(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031488
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】pチャネルGaNMOSデバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20230302BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230302BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230302BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20230302BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 F
H01L29/78 301X
H01L29/78 301G
H01L29/78 301H
H01L29/78 301B
H01L29/78 301V
H01L29/44 S
H01L29/44 L
H01L29/50 M
H01L21/28 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137005
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】星井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】筒井 一生
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
5F140
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB02
4M104BB05
4M104BB14
4M104CC01
4M104CC05
4M104DD34
4M104DD68
4M104EE03
4M104EE16
4M104FF04
4M104HH20
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD10
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GQ03
5F102GQ09
5F102GR01
5F102GR04
5F102GR07
5F102GV07
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC16
5F102HC19
5F102HC21
5F140AA26
5F140AC01
5F140AC18
5F140BA06
5F140BB06
5F140BB18
5F140BC12
5F140BC15
5F140BD05
5F140BE03
5F140BF05
5F140BF11
5F140BF15
5F140BJ05
5F140BJ11
5F140BJ15
5F140BJ17
5F140CB04
(57)【要約】
【課題】 性能を向上させることができるpチャネルGaNMOSデバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 pチャネルGaNMOSデバイス1は、GaN層14と、ソース領域に対応する面14aに形成されたp型GaN層15aと、ドレイン領域に対応する面14bに形成されたp型GaN層15bと、ゲート領域に対応する面14c、面14cに隣接するp型GaN層15aの側面及び面14cに隣接するp型GaN層15bの側面に形成された絶縁層16と、ゲート電極19と、を備え、ゲート電極19に負のゲート電圧を印加したときに、p型GaN層15a、GaN層14及びp型GaN層15bに亘る正孔の蓄積層ACCがp型GaN層15aの側面、面14c及びp型GaN層15bの側面に沿って形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に配置され、ゲート領域に対応する第1面、前記第1面に隣接するとともにソース領域に対応する第2面及び前記第1面に隣接するとともにドレイン領域に対応する第3面を有する第1GaN層と、
前記第2面に形成された第1p型GaN層と、
前記第3面に形成された第2p型GaN層と、
前記第1面、前記第1面に隣接する前記第1p型GaN層の側面及び前記第1面に隣接する前記第2p型GaN層の側面に形成された絶縁層と、
前記絶縁層に形成され、前記ゲート領域に印加するための負のゲート電圧が印加される第1金属電極と、
を備え、前記ゲート領域に前記負のゲート電圧を印加したときに、前記第1p型GaN層、前記第1GaN層及び前記第2p型GaN層に亘る正孔の蓄積層が、前記第1面に隣接する前記第1p型GaN層の側面、前記第1面及び前記第1面に隣接する前記第2p型GaN層の側面に沿って形成されることを特徴とする、pチャネルGaNMOSデバイス。
【請求項2】
前記基板の上に配置された第2GaN層と、
前記第2GaN層に形成されたAlGaN層と、
を更に備え、前記第1GaN層は、前記AlGaN層に形成されている、請求項1に記載のpチャネルGaNMOSデバイス。
【請求項3】
前記p型GaNMOSデバイスの閾値電圧を上げるためのバックゲート電圧が印加される第2金属電極を更に備える、請求項2に記載のpチャネルGaNMOSデバイス。
【請求項4】
