(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031369
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】画像処理方法及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/36 20060101AFI20230302BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20230302BHJP
B41J 2/52 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B41J2/36 D
B41J2/325 A
B41J2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136806
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】植田 健二
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 和
【テーマコード(参考)】
2C065
2C066
2C262
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AD07
2C065DA09
2C066AA06
2C066AC01
2C066CD04
2C066CD12
2C066CD19
2C066CD27
2C262AA03
2C262AB07
2C262BB06
2C262BB22
2C262DA13
2C262GA30
(57)【要約】
【課題】階調性の低下を抑制しながら、低階調値の領域でも安定した濃度で画像を形成する。
【解決手段】記録媒体に熱転写方式により記録するための画像情報であって、複数の画素のそれぞれの階調値を含む画像情報を処理する。入力された画像情報を2以上の所定数の画素で構成される単位領域200に区画し、単位領域200において階調値が第1所定値(50)以下である第1画素201がある場合に、第1画素201の階調値を、第1所定値(50)より小さい第2所定値(0)まで減少させる第1工程と、単位領域200内の第1画素201以外の第2画素の階調値を、第1工程での第1画素201の階調値の減少量に基づいて増加させる第2工程と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に熱転写方式により記録するための画像情報であって、複数の画素のそれぞれの階調値を含む前記画像情報を処理する画像処理方法において、
入力された前記画像情報を2以上の所定数の画素で構成される単位領域に区画し、前記単位領域において階調値が第1所定値以下である第1画素がある場合に、
前記第1画素の階調値を、前記第1所定値より小さい第2所定値まで減少させる第1工程と、
前記単位領域内の前記第1画素以外の第2画素の階調値を、前記第1工程での前記第1画素の階調値の減少量に基づいて増加させる第2工程と、を備えた、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記単位領域において前記第2画素は2以上あり、前記第2工程の終了後、前記第2画素のうちで階調値が前記第1所定値以下である画素がある場合は、
前記単位領域での前記第1画素を除外した残りの前記第2画素からなる対象領域において、
前記第2画素の中で新たに第1画素を設定して、前記第1工程及び前記第2工程を実行することを、前記第2画素のうちで階調値が前記第1所定値以下である画素がなくなるか、あるいは、前記対象領域が1つの画素のみを有するようになるまで繰り返す、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記対象領域が1つの画素のみを有するようになったときは、当該画素を第1画素として、前記第1画素の階調値が前記第1所定値以下である場合は、前記第1工程を実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記単位領域において階調値が第1所定値以下である画素がない場合は、前記単位領域の各画素の階調値を前記画像情報として出力する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記第2工程において、前記第1工程での前記第1画素の階調値の減少量が第1減少量であるときの前記第2画素の階調値の増加量が第1増加量であるとした場合に、前記第1工程での前記第1画素の階調値の減少量が前記第1減少量より大きい第2減少量であるときの前記第2画素の階調値の増加量を前記第1増加量より大きい第2増加量とする、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記第1工程での前記第1画素の階調値の前記減少量を前記第2画素に均等割してそれぞれ加算する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記第2工程において、前記第1工程での前記第1画素の階調値の前記減少量を前記第2画素に均等割した値にそれぞれ係数を掛けて加算する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項8】
画像情報に基づいて熱転写方式により記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
