(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031353
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】毛包上皮幹細胞活性化剤及び外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20230302BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230302BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230302BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230302BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230302BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230302BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P17/14
A61P43/00 107
A61K9/10
A61K47/38
A61Q7/00
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136789
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 紀章
(72)【発明者】
【氏名】大阿久 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晃也
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB31
4C076CC18
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF11
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF63
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD261
4C083AD262
4C083CC37
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD39
4C083EE22
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA23
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZA92
4C086ZB22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高濃度のミノキシジルを安定的に配合し、既存治療薬よりも優れた発毛効果を発揮する外用組成物を提供する。
【解決手段】2w/v%以上のミノキシジルを含有し、ミノキシジルが平均粒子径50nm~200nmの微粒子であることを特徴とする外用組成物。前記外用組成物がさらにセルロース系高分子を含有することが好ましい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2w/v%以上のミノキシジルを含有し、ミノキシジルが平均粒子径50nm~200nmの微粒子であることを特徴とする外用組成物。
【請求項2】
さらにセルロース系高分子を含有する、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
セルロース系高分子がメチルセルロースである、請求項2に記載の外用組成物。
【請求項4】
セルロース系高分子の含有量が、7~15w/v%である請求項2又は3に記載の外用組成物。
【請求項5】
2w/v%以上のミノキシジルを含有し、ミノキシジルの平均粒子径50~200nmの微粒子であることを特徴とする、毛包上皮幹細胞活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度のミノキシジルを微粒子状態で含有する外用組成物に関し、より詳細には、ミノキシジルが毛包上部へ効率的に集積され、毛包上部のバルジ部位等に蓄積される毛包上皮幹細胞を活性化させることでミノキシジルの有する発毛効果を増強させ、即効性を高め得る外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
男性型脱毛症は、特徴的な脱毛パターンを示し、年齢に依存して発症頻度が増加する疾患である(非特許文献1)。現在、男性脱毛症に対する治療薬の第一選択薬として、ミノキシジル外用組成物が用いられている(非特許文献2)。本邦で承認を取得しているミノキシジル外用組成物の最大ミノキシジル濃度は5%であり、臨床試験にて有効性が確認されているが、治療効果に満足できない患者が一定数存在する(非特許文献3)。したがって、さらに発毛効果を増強させるミノキシジル治療薬の開発が期待されている。
ミノキシジルは、毛包に作用し、毛周期に影響を及ぼすことが知られており(非特許文献4)、近年、1%のミノキシジルを微粒子分散させた外用組成物で、毛包の下部である毛球部へ集積させることで発毛効果を示す製剤化技術が報告されている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Severi G. British Journal of Dermatology. 2003; 149: 1207-1213
