(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031466
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】屋上防水構造
(51)【国際特許分類】
E04D 5/14 20060101AFI20230302BHJP
E04D 5/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
E04D5/14 J
E04D5/00 D
E04D5/14 K
E04D5/14 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136966
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 智史
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 禎樹
(72)【発明者】
【氏名】新舎 巧
(57)【要約】
【課題】改修時に切り粉が屋内に落下するのを抑制して屋内環境を良好に保ちながら、新しい防水シートを高い固定強度で固定可能にする。
【解決手段】屋上防水構造1は、ボード11と屋根下地10との間に配設された第1固定用鋼板12と、ボード11の上に配設された第2固定用鋼板13と、第2固定用鋼板13の上に配設された固定金具14と、固定金具14を第2固定用鋼板13に固定する第1留め付け材23と、固定金具14に固定された防水シート15とを備えている。第2固定用鋼板13には、防水シート15とは異なる改修用防水シート31が固定される改修用固定金具30を固定するための改修用固定部13cが設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋上防水構造において、
屋根下地と、
前記屋根下地の上に配設されたボードと、
前記ボードと前記屋根下地との間に配設されて前記屋根下地に固定された第1固定用鋼板と、
前記ボードの上に配設されて前記屋根下地または前記第1固定用鋼板に固定された第2固定用鋼板と、
前記第2固定用鋼板の上に配設された固定金具と、
前記固定金具を少なくとも前記第2固定用鋼板に固定する第1留め付け材と、
前記固定金具に固定された防水シートと、を備え、
前記第2固定用鋼板には、前記防水シートとは異なる改修用防水シートが固定される改修用固定金具を固定するための改修用固定部が設けられている屋上防水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋上防水構造において、
前記第1留め付け材は、前記第2固定用鋼板及び前記第1固定用鋼板を貫通して前記屋根下地にねじ込まれている屋上防水構造。
【請求項3】
請求項2に記載の屋上防水構造において、
前記第1留め付け材は、前記固定金具を貫通している屋上防水構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の屋上防水構造において、
前記第2固定用鋼板は、前記固定金具よりも大きく形成されるとともに、前記固定金具の前記第2固定用鋼板への留め付け箇所よりも多くの留め付け箇所によって前記屋根下地に固定されている屋上防水構造。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の屋上防水構造において、
前記第1固定用鋼板を前記屋根下地に固定する第2留め付け材を備えている屋上防水構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の屋上防水構造において、
前記ボードは、上方に延びるとともに、前記屋根下地の上方に配設されている屋根構成部材に固定される立上ボードを含み、
前記第1固定用鋼板は、前記屋根構成部材と前記立上ボードとの間に配設されて前記屋根構成部材に固定された第1立上板部を有し、
前記第2固定用鋼板は、前記立上ボードに沿って上方へ延びるとともに前記屋根構成部材に固定された第2立上板部を有し、
前記改修用固定部は、前記第2立上板部に設けられている屋上防水構造。
【請求項7】
建築物の屋上防水構造において、
上面が平面状をなす屋根下地と、
前記屋根下地の上に配設されたボードと、
前記ボードの上に配設されて前記屋根下地に固定された固定用鋼板と、
前記固定用鋼板の上に配設された固定金具と、
前記固定金具に固定された防水シートと、を備え、
前記固定用鋼板には、前記防水シートとは異なる改修用防水シートが固定される改修用固定金具を固定するための改修用固定部が設けられている屋上防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改修が可能な屋上防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば各種商業施設や工場、倉庫等の建築物の屋根は、デッキプレート、折板等の金属屋根下地と、金属屋根下地の上に敷設された木質系セメント板、断熱材等のボードと、ボードの上に敷設された防水シートとを備えており、防水シートによって屋上の防水性が確保されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図16は、従来の屋上防水構造の新設時の例を示すものである。この
図16に示すように、ボードの上には固定金具が配設されており、この固定金具は留め付け材によってボードと共に金属屋根下地に固定されている。防水シートが、特に塩化ビニル樹脂系シートや熱可塑性エラストマー系シートのような高分子系防水シートの場合、同系樹脂を鋼板等の芯材に被覆した固定金具をビスやアンカーなどの留め付け材で建築物の入り隅部分にボードと共に固定することがある。前記固定金具に防水シートを溶剤で溶着固定又は熱風で融着固定することで、経年や季節の変化、昼夜の温度差による防水シート及び金属屋根下地の動き等に起因する防水シートの浮き上がりや破断を防止することができる。特に、入り隅部分に固定金具を留め付け材で固定することは耐風性の観点からも有効である。
