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特開2023-31351プラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板
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  • 特開-プラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板 図1
  • 特開-プラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板 図2
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  • 特開-プラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031351
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230302BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/31 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136784
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】西村 和泰
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝紀
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
5F004AA06
5F004AA13
5F004BA06
5F004BB18
5F004BB29
5F004BC08
5F004CA08
5F004CB09
5F045AA08
5F045BB14
5F045EH05
5F045EH08
5F045GB01
(57)【要約】
【課題】通気孔内部へのパーティクルの付着量及び加工ダメージ痕を観察できるプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板を提供する。
【解決手段】シリコン電極板を厚さ方向に貫通する通気孔を観察する方法であって、シリコン電極板の一方の面側から赤外線を照射し、他方の面側から赤外線を受光して、受光した赤外線に基づく観察像を生成する像生成工程を備え、像生成工程では、通気孔の深さ位置における赤外線の受光部の焦点位置をずらしながら各深さ位置に焦点を合わせた観察像を取得する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン電極板を厚さ方向に貫通する通気孔を観察する方法であって、
前記シリコン電極板の一方の面側から赤外線を照射し、他方の面側から前記赤外線を受光して、受光した前記赤外線に基づく観察像を生成する像生成工程を備え、
前記像生成工程では、前記通気孔の深さ位置における前記赤外線の受光部の焦点位置をずらしながら各深さ位置に焦点を合わせた前記観察像を取得することを特徴とするプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法。
【請求項2】
前記像生成工程では、前記通気孔の深さ位置ごとの前記観察像から焦点が合った部位を抽出して1枚の合成像を生成することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法。
【請求項3】
シリコン電極板を厚さ方向に貫通する通気孔を観察する装置であって、
前記シリコン電極板の一方の面側から赤外線を照射する赤外線照射部と、前記シリコン電極板の他方の面側から前記通気孔を通過した赤外線を受光する受光部と、前記受光部により受光した赤外線に基づいて観察像を生成する像生成部と、前記シリコン電極板を支持する支持台と、前記赤外線照射部及び前記受光部と前記シリコン電極板とを該シリコン電極板の一方の面に沿う方向に相対的に移動させて、前記赤外線照射部及び前記受光部を観察対象となる前記通気孔に対向して配置させる駆動部と、前記通気孔の深さ位置における前記受光部の焦点位置をずらす焦点変更部と、を備えていることを特徴とするプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察装置。
【請求項4】
厚さ方向に貫通する通気孔が形成された板状に形成され、前記通気孔の内壁面へのパーティクルの付着量及び前記通気孔を形成した時の加工ダメージは、請求項1に記載の観察方法で観察した場合に予め設定された一定の範囲内に収まることを特徴とするプラズマ処理装置用シリコン電極板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路を製造する際にウエハをプラズマエッチングするエッチング装置では、シリコン電極板が用いられている。エッチング装置では、真空容器の中にシリコン 電極板とウエハとが対向して配置されており、これらシリコン電極板とウエハとの間に、 シリコン電極板を厚さ方向に貫通する多数の通気孔を通じてエッチングガスが供給されて いる。このシリコン電極板に高周波電圧を印加することにより、ウエハとシリコン電極板 との間にプラズマを発生させて、ウエハをエッチングすることができる。
