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  • 特開-シリンダ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003139
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/26 20060101AFI20221228BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20221228BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALN20221228BHJP
【FI】
F15B15/26
F15B15/14 345Z
F15B15/14 380A
B23Q3/06 302F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104132
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(72)【発明者】
【氏名】横田 英明
【テーマコード(参考)】
3C016
3H081
【Fターム(参考)】
3C016CA04
3C016CB02
3C016CC02
3H081AA05
3H081BB03
3H081CC23
3H081DD02
3H081DD17
3H081DD22
3H081DD28
3H081DD37
3H081FF10
3H081FF26
3H081FF37
3H081HH04
(57)【要約】
【課題】 簡素な構成の弁機構を備えるシリンダ装置を提供する。
【解決手段】 ハウジング(1)の収容孔(4)に出力部材(9)が移動可能に挿入される。前記収容孔(4)と前記出力部材(9)との間に形成される隙間に支持部材(34)が保密状で移動可能に挿入され、その支持部材(34)がハウジング(1)の一部を構成する。前記ハウジング(1)内の流路(60)の途中部に設けられる弁機構(61)が、前記流路(60)を閉鎖および開放する。その弁機構(61)は、前記収容孔(4)の周壁に形成される弁座(65)と前記支持部材(34)に形成される弁面(66)とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)内に形成されると共に、前記ハウジング(1)の先端面(3)に開口される収容孔(4)に接続されるシリンダ孔(2)と、
前記シリンダ孔(2)に移動可能に挿入される進退用の第1ピストン(5)と、
前記第1ピストン(5)に連結されると共に、前記収容孔(4)を通って前記ハウジング(1)の外部に突設される出力部材(9)と、
前記出力部材(9)の外周面と前記シリンダ孔(2)の内周面との間に形成される隙間に保密状で移動可能に挿入される倍力用の第2ピストン(33)と、
前記ハウジング(1)内に、または、前記収容孔(4)の内周面と前記出力部材(9)の外周面との間に形成される隙間に保密状で移動可能に挿入される支持部材(34)と、
前記シリンダ孔(2)内に設けられる倍力機構(47)であって、前記第2ピストン(33)に作用させた圧力流体の力を倍力変換して前記第1ピストン(5)に伝達する倍力機構(47)と、
前記倍力機構(47)の一部を構成すると共に、前記支持部材(34)に貫通される支持孔(48)に移動可能に挿入される係合部材(49)であって、前記出力部材(9)の外周面および前記出力部材(9)に形成されるカム面(51)に当接可能となると共に、前記第2ピストン(33)に形成される押圧面(53)に当接可能となっている係合部材(49)と、
圧力流体が供給されると共に、前記ハウジング(1)または、前記支持部材(34)に形成される流路(60)と、
前記流路(60)の途中部に設けられると共に、前記流路(60)を閉鎖および開放する弁機構(61)であって、前記収容孔(4)の周壁に形成される弁座(65)と前記支持部材(34)に形成される弁面(66)とを有する弁機構(61)と、を備える、
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
請求項1のシリンダ装置において、
前記カム面(51)が前記シリンダ孔(2)の軸心(C)に対して傾斜するように形成され、
