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特開2023-31276カルボプロストおよびカルボプロストトロメタミンの調製のための方法および中間体、ならびにそれらから調製されるカルボプロストトロメタミン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031276
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】カルボプロストおよびカルボプロストトロメタミンの調製のための方法および中間体、ならびにそれらから調製されるカルボプロストトロメタミン
(51)【国際特許分類】
   C07C 405/00 20060101AFI20230301BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20230301BHJP
   C07C 215/12 20060101ALI20230301BHJP
   C07D 313/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C07C405/00 503T
C07F7/08 S CSP
C07F7/08 A
C07C405/00 503K
C07C215/12
C07D313/00
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129716
(22)【出願日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】17/408,864
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512213583
【氏名又は名称】チャイロゲート インターナショナル インク.
【氏名又は名称原語表記】CHIROGATE INTERNATIONAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シ-イ
(72)【発明者】
【氏名】ス,ミン-クワン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ジアン-バン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC46
4H006AC80
4H006AC90
4H006AD15
4H006BB21
4H006BC10
4H006UE14
4H006UE32
4H006UE52
4H049VN01
4H049VP01
4H049VW01
4H049VW02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】15(R)-エピマーおよびトランス異性体を含む不純物または異性体の形成を有意に低減させることができ、産生された不純物または異性体を有効に除去することもできる、高純度カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンの効率的な調製方法を提供する。
【解決手段】式2a’で示される新規なマクロラクトン-エノン中間体を経由して、カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンを調製する方法である。

[P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1%を超えない全異性体を含有するカルボプロストを調製するための方法であって、
(1)1~10%の5,6-トランス異性体を含有する式1aで示される化合物
【化1】
のマクロラクトン化により、式2aで示される化合物:
【化2】
である場合、P2を除去しておよび/または式2aの化合物を酸化させて、式2a’で示される化合物:
【化3】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を形成するステップと、
(3)式2a’で示される化合物の、メチル化試薬によるメチル化により、式3で示される化合物:
【化4】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を形成するステップと、
(4)式3で示される化合物のクロマトグラフィー分離により、異性体を除去するステップと、
(5)式3で示される化合物の加水分解により、式4で示される化合物:
【化5】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を形成するステップと、
(6)P1がヒドロキシ保護基である場合、式2a、2a’、3または4で示される化合物の脱保護反応を場合により実施して、式2a、2a’、3または4で示される化合物[式中、P1は、Hである]を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
トロメタミンとの塩形成、および結晶化によるカルボプロストトロメタミンの精製をさらに含む、カルボプロストトロメタミンを調製するための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチル化試薬が、MeLi、MeMgBr、MeMgCl、MeMgI、Me3Al、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
メチル化試薬が、MeLiである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1%を超えない全異性体を含有するカルボプロストを調製するための方法であって、
(1)1~10%の5,6-トランス異性体および1~50%の15(R)-エピマーを含有する式1bで示される化合物
【化6】
[式中、P1およびP2は、H、またはヒドロキシ保護基である]
のマクロラクトン化により、式3aで示される化合物:
【化7】
[式中、P1およびP2は、上記で定義した通りである]
を形成するステップと、
(2)P1が、H、またはヒドロキシ保護基であり、P2が、ヒドロキシ保護基である場合、式3aで示される化合物の脱保護反応を実施して、式3aで示される化合物[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基であり、P2は、Hである]を形成するステップと、
(3)式3aで示される化合物[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基であり、P2は、Hである]のクロマトグラフィー分離により、異性体を除去するステップと、
(4)式3aで示される化合物の加水分解により、式4で示される化合物:
【化8】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を形成するステップと、
(5)P1がヒドロキシ保護基である場合、式3aまたは4で示される化合物の脱保護反応を場合により実施して、式3aまたは4で示される化合物[式中、P1は、Hである]を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項6】
トロメタミンとの塩形成、および結晶化によるカルボプロストトロメタミンの精製をさらに含む、カルボプロストトロメタミンを調製するための請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カルボプロストの精製のための方法であって、
(1)1~10%の5,6-トランス異性体および1~50%の15(R)-エピマーを含有するカルボプロストのマクロラクトン化により、式3bで示される化合物:
【化9】
を形成するステップと、
(2)式3bで示される化合物の異性体のクロマトグラフィー分離のステップと、
(3)式3bで示される化合物の加水分解により、1%を超えない全異性体を含有するカルボプロストを形成するステップと
を含む、方法。
【請求項8】
式3で示される化合物
【化10】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を調製するための方法であって、式2a’で示される化合物
【化11】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
をメチル化試薬と反応させるステップを含む、方法。
【請求項9】
メチル化試薬が、MeLi、MeMgBr、MeMgCl、MeMgI、Me3Al、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
メチル化試薬が、MeLiである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式2a’で示される化合物:
【化12】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]。
【請求項12】
106.4±1.0℃の最大ピークを持つ吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムパターンを有し、以下の2θ反射角:6.9±0.2°、10.3±0.2°、18.8±0.2°および21.9±0.2°に特徴的ピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、カルボプロストトロメタミンの結晶形態。
【請求項13】
XRPDパターンが、以下の2θ反射角:9.1±0.2°、9.5±0.2°、11.0±0.2°および20.5±0.2°に特徴的ピークをさらに含む、請求項12に記載のカルボプロストトロメタミンの結晶形態。
【請求項14】
0.1%未満の5,6-トランス異性体を含有する、請求項12に記載のカルボプロストトロメタミンの結晶形態。
【請求項15】
0.03%未満の5,6-トランス異性体を含有する、請求項14に記載のカルボプロストトロメタミンの結晶形態。
【請求項16】
請求項12に記載のカルボプロストトロメタミンの結晶形態を調製するための方法であって、
(a)カルボプロストトロメタミンを無水アセトニトリルに添加して混合物を形成し、ここで、無水アセトニトリルが、カルボプロストトロメタミン1gあたり80~250mLの量であるステップと、
(b)該混合物を70℃~90℃の温度に加熱して、均一溶液を得るステップと、
(c)該均一溶液を冷却して、カルボプロストトロメタミンの結晶形態を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
無水アセトニトリルが、0.05%未満の水含有量を有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボプロストおよびカルボプロストトロメタミンの調製のための新規方法および中間体、ならびにそれらから調製されるカルボプロストトロメタミンの新規高融点結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボプロストおよびカルボプロストトロメタミン(INN、商標名Hemabate、Tham)は、以下のスキームAに示す通り、いずれも子宮収縮特性を持つPGF2αの合成プロスタグランジン類似体である(具体的には、これは15-メチル-PGF2αである)。カルボプロストおよびカルボプロストトロメタミンは、妊娠初期において子宮収縮を誘発し堕胎を誘引することができ、分娩後出血を低減させることもできる。
