(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031311
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】近赤外線吸収ガラス及び近赤外線遮断フィルター
(51)【国際特許分類】
C03C 4/08 20060101AFI20230301BHJP
C03C 3/062 20060101ALI20230301BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230301BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20230301BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20230301BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20230301BHJP
【FI】
C03C4/08
C03C3/062
G02B5/22
G02B5/28
G02B5/26
G02B1/11
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132976
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】110131297
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】111128622
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】516210676
【氏名又は名称】白金科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】呂 中漢
(72)【発明者】
【氏名】陳 哲宇
(72)【発明者】
【氏名】楊 明叡市
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4G062
【Fターム(参考)】
2H148CA06
2H148CA12
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】厚さが薄く、可視光透過率が高く、且つ近赤外線カット率が高い近赤外線遮断フィルターを提供する。
【解決手段】リン10~40重量%及び鉄5~35重量%を含み、近赤外線吸収ガラスのリン鉄モル比(P/Fe)は、1.75~5の間にあり、前記近赤外線吸収ガラスの波長930nm~950nmの光に対する平均透過率は、10%より小さいという近赤外線吸収ガラスである。また、本発明は、前記近赤外線吸収ガラスを含む近赤外線遮断フィルターを提供する。本発明は、薄肉条件でのスペクトルにおける半透過波長を高めることにより、可視光透過率を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン10~40重量%及び鉄5~35重量%を含む近赤外線吸収ガラスであって、
リン鉄モル比(P/Fe)が、1.75~5の間にあり、
波長930nm~950nmの光に対する平均透過率が、10%より小さい、近赤外線吸収ガラス。
【請求項2】
厚さが0.3mm以下である、請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項3】
厚さが0.2mm以下である、請求項2に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項4】
波長420nm~650nmの光に対する平均透過率が、80%より大きい、請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項5】
波長420nm~650nmの光に対する平均透過率が、85%より大きい、請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項6】
前記リン鉄モル比(P/Fe)が、2~4の間にある、請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項7】
前記リン鉄モル比(P/Fe)が、2.5~3.5の間にある、請求項6に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項8】
鉄10~25重量%を含む、請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項9】
半透過波長(T50%)が、700nm以上である、請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項10】
半透過波長(T50%)が、730nm~800nmの間にある、請求項9に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項11】