【0003】
例えば、シリコン電極板に形成された通気孔が貫通しているか否かを把握するための通気孔検査方法として、特許文献1に記載のシリコン電極板の屈曲した通気孔の検査方法が知られている。この特許文献1のシリコン電極板の通気孔検査方法では、シリコン電極板に赤外光を照射し、このシリコン電極板を透過した赤外光による屈曲した通気孔の投影を、シリコン電極板の表面に対する角度が異なる複数の投影面において観察している。
【0004】
一方、通気孔がストレート状に延びるシリコン電極板の通気孔測定方法として、特許文献2に記載のシリコン電極板の通気孔測定方法が知られている。この特許文献2のシリコン電極板の通気孔測定方法では、シリコン電極板の一方面側から通気孔に向けて光を照射する工程と、通気孔を介してシリコン電極板の他方面側に透過した光の2次元画像を取得する工程と、2次元画像に基づいてガス導入孔の径、内壁面の粗さ及び垂直度合いのうち少なくとも1つを測定する工程と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-272645号公報
【特許文献2】特許第6135965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、エッチング装置の高出力化及びエッチング時間の拡大に伴い、エッチング装置内の部材の高寿命化が求められている。特に、シリコン電極板は、寿命を延ばすためその厚さが拡大している。また、微細化の進展に伴い、シリコン電極板に付着するパーティクル低減も求められている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、通気孔の貫通の有無を把握することはできるものの、パーティクルの付着や加工ダメージ跡の観察には不適である。また、特許文献2では、通気孔の内壁面の粗さを測定することはできるが、パーティクルの有無までは確認できない。特に、特許文献2では、可視光を通気孔に照射して観察しているが、使用後のシリコン電極板では、通気孔の内壁が荒れた状態となるため、二次元画像がぼやけて観察が難しい。また、通気孔はシリコン電極板の表面側及び裏面側の両方向から削孔することが多いため、両孔の接続部分では位置ずれによる影が発生し観察ができない箇所が発生する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、通気孔内部へのパーティクルの付着量及び加工ダメージ痕を観察できるプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法は、シリコン電極板を厚さ方向に貫通する通気孔を観察する方法であって、前記シリコン電極板の一方の面側から赤外線を照射し、他方の面側から前記赤外線を受光して、受光した前記赤外線に基づく前記通気孔の観察像を生成する像生成工程を備え、前記像生成工程では、前記通気孔の深さ位置における前記赤外線の受光部の焦点位置をずらしながら各深さ位置に焦点を合わせた前記観察像を取得する。
【0010】
本発明では、通気孔の深さ位置ごとに焦点が合った観察像を取得できる、つまり、一方の表面に焦点を合わせた透過画像、他方の表面に焦点を合わせた透過画像、及び通気孔の内部における少なくとも1つの深さ位置に焦点を合わせた観察像を取得できるので、各観察像から通気孔の内壁を適切に観察でき、通気孔の内壁におけるパーティクルの付着量及び通気孔形成時の加工ダメージ痕を容易に判定できる。また、赤外線はシリコンを透過するため厚み方向の影響が軽微であり、両側から削孔した場合における両孔の接続部分において影が生じることもなく、可視光線のようにその光が弱まることがないので、受光部により確実に赤外線を受光でき、これに基づいて適切に観察像を生成できる。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法の好ましい態様としては、前記像生成工程では、前記通気孔の深さ位置ごとの前記観察像から焦点が合った部位を抽出して1枚の合成像を生成するとよい。
上記態様では、焦点が合った1枚の合成像を観察するだけで、通気孔の内壁をより適切に観察できる。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察装置は、シリコン電極板を厚さ方向に貫通する通気孔を観察する装置であって、前記シリコン電極板の一方の面側から赤外線を照射する赤外線照射部と、前記シリコン電極板の他方の面側から前記赤外線を受光する受光部と、前記受光部により受光した赤外線に基づいて前記通気孔の観察像を生成する像生成部と、前記シリコン電極板を支持する支持台と、前記赤外線照射部及び前記受光部と前記シリコン電極板とを該シリコン電極板の一方の面に沿う方向に相対的に移動させて、前記赤外線照射部及び前記受光部を観察対象となる前記通気孔に対向して配置させる駆動部と、前記通気孔の深さ位置における前記受光部の焦点位置をずらす焦点変更部と、を備えている。