熱転写方式により記録するための画像情報であって、複数の画素のそれぞれの階調値を含む前記画像情報を入力して処理し、前記画像形成部に出力することで前記画像形成部を制御する制御部と、を備える画像形成システムであって、
前記制御部は、
入力された前記画像情報を2以上の所定数の画素で構成される単位領域に区画し、前記単位領域において階調値が第1所定値以下である第1画素がある場合に、
前記第1画素の階調値を、前記第1所定値より小さい第2所定値まで減少させ、
前記単位領域内の前記第1画素以外の第2画素の階調値を、前記第1画素の階調値の減少量に基づいて増加させる、
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に文字及びカラー画像を記録するための画像処理方法及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱転写の記録装置としては、インクリボンのインク色として、昇華性染料と融着性染料との両方を用いるものが知られている。この種の記録装置としては、画像記録時には、発熱素子を備えている記録ヘッド(サーマルヘッド)によってイエロー色とマゼンタ色とシアン色の各昇華型インク(CMY)を昇華させて記録媒体にカラー記録する一方、文字記録時等には、黒色の溶融型インク(Bk)を記録ヘッドによって溶融して選択的に記録媒体に記録するものが知られている。
【0003】
一般的に、昇華型インクを用いた熱転写プリンタなどの記録装置では、インクリボンのインク色を多階調(濃度)で記録することが可能である。例えば、プラスチックカードのような固い記録媒体に転写を行う場合には、記録ヘッド表面の微細な凹凸等によるインクリボンと記録媒体への当接性や、インクリボンのインク層の塗工ムラなどによって、転写性が影響を受けやすくなる。このため、低い階調値の画像データに対応する低濃度の画像を印刷しようとしたときに、ムラが発生する虞がある。即ち、記録可能な複数の階調の中で、特に濃度の低い低階調の領域で記録を行う場合、記録ヘッドの加熱特性、インキ層および受容層の特性のバラツキによって、転写されるインキの濃度が意図した濃度にならず、出力画像の階調性が損なわれる虞がある。このような場合においてインクの転写性を向上させる画像処理方法が開発されている(特許文献1参照)。この画像処理方法では、特定の画素の集合に対して濃度階調と面積階調のいずれかで画像を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の画像処理方法では、面積階調で画像を形成することにより、複数の画素の集合全体(単位領域)に対して面積で階調を表現するため、単位領域全体がその平均濃度階調値で均一化されることになり、各画素で表現されている階調性が印刷物上では損なわれる場合がある。また、高階調値の画素と低階調値の画素が単位領域に共存する場合は高階調値の画素の影響により平均階調値が上がり、同じ単位領域に含まれる不安定な低階調値の画素に処理がかからない場合がある。逆に、安定している高階調値の画素にも処理がかかる場合もあり、その場合、画像の輪郭が不明瞭になる可能性がある。
【0006】
本発明は、階調性の低下を抑制しながら、低階調値の領域でも安定した濃度で画像を形成可能な画像処理方法及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理方法は、記録媒体に熱転写方式により記録するための画像情報であって、複数の画素のそれぞれの階調値を含む前記画像情報を処理する画像処理方法において、入力された前記画像情報を2以上の所定数の画素で構成される単位領域に区画し、前記単位領域において階調値が第1所定値以下である第1画素がある場合に、前記第1画素の階調値を、前記第1所定値より小さい第2所定値まで減少させる第1工程と、前記単位領域内の前記第1画素以外の第2画素の階調値を、前記第1工程での前記第1画素の階調値の減少量に基づいて増加させる第2工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成システムは、画像情報に基づいて熱転写方式により記録媒体に画像を形成する画像形成部と、熱転写方式により記録するための画像情報であって、複数の画素のそれぞれの階調値を含む前記画像情報を入力して処理し、前記画像形成部に出力することで前記画像形成部を制御する制御部と、を備える画像形成システムであって、前記制御部は、入力された前記画像情報を2以上の所定数の画素で構成される単位領域に区画し、前記単位領域において階調値が第1所定値以下である第1画素がある場合に、前記第1画素の階調値を、前記第1所定値より小さい第2所定値まで減少させ、前記単位領域内の前記第1画素以外の第2画素の階調値を、前記第1画素の階調値の減少量に基づいて増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像処理方法及び画像形成システムによれば、階調性の低下を抑制しながら、低階調値の領域でも安定した濃度で画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るプリンタの外観を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るプリンタにおいて、記録処理前のブランクカードが搬入された状態を示す概略断面図である。
【
図3】実施形態に係るプリンタにおいて、記録処理後のカードを排出する状態を示す概略断面図である。
【
図4】実施形態に係るプリンタの制御のための構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係るプリンタにおける画像処理方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】画像情報の中の各画素の階調値を示す説明図である。
