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特開2023-31463紙幣繰り出し装置及びこれを用いた還流式紙幣処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031463
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】紙幣繰り出し装置及びこれを用いた還流式紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/12 20190101AFI20230302BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
G07D11/12
B65H3/06 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136959
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】田川 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬一
【テーマコード(参考)】
3E141
3F343
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA06
3E141FC15
3E141FD02
3F343FA04
3F343FB07
3F343FC03
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA12
3F343JA01
3F343KB04
3F343LA03
3F343LC10
3F343LC23
3F343LD10
3F343LD24
3F343MB04
3F343MB13
3F343MC10
3F343MC23
(57)【要約】
【課題】紙幣収納部から紙幣を一枚ずつ間欠的に繰り出すことができる小型化された紙幣繰り出し装置を提供する。
【解決手段】紙幣繰り出し装置は、紙幣収納部内の紙幣束の最上面の紙幣を給紙方向に繰り出す給紙ローラ14と、駆動源からの駆動力を給紙ローラ14に伝達すると共に、先行する紙幣を繰り出してから所定のインターバル経過後に給紙ローラ14が回転し始めるように、駆動力の伝達を遅延させることにより、給紙ローラ14を間欠的に駆動する間欠繰り出し機構50とを備える。間欠繰り出し機構50は、多段に連結されたインターバルギヤ51A~51Cを含み、初段のインターバルギヤは駆動源に接続されており、最終段のインターバルギヤ51Aは給紙ローラ14に駆動力を伝達可能に構成されている。複数のインターバルギヤ51A~51Cは、前段から次段への駆動力の伝達を遅延させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣収納部内の紙幣束の最上面の紙幣を第1の周速度で給紙方向に繰り出す給紙ローラと、
前記給紙ローラを回転駆動する駆動源と、
前記駆動源からの駆動力を前記給紙ローラに伝達すると共に、先行する紙幣を繰り出してから所定のインターバル経過後に前記給紙ローラが回転し始めるように、前記駆動力の伝達を遅延させることにより、前記給紙ローラを間欠的に駆動する間欠繰り出し機構とを備え、
前記間欠繰り出し機構は、多段に連結された複数のインターバルギヤを含み、
初段のインターバルギヤは前記駆動源に接続されており、
最終段のインターバルギヤは前記給紙ローラに駆動力を伝達可能に構成されており、
前記複数のインターバルギヤの各々は、前段から次段への駆動力の伝達を遅延させることを特徴とする紙幣繰り出し装置。
【請求項2】
前記複数のインターバルギヤの各々は、
中心が回転可能に支持された円板状のギヤ本体と、
前記ギヤ本体の側面から突出する突起部を含み、
前記複数のインターバルギヤは、
互いに隣接する第1及び第2のインターバルギヤを含み、
前記第1のインターバルギヤの突起部が前記第2のインターバルギヤの突起部よりも所定の回転方向の前方に位置している状態から前記第1のインターバルギヤが前記所定の回転方向に回転するとき、
前記第2のインターバルギヤは、前記第1のインターバルギヤの突起部が前記第2のインターバルギヤの突起部に係合するまでは前記第1のインターバルギヤの回転に連動せず、前記第1のインターバルギヤの突起部が前記第2のインターバルギヤの突起部に係合した後は前記第1のインターバルギヤの回転に連動する、請求項1に記載の紙幣繰り出し装置。
【請求項3】
前記複数のインターバルギヤは、
前記駆動源側から順に連結された第1~第3のインターバルギヤを有し、
少なくとも前記第2のインターバルギヤは、前記ギヤ本体の両側面から突出する一対の突起部を含み、給紙回転方向に回転する前記第1のインターバルギヤの突起部が前記第2のインターバルギヤの一方の突起部に係合した後に、前記第1のインターバルギヤの回転に連動し、
前記第3のインターバルギヤは、給紙回転方向に回転する前記第2のインターバルギヤの他方の突起部が前記第3のインターバルギヤの突起部に係合した後に、前記第2のインターバルギヤの回転に連動する、請求項2に記載の紙幣繰り出し装置。
【請求項4】
前記間欠繰り出し機構は、
前記給紙ローラと一体化された回転軸と、前記回転軸の外周面に圧入されて半径方向に突出した駆動ピンとを備え、
前記複数のインターバルギヤは、それぞれ前記回転軸に回転自在に軸支され、
前記駆動源から前記複数のインターバルギヤに伝達された駆動力は、最終段の前記インターバルギヤの突起部が前記駆動ピンに係合した後に、前記回転軸を介して前記給紙ローラに伝達される、請求項1又は2に記載の紙幣繰り出し装置。
【請求項5】
初段の前記インターバルギヤは、外周面に形成された歯形を有し、
前記歯形に噛み合う入力ギヤを介して前記駆動源に連結されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紙幣繰り出し装置。
【請求項6】
前記複数のインターバルギヤは、同一の形状及びサイズを有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の紙幣繰り出し装置。
【請求項7】
前記給紙ローラよりも給紙方向の前方に配置された双方向搬送部をさらに備え、
前記双方向搬送部は、前記第1の周速度よりも速い第2の周速度で給紙回転方向に回転することにより前記給紙ローラによる繰り出し途中の紙幣の先端部をニップして引き抜くプルローラ対を含み、
