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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031415
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】建物の壁構造及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20230302BHJP
   E06B 1/62 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
E04B1/76 400C
E04B1/76 500Z
E04B1/76 400N
E06B1/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136878
(22)【出願日】2021-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】595010127
【氏名又は名称】株式会社大共ホーム
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀久
【テーマコード(参考)】
2E001
2E011
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001EA08
2E001FA32
2E001GA11
2E001JA03
2E001NA07
2E001ND12
2E011LB02
2E011LB06
2E011LC03
2E011LD01
2E011LD08
2E011LE04
2E011LE13
(57)【要約】
【課題】 コスト高になることなく断熱性の向上を図る。
【解決手段】 躯体1の躯体開口2内に窓サッシ10を固定し、この躯体1の外面3を通気層4を介して覆う外壁部材30を設け、躯体1の外面3であって窓サッシ10の外縁10aより外側に板状の第1断熱材40を付設し、窓サッシ10の周囲の全部若しくは一部の見付け面16と躯体開口2を形成する部材の外面との間に跨って、第1断熱材40に接合され第1断熱材40よりも厚さ寸法が大きい第2断熱材50を付設し、第2断熱材50を覆って第1断熱材40との間に通気層4を形成し第2断熱材50とともに外壁見込み下地面62を形成する下地板60を設け、下地板60の外表面及び外壁見込み下地面62に塗り壁材80を塗布し、下地板60及び塗り壁材80により外壁部材30を構成した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に躯体開口を形成し、該躯体開口内であって該躯体開口を形成する部材に窓開口を形成する枠状の窓サッシを固定し、該窓サッシの窓開口を露出させる開放口を有するとともに上記躯体の外面を通気層を介して覆う外壁部材を設けた建物の壁構造において、
上記躯体の外面であって上記窓サッシの外縁より外側に板状の第1断熱材を付設し、
上記窓サッシの周囲の全部若しくは一部の見付け面と上記躯体開口を形成する部材の外面との間に跨って、上記第1断熱材に接合され該第1断熱材よりも厚さ寸法が大きい第2断熱材を付設し、
該第2断熱材を覆って上記第1断熱材との間に通気層を形成し該第2断熱材とともに外壁見込み下地面を形成する下地板を設け、
該下地板の外表面及び上記外壁見込み下地面に塗り壁材を塗布し、上記下地板及び塗り壁材により外壁部材を構成したことを特徴とする建物の壁構造。
【請求項2】
外面を有した躯体に躯体開口を形成し、該躯体開口内であって該躯体開口を形成する部材に、上フレーム,下フレーム及び左右の一対の縦フレームにより窓開口を形成する枠状の窓サッシを固定し、該窓サッシの窓開口を露出させる開放口を有するとともに上記躯体の外面を通気層を介して覆う外壁部材を設けた建物の壁構造において、
上記躯体の外面に、上記窓サッシの外縁より外側であって該窓サッシの外縁側に端面を有した板状の第1断熱材を付設し、
上記窓サッシの上フレーム及び左右の一対の縦フレームに対応し該窓サッシの窓開口の窓開口縁より外側であって該窓サッシの見付け面と上記躯体開口を形成する部材の外面との間に跨って、上記第1断熱材の端面に接合される一側面及び上記窓開口縁側の他側面を有するとともに該第1断熱材より厚さ寸法が大きい第2断熱材を付設し、
上記第1断熱材に対面し該第1断熱材との間に通気層を形成するとともに、上記窓サッシの窓開口を露出させる開放端面を有した下地板を設け、