【
図7】単位領域において画像処理を実行するときの遷移を示す説明図であり、(a)は処理前、(b)は処理後である。
【
図8】他の単位領域において画像処理を実行するときの遷移を示す説明図であり、(a)は処理前、(b)は途中経過、(c)は次の途中経過、(d)は処理後である。
【
図9】他の単位領域において画像処理を実行するときの遷移を示す説明図であり、(a)は処理前、(b)は途中経過、(c)は次の途中経過、(d)は更に次の途中経過、(e)は処理後である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、記録媒体の一例としてカード状印刷媒体(以下、カードCという)に文字や画像を印刷記録する機能を有するプリンタ1に適用した実施の形態について、
図1~
図9を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
[画像形成システムの概要]
図4に示すように、画像形成システム100は、プリンタ1と上位システム110とを有している。上位システム110は、例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータである上位装置111を有している。上位装置111には、一般に、原稿に記録された画像を読み取るスキャナ等の画像入力装置112、上位装置111に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置113、上位装置111によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ114が接続されている。プリンタ1は、不図示のインターフェースを介して、上位装置111に接続され、上位装置111からプリンタ1に印刷データ等を送信して、印刷動作等を指示することが可能である。なお、後述するように、プリンタ1は、操作表示部としてオペパネ部5を有しており、上位装置111からの印刷動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
【0013】
[プリンタの外観]
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、装置筐体としてのケーシング2の一側に配置され、記録処理前のブランクな複数のカードを積層状に収納可能(約100枚程度)であってケーシング2に対して着脱自在に取り付けられるカード供給部10と、同じくケーシング2の一側でカード供給部10の下方に配置され、記録処理後のカードを傾斜状に収容可能(約30枚程度)であってケーシング2に対して着脱自在に取り付けられるカード収容部20と、同じくケーシング2の一側でカード供給部10に隣接する位置に、プリンタ1のエラー状態を含む動作状態を表示する表示部4とを有し、印刷処理や磁気記録処理の各種設定を行うためのオペパネ部5が設けられている。なお、オペパネ部5は、ダイヤル6を回転させることによりこれに同期して回転可能に設けられている。
【0014】
カード収容部20の一部には、収容オーバーとなった記録処理後のカードを装置外部へ放出可能な開口部として形成されたカード放出口21が設けられている。また、プリンタ1の一面には、後述する印刷記録に使用されるインクリボンRを内装したカートリッジ52を着脱する際に装置内部にアクセスするための開閉カバー7が設けられており、開閉カバー7はケーシング2の一部を構成している。そして、カード供給部10あるいはカード収容部20に対向して、ケーシング2の他側には、第2の記録部としての磁気エンコーダユニット80がその一部をケーシング2から突出する形で配置されている。
【0015】
[プリンタの内部構成]
次に、
図2及び
図3に基づいて、プリンタ1の内部の各構成要素について説明する。
図2は、カード供給部10から供給された記録処理前のブランクなカードCが印刷部50に向けて搬送されている状態を示し、カードクリーニング機構30のクリーニング部材としてのクリーニングローラ31が搬送中のカードCの表面に当接してその印画される面を清浄にしている状態を示している。また、
図3、は印刷部50から磁気エンコーダユニット80により記録処理されたカードCがカード収容部20に向けて排出される際の状態を示している。このとき、搬送ローラ41,42は、略水平状のカード搬送路を形成する第1の位置から傾斜状のカード搬送路を形成する第2の位置へと移動して、カードCをカード排出口23に向けて搬送可能な状態を維持する。
【0016】
カード供給部10は、プリンタ1の一側に着脱自在に設けられ、その内部に記録処理前の複数のブランクなカードを積層状に収納可能としており、機体(プリンタ1)側に設けられ、不図示のモータにより回転駆動する供給ローラ11が最下位(最下層)のカードを装置内部へと繰り出す際にカードCの1枚のみの通過を許容するために、供給コロ12と板状部材からなる分離ゲート13とを有している。供給されるカードCは、供給コロ12と分離ゲート13との間を通過して、カード供給部10に連接するようにケーシング2の一側に設けられたカード供給口14へと導かれる。なお、詳述すると、分離ゲート13の下端部には図示しない可撓性のパッドが設けられており、例えば、厚さの異なる薄いカードを供給する場合であっても、1枚ずつの分離を可能としている。
【0017】