前記プルローラ対によって前記紙幣が給紙方向に引っ張られたとき、前記給紙ローラは前記複数のインターバルギヤよりも先行して給紙回転方向に回転し、前記複数のインターバルギヤの位置関係が相対的に巻き戻されることにより、前記駆動源からの駆動力の伝達を遅延させることが可能な初期状態に戻り、
前記給紙ローラによる紙幣の繰り出し動作と前記プルローラ対による紙幣の高速搬送とを交互に繰り返すことにより、前記紙幣束の最上面の紙幣を一枚ずつ間欠的に繰り出す、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の紙幣繰り出し装置。
【請求項8】
前記給紙ローラと前記双方向搬送部との間に分離部をさらに備え、
前記分離部は、フリクションローラと、前記紙幣の搬送路を挟んで前記フリクションローラ対向するストップローラを含み、
前記給紙ローラが給紙回転方向に回転しているとき、
前記フリクションローラは前記給紙ローラと同じ前記第1の周速度で給紙回転方向に回転し、
前記ストップローラは停止又は給紙回転方向と逆方向に回転する、請求項7に記載の紙幣繰り出し装置。
【請求項9】
複数の還流式紙幣収納部とを備え、
前記複数の還流式紙幣収納部の各々は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の紙幣繰り出し装置を有することを特徴とする還流式紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣収納部内に堆積収納された紙幣束から紙幣を一枚ずつ間欠的に繰り出す機能を備えた紙幣繰り出し装置及びこれを用いた還流式紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機や券売機などは還流式紙幣処理装置を備えている。還流式紙幣処理装置は、入金された紙幣の真贋及び金種を識別し、正しく識別できた紙幣を金庫又は還流式紙幣収納部に収納し、正しく識別できなかった紙幣を返却する。また入金された紙幣のうち低額の紙幣は金種別に収納され、必要に応じて釣銭として払い出される。
【0003】
還流式紙幣処理装置では、複数の還流式紙幣収納部が積層配置されており、還流式紙幣収納部には紙幣を繰り出して還流させる紙幣繰り出し装置が設けられている。
【0004】
紙幣収納部から紙幣を一枚ずつ繰り出す際は、紙幣の重送や紙幣詰まり(ジャム)を防止するため、先行の紙幣を繰り出してから後続の紙幣を繰り出すまでのインターバルを確保する必要がある。
【0005】
従来の紙幣繰り出し装置に関し、例えば特許文献1には、紙幣を間欠的に繰り出すために、給紙ローラの駆動軸上にインターバルギヤを設けて給紙ローラを間欠的に駆動することにより、モータなどの駆動部品を増やすことなく、給紙のタイミングをずらす構成が記載されている。給紙ローラを間欠駆動するためにクラッチによる制御やモータの制御を使用する場合、間欠駆動を作る機構が複雑なだけでなく、それぞれの駆動部品の寿命に影響を及ぼす。しかし、特許文献1の構成によれば、間欠駆動を実施する際にクラッチを繋ぎ続けることができるため、駆動部品の寿命への影響を最小限にすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3810884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の紙幣繰り出し装置は、紙幣を間欠的に繰り出すタイミング(インターバル)がインターバルギヤの直径に依存するため、インターバルギヤの直径を小さくすることができない。そのため、紙幣繰り出し装置を小型化することができず、還流式紙幣処理装置の小型化・低背化に対する障壁となっている。上記のように、還流式紙幣処理装置は、紙幣収納部を多段に重ねて構成されたものであり、取り扱う金種が多くなるほど、紙幣収納部の数も増加するため、紙幣収納部の設置数が多くなるほど紙幣繰り出し装置のサイズへの影響は顕著である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、紙幣収納部から紙幣を一枚ずつ間欠的に繰り出すことができる小型化された紙幣繰り出し装置及びこれを用いた還流式紙幣処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による紙幣繰り出し装置は、紙幣収納部内の紙幣束の最上面の紙幣を第1の周速度(V)で給紙方向に繰り出す給紙ローラと、前記給紙ローラを回転駆動する駆動源と、前記駆動源からの駆動力を前記給紙ローラに伝達すると共に、先行する紙幣を繰り出してから所定のインターバル経過後に前記給紙ローラが回転し始めるように、前記駆動力の伝達を遅延させることにより、前記給紙ローラを間欠的に駆動する間欠繰り出し機構とを備え、前記間欠繰り出し機構は、多段に連結された複数のインターバルギヤを含み、初段のインターバルギヤは前記駆動源に接続されており、最終段のインターバルギヤは前記給紙ローラに駆動力を伝達可能に構成されており、前記複数のインターバルギヤの各々は、前段から次段への駆動力の伝達を遅延させることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、複数のインターバルギヤを多段に連結することでインターバルギヤの直径を大きくすることなく給紙ローラの間欠駆動のインターバルを延ばすことができる。したがって、間欠繰り出し機構の小型化・低背化を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記複数のインターバルギヤの各々は、中心が回転可能に支持された円板状のギヤ本体と、前記ギヤ本体の側面から突出する突起部を含み、前記複数のインターバルギヤは、互いに隣接する第1及び第2のインターバルギヤを含み、前記第1のインターバルギヤの突起部が前記第2のインターバルギヤの突起部よりも所定の回転方向の前方に位置している状態から前記第1のインターバルギヤが前記所定の回転方向に回転するとき、前記第2のインターバルギヤは、前記第1のインターバルギヤの突起部が前記第2のインターバルギヤの突起部に係合するまでは前記第1のインターバルギヤの回転に連動せず、前記第1のインターバルギヤの突起部が前記第2のインターバルギヤの突起部に係合した後は前記第1のインターバルギヤの回転に連動することが好ましい。このような簡単な構成により、給紙ローラの間欠駆動のインターバルを延ばすことができる。