上記窓サッシの上フレーム及び左右の一対の縦フレームに対応する下地板の開放端面を、上記第2断熱材の他側面と面一に形成し、該下地板の開放端面と上記第2断熱材の他側面とで外壁見込み下地面を形成し、
上記下地板の外表面及び上記外壁見込み下地面に塗り壁材を塗布し、上記下地板及び塗り壁材により外壁部材を構成したことを特徴とする建物の壁構造。
【請求項3】
上記窓サッシの下フレームを上記躯体開口を形成する部材に支持部材を介して支持し、該窓サッシの下フレームに対応し上記窓開口の窓開口縁より外側に上記第1断熱材の端面に接合される一側面及び上記窓開口縁側の他側面を有した第3断熱材を設け、上記支持部材に、上記第3断熱部材の他側面,下地板の開放端面を覆う水切り板を設けたことを特徴とする請求項2記載の建物の壁構造。
【請求項4】
上記躯体は、上記窓サッシが固定される枠部材と、該枠部材の外面側に上記窓サッシの見付け面と面一であって上記枠部材とともに上記躯体開口を構成する構造用板を備え、上記第2断熱材を断面矩形状に形成したことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の建物の壁構造。
【請求項5】
上記第2断熱材を、上記枠部材に構造用板を介してビスで固定したことを特徴とする請求項4記載の建物の壁構造。
【請求項6】
上記窓サッシの外縁と該窓サッシの窓開口の窓開口縁との間の寸法をDとし、上記窓サッシの外縁と上記塗り壁材によって形成される外壁見込み面との間の寸法をLとしたとき、L≧0.7Dにしたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の建物の壁構造。
【請求項7】
上記1乃至6何れか記載の建物の壁構造を備えた建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓サッシが取付けられた主に木造の建物の壁構造及び建物に係り、特に、窓サッシが所謂内付けにして取付けられるとともに通気層を有した建物の壁構造及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、主にヨーロッパで普及し、窓が設けられた窓サッシを所謂内付けにして取付ける建物があり、近年、国内において、木造の建物では、これに通気層を設けて湿気を防止するようにした建物が徐々に広まりつつある。
この種の建物の壁構造としては、例えば、特開2021-50503号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。図4(a)に示すように、この建物の壁構造Kaは、躯体100に躯体開口101を形成し、躯体開口101内であってこの躯体開口101を形成する部材に、窓開口102を形成し窓103が設けられた枠状の窓サッシ104を固定し、この窓サッシ104の窓開口102を露出させる開放口111を有するとともに躯体100の外面を通気層106を介して覆う外壁部材としての外壁板110を設けている。
【0003】
窓サッシ104は、図示外の上フレーム,図示外の下フレーム及び左右の一対の縦フレーム107を備えて構成されている。窓サッシ104は、躯体開口101を形成する木製の枠部材108に例えばスぺーサ109を介して嵌挿されて図示外のビス等で固定されている。外壁板110は、図示外の胴縁に固定され、内側に湿気を防止するための通気層106を形成している。112は窓サッシ104の見付け面113と枠部材108の外面との間に貼付された防水テープ、114は防水テープ112を含み躯体100の外面に付設された防水シートである。窓サッシ104の上フレーム及び左右の一対の縦フレーム107に対応し外壁板110の開放口111を形成する端縁部110aは、窓サッシ104の見付け面113の一部を覆っており、この端縁部110aと見付け面113との間には、バックアップ材115及びシール材116が設けられており、外壁板110の端面110bとシール材116とで外壁見込み面117を形成している。尚、図示しないが、窓サッシ104の下フレーム側には、枠部材体108に固定され外壁板110の端面を覆う水切り板が設けられている。図中118は内装材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-50503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来の建物の壁構造にあっては、躯体100には、防水シート114が貼付されているが、断熱性に劣るという問題があった。そのため、断熱性を向上させるために、図4(b)に示すように、防水シート114に変えてあるいは防水シート114の内側に断熱材200を設け、所謂外張り断熱にすることが考えられる。しかしながら、断熱材200を設けると、断熱材200の厚さの分、外壁板110の端縁部110aと窓サッシ104の見付け面113との間隔が大きくなり、特に、外壁板110の内側に通気層106を設けることもあって、バックアップ材115及びシール材116の固定が難しくなり、外壁見込み面117の形成が難しくなり、単に、断熱材200を設けることができないという問題が生じる。
