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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003137
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20221228BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20221228BHJP
   B60R 21/02 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/16
B60R21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104127
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】小野 博朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 勝
(72)【発明者】
【氏名】薦田 大典
(72)【発明者】
【氏名】富田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 規敏
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087CD02
(57)【要約】
【課題】シートの重量増加を抑えながら、後部衝突時におけるシートの後傾を抑制することが可能な車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シートは、シートクッション2の高さを調節可能なリンク機構6を備える。リンク機構6は、車室の床部に取り付けられる取付ブラケット11と、クッションフレーム7が取付ブラケット11に対して平行を維持しながら第1位置と、当該第1位置に対して車両後方側かつ下方側の位置の第2位置との間で移動し得るように、クッションフレーム7と取付ブラケット11をリンク結合する複数のリンクアーム12、13と、取付ブラケット11に一体に形成され、当該取付ブラケット11の上面から上方に突出する突起部17であって、上面側において車両の後方衝突時にクッションフレーム17の一部である被当接部15が当接可能な当接面18を有する突起部17とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、前記シートクッションの高さを調節可能なリンク機構とを備える車両用シートであって、
前記リンク機構は、
前記シートクッションを支持するクッションフレームと、
前記車室の床部に直接または間接的に取り付けられる取付ブラケットと、
前記クッションフレームが前記取付ブラケットに対して平行を維持しながら第1位置と、当該第1位置に対して車両後方側かつ下方側の位置の第2位置との間で移動し得るように、前記クッションフレームと取付ブラケットをリンク結合する複数のリンクアームと、
前記取付ブラケットに一体に形成され、当該取付ブラケットの上面から上方に突出する突起部であって、上面側において前記車両の後方衝突時に前記クッションフレームの一部である被当接部が当接可能な当接面を有する突起部と
を備える、
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記被当接部は、前記リンクアームを回転自在に支持し、
前記当接面の高さは、前記クッションフレームが前記第2位置にある状態で前記当接面が前記被当接部に近接する高さに設定されている、
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記当接面の高さは、前記クッションフレームが前記第2位置にある状態で前記当接面と前記被当接部との間に隙間を形成可能な高さに設定されている、
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両用シートにおいて、
前記リンク機構は、前記リンクアームおよび前記被当接部の連結部位に固定され、当該リンクアームを補強する補強板をさらに備え、
前記突起部の前記当接面は、前記被当接部および前記補強板が同時に当接可能な車両前後方向の長さを有する、
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、
前記被当接部は、前記シートの幅方向に延びるクロスバーであり、
前記突起部は、前記幅方向に互いに離間するように一対備えられ、
前記一対の突起部は、前記幅方向において、前記クッションフレームより内側の範囲に配置されている、
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、
