(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031264
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】容易な機械加工性を有するケイ酸リチウムガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
C03C 10/04 20060101AFI20230301BHJP
A61K 6/802 20200101ALI20230301BHJP
A61K 6/807 20200101ALI20230301BHJP
A61K 6/816 20200101ALI20230301BHJP
A61K 6/818 20200101ALI20230301BHJP
A61K 6/822 20200101ALI20230301BHJP
A61K 6/824 20200101ALI20230301BHJP
【FI】
C03C10/04
A61K6/802
A61K6/807
A61K6/816
A61K6/818
A61K6/822
A61K6/824
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022123135
(22)【出願日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】21192546
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リッツベルガー
【テーマコード(参考)】
4C089
4G062
【Fターム(参考)】
4C089AA02
4C089AA06
4C089AA09
4C089BA01
4C089BA02
4C089BA03
4C089BA04
4C089BA05
4C089BA06
4C089BA07
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4C089BA15
4C089CA05
4G062AA11
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4G062JJ01
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4G062KK10
4G062MM20
4G062NN29
4G062NN34
4G062QQ06
(57)【要約】
【課題】
容易な機械加工性を有するケイ酸リチウムガラスセラミックを提供することである。
【解決手段】
本発明は、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを有し、30wt%以下のメタケイ酸リチウム結晶を含み、示される量の以下の成分を含み、
Me
I
2Oが、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、SiO
2のLi
2Oに対するモル比が、2.5~5.0の範囲である、ケイ酸リチウムガラスセラミックに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含み、示される量の以下の成分を含み、
【表15】
Me
I
2Oが、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、
SiO
2のLi
2Oに対するモル比が、2.5~5.0の範囲である、
ケイ酸リチウムガラスセラミック。
【請求項2】
73.1~80.0、好ましくは74.0~78.0wt%のSiO2を含む、請求項1に記載のガラスセラミック。
【請求項3】
7.0~12.9、好ましくは8.0~12.0wt%のLi2Oを含む、請求項1または2に記載のガラスセラミック。
【請求項4】
5.1~10.0、好ましくは5.5~7.0wt%のさらなる、一価元素の酸化物MeI
2Oを含み、MeI
2Oが、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2Oおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはK2Oである、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項5】
4.0~7.0、好ましくは5.1~6.5wt%のAl2O3を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項6】
1.0~4.0、好ましくは1.2~2.6、特に好ましくは1.5~2.5wt%のP2O5を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項7】
示される量の以下の成分の少なくとも1つ、好ましくはすべてを含み、
【表16】
Me
I
2Oが、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、
Me
IIOが、MgO、CaO、SrO、ZnOおよびそれらの混合物から選択され、
Me
III
2O
3が、B
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3、Ga
2O
3、In
2O
3およびそれらの混合物から選択され、
Me
IVO
2が、TiO
2、ZrO
2、GeO
2、SnO
2、CeO
2およびそれらの混合物から選択され、
Me
V
2O
5が、V
2O
5、Nb
2O
5、Ta
2O
5およびそれらの混合物から選択され、
Me
VIO
3が、MoO
3、WO
3およびそれらの混合物から選択される、
請求項1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項8】
SiO2のLi2Oに対するモル比が、2.9~4.6の範囲、好ましくは3.3~4.4の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項9】