【0004】
防水シートの敷設後、経年によって防水性が低下する場合がある。この場合、新たな防水シートを古い防水シートの上に敷設する改修工事が行われる。
図17は、従来の屋上防水構造の改修時の例を示すものである。この図に示すように、古い防水シートの上に改修用固定金具を配設し、この改修用固定金具を古い固定金具及びボードと共に改修用留め付け材によって金属屋根下地に固定する。その後、改修用固定金具に新たな防水シートを固定する。
【0005】
しかし課題として、建築物が工場や倉庫である場合は金属屋根の室内側に天井が張られていないことが多い。そのため、
図17に示すように改修用固定治具で既設の金属屋根下地を穿孔するときに発生する切り粉が屋内に落下し、屋内環境、即ち屋内の機械設備や生産している品物、作業者などに悪影響を及ぼす恐れがある。
【0006】
このような悪影響を抑制する改修工事の例としては、特許文献3に開示されているように、既存防水シートが固定されている固定金具に、改修用固定金具を留め付け、この改修用固定金具に新たな防水シートを固定する方法や、特許文献4に開示されているように、入り隅用固定金具に防水シートの未溶着・融着部分を予め設けておき、改修時はその部分の古い防水シートを帯状に撤去した後、入り隅用固定金具の未溶着・融着部分を露出させ、その露出した部分に新しい防水シートを固定する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-31218号公報
【特許文献2】特開平9-302783号公報
【特許文献3】特開2011-80212号公報
【特許文献4】特開2002-349018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献3の改修方法では、既存の固定金具に改修用固定金具を留め付けるので、上記切り粉による問題は発生しないが、改修用固定金具の固定強度は、既存の固定金具の留め付け材による金属屋根下地への固定強度に依存することとなる。すなわち、既存の留め付け材が古くなっているので、既存の留め付け材による固定強度が経年で低下している場合が考えられる。既存の留め付け材の固定強度が低下していると、改修用固定金具の固定強度も低下し、ひいては新たな防水シートの固定強度も低下してしまう。
【0009】
また、特許文献4の改修方法も新たに留め付け材を使用して固定金具を固定する必要が無いので切り粉は発生しない。しかし、既存の入り隅用固定金具の未溶着・融着部分も経年によって劣化が進行している可能性があり、劣化が進行している場合には、新たな防水シートの固定強度が低下してしまう。
【0010】
特に、金属屋根下地の入り隅部分については、新設時の防水工事のときに次回改修時のことについて考慮されていない場合が殆どである。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、改修時に切り粉が屋内に落下するのを抑制して屋内環境を良好に保ちながら、新しい防水シートを高い固定強度で固定可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、建築物の屋上防水構造を前提することができる。屋上防水構造は、屋根下地と、前記屋根下地の上に配設されたボードと、前記ボードと前記屋根下地との間に配設されて前記屋根下地に固定された第1固定用鋼板と、前記ボードの上に配設されて前記屋根下地に固定された第2固定用鋼板と、前記第2固定用鋼板の上に配設された固定金具と、前記固定金具を少なくとも前記第2固定用鋼板に固定する第1留め付け材と、前記固定金具に固定された防水シートと、を備えている。前記第2固定用鋼板には、前記防水シートとは異なる改修用防水シートが固定される改修用固定金具を固定するための改修用固定部が設けられている。
【0013】
この構成によれば、新設時には、ボードを厚み方向に挟むようにして第1固定用鋼板と第2固定用鋼板とが配設され、両固定用鋼板が屋根下地に固定される。そして、固定金具は第1留め付け材によって少なくとも第2固定用鋼板に固定されるので、第2固定用鋼板を介して屋根下地に固定されることになる。固定金具に固定された防水シートによって防水性を確保できる。
【0014】
新設時から年数が経過して防水シートが劣化すると改修工事が行われる。改修工事の際には、改修用防水シートと改修用固定金具とを少なくとも用意する。改修用固定金具を少なくとも第2固定用鋼板の改修用固定部に固定することができるので、屋根下地を穿孔する必要がなく、よって、切り粉が屋内に落下することはなく、改修工事中の騒音も低減できる。そして、改修用防水シートを改修用固定金具に固定することで、改修工事が完了する。
【0015】
本開示の第2の側面では、前記第1留め付け材は、前記第2固定用鋼板及び前記第1固定用鋼板を貫通して前記屋根下地にねじ込まれているものである。
【0016】
この構成によれば、第1固定用鋼板及び第2固定用鋼板を共通の第1留め付け材によって屋根下地に固定することができる。
【0017】
本開示の第3の側面では、前記第1留め付け材は、前記固定金具を貫通しているものである。
【0018】
この構成によれば、第1固定用鋼板及び第2固定用鋼板を固定する第1留め付け材によって固定金具も一緒に屋根下地に固定することができる。
【0019】
本開示の第4の側面では、前記第2固定用鋼板は、前記固定金具よりも大きく形成されるとともに、前記固定金具の前記第2固定用鋼板への留め付け箇所よりも多くの留め付け箇所によって前記屋根下地に固定されているものである。
【0020】
この構成によれば、第2固定用鋼板が固定金具よりも大きく、かつ、屋根下地への留め付け箇所も多いので、第2固定用鋼板に固定される改修用固定金具の固定強度は十分に確保される。