【0012】
本発明において、前記複数のインターバルギヤは、前記駆動源側から順に連結された第1~第3のインターバルギヤを有し、少なくとも前記第2のインターバルギヤは、前記ギヤ本体の両側面から突出する一対の突起部を含み、給紙回転方向に回転する前記第1のインターバルギヤの突起部が前記第2のインターバルギヤの一方の突起部に係合した後に、前記第1のインターバルギヤの回転に連動し、前記第3のインターバルギヤは、給紙回転方向に回転する前記第2のインターバルギヤの突起部が前記第3のインターバルギヤの他方の突起部に係合した後に、前記第2のインターバルギヤの回転に連動することが好ましい。この構成によれば、間欠繰り出し機構の小型化・低背化を図りつつ、給紙ローラの間欠駆動の適切なインターバルを確保することができる。
【0013】
本発明において、前記間欠繰り出し機構は、前記給紙ローラの回転軸を構成する前記給紙ローラと一体化された回転軸と、前記回転軸の外周面に圧入されて半径方向に突出した駆動ピンとを備え、前記駆動源からの駆動力は、前記駆動ピン及び前記駆動軸を介して前記給紙ローラに伝達され、前記複数のインターバルギヤは、それぞれ前記回転軸上に回転自在に軸支され、前記駆動源から前記複数のインターバルギヤに伝達された駆動力は、最終段の前記インターバルギヤの突起部が前記駆動ピンに係合した後に、前記回転軸を介して前記給紙ローラに伝達されることが好ましい。この構成によれば、間欠繰り出し機構から離れた任意の位置に給紙ローラを設置することができる。
【0014】
本発明において、初段のインターバルギヤは、外周面に形成された歯形を有し、前記歯形に噛み合う入力ギヤを介して前記駆動源に連結されていることが好ましい。この場合において、前記複数のインターバルギヤの各々が歯形を有していてもよく、各インターバルギヤは同一の形状及びサイズを有していてもよい。これにより、部品の共通化を図ることができ、インターバルの設計も容易である。
【0015】
本発明による紙幣繰り出し装置は、前記給紙ローラよりも給紙方向の前方に配置された双方向搬送部をさらに備え、前記双方向搬送部は、前記第1の周速度よりも速い第2の周速度(V)で給紙回転方向に回転することにより前記給紙ローラによる繰り出し途中の紙幣の先端部をニップして引き抜くプルローラ対を含み、前記プルローラ対によって前記紙幣が給紙方向に引っ張られたとき、前記給紙ローラは前記複数のインターバルギヤよりも先行して給紙回転方向に回転し、前記複数のインターバルギヤの位置関係が相対的に巻き戻されることにより、前記駆動源からの駆動力の伝達を遅延させることが可能な初期状態に戻り、前記給紙ローラによる紙幣の繰り出し動作と前記プルローラ対による紙幣の高速搬送とを交互に繰り返すことにより、前記紙幣束の最上面の紙幣を一枚ずつ間欠的に繰り出すことが好ましい。この構成によれば、先行の紙幣を繰り出してから後続の紙幣を繰り出すまでの間のインターバルを延ばすことができ、間欠繰り出し機構の小型化・低背化を図ることができる。
【0016】
本発明による紙幣繰り出し装置は、前記給紙ローラと前記双方向搬送部との間に分離部をさらに備え、前記分離部は、フリクションローラと、前記紙幣の搬送路を挟んで前記フリクションローラ対向するストップローラを含み、前記給紙ローラが給紙回転方向に回転しているとき、前記フリクションローラは前記給紙ローラと同じ前記第1の周速度で給紙回転方向に回転し、前記ストップローラは停止又は給紙回転方向と逆方向に回転することが好ましい。これにより、紙幣の重送を防止しながら紙幣を間欠的に繰り出すことができる。
【0017】
また、本発明による還流式紙幣処理装置は、複数の還流式紙幣収納部とを備え、前記複数の還流式紙幣収納部の各々は、上述した本発明による紙幣繰り出し装置を有することを特徴とする。本発明によれば、複数のインターバルギヤを多段に連結することでインターバルギヤの直径を大きくすることなく給紙ローラの間欠駆動のインターバルを延ばすことができる。したがって、複数枚の紙幣を順次繰り出す際に、先行の紙幣を繰り出してから後続の紙幣を繰り出すまでの間のインターバルを延ばすことができ、還流式紙幣収納部の低背化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、紙幣収納部から紙幣を一枚ずつ間欠的に繰り出すことができる小型化された紙幣繰り出し装置及びこれを用いた還流式紙幣処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態による還流式紙幣処理装置の構成を示す略側面断面図である。
図2図2は、還流式紙幣収納部の構成を示す略側面断面図である。
図3図3は、押し込み部材と給紙ローラとの位置関係を示す略斜視図である。
図4図4は、給紙ローラを間欠的に駆動する間欠繰り出し機構の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図5図5は、間欠繰り出し機構の略上面図である。
図6図6は、インターバルギヤの形状を示す略斜視図である。
図7図7(a)~(d)は、互いに隣り合う2つのインターバルギヤの連係動作を説明するための模式図である。
図8図8(a)~(d)は、還流式紙幣収納部による紙幣の給紙動作を説明するための模式図である。
図9図9(a)~(d)は、還流式紙幣収納部による紙幣の給紙動作を説明するための模式図である。
図10図10(a)~(h)は、第1~第3のインターバルギヤ及び給紙ローラの動作を説明するための模式図である。
図11図11(a)~(h)は、第1~第3のインターバルギヤ及び給紙ローラの動作を説明するための模式図である。
図12図12(a)~(d)は、還流式紙幣収納部による紙幣の収納動作を説明するための模式図である。
図13図13(a)~(d)は、還流式紙幣収納部による紙幣の収納動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態による還流式紙幣処理装置の構成を示す略側面断面図である。
【0022】