前記押圧面(53)が前記軸心(C)に対して傾斜するように形成され、
前記カム面(51)が前記軸心(C)に対してなす角度が、前記押圧面(53)が前記軸心(C)に対してなす角度よりも大きくなるように構成される、ことを特徴とするシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁機構を備えるシリンダ装置に関し、より詳しくは、倍力機構付きシリンダ装置において、押圧対象物をクランプしたことなどを検出する弁機構を備えるシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシリンダ装置には、従来では、特許文献1(日本国・特開2014-240117号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
ハウジング内にシリンダ孔が形成され、そのシリンダ孔にピストンが移動可能に挿入される。圧縮空気源から圧縮空気が供給される流路が、ハウジング内に形成される。その流路の途中部であってハウジングの上端壁に弁機構が設けられ、その弁機構が流路を閉鎖および開放する。その弁機構の弁室が上記のシリンダ孔に連通される。その弁室に弁部材が保密状で移動可能に挿入され、弁部材の下端部がシリンダ孔内に突出している。その弁室の周壁に形成される弁座に、弁部材に形成される弁面が当接可能となっている。弁室の天井面と弁体の上面との間に閉弁バネが装着されている。上記のピストンが弁部材を閉弁バネの付勢力に抗して上方の所定位置へ移動させると、弁機構は開弁される。ピストンが弁部材から下方へ離間されると、閉弁バネの付勢力によって弁機構は閉弁される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-240117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は次の課題がある。
上記シリンダ装置では、ハウジング内に形成される弁室内に弁機構の弁部材をシリンダ孔内に突出させるように備える。その弁機構の構成を簡素にする点で課題があった。
本発明の目的は、簡素な構成の弁機構を備えるシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1および図2に示すように、シリンダ装置を次のように構成した。
ハウジング1内に形成されるシリンダ孔2が、前記ハウジング1の先端面3に開口される収容孔4に接続される。前記シリンダ孔2に進退用の第1ピストン5が移動可能に挿入される。前記第1ピストン5に連結される出力部材9が、前記収容孔4を通って前記ハウジング1の外部に突設される。前記出力部材9の外周面とシリンダ孔2の内周面との間に形成される隙間に倍力用の第2ピストン33が保密状で移動可能に挿入される。ハウジング1内に、または、前記収容孔4の内周面と前記出力部材9の外周面との間に形成される隙間に支持部材34が保密状で移動可能に挿入される。前記シリンダ孔2内に設けられる倍力機構47が、前記第2ピストン33に作用させた圧力流体の力を倍力変換して前記第1ピストン5、または、前記出力部材9に伝達する。前記倍力機構47の一部を構成する係合部材49が、前記支持部材34に貫通される支持孔48に移動可能に挿入される。その係合部材49が、前記出力部材9の外周面および前記出力部材9に形成されるカム面51に当接可能となると共に、前記第2ピストン33に形成される押圧面53に当接可能となっている。前記ハウジング1または前記支持部材34に形成される流路60に、圧力流体が供給される。前記流路60の途中部に設けられる弁機構61が、前記流路60を閉鎖および開放する。その弁機構61が、前記収容孔4の周壁に形成される弁座65と、前記支持部材34に形成される弁面66とを有する。
【0006】
本発明は、次の効果を奏する。
上記のシリンダ装置では、弁機構の弁部材を、倍力機構の係合部材を支持する支持部材によって構成することにより、弁機構を簡素に構成することができる。
【0007】
上記発明に次の構成を追加することができる。
前記カム面51が前記シリンダ孔2の軸心Cに対して傾斜するように形成される。前記押圧面53が前記軸心Cに対して傾斜するように形成される。前記カム面51が前記軸心Cに対してなす角度が、前記押圧面53が前記軸心Cに対してなす角度よりも大きくなるように構成される。