【0003】
【化1】
【0004】
現在の規制では、医薬品有効成分(API)における不純物の含有量がますます厳しく制限されているが、市販のカルボプロストおよびカルボプロストトロメタミンのほぼすべてが約3%の5,6-トランス異性体および約2%の15(R)-エピマーを依然として含有する。以下のスキームBは、カルボプロストおよびその異性体、すなわち5,6-トランスカルボプロストおよび15-エピカルボプロストの化学構造を表す。産業界におけるカルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンの大量生産のための方法は、とりわけ、カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンのC5~C6位におけるシス二重結合およびC15位における第三級アルコールの立体的配向を構築する際に、解決すべきいくつかの問題を有すると思われる。カルボプロストやカルボプロストトロメタミンの不純物を除去するための現在の精製方法が有効ではなく、改善を要することも自明である。
【0005】
【化2】
【0006】
C15-(R/S)-選択性
カルボプロストトロメタミンは、アップジョンのオリジナル製品である。カルボプロストトロメタミンの最初の拡張可能な合成は、アップジョンの化学者が述べている(非特許文献1)。以下のスキームC(1)に示す通り、15-メチル置換基は、式aのベンゾイルγ-ラクトン-エノンから、トリメチルアルミニウムを用いてまたは臭化メチルマグネシウムを用いて構築された。しかしながら、15(S)-生成物の選択性はいずれの事例でもわずか50%であり、これは、この方法が選択性を有さないことを意味する。特許文献1は、式bのトリエチルシリルγ-ラクトン-エノンおよびメチルマグネシウムクロリドのアルキル化により、以下のスキームC(2)に示す通り、70%の最も高い選択性を持つ15(S)-生成物が得られることを開示している。特許文献2は、式cのp-フェニルベンゾイルγ-ラクトン-エノンおよび臭化メチルマグネシウムのアルキル化により、わずか55%の選択性しか持たない15(S)-生成物を得ることができることを開示しており、15(S)-生成物の選択性を増大させるための種々のキラル添加剤の使用も開示し、(S)-タッドールの添加が、以下のスキームC(3)に示す通り、選択性を70%に増大させうることを見出した。しかしながら、特許文献2に開示されている最も高い選択性は、最大でも特許文献1に開示されているものと同じである。
【0007】
【化3】
【0008】
C5,6-(トランス/シス)-選択性
特許文献1は、非特許文献1の開示と同様、周囲温度およびジメチルスルホキシド(DMSO)の溶媒中でウィッティヒ反応を行うことにより、以下のスキームD(1)に示す通り、6~8%の望ましくない5,6-トランス異性体を産生するであろうことを開示している。特許文献1は、より低い温度、すなわち-5℃~+5℃での反応が、以下のスキームD(2)に示す通り、5,6-トランス異性体の含有量を約3%に低減させうることをさらに開示している。上記を考慮すると、市販のカルボプロストおよびカルボプロストトロメタミンは、いずれも約3%の5,6-トランス異性体を含有することから、ウィッティヒ反応の反応条件を変更することは、それから産生される5,6-トランス異性体の含有量をさらに低減させても無用である可能性があると思われる。
【0009】
【化4】
【0010】
カルボプロストメチルエステルの精製による15(R)-エピマーおよびトランス異性体の除去
非特許文献1および非特許文献2に開示されている通り、カルボプロストのC15位におけるアリル第三級アルコールは非常に不安定であるために、ほんの少しの酸またはごくわずかな熱が、エピマー化を介して大量の15(R)-エピマーを迅速に生成するという結果をもたらす。この理由により、産業界におけるカルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンの大量生産の現在の方法は、初期ステップで形成される中間体においてアリル第三級アルコールの立体化学を構築せず、なぜなら、アリル第三級アルコールの立体化学を最終段階まで維持することが困難だからである。したがって、産業界におけるカルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンの大量生産の現在の方法のほぼすべてが、最終生成物の構造を形成するまでもしくは後期ステップにおいて形成される中間体においてアリル第三級アルコールの立体化学を構築するか、または最終生成物を形成した後に望ましくない15(R)-エピマーおよびトランス異性体を除去する。
【0011】
最終生成物であるカルボプロストトロメタミンは室温で結晶性固体であるが、15(R)-エピマーおよびトランス異性体を同時に結晶化精製のみによって効率的に除去することは依然として非常に困難である。加えて、カルボプロストの極性が非常に大きいことから、クロマトグラフィーによってカルボプロストから15(R)-エピマーおよびトランス異性体を除去することはさらに困難である。
【0012】
その結果、カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンの形成中に産生された異性体は、有効に除去できず、先行技術の方法において異性体を分離および除去するために使用された好適な後期ステップ中間体はない。最終生成物を精製するためには、異性体の分離および除去において使用するのに好適である後期ステップ中間体を作成するための2つの追加のステップが必要である。先行技術文献、例えば、非特許文献1や特許文献1~4に開示されている通り、カルボプロストをエステル化してカルボプロストメチルエステルを形成しなくてはならず、次いで、カルボプロストメチルエステルの15(R)-エピマーおよびトランス異性体をクロマトグラフィーによって除去し、カルボプロストメチルエステルを加水分解して、より高い純度を持つカルボプロストとするが、そのような方法における収量および純度は非常に不十分である。特許文献5は、カルボプロストメチルエステルの異性体を分離および除去するための高価かつ特殊な疑似移動床(SMB)クロマトグラフィーの使用を開示しているが、最終生成物の純度は依然として十分に良好ではない。特許文献4は、分離のための分析グレードHPLCカラムクロマトグラフィーパッキング(5μm)の使用を開示しているが、トランス異性体は依然として完全に除去できない。加えて、特許文献4の方法によって分離されうる量は少ないため、そのような方法は、工業グレードの大量生産に使用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2008/081191号
【特許文献2】国際公開第2017/093770号
【特許文献3】中国特許出願公開第111777537号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第102816099号明細書
【特許文献5】中国特許第1136938号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第102336693号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc、96(18)、5865~5876、1974
【非特許文献2】Eur.J.Pharm,Sci、3、27~38(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記を考慮すると、15(R)-エピマーおよびトランス異性体を含む不純物または異性体の形成を有意に低減させることができ、産生された不純物または異性体を有効に除去することもできる、高純度カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンの調製方法の発見および開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンを生成するための効率的な方法を提供することである。該方法は、5,6-トランス異性体を有効に除去することができるマクロラクトン化ステップを含む。該方法は、カルボプロストのC15位において第三級アルコールの配向を構築するためのマクロラクトン-エノンのメチル化ステップも含む。マクロラクトン-エノンのメチル化の15(S)-選択性は、すべての前例におけるγ-ラクトン-エノンのメチル化のものよりもはるかに高い。本発明は、すべての異性体を有効に除去することができ、カルボプロストおよびカルボプロストトロメタミンをより効率的に生成することができ、それにより、高純度、高融点および良好な安定性を持つ最終生成物を形成する、新規精製方法も提供する。
【0017】
一態様では、本発明は、約1~10%の5,6-トランス異性体を含有する式1aで示される化合物:
【0018】
【化5】
【0019】
またはカルボニル保護基であり、P1およびP2は、H、またはヒドロキシ保護基である]
から、約1%を超えない全異性体を含有する高純度カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンを調製するための方法を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、約1~10%の5,6-トランス異性体を含有する式1bで示される化合物
【0021】
【化6】
【0022】
[式中、P1およびP2は、H、またはヒドロキシ保護基である]
から、約1%を超えない全異性体を含有する高純度カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンを調製するための方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、約1~10%の5,6-トランス異性体および約1~50%の15(R)-エピマー等の大量の異性体を含有する低純度カルボプロストを精製して、約1%を超えない全異性体を含有する高純度カルボプロストとするために有効な、カルボプロストの精製のための方法を提供する。
【0024】
1つの別の態様では、本発明は、カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンを調製するための新規中間体である、式2a’のマクロラクトン-エノン中間体
【0025】
【化7】
【0026】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンを調製するための中間体である、式3のマクロラクトン-第三級アルコール
【0028】
【化8】
【0029】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を、式2a’のマクロラクトン-エノンから、メチル化試薬を用いて調製するための方法を提供する。
