IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社富士テクニカルリサーチの特許一覧

特開2023-31418点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム
<>
  • 特開-点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム 図1
  • 特開-点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム 図2
  • 特開-点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム 図3
  • 特開-点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム 図4
  • 特開-点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム 図5
  • 特開-点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム 図6
  • 特開-点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム 図7
  • 特開-点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031418
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20230302BHJP
【FI】
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136882
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500233049
【氏名又は名称】株式会社富士テクニカルリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】大場 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博泰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公一朗
(72)【発明者】
【氏名】名取 孝
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AM05
(57)【要約】
【課題】
点群データの計測量を削減し、電線の張力推定を可能とする技術を提供すること
【解決手段】
点群データから電線をモデル化して点検支援する為の点検支援装置であって、前記点検支援装置は、処理部及び、記憶部を備え、前記記憶部は、3次元の座標点を複数含む点群データを格納し、前記処理部は、前記座標点を3次元空間にプロットして表示処理し、前記表示処理された座標点の中から、電線の始点、終点及び、それらの中間に存在する中間点の指定を受け付けて、3点の基準座標点を決定し、3点の前記基準座標点を通る平面上に前記基準座標点を射影して2次曲線を算出し、電線の中心線を決定し、前記中心線に基づいて電線の3次元モデルを決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点群データから電線をモデル化して点検支援する為の点検支援装置であって、
前記点検支援装置は、処理部及び、記憶部を備え、
前記記憶部は、3次元の座標点を複数含む点群データを格納し、
前記処理部は、前記座標点を3次元空間にプロットして表示処理し、
前記表示処理された座標点の中から、電線の始点、終点及び、それらの中間に存在する中間点の指定を受け付けて、3点の基準座標点を決定し、
3点の前記基準座標点を通る平面上に前記基準座標点を射影して2次曲線を算出し、電線の中心線を決定し、
前記中心線に基づいて電線の3次元モデルを決定する、
点検支援装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記点群データとして、前記座標点に加えて、点群データを計測した地点の3次元座標を示す計測点を格納し、
前記処理部は、指定された前記始点、終点及び、中間点の1又は複数を、前記計測点から見て奥手方向に移動させ、前記基準座標点を決定する、
請求項1に記載の点検支援装置。
【請求項3】
前記記憶部は、電線の径に係る情報を格納し、
前記処理部は、前記基準座標点を決定する際に、前記計測点並びに、前記始点、終点又は、中間点を結んだ直線上を、前記計測点から離れる方向に、電線の半径分移動させた点を、前記基準座標点とする、
請求項2に記載の点検支援装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記中心線が通る、ある3次元座標点について、点群データ中からその近傍に位置する近傍座標点を取得し、
新たな中心線を決定するための2次元曲線を、取得した前記近傍座標点に基づいて決定する、