ケイ素0.1~10重量%、アルミニウム1~20重量%、アルカリ金属0~10重量%、及びアルカリ土類金属と他の二価元素との合計0.1~20重量%をさらに含む、請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項12】
前記アルカリ土類金属と二価元素が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項11に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項13】
前記アルカリ土類金属が、マグネシウム及びカルシウムであり、前記他の二価元素が、亜鉛である、請求項12に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項14】
請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス及び多層膜構造を含み、
前記多層膜構造は、近赤外線吸収膜、吸収染料層、反射防止膜及び赤外線反射膜からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
厚さが0.3mm以下である、近赤外線遮断フィルター。
【請求項15】
厚さが0.2mm以下である、請求項14に記載の近赤外線遮断フィルター。
【請求項16】
半透過波長(T50%)が、630nm以上である、請求項14に記載の近赤外線遮断フィルター。
【請求項17】
半透過波長(T50%)が、640nm~660nmの間にある、請求項16に記載の近赤外線遮断フィルター。
【請求項18】
波長940nmの光に対する光学密度値(OD)が、5より大きい、請求項14に記載の近赤外線遮断フィルター。
【請求項19】
波長700nmの光に対する透過率が、5%より小さい、請求項14に記載の近赤外線遮断フィルター。
【請求項20】
波長420nm~650nmの光に対する平均透過率が、85%より大きい、請求項14に記載の近赤外線遮断フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収ガラス及びそれを含む近赤外線遮断フィルターに関し、特に、厚さが薄く、可視光透過率が高く、且つ近赤外線カット率が高い近赤外線遮断フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
技術の進歩に伴い、映像に対する市場基準は徐々に引き上げられており、撮像素子の光学特性に対する要請も厳しくなっている。軽い、薄い、短い、小さいという従来の微細化のほか、夜間撮影の機能も重視されている。光が足りない場所で撮影する場合、可視光の感光性に対する要求は当然に一層高くなる。要請を満たすために、フィルターの改善、特に、赤外線領域の近傍にある可視光の透過率の向上が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、生体認証技術の進展が進められており、携帯電話等の装置のような市販される各種類の製品は、撮像素子の周囲に生体認証素子を設置し始めてきた。しかしながら、生体認証素子は波長940nmの光を赤外線光源として採用し、また、装置の小型化により、生体認証素子は、通常、撮像素子に非常に近接するので、前記波長940nmの赤外線は、撮像素子の画質に深刻な影響を与えるため、これにより、フィルターへの改善に対する要求は必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明の第一の態様は、リン10~40重量%及び鉄5~35重量%を含み、リン鉄モル比(P/Fe)が1.75~5の間にあり、該近赤外線吸収ガラスの波長930nm~950nmの光に対する平均透過率が10%より小さい近赤外線吸収ガラスを提供する。
【0005】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスの厚さは0.3mm以下である。もう1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスの厚さは0.2mm以下である。
【0006】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスの波長420nm~650nmの光に対する平均透過率が80%より大きい。もう1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスの厚さが0.2mm以下である場合、前記近赤外線吸収ガラスの波長420nm~650nmの光に対する平均透過率が85%より大きい。
【0007】
少なくとも1つの具体実施例において、前記リン鉄モル比(P/Fe)は、2~4の間にあり、あるいは、2.5~3.5の間にある。
【0008】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスの鉄の含有量は、10重量%~25重量%の間にある。
【0009】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスは、さらに、ケイ素0.1~10重量%、亜鉛1~20重量%、アルカリ金属0~10重量%、及びアルカリ土類金属と他の二価元素との合計0.1~20重量%を含む。