カード収容部20は、プリンタ1(ケーシング2)の一方側であって、カード供給部10の下方に着脱自在に設けられて記録処理後のカードCを傾斜状に収容可能としている。カード収容部20には、その内部の底面が傾斜状に形成された収容トレイ24が設けられており、ケーシング2の一方側でカード供給口14の下方に開口を有して配置されたカード排出口23から排出される記録済のカードCが排出ローラ15により収容トレイ24上に順次排出されて収容される(
図3参照)。
【0018】
排出ローラ15はプリンタ1側に固設されており、上述した供給ローラ11を回転駆動する不図示のモータによって回転駆動されるが、供給ローラ11がブランクなカードCを供給するために回転する方向を正転駆動とした場合、不図示のモータの逆転駆動により排出されるカードCを収容トレイ24上に排出するように回転駆動される。つまり、不図示のモータの正逆転駆動により供給ローラ11及び排出ローラ15が回転されるが、供給ローラ11には不図示のワンウェイクラッチが設けられているため、カード供給方向にのみ回転することができる(ワンウェイクラッチの作用により、カード供給方向と逆方向には回転駆動は伝達されない)。一方、排出ローラ15は、不図示のモータの正逆転駆動により両方向に回転駆動される。本実施形態では、記録処理前のブランクなカードCの供給動作と記録処理後のカードCの排出動作とが同時に行われることがなく、排出ローラ15がカードCの排出のための回転とその逆の方向に回転することであっても支障はない。
【0019】
カード供給口14から供給されたカードCは、後述する搬送駆動モータ70から伝達される駆動力を有して回転する搬送ローラ41,42,43へと順次引き継がれて略水平状のカード搬送路P1に沿って搬送される。なお、搬送ローラ42,43は、それぞれ駆動ローラと従動ローラとを有するローラ対で構成されている(以下、特に異なる説明がない限り、ローラ対の従動ローラについての説明を省略し、駆動ローラについてのみ説明する)。
【0020】
搬送ローラ41の対向側には、後述するカードクリーニング機構30の一部を構成するクリーニングローラ31が搬送ローラ41に対峙するようにカード搬送路P1に対して進退可能に設けられている。このクリーニングローラ31が搬送されるカードCに当接するようにカード搬送路P1上に進出しているとき(
図2に示す状態)、駆動力を有する搬送ローラ41との間でカードCを挟持して回転することで、印刷部50により印刷記録される印画面からゴミや埃等の異物を除去して清浄にすることができる。
【0021】
また、クリーニングローラ31がその動作位置であるカード搬送路P1上に進出したとき、クリーニングローラ31は、クリーニングローラ31に隣接した位置でカード搬送路P1から離間した所定の位置に配置されるクリーナとしてコロ状クリーナ32と面接触するように位置付けられる。コロ状クリーナ32は、クリーニングローラの外径(ローラ径)より小さい外径(ローラ径)を有しており、印刷部50の一部として構成されるインク媒体としてのインクリボンRを内装するカートリッジ52の所定部位に着脱自在に取り付けられる支持部材53に固着して回転可能に設けられている。
【0022】
本実施形態では、クリーニングローラ31は表面が粘着性を有するゴム材料などの回転自在のローラ状部材からなり、また、コロ状クリーナ32は、樹脂製の回転自在のコロ状部材にスポンジ層を有する粘着性テープが巻装されており、この粘着性テープはクリーニングローラ31の表面の粘着性より高い粘着性を有しているため、カードCから除去されクリーニングローラ31の表面に付着したゴミや埃等の異物は両者の面接触によりコロ状クリーナ32の表面を形成する粘着性テープへと移行、引き渡されることになる。
【0023】
搬送ローラ43のカード搬送方向下流側には、クリーニングローラ31によって清浄にされたカードCの表面に、文字ないし画像を印刷記録する印刷部50が設けられている。本実施形態においては、印刷部50は熱転写プリンタの構成が採用されており、カード搬送路P1上の印刷位置に設けられたプラテンローラ44に対して進退可能に設けられたサーマルヘッド51を有している。サーマルヘッド51は、画像情報に基づいて熱転写方式により記録媒体に画像を形成する画像形成部の一例である。
【0024】
プラテンローラ44とサーマルヘッド51との間には、インク層Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)、Op(保護層)等の複数色のパネルが面順次に繰り返されたインクリボンRが介在している。このインクリボンRは、上述したようにカートリッジ52に内装されている。カートリッジ52内の供給リール54及び巻取リール55はそれぞれインクリボンRが捲回された(保持された)ものであり、供給リール54には未使用のインクリボンRの捲回されており、巻取リール55には既使用の(サーマルヘッド51による熱転写後の)インクリボンRが捲回される。
【0025】
カード搬送路P1に沿って移動するカードCに文字あるいは画像などの情報を熱転写記録する際には、インクリボンRは、供給リール54から供給され、サーマルヘッド51の先端部に略全面を当接させながら搬送され、インクリボンRを巻き取る巻取リール55に巻取られる。供給リール54及び巻取リール55は、不図示の巻取リール駆動モータにより回転駆動される。このとき、カードCの表面にインクリボンRを介在させてサーマルヘッド51を押圧しながらサーマルヘッド51の加熱素子を選択的に作動させることで、カードCに所期の文字、画像が印刷される。インクリボンRの搬送経路には、複数のガイドシャフトと、所定のインク層(本実施形態ではインク層Y)の位置出しを行うためにインク層Bk(ブラック)を検出する発光素子58、受光素子59からなる透過型センサが配設されている。
【0026】