前記当接面のうち、車両前後方向における前記当接面の後端を含む後側部分の少なくとも一部は、当該当接面の前端を含む前側部分と比較して高く設定されている、
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用シートにおいて、
前記当接面の後側部分は、車両後方側へ向かうにしたがって緩やかに弧を描くように高くなるように傾斜している、
ことを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートでは、シートの高さを調節するリンク機構を備えたシートがある。このようなシートでは、車両の後部に後続車が衝突した場合に、着座者が慣性により車両内部で車両後方側へ相対的に移動するのに伴い、その慣性力によってリンク機構のリンクアームが車両後方側に回転し、リンクアームの車両後方側への倒れ角が増大することがある。このとき、リンクアームの倒れ角が増大することにより、シートが後席の乗員に接触するおそれがある。
【0003】
そこで、車両の後部衝突時におけるシートの後傾を防止するために、特許文献1記載のシートは、車両座席の座席リンク(リンクアーム)に形成されたストップボディと、座席リンクの後傾時に当該ストップボディと当接可能なストップエレメントとを備えている。ストップエレメントは、上部座席レールにおける座席リンクの後方側の位置で、当該上部座席レールにねじ止めされている。車両の後部衝突時には、上部座席レールに取り付けられたストップエレメントが座席リンクのストップボディと接触することにより、後部衝突時のシートの後傾が抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5873186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のシート構造では、シートの後傾防止のために、リンク機構とは別にストップエレメントという特別な部材を上部座席レールに取り付ける必要がある。さらに、このストップエレメントには、車両衝突時に座席リンク側のストップボディと当接する際の荷重に耐えるように十分な強度が求められる。このため、シート全体の重量が増加することが懸念される。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、シートの重量増加を抑えながら、後部衝突時におけるシートの後傾を抑制することが可能な車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用シートは、シートクッションと、前記シートクッションの高さを調節可能なリンク機構とを備える車両用シートであって、前記リンク機構は、前記シートクッションを支持するクッションフレームと、前記車室の床部に直接または間接的に取り付けられる取付ブラケットと、前記クッションフレームが前記取付ブラケットに対して平行を維持しながら第1位置と、当該第1位置に対して車両後方側かつ下方側の位置の第2位置との間で移動し得るように、前記クッションフレームと取付ブラケットをリンク結合する複数のリンクアームと、前記取付ブラケットに一体に形成され、当該取付ブラケットの上面から上方に突出する突起部であって、上面側において前記車両の後方衝突時に前記クッションフレームの一部である被当接部が当接可能な当接面を有する突起部とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、シートクッションの高さを調節可能なリンク機構を備えた構成において、当該リンク機構のうち車室の床部に取り付けられる取付ブラケットには、上方へ延びる突起部が一体に形成されている。この突起部が、車両衝突時のシート後傾時においてクッションフレームの一部である被当接部と当該突起部上面側の当接面で当接し、これによりリンクアームの倒れ角を抑制することが可能である。これにより、クッションフレームに固定された被当接部は荷重を受ける十分な強度を有する取付ブラケットに直接当接するため、リンク機構とは別に新たに荷重を受ける部材(すなわち、従来のストップエレメントなどの別部材)を設ける必要がない。その結果、シートの重量増加を抑えながら、後部衝突時におけるシートの後傾を抑制することが可能である。
【0009】
上記車両用シートにおいて、前記被当接部は、前記リンクアームを回転自在に支持し、前記当接面の高さは、前記クッションフレームが前記第2位置にある状態で前記当接面が前記被当接部に近接する高さに設定されているのが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、取付ブラケットの突起部は、車両の後方衝突時には、より座面側(すなわち、シートクッションの上面側)に近い位置で被当接部に当接して被当接部からの荷重を受けるので、シートの変形によるリンクアームの倒れ角のばらつきを抑えやすい。また、座面までの高さが高いシートに対しても、突起部を上方に延長して対応することが可能であり、このようなシートでもリンクアームの倒れ角のばらつきの抑制が可能である。