請求項1~3の何れかに記載の点検支援装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記近傍座標点を取得する際に、前記中心線の伸長方向に所定の間隔を設定し、前記間隔内に含まれた前記点群データ中の座標点を、前記中心線を直交方向乃至は鉛直方向に切り取る平面上に投影して、前記座標点が前記中心線近傍に位置するか否かを決定する、
請求項4に記載の点検支援装置。
【請求項6】
点群データから電線をモデル化して点検支援する為の点検支援方法であって、
下に凸形状の円弧を描く電線が視認可能な方向に位置する1又は複数の計測点から、計測装置が、3次元の座標点を複数含む点群データを計測するステップと、
点検支援装置が、前記点群データを格納するステップと、
前記座標点を3次元空間にプロットして表示処理するステップと、
前記表示処理された座標点の中から、電線の始点、終点及び、それらの中間に存在する中間点の指定を受け付けて、3点の基準座標点を決定するステップと、
3点の前記基準座標点を通る平面上に前記基準座標点を射影して2次曲線を算出し、電線の中心線を決定するステップと、
前記中心線に基づいて電線の3次元モデルを決定するステップと、を有する、
点検支援方法。
【請求項7】
前記計測点は、前記下に凸形状の円弧の水平方向略中央に相対する、
請求項6に記載の点検支援方法。
【請求項8】
点群データから電線をモデル化して点検支援する為の点検支援プログラムであって、
コンピュータを点検支援装置として機能させ、
前記点検支援装置は、処理部及び、記憶部を備え、
前記記憶部は、3次元の座標点を複数含む点群データを格納し、
前記処理部は、前記座標点を3次元空間にプロットして表示処理し、
前記表示処理された座標点の中から、電線の始点、終点及び、それらの中間に存在する中間点の指定を受け付けて、3点の基準座標点を決定し、
3点の前記基準座標点を通る平面上に前記基準座標点を射影して2次曲線を算出し、電線の中心線を決定し、
前記中心線に基づいて電線の3次元モデルを決定する、
点検支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検支援装置、点検支援方法及び点検支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、点群データを用いて、電線(ケーブル・ワイヤ)の計測や検査、シミュレーションの為の技術が提供されている。点群データから電線を3次元モデル化し、張力を推定する技術が、例えば、特許文献1~3において提案されている。点群データを用いてワイヤモデルを生成する技術が、例えば、特許文献4において提案されている。点群データを用いてトロリ線の高さを計測する技術が、例えば、特許文献5において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-098126号公報
【特許文献2】特開2017-156179号公報
【特許文献3】特開2015-078849号公報
【特許文献4】特開2019-109839号公報
【特許文献5】国際公開第2017/103999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線の張力検査や電線同士の干渉を検査・シミュレーション等するために、点群データから電線の3次元モデルを生成することが行われるが、このようなモデル化のためには、十分な点群数の点群データを用意する必要がある。一方で、上記特許文献1~5は、点群データから電線をモデル化する際の点群数削減に寄与する技術を開示していない。
【0005】
また、別の観点では、上記特許文献1~5に開示の技術は、電線の点群データ以外に、電柱や線路等についてもモデル化することで電線を判別する技術を開示していることから、電線のモデル化に向けた十分な点群数に加えて、更に、周辺設備についても十分な点群数の点群データを用意する必要があった。
【0006】
上記事情を鑑みて、本発明は、点群データから電線をモデル化する際の点群数削減に寄与する点検支援技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記発明を解決するために、本発明は、点群データから電線をモデル化して点検支援する為の点検支援装置であって、
前記点検支援装置は、処理部及び、記憶部を備え、
前記記憶部は、3次元の座標点を複数含む点群データを格納し、
前記処理部は、前記座標点を3次元空間にプロットして表示処理し、
前記表示処理された座標点の中から、電線の始点、終点及び、それらの中間に存在する中間点の指定を受け付けて、3点の基準座標点を決定し、
3点の前記基準座標点を通る平面上に前記基準座標点を射影して2次曲線を算出し、電線の中心線を決定し、
前記中心線に基づいて電線の3次元モデルを決定する。
【0008】
また、本発明は、点群データから電線をモデル化して点検支援する為の点検支援方法であって、
下に凸形状の円弧を描く電線が視認可能な方向に位置する1又は複数の計測点から、計測装置が、3次元の座標点を複数含む点群データを計測するステップと、