【0021】
本開示の第5の側面では、前記第1固定用鋼板を前記屋根下地に固定する第2留め付け材を備えている。
【0022】
この構成によれば、第1固定用鋼板を第1留め付け材及び第2留め付け材によって屋根下地に固定することができるので、第1固定用鋼板の固定強度を高め、ひいては第2固定用鋼板の固定強度を高めることができる。
【0023】
本開示の第6の側面では、前記ボードは、上方に延びるとともに、前記屋根下地の上方に配設されている屋根構成部材に固定される立上ボードを含んでいる。また、前記第1固定用鋼板は、前記屋根構成部材と前記立上ボードとの間に配設されて前記屋根構成部材に固定された第1立上板部を有し、前記第2固定用鋼板は、前記立上ボードに沿って上方へ延びるとともに前記屋根構成部材に固定された第2立上板部を有している。そして、前記改修用固定部は、前記第2立上板部に設けられている。
【0024】
この構成によれば、第2固定用鋼板を屋根下地とは別の屋根構成部材に固定することが可能になる。
【0025】
本開示の第7の側面では、上面が平面状をなす屋根下地を備えた屋上防水構造を前提することができる。屋上防水構造は、前記屋根下地の上に配設されたボードと、前記ボードの上に配設されて前記屋根下地に固定された固定用鋼板と、前記固定用鋼板の上に配設された固定金具と、前記固定金具に固定された防水シートと、を備え、前記固定用鋼板には、前記防水シートとは異なる改修用防水シートが固定される改修用固定金具を固定するための改修用固定部が設けられている。
【0026】
この構成によれば、改修工事の際には、改修用固定金具を固定用鋼板の改修用固定部に固定することができるので、切り粉が屋内に落下することはない。そして、改修用防水シートを改修用固定金具に固定することで、改修工事が完了する。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、新設時から年数が経過して改修工事を行う時、改修用固定金具を固定する際に切り粉が屋内に落下するのを抑制して屋内環境を良好に保ちながら、改修用防水シートを高い固定強度で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態1に係る屋上防水構造の部分断面を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る屋上防水構造の新設時の縦断面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る改修時の
図1相当図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る改修時の
図2相当図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る
図2相当図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る
図4相当図である。
【
図7】本発明の実施形態3に係る
図2相当図である。
【
図8】本発明の実施形態4に係る
図2相当図である。
【
図10】本発明の実施形態5に係る
図2相当図である。
【
図11】本発明の実施形態5に係る
図4相当図である。
【
図12】本発明の実施形態6に係る
図2相当図である。
【
図13】本発明の実施形態6に係る
図4相当図である。
【
図14】本発明の実施形態7に係る
図2相当図である。
【
図15】本発明の実施形態7に係る
図4相当図である。
【
図16】従来の新設時の屋上防水構造の断面図である。
【
図17】従来の改修時の屋上防水構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る屋上防水構造1を示すものである。屋上防水構造1は、例えば各種商業施設や工場、倉庫、事務所等の建築物の屋根に設けられるものであり、その規模や大きさは特に限定されるものではない。工場の場合、その屋内では機械設備が稼働しており、各種製品等を製造している場合がある。また、倉庫の場合、その屋内では荷物等が置かれている場合がある。
【0031】
屋上防水構造1により、建築物の屋上には平場部2と立ち上がり部3と入り隅部4とが形成される。平場部2は、略水平に延びる部分であるが、多少の水勾配を設定しておくことも可能である。立ち上がり部3は、平場部2の周縁部から上方へ延びる部分である。入り隅部4は、平場部2の周縁部と立ち上がり部3の下部とで構成される隅部である。
【0032】
屋上防水構造1は、屋根下地10と、ボード11と、第1固定用鋼板12と、第2固定用鋼板13と、固定金具14と、防水シート15とを備えている。屋根下地10は、例えばデッキプレート、フラットデッキ、折板等の金属屋根下地である。屋根下地10には、複数の山部10aと複数の谷部10bとが所定方向に交互に並ぶように形成されており、従って屋根下地10は凹凸をなす屋根材で構成されている。屋根下地10の各山部10aの頂部は水平に延びている。また、屋根下地10の各谷部10bは山部10aの間に形成されており、この谷部10bの底部も水平に延びている。屋根下地10の屋内側には天井が張られていない。尚、屋根下地10の形状や構造は図示したものに限られず、例えば鉄筋コンクリート製の屋根下地(RC下地)であってもよい。RC下地の場合、建築物は病院や介護施設の場合もある。
【0033】
ボード11は、例えば板状の断熱材であり、屋根下地10の上に配設されている。ボード11は、水平に延び、平場部2を構成する平面ボード11aと、平面ボード11aの周縁部から上方に延び、立ち上がり部3を構成する立上ボード11bとを含んでいる。平面ボード11aは、入り隅部4以外の部分も屋根下地10の山部10aの頂部に対して例えばドリルネジやタッピングビス等で留め付けられている。
【0034】