【0013】
本発明では、駆動部により赤外線照射部及び受光部とシリコン電極板とを相対的に移動させて、これらを観察目的の通気孔に対向する位置に配置できる。また、焦点変更部により通気孔の各深さ位置に焦点を合わせることで、各深さ位置に焦点が合った観察像を取得できる。
【0014】
本発明のプラズマ処理装置用シリコン電極板は、厚さ方向に貫通する通気孔が形成された板状に形成され、前記通気孔の内壁面へのパーティクルの付着量及び前記通気孔を形成した時の加工ダメージは、請求項1に記載の観察方法で観察した場合に予め設定された一定の範囲内に収まる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔内部へのパーティクルの付着量及び加工ダメージ痕を観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るシリコン電極板を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)が断面図である。
図2】シリコン電極板の通気孔観察装置を示す斜視図である。
図3】シリコン電極板の通気孔観察装置によりシリコン電極板を観察する様子を示す斜視図である。
図4図2に示す通気孔観察装置の赤外線照射部によりシリコン電極板に赤外線を照射する様子を示す断面図である。
図5図2に示す通気孔観察装置による通気孔の観察範囲を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のプラズマ処理装置用シリコン電極板の通気孔観察方法及び観察装置、並びに、プラズマ処理装置用シリコン電極板の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態では、プラズマ処理装置としてプラズマエッチング装置を、プラズマ処理装置用シリコン電極板として、プラズマエッチング用シリコン電極板を一例に挙げて説明する。
【0018】
[プラズマエッチング用シリコン電極板の構成]
プラズマエッチング用シリコン電極板(以下、シリコン電極板という)20は、脆性材料であるSi(シリコン)により形成され、図1(a)に示すように、円板状とされている。このシリコン電極板20を形成するSiは結晶状態に依らず、例えば単結晶、柱状晶、多結晶のいずれにより形成されていてもよい。また、シリコン電極板20には、図1(a),(b)に示すように、厚さ方向に延びる通気孔21が形成されている。この通気孔21は、シリコン電極板20の一方の表面20aから他方の表面20bまでストレート状に延びる貫通孔である。このような通気孔21は、シリコン電極板20の一方の表面20a及び他方の表面20bの両側から削孔することにより形成されている。また、この通気孔21は、プラズマエッチングを行う際に、シリコン電極板20とウエハとの間にエッチングガスを供給するために用いられる。
【0019】
このようなシリコン電極板20は、例えば、直径が200mm以上600mm以下、厚さが5mm以上30mm以下とされ、直径0.1mm以上2.0mm以下の通気孔21が数百個以上数千個以下形成されている。例えば、シリコン電極板20における通気孔21は100個以上3000個以下形成されている。また、通気孔21のアスペクト比は2.5~100であり、好ましくは10~50である。
【0020】
[プラズマエッチング用シリコン電極板の製造方法]
シリコン電極板20は、まずシリコンインゴットを作製し、このシリコンインゴットを輪切り状に直径方向に切断して円板状の素板を作製し、その素板に穴あけ加工等の機械加工を施し、最後にエッチング処理することにより製造される。本実施形態では、シリコン電極板20の厚さを5mm以上と厚く設定しているため、穴あけ加工は、シリコン電極板20となる素板の一方の表面(表面20a)側と他方の表面(表面20b)側の両側から穴あけ加工を実行する。
【0021】
この点、シリコン電極板20の一方の表面20aから厚さ方向途中まで形成した孔部と他方の表面20bから厚さ方向途中まで形成した孔部との加工位置がずれ、シリコン電極板20を貫通する通気孔21が適切に形成されない場合や、通気孔21の形成時の加工ダメージ痕が大きすぎる場合がある。また、プラズマエッチング装置においてシリコン電極板20を長時間(例えば、100時間以上)用いると、通気孔21内部にパーティクルが付着し、適切にプラズマエッチング処理が実行できない可能性がある。このため、本実施形態では、次に示す方法で、通気孔21内部のパーティクルの付着量及び加工ダメージ痕を観察している。
【0022】
[シリコン電極板の通気孔観察方法]