【0011】
上記車両用シートにおいて、前記当接面の高さは、前記クッションフレームが前記第2位置にある状態で前記当接面と前記被当接部との間に隙間を形成可能な高さに設定されているのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、通常の車両使用時、すなわち、車両の後方衝突時以外の時、クッションフレームが第2位置にある状態では、突起部の当接面とクッションフレームの被当接部との接触を確実に回避することが可能である。それにより、車両走行時における当接面と被当接部との接触による異音の発生を防止することが可能である。
【0013】
上記車両用シートにおいて、前記リンク機構は、前記リンクアームおよび前記被当接部の連結部位に固定され、当該リンクアームを補強する補強板をさらに備え、前記突起部の前記当接面は、前記被当接部および前記補強板が同時に当接可能な車両前後方向の長さを有するのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、突起部の当接面を車両前後方向に広く確保することにより、当接面は被当接部からの荷重だけでなく補強板からの荷重も受け止めることができ、後方衝突時の荷重が当接面上の一か所に集中してしまうことを防ぐことが可能である。
【0015】
上記車両用シートにおいて、前記被当接部は、前記シートの幅方向に延びるクロスバーであり、前記突起部は、前記幅方向に互いに離間するように一対備えられ、前記一対の突起部は、前記幅方向において、前記クッションフレームより内側の範囲に配置されているのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、一対の突起部が幅方向においてクッションフレームより内側に配置されていることによりシートが幅方向に変形した場合でも突起部がクロスバーに確実に当接することが可能であり、シートの幅方向の変形を抑えることが可能である。
【0017】
上記車両用シートにおいて、前記当接面のうち、車両前後方向における前記当接面の後端を含む後側部分の少なくとも一部は、当該当接面の前端を含む前側部分と比較して高く設定されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、シート幅方向の左右両側においてリンクアームの倒れ角や前後位置がばらついた場合でも、被当接部が突起部と当接した際に所定の位置に位置決めされる。また、当接面は、被当接部を複数個所で受け止めることが可能であり、後方衝突時の荷重を当接面の広い範囲に分散させることができる。
【0019】
上記車両用シートにおいて、前記当接面の後側部分は、車両後方側へ向かうにしたがって緩やかに弧を描くように高くなるように傾斜しているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、被当接部と当接面との接触面積を増加させることが可能であり、その結果、突起部やクロスバーの当接面の破損を防ぐことが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のシートによれば、シートの重量増加を抑えながら、後部衝突時におけるシートの後傾を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るシートの全体構成を示す斜め後方から見た斜視図である。
図2図1のシートのガイドレールおよびリンク機構を示す斜視説明図である。
図3図2のリンク機構のクッションフレーム、取付ブラケット、後側クロスバー、および前側・後側リンクアームの斜視説明図である。
図4図2のリンク機構のクッションフレーム、取付ブラケット、前側・後側クロスバー、および前側・後側リンクアームの側面図である。
図5図4の取付ブラケットの突起部、後側クロスバー、および後側リンクアームの拡大図である。
図6図5の取付ブラケットの突起部、および後側クロスバーの寸法を示す説明図である。
図7】クッションフレームが下方の第2位置にあり、かつ、車両の後方衝突前の状態であって、図2のクロスバーが取付ブラケットの突起部に当接していない状態を示す斜視説明図である。
図8】車両の後方衝突時の状態であって、図2のクロスバーが取付ブラケットの突起部に当接している状態を示す斜視説明図である。
図9図8のクロスバーが突起部に当接している状態を示す拡大斜視図である。説明図である。
図10】車両の後方衝突前後の状態における一対の突起部、クロスバー、および後側リンクアームの位置関係を模式的に示した図であって、(a)は車両の後方衝突前の状態、(b)は車両の後方衝突後の状態を示す。
