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特開2023-31462紙幣整列機構及びこれを用いた紙幣識別装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031462
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】紙幣整列機構及びこれを用いた紙幣識別装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/17 20190101AFI20230302BHJP
   B65H 9/00 20060101ALI20230302BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20230302BHJP
   G07D 11/237 20190101ALI20230302BHJP
【FI】
G07D11/17
B65H9/00 H
B65H5/06 H
G07D11/237
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136958
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】田川 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬一
(72)【発明者】
【氏名】成沢 重樹
【テーマコード(参考)】
3E141
3F049
3F102
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA06
3E141DA08
3E141FG04
3E141FG12
3E141FG15
3E141FG17
3F049AA02
3F049DA12
3F049DA19
3F049DB04
3F049EA24
3F049LA08
3F049LB04
3F102AA15
3F102AB03
3F102BA02
3F102BB01
3F102DA10
3F102FA08
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により紙幣を整列させることが可能な紙幣整列機構及びこれを用いた紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】紙幣整列機構10は、複数の紙幣搬送部20が設けられた搬送経路11と、搬送経路11上を搬送される紙幣をセンタリングする幅寄せ機構30とを備える。紙幣搬送部20は、駆動モータ25によって駆動される搬送ローラ21と、搬送経路を挟んで搬送ローラ21と対向する従動ローラ22とを有する。搬送ローラ21は、摩擦抵抗が高いグリップ面21gが間欠的に設けられた間欠ローラであり、グリップ面21gが設けられていない搬送ローラ21の外周面は、グリップ面21gよりも摩擦抵抗が低い平滑面21sである。グリップ面21gは従動ローラ22との間で搬送経路11上の紙幣をニップし、平滑面21sは従動ローラ22との間で搬送経路11上の紙幣をニップしない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙幣搬送部が設けられた搬送経路と、
前記搬送経路上を搬送される紙幣を整列させる幅寄せ機構とを備え、
前記紙幣搬送部は、駆動モータによって駆動される搬送ローラと、前記搬送経路を挟んで前記搬送ローラと対向する従動ローラとを有し、
前記搬送ローラは、摩擦抵抗が高いグリップ面が間欠的に設けられた間欠ローラであり、
前記グリップ面は前記従動ローラとの間で前記搬送経路上の紙幣をニップし、
前記グリップ面が設けられていない前記搬送ローラの外周面は前記従動ローラとの間で前記搬送経路上の紙幣をニップしない非グリップ面であることを特徴とする紙幣整列機構。
【請求項2】
前記グリップ面は、前記搬送ローラの外周面上の周方向の位置が180度異なる2カ所に設けられている、請求項1に記載の紙幣整列機構。
【請求項3】
前記搬送ローラと前記従動ローラとの間に前記紙幣が介在しておらず且つ前記グリップ面が前記従動ローラと対向しているとき、前記グリップ面は前記従動ローラに接触しており、
前記搬送ローラと前記従動ローラとの間に前記紙幣が介在しておらず且つ前記非グリップ面が前記従動ローラと対向しているとき、当該非グリップ面は前記従動ローラに接触しない、請求項1又は2に記載の紙幣整列機構。
【請求項4】