本実施形態のシリコン電極板の通気孔観察方法は、シリコン電極板20の一方の面側(表面20b側)から赤外線を照射し、他方の面側(表面20a側)から赤外線を受光して、受光した赤外線に基づく通気孔の観察像を生成する像生成工程を備え、この像生成工程では、通気孔の深さ位置における赤外線の受光部32(図2及び図3参照)の焦点位置をずらしながら、各深さ位置に焦点を合わせた観察像を取得するようにしている。また、この像生成工程では、通気孔の深さ位置ごとの観察像から焦点が合った部位(通気孔)を抽出して1枚の合成像を作成する。これにより、全ての領域に焦点が合った観察像が作成され、該観察像がディスプレイなどの表示装置に表示される。ユーザはこの観察像を観察するだけで通気孔21の内部のパーティクル等の異物や加工ダメージ痕の観察が可能となる。以下、詳しく説明する。
【0023】
このようなシリコン電極板の通気孔観察方法は、シリコン電極板の通気孔観察装置30により実行される。通気孔観察装置30は、図2及び図3に示すように、シリコン電極板20の一方の面側(表面20b側)から赤外線を照射する赤外線照射部31と、シリコン電極板20の他方の面側(表面20a側)から通気孔21を通過した赤外線を受光する受光部32と、受光部32により受光した赤外線に基づいて通気孔の観察像を生成する像生成部33と、を備えている。また、通気孔観察装置30は、図2に示すように、シリコン電極板20を回転可能に支持する支持台34と、支持台34を該シリコン電極板20の一方の面(表面20a)に沿う方向に移動させて、赤外線照射部31及び受光部32を観察対象となる通気孔21に対向して配置させる駆動部35と、を備えている。また、通気孔観察装置30は、通気孔21の深さ位置における受光部32の焦点位置をずらす焦点変更部36を備えている。本実施形態では、焦点変更部36は、受光部32をシリコン電極板20の表面20aに直交する方向(例、光軸方向)に移動させることで、通気孔21内の焦点位置を変更する移動機構により構成されている。なお、焦点変更部36は、シリコン電極板を支持する支持台34をシリコン電極板20の表面20aに直交する方向に移動させることで、通気孔21内の焦点位置を変更するようにしてもよい。
【0024】
この通気孔観察装置30により実行されるシリコン電極板の通気孔観察方法は、具体的には、図2図4に示すように、赤外線照射部31及び受光部32を固定し、これらの間に検査対象部位(通気孔21)が位置するようにシリコン電極板20を支持台34に配置する。そして、赤外線照射部31から赤外線L1をシリコン電極板20の通気孔21に向けて照射し、シリコン電極板20の反対側から赤外線L1を受光部32により受光する。この受光部32は、いわゆる赤外線センサとレンズとを備える受光カメラにより構成され、この受光カメラを焦点変更部36により移動させる。具体的には、まず、受光部32の焦点位置を赤外線照射部31側の表面20b(通気孔21の20b側の開口位置)に設定し、焦点変更部36により受光部32とシリコン電極板20aとの距離を徐々に拡大していく(例えば、1mmずつ拡大していく)ことで、図5に示すように、通気孔21の観察範囲H1の通気孔21の深さ位置における受光部32の焦点位置をずらしながら、各深さ位置に焦点を合わせた観察像P1,P2,…Piを像生成部33により生成する。赤外線はシリコン電極板20を透過し得るので、受光部32には、焦点位置の通気孔21の内側だけでなく、その周辺部の画像も捉えられる。
【0025】
そして、像生成工程では、通気孔21の深さ位置ごとの複数の観察像P1,P2,…Piから焦点が合った部位を抽出して1枚の合成像を生成する。この合成像は、像生成部33により生成される。このように1枚の合成像が生成されることにより、全ての領域に焦点が合った観察像(合成観察像)が作成され、ユーザはこの観察像を観察するだけで通気孔21の内部の観察が可能となる。
【0026】
また、このような通気孔観察方法により観察されたシリコン電極板20は、厚さ方向に貫通する通気孔21が形成された円板状に形成され、通気孔21の内壁面へのパーティクルの付着量及び通気孔形成時の加工ダメージ(通気孔21の内周面に沿う加工ダメージ及び電極板20の内部に延びる加工ダメージの両方が存在し得る)は、上記観察方法で観察した場合に予め設定された一定の範囲内に収まる。この一定の範囲は任意に自動的又は手動的に設定することができ、例えば、全ての通気孔21を観察し、一つの通気孔21について、長さ10μm以上の異物(パーティクル)が1個以下であり、かつ、長さ10μm以上の加工ダメージ(クラック)がないこととすることができる。つまり、この観察方法により異物及び加工ダメージがこの条件(判定条件)以下であれば、そのシリコン電極板20はプラズマエッチング処理に使用可能であることがわかる。逆に、シリコン電極板20に形成されている通気孔21のいずれかで、長さ10μm以上の異物(パーティクル)、長さ10μm以上の加工ダメージ(クラック)のいずれかが発見された場合は、そのシリコン電極板20はプラズマエッチング処理に使用できないことになる。