点検支援装置が、前記点群データを格納するステップと、
前記座標点を3次元空間にプロットして表示処理するステップと、
前記表示処理された座標点の中から、電線の始点、終点及び、それらの中間に存在する中間点の指定を受け付けて、3点の基準座標点を決定するステップと、
3点の前記基準座標点を通る平面上に前記基準座標点を射影して2次曲線を算出し、電線の中心線を決定するステップと、
前記中心線に基づいて電線の3次元モデルを決定するステップと、を有する。
また、本発明の好ましい形態では、前記計測点は、前記下に凸形状の円弧の水平方向略中央に相対する。
【0009】
また、本発明は、点群データから電線をモデル化して点検支援する為の点検支援プログラムであって、
コンピュータを点検支援装置として機能させ、
前記点検支援装置は、処理部及び、記憶部を備え、
前記記憶部は、3次元の座標点を複数含む点群データを格納し、
前記処理部は、前記座標点を3次元空間にプロットして表示処理し、
前記表示処理された座標点の中から、電線の始点、終点及び、それらの中間に存在する中間点の指定を受け付けて、3点の基準座標点を決定し、
3点の前記基準座標点を通る平面上に前記基準座標点を射影して2次曲線を算出し、電線の中心線を決定し、
前記中心線に基づいて電線の3次元モデルを決定する。
【0010】
このような構成とすることで、表示処理された点群データから任意の座標点を指定して、それに基づいて電線のモデル化を実行することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記記憶部は、前記点群データとして、前記座標点に加えて、点群データを計測した地点の3次元座標を示す計測点を格納し、
前記処理部は、指定された前記始点、終点及び、中間点の1又は複数を、前記計測点から見て奥手方向に移動させ、前記基準座標点を決定する。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記記憶部は、電線の径に係る情報を格納し、
前記処理部は、前記基準座標点を決定する際に、前記計測点並びに、前記始点、終点又は、中間点を結んだ直線上を、前記計測点から離れる方向に、電線の半径分移動させた点を、前記基準座標点とする。
【0013】
このような構成とすることで、点群データをオフセット処理して、電線の特に中心線の座標を補正することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記処理部は、前記中心線が通る、ある3次元座標点について、点群データ中からその近傍に位置する近傍座標点を取得し、
新たな中心線を決定するための2次元曲線を、取得した前記近傍座標点に基づいて決定する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記処理部は、前記近傍座標点を取得する際に、前記中心線の伸長方向に所定の間隔を設定し、前記間隔内に含まれた前記点群データ中の座標点を、前記中心線を直交方向乃至は鉛直方向に切り取る平面上に投影して、前記座標点が前記中心線近傍に位置するか否かを決定する。
【0016】
このような構成とすることで、計測した点群データに基づいて、推定した電線モデルの中心線の座標を補正することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、点群データから電線をモデル化する際の点群数削減に寄与する点検支援技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態の点検支援装置の構成を示すブロック図。
図2】一実施の形態の点群データの計測例。
図3】一実施の形態の点検支援の処理フローチャート。
図4】一実施の形態の点検支援画面の画面表示例。
図5】一実施の形態の点検支援画面の画面表示例。
図6】一実施の形態の座標点を奥手方向に移動する際の概念図。
図7】一実施の形態の近傍座標点を取得する際の概念図。
図8】一実施の形態の点検支援画面の画面表示例。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。図面には好ましい実施形態が示されている。しかし、多くの異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。
【0020】
例えば、本実施形態では点検支援プログラムを実行する点検支援装置の構成、動作等について説明するが、実行される方法、システム、コンピュータプログラム(点検支援プログラム)等によっても、同様の作用効果を奏することができる。本実施形態における点検支援プログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記録媒体に格納され、提供されてもよく、ネットワークを通じてダウンロード可能に提供されてもよい。