【0030】
別の態様では、本発明は、以下の2θ反射角:6.9±0.2°、10.3±0.2°、18.8±0.2°および21.9±0.2°に特徴的ピークを呈するX線粉末回折(XRPD)パターンを有する、カルボプロストトロメタミンの高融点(106.4±1℃)結晶を提供する。
【0031】
また別の態様では、本発明は、カルボプロストトロメタミンの高融点結晶を調製するための方法であって、無水アセトニトリルの溶媒の使用を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のカルボプロストトロメタミン結晶のX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
図2】本発明のカルボプロストトロメタミン結晶の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムパターンを示す図である。
図3】本発明の5つの異なるバッチについて、カルボプロストトロメタミン結晶のX線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
図4】本発明の5つの異なるバッチについて、カルボプロストトロメタミン結晶の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムパターンを示す図である。
図5】本発明の実施例9から調製されたカルボプロストトロメタミン結晶の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムパターンを示す図である。
図6】本発明の実施例10から調製されたカルボプロストトロメタミン結晶の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
語「a」または「an」の使用は、請求項および/または明細書において用語「を含む」と併せて使用される場合、「1つの」を意味しうるが、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」および「1つまたは1つを超える」の意味とも一致する。請求項における用語「または」の使用は、代替物のみを指すことが明示的に指示されているのでない限りまたは代替物が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみを指すという定義および「および/または」を支持する。本出願全体を通して、用語「約」は、研究対象の中で存在する値または変動を決定するために用いられているデバイス、方法について、固有の誤差変動を含む値を指し示すために使用される。
【0034】
本明細書および請求項において使用される場合、語「を含む(comprising)」(ならびに「を含む(comprise)」および「を含む(comprises)」等の「を含む」の任意の形態)、「を有する(having)」(ならびに「を有する(have)」および「を有する(has)」等のを有するの任意の形態)、「を含む(including)」(ならびに「を含む(includes)」および「を含む(include)」等のを含むの任意の形態)または「を含有する(containing)」(ならびに「を含有する(contains)」および「を含有する(contain)」等の「を含有する」の任意の形態)は、包括的またはオープンエンド型であり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。
【0035】
本明細書全体を通して記載されている化合物の描写において、楔形太線結合
【0036】
【化9】
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「高純度カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミン」、「高純度カルボプロスト」または「高純度カルボプロストトロメタミン」は、問題のカルボプロストおよび/またはカルボプロストトロメタミンが、約1%を超えない全異性体、好ましくは約0.8%を超えない全異性体または約0.5%を超えない全異性体、より好ましくは約0.3%を超えない全異性体を含有することを意味する。本明細書で指し示される異性体または不純物は、5,6-トランス異性体、15(R)-エピマーおよび任意の他の立体異性体を含む。
【0038】
本明細書において使用される場合、5,6-トランス異性体等を実質的に有さないことに関する用語は、問題の化合物が、約0.5%、約0.3%、約0.2%、約0.1%、約0.05%または約0.03%を超える不純物または異性体、例を挙げると5,6-トランス異性体を含有しないか、あるいはHPLCによって測定される検出できないレベルの不純物または異性体、例を挙げると5,6-トランス異性体を含有し、その検出限界が約0.03%を超えないことを意味する。
【0039】
別段の指定がない限り、用語「ヒドロキシ保護基」は、有機合成化学において従来定義されている意味、すなわち、化合物のヒドロキシ基または部分を、化学反応の攻撃から保護することができる基という意味を有する。ヒドロキシ保護基の例は、メトキシメチル、メトキシチオメチル、2-メトキシエトキシメチル、ビス(2-クロロエトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、4-メトキシテトラヒドロピラニル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、1-エトキシエチル、1-メチル-1-メトキシエチル、トリフェニルメチル、アリル、ベンジル、置換ベンジル、アセチル、置換アセチル、ベンゾイル、置換ベンジル、およびSiRabc[ここで、Ra、RbおよびRcは、それぞれ独立して、非置換もしくは置換アルキルまたは非置換もしくは置換アリール、例を挙げると、C14アルキル、フェニル、ベンジル、置換フェニルおよび置換ベンジルである]を含むがこれらに限定されない。
【0040】
別段の指定がない限り、用語「カルボニル保護基」は、有機合成化学において従来定義されている意味、すなわち、化合物のカルボニル基または部分を、化学反応の攻撃から保護することができる基という意味を有する。カルボニル保護基の例は、ジアルキルケタール、ジアラルキルケタール、ジアセチルケタール、ジチオケタール、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3-ジチアン、1,3-ジチオランおよび1,3-オキサチオランを含むがこれらに限定されない。カルボニル保護基は好ましくは、ジアルキルケタール、1,3-ジオキサンおよび1,3-ジオキソランを含む。
【0041】
アルキルおよびアリール等の上記で言及した基のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシ、チオアルコキシル、チオアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、アルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルキルアミノカルボニルおよびカルボニルからなる群から選択される1つまたは複数の置換基、あるいは、ピリジニル、チオフェニル、フラニル、イミダゾリル、モルホリニル、オキサゾリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピロリジノニル等からなる群から選択されるヘテロ環式基で場合により置換されていてよい。別段の指定がない限り、本明細書において使用される用語「アルキル」は、1から8個、1から6個、または1から4個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状炭化水素基、例を挙げると、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル等、あるいは3から10個または3から8個の炭素原子を有する環式飽和炭化水素基、例を挙げると、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を指す。本明細書において使用される用語「アリール」は、単環式または多環式芳香族炭化水素ラジカルであり、6から20個、6から18個または6から12個の炭素原子を有するもの、例を挙げると、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等を指す。
【0042】
式1aまたは式1bの公知のプロスタグランジン中間体からの高純度カルボプロストの合成
本発明によれば、高純度カルボプロストまたはカルボプロストトロメタミンは、スキーム1およびスキーム2に示される反応に従って調製されうる:
【0043】
【化10】
【0044】
【化11】
【0045】
スキーム1における式1aで示される化合物[式中、
【0046】
【化12】
【0047】
またはカルボニル保護基であり、P1およびP2は、ヒドロキシ保護基である]は、公知のプロスタグランジンF2α中間体である。スキーム2における式1bで示される化合物[式中、P1およびP2は、ヒドロキシ保護基である]も、公知の15-メチルプロスタグランジンF2α中間体である。2つのプロスタグランジン中間体は、有名な中間体、コーリーラクトンから、ウィッティヒ反応を介して調製されうる。ウィッティヒ反応の異なる反応条件により、2つのプロスタグランジン中間体は、ほぼすべてが、約1%から約10%の5,6-トランス異性体を含有する。
【0048】
スキーム1のステップ(1)およびスキーム2のステップ(1)に示す通り、マクロラクトン化反応は、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル官能基の活性化を伴ってよい。このルートにおいて、マクロラクトン化反応は、好適な試薬によるチオエステルの初期形成を含み、該試薬は、S-ピリジン-2-イルクロロメタンチオエート、2,2’-ジピリジルジスルフィド/トリフェニルホスフィンまたは4-tert-ブチル-2-(2-(4-tert-ブチル-1-イソプロピル-1H-イミダゾール-2-イル)ジスルファニル)-1-イソプロピル-1H-イミダゾール/トリフェニルホスフィンを含むがこれらに限定されない。
【0049】
マクロラクトン化反応は、代替として、塩基またはルイス酸の存在下または非存在下での好適な試薬による混合無水物の初期形成を伴ってよい。混合無水物を形成するための好適な試薬は、2,4,6-トリクロロベンゾイルクロリド、2-ニトロ-6-ニトロ安息香酸無水物、p-ニトロフルオロメチル安息香酸無水物、p-ニトロ安息香酸無水物等を含むがこれらに限定されない。好適な塩基の例は、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、ピロリジノピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンおよびイソプロピルジエチルアミンを含む。好適なルイス酸の例は、Sc(OTf)3、TiCl4、AgClO4、塩化トリメチルシリル(TMSCl)およびTiCl2(OTf)を含む。