GaNによって構成され、ゲート領域に対応する第1面、前記第1面に隣接するとともにソース領域に対応する第2面及び前記第1面に隣接するとともにドレイン領域に対応する第3面を有する基板と、
前記第2面に形成された第1p型GaN層と、
前記第3面に形成された第2p型GaN層と、
前記第1面、前記第1面に隣接する前記第1p型GaN層の側面及び前記第1面に隣接する前記第2p型GaN層の側面に形成された絶縁層と、
前記絶縁層に形成され、前記ゲート領域に印加するための負のゲート電圧が印加される金属電極と、
を備え、前記ゲート領域に前記負のゲート電圧を印加したときに、前記第1p型GaN層、前記基板及び前記第2p型GaN層に亘る正孔の蓄積層が、前記第1面に隣接する前記第1p型GaN層の側面、前記第1面及び前記第1面に隣接する前記第2p型GaN層の側面に沿って形成されることを特徴とする、pチャネルGaNMOSデバイス。
【請求項5】
基板の上に配置されたGaN層に形成されたp型GaNキャップ層のうちのゲート領域に対応する前記GaN層の第1面に形成された部分に対して、改質された表面層を形成するためのCl2ガス又はCl2プラズマへの曝露及び前記改質された表面層を除去するためのN2プラズマへの曝露によるエッチング処理を行って、前記第1面を露出し、前記第1面に隣接するとともにソース領域に対応する前記GaN層の第2面に第1p型GaN層を形成し、かつ、前記第1面に隣接するとともにドレイン領域に対応する前記GaN層の第3面に第2p型GaN層を形成するエッチング処理工程と、
前記ゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、前記第1p型GaN層、前記GaN層及び前記第2p型GaN層に亘る正孔の蓄積層が、前記第1面に隣接する前記第1p型GaN層の側面、前記第1面及び前記第1面に隣接する前記第2p型GaN層の側面に沿って形成されるようにするために、前記第1面に隣接する前記第1p型GaN層の側面、前記第1面及び前記第1面に隣接する前記第2p型GaN層の側面に絶縁層を形成した後に、前記負のゲート電圧が印加される金属電極を前記絶縁層に形成する絶縁層及び金属電極形成工程と、
を備えることを特徴とする、pチャネルGaNMOSデバイスの製造方法。
【請求項6】
GaNによって構成された基板に形成されたp型GaNキャップ層のうちのゲート領域に対応する前記基板の第1面に形成された部分に対して、改質された表面層を形成するためのCl2ガス又はCl2プラズマへの曝露及び前記改質された表面層を除去するためのN2プラズマへの曝露によるエッチング処理を行って、前記第1面を露出し、前記第1面に隣接するとともにソース領域に対応する前記基板の第2面に第1p型GaN層を形成し、かつ、前記第1面に隣接するとともにドレイン領域に対応する前記基板の第3面に第2p型GaN層を形成するエッチング処理工程と、
前記ゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、前記第1p型GaN層、前記基板及び前記第2p型GaN層に亘る正孔の蓄積層が、前記第1面に隣接する前記第1p型GaN層の側面、前記第1面及び前記第1面に隣接する前記第2p型GaN層の側面に沿って形成されるようにするために、前記第1面に隣接する前記第1p型GaN層の側面、前記第1面及び前記第1面に隣接する前記第2p型GaN層の側面に絶縁層を形成した後に、前記負のゲート電圧が印加される金属電極を前記絶縁層に形成する絶縁層及び金属電極形成工程と、
を備えることを特徴とする、pチャネルGaNMOSデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pチャネルGaNMOSデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子機器の省電力化の要求に応えるために、GaN(窒化ガリウム)層を備えるGaNMOSデバイスをパワーデバイスとして使用することに注目が集まっている。特に、GaNMOSデバイスを使用したモノリシック集積回路は、電源モジュールの動作の高周波化並びにシステムの高性能化及び小型化の実現に有利である。
【0003】
GaNMOSデバイスを製造するに際し、絶縁層及びゲート電極を順次形成するためのゲート領域に対応するGaN層の面を露出するために、エッチング処理が行われる。このようなエッチング処理として、改質されたGaN表面層を形成するためのGaN層の露出された面の塩素含有プラズマへの曝露及び改質されたGaN表面層を除去するための改質されたGaN表面層の不活性プラズマへの曝露によるエッチング処理が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モノリシック集積回路においてCMOS回路構成を選択できることが有利である。モノリシック集積回路においてCMOS回路構成を選択できるようにするためには、pチャネルGaNMOSデバイスの性能を向上させることが要求される。
【0006】
pチャネルGaNMOSデバイスの性能を向上させるためには、pチャネルGaNMOSデバイスのゲート領域に負のゲート電圧を印加したときのpチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流を増強できるようにする必要がある。
【0007】
具体的には、pチャネルGaNMOSデバイスのゲート領域に同一のゲート電圧を印加したときのチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流ができるだけ大きいことが望まれる。
