることができる。
【0061】
本発明の筆記具用水性インク組成物によれば、少なくとも、溶媒である上記インク用液体に、上記構成の着色タブレットを溶解又は分散させてなることにより、溶解性と再分散性とに優れると共に、任意の色や、隠蔽性を有する様々な特性の筆記具用水性インク組成物が得られるものとなる。
【0062】
この調製した筆記具用水性インク組成物を既存の筆記具、例えば、マーキングペンのインク収容室や、ボールペンではリフィールに充填して使用に供することができ、また、後述する構造の筆記具を用いて使用に供することができる。
【0063】
本発明の筆記具は、溶媒である上記構成のインク用液体が、マーキングペンなどの筆記具本体内(ボールペンではリフィールを含む)に収容され、使用開始に際して、該インク用液体に、上述の構成となる着色タブレットを添加して着色インクとし、該着色インクが筆記具本体の先端側に備えたペン先(ボールペンチップ、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップなど)へ導出される。
【0064】
上記実施形態の筆記具としては、例えば、前記インク用液体を収容すると共に、脱着可能な蓋部材を有する液体収容室を備える筆記具(マーキングペン)であって、該蓋を取り外して該液体収容室に述の構成となる着色タブレットを添加して溶解又は分散せしめることにより、着色インクとし、該着色インクが筆記具本体の先端側に備えたペン先(焼結芯、繊維束)へ導出されることにより、ペン先で筆記を可能とするものである。本発明の水性インク組成物を使用することにより、溶解性と再分散性とに優れる筆記具が得られる。
【実施例0065】
次に、着色タブレットの実施例1~14及び比較例1~5などにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0066】
〔実施例1~14及び比較例1~5〕
下記表1に示す配合処方、及び下記に示す成形加工方法にしたがって、各着色タブレットを作製した。以下において、「部」は質量部を示し、全体が100部(100質量%)を示す。
得られた各着色タブレットについて、電子天秤(メトラー社製)を用いて押し付け破壊試験方法により硬度を測定した。
また、後述する方法により溶解性試験、再分散性試験を行った。用いたインク用液体Y,Zは後述する組成のものを用いた。
これらの結果を下記表1に示す。
【0067】
(フリーズドライ加工)
着色剤としてピグメントブルー15を20部、分散剤としてポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(エマルゲンA90、花王(株)製)を6部、補強材として結晶セルロースを1部、水73部をメノウ鉢にて十分に混合し、型に入れた後、真空凍結乾燥機を用いてフリーズドライ加工して、形状:球状、大きさ:直径φ約5mmの着色タブレットを得た。
【0068】
(加圧成形加工)
着色剤としてピグメントレッド122を20部、分散剤としてスチレンアクリル酸樹脂水酸化ナトリウム中和品(ジョンクリル690:20%水溶液、BASF社製)を6部(固形分として)、補強材としてキシリトール(和光純薬(株)製)を3部を、メノウ鉢にて十分に混練し、乾燥させ、再度、メノウ鉢で解砕した後、治具に入れてプレス機により加圧成形加工して、形状:円柱状、大きさ:直径5mm×高さ5mmの着色タブレットを得た。
【0069】
(インク用液体Y,Z)
着色タブレットに、下記の組成のインク用液体Y又はZを混合して、着色インクを調製した。
インク用液体Y:マーキングペン用白インクに適用可能な混合溶媒
水(精製水)75質量%、水溶性溶剤(グリセリン)5質量%、その他の成分(合計)20質量%
インク用液体Z:マーキングペン用メタリック銀インクに適用可能な混合溶媒
水(精製水):85質量%、水溶性溶剤(グリセリン)5質量%、その他の成分(合計)10質量%
【0070】
<溶解性試験>
インク用液体Y(又はインク用液体Z)及び各実施例(又は比較例)で作成した着色タブレット1個を、ペン先を押しこむ操作(ポンピング)によりペン先がマーキングペン本体に挿入され、インクがペン先に向かって押圧される機構を備えた市販のマーキングペン(三菱鉛筆(株)製、商品名ポスカPC-5M)の本体内部の空の軸内に投入し、50回上下振蕩した後、逆さにして軸内のインク組成物をろ紙にとり出して、着色タブレットの溶け残りを目視にて下記評価基準で評価した。
評価基準:
A:溶け残りなし
B:わずかに溶け残りあり
C:溶解しない
【0071】
<再分散性試験>
インク用液体Y(又はインク用液体Z)及び各実施例(又は比較例)で作成した着色タブレット1個を、市販のマーキングペン(三菱鉛筆(株)製、商品名ポスカPC-5M;垂直に持ったペンのペン先を押し込む操作(ポンピング)により、ペン先がマーキングペン本体に挿入され、インクがペン先に向かって押圧される機構を備える)の本体内部の空の軸内に投入し、50回上下振蕩した後、ペン先下向きの状態で40℃にて1週間、静置保管した。25℃の部屋に移し、1時間静置して冷ましたのち、30回上下振蕩した。
【0072】
次いで、このマーキングペンをPPC紙面に滑らせ、インクが出ない場合は、ペン先を押し込むポンピングを行った。このポンピング操作を、ペン先にインクが到達して流出し始めるまで繰り返した。ポンピング回数を計測し、下記評価基準で評価をした。ポンピング回数が多いほど、目詰まりが発生しやすく、再分散性が悪いと判断された。
評価基準:
A:ポンピング回数が1回以上~10回未満
B:ポンピング回数が10回以上~20回未満
C:ポンピング回数が20回以上
【0073】
【表1】
【0074】
上記表1中の*1~*10は、下記の市販品である。
*1:エマルゲンA90、花王(株)製
*2:ジョンクリル690、BASF社製
*2A:XIRAN2000HNa、Polyscope社製
*3:ジョンクリル63J、BASF社製
*4:イソバン#04、クラレ(株)製
*5:ぺレックスNBL、花王(株)製
*6:プルロニック(登録商標)TR701、アデカ(株)製
*7:ジョンクリル678、BASF社製
*7A:ジョンクリルJDX-C3000、BASF社製
*7B:アクアリックGL、日本触媒(株)製
*8:セオラスRC591、旭化成(株)製
*8A:KCフロックW-50GK、日本製紙(株)製
*9:キシリトール、和光純薬(株)製
*10:PVP K30、和光純薬(株)製
*11:CR-50、石原産業(株)製
【0075】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1~14の着色タブレットは、本発明の範囲外となる比較例1~5に較べ、溶解性、再分散性に優れ、これらは高度に両立できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の着色タブレットは、インク組成物に好適に利用することができる。本発明のインク組成物は、サインペン、マーキングペン、ボールペンなどの用途に好適に適用することができる。