【0050】
マクロラクトン化反応は、適切な溶媒中、縮合試薬および塩基を使用することによって実現することもできる。好適な縮合試薬は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、2-クロロ-1-メチル-ピリジニウムヨージド、2-クロロ-4,5-ジヒドロ-1,3-ジメチル-1H-イミダゾリウムクロリド、N,N-ジフェニルクロロフェニルメチルエニミニウムクロリド、シアヌル酸クロリド、1,3-ジメチル-2-クロロイミダゾリウムクロリド、N,N,N,N-テトラメチルクロロホルムアミジニウムクロリド等を含むがこれらに限定されない。好適な塩基の例は、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等を含む。縮合反応のための好適な溶媒は、塩化メチレン、テトラヒドロフランおよび1,2-ジクロロエタン、ならびにそれらの混合物を含む。
【0051】
式2a、2a’、2b、3または4の結果として生じた化合物をHPLCまたはUPLCによって分析すると、予想外にも、式2a、2a’、2b、3または4の結果として生じた化合物が約0.1%を超えない5,6-トランス異性体を含有するかそれ未満であることが分かり、これは、マクロラクトン化反応が高いシス選択性を呈すること、すなわち、式1aまたは1bの5,6-シス化合物がマクロラクトン化反応において優勢であるのに対し、式1aまたは1bの5,6-トランス化合物はマクロラクトン化反応をほとんど受けないことを明らかにする。
【0052】
スキーム1のステップ(2)は、ω側鎖におけるP2および/またはP1を除去することによる、式2で示される化合物[式中、
【0053】
【化13】
【0054】
である]の脱保護および酸化を伴う。脱保護反応を行うための条件は、当業者には明白である。例えば、式2で示されるマクロラクトン[式中、P1およびP2は、テトラヒドロピラニル保護基である]を、メタノール、またはアセトンと水の混合溶媒(体積比5:1)等の好適な溶媒に溶解し、塩化水素、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸ピリジニウム等の脱保護剤で処理し、室温で10分から10時間撹拌する。反応物を塩基、例えば水酸化アンモニウム等でクエンチし、従来の方式で行われるワークアップ手順に供する。式2aで示される脱保護生成物[式中、P1およびP2は、Hである]を、MnO2または2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノベンゾキノン(DDQ)等の好適な酸化剤で酸化して、式2a’で示されるマクロラクトン-エノン[式中、P1は、Hである]を形成する。
【0055】
例えば、式2aのマクロラクトン[式中、P1は、テトラヒドロピラニル保護基であり、P2は、tert-ブチルジメチルシリル保護基である]を、テトラヒドロフラン(THF)等の好適な溶媒に溶解し、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)等の脱保護剤で処理し、室温で10分から10時間撹拌する。反応物を従来の方式で行われるワークアップ手順に供する。次いで、式2aの脱保護生成物[式中、P1は、テトラヒドロピラニル保護基であり、P2は、Hである]を、コリンズ酸化剤、スワーン酸化剤、PCC酸化剤、PDC酸化剤およびTEMPO酸化剤等の好適な酸化剤、好ましくはTEMPO酸化で酸化して、式2a’のマクロラクトン-エノン[式中、P1は、テトラヒドロピラニル保護基である]を形成する。
【0056】
スキーム1のステップ(2)は、式2aで示される化合物[式中、
【0057】
【化14】
【0058】
は、カルボニル保護基である]の脱保護も伴う。脱保護反応を行うための条件は、当業者には明白である。例えば、式2aで示されるマクロラクトン[式中、
【0059】
【化15】
【0060】
は、1,3-ジオキサン保護基であり、P1は、Hである]を、THFまたはアセトン等の好適な溶媒に溶解し、1M HCl溶液等の脱保護剤で処理し、室温で10分から10時間撹拌する。反応物を塩基、例えば飽和NaHCO3溶液等でクエンチし、従来の方式で行われるワークアップ手順に供して、式2a’で示されるマクロラクトン-エノン[式中、P1は、Hである]を形成する。
【0061】
その上、スキーム2のステップ(2)は、ω側鎖におけるP2および/またはP1を除去することによる、式2bで示される化合物[式中、P2は、ヒドロキシ保護基である]の脱保護を伴う。脱保護反応を行うための条件は、当業者には明白である。
【0062】
スキーム1のステップ(3)は、式3aで示されるマクロラクトン-第三級アルコールを形成するための、式2a’で示されるマクロラクトン-エノン[式中、P1は、ヒドロキシ保護基である]のメチル化を示す。本発明によれば、メチル化剤は、MeLi、MeMgCl、MeMgBr、MeMgI、Me3Al、またはそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。好ましくは、メチル化剤は、MeMgCl、MeMgBr、MeMgI、MeLi、またはそれらの混合物である。最も好ましくは、メチル化剤は、MeLiである。反応において使用される非限定的で好適な溶媒は、テトラヒドロフラン、エーテル、トルエン、ヘキサン、またはそれらの混合物から選択されうる。反応は、約-120℃から室温まで、好ましくは約-100℃~約-40℃の温度で行われる。メチル化剤は、薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターした際に反応物質が完全に反応しているような量で使用される。
【0063】
予想外にも、マクロラクトン-エノンおよびメチル化剤としてのメチルグリニャール試薬の反応は、最大約65%の15(S)-選択性を呈することが分かった。しかしながら、スキームA(1)に示す通り、γ-ラクトン-エノンおよびメチルグリニャール試薬の反応の15(S)-選択性は、わずか50%である。マクロラクトンの構造は、γ-ラクトンよりも15(S)-選択性に有益であるように思われる。加えて、本発明は、驚くべきことに、低コストでより好都合なMeLiのメチル化剤としての使用、マクロラクトン-エノンのメチル化が、約75%以上の15(S)-選択性を有することができ、これは非常に高く、γ-ラクトンの反応においてキラル添加剤を使用しても実現できない(特許文献2、(S)-タッドールを使用して、最も高い選択性は70%にすぎない)ことを示す。
【0064】
スキーム1のステップ(4)およびスキーム2のステップ(3)は、15(R)-エピマーを除去するための式3のマクロラクトン-第三級アルコールの精製を伴う。典型的には、カルボプロストの異性体の分離は、カルボプロストの大量生産において最も高価かつ時間のかかるステップである。しかしながら、本発明の異性体の分離のためのコストは、先行技術、例えば、非特許文献1;特許文献1~4よりもはるかに低い。理由は以下の通りに列挙される:
(a)先行技術では、カルボプロストをエステル化して、異性体を除去する際に使用するために好適な中間体、カルボプロストメチルエステルを形成しなくてはならず、次いで、カルボプロストメチルエステルの異性体がクロマトグラフィー精製によって除去されうる。しかしながら、予想外にも、式3の後期ステップ中間体は異性体を除去する際に使用するために好適な中間体であることが分かり、故に、本発明において使用するために追加のエステル化反応は不要である。
(b)カルボプロスト中間体の5,6-トランス異性体および15(R)-エピマーを除去するためにクロマトグラフィー精製を使用する場合、5,6-トランス異性体(HPLC、RRT0.93)は通常、15(R)-エピマー(HPLC、RRT0.88)よりも分離することが困難である。特許文献4では、カルボプロストメチルエステルの5,6-トランス異性体(RRT0.93)を除去するために、フィラー(5μm)を用いる分析グレードHPLCを使用することさえある。対照的に、式3の中間体およびマクロラクトン化後に形成された式2a’で示される化合物は、5,6-トランス異性体を実質的に有さず、故に、工業的な大量生産のための一般的なシリカゲルカラムクロマトグラフィーを単に使用して、より除去しやすい15(R)-エピマーを分離することができる。
(c)本発明のマクロラクトン-エノンのメチル化は、より高い選択性を呈するため、産生される15(R)-エピマーの量はより少なく、より簡単に除去されうる。
【0065】
スキーム1のステップ(4)およびスキーム2のステップ(3)において、クロマトグラフィー精製は、エステル型、エーテル型、ケトン型もしくはハロゲン化溶媒等またはそれらの混合物を使用して実施されうる。ジクロロメタンおよびアセトンの混合物を使用するために、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルtert-ブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、またはそれらの混合物を用いて良好な分離を実現することもできる。クロマトグラフィーにより、望ましくない15(R)-エピマーの量を、指定限界、すなわち、約0.5%以下、約0.3%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、またはそれ未満まで減少させることができる。
【0066】
スキーム1のステップ(5)およびスキーム2のステップ(4)に示す通り、式3で示されるマクロラクトン-第三級アルコールを、メタノール溶液中、水酸化リチウム溶液による処理によって加水分解してカルボプロストとする。カルボプロストを得るための酸性化は、酸媒質中でのエピマー化を回避するために迅速に実施されなくてはならない。
【0067】
したがって、本発明は、1%を超えない全異性体を含有するカルボプロストを調製するための方法であって、
(1)1~10%の5,6-トランス異性体を含有する式1aで示される化合物
【0068】
【化16】
【0069】
またはカルボニル保護基であり、P1およびP2は、H、またはヒドロキシ保護基である]
のマクロラクトン化により、式2aで示される化合物:
【0070】
【化17】
【0071】
を形成するステップと、
(2)式2aで示される化合物[式中、
【0072】
【化18】
【0073】
は、カルボニル保護基である]
のカルボニル保護基を除去するか、あるいはP2を除去しておよび/または式2aで示される化合物[式中、
【0074】
【化19】
【0075】
である]
を酸化させて、式2a’で示される化合物:
【0076】
【化20】
【0077】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を形成するステップと、
(3)式2a’で示される化合物の、メチル化試薬によるメチル化により、式3で示される化合物:
【0078】
【化21】