【0008】
pチャネルGaNMOSデバイスを製造する際にGaN層の面を露出するために、塩素含有プラズマへの曝露及びGaN表面層の不活性プラズマへの曝露による上述した従来のエッチング処理を行った場合、エッチング処理を行ったGaN層の結晶表面の窒素欠陥等のダメージが大きくなる。このようなダメージが大きくなると、GaN層のゲート領域に対応する面の特性が悪化する。
【0009】
GaN層のゲート領域に対応する面の特性が悪化すると、pチャネルGaNMOSデバイスのゲート領域に負のゲート電圧を印加したときにGaN層内でゲート領域に対応する面に沿って正孔の蓄積層が形成されない。
【0010】
GaN層内でゲート領域に対応する面に沿って蓄積層が形成されないときには、pチャネルGaNMOSデバイスのゲート領域に負のゲート電圧を印加したときのpチャネルGaNMOSデバイスのソース領域とドレイン領域の間の蓄積層を介した正孔の移動がなくなる。
【0011】
蓄積層を介した正孔の移動がなくなると、pチャネルGaNMOSデバイスのゲート領域に負のゲート電圧を印加したときのpチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流の増強が困難になる。pチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流が困難になることは、pチャネルGaNMOSデバイスの性能の向上の障害となる。
【0012】
本発明の目的は、性能を向上させることができるpチャネルGaNMOSデバイス及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるpチャネルGaNMOSデバイスは、基板と、基板の上に配置され、ゲート領域に対応する第1面、第1面に隣接するとともにソース領域に対応する第2面及び第1面に隣接するとともにドレイン領域に対応する第3面を有する第1GaN層と、第2面に形成された第1p型GaN層と、第3面に形成された第2p型GaN層と、第1面、第1面に隣接する第1p型GaN層の側面及び第1面に隣接する第2p型GaN層の側面に形成された絶縁層と、絶縁層に形成され、ゲート領域に印加するための負のゲート電圧が印加される第1金属電極と、を備え、ゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、第1p型GaN層、第1GaN層及び第2p型GaN層に亘る正孔の蓄積層が、第1面に隣接する第1p型GaN層の側面、第1面及び第1面に隣接する第2p型GaN層の側面に沿って形成されることを特徴とする。
【0014】
好適には、本発明によるpチャネルGaNMOSデバイスは、基板の上に配置された第2GaN層と、第2GaN層に形成されたAlGaN層と、を更に備え、第1GaN層は、AlGaN層に形成されている。
【0015】
好適には、本発明によるpチャネルGaNMOSデバイスは、pチャネルGaNMOSデバイスの閾値電圧を上げるためのバックゲート電圧が印加される第2金属電極を更に備える。
【0016】
本発明による他のpチャネルGaNMOSデバイスは、GaNによって構成され、ゲート領域に対応する第1面、第1面に隣接するとともにソース領域に対応する第2面及び第1面に隣接するとともにドレイン領域に対応する第3面を有する基板と、第2面に形成された第1p型GaN層と、第3面に形成された第2p型GaN層と、第1面、第1面に隣接する第1p型GaN層の側面及び第1面に隣接する第2p型GaN層の側面に形成された絶縁層と、絶縁層に形成され、ゲート領域に印加するための負のゲート電圧が印加される金属電極と、を備え、ゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、第1p型GaN層、基板及び第2p型GaN層に亘る正孔の蓄積層が、第1面に隣接する第1p型GaN層の側面、第1面及び第1面に隣接する第2p型GaN層の側面に沿って形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明によるpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法は、基板の上に配置されたGaN層に形成されたp型GaNキャップ層のうちのゲート領域に対応するGaN層の第1面に形成された部分に対して、改質された表面層を形成するためのCl2ガス又はCl2プラズマへの曝露及び改質された表面層を除去するためのN2プラズマへの曝露によるエッチング処理を行って、第1面を露出し、第1面に隣接するとともにソース領域に対応するGaN層の第2面に第1p型GaN層を形成し、かつ、第1面に隣接するとともにドレイン領域に対応するGaN層の第3面に第2p型GaN層を形成するエッチング処理工程と、ゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、第1p型GaN層、GaN層及び第2p型GaN層に亘る正孔の蓄積層が、第1面に隣接する第1p型GaN層の側面、第1面及び第1面に隣接する第2p型GaN層の側面に沿って形成されるようにするために、第1面に隣接する第1p型GaN層の側面、第1面及び第1面に隣接する第2p型GaN層の側面に絶縁層を形成した後に、負のゲート電圧が印加される金属電極を絶縁層に形成する絶縁層及び金属電極形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明による他のpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法は、GaNによって構成された基板に形成されたp型GaNキャップ層のうちのゲート領域に対応する基板の第1面に形成された部分に対して、改質された表面層を形成するためのCl2ガス又はCl2プラズマへの曝露及び改質された表面層を除去するためのN2プラズマへの曝露によるエッチング処理を行って、第1面を露出し、第1面に隣接するとともにソース領域に対応する基板の第2面に第1p型GaN層を形成し、かつ、第1面に隣接するとともにドレイン領域に対応する基板の第3面に第2p型GaN層を形成するエッチング処理工程と、ゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、第1p型GaN層、基板及び第2p型GaN層に亘る正孔の蓄積層が、第1面に隣接する第1p型GaN層の側面、第1面及び第1面に隣接する第2p型GaN層の側面に沿って形成されるようにするために、第1面に隣接する第1p型GaN層の側面、第1面及び第1面に隣接する第2p型GaN層の側面に絶縁層を形成した後に、負のゲート電圧が印加される金属電極を絶縁層に形成する絶縁層及び金属電極形成工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、性能を向上させることができるpチャネルGaNMOSデバイス及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法の工程を示す図である。
【
図3】発明の第1実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの製造過程を説明するための図である。
【
図4】
図2のステップS5を詳しく説明するための図である。
【
図5】実施例の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイス及び比較例の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流・ゲート電圧特性及び伝達コンダクタンス・ゲート電圧特性を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの概略図である。
【
図7】本発明の第3実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるpチャネルGaNMOSデバイス及びその製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。図面中、同一部分に同一符号を付すものとする。
【0022】
図1は、本発明の第1実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの概略図である。
図1に示すpチャネルGaNMOSデバイス1は、pチャネルGaNMOSデバイス1のゲート領域に負のゲート電圧が印加された状態を示す。
【0023】
pチャネルGaNMOSデバイス1は、基板11と、GaN層12と、AlGaN層13と、GaN層14と、p型GaN層15aと、p型GaN層15bと、絶縁層16と、ソース電極17と、ドレイン電極18と、ゲート電極19と、を備える。
【0024】
基板11は、GaN単結晶、サファイア、Si(111)又はセラミックによって構成される。GaN層12は、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD)によって基板11の表面に形成され、GaN層14より高い抵抗を有する。GaN層12は、第2GaN層の一例である。
【0025】
AlGaN層13、例えば、MOCVDによってGaN層12の一部に形成される。GaN層14は、例えば、MOCVDによってAlGaN層13に形成される。GaN層14には、pチャネルが形成される。GaN層14は、第1GaN層の一例である。
【0026】
p型GaN層15aは、pチャネルGaNMOSデバイス1のソース領域に対応する面14aに形成される。p型GaN層15bは、pチャネルGaNMOSデバイス1のドレイン領域に対応する面14bに形成される。
【0027】
p型GaN層15a及びp型GaN層15bは、例えば、Mgをドープした単一のp型GaN層をGaN層14にキャップした後にエッチングを行うことによって形成される。p型GaN層15aは、第1p型GaN層の一例である。p型GaN層15bは、第2p型GaN層の一例である。
【0028】
絶縁層16は、例えば、面14aのうちのソース電極17が形成された面を除く部分、面14bののうちのドレイン電極18が形成された面を除く部分、面14aと面14bの間のpチャネルGaNMOSデバイス1のゲート領域に対応する面14cにSiO2を堆積することによって形成される。絶縁層16を、面14cに隣接するp型GaN層15aの側面、面14c及び面14cに隣接するp型GaN層15bの側面のみに形成してもよい。
【0029】
面14cは、面14a及び面14bと略同一の面に形成される。面14aは、GaN層の第2面の一例である。面14bは、GaN層の第3面の一例である。面14cは、GaN層の第1面の一例である。
【0030】