図1に示すように、この還流式紙幣処理装置1は、紙幣投入口1aから入金された紙幣Xの真贋及び金種を識別し、正しく識別できた紙幣Xを回収し、正しく識別できなかった紙幣や釣銭としての紙幣を出金する入出金部2と、釣銭として還流させる低額の紙幣Xを金種別に収納する第1及び第2の還流式紙幣収納部3A,3Bと、釣銭として還流させない高額の紙幣や第1及び第2の還流式紙幣収納部3A,3Bに収まりきらない低額の紙幣を回収して保管する金庫部4とを備えている。入出金部2、第1及び第2の還流式紙幣収納部3A,3B及び金庫部4は、搬送通路5を介して相互に接続されている。
【0023】
図示のように、還流式紙幣処理装置1は紙幣収納部等の機能ブロックを縦方向に積み上げた構成であるため、高さ寸法が大きくなりやすく、低背化は重要な課題の一つである。次に、還流式紙幣収納部の構成について詳細に説明する。
【0024】
図2は、還流式紙幣収納部の構成を示す略側面断面図である。
【0025】
図2に示すように、還流式紙幣収納部3は、複数枚の紙幣を紙幣束Pの状態で堆積収納する狭義の紙幣収納部10と、紙幣収納部10内に堆積収納された紙幣束Pから紙幣を一枚ずつ分離して繰り出す分離部20と、分離部20が繰り出した紙幣を搬送経路上に高速で搬送すると共に、搬送経路から送られてくる紙幣を紙幣収納部10内に送り込む双方向搬送部30とを備えている。
【0026】
紙幣収納部10は、上面に紙幣束が載置されるバックアッププレート11と、バックアッププレート11を上方に付勢するバネ等の付勢手段12と、バックアッププレート11及び積載された紙幣束の上下移動をガイドするガイド部材13と、紙幣収納部10内の紙幣束Pの最上面の紙幣を給紙方向に繰り出す給紙ローラ14と、給紙ローラ14と干渉しない形状を有して上下動することによりバックアッププレート11上の紙幣束Pの最上面を押し下げる押し込み部材15とを有する。
【0027】
図2に示す紙幣の繰り出し時には、押し込み部材15が搬送経路よりも上側に退避しているが、双方向搬送部30から搬送されてくる新たな紙幣をバックアッププレート11上の紙幣束Pの上に積載収納する時には、押し込み部材15が降下して紙幣束Pを押し下げることにより、紙幣束Pの上面と給紙ローラ14との間に紙幣受け入れ用のギャップを形成するように動作する。図3に示すように、押し込み部材15は給紙ローラ14と平面視で重ならない形状を有しており、給紙ローラ14と干渉しないようにレイアウトが配慮されている。
【0028】
給紙ローラ14は駆動軸14aに固定されており、後述する間欠繰り出し機構を介して駆動モータ(駆動源)に接続されており、紙幣の繰り出し時には間欠繰り出し機構が給紙ローラ14を間欠的に駆動する。給紙ローラ14が紙幣を連続的に繰り出す場合には紙幣の重送や紙幣詰まり(ジャム)が発生しやすいが、先行の紙幣を繰り出した後、少し間を置いてから後続の紙幣を繰り出した場合には、そのような不具合を防止することができる。
【0029】
分離部20は、フリクションローラ21と、紙幣の搬送路を挟んでフリクションローラ21と対向するストップローラ22と、フリクションローラ21をストップローラに向けて付勢するバネ等の付勢手段23を有する。
【0030】
フリクションローラ21は、紙幣の繰り出し時に給紙ローラ14と同期して駆動されて紙幣を給紙方向に繰り出す。フリクションローラ21は、給紙ローラ14と同一の駆動源によって駆動され、給紙動作中及び収納動作中は連続回転させるので、複雑な電気制御は不要である。
【0031】
ストップローラ22は、給紙回転方向と逆方向にのみ回転可能であり、給紙回転方向には回転しないように構成されている。そのため、紙幣繰り出し時に下側の紙幣の前進はこのストップローラ22によって阻止される。ストップローラ22は、給紙時には図示しない駆動モータによってフリクションローラ21の給紙方向とは逆方向に小さい駆動力が付与されることにより、繰り出しされた紙幣のうち下側の紙幣を収納部10側に戻すように作用することが好ましい。一方、搬送部30から送り込まれた紙幣を収納する場合には、フリクションローラ21が給紙時とは逆方向に回転し、双方向搬送部30から送り込まれた紙幣を収納する。このとき、ストップローラ22はフリクションローラ21に連れ回りして逆転方向に回転する。
【0032】
双方向搬送部30は、一方を駆動ローラ31とし、他方を従動ローラ32とする、正逆回転可能なプルローラ対33であり、給紙時には図示のように給紙ローラ14やフリクションローラ21よりも高速に回転して紙幣収納部10から繰り出し途中の紙幣の先端部をニップして引き抜く。例えば、分離部20のフリクションローラ21の周速度V=500mm/secとする場合、双方向搬送部30の駆動ローラ31の周速度V=1500mm/secとすることができる。周速度V=1500mmで回転する駆動ローラ31により搬送される紙幣の1秒間の移動距離は1500mmとなる。
【0033】
本実施形態において、還流式紙幣収納部3は、紙幣を給紙方向に繰り出す「給紙動作」と、搬送路から搬送されてきた紙幣を紙幣収納部10内に収納する「収納動作」が可能であり、給紙ローラ14、フリクションローラ21及びプルローラ対33は正逆両方向に回転可能に構成されている。
【0034】
図4は、給紙ローラ14を間欠的に駆動する間欠繰り出し機構50の構成を模式的に示す分解斜視図である。また図5は、間欠繰り出し機構50の略上面図である。
【0035】
図4及び図5に示すように、間欠繰り出し機構50は、給紙ローラ14の回転軸である駆動軸14aの外周面に圧入されて半径方向に突出する駆動ピン14bと、駆動軸14aに対して回転自在に軸支された第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cと、第1のインターバルギヤ51Aに噛み合う入力ギヤ52とを備えている。入力ギヤ52はクラッチ等を介して駆動モータ(駆動源)に接続されており、クラッチは制御部によって制御される。
【0036】
給紙ローラ14は駆動軸14aと一体化されており、駆動軸14aと一緒に回転する。駆動軸14aには、入力ギヤ52に近い方から順に、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cが配置されており、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cは駆動軸14aに遊嵌されている。給紙ローラ14は、第3のインターバルギヤ51Cの隣に配置されている。
【0037】