【0079】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を形成するステップと、
(4)式3で示される化合物のクロマトグラフィー分離により、異性体を除去するステップと、
(5)式3で示される化合物の加水分解により、式4で示される化合物:
【0080】
【化22】
【0081】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を形成するステップと、
1がヒドロキシ保護基である場合、式2a、2a’、3または4で示される化合物の脱保護反応を場合により実施して、式2a、2a’、3または4で示される化合物[式中、P1は、Hである]を形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0082】
本発明は、1%を超えない全異性体を含有する高純度カルボプロストを調製するための方法であって、
(1)1~10%の5,6-トランス異性体および1~50%の15(R)-エピマーを含有する式1bで示される化合物
【0083】
【化23】
【0084】
[式中、P1およびP2は、H、またはヒドロキシ保護基である]
のマクロラクトン化により、式3aで示される化合物:
【0085】
【化24】
【0086】
[式中、P1およびP2は、上記で定義した通りである]
を形成するステップと、
(2)P1が、H、またはヒドロキシ保護基であり、P2が、ヒドロキシ保護基である場合、式3aで示される化合物の脱保護反応を実施して、式3aで示される化合物[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基であり、P2は、Hである]を形成するステップと、
(3)式3aで示される化合物[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基であり、P2は、Hである]のクロマトグラフィー分離により、異性体を除去するステップと、
(4)式3aで示される化合物の加水分解により、式4で示される化合物:
【0087】
【化25】
【0088】
[式中、P1は、H、またはヒドロキシ保護基である]
を形成するステップと、
(5)P1がヒドロキシ保護基である場合、式3aまたは4で示される化合物の脱保護反応を場合により実施して、式3aまたは4で示される化合物[式中、P1は、Hである]を形成するステップと
を含む、方法も提供する。
【0089】
過剰量の異性体を含有する低純度カルボプロストの精製
従来の反応からまたはエピマー化の過剰反応により得られた粗カルボプロストは、通常は、大量または過剰量の異性体を含有する。本発明者らは、過剰量の異性体を含有するカルボプロストが、本発明の方法を使用することによってさらに精製されうることを見出した。本発明の方法は、少なくとも約1~10%の5,6-トランス異性体および約1~50%の15(R)-エピマーを含有する低純度カルボプロストを用意することと、低純度カルボプロストのマクロラクトン化によりマクロラクトン-第三級アルコールを形成することと、マクロラクトン-第三級アルコールの過剰な異性体のクロマトグラフィー分離と、マクロラクトン-第三級アルコールの加水分解により約1%を超えない全異性体を含有する高純度カルボプロストを形成することとを含む。
【0090】
したがって、本発明は、カルボプロストの精製のための方法であって、
(1)1~10%の5,6-トランス異性体および1~50%の15(R)-エピマーを含有する低純度カルボプロストのマクロラクトン化により、式3bで示される化合物:
【0091】
【化26】
【0092】
を形成するステップと、
(2)式3bで示される化合物の異性体のクロマトグラフィー分離のステップと、
(3)式3bで示される化合物の加水分解により、1%を超えない全異性体を含有する高純度カルボプロストを形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0093】
トロメタミンとのカルボプロスト塩形成
カルボプロストからカルボプロストトロメタミンを形成するために、方法は、トロメタミンとの塩形成およびカルボプロストトロメタミンの結晶化をさらに含む。塩形成および結晶化ステップは、特許文献6または特許文献2に開示されている方法に準拠してよい。概して、最初にカルボプロストを、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびそれらの組合せ等の好適な溶媒に溶解することができ、次いで、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびそれらの組合せ等の好適な溶媒に溶解したトロメタミンを、上記溶液に添加することができ、混合物を約85℃に約1時間加熱して、均一溶液を形成することができる。その後に、均一溶液を約60℃まで冷却させることができ、白色固体がゆっくりと沈殿し始める。反応混合物を室温までさらに冷却し、次いで、濾過して、カルボプロストトロメタミンの白色結晶を得ることができる。このようにして得られた白色結晶の融点は、典型的には、ファイザーによって当初開示された通り、約95~105℃である(例えば、ファイザーによって提供されているHemabate(登録商標)の処方情報)。
【0094】
特許文献6の実施例1の事例では、温度を低下させている間に100mLのアセトニトリルおよび0.5mLの水の混合物から約1.20gのカルボプロストトロメタミンが沈殿し、白色結晶の融点は103.97℃であると測定される(図2を参照)。本発明者らは、特許文献6の実施例1を繰り返し、得られたカルボプロストトロメタミン結晶の融点が、103.41℃であると測定されることを見出した。
【0095】
特許文献2の実施例1gの事例では、イソプロパノールおよびアセトンの混合物から約593gのカルボプロストトロメタミンが沈殿した。特許文献2は、実施例1gから取得されたカルボプロストトロメタミン結晶の融点を開示しなかった。本発明者らは、特許文献2の実施例1gを繰り返し、得られたカルボプロストトロメタミン結晶の融点が、97.49℃であると測定されることを見出した。
【0096】
上記で言及した公知のカルボプロストトロメタミン結晶の融点は、約97~約104℃であり、これらは、実際に、ファイザーによって当初提供された通りの範囲(95~105℃)内である。
【0097】
カルボプロストトロメタミンの再結晶
カルボプロストトロメタミンにおける再結晶は、15(R)-異性体の含有量を減少させることに対して効果を提供しうる。カルボプロストトロメタミンの再結晶方法は、特許文献6および特許文献2に開示されている。本発明者らは、アセトンを加えた水を使用する特許文献6が開示した方法を繰り返し、再結晶したカルボプロストトロメタミンが、測定した際に103.85℃の融点を有することを見出した。本発明者らはまた、アセトンを加えたイソプロパノールを使用する特許文献2が開示した方法を繰り返し、再結晶したカルボプロストトロメタミンが、測定した際に99.46℃の融点を有することを見出した。
【0098】
予想外にも、特別に高融点のカルボプロストトロメタミン結晶は、無水アセトニトリルの特異的溶媒を使用するカルボプロストトロメタミンの再結晶方法によって取得されうることが分かった。このようにして形成された高融点カルボプロストトロメタミン結晶は、106.4±1.0℃の最大ピークを持つ吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムパターンを有し、該最大ピークは、Pfizerによって当初提供された融点範囲の上限および先行技術に開示されている上記カルボプロストトロメタミン結晶のものよりも明らかに高い。
【0099】
高融点カルボプロストトロメタミン結晶の調製
本発明は、カルボプロストトロメタミンの高融点結晶形態を調製するための方法であって、
a.カルボプロストトロメタミンを無水アセトニトリルに添加して混合物を形成し、ここで、無水アセトニトリルが、カルボプロストトロメタミン1gあたり約80~250mLまでの量であるステップと、
b.混合物を約70℃~90℃の温度に加熱して、均一溶液を得るステップと、
c.均一溶液を冷却して、カルボプロストトロメタミンの結晶形態を形成するステップと、
d.結晶化した生成物を場合により単離するステップと
を含む、方法を提供する。
【0100】
一部の実施形態では、カルボプロストトロメタミンを完全に溶解するために混合物を約80℃に加熱してもよく、次いで、均一溶液をゆっくりと冷却することができ、白色固体がゆっくりと沈殿し始め、混合物を室温までさらに冷却し、次いで、濾過し、乾燥させて、カルボプロストトロメタミンの結晶形態を得ることができる。
【0101】
一部の実施形態では、ステップaにおいて使用される無水アセトニトリルの量は、カルボプロストトロメタミン1gあたり、約80~250mL、約100~220mL、または約150~200mLであり、無水アセトニトリルは、約0.05%未満、約0.01%未満、約0.005%未満、または約0.001%未満(w/w)の水含有量を有し、該方法は、好ましくは水を添加せずに行われる。該方法から調製されたカルボプロストトロメタミンの結晶形態は、106.4±1.0℃の最大ピークを持つ吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムパターンを有し、該最大ピークは、カルボプロストトロメタミンの他の公知の結晶形態のものよりも高い。本発明によって得られたカルボプロストトロメタミン結晶は、他のすべての公知のカルボプロストトロメタミン結晶と比較して最も高い融点を有することから、カルボプロストトロメタミンの最も安定な結晶形態である。
【0102】
そのうえ、本発明の高融点カルボプロストトロメタミン結晶は、以下の2θ反射角:6.9±0.2°、10.3±0.2°、18.8±0.2°および21.9±0.2°に特徴的ピークを呈するX線粉末回折(XRPD)パターンを有し、これは、特許文献6に開示されている結晶の2θ反射角:6.6±0.2°、9.9±0.2°、18.5±0.2°および21.6±0.2°とは明白に異なる。これは、高融点カルボプロストトロメタミン結晶がカルボプロストトロメタミンの新規結晶形態であることを表す。
【0103】
本発明の一実施形態では、カルボプロストトロメタミン結晶は、以下の2θ反射角:6.9±0.2°、10.3±0.2°、18.8±0.2°および21.9±0.2°に特徴的ピークを呈するXRPDパターンを有する。好ましい実施形態では、XRPDパターンは、以下の2θ反射角:9.1±0.2°、9.5±0.2°、11.0±0.2°および20.5±0.2°に特徴的ピークをさらに含む。より好ましくは、カルボプロストトロメタミン結晶のXRPDパターンは、図1と一致する。カルボプロストトロメタミン結晶の特定のデータを、表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
一実施形態では、本発明は、実質的に図1に示すようなXRPDパターンを有するカルボプロストトロメタミンの結晶形態を提供する。
【0106】