【0006】
また、図4(c)に示すように、外壁板110の端縁部110aをL字状に一体に折曲形成し、外壁見込み面117を形成する屈曲部201を設けることも考えられる。しかしながら、断熱材200はその厚さが例えば30mm~120mmの範囲で種々の厚さのものがあることから、屈曲部201を断熱材200の厚さに合わせて作成した外壁板110を用意しなければならないので、それだけ、製造や調整が煩雑になってしまい、コストも高くなってしまう。また、屈曲部201と窓サッシ104の見付け面113とのシールも必要になるので、結局はバックアップ材115及びシール材116を設けなければならず、それだけ、コストも高くなり、外観品質も損ねるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みて為されたもので、コスト高になることなく断熱性の向上を図った建物の壁構造及び建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明の建物の壁構造は、躯体に躯体開口を形成し、該躯体開口内であって該躯体開口を形成する部材に窓開口を形成する枠状の窓サッシを固定し、該窓サッシの窓開口を露出させる開放口を有するとともに上記躯体の外面を通気層を介して覆う外壁部材を設けた建物の壁構造において、
上記躯体の外面であって上記窓サッシの外縁より外側に板状の第1断熱材を付設し、
上記窓サッシの周囲の全部若しくは一部の見付け面と上記躯体開口を形成する部材の外面との間に跨って、上記第1断熱材に接合され該第1断熱材よりも厚さ寸法が大きい第2断熱材を付設し、
該第2断熱材を覆って上記第1断熱材との間に通気層を形成し該第2断熱材とともに外壁見込み下地面を形成する下地板を設け、
該下地板の外表面及び上記外壁見込み下地面に塗り壁材を塗布し、上記下地板及び塗り壁材により外壁部材を構成している。
【0009】
ここで、窓サッシとしては、硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂製,アルミニウム等の金属製,木製あるいはこれらを組み合わせて複合したものを選択することができる。硬質塩化ビニル樹脂の場合には、熱伝導率がアルミニウムと比べおよそ1200倍も低く断熱性に優れる。また、木材の場合には、耐候性には劣るが、熱伝導率がアルミニウムと比べおよそ1700倍~2300倍も低く樹脂と同等かそれ以上の断熱性能となる。
【0010】
この構成により、躯体を第1断熱材及び第2断熱材により被覆したので、断熱性能を大幅に向上させることができる。特に、第2断熱材は、第1断熱材に接合しているのでこの間の隙間がなく、また、窓サッシの見付け面と躯体開口を形成する部材の外面との間に跨って付設されるので、窓サッシと躯体開口との隙間を塞ぐことから、より一層断熱性を向上させることができる。
【0011】
また、第2断熱材は、第1断熱材よりも厚さ寸法が大きいので、この第2断熱材を覆う下地板による通気層の幅を確保し易くすることができる。しかも、第2断熱材は、第1断熱材とは別体なので、第1断熱材の厚さに応じてこれより厚さ寸法の大きいものを容易に準備することができ、それだけ調整が容易で構築を容易にすることができる。更に、第2断熱材は、窓サッシの見付け面と躯体開口を形成する部材の外面との間に跨って付設されるので、躯体開口を形成する部材にビス等で固定することができ、その固定を確実にすることができる。もし、第2断熱材が窓サッシにのみに付設される大きさの場合には、窓サッシの見付け面への取付は容易でない。また、従来のように逐一バックアップ材及びシール材を設けなくても、第2断熱材のみで賄うことができる。その結果、耐久性が向上し、コストダウンも図ることができる。
【0012】