ソース電極17は、例えば、Ni/Al/Ti/Alを面14aの上に堆積することによって形成される。ドレイン電極18は、例えば、例えば、Ni/Al/Ti/Alを面14bの上に堆積することによって形成される。ゲート電極19は、例えば、Ni/Alを絶縁層16の上に堆積することによって形成される。電源(図示せず)がゲート電極19に負のゲート電圧を印加することによって、ソース電極17とドレイン電極18の間を流れる電流が生成される。ゲート電極19は、第1金属電極の一例である。第1実施の形態によれば、pチャネルGaNMOSデバイス1は、基板11とGaN層12の間に介在するバッファ層20を更に備える。バッファ層20は、例えば、AlGaNによって構成される。
【0031】
pチャネルGaNMOSデバイスの第1実施の形態によれば、GaN層12内のAlGaN層13に接触する面に沿って正の分極電荷が生じ、2次元電子ガス2DEGが誘起される。また、GaN層14内のAlGaN層13に接触する面に沿って逆極性の分極電荷が生じ、2次元正孔ガス2DHGが誘起される。
【0032】
2次元電子ガス2DEG及び2次元正孔ガス2DHGは、pチャネルGaNMOSデバイス1のゲート領域に負のゲート電圧が印加されない状態でも生じる。また、2次元正孔ガス2DHGは、ゲート電極19に印加されるゲート電圧が予め決定された範囲内(例えば、0~4V)であるときのソース電極17とドレイン電極18の間のソース-ドレイン電流の生成に寄与する。
【0033】
また、pチャネルGaNMOSデバイスの第1実施の形態によれば、ゲート電極19を介してpチャネルGaNMOSデバイス1のゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、
図1に示すような正孔の蓄積層ACCがp型GaN層15a、GaN層14及びp型GaN層15bに亘って形成される。蓄積層ACCは、面14cに隣接するp型GaN層15aの側面、面14c及び面14cに隣接するp型GaN層15bの側面に沿って形成される。
【0034】
蓄積層ACCは、予め決定された絶対値の負のゲート電圧(例えば、-4V)がゲート電極19に印加されたときに、pチャネルGaNMOSデバイス1のソース電極17とドレイン電極18の間を流れるソース-ドレイン電流の生成に寄与する蓄積層ACCの正孔の移動が生じる。
【0035】
蓄積層ACCの正孔の移動によって、pチャネルGaNMOSデバイス1のゲート電極19に負のゲート電圧を印加したときのpチャネルGaNMOSデバイス1のソース電極17とドレイン電極18の間を流れるソース-ドレイン電流を増強することができる。したがって、pチャネルGaNMOSデバイス1の性能を向上させることができる。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法の工程を示す図であり、
図3は、発明の第1実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの製造過程を説明するための図である。
【0037】
先ず、ステップS1において、GaN層12’、AlGaN層13’、GaN層14’及びp型GaN層15’が基板11に順次形成された分極接合基板21’を配置し、素子分離のためのレジストパターン31をフォトリソグラフィで形成する(
図3(a))。
【0038】
次に、ステップS2において、(反応性イオンエッチング)RIE装置を用いて素子分離のためのエッチングを行い、GaN層12、AlGaN層13、GaN層14及びp型GaN層15を基板11に順次形成された分極接合基板21を形成する(
図3(b))。p型GaN層15は、p型GaNキャップ層の一例である。
【0039】
次に、ステップS3において、真空蒸着装置による金属堆積及びリフトオフによって、Ni/Alから構成されたソース電極17’及びドレイン電極18’をそれぞれ形成し、アニールを行う(
図3(c))。
【0040】
次に、ステップS4において、ゲートリセス用のレジストパターン32a,32bをフォトリソグラフィで形成する(
図3(d))。
【0041】
次に、ステップS5において、RIE装置を用いてp型GaN層15の露出した部分及びその部分に対応するGaN層14の表面層のエッチング処理を行う(
図3(e))。
【0042】
図4は、
図2のステップS5を詳しく説明するための図である。
図2のステップS5において、先ず、p型GaN層15の露出した部分の原子層又はその部分に対応するGaN層14の表面層の原子層にCl
2ガスを曝露する(
図4(a))。
【0043】
このようなCl
2ガスの曝露によって、原子層の部分αのうちのCl
2ガスを曝露した部分は、改質された部分βとなり、部分βからなる改質された表面層が形成される(
図4(b))。次に、Cl
2ガスがパージされる(
図4(c))。
【0044】
次に、改質された表面層にN
2プラズマを曝露する(
図4(d))。このようなN
2プラズマの曝露によって、改質された表面層が除去される(
図4(e))。
【0045】
図4(a)から
図4(e)に示すプロセスは、GaN層14のゲート領域に対応する面が露出されるまで繰り返してもよい。GaN層14の露出した面は、
図1の面14cに対応する。ステップS5は、エッチング処理工程の一例である。
【0046】
図2及び
図3に戻ると、ステップS6において、原子層堆積装置を用いて、ソース電極17’とドレイン電極18’の間の面に絶縁層16を形成する(
図3(f))。ソース電極17’とドレイン電極18’の間の面は、GaN層14のエッチング処理により露出した面、露出した面に隣接するp型GaN層15aの側面及び露出した面に隣接するp型GaN層15bの側面を含む。
【0047】