【0010】
少なくとも1つの具体実施例において、前記アルカリ土類金属と他の二価元素は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つである。もう1つの具体実施例において、前記アルカリ土類金属は、マグネシウム及びカルシウムであり、前記二価元素は、亜鉛である。
【0011】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスの半透過波長(T50%)は、700nm以上、730nm、730nm~800nmの間にあるか、あるいは、750nm~800nmの間にある。なお、本発明において、半透過波長(T50%)とは、近赤外線域の光のガラス又はフィルターに対する透過率が50%となるときの波長値(単位:nm)である。
【0012】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスの波長940nmの光に対する透過率は、10%より小さい。
【0013】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスの波長420nm~650nmの光に対する平均透過率は、80%より大きいか、あるいは85%より大きい。
【0014】
また、本発明の第二の態様は、第一の態様の近赤外線吸収ガラス及び多層膜構造を含み、前記多層膜構造は、近赤外線吸収膜、吸収染料層、反射防止膜及び赤外線反射膜からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、前記近赤外線遮断フィルターの厚さは0.3mm以下である近赤外線遮断フィルターを提供する。
【0015】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの厚さは0.2mm以下である。
【0016】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの半透過波長(T50%)は、630nm以上であるか、あるいは645nm~660nmの間にある。
【0017】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの波長940nmの光に対する光学密度値(OD)は、5より大きい。
【0018】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの波長700nmの光に対する透過率は、5%より小さい。
【0019】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの波長420nm~650nmの光に対する平均透過率は、85%より大きい。
【0020】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収膜は、樹脂基材、有機金属錯体及び分散剤を含み、前記樹脂基材は、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン及びポリビニルブチラールからなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0021】
少なくとも1つの具体実施例において、前記吸収染料層は、近赤外線吸収染料層、紫外線吸収染料層又は近赤外線/紫外線複合吸収性染料層である。
【0022】
少なくとも1つの具体実施例において、前記吸収染料層は、アゾ化合物、ジモニウム化合物、ジチオール金属錯体、フタロシアニン(phthalocyanine)系化合物、スクアライン(squaraine)系化合物及びシアニン(cyanine)系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、近赤外線を吸収する有機染料を含む。
【0023】
少なくとも1つの具体実施例において、前記吸収染料層は、ケトン系紫外線吸収剤、ベンズイミダゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである、紫外線を吸収する有機染料を含む。
【0024】
少なくとも1つの具体実施例において、前記反射防止膜及び前記赤外線反射膜の材料は、TiO2、SiO2、Y2O3、MgF2、A12O3、Nb2O5、AlF3、Bi2O3、Gd2O3、LaF3、PbTe、Sb2O3、SiO、SiN、Ta2O5、ZnS、ZnSe、ZrO2及びNa3AlF6からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の近赤外線吸収ガラスは、厚さが薄い場合でも優れた可視光透過性及びより広い近赤外線領域透過域を有し、半透過波長は730~800nmの範囲内まで高めることができるので、前記近赤外線吸収ガラスで製造された近赤外線遮断フィルターは、特に光量不足の場合(例えば、暗い場所、夜)に適用される。市販でよく使用される青ガラス(近赤外線吸収ガラスの一種)は、その半透過波長は、通常、620~635nmにあることにより、近赤外光領域に近い可視光の光は比較的低い透過率しか有しなくなる。また、一般的な吸熱ガラスは、半透過波長は750nmまで高めることができるが、本発明のスペクトル特性を達成するには、吸熱ガラスの厚さを0.5~3mmにする必要があるので、本発明のように薄肉で達成することはできない。