ボード11は、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリイソシアヌレート発泡体、ポリエチレン発泡体、フェノール発泡体等からなる発泡体単体で構成されていてもよいし、発泡体の表面に面材が設けられた複層構造の板体で構成されていてもよい。面材としては、例えば、耐水紙、アルミ箔、アルミ蒸着紙、プラスチックフィルムのような熱可塑性エラストマーが貼り付けられているものを使用することができる。
【0035】
また、ボード11は、前記断熱材に使用されている発泡体の表面を薄い金属板で被覆したものであってもよい。金属板の厚みは、例えば0.5mm以下とすることができるが、これに限られるものではない。また、ボード11は、木質系セメント板で構成されていてもよい。木質系セメント板は、例えばJIS A 5404で規定されているような、主原料として木毛・木片などの木質原料及びセメントをもちいて圧縮成型したものである。ボード11は、単層で使用してもよいし、複数枚、重ねて使用してもよい。ボード11の厚みは、例えば15mm以上とすることができるが、これに限られるものではない。
【0036】
屋上防水構造1は、屋根下地10の上方に配設されている金属製の枠材(屋根構成部材)17を備えている。枠材17は、平面視で平場部2を取り囲むように形成されており、この実施形態では、上側と下側とにそれぞれ設けられている。上側の枠材17及び下側の枠材17に、立上ボード11bの上側部分と下側部分とがそれぞれ固定されている。立上ボード11bは、例えばドリルネジやタッピングビス等で枠材17に固定することが可能である。立上ボード11bは、ドリルネジまたはタッピングビスのみで固定してもよいが、沈み込み防止のために、外径が50~150mm程度の円盤状で金属製又はプラスチック製の部材をワッシャ代わりにして固定することもできる。
【0037】
新設時、平面ボード11aを屋根下地10に敷設して固定する場合、平場部2は屋根下地10の山部10aに対してドリルネジやタッピングビス等で直接固定することが可能である。ただし、平場部2と立ち上がり部3が交わる入り隅部4の真下に、屋根下地10の谷部10bがちょうど位置してしまうと、入り隅部4において平面ボード11aを屋根下地10に固定することができなくなる。よって、
図2に示すように、入り隅部4には予め第1固定用鋼板12を設置しておく。第1固定用鋼板12は、入り隅部4に沿って長く延びている。複数の第1固定用鋼板12を平場部2の周縁部に沿うように全周に渡って配設することができる。これにより、入り隅部4においても第1固定用鋼板12に平面ボード11aを固定できる。
【0038】
第1固定用鋼板12は、水平に延びる第1水平板部12aと、第1水平板部12aの外縁部から上方へ延びる第1立上板部12bとを有している。「外」とは、屋上防水構造1の水平方向について外となる側であり、
図2の左側である。また、「内」とは、屋上防水構造1の水平方向について内となる側であり、
図2の右側である。
【0039】
1枚の鋼板をプレス成形することにより、第1水平板部12aと第1立上板部12bとを得ることができる。第1水平板部12aと第1立上板部12bとのなす角度は90度である。第1固定用鋼板12は、鋼板に防錆加工を施した部材であり、厚みは0.6mm以上3.2mm以下の範囲、または0.8mm以上1.2mm以下の範囲とすることができる。第1固定用鋼板12の厚みを上述した範囲内とすることで、固定強度を確保しつつ、穿孔時の作業性が良好になり、さらに現地での加工性が良好になるとともに、第1固定用鋼板12の重量を最適な範囲としながら、低コスト化を図ることができる。
【0040】
第1固定用鋼板12の第1水平板部12aは、平面ボード11aと、屋根下地10の山部10aの頂部との間に配設され、屋根下地10の山部10aの頂部に固定される部分である。第1水平板部12aは、屋根下地10の山部10aの頂部に沿って延びている。第1水平板部12aは、例えば溶接によって屋根下地10の山部10aの頂部に固定してもよいし、複数の水平板部用留め付け材20によって屋根下地10の山部10aの頂部に固定してもよい。水平板部用留め付け材20は、本発明の第2留め付け材に相当する部材であるとともに、屋上防水構造1を構成する部材である。水平板部用留め付け材20は、ドリルネジやタッピングビス等で構成されており、第1固定用鋼板12の長手方向に間隔をあけて複数設けられている。水平板部用留め付け材20の間隔をピッチという。第1水平板部12aを屋根下地10の山部10aの頂部に載置した状態で、水平板部用留め付け材20を第1水平板部12aの上方から、当該第1水平板部12a及び屋根下地10の山部10aの頂部に形成してある下孔にねじ込むことで、第1水平板部12aを屋根下地10の山部10aの頂部に締結することができる。第1水平板部12aの屋根下地10への固定箇所は、山部10aの頂部の中央部であってもよいし、中央部から山部10aの幅方向に偏位していてもよい。
【0041】
第1固定用鋼板12の第1立上板部12bは、下側の枠材17と立上ボード11bとの間に配設され、下側の枠材17に固定される部分である。第1立上板部12bは、下側の枠材17に沿って延びている。第1立上板部12bは、例えば溶接によって枠材17に固定してもよいし、複数の立上板部用留め付け材21によって枠材17に固定してもよい。立上板部用留め付け材21は、屋上防水構造1を構成する部材である。立上板部用留め付け材21は、ドリルネジやタッピングビス等で構成されており、第1固定用鋼板12の長手方向に間隔をあけて設けられている。立上板部用留め付け材21の間隔をピッチという。第1立上板部12bを枠材17に隣接配置した状態で、立上板部用留め付け材21を第1立上板部12bの側方から、当該第1立上板部12b及び枠材17に形成してある下孔にねじ込むことで、第1立上板部12bを枠材17に締結することができる。
【0042】