更に、塗り壁材を下地板の外表面及び外壁見込み下地面に塗布することにより、外壁部材を構成することができ、一般に、上記の従来の外壁板に比較して、下地板及び塗り壁材は安価なので、この点でもコストダウンを図ることができる。特に、塗り壁材により外壁見込み下地面を塗布するので、外壁見込み下地面を隙間なく覆うことができ、そのため、塗り壁材によって形成される外壁見込み面の外観品質を向上させることができる。更にまた、第1断熱材及び第2断熱材を設けるので、互いに種類の異なる材質のものを用いることができる。これにより、第1断熱材として、塗り壁材が塗布されにくいが断熱性の高い材質のものを選択し、第2断熱材には、多少断熱性能が劣っても塗り壁材が塗布し易い材質のものを選択することができ、汎用性を向上させることができる。
【0013】
より具体的には、本発明の建物の壁構造は、外面を有した躯体に躯体開口を形成し、該躯体開口内であって該躯体開口を形成する部材に、上フレーム,下フレーム及び左右の一対の縦フレームにより窓開口を形成する枠状の窓サッシを固定し、該窓サッシの窓開口を露出させる開放口を有するとともに上記躯体の外面を通気層を介して覆う外壁部材を設けた建物の壁構造において、
上記躯体の外面に、上記窓サッシの外縁より外側であって該窓サッシの外縁側に端面を有した板状の第1断熱材を付設し、
上記窓サッシの上フレーム及び左右の一対の縦フレームに対応し該窓サッシの窓開口の窓開口縁より外側であって該窓サッシの見付け面と上記躯体開口を形成する部材の外面との間に跨って、上記第1断熱材の端面に接合される一側面及び上記窓開口縁側の他側面を有するとともに該第1断熱材より厚さ寸法が大きい第2断熱材を付設し、
上記第1断熱材に対面し該第1断熱材との間に通気層を形成するとともに、上記窓サッシの窓開口を露出させる開放端面を有した下地板を設け、
上記窓サッシの上フレーム及び左右の一対の縦フレームに対応する下地板の開放端面を、上記第2断熱材の他側面と面一に形成し、該下地板の開放端面と上記第2断熱材の他側面とで外壁見込み下地面を形成し、
上記下地板の外表面及び上記外壁見込み下地面に塗り壁材を塗布し、上記下地板及び塗り壁材により外壁部材を構成している。
【0014】
そして、必要に応じ、上記窓サッシの下フレームを上記躯体開口を形成する部材に支持部材を介して支持し、該窓サッシの下フレームに対応し上記窓開口の窓開口縁より外側に上記第1断熱材の端面に接合される一側面及び上記窓開口縁側の他側面を有した第3断熱材を設け、上記支持部材に、上記第3断熱部材の他側面,下地板の開放端面を覆う水切り板を設けた構成としている。水切り板を設ける窓サッシの下フレームにおいても、第1断熱材,支持部材及び第3断熱材により、断熱効果を奏することができる。
【0015】
また、必要に応じ、上記躯体は、上記窓サッシが固定される枠部材と、該枠部材の外面側に上記窓サッシの見付け面と面一であって上記枠部材とともに上記躯体開口を構成する構造用板を備え、上記第2断熱材を断面矩形状に形成した構成としている。構造用板と窓サッシの見付け面が面一になるので、段差がなくなり、第2断熱材を断面矩形状にして容易に付設することができ、この点でもコストダウンを図ることができる。
【0016】
この場合、上記第2断熱材を、上記枠部材に構造用板を介してビスで固定したことが有効である。窓サッシの見付け面への取付は容易でないが、枠部材に構造用板を介してビスで固定するので、第2断熱材の固定を確実にすることができる。
【0017】
更に、必要に応じ、上記窓サッシの外縁と該窓サッシの窓開口の窓開口縁との間の寸法をDとし、上記窓サッシの外縁と上記塗り壁材によって形成される外壁見込み面との間の寸法をLとしたとき、L≧0.7Dにした構成としている。これにより、第2断熱材と塗り壁材によって窓サッシの見付け面を7割以上覆うことになるので、窓サッシによるヒートブリッジを可能な限り抑制することができ、そのため、より一層断熱性を向上させることができる。
【0018】
そしてまた、本発明の建物は、上記の建物の壁構造を備えた建物にある。上記と同様の作用,効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、躯体を第1断熱材及び第2断熱材により被覆したので、断熱性能を大幅に向上させることができる。特に、第2断熱材は、第1断熱材に接合しているのでこの間の隙間がなく、また、窓サッシの見付け面と躯体開口を形成する部材の外面との間に跨って付設されるので、窓サッシと躯体開口との隙間を塞ぐことから、より一層断熱性を向上させることができる。
【0020】