この場合、第1ピストンに連結された出力部材が押圧対象物を押すときに、第2ピストンが係合部材を押す力のうちの前記軸心方向の成分は、出力部材が押圧対象物を押す力の反力によってカム面が係合部材を押す力のうちの前記軸心方向の成分よりも小さくなる。このため、出力部材が押圧対象物を押すと、第2ピストンが係合ボールを先端側に向けて押す力に抗して、第1ピストンが係合ボールを介して支持部材を基端側に向けて押し動かす。このとき、弁機構が閉弁または開弁される。また、出力部材が押圧対象物を強力に押していないときには、シリンダ孔内の圧力流体の圧力に応じた押圧力や第2ピストンが係合部材を介して支持部材が先端側に向けて押す。このとき、弁機構が開弁また閉弁される。その結果、出力部材によって押圧対象物が押圧されたことが弁機構によって適時に検知される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態を示し、シリンダ装置のリリース状態を示す断面視の模式図である。
図2図2は、上記シリンダ装置の動作説明図であって、上記図1に類似する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図1および図2によって説明する。
上記の倍力機構付きシリンダ装置のハウジング1が、複数のボルト(図示せず)によって、固定台としてのテーブルTに固定されている。そのハウジング1が上端壁(先端壁)1aと下端壁(基端壁)1bと胴部1cとを有する。
【0010】
ハウジング1内にシリンダ孔2が上下方向に形成される。そのシリンダ孔2は、ハウジング1の上端面3に開口される収容孔4を介して当該ハウジング1の外部に連通される。そのシリンダ孔2に進退用の第1ピストン5が上下方向(シリンダ孔の軸心C方向)に移動可能に挿入される。その第1ピストン5は、下側から順に形成されるピストン本体6と、そのピストン本体6から上方へ一体的に突設されたピストンロッド7とを有する。その第1ピストン5に上下方向に筒孔8が貫通される。
【0011】
上記の第1ピストン5の筒孔8に出力部材9のクランプロッド10が上下方向に移動可能で保密状に挿入される。そのクランプロッド10が収容孔4を通ってハウジング1の外部に突出している。そのクランプロッド10の径寸法は、ピストンロッド7の径寸法と略同じに設定されている。そのクランプロッド10の下部から挿入部11が突設される。その挿入部11はクランプロッド10よりも小径に形成されている。その挿入部11から下方に小径部12と中径部13と大径部14とが順に形成される。また、第1ピストン5の筒孔8は、上側から順に案内孔15と小径孔16と中径孔17と大径孔18とを有している。その案内孔15にクランプロッド10の挿入部11が挿入されている。筒孔8の小径孔16、中径孔17、大径孔18にそれぞれ第1ピストン5の小径部12、中径部13、大径部14が挿入される。挿入部11の外周壁に装着溝が周方向に形成され、その装着溝に封止部材としての0リング19が装着されている。また、案内孔15と小径孔16との間に形成される段差部20と、クランプロッド10の挿入部11の下面との間に圧縮バネ(付勢手段)21が装着されている。その圧縮バネ21がピストンロッド7に対してクランプロッド10を上方に付勢する。また、出力部材9の下端面がハウジング1の下端壁1bに当接可能となっている。
【0012】
上記クランプロッド10の下面に形成される係止部22が、ピストンロッド7の上面に形成される係合部23に所定の間隔をあけて当接可能に対面される。そのクランプロッド10の先端部にリンクアーム24の一端部が回動可能にピン連結される。ハウジング1の上端壁1aから枢支部25が突設され、その枢支部25にリンク部材26の基端部が回動可能にピン連結され、そのリンク部材26の先端部がリンクアーム24の長手方向の途中部に回動可能に連結される。リンクアーム24の他端部に押しボルト27が螺合され、ナット28によって押しボルト27がリンクアーム24に固定される。その押しボルト27の下面に押圧部29が形成され、その押圧部29がワークWに当接可能となっている。
【0013】
上記の第1ピストン5の外周面とシリンダ孔2の内周面との間に第2ピストン33が保密状で上下方向に移動移動可能に挿入される。
【0014】