【0026】
一方、本発明の近赤外線吸収ガラスは、半透過波長が高められるものの、それでも近赤外線を効率よく防止することができる。例えば、940nmの光での透過率を10%より低くして、続いて、近赤外線吸収ガラス上に多層膜構造を追加して、近赤外線遮断性を強化することにより、最終製品である近赤外線遮断フィルターの薄肉、高い可視光透過性、高い近赤外線遮断性を実現して、最終的に940nmの光での光学密度値が5より大きく、6より大きく、さらには7より大きくなることができ、撮像素子付近の生体認証素子による干渉を防止できる。また、試験を通じて、異なる光入射角度での波長及び透過率のシフト量が小さく、フレア(flare)とゴーストイメージング(ghost image)の発生を効果的に低減する。
【0027】
また、本発明の近赤外線吸収ガラス自体が優れる光学性能を有するので、後続の工程で多層膜構造を追加する際、工程の複雑度を改善することができ、例えば、コーティングへの要求の緩和等により、工程の難易度を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の近赤外線吸収ガラスの実施例1~5及び比較例1における波長350nm~1100nmの光に対する透過率スペクトルを示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の近赤外線遮断フィルターの実施例6及び比較例2における波長350nm~1100nmの光に対する透過率スペクトルを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の近赤外線遮断フィルターの実施例7及び比較例3における波長350nm~1100nmの光に対する透過率スペクトルを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の近赤外線遮断フィルターの実施例8及び比較例4における波長350nm~1100nmの光に対する透過率スペクトルを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の近赤外線遮断フィルターの実施例9及び比較例5における波長350nm~1100nmの光に対する透過率スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下は、所定の具体実施例により本発明の実施形態を説明する。当業者は、本明細書の記載内容により、本発明の精神、利点及び効果を容易に理解できる。ただし、本明細書に記載されている具体実施例は、本発明を限定するためのものではなく、本発明は、他の異なる実施方式により実現又は適用することもできる。本明細書に記載されている各項目の詳細は、異なる観点や応用により、本発明の精神に反しないことを前提として、異なる変更又は修飾を与えることもできる。
【0030】
本明細書において、所定の要件が「からなる」、「含む」又は「有する」と記載されている場合、特に説明のない限り、さらなる他の素子、組成、構造、領域、部位、装置、システム、工程又は連結関係等の要件を有してもよく、これらの他の要件を除外するものではない。
【0031】
本明細書に記載の「上」及び「下」等の用語は、単に本発明の具体実施例の陳述を明瞭にさせるための用語であり、本発明の実施可能な範囲を限定するためのものではなく、その相対位置及び関係の調整、交換及び変更は、本発明の技術的内容を実質的に変更していない限り、本発明の実施可能な範囲に含まれるものとする。
【0032】
本明細書で別途で明確に説明のない限り、本明細書に記載の単数形である「一つの」及び「前記」等の用語は、複数形の意味も含むものとし、また、本明細書に記載の「又は」と「及び/又は」は交換して使用されている。
【0033】
本明細書に記載の数値範囲は、包括的であり、組み合わせることができる。本明細書に記載の数値範囲内にあるいずれの数値は、最大値又は最小値として、準範囲を導き出すことができる。例えば、「リン鉄モル比(P/Fe)は、1.75~5の間にあり」という数値範囲は、最小値の1.75及び最大値の5の間にあるいずれの準範囲を含み、例えば、1.75~4、2~5及び2.5~3.5等の準範囲として理解される。また、ある数値は、本明細書に記載される各範囲内(例えば、前記最大値と最小値との間)にある場合、それは本発明に含まれると見なされるべきである。
【0034】
本明細書に記載の「リン鉄モル比」とは、ガラスを製造するときに、原料におけるリン酸化物から得られるリン元素と、原料における鉄酸化物から得られる鉄元素とのモル比である。後記の実施例3を例として、ガラス中の全ての酸化物を合計100モル%とする場合、その中、五酸化二リンは58.90モルであり、三酸化二鉄は14.32モルであるため、五酸化二リンのリン元素が合計117.90モルとなり、三酸化二鉄の鉄元素が合計28.64モルとなり、計算によると、実施例3のリン鉄モル比が4.11であることが分かる。
【0035】