第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cは、駆動源からの駆動力の伝達を遅延させて給紙ローラ14を間欠駆動するための機械要素である。本実施形態において、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cは同一の形状及びサイズを有しており、これにより部品の共通化が図られている。ただし、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cは相互に異なる形状であってもよい。以下、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cを区別して説明する場合を除き、インターバルギヤ51として説明する。
【0038】
図6は、インターバルギヤ51の形状を示す略斜視図である。
【0039】
図6に示すように、インターバルギヤ51は、外周面51Eに歯形55が設けられると共に、中心部に駆動軸14aとほぼ同じ径の貫通孔56を有する円板状のギヤ本体51Dを有し、貫通孔56には給紙ローラ14の駆動軸14aが挿通され、これによりギヤ本体51Dの中心が回転可能に支持されている。またインターバルギヤ51のギヤ本体51Dの一方の側面51Lの円周方向の一か所には突起部57Lが設けられており、インターバルギヤ51のギヤ本体51Dの他方の側面51Rの円周方向の一か所には突起部57Rが設けられている。左右一対の突起部57L、57Rは同一形状を有し、平面視で互いに重なる位置に設けられている。以下、一対の突起部57L、57Rを区別して説明する場合を除き、突起部57として説明する。
【0040】
インターバルギヤ51の回転時には、突起部57が次段のインターバルギヤ51の突起部57又は駆動軸14aに圧入された駆動ピン14bに係合することにより、次段のインターバルギヤ又は給紙ローラ14(被回転体)に対して回転力を付与するように構成されている。すなわち、インターバルギヤ51の突起部57が被回転体と係合していないときには回転力が伝達されないので、被回転体の回転開始タイミングを遅らせることができる。
【0041】
第1~第3のインターバルギヤ51A~51C及び給紙ローラ14は駆動源に近い方からこの順で連結されており、第1のインターバルギヤ51Aが回転駆動されるとき、第1のインターバルギヤ51Aの回転力は所定のインターバルを経て第2のインターバルギヤ51Bに伝達され、第2のインターバルギヤ51Bの回転力は所定のインターバルを経て第3のインターバルギヤ51Cに伝達される。さらに、第3のインターバルギヤ51Cの回転力は所定のインターバルを経て駆動軸14a及び給紙ローラ14に伝達される。
【0042】
逆に、給紙ローラ14及び駆動軸14aが回転駆動されるとき、その回転力は所定のインターバルを経て第3のインターバルギヤ51Cに伝達され、第3のインターバルギヤ51Cの回転力は所定のインターバルを経て第2のインターバルギヤ51Bに伝達され、第2のインターバルギヤ51Bの回転力は所定のインターバルを経て第1のインターバルギヤ51Aに伝達される。
【0043】
図7(a)~(d)は、互いに隣り合う2つのインターバルギヤの連係動作を説明するための模式図である。
【0044】
図7(a)に示すように、例えば互いに隣り合う第1及び第2のインターバルギヤ51A,51Bのうち、駆動源に近い第1のインターバルギヤ51Aの突起部57Aが第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bよりもその回転方向の前方に位置し、さらに突起部57Bの前端部に当接しているものとする。この場合、図7(b)に示すように、第1のインターバルギヤ51Aが時計回りで回転駆動されたとしても、第2のインターバルギヤ51Bは第1のインターバルギヤ51Aに連れ回りせず、第1のインターバルギヤ51A(突起部57A)だけが回転する。
【0045】
その後、図7(c)に示すように、突起部57Aが突起部57Bの後端部に到達すると、突起部57Aが突起部57Bに係合するので、その後は図7(d)に示すように突起部57Bは突起部57Aに押されて回転し、第2のインターバルギヤ51Bは第1のインターバルギヤ51Aに連れ回るようになる。このように、前段のインターバルギヤが回転を開始してから一定のインターバルを経た後、後段のインターバルギヤの回転が開始されるので、紙幣の繰り出しタイミングを遅らせることができる。
【0046】
図7(c)に示すように、インターバル区間の長さLは、L=2πrθ/360として求められる。単一のインターバルギヤ51を用いてインターバル区間の長さLを長くするためには、インターバルギヤ51の半径rをできるだけ大きくする必要がある。しかし、インターバルギヤ51の半径rを大きくすると、インターバルギヤ51の高さ方向の寸法が大きくなるため、間欠繰り出し機構50の小型化・低背化ができない。
【0047】
これに対し、本実施形態においては、インターバルギヤ51の半径rを大きくする代わりに、複数のインターバルギヤ51を多段に連結しているので、間欠繰り出し機構50の大型化を招くことなくインターバル区間の長さLを長くすることができる。あるいは、インターバル区間を一定とする場合には、インターバルギヤ51の半径rを小さくして間欠繰り出し機構50の小型化・低背化を図ることができる。
【0048】
図8(a)~(d)及び図9(a)~(d)は、還流式紙幣収納部による紙幣の給紙動作を説明するための模式図である。
【0049】
まず図8(a)に示す待機状態においては、押し込み部材15が不図示の退避位置(上昇位置)にあり、紙幣束Pはバックアッププレート11と給紙ローラ14に挟まれた状態で収納されている。給紙ローラ14の回転は、図示しない制御部が図示しない駆動モータを駆動(クラッチをオン)した後、所定のインターバル経過後に開始される。給紙ローラ14の駆動を開始しても間欠繰り出し機構50の作用により給紙ローラ14の回転は直ちに開始されないが、図8(b)に示すようにフリクションローラ21も給紙回転方向(時計回り方向)に周速度Vで回転を開始する。またプルローラ対33は給紙回転方向に給紙ローラ14及びフリクションローラ21よりも高速な周速度Vで回転を開始する。
【0050】
詳細は後述するが、給紙ローラ14の回転は、間欠繰り出し機構50の第1~第3のインターバルギヤ51A、51B、51Cが順に回転し、さらに第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cが駆動軸14aの駆動ピン14bに係合し、駆動ピン14bと一緒に駆動軸14aが回転することにより開始される。これにより、図8(c)に示すように、紙幣束Pの最上部の紙幣Xが給紙方向に繰り出される。上記のように、駆動源と給紙ローラ14との間には間欠繰り出し機構50が介在しているため、制御部が給紙ローラ14の回転駆動を開始しても給紙ローラ14は直ちに回転せず、一定のインターバルを置いて開始される。