30wt%以下、好ましくは28wt%以下、特に好ましくは26wt%以下、より好ましくは22wt%以下、特に10~30wt%、好ましくは12~28wt%、特に好ましくは15~26wt%、より好ましくは18~22wt%のメタケイ酸リチウム結晶を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項10】
前記メタケイ酸リチウム結晶の平均サイズが、5~80nmの範囲、特に10~50nmの範囲、好ましくは15~45nmの範囲、特に好ましくは25~35nmの範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミックの前記成分を含み、特にメタケイ酸リチウム結晶の形成のための核を含む、出発ガラス。
【請求項12】
前記ガラスセラミックおよび前記出発ガラスが、粉末、粒状物、ブランクまたは歯科修復物の形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項11に記載の出発ガラス。
【請求項13】
請求項1~10および12のいずれか一項に記載のガラスセラミックの調製のための方法であって、請求項11または12に記載の出発ガラスを、450~750℃の範囲の少なくとも1回の熱処理に供する、方法。
【請求項14】
(a)前記出発ガラスを、450~600℃の温度における熱処理に供して、核を含む出発ガラスを形成し、
(b)核を含む前記出発ガラスを、550~750℃の温度における熱処理に供して、前記ガラスセラミックを形成する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~10および12のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項11もしくは12に記載の出発ガラスの、歯科材料としての使用であって、好ましくは歯科修復物をコーティングするための、特に好ましくは歯科修復物の調製のための、使用。
【請求項16】
前記ガラスセラミックに、圧縮または機械加工によって、所望の歯科修復物、特にブリッジ、インレー、アンレー、ベニヤ、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットの形状を与える、歯科修復物の調製のための、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記ガラスセラミックを、750~950℃、好ましくは820~890℃、特に好ましくは840~870℃の温度における熱処理に、特に1~60分間、好ましくは5~30分間、より好ましくは5~15分間、さらにより好ましくは5~10分間の期間にわたって供する、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
歯科修復物、特にブリッジ、インレー、アンレー、ベニヤ、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットの調製のための方法であって、請求項1~10および12のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項11もしくは12に記載の出発ガラスに、特にCAD/CAMプロセスにおいて、圧縮または機械加工によって所望の歯科修復物の形状を与える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸リチウムガラスセラミックに関し、特に歯科における使用に適し、特に歯科修復物の調製に適しており、本発明は、このガラスセラミックの調製のための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸リチウムガラスセラミックは、一般に、非常に良好な機械特性によって特徴付けられ、その特性がゆえに、ケイ酸リチウムガラスセラミックは、ここしばらくの間、歯科分野において、主に歯科クラウンおよび小型歯科ブリッジの作製のために使用されてきた。
【0003】
国際公開第95/32678号は、粘性状態での圧縮によって歯科修復物に加工される二ケイ酸リチウムガラスセラミックを記載している。しかし、変形可能なるつぼの使用が必須であり、そのことが加工を非常に複雑にしている。
【0004】
欧州特許出願公開第0827941号および欧州特許出願公開第0916625号は、圧縮または機械加工によって所望の歯科修復物の形状が与えられ得る二ケイ酸リチウムガラスセラミックを開示している。
欧州特許出願公開第1505041号および欧州特許出願公開第1688398号は、二ケイ酸リチウムガラスセラミックの歯科修復物を生成するための方法を記載している。この方法では、まず、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含むガラスセラミックが前駆体として生成され、それを、例えばCAD/CAMプロセスを用いることによって機械処理することができる。次に、この前駆体を、さらなる熱処理に供して、所望の高強度二ケイ酸リチウムガラスセラミックを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第95/32678号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0827941号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0916625号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1505041号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1688398号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の二ケイ酸リチウムガラスセラミックの機械加工は、それらの高強度に起因して困難であり、したがって、使用される工具が定期的に大きく摩耗する。メタケイ酸リチウムガラスセラミックの機械加工は、基本的により容易であり、工具の摩耗が少ないことが見込まれる。しかし、公知のメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、例えば、一般的なCAD/CAM機の研削工具によって初めて、相対的にゆっくり機械加工することができる。このことは、単一の処置セッション(いわゆる診察台脇での処置)で患者に歯科修復物を提供することが頻繁に望まれる場合、特に問題となる。