本発明の第一の態様は、近赤外線吸収ガラスである。当該近赤外線吸収ガラスは、リン10~75重量%及び鉄5~35重量%を含み、1つの具体実施例においては、リン10~40重量%及び鉄5~35重量%を含む。より具体的には、当該近赤外線吸収ガラスは、リン10~40重量%、ケイ素0.1~10重量%、アルミニウム1~20重量%、鉄5~35重量%、アルカリ金属0~10重量%、及びアルカリ土類金属と他の二価元素との合計0.1~20重量%を含む。実施上では、リンの含有量は、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70又は75重量%であってもよく、ケイ素の含有量は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9又は10重量%であってもよく、アルミニウムの含有量は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20重量%であってもよく、鉄の含有量は、5~35重量%、10~35重量%又は10~30重量%であり、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35重量%であってもよく、アルカリ金属の含有量は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10重量%であってもよく、アルカリ土類金属と他の二価元素の合計含有量は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20重量%であってもよいが、これらに限らない。
【0036】
少なくとも1つの具体実施例において、本発明は、前記近赤外線吸収ガラスのリン鉄モル比(P/Fe)を1.75~5の間、2~5の間、3~5の間、2~4の間、あるいは2.5~3.5の間にコントロールする。例えば、リン鉄モル比(P/Fe)は、1.75、1.78、2、2.25、2.5、2.51、2.75、2.98、3、3.05、3.25、3.5、3.75、4、4.11、4.25、4.5、4.75、4.98又は5であってもよいが、これらに限らない。
【0037】
本発明において、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1つである。一部の実施例において、本発明の近赤外線吸収ガラスは、基本的にアルカリ金属を含まない。アルカリ土類金属と他の二価元素は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ネオジム、ゲルマニウム、スズ及びセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであるか、あるいは、アルカリ土類金属と他の二価元素は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及び亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1つであるか、あるいは、アルカリ土類金属は、カルシウム及びマグネシウムであり、他の二価元素は亜鉛である。
【0038】
少なくとも1つの具体実施例において、本発明の近赤外線吸収ガラスは、さらに、ホウ素0~10重量%を含んでもよい。ホウ素の含有量は、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9又は10重量%であってもよい。少なくとも1つの具体実施例において、本発明の近赤外線吸収ガラスは、基本的にホウ素を含まない。
【0039】
少なくとも1つの具体実施例において、本発明の近赤外線吸収ガラスは、さらに、他の成分を含んでもよい。少なくとも1つの具体実施例において、本発明の近赤外線吸収ガラスは、基本的には、フッ素を含まない。少なくとも1つの具体実施例において、本発明の近赤外線吸収ガラスは、基本的に銅を含まない。
【0040】
上記の所定の成分及び所定の含有量範囲を有する近赤外線吸収ガラスを形成するために、メタリン酸塩類、炭酸塩類、酸化物、フッ化物等をガラス原料として選択することができる。前記メタリン酸塩類としては、例えば、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸リチウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸亜鉛及びメタリン酸カルシウムがあり、前記炭酸塩類としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムがあり、前記酸化物としては、例えば、五酸化二リン、三酸化二鉄(酸化鉄)、酸化第一鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のようなアルカリ土類金属酸化物、酸化ホウ素、二酸化ケイ素及びアルカリ金属酸化物等がある。ガラス原料をガラスに変換する工程としては、周知の方法を採用することができ、例えば、各ガラス原料を所定の割合で均一に混合し、るつぼに入れ、るつぼを還元雰囲気炉に入れ、還元雰囲気炉の温度を1200℃~1500℃の間に制御し、溶融状態のガラスを撹拌し、清澄化して、金型から流出させ、アニーリングすることで成形し、最終的に均質化されたリン酸塩ガラスが得られる。