図11】本発明のシートの変形例であって、突起部が座屈しやすいように折り目が設けられた例を示す説明図である。
図12】本発明のシートの他の変形例であって、突起部が座屈しやすいように溝が設けられた例を示す説明図である。
図13】本発明のシートのさらに他の変形例であって、突起部に補強用のリブが設けられた例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0024】
図1~2に示されるように、本実施形態の車両用シート1(以下、シート1という)は、車両の車室に取り付けられるシートであり、着座者の臀部が当接可能なシートクッション2と、シートクッション2の高さを調節可能なリンク機構6とを備えた構成を有する。
【0025】
具体的には、シート1は、上記のシートクッション2と、着座者の背中が当接可能なシートバック3と、シートフレーム4と、ガイドレール5と、リンク機構6とを備える。
【0026】
シートフレーム4は、シートクッション2を下方から支持するクッションフレーム7と、シートバック3を立てた状態で後方から支持するバックフレーム8とを備える。クッションフレーム7は、シート1の幅方向Y両側に互いに離間し、車両前後方向Xに延びる一対の側部部分7aを有する。なお、クッションフレーム7は、シートフレーム4とリンク機構6とで共用する。
【0027】
ガイドレール5は、車両前後方向Xに延びるとともに互いに離間した位置で車室の床面に固定された一対のロアレール9と、当該一対のロアレール9によって車両前後方向Xにスライド自在に案内される一対のアッパーレール10とを備える。
【0028】
図2~5に示されるように、リンク機構6は、前記クッションフレーム7と、当該クッションフレーム7の一対の側部部分7aの下方Z2側に位置する一対の取付ブラケット11と、複数のリンクアーム(すなわち、一対の前側リンクアーム12および一対の後側リンクアーム13)とを備えている。また、本実施形態では、リンク機構6は、クッションフレーム7の一部として、前側クロスバー14および後側クロスバー15をさらに備える。なお、一対の後側リンクアーム13は、それぞれ後側クロスバー15に跨って補強するための補強板16を備え、一対の取付ブラケット11は、車両の後方衝突時(図2に示されるように後方X2側から取付ブラケット11に荷重Fが加わった時)に当該後側クロスバー15に当接可能な一対の突起部17とを備えている。
【0029】
一対の取付ブラケット11は、車室の床部に直接または間接的に取り付けられている。本実施形態では、一対の取付ブラケット11は、ガイドレール5の一対のアッパーレール10にボルトなど(例えば、図7のアッパーレール10上面のスタッドボルト26およびナット27)によって固定されている。言い換えれば、ガイドレール5を介して車室の床部に間接的に取り付けられている。取付ブラケット11は、スチールなどの剛性の高い材料で製造されている。本実施形態では、図7~8に示されるように、一対の取付ブラケット11同士が、下方クロスバー25によって連結されていることにより、取付ブラケット11の剛性を向上している。
【0030】
複数のリンクアーム、すなわち、一対の前側リンクアーム12および一対の後側リンクアーム13は、クッションフレーム7が取付ブラケット11に対して平行を維持しながら第1位置(図2のクッションフレーム7よりも上方Z1側の位置)と、当該第1位置に対して車両後方X2側かつ下方Z2側の位置の第2位置(図2~7の位置)との間で移動し得るように、クッションフレーム7と取付ブラケット11をリンク結合する。具体的には、一対の前側リンクアーム12は、その下端部が一対の取付ブラケット11のそれぞれの前側支持部11aにおいて回転軸C1を回転中心として回転自在に支持され、かつ、その上端部がクッションフレーム7の一対の側部部分7aに対して前側クロスバー14を介して回転自在に連結している。同様に、一対の後側リンクアーム13は、その下端部が一対の取付ブラケット11のそれぞれの後側支持部11bに回転軸C2を回転中心として回転自在に支持され、かつ、その上端部がクッションフレーム7の一対の側部部分7aに対して後側クロスバー15を介して回転自在に連結している。
【0031】
すなわち、本実施形態では、前側クロスバー14は、シート1の幅方向Y両側に位置する一対の前側リンクアーム12を回転自在に支持する。同様に、後側クロスバー15は、シート1の幅方向Y両側に位置する一対の後側リンクアーム13を回転自在に支持する。
【0032】
クッションフレーム7の一部である前側クロスバー14および後側クロスバー15は、それぞれシート1の幅方向Yに延び、かつ、互いに車両前後方向Xに離間するように配置されている。前側クロスバー14および後側クロスバー15のそれぞれの両端は、クッションフレーム7の一対の側部部分7aにそれぞれ固定されている。