次に、ステップS7において、ゲート電極19を、真空蒸着装置による金属堆積及びリフトオフによって形成する(
図3(g))。このように形成されたゲート電極19は、金属電極の一例である。
【0048】
そして、
図3(g)に示す絶縁層16’をソース電極17’及びドレイン電極18’から除去した後にTi/Alコンタクト電極をソース電極17’及びドレイン電極18’の上にそれぞれ形成することによって、ソース電極17’及びドレイン電極18’を形成する(
図3(h))。ステップS6及びステップS7は、絶縁層及び金属電極形成工程の一例である。
【0049】
本実施の形態によれば、Cl
2ガスの曝露及びN
2プラズマの曝露によるエッチング処理を行うことによって、GaN層14の結晶表面の窒素欠陥等のダメージは、塩素含有プラズマへの曝露及びGaN表面層の不活性プラズマへの曝露による上述した従来のエッチング処理を行う場合より小さくなる。このために、負のゲート電圧がゲート電極19に印加されたときに、
図1に示す蓄積層ACCが形成される。
【0050】
したがって、本実施の形態によって製造されるpチャネルGaNMOSデバイス1のゲート電極19に負のゲート電圧を印加したときにソース-ドレイン電流を増強できるようになり、本実施の形態によって製造されるpチャネルGaNMOSデバイス1の性能を向上させることができる。
【0051】
[実施例]
Si(111)から構成された基板11の上に、バッファ層20、100nmの厚さのGaN層12’、48nmの厚さのAlGaN層13’及び20nmの厚さのGaN層14’を順次成長させた後に35nmの厚さのp型GaN層15’でキャップした分極接合基板21’を準備した。バッファ層20は、AlGaNによって構成され、数μmの厚さを有する。
【0052】
次に、素子分離のためのレジストパターン31をフォトリソグラフィで形成し、RIE装置を用いて素子分離のためのエッチングを行うことによって、分極接合基板21を形成した。
【0053】
次に、p型GaN層15のソース領域に対応する表面及びドレイン領域に対応する表面にそれぞれ7.5nmのNi及び7.5nmのAuを順次蒸着してからリフトオフした後に550℃で30秒のアニールを行った。
【0054】
次に、ゲートリセス用のレジストパターン32a,32bをフォトリソグラフィで形成した後に、RIE装置を用いてエッチング処理を行った。
【0055】
エッチング処理の第1工程として、ゲートリセス部分に対応する表面をCl
2ガスに10秒間曝露するCl
2ガス曝露工程を行った。ゲートリセス部分は、
図1の面14c、面14cに隣接するp型GaN層15aの側面及び面14cに隣接するp型GaN層15bの側面に対応する。
【0056】
エッチング処理の第2工程として、40Wの電力でN2ガスをプラズマ化し、発生したN2プラズマを分極接合基板21に引き込むための基板電位変調に用いられる電力を20Wにし、ゲートリセス部分に対応する表面をN2プラズマに3分42秒曝露するN2プラズマ曝露工程を行った。
【0057】
このようなエッチング処理を行うゲートリセス部分の深さは、35nmになった。したがって、ゲートリセス部分のp型GaN層15を除去するとともにGaN層14のチャネル層(pチャネル)を残すようなエッチング処理が行われたことになる。
【0058】
次に、分極接合基板21のエッチング処理によって露出した面を、1%HF水溶液で3分間薬液処理を行ってから10%HCL水溶液で5分間薬液処理を行った。
【0059】
次に、原子層堆積装置を用いてSiO2を分極接合基板21の表面に15nm堆積することによって絶縁層16を堆積した後に、10nmの厚さのNi及び18.6nmの厚さのAuを、ゲートリセス部分に対応する絶縁層16に順次蒸着してからリフトオフを行うことによって、ゲート電極19を形成した。
【0060】
次に、1%HF水溶液を用いたウェットエッチング処理によって、ソース電極17’及びドレイン電極18’に形成された絶縁層16’を除去した。次に、10nmの厚さのTi及び50nmの厚さのAlを、ソース電極17’及びドレイン電極18’にそれぞれ順次蒸着してからリフトオフを行うことによってソース電極17及びドレイン電極18を形成し、pチャネルGaNMOSデバイス1と同様の構成のpチャネルGaNMOSデバイスを製造した。
【0061】
[比較例]
上記[実施例]のエッチング処理のN2プラズマ曝露工程の代わりに、Arプラズマ曝露工程を行った。Arプラズマ曝露工程において、20Wの電力でArガスをプラズマ化し、発生したArプラズマを分極接合基板21に引き込むための基板電位変調に用いられる電力を5Wにし、ゲートリセス部分に対応する表面をArプラズマに3分曝露するArプラズマ曝露工程を行った。
【0062】
この場合も、エッチング処理されたゲートリセス部分の深さが35nmになった。[比較例]において、Arプラズマ曝露工程以外は上記[実施例]と同一の製造工程を行うことによって、pチャネルGaNMOSデバイス1と同様の構成のpチャネルGaNMOSデバイスを製造した。
【0063】
図5(a)は、[実施例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイス及び[比較例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流・ゲート電圧特性を示す図である。
【0064】
図5(a)において、ゲート電極V
G[V]を横軸にとり、ソース-ドレイン電流I
SD[μA]を縦軸にとる。また、