第2固定用鋼板13は、平面ボード11aの上に配設された状態で屋根下地10に固定されている。第2固定用鋼板13は、入り隅部4に沿って長く延びており、複数の第2固定用鋼板13を平場部2の周縁部に沿うように全周に渡って配設することができる。平面視で、第1固定用鋼板12の第1水平板部12aと重複する範囲に第2固定用鋼板13が配設されており、第1水平板部12aの真上において第2固定用鋼板13が平面ボード11aの上面に沿って延びている。第1固定用鋼板12の第1水平板部12aと、第2固定用鋼板13とにより、平面ボード11aが厚み方向に挟持されている。第2固定用鋼板13は、第1固定用鋼板12と同様な材料で構成されるとともに、第1固定用鋼板12と同様な厚みを有している。尚、第1固定用鋼板12と第2固定用鋼板13とは異なる厚みを有していてもよい。
【0043】
第2固定用鋼板13は、複数の平場用留め付け材22によって屋根下地10の山部10aの頂部に固定されている。平場用留め付け材22はドリルネジやタッピングビス等で構成されており、第2固定用鋼板13の長手方向に間隔をあけて設けられている。平場用留め付け材22の間隔をピッチという。すなわち、平場用留め付け材22は、第2固定用鋼板13及び平面ボード11aを貫通し、屋根下地10の山部10aの頂部に達するように形成されている。平場用留め付け材22は屋根下地10の山部10aの頂部に形成してある下孔にねじ込まれており、これにより、第2固定用鋼板13及び平面ボード11aを屋根下地10の山部10aの頂部に固定することができる。
【0044】
また、平場用留め付け材22は、第2固定用鋼板13及び平面ボード11aと一緒に第1固定用鋼板12の第1水平板部12aも貫通している。平場用留め付け材22を第1水平板部12aに形成してある下孔にねじ込むこともできる。したがって、第1固定用鋼板12の第1水平板部12aは、平場用留め付け材22によって屋根下地10の山部10aの頂部に固定される。
【0045】
固定金具14は、第2固定用鋼板13の上に配設されている。具体的には、固定金具14の下面が第2固定用鋼板13の上面に重なっている。固定金具14は、第2固定用鋼板13の長手方向、即ち入り隅部4に沿うように長く延びている。複数の固定金具14を平場部2の周縁部に沿うように全周に渡って配設することができる。固定金具14は、図示しないが、鋼板製の芯材を、防水シート15と同系の樹脂で被覆した被覆鋼板等で構成されている。樹脂による被覆は、芯材の上面側のみでも構わない。また、固定金具14の厚みは、第2固定用鋼板13の厚みと同じであってもよいし、一方が他方に比べて厚くてもよい。
【0046】
固定金具14の大きさと第2固定用鋼板13の大きさとを比較した時、第2固定用鋼板13は固定金具14よりも大きく形成されている。
図2に示すように、第2固定用鋼板13の幅方向(
図2における左右方向)の寸法は、固定金具14の幅方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、第2固定用鋼板13の幅方向一端部(
図2における右端部)が固定金具14の右端部よりも所定寸法以上突出することになる。この所定寸法は、例えば10mm以上、または20mm以上に設定することができる。尚、第2固定用鋼板13の長手方向の寸法と、固定金具14の長手方向の寸法とは同じに設定されている。
【0047】
固定金具14は、第2固定用鋼板13の上面に重なるように形成された本体板部14aと、本体板部14aの外縁部から上方へ突出する突出板部14bとを有している。本体板部14aは、第2固定用鋼板13を留め付けている平場用留め付け材22の頭部を覆うように形成されている。
【0048】
突出板部14bを設けることでリブのように機能するので、固定金具14の変形が抑制される。突出板部14bの高さは、第1固定用鋼板12の第1立上板部12bよりも低く設定されている。尚、突出板部14bは必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0049】
固定金具14は、複数の固定金具用留め付け材(第1留め付け材)23によって第2固定用鋼板13に固定されている。固定金具用留め付け材23はドリルネジやタッピングビス等で構成されており、固定金具14の長手方向に間隔をあけて設けられている。固定金具用留め付け材23の間隔をピッチという。すなわち、固定金具用留め付け材23は、固定金具14の本体板部14aを貫通して第2固定用鋼板13に形成してある下孔にねじ込まれるとともに、当該第2固定用鋼板13を貫通して平面ボード11aに達している。固定金具用留め付け材23における第2固定用鋼板13よりも下側部分は、平面ボード11aにねじ込まれている。
【0050】
固定金具14は第2固定用鋼板13に対して固定金具用留め付け材23で留め付けられているのに対し、第2固定用鋼板13は平場用留め付け材22で屋根下地10に留め付けられるとともに固定金具用留め付け材23及び平面ボード11aを介して屋根下地10に留め付けられている。平場用留め付け材22のピッチ及び固定金具用留め付け材23のピッチは殆ど同じである。したがって、第2固定用鋼板13は、固定金具14の第2固定用鋼板13への留め付け箇所よりも多くの留め付け箇所によって屋根下地10に固定されることになる。
【0051】
防水シート15は、平場部2に敷設される平場部用シート15aと、立ち上がり部3に接着される立ち上がり部用シート15bとで構成されている。平場部用シート15a及び立ち上がり部用シート15bは、高分子系防水シートであり、例えば塩化ビニル樹脂系シートや熱可塑性エラストマー系防水シート等で構成することができる。平場部用シート15a及び立ち上がり部用シート15bの厚みは特に限定されるものではないが、例えば1mm以上に設定することができる。
【0052】