そして、第2断熱材は、第1断熱材よりも厚さ寸法が大きいので、この第2断熱材を覆う下地板による通気層の幅を確保し易くすることができる。しかも、第2断熱材は、第1断熱材とは別体なので、第1断熱材の厚さに応じてこれより厚さ寸法の大きいものを容易に準備することができ、それだけ調整が容易で構築を容易にすることができる。更に、第2断熱材は、窓サッシの見付け面と躯体開口を形成する部材の外面との間に跨って付設されるので、躯体開口を形成する部材にビス等で固定することができ、その固定を確実にすることができる。もし、第2断熱材が窓サッシにのみに付設される大きさの場合には、窓サッシの見付け面への取付は容易でない。また、従来のように逐一バックアップ材及びシール材を設けなくても、第2断熱材のみで賄うことができる。その結果、耐久性が向上し、コストダウンも図ることができる。
【0021】
更に、塗り壁材を下地板の外表面及び外壁見込み下地面に塗布することにより、外壁部材を構成することができ、一般に、上記の従来の外壁板に比較して、下地板及び塗り壁材は安価なので、この点でもコストダウンを図ることができる。特に、塗り壁材により外壁見込み下地面を塗布するので、外壁見込み下地面を隙間なく覆うことができ、そのため、塗り壁材によって形成される外壁見込み面の外観品質を向上させることができる。更にまた、第1断熱材及び第2断熱材を設けるので、互いに種類の異なる材質のものを用いることができる。これにより、第1断熱材として、塗り壁材が塗布されにくいが断熱性の高い材質のものを選択し、第2断熱材には、多少断熱性能が劣っても塗り壁材が塗布し易い材質のものを選択することができ、汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る建物の壁構造の外観を示す要部斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る建物の壁構造を示す図1中A-A線断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る建物の壁構造を示す図1中B-B線断面図である。
図4】従来技術を示し、(a)は従来の建物の壁構造を示す横断面図、(b)は単に断熱材を設けたときの不具合を示す横断面図、(c)は外壁板により外壁見付け面を形成したときの不具合を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る建物の壁構造及び建物について詳細に説明する。
図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態に係る建物の壁構造Kは、躯体1に躯体開口2を形成し、この躯体開口2内であって躯体開口2を形成する部材に窓11を有し窓開口12を形成する枠状の窓サッシ10を固定し、窓サッシ10の窓開口12を露出させる開放口31を有するとともに躯体1の外面3を通気層4を介して覆う外壁部材30を設けて構成されている。窓サッシ10は、実施の形態では硬質塩化ビニル樹脂等の周知の樹脂製の部材のものが用いられ、上フレーム13,下フレーム14及び左右の一対の縦フレーム15により窓開口12を形成する枠状に形成されている。
【0024】
詳しくは、躯体1は、窓サッシ10が固定される木製の枠部材5と、枠部材5の外面6側に窓サッシ10の見付け面16と面一であって枠部材5とともに躯体開口2を構成する構造用板17を備えている。窓サッシ10の上フレーム13及び左右の一対の縦フレーム15には、スぺーサ18を介して枠部材5にビス等で固定されている。室内側には防湿シート19を介して内装材20が設けられており、構造用板17と防湿シート19との間には例えばグラスウールなどの断熱材21が設けられている。22は窓台である。
【0025】
躯体1の構造用板17の外面17a(躯体1の外面3)には、窓サッシ10の外縁10aより外側であって窓サッシ10の外縁10a側に端面41を有した板状の第1断熱材40が付設されている。第1断熱材40は、例えば、発泡フェノール樹脂製のものが用いられる。第1断熱材40は、胴縁63によって押えられ、枠部材5に構造用板17を介して胴縁63とともにビス42で固定されている。
【0026】
窓サッシ10の上フレーム13及び左右の一対の縦フレーム15に対応して、第2断熱材50が設けられている。この第2断熱材50は、第1断熱材40の端面41に接合される一側面51及び窓開口縁12a側の他側面52を有するとともに第1断熱材40より厚さ寸法が大きい断面矩形状に形成されており、窓サッシ10の窓開口12の窓開口縁12aより外側であって窓サッシ10の見付け面16と躯体開口2を形成する部材である枠部材5に対応する構造用板17の外面17aとの間に跨って付設されている。この場合、第2断熱材50は、窓サッシ10の外縁10aと第2断熱材50によって形成される外壁見込み下地面62(第2断熱材50の他側面52)との間の寸法をLaとしたとき、La=(0.6~0.9)Dになるようにしている。