【0021】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらハードウェア資源によって具体的に実現され得るソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含み得る。本実施形態において「情報」とは、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)及びメモリ(Memory)等を適宜組み合わせることによって実現される回路である。即ち、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等を含むものである。
【0022】
<点検支援装置1>
図1は、一実施の形態の点検支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、点検支援装置1は、ハードウェア構成として、処理部11、記憶部12、通信部13、入力部14及び、出力部15を備える。
【0023】
処理部11は、CPU等の1又は2以上のプロセッサを含み、本発明に係る点検支援プログラム、OSやブラウザソフト、その他のアプリケーションを実行することで、点検支援装置1の動作処理全体を制御する。
【0024】
記憶部12は、HDD、ROM、RAM等であって、本発明に係る点検支援プログラム及び、処理部11がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。処理部11が、記憶部12に記憶されている点検支援プログラムに基づき、処理を実行することによって、後述する機能構成が実現される。
【0025】
通信部13は、通信ネットワークとの通信制御を実行して、点検支援装置1を動作させるために必要な入力や、動作結果に係る出力を行う。
【0026】
入力部14は、タッチパネル、マウス及びキーボード等であって、利用者による操作要求を処理部11に入力する。出力部15は、ディスプレイ等であって、処理部11の処理の結果等を表示する。
【0027】
点検支援装置1は、機能構成要素として、表示処理手段101、指定手段102、形状決定手段103、評価手段104及び、データベースDBを備える。これら機能構成要素は、点検支援装置1のハードウェア(処理部11等)がソフトウェア(点検支援プログラム)を実行することで実現される。
【0028】
なお、点検支援装置1として、汎用のサーバ向けのコンピュータやパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。また、複数のコンピュータを用いて点検支援装置1が備えた機能構成要素を提供することも可能である。クライアント端末でその機能を実現する為に、点検支援プログラムを実行するサーバを点検支援装置としてもよい(いわゆるサーバクライアントシステム)。
【0029】
表示処理手段101は、点検支援画面を表示処理し、表示処理結果を出力部15に送信する。点検支援画面は、入力部14を介した入力を受け付け可能に構成され、指定手段102は、点検支援画面を介して、電線のモデル化の為のパラメータの指定や、座標点の指定、電線モデルを用いたシミュレーション用のパラメータの指定等の操作入力を受け付ける。
【0030】
形状決定手段103は、利用者が指定した座標点及び、固定値としての第1パラメータに基づいて、電線のモデル形状を決定する。
【0031】
評価手段104は、形状決定手段103が決定したモデル形状に基づき、電線の張力を推定する。また、評価手段104は、形状決定手段103が決定したモデル形状、変数値としての第2パラメータに基づいて、電線モデル1300の可動領域を決定する。「電線モデル1300の可動領域を決定する」とは、電線モデル1300が示す電線等の細線状構造物が弛む等してその形状・分布が変化する際に当該細線状構造物がとりうる(存在し得る)空間上の領域をシミュレーションすることを指す。
【0032】
<点群データ1000>
点群データは、図2に示すような方法で3次元計測器(計測装置)を用いて計測した3次元座標群であり、計測を行った場所の座標である計測点(計測原点)が対応付けされている。3次元計測器SCは、点群データを計測可能な3次元レーザスキャナ等である。
【0033】
図2(a)は、計測対象である電線CA及び、3次元計測器SCの位置関係を示す図である。符号STは、電線CAを支持する支持体(例えば架線柱や電柱、鉄塔等)である。
【0034】
点群データ1000は、例えば、図2(b)のように、電線CAを俯瞰した時に、電線CAが支持体STに支持される始点SP及び終点EP並びに、計測点MPが鈍角三角形を形成する位置を少なくとも含む、1つ又は、二つ以上の位置で計測された点群であって良い。また、別の方法では、点群データ1000は、例えば、図2(c)のように、電線CAを俯瞰して、電線CAに平行に向いた時、電線CAの始点におよそ相対する第1の計測点MP1、始点及び終点の中間にある中間点におよそ相対する第2の計測点MP2及び、終点におよそ相対する第3の計測点MP3の3つ以上の位置で計測された点群であって良い。それぞれの位置で計測された点群データには、それぞれの計測点(計測原点)が対応付けされる。
【0035】
<第1パラメータ1100>