【0007】
したがって、公知のメタケイ酸リチウムガラスセラミックよりも急速に機械加工することができ、その後、やはり高い化学抵抗性および優れた光学特性を示す高強度歯科生成物に変換することができるケイ酸リチウムガラスセラミックが必要である。
【0008】
この問題は、請求項1~10および12によるケイ酸リチウムガラスセラミックによって解決される。また本発明の主題は、請求項11および12による出発ガラス、請求項13および14による方法、請求項15~17による使用、ならびに請求項18による方法である。
本願は、例えば、以下を提供する。
(1)主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含み、示される量の以下の成分を含み、
【表3】
Me
I
2Oが、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、
SiO
2のLi
2Oに対するモル比が、2.5~5.0の範囲である、
ケイ酸リチウムガラスセラミック。
(2)73.1~80.0、好ましくは74.0~78.0wt%のSiO
2を含む、前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(3)7.0~12.9、好ましくは8.0~12.0wt%のLi
2Oを含む、前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(4)5.1~10.0、好ましくは5.5~7.0wt%のさらなる、一価元素の酸化物Me
I
2Oを含み、Me
I
2Oが、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはK
2Oである、前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(5)4.0~7.0、好ましくは5.1~6.5wt%のAl
2O
3を含む、前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(6)1.0~4.0、好ましくは1.2~2.6、特に好ましくは1.5~2.5wt%のP
2O
5を含む、前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(7)示される量の以下の成分の少なくとも1つ、好ましくはすべてを含み、
【表4】
Me
I
2Oが、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、
Me
IIOが、MgO、CaO、SrO、ZnOおよびそれらの混合物から選択され、
Me
III
2O
3が、B
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3、Ga
2O
3、In
2O
3およびそれらの混合物から選択され、
Me
IVO
2が、TiO
2、ZrO
2、GeO
2、SnO
2、CeO
2およびそれらの混合物から選択され、
Me
V
2O
5が、V
2O
5、Nb
2O
5、Ta
2O
5およびそれらの混合物から選択され、
Me
VIO
3が、MoO
3、WO
3およびそれらの混合物から選択される、
前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(8)SiO
2のLi
2Oに対するモル比が、2.9~4.6の範囲、好ましくは3.3~4.4の範囲である、前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(9)30wt%以下、好ましくは28wt%以下、特に好ましくは26wt%以下、より好ましくは22wt%以下、特に10~30wt%、好ましくは12~28wt%、特に好ましくは15~26wt%、より好ましくは18~22wt%のメタケイ酸リチウム結晶を含む、前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(10)前記メタケイ酸リチウム結晶の平均サイズが、5~80nmの範囲、特に10~50nmの範囲、好ましくは15~45nmの範囲、特に好ましくは25~35nmの範囲である、前記態様のいずれかのガラスセラミック。
(11)請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミックの前記成分を含み、特にメタケイ酸リチウム結晶の形成のための核を含む、出発ガラス。
(12)前記ガラスセラミックおよび前記出発ガラスが、粉末、粒状物、ブランクまたは歯科修復物の形態である、前記態様のいずれかのガラスセラミックまたは前記態様のいずれかの出発ガラス。
(13)前記態様のいずれかのガラスセラミックの調製のための方法であって、前記態様のいずれかの出発ガラスを、450~750℃の範囲の少なくとも1回の熱処理に供する、方法。
(14)(a)前記出発ガラスを、450~600℃の温度における熱処理に供して、核を含む出発ガラスを形成し、
(b)核を含む前記出発ガラスを、550~750℃の温度における熱処理に供して、前記ガラスセラミックを形成する、前記態様のいずれかの方法。
(15)歯科材料としての、好ましくは歯科修復物をコーティングするための、特に好ましくは歯科修復物の調製のための、前記態様のいずれかのガラスセラミックまたは前記態様のいずれかの出発ガラスの、使用。
(16)前記ガラスセラミックに、圧縮または機械加工によって、所望の歯科修復物、特にブリッジ、インレー、アンレー、ベニヤ、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットの形状を与える、歯科修復物の調製のための、前記態様のいずれかの使用。
(17)前記ガラスセラミックを、750~950℃、好ましくは820~890℃、特に好ましくは840~870℃の温度における熱処理に、特に1~60分間、好ましくは5~30分間、より好ましくは5~15分間、さらにより好ましくは5~10分間の期間にわたって供する、前記態様のいずれかの使用。