【0033】
本実施形態では、後側クロスバー15は、一対の突起部17に当接可能な被当接部として機能する。
【0034】
補強板16は、後側リンクアーム13および後側クロスバー15の連結部位に溶接などによって固定されており、後側リンクアーム13を補強する。
【0035】
突起部17は、図2~6(とくに図5~6)に示されるように、取付ブラケット11に一体に形成され、当該取付ブラケット11の上面から上方Z1側に突出する。突起部17は、その上面側において車両の後方衝突時に後側クロスバー15が当接可能な当接面18を有する。
【0036】
本実施形態では、突起部17は、図2図7~8、および図10に示されるように、シート1の幅方向Yに互いに離間するように一対備えられている。一対の突起部17は、幅方向Yにおいて、クッションフレーム7より内側の範囲に配置されている。
【0037】
図6に示される当接面18の高さH0および車両前後方向Xの長さL1は、車両の後方衝突時に後側クロスバー15が下降する位置がばらついても突起部17の当接面18に必ず当接するような寸法に設定される。
【0038】
例えば、図6に示されるように、当接面18の高さH0(具体的には、取付ブラケット11の下面11cから当接面18までの高さ)は、クッションフレーム7が第2位置にある状態で当接面18が被当接部である後側クロスバー15に近接する高さに設定されている。具体的には、当接面18の高さH0は、クッションフレーム7が第2位置にある状態で当接面18と後側クロスバー15との間に隙間を形成可能な高さに設定されている。このような当接面18の高さH0に設定すれば、車両の後方衝突時には、当接面18が後側クロスバー15と当接して後側リンクアーム13の倒れ角を抑えることが可能である。当接面18の高さH0は、第2位置のクッションフレーム7と取付ブラケット11との間隔、後側リンクアーム13の長さ、および後側クロスバー15の位置などの諸条件に対応するように適宜設定される。
【0039】
本実施形態では、突起部17の当接面18は、後側クロスバー15および補強板16が同時に当接可能な車両前後方向Xの長さL1を有する。例えば、後側クロスバー15の外径Dが25mm程度の場合、当接面18の長さL1は30~35mm(33mm程度)に設定される。また、当接面18の前端を含む前側部分18aは平面に形成されている。前側部分18aおよび傾斜が緩やかな中間部分18cの合計の長さL2は、15~25mm程度(20mm程度)に設定される。
【0040】
突起部17は、後側クロスバー15から受ける大きい荷重に耐えうる断面を確保可能な寸法に設定されるのが好ましい。すなわち、突起部17は、車両の後方衝突時に後側クロスバー15が当接したときに変形しない程度の剛性を有しているのが好ましい。
【0041】
当接面18のうち、車両前後方向Xにおける当接面18の後端を含む後側部分18bの少なくとも一部は、当該当接面18の前端を含む前側部分18aと比較して高く設定されている。具体的には、当接面18の後側部分18bは、前側部分18aに連続するように車両後方X2側へ向かうにしたがって高くなるように傾斜している。例えば、当接面18における後側部分18bの後端の高さH1(すなわち、前側部分18aの面を基準とした後側部分18bの後端の高さ)は、後側クロスバー15のシート後方X2側へのずれを抑えて所定の位置に位置決めできる高さとして、例えば、2~10mm(5mm程度)に設定される。これにより、車両の後方衝突時に後側クロスバー15が突起部17の当接面18に当接したときに、後側クロスバー15が後方X2側へずれることを抑制する。
【0042】
さらに詳しくは、当接面18の後側部分18bは、車両後方X2側へ向かうにしたがって緩やかに弧を描くように高くなるように傾斜している。後側部分18bの円弧形状は、後側部分18bが円柱状の後側クロスバー15に複数個所で接触(または広範囲に面接触)するような形状または曲率半径に設定される。例えば、後側クロスバー15の外周面の曲率半径R2が12~13.5mm(12.7mm程度)の場合、後側部分18bの曲率半径R1は14~16.5mm(15.7mm程度)に設定される。これにより、車両の後方衝突時に後側クロスバー15が突起部17の当接面18に当接したときに、後側クロスバー15の外周面と当接面18の後側部分18bとの接触面積が広くなり、当接面18上で荷重を分散させることが可能である。
【0043】
上記のように構成されたシート1では、車両の後方衝突が生じる前の状態(クッションフレーム7が第2位置の状態)では、図2図7図10(a)に示されるように、後側クロスバー15と突起部17との隙間が確保されている。
【0044】