前記複数の紙幣搬送部の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記幅寄せ機構により前記紙幣を整列させる時に前記非グリップ面を前記従動ローラと対向させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紙幣整列機構。
【請求項5】
前記紙幣が幅寄せ位置に到達したことを検出する紙幣検知センサをさらに備え、
前記制御部は、前記紙幣が幅寄せ位置に到達したとき、前記非グリップ面が前記従動ローラと対向する位置で前記搬送ローラの回転を停止する、請求項4に記載の紙幣整列機構。
【請求項6】
前記幅寄せ機構は、前記搬送経路の両側に設けられて前記搬送経路の幅を規定する一対のガイド片と、前記搬送経路の中央に対する前記一対のガイド片の近接離反動作を制御するラックアンドピニオン機構と、前記ラックアンドピニオン機構を通じて前記一対のガイド片を駆動する駆動部を含み、前記駆動部は、前記一対のガイド片に与えるトルクを制限するトルクリミッタを含み、前記一対のガイド片は前記紙幣をセンタリングする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の紙幣整列機構。
【請求項7】
前記搬送経路は、直進通路と曲がり通路を有し、
前記幅寄せ機構は、前記曲がり通路の位置に設けられている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の紙幣整列機構。
【請求項8】
搬送経路上を搬送される紙幣を整列させる請求項1乃至7のいずれか一項に記載の紙幣整列機構と、
前記紙幣整列機構よりも前記搬送経路の後段に設けられ、前記搬送経路を通過する前記紙幣の真贋及び金種の少なくとも一方を識別する紙幣識別部とを備え、
前記紙幣識別部は、前記搬送経路の幅方向中央に配置された識別センサを含むことを特徴とする紙幣識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を搬送経路の幅方向の中央に整列させる紙幣整列機構及びこれを用いた紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機などは還流式紙幣処理装置を備えている。還流式紙幣処理装置は、入金された紙幣の真贋及び金種を識別し、正しく識別できた紙幣は金庫又は還流式紙幣収納部に収納され、正しく識別できなかった紙幣は返却される。
【0003】
日本で発行されている紙幣の幅(横幅)は、千円札、二千円札、五千円札、一万円札の何れも76mmと同一であり、長さ(縦幅)だけが金種ごとに異なる。そのため、紙幣識別装置内で紙幣を搬送して識別する際、紙幣の搬送経路や識別部、収納部を一定幅で構成することで紙幣を良好に整列させた状態で搬送することができる。
【0004】
一方、ユーロ紙幣や中国紙幣などはその横幅が金種ごとに異なっている。このような金種ごとに横幅が異なる紙幣を一定幅の搬送経路上で搬送しようとすると、横幅の狭い紙幣が搬送経路の一方側に片寄った状態、或いは搬送方向に対して斜めに傾いた(スキューした)状態で搬送されるおそれがある。このような状態では、搬送経路内で紙幣の横幅方向の位置が定まらないため、紙幣の既定の場所から紙幣の特徴を光学的或いは磁気的に読み取って識別を行うことができない。すなわち、横幅の狭い紙幣を識別することができない。
【0005】
この問題を解決するためには、紙幣を搬送経路の幅方向の中央に整列させるセンタリングを行うことが望ましい。紙幣をセンタリングする場合には、搬送経路の幅方向の中央に識別センサを配置することにより、金種(紙幣の横幅)に寄らず紙幣の幅方向の中央の特徴を必ず読み取ることができ、紙幣の識別精度を高めることができる。
【0006】
紙幣を搬送経路の幅方向の中央に整列させる紙幣整列機構に関し、例えば特許文献1には、紙幣をその左右から挟持して紙幣搬送部の中心方向に案内する一対の紙幣ガイドを有する紙幣位置案内機構が記載されている。紙幣位置案内機構のソレノイドが駆動されてカムが一方向に回転すると、カムに設けられたカムピンが紙幣ガイドから外れ、一対の紙幣ガイドは移動バネの力で紙幣搬送部の中心方向に移動するので、紙幣のセンタリング及びスキュー補正を行うことができる。
【0007】
また特許文献2には、スプリングの弾力によって一対の可動片が整合位置に移動することで、紙葉類の中心軸を搬送経路の中心軸に整合させる紙葉類整合搬送装置が記載されている。一対の可動片が整合位置に移動する際、可動ローラがカム機構により紙葉類から離間する方向に移動し、その後、一対の可動片は、スプリングの弾性力によって紙葉類の側縁に接触するので、紙葉類をセンタリングすることができる。また搬送経路は直進通路と曲がり通路を備え、紙幣の側縁に当接する可動片の接触面は、曲がり通路に沿って湾曲した紙幣の側縁に当接するので、紙幣の腰を強くして確実にセンタリングすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-172818号公報