図5(a)において、曲線aは、[実施例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流・ゲート電圧特性を示し、曲線bは、[比較例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流・ゲート電圧特性を示す。
【0065】
図5(a)に示すように、ドレイン電圧V
Dが-6Vとなるように同一の値のゲート電極V
Gを印加した条件の下では、曲線aのソース-ドレイン電流の絶対値は、曲線bのソース-ドレイン電流の絶対値より大きくなった。
【0066】
すなわち、[実施例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流の絶対値は、[比較例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスのソース-ドレイン電流の絶対値より大きくなった。
【0067】
図5(b)は、[実施例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイス及び[比較例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスの伝達コンダクタンス・ゲート電圧特性を示す図である。
【0068】
図5(b)において、ゲート電極V
G[V]を横軸にとり、伝達コンダクタンスg
mを縦軸にとる。伝達コンダクタンスg
m[S/m]は、ソース-ドレイン電流I
SDをゲート電極V
Gで偏微分した値であり、ゲート電圧に電流制御性の指標となる。
【0069】
また、
図5(b)において、曲線cは、[実施例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスの伝達コンダクタンス・ゲート電圧特性を示し、曲線dは、[比較例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスの伝達コンダクタンス・ゲート電圧特性を示す。
【0070】
図5(b)に示すように、ドレイン電圧V
Dが-6Vとなるようにゲート電圧を印加した条件の下では、曲線cと曲線dの両方において、0~2V付近のゲート電圧におけるピークが生じた。
【0071】
これらのピークは、[実施例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスと[比較例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスの両方において2次元正孔ガス2DHGがソース-ドレイン電流の生成に寄与していることを示す。
【0072】
また、
図5(b)に示すように、ドレイン電圧V
Dが-6Vとなるようにゲート電圧を印加した条件の下では、曲線cは、-4~-3V付近のゲート電圧におけるピークが生じたが、曲線dは、-4~-3V付近のゲート電圧におけるピークが生じなかった。
【0073】
曲線cに示される-4~-3V付近のゲート電圧におけるピークは、[実施例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスにおいて
図1に示すような蓄積層ACCが形成されることによってソース-ドレイン電流を増強していることを示す。
【0074】
また、曲線cに示されるような-4~-3V付近のゲート電圧におけるピークを有しない曲線dは、[比較例]の製造方法で得られたpチャネルGaNMOSデバイスにおいて
図1に示すような蓄積層ACCが形成されないためにソース-ドレイン電流を増強することができないことを示す。
【0075】
図6は、本発明の第2実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの概略図である。
図6に示すpチャネルGaNMOSデバイス1’は、pチャネルGaNMOSデバイス1’のゲート領域に負のゲート電圧が印加された状態を示す。
【0076】
pチャネルGaNMOSデバイス1’は、基板11と、GaN層12と、AlGaN層13と、GaN層14と、p型GaN層15aと、p型GaN層15bと、絶縁層16と、ソース電極17と、ドレイン電極18と、ゲート電極19と、バックゲート電極19’と、を備える。
【0077】
バックゲート電極19’は、負のゲート電圧を印加する電源とは異なる電源(図示せず)によって、pチャネルGaNMOSデバイス1’の閾値電圧を上げるためのバックゲート電圧が印加される。ゲート電極19は、例えば、Ni/AlをAlGaN層13の上に堆積することによって形成される。バックゲート電極19’は、第2金属電極の一例である。
【0078】
pチャネルGaNMOSデバイス1’は、
図2のステップS2でバックゲート電極19’が形成される部分をAlGaN層13に設けるとともに
図2のステップS7でバックゲート電極19’を形成する点を除いて、
図2のpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法と同一の製造方法によって製造される。
【0079】
第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、ゲート電極19を介してpチャネルGaNMOSデバイス1’のゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、