【0051】
図8(c)に示すように、給紙ローラ14によって繰り出された最上面の紙幣Xの先端部がフリクションローラ21とストップローラ22とのニップ部に進入すると、最上面の紙幣Xはフリクションローラ21によって給紙方向に前進させられる一方で、最上面の紙幣Xとの摩擦力で繰り出された下側の紙幣はストップローラ22によってその前進が阻止され、或いは紙幣収納部10側へ戻される。こうして分離部を通過した一枚の紙幣は、図8(d)に示すように、プルローラ対33に向かって進行する。
【0052】
図10(a)~(h)及び図11(a)~(h)は、第1~第3のインターバルギヤ51A~51C及び給紙ローラ14の動作の説明するための模式図である。
【0053】
図10(a)に示すように、給紙ローラ14は、矢印Fで示す給紙回転方向(ここでは時計回り方向)に回転して紙幣を給紙するものとする。紙幣の給紙を開始する前の初期状態では、第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bは第1のインターバルギヤ51Aの突起部57Aの給紙回転方向の後端部に当接し、第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cは第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bの給紙回転方向の後端部に当接し、駆動ピン14bは第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cの給紙回転方向の後端部に当接している。
【0054】
図10(b)に示すように、紙幣の給紙動作を開始すると、入力ギヤ52から駆動力を得た第1のインターバルギヤ51Aが回転を開始し、第1のインターバルギヤ51Aは給紙回転方向に回転する。このときはまだ、第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bは第1のインターバルギヤ51Aの突起部57Aと係合していないので、第2のインターバルギヤ51Bは回転駆動されない。
【0055】
図10(c)に示すように、第1のインターバルギヤ51Aが略一周して第1のインターバルギヤ51Aの突起部57Aが第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bの給紙回転方向の後端部に衝突すると、突起部57Aが突起部57Bに係合する。そのため、図10(d)に示すように、第2のインターバルギヤ51Bは第1のインターバルギヤ51Aからの駆動力を受けて第1のインターバルギヤ51Aと一緒に回転し始める。このように、第1のインターバルギヤ51Aの突起部57Aが回転し始めてから第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bに到達するまでの期間は第2のインターバルギヤ51Bに回転力が伝達されない。
【0056】
図10(e)に示すように、第1及び第2のインターバルギヤ51A,51Bが略一周して第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bが第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cの給紙回転方向の後端部に衝突すると、突起部57Bが突起部57Cに係合する。そのため、図10(f)に示すように、第3のインターバルギヤ51Cは第1及び第2のインターバルギヤ51Bと一緒に回転し始める。このように、第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bが回転し始めてから第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cに到達するまでの期間は第3のインターバルギヤ51Cに回転力が伝達されない。
【0057】
図10(g)に示すように、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cが略一周して第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cが駆動軸14aから突出する駆動ピン14bの給紙回転方向の後端部に衝突すると、突起部57Cが駆動ピン14bに係合する。そのため、図10(h)に示すように、給紙ローラ14は第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cと一緒に回転し始める。このように、第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cが回転し始めてから駆動軸14aの駆動ピン14bに到達するまでの期間は給紙ローラ14に回転力が伝達されない。
【0058】
このように、第1のインターバルギヤ51Aが給紙回転方向に回転を開始すると、第1のインターバルギヤ51A→第2のインターバルギヤ51B→第3のインターバルギヤ51C→給紙ローラ14の順に回転し、給紙ローラ14が回転することによって紙幣が繰り出される。すなわち、入力ギヤ52の駆動開始から一定のインターバル期間の経過後に、給紙ローラ14による給紙動作が行われる。
【0059】
図9(a)~(d)を参照しながら、還流式紙幣収納部による紙幣の給紙動作の続きを説明する。
【0060】
図9(a)に示すように、分離部20を通過した紙幣Xの先端部がさらに進行して双方向搬送部30に到達すると、紙幣Xはプルローラ対33にグリップされて周速度Vで搬送され始める。このとき、依然として紙幣Xと接触した状態にある給紙ローラ14とフリクションローラ21は、高速移動を開始した紙幣Xによって速い周速度Vで高速回転させられる。一方、給紙ローラ14の駆動軸14aに連結された間欠繰り出し機構50の第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cは、遅い周速度Vで回転しているので、給紙ローラ14だけが先行して給紙方向に高速回転し、駆動ピン14bは第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cから離間する。このため、図9(b)に示すように、給紙ローラ14はしばらくの間、間欠繰り出し機構50を通じた駆動モータからの駆動力を受けなくなる。