【特許文献2】特開2018-205991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の紙幣整列機構は、一対の紙幣ガイドが紙幣搬送部の中心方向に移動して紙幣のセンタリングとスキュー補正を行う際、紙幣搬送ローラがその左右方向(紙幣の短手方向)に移動自在となり、紙幣と一緒に紙幣搬送部の中心方向に移動するように構成されているため、機構が複雑であり、紙幣のセンタリングとスキュー補正を正しく行うことができないおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に記載された従来の紙幣整列機構は、一対の可動片が互いに近接する整合位置に移動を開始したとき、可動ローラがその回転軸ごと搬送ローラから離間して紙幣の押圧が解除されるように構成されているため、機構が複雑であり、装置の信頼性及び耐久性に欠けるという問題がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、簡単な構成により紙幣をセンタリングすることが可能な紙幣整列機構及びこれを用いた紙幣識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明による紙幣整列機構は、複数の紙幣搬送部が設けられた搬送経路と、前記搬送経路上を搬送される紙幣を整列させる幅寄せ機構とを備え、前記紙幣搬送部は、駆動モータによって駆動される搬送ローラと、前記搬送経路を挟んで前記搬送ローラと対向する従動ローラとを有し、前記搬送ローラは、摩擦抵抗が高いグリップ面が間欠的に設けられた間欠ローラであり、前記グリップ面は前記従動ローラとの間で前記搬送経路上の紙幣をニップし、前記グリップ面が設けられていない前記搬送ローラの外周面は前記従動ローラとの間で前記搬送経路上の紙幣をニップしない非グリップ面であることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、搬送ローラを用いて紙幣を搬送できると共に、搬送ローラの回転を停止するタイミングを制御するだけで紙幣が搬送ローラにグリップされた状態を解除して紙幣を整列可能な状態にすることができる。
【0014】
本発明において、前記グリップ面は、前記搬送ローラの外周面上の周方向の位置が180度異なる2カ所に設けられていることが好ましい。この場合において、前記搬送ローラの全周に対する前記グリップ面の周方向の占有率は、0.1~0.33であることが好ましく、0.2~0.3であることが特に好ましい。この構成によれば、紙幣の搬送と紙幣の整列の両方を確実に行うことができる。
【0015】
前記搬送ローラと前記従動ローラとの間に前記紙幣が介在しておらず且つ前記グリップ面が前記従動ローラと対向しているとき、前記グリップ面は前記従動ローラに接触しており、前記搬送ローラと前記従動ローラとの間に前記紙幣が介在しておらず且つ前記非グリップ面が前記従動ローラと対向しているとき、当該非グリップ面は前記従動ローラに接触しないことが好ましい。この構成によれば、紙幣の搬送と紙幣の整列の両方を確実に行うことができる。
【0016】
本発明による紙幣整列機構は、前記複数の紙幣搬送部の動作を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記幅寄せ機構により前記紙幣を整列させる時に前記非グリップ面を前記従動ローラと対向させることが好ましい。この構成によれば、複雑な機構や制御を行うことなく、搬送経路内の紙幣を幅寄せ可能な状態にすることができる。
【0017】
本発明による紙幣整列機構は、前記紙幣が幅寄せ位置に到達したことを検出する紙幣検知センサをさらに備え、前記制御部は、前記紙幣が幅寄せ位置に到達したとき、前記非グリップ面が前記従動ローラと対向する位置で前記搬送ローラの回転を停止することが好ましい。
【0018】
本発明において、前記幅寄せ機構は、前記搬送経路の両側に設けられて前記搬送経路の幅を規定する一対のガイド片と、前記搬送経路の中央に対する前記一対のガイド片の近接離反動作を制御するラックアンドピニオン機構と、前記ラックアンドピニオン機構を通じて前記一対のガイド片を駆動する駆動部を含み、前記駆動部は、前記一対のガイド片に与えるトルクを制限するトルクリミッタを含み、前記一対のガイド片は前記紙幣をセンタリングすることが好ましい。この構成によれば、一対のガイド片による紙幣の過度な押し込みを制限して紙幣詰まり等を防止することができる。