図6に示すような正孔の蓄積層ACCがp型GaN層15a、GaN層14及びp型GaN層15bに亘って形成される。蓄積層ACCは、面14cに隣接するp型GaN層15aの側面、面14c及び面14cに隣接するp型GaN層15bの側面に沿って形成される。
【0080】
したがって、pチャネルGaNMOSデバイス1’のゲート電極19に負のゲート電圧を印加したときのpチャネルGaNMOSデバイス1’のソース-ドレイン電流を増強できるようにすることによって、pチャネルGaNMOSデバイス1’の性能を向上させることができる。
【0081】
また、第2実施形態によれば、バックゲート電極19’を介してpチャネルGaNMOSデバイス1’の閾値電圧を上げるためのバックゲート電圧を印加することによって、ノーマリーオンのpチャネルGaNMOSデバイス1’を実現することができる。
【0082】
図7は、本発明の第3実施の形態によるpチャネルGaNMOSデバイスの概略図である。
図7に示すpチャネルGaNMOSデバイス1”は、pチャネルGaNMOSデバイス1”のゲート領域に負のゲート電圧が印加された状態を示す。
【0083】
図7に示すpチャネルGaNMOSデバイス1”は、基板としての役割を果たすGaN層14と、p型GaN層15aと、p型GaN層15bと、絶縁層16と、ソース電極17と、ドレイン電極18と、ゲート電極19と、を備える。第3実施の形態において、ゲート電極19は、金属電極の一例である。
【0084】
pチャネルGaNMOSデバイス1”は、
図2のステップS1及びステップS2でGaN層及びp型GaN層から構成された分極接合基板を用いる点を除いて
図2のpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法と同一の製造方法によって製造される。
【0085】
第3実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、ゲート電極19を介してpチャネルGaNMOSデバイス1”のゲート領域に負のゲート電圧を印加したときに、
図7に示すような正孔の蓄積層ACCがp型GaN層15a、GaN層14及びp型GaN層15bに亘って形成される。蓄積層ACCは、面14cに隣接するp型GaN層15aの側面、面14c及び面14cに隣接するp型GaN層15bの側面に沿って形成される。
【0086】
したがって、pチャネルGaNMOSデバイス1”のゲート電極19に負のゲート電圧を印加したときのpチャネルGaNMOSデバイス1”のソース-ドレイン電流を増強できるようにすることによって、pチャネルGaNMOSデバイス1”の性能を向上させることができる。
【0087】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、本発明によるpチャネルGaNMOSデバイスの構成を、
図1に示すpチャネルGaNMOSデバイス1、
図6に示すpチャネルGaNMOSデバイス1’又は
図7に示すpチャネルGaNMOSデバイス1”以外の構成にしてもよい。
【0088】
例えば、
図1に示すpチャネルGaNMOSデバイス1又は
図6に示すpチャネルGaNMOSデバイス1’のバッファ層20を省略してもよい。また、
図6に示すpチャネルGaNMOSデバイス1’において、バックゲート電極19’を、AlGaN層13以外の部分に形成してもよい。例えば、AlGaN層13とGaN層12との界面を露出させて2DEGの側面にバックゲート電極19’を接触させてもよい。
【0089】
また、
図2に示すpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法の工程は、一例であり、ステップS1~S7を順序通りに行わなくてもよい。例えば、ソース電極17’及びドレイン電極18’を形成するためのステップS3を最初に行い、その後にレジストパターン31を形成するステップS1及び素子分離のためのエッチングのためのステップS2を順次行ってもよい。
【0090】
また、本発明によるpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法において、ゲートリセス部分に対応する表面をCl2ガスに曝露する時間及びゲートリセス部分に対応する表面をN2プラズマに曝露する時間を、エッチング処理されるゲートリセス部分の深さ等に応じて予め決定された時間に設定してもよい。また、本発明によるpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法において、ゲートリセス部分に対応する表面をCl2ガスの代わりにCl2プラズマに曝露してもよい。
【0091】
さらに、本発明によるpチャネルGaNMOSデバイスの製造方法において、N2ガスをプラズマ化するための電力及び発生したN2プラズマを分極接合基板に引き込むための基板電位変調に用いられる電力を、エッチング処理されるゲートリセス部分の深さ等に応じて予め決定された値に設定してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1,1’,1” pチャネルGaNMOSデバイス
11 基板
12,12’,14,14’ GaN層
13,13’ AlGaN層
14a,14b,14c 面
15,15’,15a,15b p型GaN層
16 絶縁層
17,17’ ソース電極
18 ドレイン電極
19 ゲート電極
19’ バックゲート電極
20 バッファ層
21,21’ 分極接合基板
31,32a,32b レジストパターン
ACC 蓄積層
2DEG 2次元電子ガス
2DHG 2次元正孔ガス