上記の収容孔4の内周面とクランプロッド10の外周面との間に筒状の支持部材34が保密状で上下方向に移動可能に挿入される。なお、その支持部材34がハウジング1の一部を構成している。その支持部材34は、上側から順に形成される大径部35と小径部36とを有する。その大径部35が収容孔4の大径孔37に保密状で上下方向へ移動可能に挿入され、小径部36が収容孔4の小径孔38に挿入される。大径部35と小径部36との間に段差部39が形成されている。その支持部材34の段差部39が、収容孔4の大径孔37と小径孔38との間に形成される段差部40に所定の隙間をあけて当接可能に対面されている。その小径部36の高さ方向の途中部に溝が周方向に形成され、その溝に止め輪41が装着される。その止め輪41が収容孔4の周壁に対して所定の距離をあけて対面している。これにより、支持部材34が所定の距離だけ移動可能となっていると共に、その止め輪41によって支持部材34が収容孔4から抜けることが防止されている。
【0015】
上記の第1ピストン5と第2ピストン33と出力部材9とによってシリンダ孔2が上下に2つの室に区画される。第1ピストン5、第2ピストン33、クランプロッド10との下端壁1bとの間にロック室42が形成されると共に、第1ピストン5、第2ピストン33、出力部材9と、ハウジング1の上端壁1aとの間にリリース室43が形成される。そのロック室42に圧縮空気(圧力流体)を供給および排出する給排路44がハウジング1の上端壁1aおよび胴部1cに形成されると共に、リリース室43に圧縮空気(圧力流体)を供給および排出する別の給排路45がハウジング1の上端壁1aに形成される。また、ロック室42に保持バネ46が装着され、その保持バネ46が第2ピストン33を上方へ付勢している。
【0016】
上記リリース室43内に倍力機構47が配置される。その倍力機構47は、ロック室42の圧縮空気が第2ピストン33を上方(リリース室43側)へ押す力を倍力変換して第1ピストン5に伝達するように構成される。
【0017】
上記倍力機構47は、次のように構成される。
上記の支持部材34の筒壁の下部に複数の支持孔48が周方向に所定の間隔をあけて半径方向へ貫通される。その支持孔48に係合ボール(係合部材)49が半径方向に移動可能に挿入される。
【0018】
上記の係合ボール49に対応させるようにピストンロッド7の外周部にカム溝50が形成される。そのカム溝50の底壁に形成されるカム面51が、下方へ向かうにつれて軸心に近づくように形成されている。そのカム面51に係合ボール49が当接可能になっている。また、第2ピストン33の筒孔52の上半部分に押圧面53が下方へ向かうにつれて軸心に近づくように形成される。その押圧面53に係合ボール49が当接可能になっている。
【0019】
上記の押圧面53の上側で筒孔52に押部54が下方へ向かうにつれて軸心に近づくように形成される。これにより、倍力機構47の倍力駆動の開始時に、押部54が係合ボール49を半径方向の内方へ押し出す。また、シリンダ装置のロック駆動の開始時から倍力機構47の倍力駆動の開始直前までのロック駆動工程で、ピストンロッド7の外周面に形成されるガイド面55へ向けて押部54が係合ボール49を半径方向の内方へ押す。なお、押部54が係合ボール49を半径方向の内方へ押す力は、押圧面53が係合ボール49を半径方向の内方へ押す力よりも小さくなるように設定されている。
【0020】
上記クランプ装置が倍力駆動を開始したことを検出する弁機構61がハウジング1内に設けられ、その弁機構61は、次のように構成される。
【0021】
上記ハウジング1内に圧縮空気の流路60が形成される。その流路60の途中部に弁機構61が設けられ、その弁機構61が流路60を閉鎖および開放する。そのハウジング1のフランジ部1dの裏面に流路60の一部としての(図示しない)供給ポートが開口される。その供給ポートには、(図示しない)検出用圧縮空気の供給源からの通路が接続され、その通路の途中部に(図示しない)圧力スイッチ(または、圧力センサ)が設けられている。その流路60の一部を構成する入口路63の一端部が供給ポートに連通され、入口路63の他端部が収容孔4の小径孔38の内周面に開口される。その収容孔4の大径孔37の内周面と支持部材34の小径部36の外周面と支持部材34の段差部39と収容孔4の段差部40と収容孔4の小径孔38の内周面とによって弁機構61の弁室64が区画形成される。その弁機構61が、収容孔4の段差部40に形成される弁座65と支持部材34の段差部39に形成される弁面66とを有する。流路60の一部である出口路67の一端部が収容孔4の大径孔37の内周面に開口される。その出口路67の他端部が、ハウジング1内に形成される(図示しない)は排出ポートから外部に排出される。
