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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031490
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20230302BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/175 301
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137009
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 俊喜
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 忠司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 渉
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA29
2C056EB38
2C056EB50
2C056EC24
2C056EC54
2C056EC57
2C056EC59
2C056JC06
(57)【要約】
【課題】インクジェット記録装置において、インク残量が少ない状態での回復処理の実行を可能にする。
【解決手段】回復動作のインク使用量が第1の所定値である第1の回復モードと、前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値である第2の回復モードとを有し、所定のインク吐出動作からの経過時間に基づき、経過時間が第1の経過時間を超えている場合は前記第1の回復モードを実行し、前記第1の経過時間よりも大きい第2の経過時間を超えている場合は前記第2の回復モードの実行を制御する制御手段を有し、前記制御手段はインク残量が前記第2の所定値以下であることを検出した場合、所定の吐出動作からの経過時間が前記第2の経過時間を超える前に、回復動作のインク使用量が前記第2の回復モードによる回復動作のインク使用量以下である定期回復の実行を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体へインクを吐出して画像を記録する記録手段と、
前記記録手段の回復動作を行う回復手段と、
前記回復動作のインク使用量が第1の所定値である第1の回復モードと、前記回復動作のインク使用量が第1の所定値よりも大きい第2の所定値である第2の回復モードとを有し、前記記録手段による画像記録時において、前記記録手段によりインクを吐出する所定の吐出動作からの経過時間に基づき、前記経過時間が第1の経過時間を超えている場合は前記第1の回復モードを実行し、前記第1の経過時間よりも大きい第2の経過時間を超えている場合は前記第2の回復モードの実行を制御する制御手段と、
前記記録手段におけるインク残量を管理するインク残量管理手段と、
を備えるインクジェット記録装置であって、
前記制御手段は、前記インク残量管理手段によって管理するインク残量が前記第2の所定値以下であることを検出した場合、前記所定の吐出動作からの経過時間が前記第2の経過時間を超える前に、回復動作のインク使用量が前記第2の回復モードによる回復動作のインク使用量以下である定期回復の実行を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記所定の吐出動作は、前記回復手段による回復動作によるインクの吐出を含むことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記所定の吐出動作は、前記記録手段による記録動作によるインクの吐出を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記定期回復は、前記第1の回復モードによる回復であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記定期回復は、前記第2の経過時間よりも所定時間前に実行されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対してインクを吐出することにより画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録装置では、記録品位を良好に保つために、一定時間ごとに予備吐出やインク吸引などの回復処理を行っている。この回復処理を行うタイミングは、記録の直前に行うのが一般的である。この回復処理を効果的に行うために、前回の回復処理の実行からの経過時間に基づいて、回復強度を変更するようにしたものがある(特許文献1)。