第1パラメータ1100は、検査等対象である電線固有の既知の物理量(固定値)を示す。固定値は、例として、電線の設計の段階で一意に決まる設計パラメータであり、例として、電線モデル1300を作成する電線の単位重量、断面積、弾性係数、線膨張係数等の1又は複数であり、電線の特徴を示すような設計パラメータであればその種別に制限はない。電線の径(半径)について、第1パラメータとして登録されていてもよい。
【0036】
<第2パラメータ1200>
第2パラメータ1200は、例として、電線モデル1300における外的要因と対応する物理量の範囲を示す。本明細書中の説明における「外的要因」とは、例として、環境要因を指し、例として、電線(電線モデル1300)に対して外力として付与される温度(気温)や、風力、張力、電線モデル1300の積雪の度合いを示すような被氷度である。これら第2パラメータの範囲に基づいて、評価手段104は、電線モデル1300の可動領域をシミュレーションする。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係る第2パラメータ1200を構成するパラメータは、例として、電線モデル1300が示す電線等の細線状構造物に対して、鳥獣等の移動体がその重量を重力方向に印加する等して発生する外力であってよい。また、例として、電線モデル1300が示す電線等の細線状構造物に対して、地震等の振動に起因して付与される外力であってよい。
【0038】
<電線モデル1300>
データベースDBは、形状決定手段103が決定した電線モデル1300を格納する。電線モデル1300は、例えば、電線モデルの中心線が通る3次元座標のセットや、電線の径(半径)等である。径(半径)は、第1パラメータ1100としてデータベースDBに登録された値を参照してもよい。
【0039】
<点検支援方法>
次いで、図3~8を用いて、本発明の一実施形態に係る点検支援方法について説明する。図3は、点検支援の処理フローチャートである。まず、表示処理手段101は、座標点を3次元空間にプロットして点検支援画面を表示処理し、表示処理結果を出力部15に送信する。これにより、利用者は、点検支援画面を表示させる。
【0040】
図4は、点検支援画面の画面表示例である。表示処理手段101は、点群データ1000を3次元座標系にプロットすることで図示例の如く点検支援画面を表示処理し、表示処理結果を出力部15に送信する。なお、点群データの座標又は、点検支援装置1に取り込まれた座標の座標系は、重力方向をZ軸として、その軸にX-Y平面が直交した3次元直交座標系とする。
【0041】
ステップS301(以降、単にS301と呼称する)では、指定手段102は、電線のモデル化の為の座標点の入力を受け付ける。本実施形態では、指定手段102は、表示処理された座標点の中から、電線の(仮の)始点、終点及び、それらの中間に存在する中間点の指定を受け付ける。図5は、点検支援画面の画面表示例である。利用者は、図5の如く、入力部14を介して、点検支援画面上にプロットされた点群から、始点、終点及び、中間点と考える所望の座標点を3点指定する。なお、これらの座標点は、利用者が任意に指定する座標点であり、厳密に電線の始点や終点を意味する座標点が指定される必要はない。同様に、中間点は、始点と終点の間にある座標点であればよく、必ずしもこれらのちょうど中間に位置する必要はない。
【0042】
S302では、指定手段102は、電線の規格の指定を受け付ける。受け付けた規格は、第1パラメータ1100としてデータベースDBに格納される。本実施形態では、指定手段102を介して、電線の径又は半径が、第1パラメータ1100として格納される。
【0043】
S303では、形状決定手段103は、指定された始点、終点及び、中間点の1又は複数を、計測点から見て奥手方向に移動させ、基準座標点を決定する。S303では、基準座標点を決定する際に、計測点並びに、S301で指定した始点、終点又は、中間点を結んだ直線上を、計測点から離れる方向に、電線の半径分移動させた点を、基準座標点とする。
【0044】
図6は、座標点を奥手方向に移動する際の概念図である。選択した座標点Pと、座標点Pを含む点群データの計測点MPを結んだ直線方向に、Pを半径RA分移動させた点P’を決定する。レーザスキャナで計測した点群データは電線CAの外側の座標を示しており、それを電線の中心線の座標にオフセット処理する為に、座標点を奥手方向に移動する。
【0045】
S304では、形状決定手段103は、全体座標系のZ軸方向をY軸とする2次元平面を作成する。そして、S305では、S304で生成した2次元平面に、S303で決定した基準座標点を射影する。更に、S306では、2次元平面上の3点から2次曲線を算出する。これにより、形状決定手段103は、3点の基準座標点を通る2次元平面上に基準座標点を射影して2次曲線を算出する。
【0046】