サーマルヘッド51のカード搬送方向上流側(搬送ローラ43側)には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCの搬送方向先端及び後端を検出する発光素子48、受光素子49からなる透過型センサが配設されている。印刷部50の下方には、上記した一連の搬送ローラ41,42,43、及びプラテンローラ44を正逆転方向に回転駆動する正逆転駆動可能なステッピングモータからなる搬送駆動モータ70が配設されている。なお、プラテンローラ44の回転量は、搬送駆動モータ70の回転量(パルスのステップ数)によって検出可能である。また、搬送駆動モータ70による回転駆動力は、搬送駆動モータ70の回転軸に設けられたプーリ71がベルト72によりプーリ73へと伝達され、プーリ73に一端が巻装されたベルト74によりプラテンローラ44の回転軸に設けられたプーリ75を介してプラテンローラ44に駆動が伝達される。なお、プーリ73は2段プーリで構成されており、それぞれの段差部分にベルト72及びベルト74が架け渡されている。
【0027】
プラテンローラ44の回転軸上、搬送ローラ41,42,43の回転軸上、並びに、それぞれのローラの間には不図示の複数のギヤが噛合状態で配設されており、プラテンローラ44に伝達された回転駆動力は、これら複数のギヤを介して各搬送ローラ41,42,43へと伝達される。
【0028】
また、プラテンローラ44のカード搬送方向下流側(巻取リール55側)には、カードCを搬送する機能を有し、印刷部50によりカードCに印刷記録を行なうときにカードCを挟持するニップローラ45がカード搬送路P1に沿って設けられており、このニップローラ45の更にカード搬送方向下流側には、カードCを搬送するための送りローラ46が同じくカード搬送路P1に沿って設けられている。ニップローラ45及び送りローラ46の略中央には、カード搬送路P1に沿って搬送されるカードCの搬送方向先端を検出する発光素子56、受光素子57からなる透過型センサが配設されている。
【0029】
これらのニップローラ45及び送りローラ46の回転軸にも不図示のギヤがそれぞれ設けられており、また、プラテンローラ44とニップローラ45、ニップローラ45と送りローラ46との間にも不図示の複数のギヤが設けられており、これら複数の図示しないギヤが相互に噛合うことにより、搬送駆動モータ70からの回転駆動力は、上述したプーリ、ベルト及び図示しない複数のギヤを含む駆動力伝達機構を介して、プラテンローラ44の回転軸に設けられたギヤから分岐されてニップローラ45及び送りローラ46にも伝達されていくことになる。
【0030】
また、サーマルヘッド51の巻取リール55側には、インクリボンRをカードCから剥離するための不図示の剥離板が設けられている。これにより、サーマルヘッド51から剥離板までの距離αの位置でインクリボンRがカードCから剥離される。よって、印刷終了から距離α(本実施形態では9.2mm)だけカードCを搬送してインクリボンRを巻き取った時点でインクリボンRとカードCとが剥離された状態となる。
【0031】
[制御部]
次に、プリンタ1の制御系及び電気系統について説明する。
図2及び
図3に示すように、プリンタ1は、プリンタ1全体の動作制御を行う制御部95と、商用交流電源から各機構部及び制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部90とを有している。
【0032】
図4に示すように、制御部95は、プリンタ1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ(マイコン)95bを備えている。マイクロコンピュータ95bは、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、プリンタ1の基本制御動作(プログラム及びプログラムデータ)が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM及びこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0033】
マイクロコンピュータ95bには外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置111との通信を行うための不図示のインターフェース、カードCに印刷すべき印刷データやカードCの磁気ストライプ部に磁気記録すべき磁気記録データ等を一時的に格納するバッファメモリ95aが接続されている。
【0034】
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部95c、各モータに駆動パルスや駆動電力を送出するモータドライバ等を制御するアクチュエータ制御部95d、サーマルヘッド51の熱エネルギーを制御するサーマルヘッド制御部95e、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部95f、磁気エンコーダユニット80が接続されている。センサ制御部95cは発光素子48及び受光素子49、発光素子56及び受光素子57、及び他の不図示のセンサに、アクチュエータ制御部95dはステッピングモータ61、搬送駆動モータ70及び他の図示しないモータ、アクチュエータ34等に、サーマルヘッド制御部95eはサーマルヘッド51に、操作表示制御部95fはオペパネ部5にそれぞれ接続されている。なお、電源部90は、制御部95、サーマルヘッド51、オペパネ部5及び磁気エンコーダユニット80に作動/駆動電源を供給している。即ち、制御部95(CPU)は、熱転写方式により記録するための画像情報であって、複数の画素のそれぞれの階調値を含む画像情報を入力して処理し、サーマルヘッド51に出力することで制御する。