【0019】
本発明において、前記搬送経路は、直進通路と曲がり通路を有し、前記幅寄せ機構は、前記曲がり通路の位置に設けられていることが好ましい。この構成によれば、トルクリミッタによる簡易な機構により一対のガイド片による紙幣の過度な押し込みを制限して紙幣詰まり等を防止することができる。
【0020】
また、本発明による紙幣識別装置は、搬送経路上を搬送される紙幣を整列させる上述した本発明による紙幣整列機構と、前記紙幣整列機構よりも前記搬送経路の後段に設けられ、前記搬送経路を通過する前記紙幣の真贋及び金種の少なくとも一方を識別する紙幣識別部とを備え、前記紙幣識別部は、前記搬送経路の幅方向中央に配置された識別センサを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、簡易な構成により紙幣の識別精度を高めることが可能な紙幣識別装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡単な構成により紙幣を整列させることが可能な紙幣整列機構及びこれを用いた紙幣識別装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施の形態による還流式紙幣処理装置の構成を示す略側面断面図である。
図2図2は、紙幣整列機構の構成を示す略平面図である。
図3図3は、紙幣整列機構の略側面断面図である。
図4図4は、紙幣搬送部の構成を示す略断面図である。
図5図5は、紙幣整列機構の一部の構成を示す略断面図である。
図6図6は、幅寄せ機構の構成を示す略斜視図である。
図7図7は、幅寄せ機構の構成を示す略平面図である。
図8図8(a)及び(b)は、従動ローラに対する搬送ローラの向きを説明するための図であって、図8(a)はグリップ面が従動ローラと対向している状態、図8(b)はグリップ面が従動ローラと対向していない状態をそれぞれ示している。
図9図9は、紙幣整列機構の動作を示すフローチャートである。
図10図10は、紙幣整列機構の動作を示す略平面図である。
図11図11は、紙幣整列機構の動作を示す略平面図である。
図12図12は、紙幣整列機構の動作を示す略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態による還流式紙幣処理装置の構成を示す略側面断面図である。
【0026】
図1に示すように、この還流式紙幣処理装置1は、紙幣投入口1aから入金された紙幣Xの真贋及び金種を識別し、正しく識別できた紙幣Xを回収し、正しく識別できなかった紙幣Xや釣銭としての紙幣を出金する入出金部2と、釣銭として還流させる低額の紙幣Xを金種別に収納する第1及び第2の還流式紙幣収納部3A,3Bと、釣銭として還流させない高額の紙幣や第1及び第2の還流式紙幣収納部3A,3Bに収まりきらない低額の紙幣を回収して保管する金庫部4とを備えている。入出金部2、第1及び第2の還流式紙幣収納部3A,3B及び金庫部4は、搬送経路5を介して相互に接続されている。
【0027】
入出金部2は、紙幣投入口1aから入金された紙幣Xの真贋及び金種を識別する紙幣識別部8を含み、紙幣識別部8の前段(上流側)には紙幣整列機構10が設けられている。紙幣投入口1aから入金された紙幣Xは、紙幣整列機構10によってセンタリングされた後、紙幣識別部8に送られる。そのため、紙幣識別部8は、横幅の違いによらず紙幣Xの幅方向の中央の特徴を紙幣Xの長手方向の全体に亘って光学的或いは磁気的に読み取って識別を行うことができ、紙幣Xの識別を容易に行うことができる。
【0028】
図2は、紙幣整列機構10の構成を示す略平面図である。また、図3は、紙幣整列機構10の略側面断面図である。
【0029】
図2及び図3に示すように、紙幣整列機構10は、紙幣の搬送経路11の適所に設けられた複数の紙幣搬送部20と、紙幣を搬送経路11の中央に幅寄せ(センタリング)する幅寄せ機構30とを備えている。複数の紙幣搬送部20は、紙幣を円滑に搬送することができるように搬送経路11に沿って適切な間隔で設けられている。複数の紙幣搬送部20の動作は不図示の制御部によって制御される。
【0030】
幅寄せ機構30よりも紙幣の搬送方向の下流側には紙幣検知センサ15が設けられている。紙幣検知センサ15が紙幣の先端を検知することにより、搬送経路11内を移動する紙幣が幅寄せ機構30の位置に到達したことを検知することができる。紙幣検知センサ15の出力信号は制御部に送られ、複数の紙幣搬送部20の制御に用いられる。