【0022】
上記実施形態に示すシリンダ装置は、図1から図2に示すように、次のように作動する。
図1のリリース状態では、ロック室42から圧縮空気が排出されると共に、リリース室43に圧縮空気が供給されている。これにより、リリース室43の圧縮空気が第1ピストン5および第2ピストン33を下限位置に下降させている。このとき、リリース室43の圧縮空気が支持部材34を上方に押し上げて、止め輪41が収容孔4の周壁に受け止められる。このため、支持部材34が上限位置に移動されている。これにより、支持部材34の弁面66が収容孔4の周壁の弁座65から上方へ離間され、弁機構61が開弁されている。
上記リリース状態でクランプロッド10の上方にワークWが搬入され、そのワークWがテーブルT上に載置される。
【0023】
上記シリンダ装置を図1のリリース状態から図2のロック状態にロック駆動するときに、リリース室43から圧縮空気が排出されると共に、ロック室42に圧縮空気が供給される。すると、リリース室43の圧縮エアの圧力が低下して、支持部材34が自重などにより下降しようとするが、支持部材34の封止部材によるシール抵抗によって支持部材34が上限位置に維持される。または、ロック室42の圧縮空気の圧力および保持バネ46の付勢力が第2ピストン33をわずかな機械的クリアランス分だけ上方へ移動させ、その第2ピストン33が係合ボール49を介して支持部材34を上方に押して上限位置に維持する。その結果、弁機構61もまた開弁状態が維持される。このとき、その係合ボール49がピストンロッド7のガイド面55に受け止めれており、半径方向の内方への移動が阻止されると共に、第2ピストン33の上記機械的クリアランスを超える上昇が阻止されている。次いで、第1ピストン5は、第2ピストン33を下方位置に置き残して低負荷で上昇していく。引き続いて、第1ピストン5が圧縮バネ21を介してクランプロッド10を上昇させていく。これにより、クランプロッド10の押圧部29がワークWの上面に当接される。その結果、出力部材9がリンクアーム24を介してワークWに受け止められるが、第1ピストン5は圧縮バネ21の付勢力に抗して上昇されていく。
【0024】
引き続いて、第1ピストン5が上方に移動されて、第1ピストン5のカム面51が係合ボール49の高さ位置まで上昇する。すると、係合ボール49が半径方向の内方へ移動することが許容される。次いで、ロック室42の圧縮空気の圧力に相当する押圧力および保持バネ46の付勢力の合力が、第2ピストン33の押部54を介して係合ボール49を半径方向の内方へ移動させ、係合ボール49がカム面51を押圧する。これにより、倍力機構61が倍力駆動を開始した状態となる。引き続いて、第2ピストン33が、押圧面53と係合ボール49とカム面51とを介して第1ピストン5を圧縮バネ21の付勢力に抗して上方へ移動させる(ピストンロッド7の係合部23がクランプロッド10の係止部22に当接されていない状態がロック直前状態である)。すると、図2に示すように、ピストンロッド7の係合部23がクランプロッド10の係止部22に当接される(第1ピストン5と出力部材9とが連結される)。これにより、第2ピストン33が第1ピストン5と係合ボール49と出力部材9とリンクアーム24とを介してワークWを上方からテーブルWに向けて強力に押圧する。その結果、シリンダ装置がリリース状態からロック状態に切り換えられる。
【0025】