【0035】
[動作]
次に、本実施形態のプリンタ1の動作について、マイクロコンピュータ95bのCPUを主体として説明する。制御部95に電源が投入されると、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びプログラムデータを読み出してRAMに展開し、各機構部を作動させるための初期処理を行う。初期処理では、外部バスを介してマイクロコンピュータ95bに接続され制御部95を構成するセンサ制御部95c等、磁気エンコーダユニット80との接続確認を行った後、各構成部が上述したホーム位置に位置しているか(
図2参照)をセンサ制御部95cからの信号等に基づいて判断し、各構成部がホーム位置に位置していない場合には、ホーム位置に移動させる。センサ制御部95cの信号等に基づいて、各構成要素をホーム位置への復帰動作を所定回繰り返してもホーム位置に移動しない場合には、上位装置111に報知するとともに、操作表示制御部95fを介して表示部4にその旨を表示させる。また、初期処理では、センサ制御部95cからの信号等に基づいて、カード供給部10にカードCが収容されているか等も併せて判断し、収容されていないと判断したときは、同様に、上位装置111に報知するとともに、表示部4にその旨を表示し、さらに、カード供給部10にカードが収容されるまで待機する。
【0036】
一方、上位装置111にインストールされたプリンタドライバは、ユーザの指定した記録指令に基づいて、プリンタ1での記録動作を制御するための各種パラメータ値を決定し、その記録指令よりカードへの記録を行うための印刷データ及び磁気記録データを生成して、プリンタ1に送信する。制御部95のバッファメモリ95aには、記録制御指令となる各種パラメータ値、印刷データをY、M、C、Bkの色成分ごとに分解して得られた画像データないし文字データ、及び、磁気記録データが格納される。なお、本実施形態では、上位装置111側において色成分(元データは、R、G、B)に分解し、プリンタ1でR、G、BからY、M、Cに変換されて画像データとして用いられ、上位装置111側で抽出されたBkデータがプリンタ1で同じくBkデータとして用いられて文字データに供される。
【0037】
ここで、サーマルヘッド51やインクリボンRのバラツキにより発色が不安定になることを防止するため、画像データに処理を行う。この処理方法については後述する。CPUは、バッファメモリ95aに格納された記録制御指令(各種パラメータ値)を取り込み、これらのパラメータ値とRAMに展開されたプログラム及びプログラムデータとに従って、以下のように各機構部を制御する。
【0038】
まず、アクチュエータ制御部95dを介して不図示のアクチュエータを駆動させ(ON状態)、クリーニングローラ31を
図2に示す動作位置へと移動させて、カードCの受け入れ準備を行なう。このとき、搬送ローラ41,42は、略水平状のカード搬送路を形成するように第1の位置(ホーム位置)に位置付けられている(
図2に示す状態)。次に、CPUは、アクチュエータ制御部95dを介して搬送駆動モータ70を作動させ駆動伝達機構を介してカード搬送路P1上に配設された各ローラを駆動させるとともに、アクチュエータ制御部95dを介して供給ローラ11を回転駆動する不図示のモータを駆動する。
【0039】
これにより、カード供給部10の最下位のカードCは、供給コロ12と分離ゲート13との間及びカード供給口14を介してケーシング2内に搬入される。カードCは、クリーニングローラ31により印画面が清浄され、カード搬送路P1に沿ってカード搬出口82側に向けて搬送されて一旦停止する(
図2参照)。なお、発光素子48及び受光素子49によってカードCの後端が検出されると、そのカード後端検出をトリガとして、クリーニングローラ31は、
図2に示す動作位置から
図3に示すホーム位置である退避位置へと移動する。
【0040】
[印刷及び剥離処理]
次に、印刷部50により、カードCの表面に印刷データによる文字や画像を印刷する。即ち、カードCの表面にインクリボンR(例えばインク層Yの部分)を介在させ、CPUはアクチュエータ制御部95dを介してサーマルヘッド昇降モータを駆動させて、サーマルヘッド51を退避位置から印刷位置まで移動させ、カードCにサーマルヘッド51を押圧しながら、Y色の画像データ(RGBデータからY成分が色変換された画像データ)に従ってサーマルヘッド51の加熱素子を選択的に作動させる。これにより、カードCの表面には、インクリボンRに塗着されたY(イエロー)色の熱転写インク成分が直接転写される。
【0041】
Y色の画像データの印刷が完了すると、CPUはカードCからインクリボンRを剥離するために、カードCの印刷終了位置が剥離点に到達するまで(距離α)、搬送駆動モータ70と巻取りリール駆動モータとを駆動させてカードCを搬送すると共にインクリボンRを巻き取る。
【0042】
[画像処理方法]
ここで、画像処理方法の手順について、
図5に示すフローチャートに沿って説明する。ここでは、上位装置111から制御部95に、
図6に示すような複数の画素のそれぞれの階調値を含む画像情報が入力され、この画像情報に対して画像処理を実行し、その結果をサーマルヘッド51から出力するものとする。各画素の階調値は、ここでは、0~100の範囲で示され、0が低階調(低濃度)、100が高階調(高濃度)であるものとする。また、発色が不安定になる特定の階調の閾値を50とし、階調値が50以下(第1所定値以下)の不安定画素(第1画素)がある場合に画像処理を実行するものとする。この階調値の50は、第1所定値の一例であり、50には限られず、適宜設定することができる。また、画像情報の縦横2画素の合計4画素ずつを1単位として、その単位領域ごとに不安定画素の有無を検出し、不安定画素があった場合に処理を実施する。即ち、CPUは、入力された画像情報を2以上の所定数の画素で構成される単位領域に区画する。