(18)歯科修復物、特にブリッジ、インレー、アンレー、ベニヤ、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットの調製のための方法であって、前記態様のいずれかのガラスセラミックまたは前記態様のいずれかの出発ガラスに、特にCAD/CAMプロセスにおいて、圧縮または機械加工によって所望の歯科修復物の形状を与える、方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ケイ酸リチウムガラスセラミックに関し、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを有し、30wt%以下のメタケイ酸リチウム結晶を含み、
示される量の以下の成分を含み、
【表5】
Me
I
2Oが、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、
SiO
2のLi
2Oに対するモル比が、2.5~5.0の範囲である。
【0010】
本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを有し、示される量の以下の成分を含み、
【表6】
Me
I
2Oが、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、
SiO
2のLi
2Oに対するモル比が、2.5~5.0の範囲である
ことを特徴とする。
【0011】
驚くべきことに、本発明によるガラスセラミックは、特に歯科修復物材料のために必要に応じて、非常に望ましい機械特性および光学特性の組合せを組み込むことが示された。このガラスセラミックは、強度および靭性が低く、したがって、複雑な歯科修復物の形状にも、容易にかつ非常に短時間で機械加工することができるが、このような機械加工後は、熱処理によって、優れた機械特性、優れた光学特性および非常に良好な化学的安定性を有するガラスセラミック生成物に変換することができる。
【0012】
「主な結晶相」という用語は、ガラスセラミックに存在するすべての結晶相の質量により、最も高い割合を有する結晶相を説明するために使用される。結晶相の質量は、特にリートベルト法を使用して決定される。リートベルト法を用いることによる結晶相の定量的分析に適した手順は、例えば、M. Dittmer 「Glaser und Glaskeramiken im System MgO-Al2O3-SiO2 mit ZrO2 als Keimbildner」、University of Jena 2011による論文に記載されている。
【0013】
本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、特に73.1~80.0、好ましくは74.0~78.0wt%のSiO2を含む。
【0014】
ガラスセラミックは、7.0~12.9、好ましくは8.0~12.0wt%のLi2Oを含むことがさらに好ましい。Li2Oは、ガラスマトリックスの粘度を低下し、したがって所望の相の結晶化を促進すると考えられる。
【0015】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、5.1~10.0、好ましくは5.5~7.0wt%のさらなる、一価元素の酸化物Me
I
2Oを含み、Me
I
2Oは、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはK
2Oである。 特に好ましくは、ガラスセラミックは、示される量の以下のさらなる、一価元素の酸化物Me
I
2Oの少なくとも1つ、特にすべてを含む。
【表7】
【0016】
特に好ましい実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、2.0~10.0、好ましくは5.1~9.0、特に好ましくは5.5~7.0wt%のK2Oを含む。
【0017】
またガラスセラミックは、4.0~7.0、好ましくは5.1~6.5wt%のAl2O3を含むことが好ましい。
【0018】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、1.0~4.0、好ましくは1.2~2.6、特に好ましくは1.5~2.5wt%のP2O5を含む。P2O5は、核形成剤として作用すると考えられる。
【0019】
ガラスセラミックは、1.0~9.0、好ましくは2.0~8.0、特に好ましくは3.0~7.0wt%の、MgO、CaO、SrO、ZnOおよびそれらの混合物の群から選択される二価元素の酸化物MeIIOを含むことがさらに好ましい。
【0020】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、2.0wt%未満のBaOを含む。特に、ガラスセラミックは、BaOを実質的に含まない。
【0021】
好ましくは、ガラスセラミックは、示される量の以下の二価元素の酸化物Me
IIOの少なくとも1つ、特にすべてを含む。
【表8】
【0022】
特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、0.1~4.0、好ましくは0.5~3.0、特に好ましくは1.0~2.0wt%のMgOを含む。
【0023】
別の特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、0.1~7.0、好ましくは1.0~6.0、特に好ましくは2.0~5.0、最も好ましくは3.0~4.0wt%のSrOを含む。
【0024】
さらに、0~8.0、好ましくは1.0~7.0、特に好ましくは2.0~6.0wt%の、B2O3、Y2O3、La2O3、Ga2O3、In2O3およびそれらの混合物の群から選択されるさらなる、三価元素の酸化物MeIII
2O3を含むガラスセラミックが好ましい。
【0025】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、示される量の以下のさらなる、三価元素の酸化物Me
III
2O
3の少なくとも1つ、特にすべてを含む。
【表9】
【0026】