ここで、押圧面53がシリンダ孔2の軸心Cに対して傾斜する角度βは、カム面51がシリンダ孔2の軸心Cに対して傾斜する角度αに比べて小さくなるように設定されている(β<α)。このため、シリンダ装置がリリース状態からロック状態に切り換えられるときに、第2ピストン33が係合ボール49を押圧する力のうちの上向き(シリンダ孔2の軸心C方向)成分は、リンクアーム24がワークWを押圧する力の反力が第1ピストン5のカム面51等を介して係合ボール49を押圧する力のうちの下向き成分に比べて小さくなる。これにより、シリンダ装置がロック直前状態からロック状態に切り換えられるとき(ピストンロッド7の係合部23がクランプロッド10の係止部22に当接されたとき)に、第1ピストン5が係合ボール49を介して支持部材34を下限位置へ移動させる。その支持部材34の弁面66が収容孔8の弁座65に受け止められて、弁機構61が閉弁される。このため、入口路63の圧縮空気が弁室64および弁面66と弁座65との開口隙間と出口路67を通ってハウジング1の外部へ排出される。これにより、入口路63の圧縮空気の圧力が上昇され、その圧力上昇が(図示しない)圧力スイッチによって検出される。その結果、出力部材9がリンクアーム24を介してワークWを押圧したことが弁機構61によって検出される。
【0026】
上記シリンダ装置を図2のロック状態から図1のリリース状態へ切り換えるときには、その図2のロック状態で、ロック室42から圧縮空気が排出されると共に、リリース室43に圧縮空気が供給される。すると、リリース室43の圧縮空気が第2ピストン33を下降させていき、係合ボール49の半径方向の外方への移動が許容される。このとき、係合ボール49がカム面51から離間可能となるので、カム面51が係合ボール49を介して支持部材34を下方へ押動させるのを止める。すると、リリース室43の圧縮空気が支持部材34を上方へ移動させる。このため、弁機構61の弁面66が弁座65から離間され、弁機構61が開弁される。従って、入口路63の圧縮空気が弁室64および弁面66と弁座65との開口隙間と出口路67を通ってハウジング1の外部へ排出される。次いで、リリース室43の圧縮空気が第1ピストン5を下降させ、その第2ピストン33のカム面51が係合ボール49を半径方向の外方へ押動させていく。ついで、ピストンロッド7のガイド面55が係合ボール49に接触して、ピストンロッド7のガイド面55が係合ボール49を半径方向の内方への移動を阻止する。引き続いて、第2ピストン33が下端壁1bによって下方から受け止められる。その後、上下方向への移動が係合ボール49とガイド面55によって阻止された第2ピストン33に対して第1ピストン5がさらに下降される。すると、第1ピストン5が出力部材9の大径部14を押し下げていく。すると、第1ピストン5が出力部材9の大径部14を介してハウジング1の下端壁1bに受け止められる。これにより、シリンダ装置がロック状態からリリース状態に切り換えられる。
【0027】
上記の実施形態は次の長所を奏する。
上記の本発明のシリンダ装置では、倍力機構47の係合ボール49を支持する支持部材34を弁機構61の弁部材として構成することにより、上記の従来技術のシリンダ装置のような弁部材を別途備える必要がない。従って、シリンダ装置を簡素に構成できる。
【0028】
また、前述した従来のシリンダ装置に備えられる弁機構は、ピストンが所定位置に移動されたときに、その第2ピストンによって弁機構の弁部材が押し上げられて開弁される。つまり、出力部材がワークを押圧したか否かに関係なく、ピストンの作動を検出したことにより、倍力機構が作動したものとして、その検知結果を基に出力部材がワークを押圧したものと推測している。
これに対して、上記の実施形態のシリンダ装置に備えられる弁機構61は、リリース状態からロック直前状態まで開弁状態が維持されており、出力部材9を介してリンクアーム24がワークを強力に押圧したロック状態となったときに閉弁される。このため、倍力機構47が作動した後、シリンダ装置がワークWを押圧したことが弁機構61によって検知される。また、倍力機構47が作動したときに、その倍力機構47の係合ボール49を支持する支持部材34がわずかにハウジング1内に移動する。この支持部材34の移動が作業者によってハウジング1の外部から目視確認されることにより、作業者は、倍力機構が作動したことがわかる。これにより、本実施形態のシリンダ装置では、従来のシリンダ装置のような推測ではなく、リンクアーム24先端部がワークを押圧したことを実際にかつ適時に検知できると共に、装置内部における倍力機構の作動状態を作業者が目視でも確認できる。
【0029】