【0027】
第2断熱材50としては、例えば、スチレンの粒を発砲させて作製されるビーズ法ポリスチレンフォームが用いられる。ポリスチレンフォームは、後述の塗り壁材80との合いが良く、塗布が確実になる。第2断熱材50は、枠部材5に構造用板17を介してビス53で固定されている。この場合、構造用板17の外面17aと窓サッシ10の見付け面16が面一になっているので、段差がなくなり、第2断熱材50を断面矩形状にして容易に付設することができる。また、付設が容易になるので、それだけコストダウンを図ることができる。
【0028】
また、第1断熱材40に対面して第1断熱材40との間に通気層4を形成するとともに、窓サッシ10の窓開口12を露出させる開放端面61を有した下地板60が設けられている。窓サッシ10の上フレーム13及び左右の一対の縦フレーム15に対応する下地板60の開放端面61は、第2断熱材50の他側面52と面一に形成されている。そして、下地板60の開放端面61と第2断熱材50の他側面52とで外壁見込み下地面62が形成される。下地板60は、第1断熱材40に固定される胴縁63に付設されている。この下地板60とともに通気層4を構成する第1断熱材40の表面には、保護シート64が敷設されている。
【0029】
一方、図1及び図3に示すように、窓サッシ10の下フレーム14側においては、下フレーム14は枠部材5に支持部材70を介して支持されている。窓サッシ10の下フレーム14に対応して窓開口12の窓開口縁12aより外側(実施の形態では窓サッシ10の外縁10aよりも外側)に、第1断熱材40の端面41及び構造用板17の端面17bに接合される一側面72及び窓開口縁12a側の他側面73を有した第3断熱材74が設けられている。窓サッシ10の下フレーム14側においては、下地板60の開放端面61は第1断熱材40の端面41と同位にある。そして、支持部材70には、第3断熱材74の他側面73,下地板60の開放端面61を覆う下向きに傾斜した水切り板75が取付けられている。76は下地板60の開放端面61と水切り板75との間に介装されるコーキング材である。
【0030】
そして、下地板60の外表面及び外壁見込み下地面62には、塗り壁材80が塗布されている。塗り壁材80としては、例えば、周知の漆喰を挙げることができる。そして、下地板60及び塗り壁材80により外壁部材30が構成されている。外壁見込み下地面62に塗布された塗り壁材80により、外壁見込み面81が形成される。
【0031】
この場合、窓サッシ10の外縁10aと窓サッシ10の窓開口12の窓開口縁12aとの間の寸法をDとし、窓サッシ10の外縁10aと塗り壁材80によって形成される外壁見込み面81との間の寸法をLとしたとき、L≧0.7Dになるようにしている。
【0032】
従って、この建物の壁構造K及びこれを用いた建物によれば、躯体1を第1断熱材40及び第2断熱材50により被覆したので、断熱性能を大幅に向上させることができる。特に、第2断熱材50は、第1断熱材40に接合しているのでこの間の隙間がなく、また、第2断熱材50は、窓サッシ10の見付け面16と躯体開口2を形成する部材である枠部材5に対応する構造用板17の外面17aとの間に跨って付設されるので、窓サッシ10と躯体開口2との隙間を塞ぐことから、より一層断熱性を向上させることができる。
【0033】
また、第2断熱材50は、第1断熱材40よりも厚さ寸法が大きいので、この第2断熱材50を覆う下地板60による通気層4の幅を確保し易くすることができる。しかも、第2断熱材50は、第1断熱材40とは別体なので、第1断熱材40の厚さに応じてこれより厚さ寸法の大きいものを容易に準備することができ、それだけ調整が容易で構築を容易にすることができる。また、第2断熱材50は、枠部材5に構造用板17を介したビス42で固定されているので、その固定を確実にすることができる。もし、第2断熱材50が窓サッシ10にのみに付設される大きさの場合には、窓サッシ10の見付け面16への取付は容易でない。更に、従来のように逐一バックアップ材及びシール材を設けなくても、第2断熱材50のみで賄うことができる。その結果、耐久性が向上し、コストダウンも図ることができる。
【0034】