【0003】
具体的には、前回の回復処理の実行からの経過時間が短いときは吸引するインク量を少なくし(回復強度が低い)、経過時間が長くなると吸引するインク量を多く(回復強度が高い)するようにして回復強度を変えるものである。これにより、回復処理によって消費されるインクの無駄を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-103802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のように前回の回復処理の実行からの経過時間に応じて回復強度を変更した場合でも、インク残量が少ない状態で記録前に回復処理が実行されると回復処理の実行によってインク無しエラーが発生し、記録が行えないことがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インク残量が少ない状態での回復処理の実行によるインク無しエラーの発生を抑制し、限られたインク残量における記録可能枚数を最大限に引き延ばせることを可能にしたインクジェット記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る代表的な構成は、記録媒体へインクを吐出して画像を記録する記録手段と、前記記録手段の回復動作を行う回復手段と、前記回復動作のインク使用量が第1の所定値である第1の回復モードと、前記回復動作のインク使用量が第1の所定値よりも大きい第2の所定値である第2の回復モードとを有し、前記記録手段による画像記録時において、前記記録手段によりインクを吐出する所定の吐出動作からの経過時間に基づき、前記経過時間が第1の経過時間を超えている場合は前記第1の回復モードを実行し、前記第1の経過時間よりも大きい第2の経過時間を超えている場合は前記第2の回復モードの実行を制御する制御手段と、前記記録手段におけるインク残量を管理するインク残量管理手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記制御手段は、前記インク残量管理手段によって管理するインク残量が前記第2の所定値以下であることを検出した場合、前記所定の吐出動作からの経過時間が前記第2の経過時間を超える前に、回復動作のインク使用量が前記第2の回復モードによる回復動作のインク使用量以下である定期回復の実行を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インク残量が少ない場合であっても、その範囲で回復処理を実行することにより回復処理によるインク無しエラーを抑制することができ、限られたインク残量における記録可能枚数を最大限に引き延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置の主要部を示す斜視図である。
図2図1に示されるインクジェット記録装置の制御系の構成を説明するためのブロック図である。
図3】本実施形態におけるスタンバイ中の一連の処理の流れを示すフローチャートである。
図4】インク残量に基づく回復チェック処理の流れを示すフローチャートである。
図5】タイマー回復の種類とインク使用量を示す表である。
図6】インク使用量の推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の実施形態に係る記録装置について、図面を参照して説明する。
【0011】
<記録装置の全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置1の主要部を示す斜視図である。ここで、図中の矢印Aは、記録ヘッドの走査方向を表している。また、X軸方向は、走査方向を示すものであり、Y軸方向は、X軸方向と直交し、Z軸方向は、記録媒体Pに垂直な方向を示すものである。
【0012】
本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、キャリッジユニット20と、キャリッジユニット20を駆動するキャリッジ駆動部30と、インクジェット記録装置1を制御する本体制御部(制御手段)40と、メンテナンスユニット50と、記録媒体供給部60とを備える。
【0013】
キャリッジユニット20は、記録ヘッド(記録手段)22を保持する記録ヘッドユニット21と、記録ヘッドユニット21を搭載するキャリッジ23と、エンコーダセンサ24とを備える。この記録ヘッド22は、インクを吐出するためのインク吐出部としてのノズルを備える。
【0014】