上記の本実施形態において、ロック状態とは、ロック室42の圧縮空気が第1ピストン5と出力部材9とリンクアーム24とを介して押しボルト27の押圧部29がワークWを押圧したときであって、第1ピストン5の係合部23が出力部材9の係止部22に当接している状態である。この状態では、ロック室42内の圧縮空気の圧力に相当する押圧力が第1ピストン5と出力部材9等を介してワークWに強力に作用している。また、ロック直前状態とは、倍力機構が作動しているが、第1ピストン5の係合部23が出力部材9の係止部22に当接されておらず、ロック室42内の圧縮空気の圧力に相当する押圧力が第1ピストン5と圧縮バネ21と出力部材9等を介してワークWに作用するので十分な押圧力が作用していない状態をいう。
【0030】
ここで、本実施形態において、第1ピストン5と出力部材9とが別々の部材によって構成されていることに代えて、第1ピストン5と出力部材9とが一体的に形成されていてもよい。この場合、第1ピストン5が出力部材9とリンクアーム24等を介してワークWを当接したときに、リリース状態からロック状態に切り換えられる。このとき、リンクアーム24がワークWを押圧した力の反力がカム面51と係合ボール49とを介して支持部材34を下方へ移動させる。これにより、弁機構61が閉弁される。
【0031】
上記の各実施形態は次のように変更可能である。
上記シリンダ装置の設置姿勢は、例示した姿勢とは上下逆の姿勢であってもよく、また、横向き姿勢で、又は斜め向き姿勢で設置してもよい。
上記の圧力流体は、例示した圧縮空気に代えて、他の気体または圧油等の液体であってもよい。
前記ロック室42に保持バネ46を装着するのに代えてリリース室43にリリースバネを装着する構成としてもよい。
また、複動式シリンダに代えて単動式のシリンダであってもよい。
上記の第1ピストン5は、ピストン本体6とピストンロッド7とによって構成されることに限らず、ピストンロッド7を省略してもよい。この場合、カム溝50およびカム面51がピストン本体6の外周面に形成される。
上記出力部材9は、第1ピストン5の筒孔8に上下方向に移動可能に挿入されることに代えて、第1ピストン5から一体的に連結されてもよい。この場合、圧縮バネ21などが省略される。
上記の係合部材49の設置数量は、3つ又は4つが好ましいが、2つ又は5つ以上であってもよい。上記の係合部材は、例示した係合ボール49に限られず、例えば、円柱形のコロ等の他の形状の部材であってもよい。
上記の筒状の支持部材34が、収容孔4の内周面と出力部材9の外周面との間に保密状で移動可能に挿入されることに代えて、円柱や角柱などの棒状の支持部材34が、ハウジング1の上端壁1aに形成される貫通孔に保密状で軸心方向に移動可能に挿入されるようにしてもよい。この場合、支持部材34が大径部35と小径部36とを有し、その大径部35と小径部36とが貫通孔の大径孔と小径孔とに挿入される。
上記の係合部材49が挿入される支持孔48は、支持部材34の周壁に水平方向へ貫通させることに代えて、斜め方向へ貫通させてもよい。
上記の付勢手段は、例示した圧縮バネ21に代えて、ゴムや樹脂などの弾性部材や、ガススプリングであってもよい。
上記流路60の入口路63、出口路67、または、その両方をハウジング1内に設けることに代えて、支持部材34内に設けるようにしてもよく、また、ハウジング1内および支持部材34に跨って設けるようにしてもよい。その出口路67を、収容孔4の内周壁と支持部材34の外周壁との間に形成される隙間によって構成するようにしてもよい。この場合、収容孔4の内周壁と支持部材34の外周壁との間に設けられる(ハウジング1の上端面3に近い方の)封止部材を省略する。
上記の弁機構61は、支持部材34が上昇したときに開弁され、下降したときに閉弁されることに代えて、上昇したときに閉弁され、下降したときに開弁されるようにしてもよい。この場合、収容孔4は、上側から順に形成される小径孔と大径孔とを有する。また、支持部材34は、上側から順に形成される小径部と大径部とを有する。その収容孔4の段差部40に弁座65が形成されると共に、支持部材34の段差部39に弁面66が形成される。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1:ハウジング,3:上端面(先端面),4:収容孔,2:シリンダ孔,5:第1ピストン,9:出力部材,33:第2ピストン,34:支持部材,48:支持孔,49:係合部材,51:カム面,53:押圧面,60:流路,61:弁機構,65:弁座,66:弁面.
図1
図2