一実施形態では、本発明は、図3に示すような、5つの異なるバッチ(a)~(e)についてのカルボプロストトロメタミン結晶のXRPDパターンを提供する。4つの主要な分離された特徴的ピークの特定のデータに明確に印を付け、表2に示す。特徴的ピークの平均位置は、それぞれ約6.9°、10.3°、18.8°および21.9°に位置する。
【0107】
【表2】
【0108】
本発明のカルボプロストトロメタミン結晶のXRPD特徴的ピーク位置は、特許文献6によって開示されている6.6±0.2°、9.9±0.2°、18.5±0.2°および21.6±0.2°と比較して高い2-シータ(2θ)角(6.9±0.2°、10.3±0.2°、18.8±0.2°および21.9±0.2°)に位置している。特許文献6によって開示されているカルボプロストトロメタミンの6.621°における特徴的ピークは、13.3397Åのd-間隔を表す。他方では、本発明のカルボプロストトロメタミンの6.92°における特徴的ピークは、12.76Åのd-間隔を表す。0.5Åを超えるd-間隔の差異は、分子パッキングの結晶格子構造が異なることを表す非常に明確な証拠である。この結果は、カルボプロストトロメタミン結晶が、以前の技術と比較してより安定かつより高密度な秩序化パッキング構造(ordering packing structure)を持つ新規結晶形態であることを示す。
【0109】
一実施形態では、本発明は、およそ103.9℃のピーク開始温度およびおよそ106.4±1.0℃の最大ピークを持つ吸熱ピークを含むDSCサーモグラムパターンを有する、カルボプロストトロメタミン結晶を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、実質的に図2に示す通りのDSCサーモグラムパターンを有する、カルボプロストトロメタミンの結晶形態を提供する。
【0110】
一実施形態では、本発明は、図4に示すような、5つの異なるバッチ(a)~(e)についてのカルボプロストトロメタミン結晶のDSCサーモグラムパターンを提供する。単一の吸熱ピークについての最大ピークの特定のデータに明確に印を付け、表3に示す。これらの吸熱ピークの平均最大ピークは、約106.4℃である。
【0111】
【表3】
【0112】
本発明のカルボプロストトロメタミン結晶についての約106.4℃のDSC最大ピーク温度は、95~105℃のカルボプロストトロメタミンの開示されている融点(ファイザーによって当初提供された通り)および特許文献6に開示されている103.97℃の最大ピーク温度をはるかに超え、本発明のカルボプロストトロメタミン結晶が、以前の技術と比較して高い熱安定性を持つ新規結晶であることを表す。最も高い融点を含む結晶は熱力学において最も安定な結晶形態であり、故に、本発明の新規カルボプロストトロメタミン結晶は、以前の技術と比較して最も安定なものであることが、当業者には公知である。
【0113】
米国薬局方は、カルボプロストトロメタミンを冷凍庫内(-20℃)に貯蔵すべきであると推奨している。対照的に、本発明は、カルボプロストトロメタミンの高融点結晶形態が、20℃で6か月間、5℃で18か月間および80℃で3日間処理されても非常に安定であることを証明する。故に、本発明のカルボプロストトロメタミン結晶の安定性は、有意に改善されている。
【0114】
ここで開示および特許請求されている化合物および/または方法のすべては、本開示に照らして、必要以上の実験をすることなく作製および実行されうる。本発明の化合物および方法を好ましい実施形態の観点から記述してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、組成物および/または方法に、ならびに本明細書において記述されている方法のステップにおいておよび一連のステップにおいて、変動が適用されうることが、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような同様の代用物および修正形態は、添付の請求項によって定義される通りの本発明の趣旨、範囲および概念内であると考えられる。
【実施例0115】
X線粉末回折(XRPD)分析:XRPDパターンを、固定発散スリットおよび1Dリンクスアイ検出器付きのBruker D2フェイザー回折計で収集した。試料(約100mg)を試料ホルダーに平らに載置した。調製した試料を、0.02度のステップ幅および1秒のステップ時間で、CuKα放射線を10mAおよび30kVの出力で使用して、5°~40°の2θ範囲にわたって分析した。CuKβ放射線を、発散ビームニッケルフィルターによって除去した。
【0116】
示差走査熱量測定(DSC)分析:DSCサーモグラムパターンをTAディスカバリーDSC25機器で収集した。試料を、圧着密閉したアルミ蓋付きのアルミ平鍋に量り入れた。調製した試料を、窒素流(約50mL/分)下、10℃/分の走査速度で、25℃~150℃を分析した。溶融温度および融解熱を測定前にインジウム(In)によって較正した。すべての試料の融点を、本発明におけるDSC測定中に、吸熱ピークの最大ピークによって決定した。
【0117】
実施例1
(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-9-((S,E)-3-((tert-ブチルジメチル-シリル)オキシ)オクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン
【0118】
【化27】
【0119】
HPLC分析でその脱保護生成物の検出によって決定された約6.5%の5,6-トランス異性体を含む、1.4kgの7-((1R,2R,3R,5S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-((S,E)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタ-1-エン-1-イル)-5-ヒドロキシシクロペンチル)ヘプタ-5(Z)-エン酸、および475gのピリジンを、6.5Lのジクロロメタンに、窒素下、周囲温度で溶解した。次いで、843gの塩化ベンゾイルを混合物に添加し、1時間撹拌した。反応混合物をTLCによって検査して、反応の完了を確認した。混合物を6Lの飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、10分間撹拌した。溶液を静置して二相に分離させ、有機層を収集した。有機層をさらに蒸発させた。濃縮残留物を6Lのトルエンで希釈し、0.1N塩酸水溶液およびブラインでそれぞれ洗浄した。有機層を収集し、蒸発させて、粗シリル保護1,9-ラクトン化合物を得た。ヘキサンおよび酢酸エチルの混合物を勾配溶離液としたシリカゲルクロマトグラフィーによって、粗化合物をさらに精製した。得られたシリル保護1,9-ラクトンの収量は、1.0kg(74%)であった。
【0120】
0.1gの生成物を加水分解反応および脱保護反応でさらに処理して、粗生成物を得た。HPLC分析により、粗化合物について検出可能な5,6-トランス異性体がないことが分かった。
1H-NMR (CDCl3): δ 5.156~5.595 (m, 5 H), 4.067 (q, 1 H), 3.809 (q, 1 H), 1.247~2.532 (m, 20 H), 0.852~0.898 (m, 21 H), -0.005~0.034 (m, 12 H); 13C-NMR (CDCl3) : δ 173.620, 136.520, 131.169, 129.135, 127.890, 72.809, 72.088, 55.345, 44.567, 41.599, 38.669, 36.134, 31.831, 26.730, 26.571, 25.895, 25.835, 25.349, 25.136, 22.624, 18.222, 18.063, 14.047, -4.252, -4.556, -4.579, -4.768; MS (m/z, EI): C32H60O4Si2Na (M+)の計算値: 587.4および587.5実測値.
【0121】
実施例2
(8aR,9R,10R,11aS,Z)-9-((S,E)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタ-1-エン-1-イル)-10-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン
【0122】
【化28】
【0123】
HPLC分析でその脱保護化合物の検出によって決定された1.8%の5,6-トランス異性体を含む、2.0gの7-((1R,2R,3R,5S)-2-((S,E)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクタ-1-エン-1-イル)-5-ヒドロキシ-3-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタ-5(Z)-エン酸、および0.72gのピリジンを、20mLのジクロロメタンに、窒素下、周囲温度で溶解した。次いで、1.27gの塩化ベンゾイルを混合物に添加し、30分間撹拌した。反応混合物をTLCによって検査して、反応の完了を確認した。混合物を15mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、10分間撹拌した。溶液を静置して二相に分離させ、有機層を収集した。有機層を蒸発させ、粗エーテル保護1,9-ラクトン化合物を得た。ヘキサンおよび酢酸エチルの混合物を勾配溶離液としたシリカゲルクロマトグラフィーによって、粗化合物を精製した。得られたエーテル保護1,9-ラクトンの収量は、1.35g(70%)であった。
【0124】
0.1gの生成物を加水分解反応および脱保護反応でさらに処理して、粗生成物を得た。HPLC分析により、粗化合物について検出可能な5,6-トランス異性体がないことが分かった。
1H-NMR (CDCl3): δ 5.172~5.630 (m, 5 H), 4.813~4.944 (m, 1 H), 3.428~4.091 (m, 4 H), 1.230~2.619 (m, 26 H), 0.845~0.879 (m, 12 H), 0.012~0.038 (m, 6 H); 13C-NMR (CDCl3) : δ 173.635 (173.559), 136.778 (136.619), 131.260, 129.666, (129.507), 127.640, 95.390 (94.623), 81.933 (77.910), 73.159, 62.457 (61.106), 53.971 (53.106), 44.962 (44.855), 39.618, 38.662 (38.578), 37.417, 31.816 (31.778), 30.639 (30.601), 26.730, 25.417, 25.319, 24.962, 22.601, 19.732 (19.573), 18.237 (18.222), 14.009, -4.252, -4.267, -4.806, -4.844; MS (m/z, EI): C31H54O5SiNa (M+)の計算値: 557.4および557.4実測値.