さらに、0~10.0、好ましくは1.0~8.0、特に好ましくは2.0~6.0wt%の、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、CeO2およびそれらの混合物の群から選択される四価元素の酸化物MeIVO2を含むガラスセラミックが好ましい。
【0027】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、示される量の以下の四価元素の酸化物Me
IVO
2の少なくとも1つ、特にすべてを含む。
【表10】
【0028】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、0~8.0、好ましくは1.0~7.0、特に好ましくは2.0~6.0wt%の、V2O5、Nb2O5、Ta2O5、およびそれらの混合物からなる群から選択されるさらなる、五価元素の酸化物MeV
2O5を含む。
【0029】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、示される量の以下のさらなる、五価元素の酸化物Me
V
2O
5の少なくとも1つ、特にすべてを含む。
【表11】
【0030】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、0~5.0、好ましくは1.0~4.0、特に好ましくは2.0~3.0wt%の、MoO3、WO3、およびそれらの混合物からなる群から選択される六価元素の酸化物MeVIO3を含む。
【0031】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、示される量の以下の酸化物Me
VIO
3の少なくとも1つ、特にすべてを含む。
【表12】
【0032】
さらなる実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、0~1.0、特に0~0.5wt%のフッ素を含む。
【0033】
特に好ましいのは、示される量の以下の成分の少なくとも1つ、好ましくはすべてを含み、
【表13】
Me
I
2O、Me
IIO、Me
III
2O
3、Me
IVO
2、Me
V
2O
5およびMe
VIO
3が上記の意味を有する、
ガラスセラミックである。
【0034】
別の特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、示される量の以下の成分の少なくとも1つ、好ましくはすべてを含む。
【表14】
【0035】
前述の成分の一部は、着色剤および/または蛍光剤として働くことができる。本発明によるガラスセラミックは、追加の着色剤および/または蛍光剤をさらに含むことができる。これらは、例えばBi2O3またはBi2O5から、特にさらなる無機顔料ならびに/またはdおよびf元素の酸化物、例えばMn、Fe、Co、Pr、Nd、Tb、Er、Dy、EuおよびYbの酸化物から選択することができる。これらの着色剤および蛍光剤を用いることによって、特に天然歯科材料の所望の光学活性を模倣するために、ガラスセラミックを容易に着色することが可能になる。
【0036】
ガラスセラミックの好ましい実施形態では、SiO2のLi2Oに対するモル比は、2.9~4.6の範囲、好ましくは3.3~4.4の範囲である。Li2Oに対するSiO2のこれらの高いモル過剰にもかかわらず、本発明のガラスセラミックが、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを用いて形成され得ることは、驚くべきことである。
【0037】
好ましくは、本発明によるガラスセラミックは、30wt%以下、好ましくは28wt%以下、特に好ましくは26wt%以下、最も好ましくは22wt%以下のメタケイ酸リチウム結晶を含む。特に好ましくは、ガラスセラミックは、10~30wt%、好ましくは12~28wt%、より好ましくは15~26wt%、最も好ましくは18~22wt%のメタケイ酸リチウム結晶を含む。
【0038】
本発明によるガラスセラミックにおいて、メタケイ酸リチウム結晶の平均サイズは、5~80nmの範囲、特に10~50nmの範囲、好ましくは15~45nmの範囲、特に好ましくは25~35nmの範囲であることがさらに好ましい。
【0039】
メタケイ酸リチウム結晶の平均サイズは、特に、ガラスセラミック粉末に対してCuKα放射線を用いるX線回折によって決定することができる。この目的では、得られたX線回折パターンは、リートベルト法に従って評価することができ、メタケイ酸リチウム結晶の平均サイズは、シェラーの式に従って、メタケイ酸リチウムのピークの半値幅から計算することができる。この評価は、好ましくは、ソフトウェア支援を用いて、例えばBruker製のTOPAS 5.0ソフトウェアを用いて行うことができる。
【0040】
本発明によるガラスセラミックは、メタケイ酸リチウムに加えて、石英、特に低温型石英、アパタイト、アルミノケイ酸セシウム、特にリン酸リチウムなどのさらなる結晶相を含むことができる。しかし、クリストバライトの量は、可能な限り少なく、特に1.0wt%未満であるべきである。本発明によるガラスセラミックは、クリストバライトを実質的に含まないことが、特に好ましい。
【0041】
形成された結晶相の種類、特に量は、出発ガラスの組成および出発ガラスからガラスセラミックを生成するために適用される熱処理によって制御することができる。それらの例は、出発ガラスの組成および適用される熱処理を変えることによってこれを示す。
【0042】
ガラスセラミックは、好ましくは少なくとも80MPa、特に好ましくは100~200MPaの二軸破壊強度を有する。二軸破壊強度は、ISO6872(2008)(ピストンオンスリーボール試験(piston-on-three-balls test))に従って決定された。
【0043】
本発明によるガラスセラミックは、好ましくは9.5~14.0・10-6K-1の熱膨張係数CTE(100~500℃の範囲で測定される)を有する。CTEは、ISO6872(2008)に従って決定される。熱膨張係数は、特に、ガラスセラミックに存在する結晶相の種類および量、ならびにガラスセラミックの化学組成によって、所望の値に調整される。
【0044】