【0061】
図9(c)に示すように、紙幣Xの後端部が給紙ローラ14から離脱すると、給紙ローラ14は紙幣Xを介したプルローラ対33からの駆動力を受けなくなるので、給紙ローラ14の回転が停止し、給紙ローラ14による紙幣Xの繰り出しも停止する。一方、給紙ローラ14の回転が停止している間も駆動モータは回転を継続しているので、間欠繰り出し機構50を構成する第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cは順に回転し、さらに第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cが駆動軸14aの駆動ピン14bに係合した時点で、給紙ローラ14は再び周速度Vで回転し始める。図9(d)は、図8(b)と同様に、第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cが駆動ピン14bに当接した状態を示しており、このときから駆動力が伝達され始めて給紙ローラ14による紙幣の繰り出しが再開される。
【0062】
給紙ローラ14による紙幣Xの繰り出しが進んで紙幣Xの先端部がプルローラ対33の位置に到達すると、プルローラ対33による紙幣Xの高速搬送が開始される。プルローラ対33によって紙幣Xが高速に引き抜かれると、紙幣の摩擦抵抗によって給紙ローラ14も連れ回りして給紙方向に高速回転する。このとき、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cも給紙回転方向に回転しているが、それらの回転速度は給紙ローラ14よりも遅いので、給紙ローラ14だけが先行して回転し、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cは給紙ローラ14に連動しない。こうして給紙ローラ14だけを早送りすることができる。そして、給紙ローラ14による紙幣の繰り出し動作とプルローラ対33による紙幣の高速搬送とを交互に繰り返すことにより、紙幣束Pの最上面の紙幣を一枚ずつ間欠的に繰り出すことができる。
【0063】
上記のように、給紙ローラ14を給紙回転方向に高速回転(早送り)すると、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cは、駆動モータから給紙方向の回転力を受けたときとは逆の順序で動作する。
【0064】
図11(a)に示すように、給紙ローラ14が給紙回転方向に周速度Vで回転している状態では、第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cは駆動ピン14bの給紙回転方向の後端部に当接し、第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bは第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cの給紙回転方向の後端部に当接し、第1のインターバルギヤ51Aの突起部57Aは第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bの給紙回転方向の後端部に当接している。
【0065】
図11(b)に示すように、給紙ローラ14が給紙回転方向に周速度Vで高速回転すると、給紙ローラ14と一緒に駆動軸14a及び駆動ピン14bが回転する。このときはまだ、第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cは駆動ピン14bと係合していないので、第3のインターバルギヤ51Cは回転駆動されない。
【0066】
図11(c)に示すように、給紙ローラ14が略一周して駆動ピン14bが第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cの給紙回転方向の後端部に衝突すると、突起部57Cが駆動ピン14bに係合する。そのため、図11(d)に示すように、第3のインターバルギヤ51Cは給紙ローラ14からの駆動力を受けて給紙ローラ14と一緒に高速回転し始める。このように、給紙ローラ14が第3のインターバルギヤ51Cよりも高速回転することにより、駆動ピン14bはいままで押されていた突起部57Cの給紙回転方向の後端部に到達する。
【0067】
図11(e)に示すように、給紙ローラ14及び第3のインターバルギヤ51Cが略一周して第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cが第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bに衝突すると、突起部57Cが突起部57Bに係合する。そのため、図11(f)に示すように、第2のインターバルギヤ51Bは給紙ローラ14からの駆動力を受けて給紙ローラ14及び第3のインターバルギヤ51Cと一緒に高速回転し始める。このように、給紙ローラ14及び第3のインターバルギヤ51Cが第2のインターバルギヤ51Bよりも高速回転することにより、突起部57Cはいままで押されていた突起部57Bの給紙回転方向の後端部に到達する。
【0068】
図11(g)に示すように、給紙ローラ14、第3のインターバルギヤ51C及び第2のインターバルギヤ51Bが略一周して第2のインターバルギヤ51Bの突起部57Bが第1のインターバルギヤ51Aの突起部57Aに衝突すると、突起部57Bが突起部57Aに係合する。そのため、図11(h)に示すように、第1のインターバルギヤ51Aは給紙ローラ14からの駆動力を受けて、給紙ローラ14、第3のインターバルギヤ51C及び第2のインターバルギヤ51Bと一緒に高速回転し始める。このように、給紙ローラ14及び第3のインターバルギヤ51C及び第2のインターバルギヤ51Bが第1のインターバルギヤ51Aよりも高速回転することにより、突起部57Bはいままで押されていた突起部57Aの給紙回転方向の後端部に到達する。
【0069】