【0043】
CPUは、単位領域に不安定画素があるか否かを判断する(ステップS1)。CPUは、単位領域に不安定画素がないと判断した場合は(ステップS1のNO)、当該単位領域についての処理を終了し、次の単位領域の処理を行う。CPUは、単位領域に不安定画素があると判断した場合は(ステップS1のYES)、不安定画素の中で第1画素を設定する(ステップS2)。CPUは、第1画素の階調値を、第2所定値の一例である0まで減少させる(ステップS3、第1工程)。
【0044】
CPUは、単位領域内の第1画素以外の第2画素の階調値を、第1工程での第1画素の階調値の減少量に基づいて増加させる(ステップS4、第2工程)。第2画素の階調値の増加方法としては、例えば、第1工程での第1画素の階調値の減少量を第2画素に均等割で加算や、あるいは係数を掛けて加算する方法がある。CPUは、第2工程の終了後、残った第2画素において不安定画素があるか否かを判断する(ステップS5)。CPUは、残った第2画素において不安定画素があると判断した場合は(ステップS5のYES)、単位領域での第1画素を除外した残りの第2画素からなる対象領域において、再び第1画素を設定する(ステップS2)。即ち、単位領域において第2画素は2以上あり、第2工程の終了後、第2画素のうちで不安定画素がある場合は、第2画素の中で新たに第1画素を設定して、第1工程及び第2工程を実行することを、第2画素のうちで不安定画素がなくなるか、あるいは、対象領域が1つの画素のみを有するようになるまで繰り返す。尚、対象領域が1つの画素のみを有するようになったときは、当該画素を第1画素として、第1画素が不安定画素である場合は、第1工程を実行する。
【0045】
一方、CPUは、残った第2画素において不安定画素がないと判断した場合は(ステップS5のNO)、当該単位領域についての処理を終了し、次の単位領域の処理を行う。また、処理が終了した単位領域については、単位領域の各画素の階調値を画像情報として出力する。これを画像情報内の全ての単位領域に対して行う。
【0046】
即ち、CPUは、入力された画像情報を2以上の所定数の画素で構成される単位領域に区画し、単位領域において階調値が50(第1所定値)以下である第1画素がある場合に、第1画素の階調値を、50より小さい0(第2所定値)まで減少させ、単位領域内の第1画素以外の第2画素の階調値を、第1画素の階調値の減少量に基づいて増加させる。
【0047】
以下、画像処理方法について、
図6に示すような複数の画素のそれぞれの階調値を含む画像情報を用いて具体的に説明する。例えば、
図6の左上に示された単位領域200内には、発色が不安定になる特定の階調値以下の不安定画素があるため、処理を行う。
図7(a)に示すように、最初に単位領域200内の左上の画素に注目し、階調値が50以下かどうかを判断するが、この場合、50以下に該当しないため処理を行わない。次に単位領域200の右上、左下、右下の順でこれを判断していくと右下の画素では50以下であるため、これを第1画素201とする。
図7(b)に示すように、第1画素201の階調値を0にして、処理前の元の階調値の50との差分、つまり50を同一の単位領域200内で階調値を0にする処理を行っていない残りの3画素(第2画素)に対して均等に加算する。次に、単位領域200から階調値を0にする処理を行った画素201を除いた画素により、対象領域200aを設定するが、対象領域200aには不安点画素が含まれないので、この単位領域200については処理を終了して出力する。
【0048】
次に、
図6に示された単位領域210内には、発色が不安定になる特定の階調値以下の不安定画素があるため、処理を行う。
図8(a)に示すように、最初に単位領域210内の左上の画素に注目し、この画素の階調値が50以下であるため、これを第1画素211とする。
図8(b)に示すように、第1画素211の階調値を0にして、処理前の元の階調値10との差分、つまり10を同一の単位領域210内で階調値を0にする処理を行っていない残りの3画素(第2画素)に対して均等に加算する。次に、単位領域210から階調値を0にする処理を行った画素211を除いた画素により、対象領域210aを設定する。対象領域210aには不安点画素が含まれるため、例えば右上の画素を第1画素212とし、
図8(c)に示すように、第1画素212の階調値を0にして、処理前の元の階調値33との差分を、処理をしていない残りの2画素(第2画素)に対して均等に加算する。次に、対象領域210aから階調値を0にする処理を行った画素212を除いた画素により、対象領域210bを設定する。対象領域210bには不安点画素が含まれるため、例えば左下の画素を第1画素213とし、
図8(d)に示すように、第1画素213の階調値を0にして、処理前の元の階調値29との差分を、処理をしていない残りの1画素(第2画素)に対して加算する。次に、対象領域210bから階調値を0にする処理を行った画素213を除いた画素214が1つのみであり、かつ、この画素214は不安定画素ではないので、この単位領域210については処理を終了して出力する。
【0049】
次に、
図6に示された単位領域220内には、発色が不安定になる特定の階調値以下の不安定画素があるため、処理を行う。
図9(a)に示すように、最初に単位領域220内の左上の画素に注目し、この画素の階調値が50以下であるため、これを第1画素221とする。