S307では、形状決定手段103は、作成した2次曲線の周辺の点群を取得し、S308では、取得した点群に最もフィットするように、2次曲線を変更する。形状決定手段103は、決定した2次曲線を3次元空間に逆射影変換した時の仮の電線モデルの中心線が通る座標点について、点群データ中からその近傍に位置する近傍座標点を取得する。そして、この近傍座標点に基づいて、新たな電線の中心線を決定するための2次元曲線を決定する。この近傍座標点は、S303と同様に、オフセット処理が施された座標であってもよい。
【0047】
図7は、近傍座標点を取得する際の概念図である。図7(a)のように、形状決定手段103は、近傍座標点を取得する際に、仮の中心線CLが示す電線CAの伸長方向に所定の間隔Aを設定し、間隔A内に含まれた点群データ中の座標点を、中心線CLが示す電線CAを直交方向乃至は鉛直方向に切り取る平面上に投影する(図示例は直交方向)。図7(b)は、投影した平面を示し、座標点が仮の中心線近傍に位置するか否かを決定する。ここで、例えば、中心線CLからRI(<半径RA)以上離れており、RO(>半径RA)以内の領域に位置する座標点を、近傍座標点とする。
【0048】
これらの近傍座標点について、例えばRIが描く曲線(電線の断面縁形)との最小二乗距離等を求めて中心線(点)CLを移動することで、中心線座標を最適化する。又は、これらの近傍座標点を、仮の中心線CLを含む2次元平面(上記2次曲線が描かれる平面)に投影し、最小二乗距離等を求めて、真の(より最適な)中心線CLを算出してもよい。
【0049】
S309では、形状決定手段103は、決定した電線の(真の)中心線に基づいて電線の3次元モデルを決定し、電線モデル1300をモデリング/形状決定する。形状決定手段103は、決定した電線モデル1300をデータベースDBに格納する。
【0050】
<始点及び/又は終点の調整>
なお、形状決定手段103が、電線の(真の)中心線を決定した後、表示処理手段101は、電線モデル1300又は、その中心線を、点群データと共に表示処理し、表示処理結果を出力部15に送信する。図8は、点検支援画面の画面表示例であり、点検支援画面に点群データと共に電線モデル1300を表示する際の画面表示例を示す。ここで、利用者は、入力部14を操作して点群又は中心線上の座標を選択してよく、指定手段102は、選択された点群又は中心線上の座標を、(真の)始点又は終点として指定を受け付けてよい。指定手段102は、始点及び/又は終点の指定を受け付けたなら、電線モデル1300における始点及び/又は終点の座標値を更新してよい。これにより、中心線の始端及び/又は終端を伸縮することができる。
【0051】
<張力の算出>
評価手段104は、形状決定手段103により決定された電線のモデル形状に基づき、電線の張力を推定する。データベースDBが第1パラメータ1100として電線の単位重量を格納する場合、評価手段104は、中心線の二次曲線モデルの2次係数及び、単位重量に基づいて、電線の張力を算出する。また、その他の第1パラメータ1100を用いて張力等を算出してよいし、張力以外の値を算出してもよい。
【0052】
<可動領域の推定>
評価手段104は、形状決定手段103により決定された形状、変数値(範囲)としての第2パラメータ1200に基づいて、電線モデル1300の可動領域を決定する。
【0053】
評価手段104は、中心線が成す平面と平行なX軸を定義し、X軸に直交するY軸方向及びZ軸方向からなる投影平面YZを新たに定義する。投影平面YZは、中心線の始点から終点までの間に、任意の間隔で複数枚定義されてよい。評価手段104は、電線モデル1300を投影平面YZ上に投影し、2次元形状の可動領域を決定する。この時、評価手段104は、電線に第2パラメータ1200に基づくエネルギーを与え、投影平面YZ上での電線の軌跡を記録する。この軌跡に基づいて2次元形状の可動領域が決定される。X軸方向に隣り合う投影平面YZを新たに定義できるとき、処理は、次の投影平面YZの定義に移行する。隣り合う投影平面YZを新たに定義できないとき、評価手段104は、それぞれの投影平面YZのそれぞれの可動領域を結合し3次元形状の可動領域を決定する。
【0054】
ここで、二つの電線が近接する場合(例えば、図2(a)のように上下に並ぶ場合)、上下に並んだ電線のそれぞれについて3次元形状の可動領域を決定し、それらを合成することで、両電線の干渉をシミュレーションすることができる。
【0055】
本明細書中の説明における「電線」は、既知又は慣用の電線を示し、架線、電話線、電車線、通信線、空中線、接触線及び架空線、架空地線、架空電線等を含む細線状構造物を指す。
【符号の説明】
【0056】
1 :点検支援装置
11 :処理部
12 :記憶部
13 :通信部
14 :入力部
15 :出力部
101 :表示処理手段
102 :指定手段
103 :形状決定手段
104 :評価手段
1000 :点群データ
1100 :第1パラメータ
1200 :第2パラメータ
1300 :電線モデル
CA :電線
ST :支持体
SC :3次元計測器
SP :始点
EP :終点
MP :計測点
MP1 :第1の計測点
MP2 :第2の計測点
MP3 :第3の計測点
P :座標点
RA :半径
CL :中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8