ガラスセラミックの半透明性は、英国基準BS5612に従ってコントラスト値(CR値)に関して決定され、このコントラスト値は、好ましくは40~92であった。
【0045】
本発明はまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックを熱処理によって生成することができる、対応する組成の様々な前駆体に関する。これらの前駆体は、それに応じて構成された出発ガラスおよびそれに応じて構成された核を含む出発ガラスである。「対応する組成」という用語は、これらの前駆体が、ガラスセラミックと同じ成分を同じ量で含むことを意味し、それらの成分は、ガラスおよびガラスセラミックで通常の通り、フッ素を除いた酸化物として計算される。
【0046】
したがって、本発明はまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックの成分を含む出発ガラスに関する。
【0047】
したがって、本発明による出発ガラスは、特に、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含む本発明によるガラスセラミックを形成するために必要とされる、適量のSiO2、Li2O、MeI
2O、Al2O3およびP2O5を含む。さらに、出発ガラスはまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックについて先に示した通り、他の成分を含むことができる。すべてのこのような実施形態は、出発ガラスの成分にとって好ましく、それらの成分もまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックの成分にとって好ましいものとして示される。
【0048】
本発明はまた、メタケイ酸リチウム結晶を形成するための核を含む、このような出発ガラスに関する。
【0049】
本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックおよび本発明による出発ガラスは、特に、任意の形状およびサイズの粉末、顆粒(granule)またはブランク、例えばモノリシックブランク、例えば板状物(platelet)、直方体もしくは円柱、または圧粉体(powdercompact)の形態で存在し、未焼結の、部分的に焼結されたもしくは高密度に焼結された形態で存在する。これらの形態では、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックおよび本発明による出発ガラスは、容易にさらに加工することができる。しかし、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックおよび本発明による出発ガラスは、歯科修復物、例えばインレー、アンレー、クラウン、ベニヤ、ファセットまたはアバットメントの形態であってもよい。
【0050】
出発ガラスの調製のための手順は、特に、適切な出発材料、例えば炭酸塩、酸化物、リン酸塩およびフッ化物の混合物を、特に1300~1600℃の温度で2~10時間溶融するような手順である。特に高い均質性を達成するために、得られたガラス溶融物を水に注いで、ガラス粒状物(granulate)を形成し、次に、得られた粒状物を再び溶融する。
【0051】
次に、溶融物を型に注いで、出発ガラスのブランク、いわゆる固体ガラスブランクまたはモノリシックブランクを生成することができる。
【0052】
溶融物を再び水に導入して、粒状物を生成することも可能である。研削、ならびに必要に応じてさらなる成分、例えば着色剤および蛍光剤の添加後、この粒状物を、ブランク、いわゆる圧粉体に圧縮することができる。
【0053】
最後に、出発ガラスは、造粒後に粉末に加工することもできる。
【0054】
その後、例えば固体ガラスブランク、圧粉体の形態の、または粉末の形態の出発ガラスを、少なくとも1回の熱処理に供する。まず、最初の熱処理を行って、メタケイ酸リチウム結晶を形成するための核を含む本発明による出発ガラスを生成することが好ましい。次に、核を含む出発ガラスを、典型的には、より高温における少なくとも1回のさらなる熱処理に供して、メタケイ酸リチウムを結晶化し、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックを調製する。
【0055】
したがって本発明はまた、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックを調製するための方法であって、出発ガラスまたは核を含む出発ガラスを、450~750℃の温度における少なくとも1回の熱処理に、特に1~120分間、好ましくは5~120分間、特に好ましくは10~60分間の期間にわたって供する、方法に関する。
【0056】
本発明による方法において行われる少なくとも1回の熱処理は、本発明による出発ガラスもしくは本発明による核を含む出発ガラスの加熱圧縮または焼結の過程で行うこともできる。
【0057】
メタケイ酸リチウムの結晶化のための核を含む出発ガラスを生成するために、出発ガラスは、450~600℃、好ましくは480~580℃、特に好ましくは480~520℃の温度における熱処理に、特に1~120分間、好ましくは10~60分間の期間にわたって供することが好ましい。
【0058】
ケイ酸リチウムガラスセラミックを生成するために、核を含む出発ガラスは、550~750℃、好ましくは580~700℃、特に好ましくは590~630℃の温度における熱処理に、特に1~120分間、好ましくは5~60分間、特に好ましくは10~30分間の期間にわたって供することがさらに好ましい。
【0059】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックを調製するための方法は、
(a)出発ガラスを、450~600℃、好ましくは480~580℃、特に好ましくは480~520℃の温度における熱処理に、特に1~120分間、好ましくは10~60分間の期間にわたって供して、核を含む出発ガラスを形成すること、および
(b)核を含む出発ガラスを、550~750℃、好ましくは580~700℃、特に好ましくは590~630℃の温度における熱処理に、特に1~120分間、好ましくは5~60分間、特に好ましくは10~30分間の期間にわたって供して、ガラスセラミックを形成すること