【0041】
本発明の近赤外線吸収ガラスは、薄肉(例えば、0.3mm以下)である場合、優れる可視光領域透過性を有し、また、半透過波長が730nm~800nmの間にある。このようなスペクトル特性は、リン鉄モル比及び/又はガラス中の鉄の含有量を制御することで達成できる。少なくとも1つの具体実施例において、前記鉄は、二価鉄(青緑色)であり、それは、酸化第一鉄ガラスを原料から提供される。
【0042】
周知技術において、ガラス中の鉄の含有量が少ない場合、還元剤を使用せずに、隔離された環境で直接に二価鉄を形成することができ、また、ガラスの製造プロセスは比較的に低い温度(例えば、1000℃より低い)で実行できる。ガラス中の鉄の含有量が増加する場合、三価鉄の形成を避けるために、鉄イオンの還元に寄与する少量の還元剤を添加する。一方、周知技術では、必要に応じて鉄の含有量を増加する場合、プロセスには多くの困難があるため、鉄の含有量は通常10モル%を超えないように制限される。言い換えると、鉄の含有量が10モル%を超えない場合に、還元剤を添加せずに、又は、わずか少量の還元剤を添加するだけで、それなりによい還元効果が得られ、三価鉄を含む茶色のガラスではなく、二価鉄を主成分として含む青緑色のガラスが容易に得られる。ただし、鉄の含有量は比較的に低いため、ガラスは、十分なスペクトル特性を持つのに十分な厚さ(例えば1mm以上)である必要がある。
【0043】
ガラス薄型化のニーズに伴い、ガラス中の鉄の含有量を増加する必要がある(例えば、鉄の含有量を10モル%より高くする)。しかしながら、この状況でのガラスの還元性は不足となり、還元剤(例えば、炭、ブドウ糖等)の使用量も増えてしまう。そこで、ガラス原料の配合比率を還元剤に応じて調整する必要があり、また、還元剤の使用量も上限があり、還元剤を過剰に添加すると、ガラスに結晶化を引き起こす。十分な還元効果を得るために、プロセスをさらに調整することができる。例えば、還元ガス(例えば、窒素-水素混合ガス)である還元剤をさらに提供することで、二価鉄の取得を確保する。また、鉄の含有量が比較的に高い場合、ガラス製造プロセスをより高い温度(例えば、1300℃以上)で行う必要があるため、工程に対する要求が高くなる。さらに、ガラス中の鉄の含有量が高すぎる(例えば、30モル%より高い)場合、ガラスは結晶化し易くなり、成形は困難になる。また、還元剤を使用しても十分な還元力を提供できないため、望ましくない三価鉄を大量に得ることになる。
【0044】
本発明は、多くの試験を経た後、初めて適切なガラス原料の組成及び還元条件で安定に二価鉄を得ることができ、例えば、ガラス中のリン鉄モル比及び/又は鉄の含有量を所定の範囲に保つことができる。少なくとも1つの具体実施例において、ガラス中の鉄酸化物の含有量を10モル%以上、12モル%以上又は15モル%以上、及び30モル%以下、26モル%以下又は24モル%以下に制御することができ、例えば、10、11、11.12、12、13、14、14.32、15、16、17、18、19、19.32、20、20.18、21、22、23、23.48、24、25、26、27、28、29、29.98、30モル%に制御することができる。
【0045】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収ガラスは、薄型であり、その厚さは0.3mm以下、0.2mm以下、又は0.1mm~0.3mmであり、例えば、0.3、0.25、0.2、0.15又は0.1mmであるが、これらに限らない。一般的に、近赤外線吸収ガラスの厚さが薄くなるほど、その近赤外線吸収効果が悪くなるので、市販の近赤外線遮断フィルターの厚さは、通常、近赤外線吸収ガラスの厚さによって制限され、0.3~0.5mmとなる。これに対して、本発明の近赤外線吸収ガラスは、薄肉条件下でも優れた光学性能を有する。
【0046】
本発明の第一の態様の近赤外線吸収ガラスは、優れる光学性能を有し、その半透過波長(T50%)が周知の青ガラスよりも近赤外線領域に近い。本発明の近赤外線吸収ガラスの半透過波長(T50%)は、少なくとも700nm以上であり、730nm~800nmの間になることが可能であるか、あるいは、750nm~800nmの間にあり、例えば、730、735、740、745、750、755、760、765、770、775、780、785、790、795又は800nmであってもよいが、これらに限らない。したがって、可視光全域の光は高透過率に維持され、高透過率とは、波長420nm~650nmの光に対する平均透過率が80%より大きいか、あるいは85%より大きいということを示し、例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%又は90%であってもよいが、これらに限らない。
【0047】