キャリッジ駆動部30は、キャリッジモータ31と、キャリッジモータ31により駆動される無端のキャリッジ駆動ベルト32とを備え、キャリッジユニット20を走査方向に移動させる。また、キャリッジ駆動部30は、キャリッジ23の位置検出に用いられるエンコーダフィルム33と、キャリッジユニット20の移動経路を規定するガイド部34と、をキャリッジユニット20の動作領域上にそれぞれ備える。
【0015】
本体制御部40は、図3及び図4などで後述されるCPU100や各駆動回路などを備え、供給動作、記録動作、回復動作などを制御する。
【0016】
メンテナンスユニット50は、クリーニングブレード51と、キャップ部材52と、吸引回復機構(回復手段)53とを備える。クリーニングブレード51は、キャリッジユニット20がホームポジションに位置する待機状態から記録状態へと移行する過程で、記録ヘッド22のインク吐出部に当接し、インク吐出面に付着した余分なインクを拭き取るワイプ動作を行う。
【0017】
図1で、キャップ部材52は、待機状態のキャリッジユニット20に対して、記録ヘッド22のインク吐出部に対するインク固着防止や異物の付着防止のために、記録ヘッド22のインク吐出面に当接する。吸引回復機構53は、インクを回収する廃棄用貯蔵タンクと、負圧発生手段であるポンプユニット(不図示)と、チューブ(不図示)とを備える。このチューブは、ポンプユニットを介して、キャップ部材52の吸引孔及び廃棄用貯蔵タンクのそれぞれに連通される。
【0018】
また、吸引回復機構53は、キャップ部材52を記録ヘッド22のインク吐出面に当接させた状態において、ポンプユニットを駆動させ、キャップ部材52内に負圧を発生させる。これにより、気泡や乾燥によって増粘したインク又は混入した塵埃等を、吸引排出させて記録ヘッド22のノズルの吐出性能を回復させるインク吸引動作を行う。更に、キャップ部材52上で記録ヘッド22のインク吐出面から所定発数分の吐出を行うことで、記録ヘッド22内の増粘したインクなどを除去する予備吐動作を行う。更に、予備吐動作によってキャップ部材52内に溜まったインクを除去するため、キャップ部材52を記録ヘッド22のインク吐出面と離間した状態で、ポンプユニットを駆動させてキャップ部材内に負圧を発生させて、キャップ部材内に溜まったインクを吸引排出させるキャップ吸引動作を行う。
【0019】
供給ユニット60は、記録媒体供給機構61と、開口部63を有するプレート部材62と、記録媒体Pのセットを検出するトレイ記録媒体検知センサ(非図示)を備える。この記録媒体供給機構61は、プレート部材62の下方に設けられ、記録媒体Pを下面から支持する供給トレイ66と、供給トレイ66を上昇及び下降させるリフト部材(非図示)とを備える。記録媒体供給機構61は、記録媒体検知センサにより、供給トレイ66に記録媒体Pがセットされたことを検知すると、リフト部材が供給トレイ66を記録ヘッド22に向かって垂直方向に上昇させる。その後、記録媒体供給機構61は、記録媒体Pの表面がプレート部材62の下部に押し付けられる位置まで移動すると、供給トレイ66とプレート部材62との間に記録媒体Pを挟持した状態で上昇を停止させる。このとき、プレート部材62の開口部63から露出した記録媒体Pの部分が記録ヘッド22によって記録可能な領域となる。
【0020】
<制御系の構成>
図2は前述したインクジェット記録装置1における制御手段の構成を示すブロック図である。CPU100は、データバス及びシステムバス101を介して、ホストコンピュータなどの外部装置からの指令及びインクジェット記録装置1の記録データの受信、記録動作、回復動作など統括的な制御をつかさどる演算処理装置である。CPU100は、ROM102、RAM103、パネル操作部105、供給トレイ66にセットした記録媒体を検知する記録媒体検知センサ68、リフトポンプモータ71、リフトホームポジションセンサ65に通信可能に接続されている。ROM102は、記録する画像データや、制御プログラム、後述する回復シーケンスの情報などを格納し、RAM103は、それらのプログラムに従い作業用メモリとして用いられる。
【0021】
パネル操作部105は、インクジェット記録装置1のステータス表示や、ユーザからの記録動作等の指令を入力する。リフトポンプモータ71は、記録媒体供給機構61及び吸引回復機構53を同一駆動源により駆動する正転方向及び逆転方向に回転可能なパルスモータであり、必要な移動距離分のパルスを出力して所望の動作を行う。
【0022】
記録前の動作処理として、CPU100は、供給トレイ66に記録媒体Pがセットされたことを記録媒体検知センサ68で検知すると、リフトポンプモータ71を正転方向に回転駆動し、供給トレイ66が上昇開始されたことを、リフトホームポジションセンサ65で検知する。その後、リフトポンプモータ71を正転方向に所定量駆動して、供給トレイ66とプレート部材62との間に記録媒体Pが挟持されたら、リフトポンプモータ71を停止させる。