こうして、給紙ローラ14が給紙回転方向に早送りされることにより、給紙ローラ14→第3のインターバルギヤ51C→第2のインターバルギヤ51B→第1のインターバルギヤ51Aの順に回転し、給紙ローラ14に対する第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cの位置関係が相対的に巻き戻され、紙幣Xの給紙を開始する前の初期状態(図10(a)参照)に戻る。
【0070】
上記のように、紙幣Xがさらに繰り出されて紙幣Xの後端部が給紙ローラ14から離脱すると、給紙ローラ14はプルローラ対33からの駆動力を受けなくなる。これにより、間欠繰り出し機構50は駆動モータからの駆動力を受けて後続の紙幣の搬送を再開する。図10(a)~(h)を参照しながら説明したように、次の紙幣の繰り出し動作を開始してからしばらくの間は、間欠繰り出し機構50の作用により、給紙ローラ14に駆動力が伝達されないので、先行の紙幣と後続の紙幣との間には一定のインターバルが生じる。したがって、紙幣の重送や紙幣詰まりを防止することができる。
【0071】
図12(a)~(d)及び図13(a)~(d)は、還流式紙幣収納部による紙幣の収納動作を説明するための模式図である。
【0072】
紙幣の収納動作では、まず図12(a)の待機状態に示すように紙幣の搬送経路よりも上方に位置していた押し込み部材15を紙幣Xの上面に下降させて、給紙ローラ14よりも下方に押し下げることにより、図12(b)に示すように紙幣の収納のためのスペースを確保する。
【0073】
その後、図12(c)に示すように、プルローラ対33、フリクションローラ21、ストップローラ22、給紙ローラ14を給紙回転方向と逆方向に周速度Vで回転させる。なお、この収納動作において給紙ローラ54は間欠駆動されない。つまり、給紙ローラ14は、駆動ピン14bが第3のインターバルギヤ51Cの突起部57Cに押されることにより連続的に逆回転するだけである。
【0074】
次に、紙幣収納部に向けて搬送されてくる紙幣Xは、図12(d)に示すように双方向搬送部を構成するプルローラ対33のニップ部に進入し、次いで図13(a)に示すように分離部20を構成するフリクションローラ21とストップローラ22との間のニップ部に進入する。
【0075】
そして図13(b)に示すように、紙幣Xがプルローラ対33を離脱した後はフリクションローラ21及びストップローラ22によって紙幣収納部10に向けて送り込まれる。前述のように、紙幣の収納動作時にはストップローラ22がフリクションローラ21に連れ回りするので、両ローラのニップ部による搬送が可能になる。さらに、フリクションローラ21に同期して回転する給紙ローラ14は、ニップ部から紙幣収納部10に送り込まれてくる紙幣の上面に接しながらこれを既堆積紙幣の上面に安定的に送り込む。
【0076】
押し込み部材15は紙幣束Pを下方に押し込んで紙幣Xの収納スペースを確保しているため、紙幣収納部10に送り込まれた紙幣は、図13(c)に示すように押し込み部材15の上面に一旦載置される。その後、押し込み部材15を上昇させる過程で紙幣Xだけが給紙ローラ14によってその上昇を阻止され、押し込み部材15に設けた間隙から下方へ退避して、図13(d)に示すように紙幣束Pの上面に着座する。
【0077】
以上説明したように、本実施形態による紙幣繰り出し装置は、紙幣収納部内の紙幣束の最上層の紙幣を給紙方向に繰り出す給紙ローラ14と、給紙ローラ14を回転駆動する駆動源と、給紙ローラ14を間欠的に駆動する間欠繰り出し機構50とを備え、間欠繰り出し機構50は、多段に連結された第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cを含み、第1のインターバルギヤ51A(初段のインターバルギヤ)は入力ギヤ52を介して駆動源に連結されており、第3のインターバルギヤ51C(最終段のインターバルギヤ)は給紙ローラ14の駆動軸に連結可能に構成されており、駆動源からの駆動力は第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cを介して給紙ローラ14に間欠的に伝達されるので、間欠繰り出し機構50の小型化を図ることができ、紙幣収納部内の紙幣を間欠的に繰り出すことができる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0079】
例えば、上記実施形態においては、第1及び第3のインターバルギヤ51A~51Cの形状を同一としたが、入力ギヤ52と噛み合う第1のインターバルギヤ51Aだけに歯形を設け、第2及び第3のインターバルギヤ51B,51Cの歯形を省略することも可能である。また、第1~第3のインターバルギヤ51A~51Cの両面に設けられる突起部57A~57Cの形状は互いに異なっていてもよい。また、給紙ローラ14の側面にインターバルギヤと同等の突起部を設け、インターバルギヤの最終段としての機能を給紙ローラ14に持たせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 還流式紙幣処理装置
1a 紙幣投入口
2 入出金部
3,3A,3B 還流式紙幣収納部
4 金庫部
5 搬送通路
10 収納部
11 バックアッププレート
12 付勢手段
13 ガイド部材
14 給紙ローラ
14a 駆動軸
14b 駆動ピン
15 押し込み部材
20 分離部
21 フリクションローラ
22 ストップローラ
23 付勢手段
30 双方向搬送部
31 駆動ローラ
32 従動ローラ
33 プルローラ対
50 間欠繰り出し機構
51 インターバルギヤ
51A 第1のインターバルギヤ
51B 第2のインターバルギヤ
51C 第3のインターバルギヤ
51D ギヤ本体
51E インターバルギヤ(ギヤ本体)の外周面
51L インターバルギヤ(ギヤ本体)の一方の側面
51R インターバルギヤ(ギヤ本体)の他方の側面
52 入力ギヤ
54 給紙ローラ
55 歯形
56 貫通孔
57 突起部
57 インターバルギヤの突起部
57A 第1のインターバルギヤの突起部(第1の突起部)
57B 第2のインターバルギヤの突起部(第2の突起部)
57C 第3のインターバルギヤの突起部(第3の突起部)
57,57L,57R インターバルギヤの突起部
70 プルローラ対
P 紙幣束
X 紙幣
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
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