【0031】
紙幣整列機構10の後段には紙幣識別部8の識別センサ9が設けられている。識別センサ9は光センサや磁気センサであり、これらは搬送経路11の幅方向中央に配置されている。
【0032】
図3に示すように、搬送経路11は側面視で直進通路11Aと曲がり通路11Bとを有し、幅寄せ機構30は曲がり通路11Bの位置に設けられている。紙幣をその横幅方向の両端から押してセンタリングする際、紙幣が真っ直ぐに伸びた状態では紙幣の腰が弱いため、紙幣が縦方向に折れ曲がりやすく、紙幣詰まりの原因となる。しかし、曲がり通路11Bに沿って紙幣を折り曲げた場合には紙幣の腰を強くすることができ、紙幣をその横幅方向の両端から押したときに縦方向に折れ曲がりにくくすることができる。
【0033】
図4は、紙幣搬送部20の構成を示す略断面図である。また、図5は、紙幣整列機構10の一部の構成を示す略断面図である。
【0034】
図2図5に示すように、複数の紙幣搬送部20の各々は、搬送ローラ21と従動ローラ22との組み合わせからなり、平面視で搬送経路11の幅方向の中央に配置されている。各搬送ローラ21はタイミングプーリ23及びタイミングベルト24を介して相互に連結されており、搬送用の駆動モータ25(駆動源)によって同期制御される。従動ローラ22は搬送経路11を挟んで対応する搬送ローラ21と対向する位置に設けられており、搬送ローラ21と共に紙幣をニップして搬送する。
【0035】
図4に示すように、紙幣搬送部20は、搬送ローラ21と、搬送経路11を挟んで搬送ローラ21と対向する従動ローラ22とを有している。搬送経路11の上方には搬送経路11の上面を規定する上側搬送ガイド12が設けられており、搬送経路11の下方には搬送経路11の下面を規定する下側搬送ガイド13が設けられている。
【0036】
搬送ローラ21は、摩擦抵抗が高いグリップ面21gが間欠的に設けられた間欠ローラであり、グリップ面21gは従動ローラ22との間で搬送経路11上の紙幣をニップするように構成されている。一方、搬送ローラ21の外周面のうちグリップ面21gの形成領域を除いた領域は、従動ローラ22との間で搬送経路11上の紙幣をニップしないように構成されている。
【0037】
本実施形態による搬送ローラ21のグリップ面21gは、ローラ本体21aの一部に凹部21bを形成し、凹部21b内にゴム片21cを嵌め込むことにより構成したものであり、ゴム片21cの上端面がグリップ面21gを構成している。グリップ面21gはローラ本体21aの外周面よりも僅かに突出している。このとき、搬送ローラ21のローラ本体21aを樹脂又は金属にて構成し、外周面を摩擦抵抗が低い平滑面21sとすることが望ましい。
【0038】
本実施形態において、グリップ面21gは、回転軸21dを挟んで互いに対向する位置に設けられている。すなわち、ゴム片21cは、搬送ローラ21の外周面上の周方向の位置が180度異なる2カ所(すなわち、0度の位置と180度の位置)に設けられている。搬送ローラ21の全周に対するグリップ面21gの周方向の占有率は、0.1~0.33であることが好ましく、0.2~0.3であることが特に好ましい。グリップ面21gの占有率が0.1よりも低い場合にはグリップ力が大幅に悪化し、0.33よりも高い場合には紙幣のセンタリングの際に行う搬送ローラ21の平滑面21sの向きの制御が難しくなるからである。
【0039】
図示のように搬送ローラ21と従動ローラ22との間に紙幣が存在せず、搬送ローラ21のグリップ面21gが従動ローラ22と対向している場合、グリップ面21gは従動ローラ22に接触する。一方、搬送ローラ21の平滑面21sが従動ローラ22と対向しているときには、平滑面21sは従動ローラ22に接触せず、両者の間には僅かな隙間が存在している。そのため、搬送ローラ21の平滑面21sと従動ローラ22との間の紙幣は搬送経路11内で面内方向に動くことができる。このように、搬送ローラ21の平滑面21sは、従動ローラ22との間で紙幣をニップしない非グリップ面を構成している。
【0040】
図5に示すように、搬送ローラ21の一つには搬送ローラ監視センサ28が設けられている。搬送ローラ監視センサ28はパルスプレート28aと光センサ28bとを有し、例えば搬送ローラ21のグリップ面21gが従動ローラ22に接触しているとき光センサ28bがオンとなるように構成されている。各搬送ローラ21の向きは揃っているので、搬送ローラ監視センサ28がオンのときにはすべての搬送ローラ21のグリップ面21gが従動ローラ22の方向を向いた状態となる。逆に、搬送ローラ監視センサ28がオフのときにはすべての搬送ローラ21の平滑面21sが従動ローラ22の方向を向いた状態となる。