本発明の近赤外線吸収ガラスは、半透過波長(T50%)が高いものの、依然として好ましい近赤外線吸収能力を備える。具体的に、本発明の近赤外線吸収ガラスは、波長940nmの光に対する透過率が10%より小さく、波長930nm~950nmの光に対する平均透過率が10%より小く、例えば、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%又は1%であるが、これらに限らない。
【0048】
本発明の第二の態様は、第一の態様の近赤外線吸収ガラスから製造される近赤外線遮断フィルターを提供する。
【0049】
本発明の第二の態様の近赤外線遮断フィルターは、前記近赤外線吸収ガラス及び多層膜構造を含み、前記多層膜構造は、近赤外線吸収膜、吸収染料層、反射防止膜及び赤外線反射膜からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0050】
前記多層膜構造は、前記近赤外線吸収ガラスの表面上に形成され、例えば、前記近赤外線吸収ガラスの一方の表面上に形成されるか、あるいは、前記近赤外線吸収ガラスの両方の表面上に形成される。また、前記多層膜構造は、周知のディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、蒸着、又はスパッタリング等の方法で形成される。
【0051】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの厚さは、0.3mm以下、0.2mm以下、又は0.1mm~0.3mmであり、例えば、0.3、0.25、0.2、0.15又は0.1mmであるが、これらに限らない。前記近赤外線吸収ガラス自身はすでに優れる光学性能を有するので、多層膜構造を薄層化したり、多層膜構造の一部を省略したりすることができ、これにより、近赤外線遮断フィルターが薄肉条件であっても優れる光学性能を持たせる。
【0052】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの半透過波長(T50%)は、640nm~660nmの間にあり、例えば、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659又は660nmであるが、これらに限らない。前記近赤外線吸収ガラスの半透過波長が高いので、多層膜構造でスペクトルを改善する場合に、近赤外線遮断フィルターの半透過波長も比較的高くなることができ、可視光領域における透過率を著しく向上することができる。具体的に、近赤外線遮断フィルターの波長420nm~650nmの光における平均透過率は、85%より大きく、例えば、86%、87%、88%、89%又は90%であるが、これらに限らない。
【0053】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの波長940nmの光に対する光学密度値(OD)は、5より大きく、6より大きく、あるいは7より大きく、例えば、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.5、7、7.5又は8であるが、これらに限らない。少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線遮断フィルターの波長700nmの光に対する透過率は、5%より小さく、例えば、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%又は1%であるが、これらに限らない。以上により、本発明の近赤外線遮断フィルターが優れる赤外線遮断力を有することを示す。
【0054】
少なくとも1つの具体実施例において、前記近赤外線吸収膜は、樹脂基材、有機金属錯体及び分散剤を含み、前記樹脂基材は、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン及びポリビニルブチラールからなる群から選ばれる少なくとも1つである。前記近赤外線吸収膜は、近赤外線を吸収し、近赤外線の透過率をさらに低減することに使用される。
【0055】
少なくとも1つの具体実施例において、前記吸収染料層は、近赤外線吸収染料層、紫外線吸収染料層又は近赤外線/紫外線複合吸収性染料層である。前記吸収染料層は、アゾ化合物、ジモニウム化合物、ジチオール金属錯体、フタロシアニン(phthalocyanine)系化合物、スクアライン(squaraine)系化合物、及びシアニン(cyanine)系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである近赤外線を吸収する有機染料を含み、近赤外線の透過率をさらに低下させることができる。前記吸収染料層は、ケトン系紫外線吸収剤、ベンズイミダゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである紫外線を吸収する有機染料を含み、紫外線の透過率を低下させることができる。
【0056】
少なくとも1つの具体実施例において、前記反射防止膜及び前記赤外線反射膜の材料は、TiO2、SiO2、Y2O3、MgF2、A12O3、Nb2O5、AlF3、Bi2O3、Gd2O3、LaF3、PbTe、Sb2O3、SiO、SiN、Ta2O5、ZnS、ZnSe、ZrO2及びNa3AlF6からなる群から選ばれる少なくとも1つである。もう一つの具体実施例においては、TiO2及びSiO2を使用し、10nm~200nmの厚さで交互に蒸着することで得ることができる。