【0023】
次に、記録時の動作処理として、CPU100は、キャリッジモータ31を駆動し、キャリッジユニット20を走査方向に移動させる。この際、CPU100は、エンコーダセンサ24から入力されるパルス数を、キャリッジユニット20の移動に同期させてカウントし、キャリッジユニット20の相対位置の検出及び制御を行う。また、CPU100は、記録ヘッド22の記録開始位置への到達を検出すると、記録ヘッド22内のヒータを加熱し、記録媒体Pへインクを吐出する一方、記録ヘッド22のホームポジションへの到達を検出するとキャリッジモータ31を停止する。
【0024】
また、吸引回復時の動作処理として、CPU100は、リフトポンプモータ71を正転方向に回転駆動し、ポンプユニットの大気開放動作や、リフトポンプモータ71を逆転方向に回転駆動し、インクの吸引回復動作を行う。このとき、CPU100は吸引回復動作の実行時間(日時情報)をROM102へ保存し、保存された実行時間に基づいて、記録前に吸引回復を実行するかどうかの判別に使用する。また、記録ヘッドのインク残量は図示しないインク残量管理手段によって管理されている。
【0025】
<インク吸引回復構成>
本実施形態のインクジェット記録装置にあっては、記録開始の際にインク吸引回復動作を実行するが、それ以外のスタンバイ時においても所定の条件の基にインク吸引回復動作を実行し、インク残量が少ない状態での記録前の回復処理の実行によるインク無しエラーの発生を抑制している。次に本実施形態のインクジェット記録装置における記録ヘッドの回復処理動作について具体的に説明する。
【0026】
(記録開始時における回復処理制御)
図3は、本実施形態における装置スタンバイ中の回復処理の流れを示すフローチャートである。
【0027】
まず、最初に「記録開始時における回復処理」制御について説明する。記録開始に際して記録ヘッド22の回復処理を実行することで、記録時におけるインク吐出不良が生じないようにしている。そして、この記録開始時の回復処理には前回のインク吐出からの経過時間に応じて回復強度が異なる複数の回復モードを有している。具体的には、前回のインク吐出からの経過時間で比較した場合、前記経過時間が短い場合(第1の経過時間)の回復強度(第1の回復モード)よりも、経過時間が長い場合(第2の経過時間)の回復強度(第2の回復モード)が高くなるように構成されている。
【0028】
本実施形態では以下のように、前回のインク吐出からの経過時間A1、B1、C1(時間A1<時間B1<時間C1)に応じて3段階の回復モードによる回復処理を実行するようにしている。なお、前回のインク吐出には回復処理の際のインク吐出のみならず、記録に際してのインク吐出も含む。
【0029】
ステップ101では、ユーザにより供給トレイ66上に記録媒体Pがセットされ、ホストコンピュータなどからインクジェット記録装置1へ記録開始を要求する記録開始コマンドを受信したかどうかを判別する。記録開始コマンドを受信した場合はステップ102に進む。
【0030】
ステップ102では、メンテナンスユニットにおいて、経過時間に基づいてノズルの吐出性能の回復を行う「タイマー回復C」の実行条件に該当するかどうかを判別する。タイマー回復Cの実行条件は、ROM102に保存された前回の吸引回復の実行から経過時間C1(本実施形態では866時間)以上経過しているか否かで判別し、経過時間C1以上経過していない場合はステップ104へ進む。
【0031】
ステップ104では「タイマー回復B」の実行条件に該当するかどうかを判別する。タイマー回復Bの実行条件は、前回の吸引回復の実行から経過時間B1(本実施形態では216時間)以上経過しているか否かで判別し、経過時間B1以上経過していない場合はステップ106へ進む。
【0032】
ステップ106では「タイマー回復A」の実行条件に該当するかどうかを判別する。タイマー回復Aの実行条件は、前回の吸引回復の実行から経過時間A1(本実施形態では72時間)以上経過しているか否かで判別し、前回の吸引回復から経過時間A1以上経過していない場合は、ステップ108へ進む。
【0033】
ステップ108では、記録前に行う回復処理として記録ヘッド22内の増粘したインクなどを除去する予備吐動作を行う。
【0034】
一方、前記ステップ102で前回の吸引回復の実行から経過時間C1(866時間)以上経過している場合はステップ103へ進む。ステップ103では記録前に実行する回復処理としてタイマー回復Cを選定し、RAM103へ選定した回復処理を記憶する。
【0035】