一方、車両の後方衝突時には、シート1の着座者が慣性によって車室内の後方へ相対的に移動するのに伴い、その慣性力によって、クッションフレーム7およびその被当接部である後側クロスバー15が図2~5および図7の第2位置からさらに下方Z2側へ移動する。このとき、図8~9および図10(b)に示されるように、後側クロスバー15が突起部17の当接面18に当接することにより、後側リンクアーム13の倒れ角を抑制し、その結果、シート1の後傾を防止することが可能である。
【0045】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両用シートは、図1~2に示されるように、着座者の臀部が当接可能なシートクッション2と、シートクッション2の高さを調節可能なリンク機構6とを備える。リンク機構6は、図2~6に示されるように、シートクッション2を支持するクッションフレーム7と、車室の床部に直接または間接的に取り付けられる取付ブラケット11と、クッションフレーム7が取付ブラケット11に対して平行を維持しながら第1位置と、当該第1位置に対して車両後方X2側かつ下方Z2側の位置の第2位置との間で移動し得るように、クッションフレーム7と取付ブラケット11をリンク結合する複数のリンクアームとしての一対の前側リンクアーム12および一対の後側リンクアーム13と、クッションフレーム7の一部である被当接部としての後側クロスバー15と、突起部17とを備える。
【0046】
突起部17は、取付ブラケット11に一体に形成され、当該取付ブラケット11の上面から上方Z1側に突出しており、上面側において車両の後方衝突時に後側クロスバー15が当接可能な当接面18を有する。
【0047】
かかる構成によれば、シートクッション2の高さを調節可能なリンク機構6を備えた構成において、当該リンク機構6のうち車室の床部に取り付けられる取付ブラケット11には、上方Z1へ延びる突起部17が一体に形成されている。
【0048】
この突起部17が、図7~9に示されるように、車両衝突時のシート後傾時においてクッションフレーム7の一部である被当接部としての後側クロスバー15と当該突起部17上面側の当接面18で当接し、これにより後側リンクアーム13の倒れ角を抑制することが可能である。これにより、クッションフレーム7に固定された後側クロスバー15は荷重を受ける十分な強度を有する取付ブラケット11に直接当接するため、リンク機構6とは別に新たに荷重を受ける部材(すなわち、従来のストップエレメントなどの別部材)を設ける必要がない。その結果、シートの重量増加を抑えながら、後部衝突時におけるシートの後傾を抑制することが可能である。
【0049】
換言すれば、本実施形態のシート1のようにリンク機構6の既存の取付ブラケット11に後方衝突時の荷重を受ける突起部17が設けられた構造では、既に存在する十分な強度を有した個所で受けることで新たに構造を設けたりまたは補強したりする必要がないため、新たな構造や補強に関する費用の発生を抑えることが可能である。
【0050】
また、既存のリンク機構において取付ブラケットが上記のような突起部17を有していない場合でも、突起部17を有する取付ブラケット11に差し替えたり、または、突起部17の高さを変更した別の取付ブラケット11に取り換えることにより、後付けで後側リンクアーム13の倒れ角を制御する機能を追加することが容易である。
【0051】
(2)
本実施形態の車両用シートでは、図2図7~8、および図10に示されるように、後側クロスバー15は、一対の後側リンクアーム13を回転自在に支持している。当接面18の高さH0(図6参照)は、クッションフレーム7が第2位置にある状態で当接面18が後側クロスバー15に近接する高さに設定されている。
【0052】
かかる構成によれば、取付ブラケット11の突起部17は、車両の後方衝突時には、より座面側(すなわち、シートクッション2の上面側)に近い位置で後側クロスバー15に当接して後側クロスバー15からの荷重を受けるので、シートの変形による後側リンクアーム13の倒れ角のばらつきを抑えやすい。また、座面までの高さが高いシートに対しても、突起部17を上方Z1側に延長して対応することが可能であり、このようなシートでも後側リンクアーム13の倒れ角のばらつきの抑制が可能である。
【0053】
換言すれば、突起部17は、車両の後方衝突時に後側リンクアーム13のクッションフレーム7側の回転軸となる後側クロスバー15に当接可能な位置に設けられることにより、より座面に近く、荷重入力ポイントに近い位置で荷重を受けることができる。このため、突起部17と後側クロスバー15が当接する位置より上でのシート1の変形が小さく、後側リンクアーム13の倒れ角のばらつきを抑えることが可能である。また、本実施形態では、ガイドレール5のアッパーレール10上に取り付けられる取付ブラケット11から上方向Z1側に突起部17を延ばす構造であるため、ガイドレール5からクッションフレーム7までの高さが高いシート構造であっても突起部17を延長することにより容易に対応することが可能である。