【非特許文献2】Blumeyer A. Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft. 2011; 9: S1-S57
【非特許文献3】Olsen EA. Journal of the American Academy of Dermatology. 2002; 47: 377-385
【非特許文献4】Messenger AG. British Journal of Dermatology. 2004; 150: 186-194
【非特許文献5】Nagai N. International Journal of Nanomedicine. 2019; 14: 7921-7931
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高濃度のミノキシジルを安定的に配合し、既存治療薬よりも優れた発毛効果を発揮する製剤化技術の報告は少ない。そこで、安定性を担保した上で、優れた発毛効果を発揮する製剤化技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高濃度のミノキシジルを微粒子状態で分散させた外用組成物を適用することにより、ミノキシジルが毛包上部へ効率的に集積され、毛包上部のバルジ領域等に蓄積された毛包上皮幹細胞を活性化させるため、優れた発毛効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)2w/v%以上のミノキシジルを含有し、ミノキシジルが平均粒子径50nm~200nmの微粒子であることを特徴とする外用組成物、
(2)さらにセルロース系高分子を含有する、(1)に記載の外用組成物、
(3)セルロース系高分子がメチルセルロースである、(2)に記載の外用組成物、
(4)セルロース系高分子の含有量が、7~15w/v%である(2)又は(3)に記載の外用組成物、
(5)2w/v%以上のミノキシジルを含有し、ミノキシジルが平均粒子径50~200nmの微粒子であることを特徴とする、毛包上皮幹細胞活性化剤、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の外用組成物は、高濃度のミノキシジル微粒子が溶媒中に安定して分散されたものであり、これを毛髪に適用することにより、ミノキシジルが毛包上部へ効率的に集積され、毛包上部のバルジ領域等に蓄積された毛包上皮幹細胞を活性化させることができ、ミノキシジルの発毛効果が増強されるとともに即効性にも優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、試験例3における、実施例及び比較例の外用組成物をマウスに塗布した場合のミノキシジルの毛包移行性を評価したグラフであり、それぞれ皮膚、毛球部、毛包上部に移行したミノキシジルの量を示す。
【
図2】
図2は、試験例4における、実施例、比較例の外用組成物及び基剤をマウスに塗布した場合の毛包上皮幹細胞のHE染色及び免疫染色画像である。
【
図3】
図3は、試験例5における、実施例、比較例の外用組成物及び基剤をマウスに塗布した場合のマウス発毛面積の経時的推移を示すグラフである。
【
図4】
図4は、試験例5における、実施例、比較例の外用組成物及び基剤をマウスに塗布した場合の発毛―時間曲線下面積(AUC)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ミノキシジルは、化合物名を6-(1-ピペリジニル)-2,4-ピリミジンジアミンー3-オキサイドと称し、育毛剤としての適応が知られており、優れた育毛・発毛効果を発揮する薬剤として多数の報告がある。本発明の外用組成物において用いるミノキシジルは、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。本発明で配合するミノキシジルの配合量は、ミノキシジルの毛包上部への集積及び毛包上皮幹細胞活性化に基づく発毛効果の点から、下限は外用組成物中(エアゾール剤のときは原液中。以下同じ)2w/v%以上が好ましく、3w/v%以上がより好ましく、4w/v%以上がさらに好ましく、5w/v%以上が特に好ましい。また上限は10w/v%以下が好ましい。
【0010】
本発明の外用組成物は、配合したミノキシジルの全部又は一部が微粒子として溶媒中に分散している状態のものである。ミノキシジルの一部が溶媒に溶解していてもよいが、ミノキシジルの毛包上部への集積及び毛包上皮幹細胞活性化に基づく発毛効果等の観点から、ミノキシジルを微粒子として外用組成物中2w/v%以上含有することが好ましく、3w/v%以上含有することがより好ましく、4w/v%以上含有することがさらに好ましく、5w/v%以上含有することが特に好ましい。ミノキシジル微粒子の粒子径としては、ミノキシジルの毛包上部への集積及び毛包上皮幹細胞活性化に基づく発毛効果の観点から、0.01~1μmが好ましく、50~500nmがより好ましく、さらに70~270nmが好ましい。またミノキシジル微粒子の平均粒子径としては100~200nmがさらに好ましい。ミノキシジル微粒子の平均粒子径は、NANOSIGHT LM10(QuantumDesign Japan, Tokyo, Japan)などの動的光散乱法を用いた機器で評価することができる。具体的には、粘度(0.904~0.906mPa・s)や波長(405nm)、測定時間(60s)を設定し、ストークス-アインシュタイン式により流体力学的直径を算出することができる。
【0011】