を含む。
【0060】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスは、それらの前述の特性に起因して、歯科における使用に特に適している。したがって、本発明の目的はまた、歯科材料としての、特に歯科修復物の調製のための、または歯科修復物のためのコーティング材料としての、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスの使用である。
【0061】
特に、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスは、歯科修復物、例えばブリッジ、インレー、アンレー、ベニヤ、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを調製するために使用することができる。したがって、本発明はまた、歯科修復物の調製のための、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスの使用に関する。この状況では、ガラスセラミックまたはガラスに、圧縮または機械加工によって所望の歯科修復物の形状を与えることが好ましい。
【0062】
本発明はまた、歯科修復物を調製するための方法であって、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスに、圧縮または機械加工によって所望の歯科修復物の形状を与える、方法に関する。
【0063】
圧縮は、通常、増大された圧力および上昇させられた温度で行われる。圧縮は、700~1200℃の温度で実施されることが好ましい。圧縮は、2~10バールの圧力で行われることがさらに好ましい。圧縮中、使用される材料の粘性流によって、所望の形状変化が達成される。本発明による出発ガラス、特に本発明による核を含む出発ガラス、および本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、圧縮のために使用することができる。本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、任意の形状およびサイズのブランク、例えば固体ブランクまたは圧粉体の形態で使用し、例えば未焼結の、部分的に焼結されたもしくは高密度に焼結された形態で使用することができる。
【0064】
機械加工は、通常、材料研磨プロセスによって、特にミーリングおよび/または研削によって実施される。機械加工は、CAD/CAMプロセスの一部として行われることが特に好ましい。本発明による出発ガラス、本発明による核を含む出発ガラスおよび本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、機械加工のために使用することができる。本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、ブランク、例えば固体ブランクまたは圧粉体の形態で使用し、例えば未焼結の、部分的に焼結されたもしくは高密度に焼結された形態で使用することができる。好ましくは、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、機械加工のために使用される。
【0065】
驚くべきことに、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、同じ力を適用すると、公知のケイ酸リチウムガラスセラミックよりも急速に機械加工され得ることが示された。この特性を説明するために、特に、ガラスセラミックの試料本体に対する研磨レート(removal rate)を決定することができる。この目的では、試料本体から板状物を切り出し、秤量する。次に、板状物をホルダーに接着し、自動研削機、例えばStruers社から入手可能なものを用いて、例えば20μmの粒径を有するダイヤモンド研削ホイールを使用して、水冷下で研削する。研削機の圧力は、同じ力、例えば15Nが各板状物に適用されるように選択される。板状物を1分間研削した後、板状物を乾燥させ、再び秤量する。次に、研磨レートを、次式に従って計算する。
研磨レート[wt%・分-1]=100×(1-(m研削:m非研削))
【0066】
主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含む、容易に機械加工可能なケイ酸リチウムガラスセラミックは、さらなる熱処理によって、主な結晶相として二ケイ酸リチウムを含むガラスセラミックに変換され得ることが、さらに示された。このガラスセラミックは、優れた機械特性、例えば高強度を示すだけでなく、歯科修復物材料に必要な他の特性も示す。
【0067】
したがって、ガラスセラミックが所望の歯科修復物の形状を得た後、メタケイ酸リチウム結晶を二ケイ酸リチウム結晶に変換するために、ガラスセラミックをさらなる熱処理に供することができる。好ましくは、ガラスセラミックを、750~950℃、好ましくは820~890℃、特に好ましくは840~870℃の温度における熱処理に、特に1~60分間、好ましくは5~30分間、より好ましくは5~15分間、さらにより好ましくは5~10分間の期間にわたって供する。所与のガラスセラミックに適した条件は、例えば、異なる温度でX線回折分析を実施することによって決定することができる。
【0068】
二ケイ酸リチウムガラスセラミックへの変換は、わずか約0.2~0.3%の非常に小さい線形収縮と関連するだけであり、これは、セラミックを焼結した場合の30%までの線形収縮と比較して、ほぼ無視できることも示された。
【0069】
しかし、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスは、例えばセラミックおよびガラスセラミックのコーティング材料としても適している。したがって、本発明はまた、セラミック、ガラスセラミック、特に歯科修復物をコーティングするための、本発明によるガラスまたは本発明によるガラスセラミックの使用を対象とする。
【0070】