【0057】
以下、本発明の実施例を説明する。当業者は、本明細書の開示内容から本発明の他の利点及び効果を容易に理解できる。
【0058】
(実施例)
表1及び表2を参照し、表1は、ガラス中の主な元素酸化物の比率を示し(重量%及びモル%で表す)、表2は、ガラス中の主な元素の比率を示す(重量%で表す)。表中の各ガラス成分に対応するリン酸塩、メタリン酸塩、酸化物等の原料をその割合で100~300gを量り、十分に均一に混合することで、ガラス原料組成物を得た。当該ガラス原料組成物をるつぼに入れ、るつぼを還元雰囲気炉に入れ、還元雰囲気炉の温度を1200℃~1500℃の間に制御し、溶融状態のガラスを撹拌し、清澄化して、金型から流出させ、アニーリングすることで成形し、実施例及び比較例の近赤外線吸収ガラスを得た。実施例3を例として説明すると、製造された近赤外線吸収ガラスの厚さは0.2mmであった。表1によれば、実施例3のガラスの主な元素酸化物は、65.33重量%の五酸化二リン(P
2O
5)、0.94重量%の二酸化ケイ素(SiO
2)、11.15重量%の三酸化二アルミニウム(Al
2O
3)、17.87重量%の三酸化二鉄(Fe
2O
3)、1.21重量%の酸化カルシウム(CaO)、1.57重量%の酸化マグネシウム(MgO)、1.93重量%の酸化亜鉛(ZnO)(アルカリ土類金属酸化物と他の二価元素酸化物との合計4.71重量%)を含んだ。また、実施例3において、五酸化二リンは58.9モル%であるため、リン元素は合計117.80モルとなり、三酸化二鉄は14.32モル%であるため、鉄元素は合計28.64モルとなり、計算により、リン鉄モル比は4.11となった。一方、表2によれば、実施例3のガラスの主な元素は、リン28.51重量%、ケイ素0.5重量%、アルミニウム6.05重量%、鉄12.78重量%、カルシウム0.89重量%、マグネシウム0.97重量%及び亜鉛1.57重量%(アルカリ土類金属と他の二価元素との合計3.43重量%)であった。また、実施例1、2、4、5及び比較例1のガラス成分も、表1及び表2に示されるように、特に、リン及び鉄の含有比率を調整した。そのうち、リン鉄モル比の定義及び計算方法は、上記の実施例3と同様であるため、ここで説明を省略する。各実施例及び比較例の厚さ及びリン鉄モル比は、表3で示される。そのうち、実施例1のリン鉄モル比は約1.78であり、厚さは0.1mmであった。実施例2のリン鉄モル比は約2.98であり、厚さは0.15mmであった。実施例4のリン鉄モル比は約4.98であり、厚さは0.3mmであった。実施例5のリン鉄モル比は約2.51であり、厚さは0.2mmであった。比較例1では、鉄を添加せず、厚さは0.2mmであった。
図1は、本発明の近赤外線吸収ガラスの実施例の透過率スペクトルを示し、また、ガラスの厚さ及びスペクトルのデータは、表4に示される。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
図1及び表4から分かるように、実施例1~5は可視光領域の平均透過率の値が比較例1より大きかった。その原因は、比較例1は半透過波長が僅か632.00nmと低く、550nm以降は透過率が大幅に減衰し、すなわち、550nm~760nmにおける可視光透過率は劣っており、また、実施例1~5は半透過波長が730nm以上であると高く、スペクトルにより、可視光領域の透過率はほとんど80%以上のプラトー状を維持し、650nm以降は徐々に減少することを示すからである。
【0064】
一方、本発明の近赤外線吸収ガラスは半透過波長が730nm以上であると高いが、波長940nmの光に対する透過率を10%以下に控えることができ、比較例1と同等であり、続きの多層膜構造の負担を増加することはなかった。
【0065】
図2~
図5は、本発明の近赤外線遮断フィルターの実施例の透過率スペクトルを示し、前記の近赤外線遮断フィルターは、近赤外線吸収ガラスの表面上に近赤外線吸収膜、吸収染料層、反射防止膜及び赤外線反射膜等の層を追加設置して得られたものであった。
【0066】
【0067】
図2~
図5及び表5から分かるように、実施例6~9の近赤外線遮断フィルターは、可視光領域で好ましい透過率を有し、それは、実施例6~9の半透過波長が648~650nmの間にあり、また、その550nm~700nmの間における可視光透過率が比較例2~5より優れるためである。さらに、実施例6~9には、比較例2~5に相当する近赤外線の遮断性を示し、半透過波長の向上によって劣化することはなかった。
【0068】
図5における実施例9及び比較例5をさらに考察し、それらは可視光をそれぞれ0度及び30度で近赤外線遮断フィルターに照射することを示す。実施例9又は比較例5のいずれも、二つの角度でのスペクトログラムの類似度が極めて高く、すなわち、波長のシフト量及び透過率のシフト量が低く、画像化するときのフレア及びゴーストイメージングの発生の可能性を低減することができ、これにより、本発明の近赤外線遮断フィルターは、近赤外線吸収ガラスの半透過波長の向上によって劣化することはないことが分かる。