図9(b)に示すように、第1画素221の階調値を0にして、処理前の元の階調値10との差分、つまり10を同一の単位領域220内で階調値を0にする処理を行っていない残りの3画素(第2画素)に対して均等に加算する。次に、単位領域220から階調値を0にする処理を行った画素221を除いた画素により、対象領域220aを設定する。対象領域220aには不安点画素が含まれるため、例えば右上の画素を第1画素222とし、
図9(c)に示すように、第1画素222の階調値を0にして、処理前の元の階調値13との差分を、処理をしていない残りの2画素(第2画素)に対して均等に加算する。次に、対象領域220aから階調値を0にする処理を行った画素222を除いた画素により、対象領域220bを設定する。対象領域220bには不安点画素が含まれるため、例えば左下の画素を第1画素223とし、
図9(d)に示すように、第1画素223の階調値を0にして、処理前の元の階調値19との差分を、処理をしていない残りの1画素(第2画素)に対して加算する。次に、対象領域220bから階調値を0にする処理を行った画素223を除いた画素224が1つのみであり、かつ、この画素224は不安定画素であるので、この画素224に対して第1工程を実行し、階調値を0にして、この単位領域220については処理を終了して出力する。
【0050】
本実施形態では、各単位領域又は対象領域において第2工程を実行する際に、第1画素の階調値を均等割して第2画素に加算している。このため、第1工程での第1画素の階調値の減少量が第1減少量であるときの第2画素の階調値の増加量が第1増加量であるとした場合に、第1工程での第1画素の階調値の減少量が第1減少量より大きい第2減少量であるときの第2画素の階調値の増加量は第1増加量より大きい第2増加量となる。
【0051】
尚、画像情報内を単位領域で分割する際、画像情報の端部に端数が出る場合(例えば、本実施形態の単位領域の4画素に対して2画素しかない場合)があるが、その際は単位領域の端数でできた領域内の複数の画素で処理を行う。更に、画像情報の角部において端数が1画素のみになる場合には処理を行わない。
【0052】
上述したように本実施形態の画像形成システム100によれば、制御部95が、単位領域において階調値が50以下の不安定画素がある場合に、第1画素の階調値を0まで減少させる第1工程と、単位領域内の第2画素の階調値を、第1工程での第1画素の階調値の減少量に基づいて増加させる第2工程と、を実行する。このため、不安定な範囲の階調値を回避しながらも、面積階調で画像を形成する場合に比べて、各画素で表現されている階調性を損なうことが無く、階調性の低下を抑制しながら、低階調値の領域でも安定した濃度で画像を形成することができる。
【0053】
尚、上述した本実施形態における画像形成システム100では、プリンタ1の制御部95が画像処理方法を実行する場合について説明したが、これには限られず、上位装置111が実行するようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態における画像形成システム100では、不安定画素の例として階調値を50以下とした場合について説明したが、これには限られず、インクリボンやサーマルヘッド51の特性により適宜変更することができる。あるいは、第1工程において第2所定値を0とした場合について説明したが、これには限られず、他の値であってもよい。また、本実施形態では、単位領域を縦横2画素の合計4画素としたが、これには限られず、例えば、縦1画素横2画素の合計2画素としたり、あるいは縦3画素横3画素の合計9画素などとしてもよい。
【0055】
また、本実施形態における画像形成システム100では、単位領域内において、4画素の処理順を左上、右上、左下、右下としたが、これには限られない。例えば、単位領域内の階調値が小さい順に処理を実行するようにしてもよい。この場合、第1の実施形態より演算の回数が減る場合がある。
【0056】
また、本実施形態における画像形成システム100では、単位領域又は対象領域において第2工程を実行する際に、第1画素の階調値を均等割して第2画素に加算する場合について説明したが、これには限られない。例えば、階調値と記録された濃度とが単純な比例関係でない場合は、処理が必要な所定の階調値以下の画素を0にして元の階調値との差分を同一単位領域内の他の画素に等分に加算する際に結果として同等の濃度になるように係数を掛けて加算するようにしてもよい。この場合、場所によって変更することも可能である。
【0057】
なお、本発明の全ての実施形態において示されている記憶装置としてのROMやRAMは例えば、磁気記憶媒体(フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ等)、光ディスク(MOやPD等の光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RW、DVD-RW等)、半導体ストレージ、紙テープ、ROM素子などを挙げることができる。また、インターフェースはUSBに限らず、例えばRC-232C、IrDA、IEEE1394等のシリアルインターフェイスや、IEEE1284、SCSI、IDEなどのパラレルインターフェイス、或いは/及び、ネットワークインターフェイスなども可能である。
【符号の説明】
【0058】
51…サーマルヘッド(画像形成部)、95…制御部、100…画像形成システム、200,210,220…単位領域、201,211,212,213,221,222,223…第1画素、200a,210a,210b,220a,220b…対象領域、C…カード(記録媒体)