回復処理は、記録ヘッド22のノズルの吐出性能を回復させるインク吸引動作と、記録ヘッド22内の増粘したインクなどを除去する予備吐動作を複数回実行することによって行い、吸引量や予備吐動作量の強度を変えることで3段階の回復強度を備えている。タイマー回復Cは強度が一番高いレベル3の回復処理となる。
【0036】
ステップ104で前回の吸引回復の実行から経過時間B1(216時間)以上経過している場合は、ステップ105へ進む。ステップ105では記録前に実行する回復処理としてタイマー回復Bを選定し、RAM103へ選定した回復処理を記憶する。タイマー回復Bは強度が2番目に高いレベル2の回復処理である。
【0037】
ステップ106で前回の吸引回復の実行から経過時間A1(72時間)以上経過している場合は、ステップ107へ進む。ステップ107では記録前に実行する回復処理としてタイマー回復Aを選定し、RAM103へ選定した回復処理を記憶する。タイマー回復Aは強度が一番低いレベル1の回復処理である。
【0038】
回復処理に使用するインク量は前記回復強度により異なり、回復強度が低い場合と高い場合とで比較した場合に、回復強度が低い回復モード(第1の回復モード)におけるインク使用量(第1の所定値)よりも、回復強度が高い回復モード(第2の回復モード)におけるインク使用量(第2の所定値)のほうが多い。本実施形態における前記タイマー回復Cにおけるインク使用量C2は記録ヘッドに充填されるインク量の16%、前記タイマー回復Bにおけるインク使用量B2は10%、前記タイマー回復Aにおけるインク使用量A2は4%である。
【0039】
ステップ109では、ステップ103、ステップ105、ステップ107で選定した回復処理をRAM103から読み出し、選定されたタイマー回復A/B/Cで使用するインク使用量A2/B2/C2と記録ヘッド22内のインク残量とを比較し、回復処理で使用するインク量が記録ヘッド22内のインク残量よりも少ない場合、ステップ111へ進み、インクがないことを通知するインク無しエラーをホストコンピュータなどへ送信する。
【0040】
ステップ109で回復で使用するインク量が記録ヘッド22内のインク残量よりも少ない場合は、ステップ110へ進んで選択されたタイマー回復処理を実行した後、ステップ112へ進んで記録媒体Pへの記録処理を実行する。
【0041】
ステップ112で記録処理の実行が完了したら、ステップ113へ進んで記憶ヘッド22内のインク残量がなくなっていないかどうかを判別し、インク残量が0の場合はステップ111へ進んでインク無しエラーを送信する。ステップ113でインク残量が0を超えている場合は、ステップ101へ進んで次の記録開始コマンドの受信を待機する。
【0042】
ステップ101で記録開始コマンドを受信していない場合は、ステップ114に進み、インク残量に基づく回復チェック処理を行う。
【0043】
(インク残量に基づく回復処理制御)
次に前記ステップ114で行われる「インク残量に基づく回復処理」制御について説明する。図4は前記ステップ114で実行されるスタンバイ中に定期的に実施するインク残量に基づく回復チェック処理を示すフローチャートである。
【0044】
インク残量に基づく回復処理にあっては、ステップ201で記憶ヘッド22内のインク残量がレベル3の回復処理におけるインク使用量C2(16%)以下かどうかを判別し、使用量C2以下でない場合は、インク残量に基づく回復チェック処理を終了する。
【0045】
ステップ201で記憶ヘッド22内のインク残量がタイマー回復Cで使用されるインク使用量C2以下である場合は、ステップ202へ進む。ステップ202では、記憶ヘッド22内のインク残量がレベル2の回復処理におけるインク使用量B2(10%)以下かどうかを判別し、インク使用量B2以下でない場合は、ステップ203へ進む。
【0046】
ステップ203では、ROM102に保存された「前回の吸引回復の実行時間」からタイマー回復Bの実行条件である経過時間B1(216時間)が経過するまで残り時間B3(本実施形態では16時間)以下かどうかを判別し、残り時間B3以下でない場合は、インク残量に基づく回復チェック処理を終了する。
【0047】
ステップ203で残り時間B3以下であると判別した場合、ステップ204へ進み、タイマー回復Bを実行する。ステップ204でタイマー回復Bを実行した後、ステップ205へ進んでROM102へ回復実行時間として現在時刻を保存して、回復実行条件を更新する。
【0048】
ステップ202で記憶ヘッド22内のインク残量が前記インク使用量B2以下である場合は、ステップ206へ進む。ステップ206では、記憶ヘッド22内のインク残量がレベル1の回復処理におけるインク使用量A2(4%)以下かどうかを判別し、インク使用量A2以下でない場合はステップ209へ進む。