平場部用シート15aは、固定金具14の上面に溶剤で溶着固定又は熱風で融着固定される。入り隅部4に固定金具14を配設しているので、経年や季節の変化、昼夜の温度差による平場部用シート15a及び屋根下地10の動きで平場部用シート15aが入り隅部4から浮き上がるのを防止できるとともに、平場部用シート15aの破断も防止できる。特に、入り隅部4に固定金具14を留め付け材23で固定しているので、耐風性の観点からも有効である。尚、平場部2については、従来から使用されているディスク型等の固定金具によって防水シートを固定することができる。
【0053】
(改修工事対応構造)
上記のように構成された屋上防水構造1では、新設時の防水シート15によって防水性が確保される。しかし、経年によって防水シート15が劣化して防水性能が低下する場合がある。防水性能が低下した場合、改修工事が必要であり、一般的には
図17に示すように古い防水シートを残したまま、新たな防水シートを古い防水シートの上に貼り付けるのであるが、このとき、改修用固定金具を改修用留め付け材によって屋根下地に留め付けてしまうと、天井が張られていないので、穿孔時の切り粉が屋内に落下してしまうとともに、穿孔時の騒音も問題となる。本実施形態に係る屋上防水構造1では、屋根下地10への穿孔を不要にしながら、改修用固定金具を強固に固定可能な改修工事対応構造を新設時に屋上防水構造1に組み込んでいる。
【0054】
すなわち、
図4に示すように、第2固定用鋼板13には、新設時の防水シート15とは異なる改修用防水シート31が固定される改修用固定金具30を固定するための改修用固定部13cが設けられている。改修用固定部13cは、第2固定用鋼板13における平場用留め付け材22の貫通部位及び固定金具用留め付け材23の貫通部位を除く部位で構成されている。第2固定用鋼板13における平場用留め付け材22の貫通部位は、第2固定用鋼板13を屋根下地10に固定する部位であり、また、第2固定用鋼板13における固定金具用留め付け材23の貫通部位は、固定金具14を第2固定用鋼板13に固定する部位であり、これら貫通部位には、改修用固定金具30を留め付けるための改修用留め付け材32を貫通させることはできない。
【0055】
言い換えると、第2固定用鋼板13における平場用留め付け材22の貫通部位及び固定金具用留め付け材23の貫通部位以外の部位(改修用固定部13c)であれば、改修用留め付け材32を貫通させることが可能である。改修用留め付け材32が改修用固定部13cを貫通可能であるということは、改修用留め付け材32を改修用固定部13cの貫通部位にねじ込むことができ、これにより、改修用固定金具30を改修用固定部13cに固定することができる。改修用留め付け材32をねじ込む部位には下孔が形成されていてもよい。
【0056】
この実施形態では、改修用留め付け材32を、平場用留め付け材22の貫通部位と固定金具用留め付け材23の貫通部位との間の改修用固定部13cに貫通させている。これに限らず、改修用留め付け材32を平場用留め付け材22の貫通部位よりも内側に貫通させてもよいし、固定金具用留め付け材23よりも外側に貫通させてもよい。また、改修用留め付け材32は複数設けることもできる。
【0057】
改修用固定金具30は、新設時に用いた固定金具14と同じものを使用することができる。すなわち、改修用固定金具30は、本体板部30aと突出板部30bとを有しており、図示しないが、鋼板製の芯材を、新たな防水シート(改修用防水シート)31と同系の樹脂で被覆した被覆鋼板等で構成されている。改修用防水シート31は、新設時(既存)の防水シート15と同じものであるが、新設時とは異なっていてもよい。
【0058】
改修用留め付け材32は、ドリルネジやタッピングビス等で構成されており、新築時に用いた固定金具用留め付け材23よりも長く形成されている。具体的には、改修用留め付け材32の長さは、改修用固定金具30の本体板部30aと、新築時の平場部用シート15a及び立ち上がり部用シート15bの重なり部と、新築時の固定金具14の本体板部14aと、改修用固定部13cとを貫通するように設定されている。さらに、改修用留め付け材32は、改修用固定部13cよりも下側へ突出し、この改修用固定部13cよりも下側へ突出した部分は、平面ボード11aに達している。ただし、改修用留め付け材32は、屋根下地10には達しないようにその長さの上限が設定されている。
【0059】
(改修方法)
次に、上記改修工事対応構造を備えた屋上防水構造1の改修方法について説明する。まず、改修用固定金具30を既存の防水シート15の上面における入り隅部4に載置する。その後、改修用留め付け材32を上方からねじ込むことにより、改修用固定金具30を第2固定用鋼板13に固定する。改修用留め付け材32は、改修用固定金具30の長手方向に間隔をあけて設けることができる。改修用固定金具30を固定した後、改修用防水シート31を改修用固定金具30の上面に溶剤で溶着固定又は熱風で融着固定する。
【0060】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、新設時には、平面ボード11aを厚み方向に挟むようにして第1固定用鋼板12と第2固定用鋼板13とが配設し、両固定用鋼板12、13を屋根下地10に固定することができる。そして、新設時の固定金具14は固定金具用留め付け材23によって第2固定用鋼板13に固定できるので、第2固定用鋼板13を介して屋根下地10に固定できる。この新設時に固定金具14に固定された防水シート15によって新設時の防水性を確保できる。
【0061】
新設時から年数が経過して防水シート15が劣化して改修工事を行う際には、改修用固定金具30を第2固定用鋼板13の改修用固定部13cに固定することができ、改修用留め付け材32が屋根下地10には達しない。よって、切り粉が屋内に落下することはないとともに、改修時の屋内への騒音伝達も抑制される。そして、改修用防水シート31を改修用固定金具30に固定することで、改修工事が完了する。
【0062】