【0125】
実施例3
(8aR,9R,10R,11aS,Z)-9-((E)-3-オキソオクタ-1-エン-1-イル)-10-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン
【0126】
【化29】
1.5gの7-((1R,2R,3R,5S)-5-ヒドロキシ-2-((E)-3-オキソオクタ-1-エン-1-イル)-3-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタ-5(Z)-エン酸および0.68gのピリジンを、15mLのジクロロメタンに、窒素下、周囲温度で溶解した。次いで、1.21gの塩化ベンゾイルを混合物に添加し、30分間撹拌した。反応混合物をTLCによって検査して、反応の完了を確認した。混合物を10mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、10分間撹拌した。溶液を静置して二相に分離させ、有機層を収集した。有機層を蒸発させ、粗1,9-ラクトン化合物を得た。ヘキサンおよび酢酸エチルの混合物を勾配溶離液として使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって、粗化合物を精製した。得られた1,9-ラクトンの収量は、1.02g(71%)であった。
1H-NMR (CDCl3): δ 6.688 (ddd, 1 H), 6.235 (dd, 1 H), 5.326 (dt, 1 H), 5.197 (br s, 2 H), 4.592 (t, 0.5 H), 4.550 (t, 0.5 H), 4.060 (dd, 0.5 H), 3.952 (dd, 0.5 H), 3.692~3.800 (m, 1 H), 3.388~3.447 (m, 1 H), 1.236~2.684 (m, 26 H), 0.887 (t, 3 H); 13C-NMR (CDCl3) : δ 200.466 (200.299), 173.499 (173.408), 146.569 (146.417), 131.951, 131.784, 126.873, 96.321 (96.612), 81.386 (78.790), 72.445 (72.111), 62.646 (61.736), 54.130 (53.546), 45.030 (44.939), 40.582 (40.309), 39.808 (38.024), 35.998, 31.451 (31.421), 30.677 (30.601), 26.715, 25.364 (25.303), 23.952 , 22.442, 19.550, 18.988, 13.895; MS (m/z, EI): C25H38O5Na (M+Na+)の計算値: 441.3および441.3実測値.
【0127】
実施例4
(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-ヒドロキシ-9-((S,E)-3-ヒドロキシオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン
【0128】
【化30】
480gの(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-9-((S,E)-3-((tert-ブチルジメチル-シリル)オキシ)オクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン(実施例1から)を、4.5Lのテトラヒドロフランに周囲温度で溶解した。次いで、775gのフッ化テトラブチルアンモニウム三水和物を溶液に添加した。均一溶液を45℃で加熱し、6時間撹拌した。反応混合物をTLCによって検査して、反応の完了を確認した。混合物を周囲温度で冷却し、その後、8Lの飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチした。溶液を静置して二相に分離させ、有機層を収集した。有機層を蒸発させて、粗1,9-ラクトンジオール化合物を得た。ヘキサンおよび酢酸エチルの混合物を勾配溶離液として使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって、粗化合物を精製した。次いで、ジオール化合物を、酢酸エチルおよびヘキサンの混合溶媒中でさらに結晶化させた。得られたジオール化合物の結晶の収量は、259g(91%)であった。
1H-NMR (CDCl3): δ 5.203~5.642 (m, 5 H), 4.409 (q, 1 H), 3.800 (q, 1 H), 3.304 (br s, 1 H), 1.281~2.608 (m, 21 H), 0.868 (t, 3 H); 13C-NMR (CDCl3) : δ 173.437, 136.785, 131.973, 131.411, 127.464, 76.065, 73.158, 71.936, 56.201, 45.074, 40.285, 37.196, 36.050, 31.655, 26.722, 26.532, 25.272, 25.158, 22.562, 13.971; MS (m/z, EI): C20H30O4 (M+)の計算値: 336.2および336.2実測値.
【0129】
実施例5
(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-ヒドロキシ-9-((E)-3-オキソオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン
【0130】
【化31】
300gの(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-ヒドロキシ-9-((S,E)-3-ヒドロキシオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロ-ペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン(実施例4から)を、3Lのテトラヒドロフランに周囲温度で溶解し、2,3-ジクロロ-5,6-ジ-シアノ-1,4-ベンゾ-キノンを添加した。反応混合物を55℃で加熱し、2時間撹拌した。反応完了後、混合物を周囲温度で冷却し、蒸発させた。次いで、暗褐色の残留物をジクロロメタンで希釈し、黄色固体が沈殿した。混合物を濾別し、濾液をさらに濃縮して、粗ケトン化合物を得た。ヘキサンおよび酢酸エチルの混合物を勾配溶離液としたシリカゲルクロマトグラフィーによって、粗化合物を精製した。得られた15-ケト1,9-ラクトンの収量は、276g(93%)であった。
1H-NMR (CDCl3): δ 5.183~6.686 (m, 5 H), 3.991~4.062 (m, 1 H), 1.251~2.642 (m, 21 H), 0.887 (t, 3 H); 13C-NMR (CDCl3) : δ 200.101, 173.316, 145.536, 132.064, 131.737, 126.865, 76.383, 72.406, 56.239, 45.591, 40.983, 40.839, 36.027, 31.435, 26.729, 25.302, 23.754, 22.433, 13.895;MS (m/z, EI): C20H30O4 (M+)の計算値: 334.2144および334.2130実測値.
【0131】
実施例6
(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-ヒドロキシ-9-((S,E)-3-ヒドロキシ-3-メチルオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン
【0132】
【化32】
方法A:275gの(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-ヒドロキシ-9-((E)-3-オキソオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン(実施例5から)を、4.5Lのテトラヒドロフランに、窒素下、周囲温度で溶解し、-70℃で冷却した。1.0Lのメチルリチウム(エーテル中2M)を反応混合物に-70℃でゆっくりと添加し、反応をTLCによって検査した。反応の完了後、混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、10分間撹拌した。次いで、1Lの酢酸エチルを反応混合物に添加し、周囲温度で加温させた。混合物を静置して二相に分離させ、有機層を収集し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、固体を濾別し、濾液を蒸発させた。粗15-メチル混合物化合物が得られ、HPLCによって試験した。粗化合物の15-R/15-Sの比は、約25/75である。ジクロロメタンおよびアセトンの混合物を勾配溶離液としたシリカゲルクロマトグラフィーによって、粗化合物をさらに精製した。得られた純粋な15-メチル化合物の収量は、163g(57%)であった。
【0133】
方法B:2gの(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-ヒドロキシ-9-((E)-3-オキソオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン(実施例5から)を、20mLのテトラヒドロフランに、窒素下、周囲温度で溶解し、-70℃で冷却した。次いで、21mLの臭化メチルマグネシウム(THF中1M)を反応混合物に-70℃でゆっくりと添加し、0℃で加温した。混合物をTLCによって検査して、反応の完了を確認した。反応混合物を試料採取して、生成物の15-R/15-Sの比を検査すると、約35/65であった。
1H-NMR (CDCl3): δ 5.203~5.713 (m, 5 H), 3.787 (q, 1 H), 1.167~2.535 (m, 25 H), 0.859 (t, 3 H); 13C-NMR (CDCl3) : δ 173.399, 140.709, 131.336, 127.556, 127.526, 76.331, 72.840, 72.187, 56.233, 45.281, 42.875, 40.317, 36.029, 32.173, 27.520, 26.693, 26.579, 25.274, 23.801, 22.541, 13. 950; MS (m/z, EI): C21H32O3 (M+-H2O)の計算値: 332.2351および332.2349実測値.
【0134】
実施例7
(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-9-((S,E)-3-ヒドロキシ-3-メチルオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン
【0135】
【化33】
2.0gの(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-9-((E)-3-オキソオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オンを、20mLのテトラヒドロフランに周囲温度で溶解し、-70℃で冷却した。3.5mLのメチルリチウム(エーテル中2M)を反応混合物に-70℃でゆっくりと添加し、反応をTLCによって検査した。反応の完了後、混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、10分間撹拌した。次いで、1mLの酢酸エチルを反応混合物に添加し、周囲温度で加温させた。混合物を相分離し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、固体を濾別し、濾液を蒸発させて、粗15-メチル混合物化合物を得た。ジクロロメタンおよびアセトンの混合物を勾配溶離液としたシリカゲルクロマトグラフィーによって、粗化合物を精製した。得られた純粋な15-メチル化合物の収量は、1.05g(51%)であった。
1H-NMR (CDCl3): δ 5.168~5.689 (m, 5 H), 3.807 (q, 1 H), 1.258~2.551 (m, 24 H), 0.857~0.944 (m, 12 H), 0.011 (s, 6 H);13C-NMR (CDCl3) : δ 173.582, 140.368, 131.275, 127.746, 127.678, 76.954, 72.938, 72.005, 55.610, 44.483, 42.844, 41.569, 36.127, 32.279, 28.081, 26.738, 26.487, 25.789, 23.839, 22.579, 18.070, 14.040, -3.592, -4.518, -4.624.