【0049】
ステップ209では、ROM102に保存された「前回の吸引回復の実行時間」からタイマー回復Aの実行条件である経過時間A1(72時間)が経過するまで残り時間A3(本実施形態では8時間)以下かどうかを判別し、残り時間A3以下でない場合は、インク残量に基づく回復チェック処理を終了する。
【0050】
ステップ209で残り時間A3以下であると判別した場合、ステップ210へ進み、タイマー回復Aを実行する。ステップ210でタイマー回復Aを実行した後、ステップ211へ進んでROM102へ回復実行時間として現在時刻を保存して、回復実行条件を更新する。
【0051】
ステップ206で記憶ヘッド22内のインク残量が前記インク使用量A2以下である場合は、ステップ207へ進む。ステップ207では、ROM102に保存された「前回の吸引回復の実行時間」からタイマー回復Aの実行時間である経過時間A1(72時間)を経過したかどうかを判別し、経過時間A1を経過していない場合は、インク残量に基づく回復チェック処理を終了する。一方、ステップ207で経過時間A1を経過している場合は、ステップ208へ進む。
【0052】
ステップ208では、記憶ヘッド22内のインク残量が、次回の記録を実行するために必要なインク量(タイマー回復A+記録)より少ないものと判断して、インクがないことを通知するインク無しエラーをホストコンピュータなどへ送信する。
【0053】
図5は、本実施形態におけるタイマー回復の種類と実行条件、インク使用量を示す表である。タイマー回復は記録を行う前に条件に該当する場合に実行される。実行条件は前述したとおり、ROM102に保存された「前回の吸引回復の実行時間」から所定の経過時間(図5の実行条件に記載)を超えているかどうかによる。所定の経過時間を超えている場合は、該当するタイマー回復を実行する。
【0054】
以上のように、記録開始の際以外でも記録ヘッド内のインク残量に応じ、インク残量が回復強度の高いタイマー回復Cを実行するためのインク使用量C2以下である場合、タイマー回復Bのインク使用量B2以上ある場合は、前回のインク吐出からタイマー回復Bの実行条件である経過時間B1に近づいてきた段階でタイマー回復Bを実行する。また、記録ヘッドのインク残量がタイマー回復Bを実行するためのインク使用量B2以下である場合、タイマー回復Aのインク使用量A2以上ある場合は、前回のインク吐出からタイマー回復Aの実行条件である経過時間A1に近づいてきた段階でタイマー回復Aを実行する。
【0055】
これにより、インク残量が少なくなっても回復処理によるインク無しエラーを抑制することができ、限られたインク残量における記録可能枚数を最大限に引き延ばすことが可能となる。
【0056】
(回復処理の一例)
ここで、上記インク残量に基づく回復チェックによって回復処理を行った場合の具体例を説明する。図6は、本実施形態のインク残量に基づく回復チェックによって回復処理を行った場合のインク使用量の推移の一例を示す図である。
【0057】
タイマー回復と記録を実行した時点を0時間、インク残量はタイマー回復Bのインク使用量と同等の10%とする。スタンバイ状態で記録が実行されないまま200時間(タイマー回復Bの実行条件まで残り16時間)を経過した場合に、図5のインク残量に基づく回復チェック処理によってタイマー回復Aが強制的に実行される。スタンバイ中のタイマー回復Aの実行によりインク残量は6%となるが、記録可能状態が継続される。
【0058】
その後、記録動作のあとに電源がOFFされるケースにおいて、次回起動時に既にタイマー回復Bの実行条件まで16時間以下となっていて、インク使用量が5%でタイマー回復Aの使用量である4%以下でない場合は、再度タイマー回復Aを強制的に実行して、記録可能状態が継続される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のインクジェット記録装置によれば、インク残量が強度の高い回復動作の実行に必要なインク量より少ない場合であっても、強度の低い回復処理を定期的に実行することによって、記録実行時の強度の高い回復処理の実行によるインク切れを防ぎ、記録可能状態を一定時間維持させて記録可能枚数を増やすことができる。
【符号の説明】
【0060】
20 …キャリッジユニット
21 …記録ヘッドユニット
22 …記録ヘッド
40 …本体制御部
50 …メンテナンスユニット
51 …クリーニングブレード
52 …キャップ部材
53 …吸引回復機構
54 …ポンプユニット
60 …シート供給部
61 …シート供給機構
66 …供給トレイ
100…CPU
105…パネル操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6