【0041】
図6は、幅寄せ機構30の構成を示す略斜視図である。また図7は、幅寄せ機構30の構成を示す略平面図である。
【0042】
図6及び図7に示すように、幅寄せ機構30は、搬送経路11の両側に設けられて搬送経路11の幅を規制する一対のガイド片31A,31Bと、一対のガイド片31A,31Bの近接離反動作を行わせるラックアンドピニオン機構32と、ラックアンドピニオン機構32を通じて一対のガイド片31A,31Bを駆動する駆動モータ38(駆動源)と、ピニオンギヤ34の回転軸34aに固定されたタイミングプーリ35と、駆動モータ38の回転軸38aに固定されたタイミングプーリ37と、ラックアンドピニオン機構32側のタイミングプーリ35と駆動モータ38側のタイミングプーリ37を連結するタイミングベルト36と、ラックアンドピニオン機構32及び駆動モータ38を支持する支持プレート39を含む。一方のガイド片31Aはラックギヤ33Aを介してピニオンギヤ34に連結されており、他方のガイド片31Bはラックギヤ33Bを介してピニオンギヤ34に連結されている。タイミングプーリ35、タイミングベルト36、タイミングプーリ37及び駆動モータ38は、ラックアンドピニオン機構を通じて一対のガイド片31a,31Bを駆動する駆動部を構成している。
【0043】
ラックアンドピニオン機構32側のタイミングプーリ35はトルクリミッタを有しており、これによって駆動モータ38から一対のガイド片31A,31B側に伝達されるトルクが一定以下に制限される。一対のガイド片31A,31Bに一定以上の負荷がかかると、トルクリミッタの作用により回転軸34aが空転し、一対のガイド片31A,31Bによる押し込みが阻止される。そのため、紙幣を押し込む力が強すぎて紙幣が折れ曲がり、搬送経路11内で紙幣詰まりが発生することを防止することができる。紙幣の腰が弱い場合、このようなトルクリミッタによる単純な押し込み制御では紙幣を正しくセンタリングさせることが難しいが、紙幣を折り曲げて腰を強くした部分に一対のガイド片31A,31Bを当ててセンタリングを行うことにより、トルクリミッタを用いた押し込み制御が可能となる。
【0044】
図8(a)及び(b)は、従動ローラ22に対する搬送ローラ21の向きを説明するための図であって、図8(a)は搬送ローラ21のグリップ面21gが従動ローラ22と対向している状態、図8(b)はグリップ面21gが従動ローラ22と対向していない状態をそれぞれ示している。
【0045】
図8(a)に示すように、紙幣を搬送するため搬送ローラ21が回転しているとき、搬送ローラ21のグリップ面21gは周期的に上向きとなり、従動ローラ22と対向するので、このタイミングで紙幣はニップされ、搬送経路11の前方(下流側)に送られる。
【0046】
一方、図8(b)に示すように、グリップ面21gではなく平滑面21sが上向きのときには紙幣はニップされないので、紙幣は下流側に搬送されることなくその位置に留まったままである。しかし、搬送ローラ21が高速回転している場合には、紙幣が頻繁にグリップされて前方に搬送されるので、平滑面21sの影響はほとんどない。
【0047】
図8(a)に示すようにグリップ面21gが上向きのときには紙幣がグリップ面21gにグリップされるため、紙幣をセンタリングすることはできない。そこで、紙幣のセンタリング時には、図8(b)に示すように、搬送ローラ21の平滑面21sが上向きの状態を維持する。この状態では、紙幣が前後左右方向に自由に動くことができるので、搬送ローラ21の制約を受けることなく紙幣のセンタリングが可能である。
【0048】
次に、紙幣整列機構10による紙幣のセンタリング動作について詳細に説明する。
【0049】
図9は、紙幣整列機構10の動作を示すフローチャートである。また、図10図12は、紙幣整列機構10の動作を示す略平面図である。
【0050】
図9に示すように、紙幣の搬送を開始すると、複数の搬送ローラ21が互いに同期しながら回転することにより紙幣が搬送経路11の奥へと搬送される(ステップS1)。紙幣が幅寄せ機構30の設置位置(幅寄せ位置)に到達したことを紙幣検知センサ15が検知したとき、紙幣の搬送動作を一時停止する(ステップS2Y、S3Y、S4)。このとき、搬送ローラ21の回転角度を制御し、搬送ローラ監視センサ28がオフ(ステップS3Y)のとき、つまり搬送ローラ21のグリップ面21gではなく平滑面21sが上方を向いているときに搬送ローラ21の駆動を停止する(ステップS4)。
【0051】
こうして紙幣のニップ状態を解除した後、紙幣のセンタリング動作を開始する(ステップS5)。紙幣のセンタリング動作では、幅寄せ機構の駆動モータを一定時間動作させて一対のガイド片を近接方向に移動させる。