また、特に入り隅部4は、屋上防水構造1の不具合発生防止や耐風性の観点から見ると非常に重要な部位である。改修時、仮に平場部2は既存の固定金具(図示せず)で代用できたとしても、入り隅部4の固定金具は、改修用固定金具30として固定金具14とは別に設けるのが好ましい。
【0063】
また、第1固定用鋼板12のみしか設けていない場合に比べて、第2固定用鋼板13を設けておくことで、改修用留め付け材32の第2固定用鋼板13へのねじ込み位置と、改修用固定金具30へのねじ込み位置とが互いに接近するので、気温変化や風などによる水平方向の繰返し荷重に耐える構造とすることができる。これにより、改修用留め付け材32の緩みが減少する。また、改修用留め付け材32の長さの短いものでよいため、コストを低減できるとともに、作業性も向上する。
【0064】
(実施形態2)
図5及び
図6は、本発明の実施形態2に係るものであり、
図5は新設時、
図6は改修時をそれぞれ示している。実施形態2では、新設時に第2固定用鋼板13を枠材17に固定する点と、改修時に改修用固定金具30を第2固定用鋼板13の上下方向に延びる部分に固定する点とで実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0065】
図5に示すように、第2固定用鋼板13は、水平に延びる第2水平板部13aと、第2水平板部13aの外縁部から上方へ延びる第2立上板部13bとを有している。第2水平板部13aは、平面ボード11aの上に配設された状態で屋根下地10に固定される部分である。第2立上板部13bは、立上ボード11bに沿って上下方向に延びる部分である。第2立上板部13bは、複数の上側留め付け材24によって枠材17に固定されている。上側留め付け材24は、例えばドリルネジやタッピングビス等で構成されており、第2固定用鋼板13の長手方向に間隔をあけて設けられている。すなわち、上側留め付け材24は第2立上板部13b及び立上ボード11bを水平方向に貫通した後、枠材17の一部を貫通し、当該枠材17の一部にねじ込まれている。これにより、第2固定用鋼板13の上下方向に離れた複数箇所がそれぞれ枠材17及び屋根下地10に固定されることになるので、第2固定用鋼板13の固定強度が高まる。
【0066】
第2固定用鋼板13の第2立上板部13bには、改修用固定金具30を固定するための改修用固定部13dが設けられている。改修用固定部13dは、第2立上板部13bにおける上側留め付け材24の貫通部位を除く部位で構成されている。これにより、改修用留め付け材33を改修用固定部13dに貫通させてねじ込むことができるので、改修用固定金具30を改修用固定部13dに固定できる。
【0067】
図6に示すように、改修用固定金具30の突出板部30bは、上方へ向かって上側留め付け材24よりも高い所まで突出している。突出板部30bには、改修用留め付け材33が貫通するようになっている。改修用留め付け材33は、上側留め付け材24よりも下に位置付けられている。
【0068】
したがって、実施形態2の改修時には、改修用固定金具30を既存の防水シート15の上面における入り隅部4に載置することができる。その後、改修用留め付け材33を、突出板部30bの側方から当該突出板部30b及び改修用固定部13dを貫通させ、改修用固定部13dにねじ込むことにより、改修用固定金具30を第2固定用鋼板13に固定する。改修用留め付け材33は、改修用固定金具30の長手方向に間隔をあけて設けることができる。改修用固定金具30を固定した後、改修用防水シート31を改修用固定金具30に溶剤で溶着固定又は熱風で融着固定する。
【0069】
この実施形態2の場合も、実施形態1と同様に、改修時に切り粉が屋内に落下するのを抑制して屋内環境を良好に保ちながら、新しい防水シート31を高い固定強度で固定することができる。
【0070】
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3に係るものであり、新設時を示している。実施形態3では、新設時に固定金具14と第2固定用鋼板13を共通の固定金具用留め付け材23で屋根下地10に固定する点において実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0071】
すなわち、実施形態3の固定金具用留め付け材23は、実施形態1のものに比べて長くなっており、固定金具用留め付け材23の下側が屋根下地10の山部10aの頂部を貫通するように、固定金具用留め付け材23の長さが設定されている。これにより、固定金具用留め付け材23の下側が屋根下地10の山部10aの頂部にねじ込まれるので、固定金具用留め付け材23によって固定金具14と第2固定用鋼板13を屋根下地10に固定できる。
【0072】
この実施形態3の場合も、実施形態1と同様に、改修時に切り粉が屋内に落下するのを抑制して屋内環境を良好に保ちながら、新しい防水シート31を高い固定強度で固定することができる。
【0073】
また、この実施形態3では、固定金具用留め付け材23が第2固定用鋼板13を貫通し、当該第2固定用鋼板13にもねじ込まれているので、固定強度がより一層向上し、固定金具用留め付け材23の抜けを防止できる。
【0074】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4に係るものであり、新設時を示している。実施形態4では、新設時に固定金具14と第2固定用鋼板13を共通の固定金具用留め付け材23で屋根下地10に固定する点と、平場用留め付け材22を省略している点とで実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0075】
実施形態4では、平場用留め付け材22を用いることなく、固定金具用留め付け材23が屋根下地10の山部10aの頂部を貫通するように、固定金具用留め付け材23の長さが設定されている。これにより、実施形態3のものと同様に、固定金具用留め付け材23によって固定金具14と第2固定用鋼板13を屋根下地10に固定できる。