本発明の外用組成物には、必要に応じ分散剤を配合することができる。分散剤としては、例えば、セルロース系高分子、グリセリン脂肪酸エステル、非イオン界面活性剤、シクロデキストリン、アクリル酸及やメタクリル酸エステルの重合性モノマー等が挙げられるが、これらのうち、ミノキシジル微粒子の分散安定性等の観点からセルロース系高分子が好適に用いられる。セルロース系高分子としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられるが、ミノキシジル微粒子の分散安定性等の観点からメチルセルロースが好ましい。メチルセルロースは、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。本発明の外用組成物中のメチルセルロースの配合量は、ミノキシジルの微粒子状態の確保の点から、7~15w/v%が好ましく、8~10w/v%がより好ましい。
【0012】
ミノキシジル微粒子を分散させる溶媒としては、外用組成物に用いられる溶媒であれば特に制限されないが、ミノキシジルの溶媒への溶解を抑制する等の観点から、水を主成分とする水性溶媒が好ましい。水の含有量は外用組成物中60w/v%以上が好ましく、80w/v%以上がより好ましく、90w/v%以上がさらに好ましい。
【0013】
溶媒には、上記したとおり水を主成分とする水性溶媒を用いることが好ましいが、ミノキシジルの溶媒への溶解を抑制する等の観点から、水性溶媒中の水の含有量は90w/v%以上が好ましく、95w/v%以上がより好ましく、99w/v%以上がさらに好ましく、特に100w/v%であることが好ましい。一方、エタノール、イソプロピルアルコール等は、ミノキシジルの溶媒への溶解性等の観点から、外用組成物中の合計の含有量が20w/v%以下であることが好ましく、より好ましくは10%w/v%以下である。
【0014】
ミノキシジルの微粒子化にあたって、原料のミノキシジル粒子の粒径等は特に制限されるものではなく、市販されているミノキシジル原体をそのまま用いることができる。本発明のミノキシジルの微粒子化手段は特に限定されず、ブレークダウン法として、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル等を用いることができ、乾式粉砕及び湿式粉砕のいずれでもよいが、原料のミノキシジル粒子を上記溶媒に分散させ、上記ビーズミル等で粉砕処理する湿式粉砕が好適である。湿式粉砕にあたっては、ミノキシジル微粒子の分散安定性等の観点から溶媒中に上記セルロース系高分子などの分散剤を溶解させておくことが好ましい。具体的な例としては、7~15w/v%となる量のセルロース系高分子を溶解した水性溶媒中に、3w/v%以上となる量のミノキシジル粒子を添加し、粒子径2mm以下のビーズを用いたビーズミル粉砕機にて粉砕処理(例えば、5,500rpm×30秒間×30回、1,500rpm×2時間)を行うことで上記粒子径の範囲になるまで粉砕すればよい。
【0015】
このようにして湿式粉砕により所定の粒子径に調製したミノキシジル微粒子分散物をそのまま、または必要に応じて添加剤を配合して製剤化することにより本発明の外用組成物を調製することができる。このような添加剤としては、育毛成分、血管拡張剤、pH調整剤、防腐剤、殺菌剤、保湿剤ビタミン類、抗酸化剤、香料、清涼化剤、溶解補助剤等が挙げられる。溶媒として水性溶媒を用いた場合には、水性溶媒中にミノキシジル微粒子が懸濁した水性懸濁剤として製剤化される。
【0016】
本発明の外用組成物の剤型は特に限定されないが、例えば、ローション剤、リニメント剤、クリーム剤、ゲル剤、エアゾール剤、トニック剤、ポンプスプレー等の剤型とすることができる。
【0017】
本発明の外用組成物は、毛髪及び/又は頭皮に適用することにより、毛包器官において、毛球部よりも毛包上部の部位に、ミノキシジルを集積させることができる。毛包上部とは、毛球部よりも皮膚角質層側の部位であり、毛漏斗部や毛隆起部が含まれる。毛隆起部はバルジ領域とも呼ばれ、毛包上皮幹細胞が蓄積される。
【0018】
このようにミノキシジルが毛包上部に集積されるため、毛包上部のバルジ領域に蓄積されている毛包上皮幹細胞を活性化させることができる。毛包上皮幹細胞が活性化したかどうかは、毛包器官の免疫染色観察において、毛包上皮幹細胞の染色を観察することで確認できる。毛包上皮幹細胞には、細胞表面にCD200、CD34、ケラチン15、インテグリンα6などを発現している細胞が含まれ、これらに特異的に結合する抗体を用いた免疫染色により活性化の有無を判別できる。
【0019】
以下に、実施例及び試験例を記載し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。
【実施例0020】
(実施例1)
ミノキシジル粉末5g、メチルセルロース(信越化学工業株式会社)8g、精製水で全量を100mLとし、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル破砕(Micro Smash MS-100R(TOMY DIGITAL BIOLOGY Co., Ltd., Tokyo, Japan)、5,500rpm、30秒間×30回、4℃)を行い、その後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いたビーズミル破砕(ShakeMaster NEO(Bio Medical Science, Tokyo, Japan)2時間、1,500rpm)を施すことで、ミノキシジル微粒子が分散した外用組成物を得た。
【0021】
(比較例1)
ミノキシジル5g、メチルセルロース8g、精製水で全量を100mLとし、外用組成物を得た。
【0022】
(比較例2)