【0052】
図10に示すように、紙幣Xの長手方向が進行方向に対して斜めに傾いて搬送されているとき、一対のガイド片31A,31Bを近接方向に移動させることにより、紙幣Xの向きが進行方向と平行に近づく(図11参照)。上記のように、搬送ローラ21は平滑面21sが上向きの状態であるため、紙幣Xは搬送ローラ21からの摩擦抵抗を受けることなくその向きを変えることができる。一対のガイド片31A,31Bがさらに近接方向に移動すると、紙幣Xが進行方向と平行になり、紙幣Xの幅方向中央は搬送経路の幅方向中央とほぼ一致する(図12参照)。
【0053】
本実施形態による幅寄せ機構30は、紙幣Xが正しくセンタリングされたかどうかをセンサで検知せず、一定時間の駆動をもってセンタリング動作を終了する(ステップS6)。そのため、一対のガイド片31A,31Bは紙幣Xが正しくセンタリングされた後もしばらくは、非常に短時間ではあるが、一対のガイド片31A,31Bによる紙幣Xの幅寄せ動作を継続するが、紙幣をそれ以上幅寄せできない状態ではトルクリミッタが働くので、紙幣の折れ曲りが抑制される。こうしてセンタリング動作を行った後、幅寄せ機構30の駆動モータ38を停止することにより、紙幣のセンタリング動作を終了する。
【0054】
その後、一対のガイド片31A,31Bを離反方向に移動させながら紙幣Xの搬送を再開する(ステップS7)。こうしてセンタリングされた紙幣Xの幅方向中央の位置は、搬送経路11の幅方向中央と一致するので、搬送経路11の幅方向中央に設置された識別センサ9は、金種(幅の違い)によらず紙幣Xの幅方向中央をスキャンすることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態による紙幣整列機構10は、摩擦抵抗が高いグリップ面21gが間欠的に設けられた間欠ローラからなる複数の搬送ローラ21を備え、各搬送ローラ21のグリップ面21gは従動ローラ22との間で搬送経路11上の紙幣Xをニップして搬送し、紙幣Xのセンタリング時には搬送ローラ21の平滑面21sを従動ローラ22と対向させて搬送経路11上の紙幣Xのニップを解除するので、一対のガイド片31A,31Bを用いた簡単な構成及び駆動制御により紙幣Xをセンタリングすることができる。
【0056】
また、本実施形態による紙幣整列機構10は、幅寄せ機構30がトルクリミッタを有し、紙幣Xに対するトルクが一定以下に制限されているので、紙幣Xを適切にセンタリングすることができ、紙幣Xを強く押し込み過ぎて押し潰してしまうことによる紙幣詰まりを防止することができる。さらに、搬送経路11に曲がり通路11Bを設け、曲がり通路11Bの位置に紙幣の幅寄せ機構30を設けているので、幅寄せ位置で紙幣の腰を強くすることができ、紙幣の適切なセンタリングをトルクリミッタによる単純な制御により実現することができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0058】
例えば、上記実施形態では紙幣をセンタリングするための整列機構を例に挙げたが、本発明は紙幣に限定されるものではなく、チケット、金券、証券等の種々の紙葉類に適用することができる。また、紙幣を搬送経路の幅方向中央に整列させる場合に限定されず、紙幣を幅方向の任意の位置に整列させる場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 還流式紙幣処理装置
1a 紙幣投入口
2 入出金部
3A,3B 還流式紙幣収納部
4 金庫部
5 搬送経路
8 紙幣識別部
9 識別センサ
10 紙幣整列機構
11 搬送経路
11A 直進通路
11B 曲がり通路
12 上側搬送ガイド
13 下側搬送ガイド
15 紙幣検知センサ
20 紙幣搬送部
21 搬送ローラ
21a ローラ本体
21b 凹部
21c ゴム片
21d 回転軸
21g グリップ面
21s 平滑面(非グリップ面)
22 従動ローラ
23 タイミングプーリ
24 タイミングベルト
25 駆動モータ
28 搬送ローラ監視センサ
28a パルスプレート
28b 光センサ
30 幅寄せ機構
31A,31B 一対のガイド片
32 ラックアンドピニオン機構
33A ラックギヤ
33B ラックギヤ
34 ピニオンギヤ
34a 回転軸
35 タイミングプーリ
36 タイミングベルト
37 タイミングプーリ
38 駆動モータ
38a 回転軸
39 支持プレート
X 紙幣
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12