更に、塗り壁材80を下地板60の外表面及び外壁見込み下地面62に塗布することにより、外壁部材30を構成することができ、一般に、上記の従来の外壁板に比較して、下地板60及び塗り壁材80は安価なので、この点でもコストダウンを図ることができる。特に、塗り壁材80により外壁見込み下地面62を塗布するので、外壁見込み下地面62を隙間なく覆うことができ、そのため、塗り壁材80によって形成される外壁見込み面81の外観品質を向上させることができる。更にまた、第1断熱材40及び第2断熱材50を設けるので、互いに種類の異なる材質のものを用いることができる。これにより、第1断熱材40として、塗り壁材80が塗布されにくいが断熱性の高い材質のものを選択し、第2断熱材50には、多少断熱性能が劣っても塗り壁材80が塗布し易い材質のものを選択することができ、汎用性を向上させることができる。
【0035】
更にまた、窓サッシ10の外縁10aと窓サッシ10の窓開口12の窓開口縁12aとの間の寸法をDとし、窓サッシ10の外縁10aと第2断熱材50によって形成される外壁見込み下地面62(第2断熱材50の他側面52)との間の寸法をLaとし、窓サッシ10の外縁10aと塗り壁材80によって形成される外壁見込み面81との間の寸法をLとしたとき、La=(0.6~0.9)D、L≧0.7Dになるようにしているので、第2断熱材50と塗り壁材80によって窓サッシ10の見付け面16を7割以上覆うことになることから、窓サッシ10によるヒートブリッジを可能な限り抑制することができ、そのため、より一層断熱性を向上させることができる。
【0036】
また、通気層4を構成する第1断熱材40の表面に保護シート64を敷設した構成としているので、通気層の機能を向上させることができるとともに、断熱性の向上にも寄与することができる。窓サッシ10の下フレーム14側においても、窓サッシ10を支持部材70で支持し、第1断熱材40の端面41に接合される第3断熱材74を設けたので、上記の第1断熱材40,支持部材70及び第3断熱材74により、断熱効果を奏することができる。
【0037】
尚、上記実施の形態においては、第1断熱材40及び第2断熱材50の材質は上述した材質に限定されず、適宜変更して差支えない。但し、第2断熱材50においては、塗り壁材80との合いが良い材質のものを選択することが望ましい。塗り壁材80の材質も上述したものに限定されず、適宜変更して差支えない。また、上記実施の形態において、躯体1の構成,窓サッシ10の下フレーム14側の構成や室内側の構成は、上述したものに限定されず適宜変更して差支えない。当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
K 建物の壁構造
1 躯体
2 躯体開口
3 外面
4 通気層
5 枠部材
6 外面
10 窓サッシ
10a 外縁
11 窓
12 窓開口
12a 窓開口縁
13 上フレーム
14 下フレーム
15 縦フレーム
16 見付け面
17 構造用板
17a 外面
17b 端面
18 スぺーサ
19 防湿シート
20 内装材
21 断熱材
22 窓台
30 外壁部材
31 開放口
40 第1断熱材
41 端面
42 ビス
50 第2断熱材
51 一側面
52 他側面
53 ビス
60 下地板
61 開放端面
62 外壁見込み下地面
63 胴縁
64 保護シート
70 支持部材
72 一側面
73 他側面
74 第3断熱材
75 水切り板
76 コーキング材
80 塗り壁材
81 外壁見込み面
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
上記窓サッシの下フレームを上記躯体開口を形成する部材に支持部材を介して支持し、該窓サッシの下フレームに対応し上記窓開口の窓開口縁より外側に上記第1断熱材の端面に接合される一側面及び上記窓開口縁側の他側面を有した第3断熱材を設け、上記支持部材に、上記第3断熱材の他側面,下地板の開放端面を覆う水切り板を設けたことを特徴とする請求項2記載の建物の壁構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
上記1乃至6何れかに記載の建物の壁構造を備えた建物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
そして、必要に応じ、上記窓サッシの下フレームを上記躯体開口を形成する部材に支持部材を介して支持し、該窓サッシの下フレームに対応し上記窓開口の窓開口縁より外側に上記第1断熱材の端面に接合される一側面及び上記窓開口縁側の他側面を有した第3断熱材を設け、上記支持部材に、上記第3断熱材の他側面,下地板の開放端面を覆う水切り板を設けた構成としている。水切り板を設ける窓サッシの下フレームにおいても、第1断熱材,支持部材及び第3断熱材により、断熱効果を奏することができる。