【0027】
本実施形態では、通気孔21の深さ位置ごとに焦点が合った観察像を取得できる、つまり、一方の表面20aに焦点を合わせた観察像、他方の表面20bに焦点を合わせた観察像、及び通気孔21の内部における少なくとも1つの深さ位置に焦点を合わせた観察像を取得できるので、各観察像から通気孔21の内壁を適切に観察でき、判定条件などに基づいて通気孔21の内壁にパーティクルの付着量及び通気孔形成時の加工ダメージ痕を容易に判定できる。また、赤外線はシリコン電極体20を透過するため厚み方向の影響が軽微であり、通気孔21を両側から削孔した場合における両孔の接続部分において影が生じることもなく、可視光線のようにその光が弱まることがないので、受光部32により確実に赤外線を受光でき、これに基づいて適切に観察像を生成できる。また、通気孔21の深さ位置ごとの観察像から焦点が合った部位を抽出して1枚の合成像を作成しているので、焦点が合った1枚の合成像を観察するだけで、通気孔をより適切に観察できる。
特に加工ダメージ痕においては、シリコン電極板20の内方向(厚さ方向を含む)に延びるクラックの最大長を一目で確認することができる、一方、焦点合成した場合では、深さ方向に重なる異物も容易に認識することができ、異物の数や大きさを正確に検出することができる。
【0028】
前述の特許文献2に、測定する光に赤外線も含む旨の記載があるが、通気孔を通過した光を測定しているので、内周面に異物や加工ダメージがあった場合には像の周辺がシャープに現れず、内周面の状態を正確に把握することは難しい。
本実施形態の場合、通気孔21の深さ方向に焦点位置をずらしながら観察しているので、例えば、通気孔21の深さ方向に異物が複数並んで付着している場合や、加工ダメージが深さ方向に延びる場合等であっても、その位置及び大きさを正確に把握することができる。
その結果、前述した、長さ10μm以上の異物(パーティクル)、長さ10μm以上の加工ダメージ(クラック)を補足することが可能であり、観察像に基づきパーティクルやクラックを目視で判定する、あるいはソフトウエアを用いた処理により自動判定することができる。この自動判定処理は通気孔観察装置30が判定部(不図示)として備える機能であってもよいし、通気孔観察装置30とは異なる別の装置が備える機能でもよい。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、焦点変更部36は、受光部32又はシリコン電極板20をシリコン電極板20の表面20aに直交する方向に相対的に移動させることで、通気孔21内の焦点位置を変更する移動機構により構成されることとしたが、これに限らず、例えば、焦点変更部は、受光部を、可変焦点レンズを搭載した赤外線センサで構成してもよい。
【0030】
上記実施形態では、通気孔観察装置30は、駆動部35は、支持台34をシリコン電極板20の一方の面(表面20a)に沿う方向に移動させて、赤外線照射部31及び受光部32を観察対象となる通気孔21に対向して配置させることとしたが、これに限らず、例えば、赤外線照射部31及び受光部32をシリコン電極板20の表面20aに沿う方向に移動させることとしてもよい。
【実施例0031】
直径が350mm、厚さが10mmであり、通気孔の直径が0.5mmのシリコン電極板を用意した。通気孔は、シリコン電極板に100個形成されており、このうちから1つの任意の通気孔を選択し、この通気孔を上記実施形態で説明した方法で観察した。具体的には、赤外線照射部として1200nmの赤外光を照射する光源(浜松ホトニクス社製L13072)を用い、受光部としてInGaAsエリアカメラ(浜松ホトニクス社製:C12741-11)を用いた。このカメラの感度波長範囲は950nm~1700nmで、有効画素数は640×512、画素サイズは20×20um、有効素子サイズは12.8×10.24mm、倍率は10倍とした。
まず、シリコン電極板の通気孔の任意の孔に対向するように赤外線照射部及び受光部を配置した。そして、受光部を焦点変更部(移動機構)によりシリコン電極板の表面に直交する方向に徐々に移動させて、観察範囲Hにおいて通気孔の表面(厚さt=0mm)から1mmずつ深さ方向の焦点位置をずらして、通気孔の裏面(厚さt=10mm)まで、計10個の深さ位置に焦点を合わせた観察像を取得したところ、いずれの深さ位置においても、通気孔の当該深さ位置に焦点が合っており、通気孔の内周縁付近がシャープに捉えられていた。このため、通気孔の各深さ位置のそれぞれに焦点が合った画像を観察することで、通気孔の内壁面を適切に観察できることが分かった。
【符号の説明】
【0032】
20 プラズマエッチング用シリコン電極板(シリコン電極板)
20a 一方の表面(一方の面)
20b 他方の表面(他方の面)
21 通気孔
30 通気孔観察装置
31 赤外線照射部
32 受光部(受光カメラ)
33 像生成部
34 支持台
35 駆動部
36 焦点変更部(移動機構)
L1 赤外光(赤外線)
H1 観察範囲
図1
図2
図3
図4
図5