市販のミノキシジル5%ローション(リアップX5、大正製薬株式会社)を外用組成物とした。
【0023】
<試験例1:粒子径の評価>
実施例1の外用組成物について、ナノ粒子解析装置NanoSight LM10(Malvern Panalytical社、測定条件粘度1.45mPa・sec、波長405nm、測定時間60sec)を用いてミノキシジル微粒子の平均粒子径を求めたところ、139.8±8.9nmであった。
比較例1の外用組成物について、レーザー回折粒度分布測定装置SALD-7100(島津製作所、屈折率1.60~0.010i)を用いてミノキシジルの平均粒子径を求めたところ、5.21±0.93μmであった。
【0024】
<試験例2:安定性の評価>
実施例1の外用組成物を22℃2週間保管後の微粒子分散状態のミノキシジル濃度を、下記条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC;LC-20AT、株式会社島津製作所)を用いて測定した。その結果、配合しているミノキシジルの90w/v%以上が分散状態を維持していることを確認できた。
(HPLC条件)
カラム:Inertsil(R) ODS-3(ジーエルサイエンス株式会社、2.1mm,50mm)
移動相:3mMドキュセートナトリウム含有メタノール/精製水混液(1/1,v/v)
流速:0.2mL/min
カラム温度:35℃
検出波長:254nm
【0025】
<試験例3:毛包移行性の評価>
C57BL/6マウス(雄、7週齢)の背部体毛を剃毛した。実施例1、比較例2及び基剤(メチルセルロース8g、精製水で全量を100mL)を、1日1回30μLずつ剃毛部に投与した。投与4時間後、塗布部位の毛を抜毛し、毛球部と毛球部以外の毛包上部に分けて試料採取した。試料をエタノール中でホモジナイズした後遠心分離した(20,400g,20mins,4℃)。毛球部、毛包上部及び抜毛後の皮膚試料中のミノキシジル濃度とタンパク量の測定を行うことで、試料中ミノキシジル量を算出した。ミノキシジル濃度測定には試験例2と同様にしてHPLC法を用いた。タンパク量測定にはBio―Rad Protein Assay Kitを用いた。試料中ミノキシジル量は、以下の式を用いて算出した。
【0026】
試料中ミノキシジル量(mol/mg protein)=試料中ミノキシジル濃度/試料中タンパク量
【0027】
試料中ミノキシジル量の算出結果を
図1に示す。毛包上部のミノキシジル量について、実施例1投与群は比較例2投与群よりも高値であった。毛球部のミノキシジル量について、実施例1投与群は比較例2投与群よりも低値であった。これらのことから、実施例1は、ミノキシジルを毛包上部へ効率的に集積させることがわかった。
【0028】
<試験例4:毛包上皮幹細胞の顕微鏡観察>
C57BL/6マウス(雄、7週齢)の背部体毛を剃毛した。実施例1、比較例2及び基剤を、1日1回30μLずつ剃毛部に反復投与した。反復投与後8日目に塗布部位皮膚を採取し、組織用迅速固定液(SUPER FIX:KURABO)で常温固定し、真空自動包埋装置(VRX-23:サクラファインテックジャパン)及び滑走式ミクロトーム(REM-710:大和光機工業)にて4μmパラフィンブロックを作成した。染色は、ヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin-Eosin:H.E.)染色及びCD200(Cat No.14057-1-AP、proteintech)抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。H.E.染色及びCD200抗体を用いて免疫組織化学染色を行った標本は、正立顕微鏡(BX-51、DP-71:OLYMPUS)を用いて観察した。
【0029】
免疫組織化学染色画像を
図2に示す。HE染色画像から、実施例1では、毛包が成長し、毛球部が充実性に成長していることが観察された。CD200染色画像から、実施例1及び比較例2投与群において、CD200陽性細胞が観察された。実施例1投与群においては、バルジ部位からサブバルジ部位、毛球方向に深い部位にもCD200陽性細胞が観察され、比較例2投与群と比較して、CD200陽性細胞が多く観察された。
【0030】
<試験例5:マウス発毛試験>
C57BL/6マウス(雄、7週齢)の背部体毛を剃毛した。実施例1、比較例1及び比較例2を、1日1回30μLずつ剃毛部に反復投与した。投与開始日から経時的にマウス背面をデジタルカメラで撮影し、画像解析ソフトImageJにて発毛面積を数値化した。また、台形法にて投与開始日から投与16日目までの発毛―時間曲線下面積(AUC)を算出した。同時に、基剤のみを反復投与したマウスの発毛面積を数値化し、AUCを算出した。
【0031】
経時的な発毛面積の推移を
図3に、AUCを
図4に示す。図中、「*」はp<0.05で基剤投与群に対して有意差あり、「♯」はp<0.05で比較例1投与群に対して有意差あり、「$」はp<0.05で比較例2投与群に対して有意差ありを示す(Dunnett検定)。
【0032】
本試験の結果から、実施例1投与群では反復投与8日目から発毛が観察され、反復投与10日目から発毛が観察された比較例2投与群と比較して、発毛の立ち上がりを早く示すことがわかった。また、実施例1投与群では、AUCが比較例2投与群よりも有意に高値であった。これらのことから、実施例1は、比較例2よりも優れた発毛効果を示すことがわかった。
本発明の外用組成物は、ミノキシジルを毛包上部へ効率的に集積させることができ、毛包上皮幹細胞を活性化させることができるため、発毛効果を有する医薬品、医薬部外品、化粧品などとして利用可能である。