【0054】
ここで、従来のシート(例えば、特許第5866159号公報に開示のシート)のようにリンク側に後傾時のリンク倒れ角を規制する規制部(本実施形態の突起部17に対応する部分)が設けられた場合、ガイドレール5とクッションフレーム7との距離が大きくなると規制部を上方に延長して対応すると他部品との干渉が発生する。また、リンク側をそのままで対応しようとすると、規制部と当接する構造を新たに設ける必要がある。一方、本実施形態のシートでは、リンク機構6の取付ブラケット11に突起部17を設けたことにより、ガイドレール5とクッションフレーム7との距離が大きくなってもそれにあわせて突起部17の高さを変更することで容易に対応することができる。
【0055】
(3)
本実施形態の車両用シートでは、当接面18の高さH0は、クッションフレーム7が第2位置にある状態で当接面18と後側クロスバー15との間に隙間を形成可能な高さに設定されているのが好ましい。
【0056】
かかる構成によれば、通常の車両使用時、すなわち、車両の後方衝突時以外の時、クッションフレーム7が第2位置にある状態では、突起部17の当接面18とクッションフレーム7の被当接部である後側クロスバー15との接触を確実に回避することが可能である。それにより、車両走行時における当接面18と後側クロスバー15との接触による異音の発生を防止することが可能である。
【0057】
(4)
本実施形態の車両用シートでは、リンク機構6は、図2~5に示されるように、後側リンクアーム13および後側クロスバー15の連結部位に固定され、当該後側リンクアーム13を補強する補強板16をさらに備える。
【0058】
突起部17の当接面18は、後側クロスバー15および補強板16が同時に当接可能な車両前後方向Xの長さL1(図6参照)を有する。
【0059】
かかる構成によれば、突起部17の当接面18を車両前後方向Xに広く確保することにより、当接面18は後側クロスバー15からの荷重だけでなく補強板16からの荷重も受け止めることができ、後方衝突時の荷重が当接面18上の一か所に集中してしまうことを防ぐことが可能である。
【0060】
(5)
本実施形態の車両用シートでは、クッションフレーム7の被当接部は、シートの幅方向Yに延びる後側クロスバー15である。
【0061】
図2および図7~8および図10に示されるように、突起部17は、幅方向Yに互いに離間するようにシート1の幅方向Yの両側に一対備えられる。一対の突起部17は、幅方向Yにおいてクッションフレーム7より内側の範囲に配置されている。
【0062】
かかる構成によれば、一対の突起部17が幅方向Yにおいてクッションフレーム7より内側に配置されていることによりシートが幅方向Yに変形した場合でも突起部17が後側クロスバー15に確実に当接することが可能であり、シートの幅方向Yの変形を抑えることが可能である。
【0063】
また、この構成では、シートが幅方向Yに変形したとしても(図10(b)参照)一対の突起部17で後側クロスバー15を確実に受けることができるとともに、突起部17の側面とクッションフレーム7等の構造物が当接することでもシート1の幅方向Yの変形を抑えることができる。
【0064】
ここで、従来のシート構造、例えば、シートの後傾を規制するとともにシート幅方向の変位も規制する従来のシート構造(例えば、特許第6838492号公報記載のリンク側の当接部とブラケット側の規制部を有する構造)の場合、シート幅方向に大きく変位した場合に所定の位置で当接部が規制部に当接することができず、シートの後傾およびシート幅方向の変位の規制ができない可能性がある。一方、本実施形態のシートでは、後傾を規制する突起部17をクッションフレーム7の幅方向Y内側に設けることで、シートが幅方向Yどちらに変形しても後側クロスバー15と一対の突起部17と確実に当接してシートの後傾を規制することが可能である。しかも、突起部17に後側クロスバー15の他にクッションフレーム7や後側リンクアーム13などが当接することでクッションフレーム7の位置と幅方向Yの変位を確実に抑えることが可能である。
【0065】
(6)
本実施形態の車両用シートでは、図5~6および図9に示されるように、当接面18のうち、車両前後方向Xにおける当接面18の後端を含む後側部分18bの少なくとも一部は、当該当接面18の前端を含む前側部分18aと比較して高く設定されている。具体的には、当接面18の後側部分18bは、車両後方X2側へ向かうにしたがって高くなるように傾斜している。
【0066】
かかる構成によれば、シート幅方向Yの左右両側において後側リンクアーム13の倒れ角や前後位置がばらついた場合でも、後側クロスバー15が突起部17と当接した際に所定の位置に位置決めされる。また、当接面18は、後側クロスバー15を複数個所で受け止めることが可能であり、後方衝突時の荷重を当接面18の広い範囲に分散させることができる。