MS (m/z, EI): C27H48O4SiNa (M+Na+)の計算値: 487.3および487.3実測値.
【0136】
実施例8
(Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-3-メチルオクタ-1-エン-1-イル)シクロ-ペンチル)ヘプタ-5-エン酸、カルボプロスト
【0137】
【化34】
【0138】
143gの(8aR,9R,10R,11aS,Z)-10-ヒドロキシ-9-((S,E)-3-ヒドロキシ-3-メチルオクタ-1-エン-1-イル)-4,5,8,8a,9,10,11,11a-オクタヒドロシクロペンタ[b]オキセシン-2(3H)-オン(実施例6から)を750mLのメタノールに溶解し、1.5Lの1N水酸化リチウム水溶液を添加した。反応混合物を60℃で2時間加熱した。反応の完了後、混合物を室温で冷却し、溶液のpH値を約8.5に調整した。混合物を濃縮してメタノールを除去し、残留物を酸塩基抽出によってさらに精製した。得られたカルボプロストの収量は、129gであった。
1H-NMR (CDCl3): δ 5.278~5.610 (m, 7 H), 4.112~4.133 (m, 1 H), 3.866~3.911 (m, 1H), 1.252~2.298 (m, 23 H), 0.843 (t, 3 H);
13C-NMR (CDCl3) : δ 177.316, 138.903, 129.431, 129.226, 128.839, 77.599, 73.333, 72.339, 55.292, 50.427, 42.731, 42.488, 33.031, 32.257, 26.966, 26.245, 25.099, 24.507, 23.809, 22.610, 14.063;
MS (m/z, EI): C21H34O4 (M+-H2O)の計算値: 350.2および350.3実測値
【0139】
実施例9
カルボプロストトロメタミン塩の形成
2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール;(Z)-7-((1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-((S,E)-3-ヒドロキシ-3-メチルオクタ-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプタ-5-エノエート、カルボプロストトロメタミン
【0140】
【化35】
【0141】
方法A:
114gのカルボプロストを1.2Lのアセトニトリルに60℃で溶解し、溶液を65℃に加熱した。120mLの水中の37.4gのトロメタミンを溶液にゆっくりと添加した。反応混合物を、還流のために85℃に10分間さらに加熱した。均一溶液を60℃まで冷却させ、白色固体がゆっくりと沈殿し始めた。混合物を室温までさらに冷却し、16時間にわたって撹拌した。反応混合物を濾過して、カルボプロストトロメタミンの白色結晶形態(118g)を得た。結晶の融点は、図5(a)に示す通り、DSCによって103.41℃であると測定された。
1H-NMR (D2O): δ 5.336~5.594 (m, 4 H), 4.109 (br s, 1 H), 3.819 (br s, 1 H), 3.632 (s, 6 H), 1.193~2.427 (m, 23H), 0.764 (t, 3 H);
13C-NMR (CDCl3) : δ 183.433, 138.523, 130.584, 129.203, 128.854, 75.928, 73.576, 71.109, 71.109, 61.257, 59.451, 54.327, 41.971, 41.902, 37.136, 31.565, 26.601, 25.850, 25.743, 24.779, 23.277, 21.888, 13.288:
MS (m/z, ESI): C25H48NO8 (MH+)の計算値: 490.3374および490.3384実測値.
【0142】
方法B:
カルボプロストトロメタミン結晶は、アセトン/水溶液から、特許文献6の実施例3に開示されている方法に従って調製した。結晶の融点は、図5(b)に示す通り、本発明者によって103.22℃であると測定された。
【0143】
方法C:
カルボプロストトロメタミン結晶は、エーテル/水溶液から、特許文献6の実施例7に開示されている方法に従って調製した。結晶の融点は、図5(c)に示す通り、本発明者によって103.43℃であると測定された。
【0144】
方法D:
カルボプロストトロメタミン結晶は、イソプロパノール/アセトン溶液から、特許文献2の実施例1gに開示されている方法に従って調製した。結晶の融点は、図5(d)に示す通り、本発明者によって97.49℃であると測定された。
【0145】
実施例10
カルボプロストトロメタミンの再結晶
方法A:
10.0gのカルボプロストトロメタミンを、0.02%の水を含有する1Lのアセトニトリルに85℃で溶解して、均一溶液を得、次いで、均一溶液を60℃まで冷却し、白色固体がゆっくりと沈殿し始めた。混合物を室温までさらに冷却した。得られた沈殿物結晶を濾過し、乾燥させた。再結晶後、得られた高純度カルボプロストトロメタミン結晶の収量は、9.0gであった。結晶の融点は、図6(a)に示す通り、DSCによって106.40℃であると測定された。HPLC分析時、15(R)-エピマーは0.05%の量であり、5,6-トランス異性体は検出されなかった。
【0146】
方法B:
カルボプロストトロメタミン結晶は、アセトン/水溶液から、特許文献6の実施例2、4、6または8に開示されている方法に従って調製した。結晶の融点は、図6(b)に示す通り、本発明者によって103.85℃であると測定された。
【0147】
方法C:
カルボプロストトロメタミン結晶は、イソプロパノール/アセトンから、特許文献2の実施例1hに開示されている方法に従って調製した。結晶の融点は、図6(c)に示す通り、本発明者によって99.46℃であると測定された。
【0148】
実施例11
低純度カルボプロストトロメタミンの精製
2.5%の5,6-トランス異性体および1.5%の15(R)-エピマーを含む3gの市販のカルボプロストトロメタミンを、pH3の酸性水に溶解し、酢酸エチルで抽出して、2gのカルボプロストを得た。8mLの無水無酸素キシレン中のカルボプロストの溶液を、1.73gの2,2’-ジピリジルジスルフィドおよび2.06gのトリフェニルホスフィンで処理した。25℃で18時間撹拌した後、混合物を500mLのキシレンで希釈し、4時間加熱還流した。反応混合物をさらに蒸発させて溶媒を除去し、残留物を冷重炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチルとで分配した。有機層を収集し、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濾過し、濃縮して、粗1,9-ラクトン化合物を得た。ジクロロメタンおよびアセトンの混合物を勾配溶離液としたシリカゲルクロマトグラフィーによって、粗化合物を精製した。得られた15-メチル1,9-ラクトンの収量は、1.67gであった。
【0149】
1,9-ラクトン生成物を加水分解反応でさらに処理して、2.5%の15(R)-エピマーを含むがHPLC分析において検出可能な5,6-トランス異性体がないカルボプロストを得た。カルボプロストトロメタミンを、カルボプロストおよびトロメタミンから、実施例9のプロセスに従って形成し、実施例10(方法A)および実施例11のプロセスに従って結晶化および再結晶させて、高純度カルボプロストトロメタミンを得た。HPLC分析時、15(R)-エピマーは0.15%の量であり、5,6-トランス異性体は検出されなかった。
【0150】
実施例12
カルボプロストトロメタミン結晶の安定性
表4および5に示される安定性データは、高融点カルボプロストトロメタミン結晶が、20℃で6か月間、5℃で18か月間および80℃で3日間処理されても安定であることを示す。高融点カルボプロストトロメタミン結晶は、室温で、さらにはそれより高い温度でも、非常に安定であり、そのため、分解不純物の形成は有効に回避されうる。
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
他方では、実施例10(方法A)から調製された高融点カルボプロストトロメタミン結晶および実施例10(方法B)から調製された低融点カルボプロストトロメタミン結晶の吸湿性を測定した。試料を99%RHのガラスバイアル内に25℃で3時間置き、試料の水含有量を、表6に示す通り、カールフィッシャー滴定によって測定した。高融点カルボプロストトロメタミン結晶は、低融点のものに対して比較的低い吸水率を示し、より安定であり、高湿度条件下で長時間にわたって貯蔵されうるため、製品の取り扱い、貯蔵および輸送に対してより貢献することを表す。
【0153】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6