本発明はまた、セラミック、金属、金属合金およびガラスセラミックをコーティングするための方法であって、本発明によるガラスセラミックまたはガラスを、セラミック、金属、金属合金またはガラスセラミックに適用し、上昇させられた温度に供する、方法に関する。
【0071】
これは特に、焼結によって、またはCAD-CAMを適切なガラスハンダもしくは接着剤と共に用いることによって生成されたオーバーレイを結合させることによって、好ましくは圧縮によって、実施することができる。焼結の場合、ガラスセラミックまたはガラスは、通常の方式で、例えば粉末として、コーティングされるべき材料、例えばセラミックまたはガラスセラミックに適用され、次に、上昇させられた温度で焼結させられる。好ましい圧縮プロセスでは、例えば圧粉体またはモノリシックブランクの形態の、本発明によるガラスセラミックまたはガラスは、例えば700~1200℃の上昇させられた温度で、圧力、例えば2~10バールを適用して圧縮される。特に、欧州特許出願公開第0231773号に記載される方法およびその文献に開示されている圧縮炉を、この目的のために使用することができる。適切な炉は、例えば、Ivoclar Vivadent AG、Liechtenstein製のProgramat EP 5000である。
【0072】
コーティングプロセスが完了した後、主な結晶相としてケイ酸リチウム、特に二ケイ酸リチウムを含むガラスセラミックは、特に良好な特性を有するので、このようなガラスセラミックが存在することが好ましい。
【0073】
本発明を、非限定的な例を参照しながら、以下により詳細に説明する。
【実施例0074】
合計28の本発明によるガラスおよび表1-1~表1-3に記載される組成を有する比較例を調製した。ガラスを、表2-1~表2-3に従って、ガラスセラミックに結晶化した。以下の意味を適用する。
Tg DSCを用いて決定されたガラス転移温度
TSおよびtS 溶融のために適用された温度および時間
TKbおよびtKb 核形成のために適用された温度および時間
TC1およびtC1 1回目の結晶化のために適用された温度および時間
TC2およびtC2 2回目の結晶化のために適用された温度および時間
【0075】
実施例では、まず、表1-1~表1-3に記載される組成を有する出発ガラスを、温度TSで期間tSにわたって一般的原材料から100~200gスケールで溶融させると、気泡または線条の形成なしに非常にうまく溶融することが可能であった。ガラスフリットは、出発ガラスを水に注ぎ、次にそれを均質化のために2回目として1500℃または1400℃で1時間溶融させることによって調製した。次に、得られた出発ガラスの溶融物を、グラファイトの型に注いで、固体ガラスブロックを生成した。
【0076】
得られたガラスモノリスの、温度TKbにおける期間tKbにわたる最初の熱処理により、核を含むガラスが形成された。これらの核を含むガラスは、温度TC1における期間tC1にわたるさらなる熱処理によって結晶化して、室温におけるX線回折分析によって決定される通り、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含むガラスセラミックを形成した。
【0077】
メタケイ酸リチウム結晶の、結晶相の量および平均サイズを、X線回折によって決定した。この目的では、それぞれのガラスセラミックの粉末を、研削し、ふるいにかける(<45μm)ことによって調製し、内部標準としてのAl2O3(Alfa Aesar、製品番号42571)と共に、80wt%のガラスセラミックと20wt%のAl2O3の比で混合した。この混合物をアセトンと共にスラリー化して、可能な限り最良の混合を達成した。次に、混合物を約80℃で乾燥させた。次に、ディフラクトグラムを、Bruker D8 Advance回折計を10~100°2θの範囲で使用し、CuKα放射線およびステップサイズ0.014°2θを使用して記録した。次に、このディフラクトグラムを、Bruker製のTOPAS 5.0ソフトウェアを使用してリートベルト法に従って分析した。メタケイ酸リチウムおよびAl2O3のピーク強度をそれぞれ比較することによって、相の分率を決定した。メタケイ酸リチウム結晶の平均サイズを、シェラーの式に従って、メタケイ酸リチウムピークの半値幅から決定した。
【0078】
このようにして得られたガラスセラミックブロックの機械加工性を決定するために、それぞれ170mm2±10mm2(約12.5mm×13.8mm)の面積および4.0±0.5mmの厚さを有する2つの板状物を切り出し、精密てんびんで秤量した。次に、板状物をホルダー上に接着し、自動研削機(LaboForche-100、Struers)を用いて、20μmの粒径を有するダイヤモンド研削ホイールを使用して、水冷下で研削した。研削機の圧力は、15Nの力が各プレートに適用されるように選択した。ダイヤモンド研削ホイールが搭載されたターンテーブル、および検体を有するホルダーが搭載された研削機のヘッドは、同じ回転方向を有していた。ターンテーブルの速度は、1分当たり300回転数であった。板状物を1分間研削し、次に乾燥させ、再び秤量した。研磨レートを、次式に従って計算した。
研磨レート[wt%・分-1]=100×(1-(m研削:m非研削))
【0079】
表2-1~表2-3から分かる通り、本発明による実施例1~28の研磨レートは、比較例よりも一貫して高かった。このことは、本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックが、同じ力を適用すると、公知のケイ酸リチウムガラスセラミックよりも急速に機械加工され得ることを示している。
【0080】
残りのガラスセラミックブロックを、温度T
C2で期間t
C2にわたってさらなる熱処理に供した。これにより、主な相として二ケイ酸リチウムを含むガラスセラミックが形成された。リン酸リチウムおよび実施例27の場合のリン酸リチウムストロンチウム(lithium strontium phosphate)は、少数相として見出された。
表I
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
表II
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】