【0067】
また、突起部17の当接面18の後側部分18bを前側部分18aに比べて相対的に高く設定することで、車両前後方向Xの後側クロスバー15の変位のばらつきを吸収して後側クロスバー15を所定の位置に位置決めすることが可能である。
【0068】
ここで、従来のシート(特許第5866159号公報)のように、リンクアームに形成された円弧状の凹部の内周面とクッションフレームに固定された円柱状のクロスバーの外周面とが当接する構造の場合、当該リンクアームおよびクロスバーにおける当接面同士は互いに円弧状に延びて平行である。このため、当接面同士の相対的な位置のばらつきを吸収するために受け側の円弧状の凹部の範囲を広くとる必要がある。一方、本実施形態のシートでは、突起部17の当接面18の後部を相対的に高くすることで後側クロスバー15の変位のばらつきを吸収し、後側クロスバー15を所定の位置に位置決めすることが可能である。
【0069】
(7)
本実施形態の車両用シートでは、図5~6に示されるように、当接面18の後側部分18bは、車両後方X2側へ向かうにしたがって緩やかに弧を描くように高くなるように傾斜している。
【0070】
かかる構成によれば、後側クロスバー15と当接面18との接触面積を増加させることが可能であり、その結果、突起部17や後側クロスバー15の当接面(すなわち突起部17の当接面18や後側クロスバー15の外周面)の破損を防ぐことが可能である。
【0071】
さらに詳しく言えば、当接面18の後側部分18bは当接面18の中間付近から緩やかに弧を描くように高くなるように傾斜していることで後側クロスバー15との当接面積が増加し、荷重が当接面18上の一点に集中してしまうことを防ぐことが可能である。
【0072】
(8)
本実施形態の車両用シートでは、リンク機構6の取付ブラケット11は、後側リンクアーム13の下側部分を回転自在に支持する後側支持部11bを有する。したがって、後側支持部11bおよび突起部17は、いずれも取付ブラケット11の一部となるように、一体形成されている。
【0073】
これにより、後方衝突時において、後側リンクアーム13の上下両側の部分が1つの取付ブラケット11によって同時に拘束される。すなわち、後側リンクアーム13の下部は、取付ブラケット11の後側支持部11bに拘束されるとともに、後側リンクアーム13の上部が後側クロスバー15を介して突起部17によって拘束される。これにより、後側リンクアーム13およびそれに連結するクッションフレーム7の車両後方X2側への移動を確実に止めることが可能である。
【0074】
(変形例)
(A)
上記の実施形態では、リンク機構6の取付ブラケット11に一体形成された突起部17に当接する被当接部として、後側クロスバー15を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の被当接部は、クッションフレーム7を構成する部分であればよく、例えば、クッションフレーム7における後側クロスバー15以外の部位であってもよい。
【0075】
(B)
上記実施形態では、突起部17は、車両の後方衝突時に後側クロスバー15が当接したときに変形しない程度の剛性を有しているが、より強い後方衝突の衝撃を受けた場合、突起部17が座屈して衝撃を吸収し、着座者への衝撃を緩和するようにしてもよい。
【0076】
例えば、後側リンクアーム13の後方X2に位置する後側クロスバー15を支えるため、突起部17の高さは高くなる。それを利用して、より強い後方衝突を受けた場合は座屈することで衝撃を吸収するようにしてもよい。
【0077】
また、想定した荷重以上で確実に突起部17が変形して衝撃を吸収するために、図11に示される折れ線20や図12に示される溝21を突起部17に形成してもよい。これらの折れ線20や溝21により、突起部17が成り行きで座屈するより、意図して座屈させて衝撃を吸収することが可能になる。
【0078】
また、突起部17の高さが想定される後方衝突を受けた際の荷重に耐えられない場合、リブ22やビード等の補強部を追加してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 シート
2 シートクッション
4 シートフレーム
5 ガイドレール
6 リンク機構
7 クッションフレーム
9 ロアレール
10 アッパーレール
11 取付ブラケット
12 前側リンクアーム
13 後側リンクアーム
14 前側クロスバー
15 後側クロスバー(被当接部)
16 補強板
17 突起部
18 当接面
18a 前側部分
18b 後側部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13