【0076】
この実施形態4の場合も、実施形態1と同様に、改修時に切り粉が屋内に落下するのを抑制して屋内環境を良好に保ちながら、新しい防水シート31を高い固定強度で固定することができる。
【0077】
また、この実施形態4では、平場用留め付け材22を省略しているので、部品点数を削減できるとともに、改修時の手間及びコストを削減できる。
【0078】
また、
図9に示す変形例のように、改修用防水シート31を接着剤S(ハッチングで示す)によって新築時の平場部用シート15a及び立ち上がり部用シート15bに貼り付けることもできる。この接着工法によれば、入り隅部4以外の部分に固定金具を設置する必要が無く、その固定金具用の留め付け材を使用しなくて済むので、切り粉などの問題が発生しない。
【0079】
(実施形態5)
図10は、本発明の実施形態5に係るものであり、新設時を示している。また、
図11は、実施形態5に係る改修時を示している。実施形態5では、第2固定用鋼板13を屋根下地10に直接固定していない点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0080】
すなわち、実施形態4では、屋根下地10の山部10aが実施形態1のものに比べて内側に位置している。そのため、平場用留め付け材22が屋根下地10の谷部10bに対応する箇所に位置しており、屋根下地10にはねじ込まれない状態になる。したがって、第2固定用鋼板13は、屋根下地10に対しては直接固定されないが、平場用留め付け材22によって第1固定用鋼板12には固定されることになる。第1固定用鋼板12は、水平板部用留め付け材20によって屋根下地10の山部10aに固定されているので、第2固定用鋼板13は、第1固定用鋼板12を介して屋根下地10に固定される。
【0081】
この実施形態5の場合も、実施形態1と同様に、改修時に切り粉が屋内に落下するのを抑制して屋内環境を良好に保ちながら、新しい防水シート31を高い固定強度で固定することができる。
【0082】
(実施形態6)
図12は、本発明の実施形態6に係るものであり、新設時を示している。また、
図13は、実施形態6に係る改修時を示している。実施形態6では、上面が平面状をなす屋根下地100を備えている点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0083】
実施形態6に係る屋上防水構造1は、鉄筋コンクリート(RC)からなる屋根下地100と、ボード11と、固定用鋼板130と、固定金具14と、防水シート15とを備えている。屋根下地100の上面は、平面状をなしている。屋根下地100の上面には、ボード11が配設されている。ボード11の上には、屋根下地100に固定された固定用鋼板130が配設されている。固定用鋼板130は、複数の平場用留め付け材22によって屋根下地100に固定されている。平場用留め付け材22は、屋根下地100にねじ込まれている。固定用鋼板130には、新設時の防水シート15とは異なる改修用防水シート31が固定される改修用固定金具30を固定するための改修用固定部130cが設けられている。
【0084】
固定金具14は、固定用鋼板130の上に配設されており、留め付け材230によって屋根下地100に固定されている。留め付け材230は、固定金具14、固定用鋼板130及びボード11を貫通して屋根下地100にねじ込まれている。
【0085】
改修時には
図13に示すように、改修用固定金具30を既存の防水シート15の上面における入り隅部4に載置する。その後、改修用留め付け材320を上方からねじ込むことにより、改修用固定金具30を固定用鋼板130の改修用固定部130cに固定する。改修用固定金具30を固定した後、改修用防水シート31を改修用固定金具30の上面に溶剤で溶着固定又は熱風で融着固定する。
【0086】
この実施形態6の場合も、実施形態1と同様に、改修時に切り粉が屋内に落下するのを抑制して屋内環境を良好に保ちながら、新しい防水シート31を高い固定強度で固定することができる。
【0087】
(実施形態7)
図14は、本発明の実施形態7に係るものであり、新設時を示している。また、
図15は、実施形態7に係る改修時を示している。実施形態7では、実施形態6に対して平場用留め付け材22を有していない点で異なっており、他の部分は実施形態6と同じであるため、実施形態6と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。実施形態7のように、平場用留め付け材22が無くても、固定用鋼板130を固定金具14と共に留め付け材230によって屋根下地100に固定することができる。
【0088】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0089】
第2固定用鋼板13の形状は上述した形状に限られるものではなく、例えば、端部に折り返し加工が施された形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明に係る屋上防水構造は、例えば、金属屋根下地やRC下地等の屋根に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 屋上防水構造
10 屋根下地
11 ボード
11b 立上ボード
12 第1固定用鋼板
12b 第1立上板部
13 第2固定用鋼板
13b 第2立上板部
13c 改修用固定部
13d 改修用固定部
14 固定金具(新設時)
17 枠材(屋根構成部材)
20 水平板部用留め付け材(第2留め付け材)
23 固定金具用留め付け材(第1留め付け材)
15 防水シート(新設時)
30 改修用固定金具
31 改修用防水シート
32 改修用留め付け材
100 屋根下地